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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】光学システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 9/12 20060101AFI20221114BHJP
   H04B 10/70 20130101ALI20221114BHJP
【FI】
H04L9/12
H04B10/70
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021142650
(22)【出願日】2021-09-01
(65)【公開番号】P2022155437
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】2104518.2
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ ピッタルーガ
(72)【発明者】
【氏名】ジリアン ユアン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジェームス シールズ
【審査官】青木 重徳
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-516987(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0130888(US,A1)
【文献】特開2022-101425(JP,A)
【文献】Mirko Pittaluga et al.,600 km repeater-like quantum communications with dual-band stabilisation,areXiv:2012.15099v1 [quant-ph],[オンライン],2020年12月30日,(検索日 令和4年9月30日)、インターネット:<URL: https://arxiv.org/pdf/2012.15099v1.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 9/12
H04B 10/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
THE ACM DIGITAL LIBRARY
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学システムであって、
第1の光信号を第1の光路に沿って干渉ユニットに出力し、第2の光信号を第2の光路に沿って前記干渉ユニットに出力するように構成されたエミッタを備え、前記干渉ユニットは、前記第1の光信号と前記第2の光信号を干渉させるように構成されており、
前記エミッタのコヒーレンス長が、第1の光路と第2の光路との経路差よりも長く、前記第1の光路と前記第2の光路との間に少なくとも1kmの経路差がある、光学システム。
【請求項2】
第1のノードおよび第2のノードをさらに備え、前記第1のノードは、前記第1の光路の少なくとも一部を形成し、前記第2のノードは、前記第2の光路の少なくとも一部を形成する、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記エミッタは前記第1のノード内に位置しており、前記第2の光路は、前記第1のノード内の前記エミッタから、前記第2のノードを通り前記干渉ユニットまで延びている、請求項2に記載の光学システム。
【請求項4】
第1のエンコーダが前記第1のノード内に位置し、第2のエンコーダが前記第2のノード内に位置しており、前記第1のエンコーダは、前記第1の光信号を受信し、前記第1のエンコーダから出力される前記第1の光信号が位相で符号化されるように前記第1の光信号を位相で符号化するように構成されており、
前記第2のエンコーダは、前記第2の光信号を受信し、前記第2のエンコーダから出力される前記第2の光信号が位相で符号化されるように前記第2の光信号を位相で符号化するように構成されており、
前記干渉ユニットは、前記符号化された第1の光信号と前記符号化された第2の光信号を干渉させるように構成されている、請求項2または3に記載の光学システム。
【請求項5】
前記第1の光信号および前記第2の光信号は、連続波(CW)信号であり、前記第1のエンコーダは、前記第1の光信号からパルス信号を生成するように構成され、前記第2のエンコーダは、前記第2の光信号からパルス信号を生成するように構成されている、請求項4に記載の光学システム。
【請求項6】
各パルスが、平均して1光子以下を含むように構成されている、請求項5に記載の光学システム。
【請求項7】
前記エミッタは、n個の異なる波長で信号を出力するように構成されており、ここでnは少なくとも2の整数であり、前記第1の光信号にn個の異なる波長ができ、前記第2の光信号にn個の異なる波長ができる、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項8】
前記システムは、量子通信システムとして構成されており、前記干渉ユニットは、検出器ノード内に位置しており、前記検出器ノードは処理回路を備え、前記処理回路は、前記干渉ユニットにおいて干渉を測定することによって、前記第1の光信号および前記第2の光信号のエンコーダ位相についての情報を決定するように構成されている、請求項4乃至7のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項9】
