IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社新来島どっくの特許一覧

<>
  • 特許-錨鎖庫 図1
  • 特許-錨鎖庫 図2
  • 特許-錨鎖庫 図3
  • 特許-錨鎖庫 図4
  • 特許-錨鎖庫 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】錨鎖庫
(51)【国際特許分類】
   B63B 21/20 20060101AFI20221114BHJP
【FI】
B63B21/20 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021090387
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000146814
【氏名又は名称】株式会社新来島どっく
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 拓也
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204567969(CN,U)
【文献】特開2013-199210(JP,A)
【文献】特開平09-020282(JP,A)
【文献】特表2013-542144(JP,A)
【文献】中国実用新案第202754224(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面円形で底付きの錨鎖庫において、鋼板製の円筒形側壁の内面に木製内張りが設けられており、前記木製内張りを構成する複数本の内張り木材はその断面形状が四角形であって、前記各内張り木材は隣接する内張り木材との間に隙間をあけて前記側壁の内面に取付けられている
ことを特徴とする錨鎖庫。
【請求項2】
前記内張り木材は、縦方向において間隔をあけて複数個のボルト挿通孔が穿孔され、前記ボルト挿通孔は、ボルトを通す軸用孔とその外面部に同芯に形成されたナット収納部からなる
ことを特徴とする請求項1記載の錨鎖庫。
【請求項3】
前記隙間は、格納するアンカーチェーンの径よりも小さい
ことを特徴とする請求項1または2記載の錨鎖庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錨鎖庫に関する。さらに詳しくは、船舶等で用いられるアンカーチェーンを収容する錨鎖庫に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶用の錨鎖庫における従来技術として特許文献1がある。
特許文献1の錨鎖庫は、横断面が円形または四角形に形成された収納庫であり、巻き揚げられたアンカーチェーンが収まる容積を有している。
錨鎖庫の構成部材は船舶用の鋼板で構成されるのが普通である。
【0003】
ところで、錨鎖庫の側壁を鋼板で構成しただけであると、アンカーチェーンとの接触で損傷した際に交換することが非常に困難になることから、側壁の内面に内張り木材をボルト等で鋼板製の側壁に取付けておくのが一般的である。そうすれば、内張り木材のみを交換することで、損傷の回復が容易に行えるからである。
【0004】
従来の内張り木材を施工した錨鎖庫を図4に基づき説明する。
錨鎖庫が横断面円形のいわゆる丸型であれば、木製の樽のような構造に仕上げる必要がある。
すなわち、内張に用いる木材には断面長方形の内張り木材113を用い、長さを錨鎖庫の縦寸法に合わせて切断し、その木材を縦向きにして横に並べ、錨鎖庫の側壁11の内面全周に取付けるようにする。
【0005】
この場合、内張り木材113の断面形状は、長四角形のままではなく、両端をテーパー状の面取り部113eを切除する面取り加工を行い、断面全体が台形であるように加工する。このように加工しなければ、内張り木材113同士の間に隙間ができたり、寸法が少しでも大きいと全ての内張り木材113の鋼板側壁11への取付けが安定しなくなるからである。
そして、内張り木材113を断面台形にする面取り加工は錨鎖庫の仕上がり精度、木材の反りに合わせて形状を変える必要があり、高い精度が要求されるため加工に多くの時間と技術が要求されていた。また、船の就航後、木製内張の交換を行う際にも新しい内張り木材113に同じような面取り加工が必要であった。さらに、内張り木材113はボルトで錨鎖庫に固定するが、ボルトの位置、取り付け角度も高い精度が要求されていた。
【0006】
図5に示すように、錨鎖庫の横断面形状を四角形とすれば、内張り木材213の断面を台形にする面取り加工は必要なくなる。
しかしながら、錨鎖庫内で錨鎖は円形に積み重ねて格納されるため、四隅に無駄な空間Dsが出来る。これにより図4に示す丸型錨鎖庫と比較して錨鎖庫自体が大きくなる。この結果、船の重量が増加することで、船自体の性能の低下に繋がるため、この方法は採用出来ず内張り木材への面取り加工は必須であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開平3-68191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、内張り木材に面取り加工を施す等の二次加工の必要がない錨鎖庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の錨鎖庫は、横断面円形で底付きの錨鎖庫において、鋼板製の円筒形側壁の内面に木製内張りが設けられており、前記木製内張りを構成する複数本の内張り木材はその断面形状が四角形であって、前記各内張り木材は隣接する内張り木材との間に隙間をあけて前記側壁の内面に取付けられていることを特徴とする。
第2発明の錨鎖庫は、第1発明において、前記内張り木材は、縦方向において間隔をあけて複数個のボルト挿通孔が穿孔され、前記ボルト挿通孔は、ボルトを通す軸用孔とその外面部に同芯に形成されたナット収納部からなることを特徴とする。
第3発明の錨鎖庫は、第1または第2発明において、前記隙間は、格納するアンカーチェーンの径よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、内張り木材同士の間に隙間があることから、円筒形側壁の内面に取付ける場合であっても、内張り木材の端面を切除する面取り加工して台形断面とする二次加工が必要なくなる。そのため、少ない工数で錨鎖庫への内張り施工が行える。
