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特許7176101香味吸引器用炭素熱源の製造方法、複合粒子、香味吸引器用炭素熱源、および香味吸引器
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  • 特許-香味吸引器用炭素熱源の製造方法、複合粒子、香味吸引器用炭素熱源、および香味吸引器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】香味吸引器用炭素熱源の製造方法、複合粒子、香味吸引器用炭素熱源、および香味吸引器
(51)【国際特許分類】
   A24D 1/22 20200101AFI20221114BHJP
【FI】
A24D1/22
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021511031
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(86)【国際出願番号】 JP2019014957
(87)【国際公開番号】W WO2020202528
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】山田 敦郎
(72)【発明者】
【氏名】小田 崇
(72)【発明者】
【氏名】光内 健太
(72)【発明者】
【氏名】渡部 正基
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-001374(JP,A)
【文献】特開2002-011346(JP,A)
【文献】特開2015-091232(JP,A)
【文献】国際公開第2006/073065(WO,A1)
【文献】特開昭62-224276(JP,A)
【文献】特開昭63-164875(JP,A)
【文献】国際公開第2016/042307(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/00-1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素粒子と炭酸カルシウム粒子とバインダーと水とを含むスラリーを原料として用いて、平均粒径D50が10~150μmであり、かつ半値幅が10~150μmである複合粒子を形成すること、
前記複合粒子と水とを含む混合物を成形して、成形体を得ること、および
前記成形体を乾燥させること
を含む、香味吸引器用炭素熱源の製造方法。
【請求項2】
前記複合粒子が、球状の形態を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複合粒子の形成が、前記スラリーを噴霧乾燥することにより行われる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記バインダーが、前記スラリーに含まれる固形分の質量に対して3~15質量%の量で前記スラリーに含まれる請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物が、前記複合粒子と、前記複合粒子に対して33~67質量%の水とを含む混合物である請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記スラリーに含まれる固形分の質量(A)と、前記スラリーに含まれる液体の質量(B)との比率(A:B)が、1:1~1:9である請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記炭素粒子が、2~100μmの平均粒径を有する請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記炭素粒子が、前記スラリーに含まれる固形分の質量に対して20~90質量%の量で前記スラリーに含まれる請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記炭酸カルシウム粒子が、100μm以下の平均粒径を有する請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記炭酸カルシウム粒子が、前記スラリーに含まれる固形分の質量に対して5~75質量%の量で前記スラリーに含まれる請求項1~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記バインダーが、セルロース誘導体である請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記成形が、圧縮成形により行われる請求項1~11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12の何れか1項に記載の方法により製造される香味吸引器用炭素熱源。