前記干渉ユニットは、前記第1の光信号および前記第2の光信号の1次の干渉を実行するように構成されている、請求項8に記載の光学システム。
【請求項10】
前記第1のノード、前記第2のノード、および前記検出器ノードは、ツインフィールド量子鍵配送を使用して量子通信を実施するように構成されている、請求項9に記載の光学システム。
【請求項11】
前記エミッタは、前記検出器ノード内に位置していない、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項12】
前記エミッタは、高フィネス光キャビティに固定されたレーザを備える、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項13】
前記エミッタは、基準信号を出力するように構成されている、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項14】
前記基準信号は連続波信号である、請求項13に記載の光学システム。
【請求項15】
前記基準信号は、前記符号化された第1の光信号および前記符号化された第2の光信号とは異なる波長を有する、請求項13または14に記載の光学システム。
【請求項16】
前記検出器ノードは、前記干渉ユニットにおいて前記基準信号を干渉させ、前記光学システムのためのチューニングパラメータを得るように構成されている、請求項13乃至15のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項17】
前記検出器ノードは、前記チューニングパラメータを入力として使用する制御ユニットを備え、前記制御ユニットは、位相ドリフトを除去するように前記光学システムを調節するように構成されている、請求項16に記載の光学システム。
【請求項18】
前記制御ユニットは、能動的安定化および受動的位相安定化の少なくとも1つを使用して前記光学システムを調節するように構成されている、請求項17に記載の光学システム。
【請求項19】
前記第1のノードと前記第2のノードは、周波数安定化ファイバによってリンクされている、請求項2に記載の光学システム。
【請求項20】
光通信の方法であって、
第1の光信号をエミッタから第1の光路に沿って干渉ユニットに出力し、第2の光信号を同じエミッタから第2の光路に沿って前記干渉ユニットに出力することと、
前記干渉ユニットにおいて前記第1の光信号と前記第2の光信号を干渉させることと
を備え、
前記エミッタのコヒーレンス長が、第1の光路と第2の光路との経路差よりも長く、前記第1の光路と前記第2の光路との間に少なくとも1kmの経路差がある、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、概して、光学システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学システムにおいて、情報が光信号の位相に記憶され得る。このような光信号は、光チャネルを使用して離れたノード間で送信される。光チャネルは、位相雑音の一因である位相ドリフトをもたらし得る。
【0003】
量子通信システムでは、情報は、単一光子など、符号化された単一量子によって送信機と受信機との間で送られる。情報のビットが、光子の性質、例えば偏光、位相、時間、またはエネルギー上に符号化され得る。
【0004】
量子鍵配送(QKD)は、多くの場合「アリス」と呼ばれる送信機と、多くの場合「ボブ」と呼ばれる受信機の二者間での暗号鍵の共有をもたらす技法である。この技法の魅力は、多くの場合「イブ」と呼ばれる不正な盗聴者に知られた可能性がある最大情報を定量化することができるということである。多くの形態のQKDにおいて、アリスとボブは、ビット値を符号化するための2つ以上の非直交基底を使用する。これらの基底は、量子通信中は秘匿に保たれ、ボブによってすべての測定が完了した後にのみ公開議論で開示される。量子力学の法則によれば、符号化基底の事前知識なくイブが光子を測定すると、一部の光子の量子状態に不可避の変化が生じる。これにより、アリスとボブとの間で送られるビット値に誤差が生じることになる。したがって、それらの共通のビット列の一部を比較することによって、アリスとボブは、イブが獲得した可能性のある情報を決定することができる。いくつかのQKD方法には、検出器において受信した光子の位相の正確な測定が必要である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】一実施形態による光学システムの概略図である。
図2】量子通信システムとして構成された一実施形態による光学システムの概略図である。
図3】基準信号を有する一実施形態による光学システムの概略図である。
図4図3のシステムにおいて使用するのに好適な通信ノードの概略図である。
図5図4のシステムにおいて使用するのに好適な符号化ユニットの概略図である。
図6】さらなる実施形態によるシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
一実施形態では、光学システムが提供され、本光学システムは、
第1の光信号を第1の光路に沿って干渉ユニットに出力し、第2の光信号を第2の光路に沿って干渉ユニットに出力するように構成されたエミッタを備え、干渉ユニットは、第1の光信号と第2の光信号を干渉させるように構成されており、