第2発明によれば、ボルト挿通孔に錨鎖庫側壁に植設されたボルトを通して内張り木材を取付けることができ、かつボルトにナットを螺合したときナットはナット収容部に収容されるので、直接アンカーチェーンと接触する不都合は生じない。
第3発明によれば、隙間がアンカーチェーンの径よりも小さいので、アンカーチェーンが隙間に嵌ることがないので、アンカーチェーンの出し入れが円滑に行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る錨鎖庫1の説明図であって、(A)は図3のI-I線横断面図、(B)は(A)図の一部拡大図である。
図2】内張り木材13の説明図であって、(C)は正面図、(D)はD-D線における横断面図である。
図3】船舶における錨鎖庫の説明図である。
図4】従来技術に係る錨鎖庫の一例の説明図であって、(A)は横断面図、(B)は(A)図の一部拡大図、(C)は内張り木材113の横断面図である。
図5】従来技術に係る錨鎖庫の他の例の説明図であって、(A)は横断面図、(B)は(A)図の一部拡大図、(C)は内張り木材213の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図3は自力航行可能な船舶Sの錨鎖庫1まわりの概略を示している。なお、図示の船舶Sは貨物船であるが、客船その他各種の船舶に本発明を適用できる。
同図において、2はアンカー、3はアンカーチェーン、4は揚錨機である。錨鎖庫1は、上甲板5から下向きに形成された収納空間であり、その底部は中甲板または任意の甲板で支えられている。錨鎖庫1には揚錨機4で巻き揚げられたアンカーチェーン3が収められる。アンカーチェーン3の収め方は、円を描くように降下させ、円形に積み重ねる公知の方法である。
錨鎖庫1の基本的な構成は底付きの円筒形で、側壁と底壁は鋼板製である。錨鎖庫1の上面開口には適宜の蓋が取付けられているが、アンカーチェーン3の出入口が形成されている。
【0013】
図1図3に示す錨鎖庫1の横断面図を示している。11は円筒形に形成した側壁で、鋼板製である。本明細書では、このような横断面円形の錨鎖庫を丸型の錨鎖庫という。この円筒形の側壁11の内面に木製内張り12が設けられている。
木製内張り12は、多数本の内張り木材13を側壁11にボルト止めすることにより構成される。
各内張り木材13は縦長の木材であって、横断面形状は四角形である。
内張り木材13の縦方向長さは、錨鎖庫1の縦長さと同じものであってもよいが、錨鎖庫1の縦長さがより長い場合は、複数本の内張り木材13を継ぎ足して用いてもよい。
【0014】
内張り木材13は側壁11の内面に沿って立てて並べていくが、隣接する内張り木材13同士の間には隙間dがあけられる。
隙間dをあけることによって、内張り木材13の両端面に面取り加工を施す必要はなくなる。面取り加工をしなくても、内張り木材13同士の干渉が生じないからである。
内張り木材13同士の間の隙間dは格納するアンカーチェーン3の外径よりも小さくされている。そのため、アンカーチェーン3が隙間dに嵌ることがないので、アンカーチェーン3の出し入れが円滑に行える。
【0015】
図2に基づき、内張り木材13の取り付け方を説明する。内張り木材13の長手方向における適所、通常は2カ所以上、必要に応じて3カ所以上のボルト挿通孔21が形成される。このボルト挿通孔21は、軸用孔22とナット収納部23とからなる。
軸用孔22はボルト31の軸部を通す孔で、ナット収納部23はボルト31に螺合されたナット32を収容する凹所である。
ボルト31は、側壁11に固定された植込みボルトである。このボルト31の端部の固定は、側壁11に形成した雌ネジに緊締するものとか、溶接による固定、ナット止めなど任意の手段を採用しうる。
【0016】
上記したボルト取付構造によれば、ボルト挿通孔21に側壁11に植設されたボルトを通して内張り木材13を取付けることができ、かつボルト31にナット32を螺合するだけで大きな手間をかけることなく内張り施工を行うことができる。
したがって、また内張り木材13の劣化に伴う交換作業も簡単に行うことができる。
さらに、ナット32はナット収容部23に収容されるので、直接アンカーチェーン3と接触する不都合は生じない。
【0017】
本発明によれば、内張り木材13同士の間に隙間があることから、内張り木材13の端面を切除する面取り加工して台形断面とする二次加工が必要なくなる。そのため、少ない工数で錨鎖庫1への内張り施工が行える。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は自力航行する船舶のほか、自力航行力のない艀や、係船設備、人口島、廃棄物処理設備や風力発電設備の浮体構造物、津波避難シェルターなど一切の洋上浮体構造物においても、アンカーおよびアンカーチェーンを装備するものなら、その錨鎖庫に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0019】
1 錨鎖庫
2 アンカー
3 アンカーチェーン
4 揚錨機
5 上甲板
11 側壁
12 木製内張り
13 内張り木材
21 ボルト挿通孔
22 軸用孔
23 ナット収納部
【要約】
【課題】内張り木材の二次加工の必要がない船舶等の錨鎖庫を提供する。
【解決手段】丸型の錨鎖庫1において、鋼板製の円筒形側壁の内面に木製内張り12が設けられており、木製内張り12を構成する複数本の内張り木材13はその断面形状が四角形であって、各内張り木材13が互いに隙間をあけて側壁11の内面に取付けられている。内張り木材13は、縦方向において間隔をあけて複数個のボルト挿通孔21が穿孔され、ボルト挿通孔21は、ボルトを通す軸用孔22とその外面部に同芯に形成されたナット収納部23からなる。隙間は、格納するアンカーチェーン3の径よりも小さい。内張り木材13同士の間に隙間があることから、内張り木材13の端面を切除する面取り加工して台形断面とする二次加工が必要なくなる。そのため、少ない工数で錨鎖庫1への内張り施工が行える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5