【請求項14】
前記炭素熱源が、140~250Nの強度および0.6~1.0g/cm3の密度を有する請求項13に記載の香味吸引器用炭素熱源。
【請求項15】
請求項13または14に記載の炭素熱源を含む香味吸引器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味吸引器用炭素熱源の製造方法、複合粒子、香味吸引器用炭素熱源、および香味吸引器に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素熱源を先端に備え、炭素熱源の燃焼熱によりたばこ充填材を加熱する香味吸引器が知られている。香味吸引器に用いられる炭素熱源は、炭素粒子とバインダー等の添加剤とを含む原料スラリーを押出成形し、乾燥させることにより製造することができる。
【0003】
日本国特開昭62-224276号公報は、炭素熱源の燃焼性を向上させることを目的として、炭素熱源の改良された製造方法を開示する。具体的には、日本国特開昭62-224276号公報は、本願の図1に示されるとおり、炭素粒子1aと、バインダーを含む水溶液(分散媒)1bとを含む原料スラリー1をシート状に延ばして乾燥させ、得られたシート2を粉砕し、得られた粉砕物3に水を加えて成形し、得られた成形体4を乾燥させることにより、炭素熱源5を製造することを開示する。
【0004】
WO2006/073065号公報は、炭素粒子と炭酸カルシウム粒子とバインダーとを含む組成物から炭素熱源を製造すること、かかる炭素熱源は、炭素熱源の燃焼時に発生する一酸化炭素の量を減少させることができることを開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、日本国特開昭62-224276号公報に記載される方法に従って、炭素熱源を製造したところ、成形し難いという問題に遭遇した。そこで、成形時に添加される水の量を増やして(例えば、粉砕物に対して34質量%の量で)成形を試みると、成形機に成形材料が付着してしまった(後述の比較例1を参照)。成形時に一般に使用される量(例えば、粉砕物に対して30重量%)の水を加えて成形すると、成形し難く、得られた炭素熱源は、着火性に問題は見られなかったが、強度が十分でなかった(後述の比較例2を参照)。
【0006】
したがって、本発明は、製造容易性に優れ、且つ高い強度および優れた着火性を有する香味吸引器用炭素熱源に関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の側面によれば、
炭素粒子と炭酸カルシウム粒子とバインダーと水とを含むスラリーを原料として用いて、平均粒径D50が10~150μmであり、かつ半値幅が10~150μmである複合粒子を形成すること、
前記複合粒子と水とを含む混合物を成形して、成形体を得ること、および
前記成形体を乾燥させること
を含む、香味吸引器用炭素熱源の製造方法が提供される。
【0008】
第2の側面によれば、炭素粒子と炭酸カルシウム粒子とバインダーとを含み、平均粒径D50が10~150μmであり、かつ半値幅が10~150μmである複合粒子が提供される。
【0009】
第3の側面によれば、第1の側面に記載の方法により製造される香味吸引器用炭素熱源が提供される。
第4の側面によれば、第3の側面に記載の炭素熱源を含む香味吸引器が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造容易性に優れ、且つ高い強度および優れた着火性を有する香味吸引器用炭素熱源に関する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、先行技術文献に記載の方法を模式的に示す図である。