エミッタのコヒーレンス長は、第1の光路と第2の光路との経路差よりも長く、第1の光路と第2の光路との間に少なくとも1kmの経路差がある。
【0007】
2つの光信号の干渉によって情報を通信することに依拠する光学システムは、量子通信、特に量子鍵配送(QKD)への応用により、よりユビキタスになりつつある。QKDで使用することができるシステムの1つのタイプは、中継ノードまたは検出器ノードを使用して2つの通信ノード間の通信を可能にするものである。2つの通信ノードは、位相で符号化された光パルスを中継ノードに送り、中継ノードによって測定された干渉の結果から、2つの通信ノード間で鍵を共有することができる。しかしながら、パルスを符号化するために使用された位相についての情報を干渉測定値から決定することができるように、そのようなシステムは、典型的には、対照的なレイアウトを有する。これにより、システム内の光信号のエミッタの位置の場所に関して、システムに特定の設計制約が与えられる。しかしながら、上記システムは、1kmを超える非常に長いコヒーレンス長を有するエミッタを使用する。これにより、システムにおける高度な非対称性が可能となる。
【0008】
さらなる実施形態では、第1の経路と第2の経路との間の差は、少なくとも10km、または少なくとも50km、または少なくとも100kmである。
【0009】
上述のように、本システムは、第1のノードおよび第2のノードを備え得、第1のノードは、第1の光路の少なくとも一部を形成し、第2のノードは、第2の光路の少なくとも一部を形成する。より長いコヒーレンス長のレーザにより、エミッタが通信ノードのうちの一方に設けられることが可能となり、例えば、エミッタは第1のノード内に位置し得、その結果、第2の光路は、第1のノード内のエミッタから、第2のノードを通り干渉ユニットまで延びている。
【0010】
第1のノードと第2のノードは、標準的な光ファイバによってリンクされてもよいし、または、ファイバを通るときの信号の位相ドリフトを防止する周波数安定化ファイバによってリンクされてもよい。
【0011】
上述のように、本光学システムは、第1のノード内に位置する第1のエンコーダと、第2のノード内に位置する第2のエンコーダとを備える量子通信システムであり得、第1のエンコーダは、該第1の光信号を受信し、該第1のエンコーダから出力される第1の光信号が位相で符号化されるように該第1の光信号を位相で符号化するように構成されており、
第2のエンコーダは、該第2の光信号を受信し、該第2のエンコーダから出力される第2の光信号が位相で符号化されるように該第2の光信号を位相で符号化するように構成されており、
該干渉ユニットは、符号化された第1の光信号と符号化された第2の光信号を干渉させるように構成されている。
【0012】
上述のように、これにより可能となる長いコヒーレンス長および非対称性に起因して、エミッタは、干渉ユニットと同じノードに設けられる必要がない。
【0013】
必要とされる長いコヒーレンス長を提供することができる可能なレーザは、狭い放出線幅のレーザであり、これは、例えば、レーザを高フィネス光キャビティ(high finesse optical cavity)に固定することによって得ることができる。このタイプのレーザ光源の例には、Stable Laser Systems社のSLS-INT-1550-200-1、またはMenlo Systems社のORS-Cubic超高安定レーザがある。
【0014】
上述したエミッタは、「量子信号」を形成するように処理されることになる信号を放出するために使用されるエミッタとすることができる。そのような量子信号は、単一光子以下の程度に減衰されるパルス信号であり、それにより、不正な盗聴者が信号を読み取るために信号を傍受すると、信号が破壊される結果となる。盗聴者は信号を再生成することができるが、盗聴者が100%の精度で位相を測定することができないので、信号の再生成により、誤差率が検出可能なレベルに増加することになる。
【0015】
エミッタは、連続波「CW」エミッタとすることができるし、またはパルス信号を放出することができる。エミッタがCWエミッタである場合、CW信号は、符号化前または符号化中のいずれかにパルスに処理されることになる。一実施形態では、各パルスは、平均して1光子以下を含むように構成される。
【0016】
一実施形態では、本システムが量子通信システムとして構成されているとき、干渉ユニットは、検出器ノード内に位置しており、該検出器ノードは処理回路を備え、該処理回路は、干渉ユニットにおいて干渉を測定することによって、第1の光信号および第2の光信号のエンコーダ位相についての情報を決定するように構成されている。処理回路は、干渉ユニットから干渉測定の結果を受信するために検出器に結合され得る。
【0017】
一実施形態では、干渉ユニットは、該第1の光信号および該第2の光信号の1次の干渉(first order interference)を実行するように構成されている。第1のノード、第2のノード、および検出器ノードは、ツインフィールド量子鍵配送「TF-QKD」を使用して量子通信を実施するように構成され得る。しかしながら、他のプロトコルもサポートされ得る。
【0018】
一実施形態では、エミッタは、n個の異なる波長で信号を出力するように構成され得、nは少なくとも2の整数であり、その結果、第1の光信号にn個の異なる波長ができ、第2の光信号にn個の異なる波長ができる。したがって、本光学システムにより、多くの量子チャネルが並列で動作し、各チャネルがそれ自体の周波数を有することが可能となる。
【0019】
上記光学システムでは、エミッタは基準信号を出力するように構成され得る。1つの実施形態では、基準信号はCW信号であり、これにより、量子システムについての大部分の情報が基準信号によって送信されることが可能となる。
【0020】
基準信号は、符号化された第1の光信号および符号化された第2の光信号とは異なる波長を有し得る。これにより、基準信号が、符号化された信号と並列で送られることが可能となる。しかしながら、符号化されたパルスと同じ周波数で基準信号を送り、符号化されたパルスと基準信号を時間多重化することが可能である。
【0021】
一実施形態では、検出器ノードは、干渉ユニットにおいて基準信号を干渉させ、該光学システムのためのチューニングパラメータを得るように構成されている。次いで検出器ノードは、該チューニングパラメータを入力として受信する制御ユニットをさらに備え得、該制御ユニットは、位相ドリフトを除去するように該光学システムを調節するように構成されている。制御ユニットは、能動的安定化および受動的安定化の少なくとも1つを使用して該光学システムを調節するように構成されている。能動的安定化中、制御ユニットは、第1の光路と第2の光路との間の位相ドリフトを適応させるようにファイバストレッチャまたは位相変調器を制御するように構成される。受動的制御の場合、制御ユニットは、干渉測定の結果を修正する、例えば、基準信号から決定された位相ドリフトに依存して結果を除去する、または結果を逆にするように構成される。安定化により、第1の経路の全体と第2の経路の全体との間の位相ドリフトを補償することが可能となる。
【0022】
さらなる実施形態では、光通信の方法が提供され、本方法は、
第1の光信号をエミッタから第1の光路に沿って干渉ユニットに出力し、第2の光信号を同じエミッタから第2の光路に沿って干渉ユニットに出力することと、
干渉ユニットにおいて第1の光信号と第2の光信号を干渉させることと
を備え、
エミッタのコヒーレンス長は、第1の光路と第2の光路との経路差よりも長く、第1の光路と第2の光路との間に少なくとも1kmの経路差がある。
【0023】
図1は、簡略化した光ネットワークの概略図である。光ネットワークはエミッタ1を備え、このエミッタ1は、後述する要件を満たすコヒーレンス長を有するレーザである。エミッタ1の出力は、第1の光信号と第2の光信号に分割され、第1の光信号は第1の光路3を通り、第2の光信号は第2の光路5を通る。第1の光路3および第2の光路5は、検出器ノード7で終端する。検出器ノードは、第1の光信号と第2の光信号を干渉させる第1の干渉ユニット9を備える。
【0024】
第1の光路3および第2の光路5は、光ファイバによって提供され得る。しかしながら、第1の光路および第2の光路はまた、自由空間経路または部分的に自由空間である経路であり得る。
【0025】
干渉ユニット9の出力は、第1の光信号と第2の光信号の位相関係に依存して、検出器11または13のいずれかに方向付けられる。検出器11および13については、第1の干渉ユニットと共に詳細に後述する。
【0026】
エミッタ1は、コヒーレンス長を有することになる。レーザのコヒーレンス長とは、光出力が、同じレーザによって放出された最新の光出力とのコヒーレンスを依然として維持しながら移動することができる最大距離を示す量である。したがって、干渉ユニットにおいて測定された干渉から、第1および第2の光信号がエミッタを出たときのそれらについての情報を取得することができるように、第1の光路3と第2の光路5の長さの差が、エミッタ1のコヒーレンス長よりも短くなる必要がある。
【0027】
図2は、簡略化した量子通信システムに適用された、図1のシステムの変形形態を示す。不要な繰り返しを避けるために、同様の参照番号を使用して同様の特徴を示す。
【0028】
システムは、第1の通信ノード21および第2の通信ノード23を備える。実際には、図2のシステムは、第1の通信ノード21と第2の通信ノード23との間で量子鍵を共有するために使用することができる。
【0029】
エミッタは、該第1の光路3に沿う該第1の光信号と、第2の光路を通る第2の光信号を形成する光信号を出力する。符号化ユニット25が、該第1の光路3内かつ該第1の通信ノード21内に設けられる。符号化ユニット25は、エミッタ1からの光信号を、ランダムに変化する位相を用いて符号化する位相符号化ユニットである。光信号は、パルス信号または連続波(CW)信号であり得る。CW信号の場合、信号はパルスへと刻まれ、またはチョップされる。これは、エンコーダ21において、または符号化前に実行され得る。
【0030】
第2の光路5は、第2のノード23を通る。第2のノード23は、第2の符号化ユニット27を備え、第2の光路5は、該第2の符号化ユニット27を通る。第2の符号化ユニット27もまた、第2の光信号を、ランダムに変化する位相を用いて符号化する位相符号化ユニットである。第2の経路の光信号は、パルス信号または連続波(CW)信号であり得る。CW信号の場合、信号はパルスへと刻まれ、またはチョップされる。これは、第2の符号化ユニット27において、または符号化前に実行され得る。一実施形態では、第2の光信号は、エミッタから第2のノードに移動するときはCW信号である。次いで信号は、第2のノード23において刻まれ、またはチョップされる。
【0031】
一実施形態では、TF-QKD方式にしたがって、アリス21とボブ23と呼ばれる、第1の通信ノード21と第2の通信ノード23との間で鍵が共有される。ツインフィールドQKD(TF-QKD)方式では、光場の電磁位相で情報が符号化される。