図2図2は、本発明の方法の一例を模式的に示す図である。
図3図3は、香味吸引器用炭素熱源の一例を示す斜視図である。
図4図4は、香味吸引器の一例を示す断面図である。
図5図5は、複合粒子A1の粒度分布を示すグラフである。
図6図6は、複合粒子A2の粒度分布を示すグラフである。
図7図7は、複合粒子A3の粒度分布を示すグラフである。
図8図8は、複合粒子Bの粒度分布を示すグラフである。
図9図9は、複合粒子A2の顕微鏡写真である。
図10図10は、複合粒子Bの顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明を説明することを目的とし、本発明を限定することを意図しない。
【0013】
<1.炭素熱源の製造方法>
一つの側面において、香味吸引器用炭素熱源の製造方法は、
炭素粒子と炭酸カルシウム粒子とバインダーと水とを含むスラリーを原料として用いて、平均粒径D50が10~150μmであり、かつ半値幅が10~150μmである複合粒子を形成すること、
前記複合粒子と水とを含む混合物を成形して、成形体を得ること、および
前記成形体を乾燥させること
を含む。
【0014】
香味吸引器用炭素熱源は、炭素熱源の燃焼により、香味吸引器内の香味源を加熱する熱源である。香味吸引器内の香味源は、炭素熱源の燃焼熱により加熱されるが燃焼されない。香味源は、加熱により香味を発生する。以下の説明において、香味吸引器用炭素熱源は、単に「炭素熱源」ともいう。
【0015】
本発明の方法の一例を模式的に図2に示す。図2は、
(1)原料スラリー1を準備し、
(2)原料スラリー1から複合粒子6を形成し、
(3)複合粒子6を成形して、成形体7を得、
(4)成形体7を乾燥させて、乾燥された成形体8を得る
ことを示す。
【0016】
乾燥された成形体8は、そのまま炭素熱源として使用してもよいし、必要な加工を施した後に炭素熱源として使用してもよい。図2において、原料スラリー1は、炭素粒子1aと、炭酸カルシウム粒子1cと、バインダーを含む水溶液(分散媒)1bとから構成される。
【0017】
「原料スラリーの準備」、「複合粒子の形成」、「成形」、「乾燥」の工程を、以下で詳細に説明する。
【0018】
(原料スラリーの準備)
原料スラリーは、炭素粒子と炭酸カルシウム粒子とバインダーと水とを含む。
【0019】
炭素粒子は、香味吸引器用炭素熱源の原料として一般に使用される炭素粒子を使用することができる。具体的には、炭素粒子は、着火により燃焼することが可能な任意の炭素粒子を使用することができる。炭素粒子は、好ましくは活性炭粒子であり、より好ましくは、1000~2500m2/gのBET比表面積を有する活性炭粒子である。炭素粒子は、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μmの平均粒径を有する。ここで「平均粒径」は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定される体積基準の粒度分布に基づく平均粒径D50を指す。
【0020】
炭素粒子は、市販の活性炭粒子を使用することができ、例えば、クラレコールSA2300(平均粒径:6.6μm、BET比表面積:2100~2400m2/g、クラレケミカル株式会社)、クラレコールPW-Y(粒径:45μm以下、BET比表面積:1300~1500m2/g、クラレケミカル株式会社)、クラレコールSA1500(平均粒径:6.19μm、BET比表面積:1600~1800m/g)が挙げられる。炭素粒子は、1種類を使用してもよいし、複数種類を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
炭素粒子は、スラリーに含まれる固形分の質量に対して、好ましくは20~90質量%、より好ましくは30~60質量%の量で、スラリーに含まれる。本明細書において「固形分」は、スラリーから液体を蒸発させた後に残留する成分(すなわち、不揮発分)を指す。すなわち、「固形分」は、スラリーが複合粒子または炭素熱源の状態になったときに残留する成分である。したがって、「固形分」には、スラリー中に固体の状態で存在する成分(炭素粒子、炭酸カルシウム粒子)だけでなく、スラリー中に溶解しているがスラリーを乾燥させた後に残留する成分(バインダー)も含まれる。
【0022】