【0032】
アリス21とボブ23が鍵を交換することが望ましい。アリス21とボブ23は、量子受信機である検出器ノード7に送信する。2つの光送信機アリス21とボブ23は、通常「チャーリー」と呼ばれる検出器ノード7に光パルスを送り、この検出器ノード7は、それらを光学的に結合して測定する。図2の配置では、アリスの信号とボブの信号両方のエミッタがアリスのノード21内に設けられている。この場合、アリスは、ノード21から検出器ノード7に信号を送信し、ボブは、アリスから第2の光信号を受信し、この信号を符号化して信号を生成し、検出器ノード7に送信する。
【0033】
アリス21とボブ23は、公表されたチャーリーのカウントの結果から秘密鍵を引き出すことができる。TF-QKDでは、ユーザであるアリス21とボブ23の両方が光送信機として構成され、したがって、セキュリティが光受信機の脆弱性によって脅かされない。光送信機の保護は、光受信機の保護よりもはるかに容易である。前者の場合、光パルスが信用できるユーザによってローカルで準備されるのに対して、後者では、光パルスは、場合によってはシステムのセキュリティを破ることに関心のある、信用できない何者かによって準備されて、外部から受信される。チャーリー7が悪であり、TF-QKDプロトコルの正しい実行に従わない場合、2人の誠実なユーザであるアリス21とボブ23が、量子力学の法則によって非常に高い確率でチャーリーの不正の試みを常に検出することができることは注目に値する。
【0034】
この簡略化したシナリオでは、共通の固定位相基準φが、常にすべてのユーザに利用可能である。位相基準は、誰にでも共通で一定であるので、一般性を失うことなく、φ=0とすることができる。アリス21は、位相ロック光源1と第1の符号化ユニット25内の位相変調器を有する。位相ロック光源1は、定位相で光パルスを生成し、それらを符号化ユニット25に出力する。
【0035】
ボブのノード23は、アリス21と同様に構成される。しかしながら、ボブは、アリスから第2の光信号を受信し、この信号を符号化する。
【0036】
一実施形態では、アリス21は、パルスを生成するためにエミッタ1を使用して第1の光パルスを準備し、次いで、符号化ユニットを使用して、光パルスと位相基準φとの電磁位相差でアリスの秘密情報を符号化する。この特定の例では、BB84プロトコル[C. H. Bennett and G. Brassard, Proc. of IEEE Int. Conf. on Comp. Sys. Sign. Process. (IEEE, New York, 1984), pp. 175-179]の符号化が考慮され、ここで、アリスは、ZまたはXのいずれかであるランダムな「基底」を、それぞれ位相値α=0またはα=π/2を選択することによって符号化し、0または1のいずれかであるランダムな「ビット」を、それぞれ位相値β=0またはβ=πを選択することによって符号化する。
【0037】
次いで、アリスによって準備された光パルスは、総電磁位相α+βを運ぶ。次いでアリスは、次のパルスに移動し、この手順を繰り返す。ボブは、アリス21から第2の光路5を介して受信したパルスに対して、位相αおよびβで同様のステップを実行する。アリス21とボブ23のノードを出るパルスの総電磁位相は、以下のようにそれぞれφおよびφによって示される。
アリス:φ=α+β (1)
ボブ:φ=α+β (2)
【0038】
すべての位相が安定しているので、アリス21とボブ23の位相値は、通信チャネルを伝播する間一定のままである。光パルスがチャーリーの非偏光ビームスプリッタに到達すると、いわゆる「1次の干渉」を受け、この1次の干渉は、二重スリット干渉実験や標準的なQKDでみられるものと同じ種類のものである。これは、決定論的に干渉するために、アリスとボブのパルスの位相が、以下の干渉条件を満足するべきであることを意味する。
φ-φ=0 mod π (3)
ここで、「mod π」は、「πを法とする加算」を意味する。ビットに関連付けられた位相値が0またはπのいずれかであるので、式(3)は、この場合、基底の一致条件について以下の条件に減ずる。
α-α=0 (4)
【0039】
この条件を満足した場合、
β-β=0 (5)
であるとき、光は検出器11または13の一方に接続されたポートから現れるが、
β-β=π (6)
であるとき、光は検出器11または13の他方に接続されたポートから現れる。したがって、チャーリーがカウントを公表し、かつアリスとボブが基底を公表した後、アリスとボブは、基底が一致するすべての場合において他方のユーザによって準備されたビット値を再構成することができる。基底が一致しない場合、標準のBB84プロトコルにあるように、ユーザはデータを破棄する。一実施形態では、チャーリーは、その検出器のうちの正確に1つがクリック(clicked)したすべてのインスタンスを公表する。これらのインスタンスについて、チャーリーは、どちらの検出器がクリックしたかも公表する。
【0040】
チャーリーが、両方の検出器がクリックしたときも公表する別の可能性がある。これらのダブルクリックは、最終鍵には無用であり、以下の2つの方法で扱うことができる。
1)アリスとボブは、チャーリーがダブルクリックを公表したラン(runs)を破棄する。
2)アリスとボブは、チャーリーのどちらの検出器がクリックしたかをランダムに判定することによって、ダブルクリックをシングルクリックに変換する。
【0041】