炭酸カルシウム粒子は、香味吸引器用炭素熱源の原料として、炭素粒子と組み合わせて一般に使用される炭酸カルシウム粒子を使用することができる。炭酸カルシウム粒子は、燃焼生成物の量、特に一酸化炭素の発生量を低減させることができる。
【0023】
炭酸カルシウム粒子は、例えばかためかさ密度が0.3~1.0g/cmである粒子を使用することができる。かためかさ密度は、粒子を100mLの容器にすり切りの状態(即ち、ゆるみかさ密度の状態)で充填し、等量の粒子を追加し、180回タップした(振動を与えた)後に測定されたかさ密度を指す。炭酸カルシウム粒子は、好ましくは100μm以下、より好ましくは10μm以下の平均粒径を有する。炭酸カルシウム粒子の平均粒径は、小さいほど好ましいため、その下限値は特に限定されないが、例えば0.2μmである。ここで「平均粒径」は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定される体積基準の粒度分布に基づく平均粒径D50を指す。
【0024】
炭酸カルシウム粒子は、市販の炭酸カルシウム粒子を使用することができ、例えば、カルピンF(平均粒径:3μm、かためかさ密度:0.66g/cm、矢橋工業株式会社)が挙げられる。炭酸カルシウム粒子は、1種類を使用してもよいし、複数種類を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
炭酸カルシウム粒子は、スラリーに含まれる固形分の質量に対して、好ましくは5~75質量%、より好ましくは40~70質量%の量で、スラリーに含まれる。
【0026】
炭素粒子と炭酸カルシウム粒子との粒径比は、例えば10:1~1:10とすることができる。炭素粒子と炭酸カルシウム粒子との質量比は、例えば5:1~1:5とすることができる。
【0027】
バインダーは、香味吸引器用炭素熱源の原料として一般に使用されるバインダーを使用することができる。バインダーは、スラリー中の粒子(炭素粒子および炭酸カルシウム粒子)を互いに結着させて、炭素熱源の強度を高める役割を果たす。バインダーは、スラリー中で溶解している。
【0028】
バインダーとして、セルロース誘導体またはアルギン酸塩などを使用することができる。セルロース誘導体としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0029】
バインダーは、スラリーに含まれる固形分の質量に対して、好ましくは3~15質量%、より好ましくは5~10質量%の量で、スラリーに含まれる。
【0030】
後述の「効果」の欄でも述べるが、本発明では、平均粒径が小さくかつ粒度分布がシャープな複合粒子を用いて炭素熱源を製造するため、バインダーの含有量を低減させても、十分な強度を有する炭素熱源を製造することができる。したがって、本発明の方法では、バインダー含有量を上述のとおり低減させることができる。バインダー含有量の低減は、炭素粒子および炭酸カルシウム粒子の含有割合を増加させるため、炭素熱源の着火性を高めることができる。
【0031】
スラリーに含まれる固形分の質量と、スラリーに含まれる液体の質量との比(以下、固液比ともいう)は、好ましくは1:1~1:9、より好ましくは1:2~1:4である。スラリーに含まれる液体は、一般的には水である。
【0032】
背景技術の欄に記載の先行技術文献の方法(図1参照)に従って原料スラリーをシート状に伸展させる場合、スラリーは、シート状に伸展させることができように、固形分の質量に対する液体の質量の比(固液比)を大きくする必要がある。一方、スラリーをシート化しないで、直接微粒化して複合粒子を形成する場合、スラリーは、固形分の質量に対する液体の質量の比(固液比)を小さくすることができる。固液比を小さくすることにより、その後水分を蒸発させるための乾燥時間を短くすることができるため、製造コストの低減が可能となる。
【0033】
(複合粒子の形成)
上述の原料スラリーを用いて、平均粒径D50が10~150μmであり、かつ半値幅が10~150μmである複合粒子を形成する。平均粒径D50は、好ましくは10~120μmである。
【0034】