セキュリティはどちらの場合も同じである。一例では、検出器11および13は、単一光子検出器である。
【0042】
一例によれば、検出器11および13は、超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD)である。さらなる例によれば、SNSPDは、2.9Kに冷却されるSingle Quantum社のEOS 410 CSである。
【0043】
しかしながら、干渉がパルスの符号化についての有用な情報を運ぶことを可能にするためには、第1の光路3と第2の光路5との経路差が、エミッタ1のコヒーレンス長よりも短くなる必要がある。この要件は、3つのノード配置を有する量子通信システムが、第1の光路の長さと第2の光路の長さが平衡している対称配置を有するということになる傾向にあった。
【0044】
しかしながら、例えば、高フィネスキャビティに固定されたレーザを備える、コヒーレンス長が長いエミッタを使用した場合、1km以上の経路不一致を許容することができる。これにより、エミッタ1を、第1の通信ノード21または第2の通信ノード23の一方に設けることが可能となり、これは、システムの設計全体を簡易にする。
【0045】
上記説明は、パルスの符号化を焦点としていた。しかしながら、符号化されない送られる追加の光信号を、基準信号として使用することも可能である。この基準信号を、CW信号として、またはパルス信号として送ることができる。
【0046】
図3は、一実施形態によるさらなる量子通信システムを示す。
【0047】
図3は、信号および基準パルスを有する、一実施形態による非対称量子システムを示す。上記図2に関連して説明したシステムと同様に、システム401は、3つの通信ノード、すなわち、2つの送信ノード「アリス」と「ボブ」、および単一の受信ノード「チャーリー」を備える。しかしながら、送信ノードアリスとボブの一方のみがエミッタを備える。
【0048】
図3の量子システム401は、第1の通信ノード403および第2の通信ノード405を備える。図からわかるように、第1および第2の通信ノードは、異なる構成要素を備える。システム401はまた、第3の検出器ノード407を備える。
【0049】
検出器ノード407は、2つの送信ノード403および405に対して中央位置に設けられるように図示されているが、検出器ノード407の位置は中央でなくてもよいことを理解されたい。特に、検出器ノード407は、一方の通信ノード403のほうに近接して、したがって、他方の通信ノード405からより離れて設けられてもよい。
【0050】
第1の通信ノード403は、第1の光チャネル413を通して検出器ノードに通信可能に結合され、第2の送信ノード405は、第2の光チャネル415を通して受信ノードに通信可能に結合される。一実施形態では、第1の光チャネル413および第2の光チャネル415は光ファイバである。さらに、図3に示すように、第1の光チャネル413の経路長は、第2の光チャネル415の経路長よりも長い。しかしながら、図3では、第1の光路が第1の光チャネル413を備え、第2の光路が、サービスファイバ409および第2の光チャネル415を備えることに留意されたい。第1の光路および第2の光路はまた、異なる経路長も有する。
【0051】
システム401は、第1の通信ノード403と第2の通信ノード405との間に設けられたサービスファイバ409も備え、光信号が第1の通信ノード403から第2の通信ノード405に通信されることを可能にする。一実施形態によれば、サービスファイバ409は、標準的な光ファイバであり得、周波数安定化などの特別な性質を有する必要はない。しかしながら、代替の実施形態では、サービスファイバは、周波数安定化サービスファイバ509(図5)であってもよい。サービスファイバ409の機能について以下でさらに説明する。
【0052】
この実施形態では、第1の通信ノード403は、周波数ν、ν、…、νで光信号を生成するように構成された複数の光源404を備える。しかしながら、第1の通信ノード403が単一の光源404を備えてもよいことを理解されたい。この実施形態では、光源404の各々は、第1の光路と第2の光路との経路不一致よりも長いコヒーレンス長を有するコヒーレント光源である。
【0053】
ここで、第1の光路は、遅延ファイバ416を含む第1の光チャネル413を備える。第2の光路は、サービスファイバ409および第2の光チャネル415を備える。光源404は、複数の光パルスを生成するように構成される。光信号は、互いの波長および/または位相と固定波長および/または位相関係にあり得る。代替的に、光源404は、独立した光源であり得、生成された光信号が、互いに固定波長および/または位相関係になくてもよい。
【0054】
図3では、システム全体の主な構成要素を明確に示すために、符号化ユニット(図2の25)は示されていない。しかしながら、図4は、エンコーダを有する第1の通信ユニットの可能な配置を示す。図3の光学部品411は、図4のビームスプリッタ、波長分割マルチプレクサ、およびエンコーダを表す。
【0055】
図4のシステムには2つのエミッタがあり、信号エミッタLS1 861は、第1の波長を有する光放射を放出する。この例では、LS1はCW放射を出力し、このCW放射は後にパルス放射に変換される。信号エミッタLS1 861の出力はビームスプリッタ362によって分割され、このビームスプリッタ362は、光信号を第1の光信号と第2の光信号に分割し、第1の光信号を、エンコーダ363を通して第1の波長分割マルチプレクサ364に方向付ける。第2の光信号は、ビームスプリッタ362から第2の波長分割マルチプレクサ365に向けて方向付けられる。
【0056】
第1の波長分割マルチプレクサは、第1の光路に設けられ、第2の波長分割マルチプレクサは、第2の光路に設けられる。
【0057】
エンコーダの可能な実装形態を図5に示す。入来CW光は、早くも後続の変調器871の光軸と偏光が揃って到着する。エンコーダ内の第1の構成要素は、3つの可能な強度レベル(u、v、w)を有し、1GHzレートで刻んで250psの長さのパルスにするために使用される、3つの強度変調器(IM)871であり、いわゆるデコイ状態プロトコルの使用を可能にする。異なる強度レベル間の強度率を、IMを駆動するAC振幅によって調整することができる。
【0058】
次いで2つの位相変調器(PM)873が光パルスの位相を符号化するために使用される。このシステムでは、1つのみのPMを使用するのではなく2つのPMが縦続接続されて、それらのRF信号振幅を低減する。各PMを
【数1】
の変調範囲に制限することによって、[0,2π)範囲全体をカバーし、およびその駆動信号振幅と直線である位相変調を達成することが可能である。各PMが8ビットDACによって駆動され、2つが縦続接続されて、2π位相範囲にわたって512個の異なる位相値を符号化することができる。
【0059】
すべての変調器が、各ユーザに1つずつの、2つの同期した12GSa/s波形発生器によって駆動され、この波形発生器は、25040パルスの長さの擬似ランダムパターンを符号化するようにプログラムされている。
【0060】
PMの後には、電動偏光コントローラ(EPC)875、可変光減衰器(VOA)877、および99:1ビームスプリッタ(BS)879が続く。EPCは、チャネルを通して送信した後のλ光子の偏光を制御するために使用される。各ユーザは、チャーリーにおいて好ましい光軸に沿って量子信号を揃える連続偏光最適化ルーチンを有する。
【0061】
VOAは、BSの強力な出力においてモニタリングされる安定した光出力を有するようにVOAを連続的に調整するフラックス較正制御ループを通して、量子信号のフラックスをセットしてから量子チャネルに注入する。
【0062】
図4の第1の通信ユニットには、基準エミッタと呼ばれる第2のエミッタLS2 865がある。この基準エミッタ865の出力はビームスプリッタ866によって分割され、ビームの一方の部分が第1の波長分割マルチプレクサ364に向けて方向付けられ、そこで、符号化された光信号と多重化される。ビームスプリッタ866からの基準信号の他方の部分は第2の波長分割マルチプレクサ365に向けて方向付けられ、そこで、符号化されていない光信号と多重化されてサービスファイバに沿って送られる。この実施形態では、第2の波長分割マルチプレクサ365に送られる基準信号と光信号の第2の部分とが、第2の送信ノードに渡されるCW信号である。
【0063】
第1の光信号は、第1の光チャネル413を通して受信ノードに送信され、第2の光信号は、サービスファイバ409を通して第2の送信ノード405に送信される。サービスファイバ409は、光信号を光学的に増幅するように構成され得る、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)などの1つまたは複数の波長増幅器を備え得る。しかしながら、一実施形態では、サービスファイバ409は、信号がファイバを通るときの周波数の変化を補償することを可能とする周波数安定化を含まない。
【0064】
図4は、2つのエミッタ、すなわち、1つの信号エミッタと1つの基準エミッタを示す。しかしながら、第1の通信ノードが複数の信号エミッタを備えることが可能であり、その各々が異なる周波数で動作し、その各々がそれ自体のエンコーダを通る。同じエミッタから多重周波数を導出することも可能である。
【0065】
システムのこの実施形態では、第2の通信ノード405は光源を備えない。代わりに、第2の通信ノード405は、第1の通信ノード403から光信号を受信するように構成される。
【0066】
一実施形態では、第2の送信ノードは、光波長デマルチプレクサ419を備え、これは、基準信号を含む受信した光信号を、別々に扱うことができるように個別の光信号に逆多重化する。
【0067】
特定用途の要件にしたがって、異なる光信号が光学的に操作され得る。一実施形態では、信号の各々(基準信号を除く)が、図5を参照して説明した符号化ユニットを通して方向付けられる。
【0068】
光信号は再生されてもよく、光再生技法の例には、EDFA、光位相ロックループ、光注入ロッキング、誘導ラマン散乱、および誘導ブリュアン散乱が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、再生ユニット406は、コヒーレント光再生ユニットであり得る。光信号の再生により、サービスファイバによって出力された周波数の増幅が可能となる。これは、サービスファイバの出力周波数(または複数の周波数)に一致する周波数を出力するように構成されたローカルコヒーレントエミッタを使用することによって達成することができる。
【0069】
実施形態では、光信号は、光学的な操作も再生もされなくてよく、光マルチプレクサ421に直接中継され、第2の光チャネル415を通して受信ノードに送信され得る。
【0070】
簡略化のため、これについては図3に示していない。しかしながら、光マルチプレクサ421に入る前に、第2の光信号(または複数の信号周波数がある場合は複数の信号)は、図5を参照して説明したタイプのエンコーダを各々通る。