「平均粒径D50」は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定される体積基準の粒度分布に基づく平均粒径D50を指す。「半値幅」は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定される体積基準の粒度分布に基づく半値幅を指す。「半値幅」は、半値全幅を指す。
【0035】
複合粒子の形成は、上記粒径および上記半値幅を有する粒子を形成することが可能な任意の方法により行うことができる。複合粒子の形成は、具体的には、スラリーを直接微粒化する技術、より具体的には、噴霧乾燥を用いて行うことができる。好ましくは、複合粒子の形成は、スラリーを噴霧乾燥することにより行うことができる。噴霧乾燥は、液体またはスラリーを気体中に霧状に噴霧し、急速に乾燥させて粒子を製造する技術である。
【0036】
より好ましくは、複合粒子の形成は、スラリーをアトマイザーまたはスプレーノズルにより加熱気体中に噴霧し、瞬間的に乾燥させて微粒子を形成することにより行うことができる。噴霧乾燥の説明において「急速に乾燥させる」または「瞬間的に乾燥させる」という表現は、噴霧された液滴が空中に存在している間(すなわち、地面に落下する前)に乾燥が完了していることをいう。更に好ましくは、複合粒子の形成は、スラリーをロータリーアトマイザー方式のスプレードライヤーで噴霧乾燥することにより、すなわち、スラリーの液滴を、ディスク型のアトマイザー(ロータリーアトマイザー)の回転により遠心力で加熱気体中に噴霧し、瞬間的に乾燥させて微粒子を形成することにより、行うことができる。ロータリーアトマイザー方式のスプレードライヤーは、粒径が小さくかつ粒度分布がシャープな複合粒子の形成に適している。
【0037】
ロータリーアトマイザー方式のスプレードライヤーを使用する場合、噴霧条件および乾燥条件を、例えば以下のとおり設定することにより、上述の平均粒径D50および上述の半値幅を有する複合粒子を形成することができる。
ディスク径:60~200mm
ディスク回転数:8000~30000rpm
スラリーの吐出速度:15~160L/h
出口(粒子が出てくるところ)の熱風温度:80~150℃
【0038】
上述のとおり、複合粒子は、平均粒径が小さく、粒度分布がシャープである。かかる複合粒子を成形すると、複合粒子を、成形体全体にわたって均一な密度で、かつ高密度に成形することができ、これにより、製造される炭素熱源の強度を向上させることができるとともに、優れた着火性を提供することができる。
【0039】
複合粒子は、好ましくは、球状の形態を有する。ここで「球状の形態」とは、複合粒子の顕微鏡写真から求めた平均真円度が0~0.2×D[μm](ここで、Dは複合粒子の平均粒径D50を指す)である形態を指す。「平均真円度」は、20個の複合粒子の真円度の平均値を指す。「真円度」は、対象粒子の顕微鏡画像を、二つの同心の幾何学的円で挟んだとき、同心二円の間隔が最小となる場合の、二円の半径の差を指す(JIS B 0621:1984)。
【0040】
複合粒子は、上述のとおり、噴霧乾燥により製造すると、通常、すべての複合粒子が球状の形態を有することができる。このように、すべてが球状の形態を有する複合粒子を成形すると、より高密度に成形することができる。なお、背景技術の欄に記載の先行技術文献では、原料スラリーをシート状に延ばし、得られたシートを粉砕することにより、複合粒子を製造する(図1参照)。このため、先行技術文献では、複合粒子は、球状の形態を有していない。
【0041】
また、複合粒子は、顕微鏡で観察した際に、好ましくは、滑らかな表面を有する。複合粒子は、上述のとおり、噴霧乾燥により製造すると、通常、すべての複合粒子が滑らかな表面を有することができる。このように、すべてが滑らかな表面を有する複合粒子を成形すると、より高密度に成形することができる。なお、背景技術の欄に記載の先行技術文献では、原料スラリーをシート状に延ばし、得られたシートを粉砕することにより、複合粒子を製造する(図1参照)。このため、先行技術文献では、複合粒子は、滑らかな表面を有していない。
【0042】
(成形)
上述の複合粒子を水と混合し、得られた混合物を成形する。
複合粒子と混合される水の量は、その後の成形操作に適した水分量とすることが好ましい。複合粒子と混合される水の量は、複合粒子に対して、好ましくは33~67質量%、より好ましくは38~57質量%である。すなわち、混合物は、複合粒子と、複合粒子に対して33~67質量%の水とを含む混合物であることが好ましく、混合物は、複合粒子と、複合粒子に対して38~57質量%の水とを含む混合物であることがより好ましい。
【0043】
水は、複合粒子の表面に存在するバインダーを溶解し、これにより複合粒子を互いに結着させる役割を果たす。したがって、水は、複合粒子の表面に均一に存在していることが好ましい。複合粒子の表面全体に水が行き渡るように、複合粒子を流動させながら水を複合粒子の表面に噴霧することにより混合物を準備することが好ましい。例えば、複合粒子を攪拌しながら水を複合粒子の表面に噴霧することにより混合物を準備することができる。
【0044】
混合物に含まれる水の量が、上記範囲内であると、成形しやすいという利点と、製造される炭素熱源の強度を高めることができるという利点を有する。
【0045】
混合物中で複合粒子は互いに付着し易く凝集することがある。このため、混合物を成形する前に、複合粒子の凝集をほぐしたり、複合粒子を分級して、所定のサイズ以下の複合粒子をのみを選別したりしてもよい。
【0046】
成形は、香味吸引器用炭素熱源の製造で一般に使用される成形方法を使用して行うことができる。成形は、例えば、圧縮成形、押し出し成形、または打ち抜き成形により行うことができる。成形は、好ましくは圧縮成形により、より好ましくは打錠成形により行うことができる。成形は、例えば0.6~1.0g/cm3の密度を有する成形体が得られるように行うことができる。成形時の圧力は、例えば1~5kNとすることができる。
【0047】
成形体は、円柱状の香味吸引器に組み込まれることを想定して、円柱または多角柱の形状を有することが好ましい。
【0048】
(乾燥)
成形体を乾燥させて、乾燥された成形体(乾燥成形体)を製造する。乾燥は、加熱乾燥により行うことができる。例えば、100~200℃で20~60分間にわたって成形体を乾燥させることができる。加熱温度は、乾燥期間にわたって、上記加熱温度の範囲内で一定であってもよいし、上記加熱温度の範囲内で温度が上昇するように変動させてもよい。乾燥成形体の水の割合は、例えば10質量%以下とすることができる。
【0049】
乾燥成形体は、そのまま炭素熱源として用いてもよい。あるいは、乾燥成形体は、必要に応じて、面取り加工を施したり、着火面に溝(例えば十字溝)を設ける加工を施したりすることができる。かかる加工後の成形体を炭素熱源として用いてもよい。面取り加工は、炭素熱源の角部における割れや欠けを生じ難くすることに寄与する。溝加工は、着火性の向上に寄与する。
【0050】
上述のとおり、乾燥成形体は、複合粒子を、成形体全体にわたって均一な密度で、かつ高密度に成形することにより製造されるため、高い強度を有する。このため、乾燥成形体は、面取り加工や溝加工などの加工を施しても割れや欠けを生じ難く、加工に適している。
【0051】
(炭素熱源の一例)
炭素熱源の一例を図3に示す。図3に示す炭素熱源10は、円柱形状を有する。炭素熱源10は、先端面11が香味吸引器の先端に配置されるように香味吸引器に組み込まれる。
【0052】
図3に示されるとおり、炭素熱源10は、先端面11と、先端面11と対向した基端面12と、香味吸引器本体の内部に空気を供給するための通気路13と、外周面14と、先端面11に設けられた溝部15と、先端面11と外周面14との間に形成された第1面取部16と、基端面12と外周面14との間に形成された第2面取部17とを有する。
【0053】
通気路13は、炭素熱源10の中心軸Cに沿って設けられており、炭素熱源10を貫通するように設けられている。通気路13は、先端面11と基端面12とを連通させている。通気路13の先端面11側の部分は、溝部15と一体になっている。通気路13は、貫通孔を有する中空円柱状に成形体を作製することにより設けてもよいし、成形体を中実円柱状に作製した後にドリルで貫通孔を開けることにより設けてもよい。
【0054】
溝部15は、先端面11側から見て、全体として「十」字状に形成されている。溝部15の形状は、「十」字状に限定されるものではない。溝部15の本数は任意である。また、溝部15全体がなす形状は、任意の形状とすることができる。例えば、通気路13を中心に外周面14に向けて複数の溝部15が放射状に延びていてもよい。また、溝部15は、先端面11と外周面14とに跨るようにこれらから窪んで形成されている。溝部15は、通気路13と連通するように設けられる。