【0071】
図5のエンコーダでは、強度変調器を使用して、CW信号をパルスにチョップまたは刻む。第1の送信ノードおよび第2の送信ノードのエンコーダ内の強度変調器は同期されて、第1の送信ノードおよび第2の送信ノードからのパルスが干渉ユニットに同時に到着する。
【0072】
検出器ノード407は、第1の光信号を第1の通信ノード403から受信し、第2の光信号を第2の通信ノード405から受信するように構成される。検出器ノード407は、2つの光信号を干渉させる干渉ユニット423を備え、結果として生じる信号は、光デマルチプレクサ425によって個別の光信号に逆多重化される。個別の光信号は、光検出器427によって検出される。
【0073】
検出器ノード407はまた、安定化ユニット422を備え得る。安定化ユニット422は、光信号が干渉ユニット423において干渉する前に、第1の送信ノード403および第2の送信ノード405から受信した光信号を安定化させるように構成される。
【0074】
受信した光信号は、能動的安定化または受動的安定化技法を使用して安定化され得る。
【0075】
第1の光路に沿って移動する信号および第2の光路に沿って移動する信号の両方が、パルスの干渉する能力に影響を及ぼすチャネル内の位相ノイズまたは位相ドリフトを受けることになる。これに対処するために、チャネルを安定化させる。基準信号間の干渉を測定することによって、チャネル間の誤差を決定することが可能である。
【0076】
能動的安定化では、ファイバストレッチャ、位相変調器、または同様のデバイスが光路の1つに設けられ、チャネル間の位相ドリフトを最小限にするために使用される。1つの実施形態では、能動的安定化は、2つの段階、すなわち、位相変調器を備える速い段階とファイバストレッチャを備える遅い段階を備える。2つの段階を共に使用して、位相ドリフトを補正することができる。位相ドリフトの測定値を、基準信号の干渉結果から決定することができる。位相ドリフトを受動的に補償することも可能である。これは、測定された信号を後処理することによって行うことができる。
【0077】
上述のように、干渉ユニットにおいて測定された干渉から、第1および第2の光信号がエミッタを出たときのそれらについての情報を得るために、信号エミッタまたは基準エミッタのいずれかであるエミッタのコヒーレンス長は、第1の光路と第2の光路との経路不一致よりも長くなる必要がある。
【0078】
一実施形態では、第1の通信ノードはさらに、図3に示す遅延ファイバ416を備え得る。遅延ファイバ416は、第1の光チャネルの有効長を増加させ、サービスファイバと光チャネルの合計長さとの経路不一致が減少するように設けられ、それにより、経路不一致は、光源のコヒーレンス長よりも短くなる。例えば、遅延ファイバの有効長は、サービスファイバの経路長に等しくてよい。超狭線幅レーザが使用される場合、遅延ファイバ416は必要ない。
【0079】
第1および第2の通信ノードが周波数安定化サービスファイバを介して接続される必要はないが、そのような配置は、例えば図6に示すように可能である。
【0080】
図6の実施形態は、図3を参照して説明したものと大部分が同一である。不要な繰り返しを避けるために、同様の参照番号を使用して同様の特徴を示す。ノードの構成は図4を参照して説明し、エンコーダの構成は図5を参照して説明したものである。
【0081】
周波数安定化サービスファイバを使用する必要はない。しかしながら、第1の送信ノード403および第2の送信ノード405を周波数安定化ファイバと接続することが可能である。周波数安定化ファイバは、ファイバに入力された周波数の回復を可能にするように構成される。放射がファイバを通るとき、ファイバ内で発生する位相ノイズにより、ファイバに入力された周波数と比較して、ファイバを出る放射の周波数に変動が生じる。周波数安定化ファイバは、ファイバによって生じた変動を測定して、この測定に基づく補正を提供することによって、ファイバによって生じた周波数の変化を能動的に補償する。周波数の変動の測定は、受信した放射をファイバの出力から入力に反射して戻し、干渉を使用して変動を測定することによって実行することができる。次いで、この測定から導出された情報を使用して補正を適用することができる。例えば、音響光学変調器(AOM)などの電気光学変調器または位相変調器を制御する高速フィードバックを使用して、周波数安定化ファイバの出力周波数を、その入力周波数と一致させることができる。
【0082】
上記についてQKDを参照して説明し、TF-QKDが例示されたが、上記実施形態は、例えばDLCZ型量子リピータおよび量子フィンガープリンティングにおける他の応用を有する。量子技術以外の応用も可能である。
【0083】
特定の実施形態について説明したが、これらの実施形態は単に例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。実際、本明細書で説明した新規のデバイスおよび方法は、様々な他の形態で具現化することができ、さらに、本明細書で説明したデバイス、方法、および製品の形態の様々な省略、置換え、および変更を、本発明の趣旨から逸脱することなく行うことができる。添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物は、本発明の趣旨および範囲内に入る形態または修正を網羅することを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6