【0055】
炭素熱源10は、以下のような寸法で形成することができる。炭素熱源10の全長(中心軸C方向に関する炭素熱源10の長さ)は、例えば5~30mmの範囲内、好ましくは8~18mmの範囲内で適宜設定される。炭素熱源10の直径(中心軸Cと交差する方向に関する炭素熱源10の長さ)は、例えば3~15mmの範囲内、好ましくは5~10mmの範囲内で適宜設定される。炭素熱源10の中心軸C方向に関する溝部15の深さ(長さ)は、例えば1~5mmの範囲内、好ましくは2~4mmの範囲内で適宜設定される。溝部15の幅(内径)は、例えば0.5~2mmの範囲内で適宜設定される。通気路13の内径は、例えば0.5~4mmの範囲内で適宜設定される。
【0056】
炭素熱源10は、通気路13を有していなくてもよい。この場合には、香味吸引器本体(すなわちホルダ)に通気用の小孔を複数形成することが好ましい。ユーザが香味吸引器の吸引を行う場合には、当該小孔を介してホルダ内およびホルダ内にある香味源に空気が供給される。
【0057】
(効果)
上述の方法は、炭素熱源を成形し難いという問題を有しておらず、製造容易性に優れていた。また、上述の方法によれば、高い強度および優れた着火性を有する炭素熱源を製造することができる。
【0058】
上述の方法において、炭素熱源の製造のために使用される複合粒子は、平均粒径D50が10~150μmであり、かつ半値幅が10~150μmであり、平均粒径が小さく、粒度分布がシャープである。かかる複合粒子を使用して炭素熱源を製造すると、複合粒子を、成形体全体にわたって均一な密度で、かつ高密度に成形することができ、これにより、高い強度および優れた着火性を達成できたと考えられる。
【0059】
加えて、上述の方法では、上述の複合粒子の使用により炭素熱源の強度が担保されるため、バインダーの含有量を低減させても、十分な強度を有する炭素熱源を製造することができる。バインダー含有量の低減は、炭素粒子および炭酸カルシウム粒子の含有割合を増加させるため、炭素熱源の着火性を高めることができる。
【0060】
<2.複合粒子>
別の側面によれば、<1.炭素熱源の製造方法>の欄に記載される「複合粒子」が提供される。具体的には、炭素粒子と炭酸カルシウム粒子とバインダーとを含み、平均粒径D50が10~150μmであり、かつ半値幅が10~150μmである複合粒子が提供される。好ましくは、炭素粒子と炭酸カルシウム粒子とバインダーとを含み、平均粒径D50が10~120μmであり、かつ半値幅が10~150μmである複合粒子が提供される。
【0061】
<3.炭素熱源>
別の側面によれば、<1.炭素熱源の製造方法>の欄に記載の方法により製造される香味吸引器用炭素熱源が提供される。上述のとおり、炭素熱源は、高い強度および優れた着火性を有する。例えば、炭素熱源は、140~250Nの強度および0.6~1.0g/cm3の密度を有することができる。好ましくは、炭素熱源は、140~250Nの強度および0.7~0.9g/cm3の密度を有することができる。
【0062】
炭素熱源は、140N以上の強度を有すると、香味吸引器の炭素熱源として十分な強度を備えている。炭素熱源の密度は、着火性と相関する指標であり、低密度なほど着火性がよい。着火性は、炭素熱源の密度だけでなく炭素粒子の種類など他のファクターにも依存するが、炭素熱源の密度が、例えば上記範囲内である場合に着火性を良くすることができる。
【0063】
<4.香味吸引器>
別の側面によれば、<1.炭素熱源の製造方法>の欄に記載の方法により製造される香味吸引器用炭素熱源を含む香味吸引器が提供される。
【0064】
図3に示す炭素熱源が組み込まれた香味吸引器の一例を図4に示す。
図4に示す香味吸引器20は、吸口端21Aから先端21Bまで延びる円筒状のホルダ21と、ホルダ21の先端21Bに設けられた炭素熱源10と、炭素熱源10の下流に設けられた香味源22と、ホルダ21の内側で香味源22との間に介在されるアルミニウム貼合紙23と、ホルダ21の内側で吸口端21A側に設けられたフィルター部24とを備える。なお、図4に示す香味吸引器20において、香味源22とフィルター部24との間は空洞である。
【0065】
炭素熱源10の燃焼によって発生した熱が、炭素熱源10の下流に配置されている香味源22を加熱し、香味を放出させることができる。
【0066】
ホルダ21は、紙を円筒形に巻いて形成された紙管である。アルミニウム貼合紙23は、紙にアルミニウムを張りあわせて形成され、通常の紙に比して耐熱性および熱伝導性が向上している。このアルミニウム貼合紙23によって、炭素熱源10に火をつけた際でもホルダ21の紙管が燃えないようにしている。ホルダ21の中心軸Cは、炭素熱源10の中心軸Cと合致する。
【0067】
香味源22は、炭素熱源10に隣接した位置で、炭素熱源10の下流に設けられる。香味源22は、加熱により香味を放出させることができる任意の香味源を用いることができる。例えば、香味源22は、葉たばこなどのたばこ材料をシート状に成形し、このたばこシートに蛇腹状のヒダを付けて波形のたばこシートとし、この波形のたばこシートを長手方向に複数の空気流路を形成するように集めて円筒体に形成することにより調製することができる。また、香味源22は、たばこ抽出物から形成された顆粒や、葉たばこ自体を用いることができる。すなわち、香味源22としては、シガレットに使用される一般的なたばこ刻や、嗅ぎたばこに使用される粒状たばこや、ロールたばこや、成形たばこ等の任意のたばこ充填材を採用することができる。ロールたばこは、シート状の再生たばこをロール状に成形して得られ、内部に流路を有する。また、成形たばこは、粒状たばこを金型で成形することによって得られる。あるいは、香味源22として、多孔質素材や非多孔質素材の担持体に、たばこ香味またはたばこ香味以外の香味を担持させたものを採用してもよい。香味源22は、紙により円筒状に巻いた後に香味吸引器20に組み込まれてもよいし、金属製または紙製のカップに収容した後に香味吸引器20に組み込まれてもよい。
【0068】
フィルター部24は、シガレットで一般的に用いられるフィルターで構成される。フィルター部24は、様々な種類の充填材によって形成できる。フィルター部24は、例えば、セルロースアセテートなどのセルロース系半合成繊維の充填材で構成されるが、充填材としてはこれに限定されない。充填材は、例えば、綿、麻、マニラ麻、ヤシ、イグサなどの植物繊維、羊毛、カシミヤなどの動物繊維、レーヨンなどのセルロース系再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成繊維あるいはそれらを組合せたものを使用することができる。フィルター部24の構成要素は、上記のセルロースアセテート繊維からなる充填物の他、チャコールを含んだチャコールフィルターやチャコール以外の粒状物が入ったフィルターでもよい。また、フィルター部24は、異なる種類のセグメントを軸方向に2つ以上連接したマルチセグメント構造としてもよい。
【0069】
<5.別の側面に係る方法>
別の側面において、香味吸引器用炭素熱源の製造方法は、
炭素粒子と炭酸カルシウム粒子とバインダーと水とを含むスラリーを噴霧乾燥することにより複合粒子を形成すること、
前記複合粒子と水とを含む混合物を成形して、成形体を得ること、および
前記成形体を乾燥させること
を含む。
【0070】
上記方法は、<1.炭素熱源の製造方法>の欄に記載の手順と同様の手順に従って実施することができる。
【0071】
上記方法に従って噴霧乾燥により複合粒子を形成すると、平均粒径が小さく、且つ粒度分布がシャープである複合粒子を形成することができる。好ましくは、平均粒径D50が10~150μmであり、且つ半値幅が10~150μmである複合粒子を形成することができる。かかる複合粒子を成形すると、複合粒子を、成形体全体にわたって均一な密度で、かつ高密度に成形することができ、これにより、製造される炭素熱源の強度を向上させることができるとともに、優れた着火性を提供することができる。
【0072】
<6.好ましい実施形態>
以下に、好ましい実施形態をまとめて示す。
[A1] 炭素粒子と炭酸カルシウム粒子とバインダーと水とを含むスラリーを原料として用いて、平均粒径D50が10~150μmであり、かつ半値幅が10~150μmである複合粒子を形成すること、
前記複合粒子と水とを含む混合物を成形して、成形体を得ること、および
前記成形体を乾燥させること
を含む、香味吸引器用炭素熱源の製造方法。
【0073】
[A2] 前記平均粒径D50が、10~120μm、好ましくは50~150μm、より好ましくは70~120μmである[A1]に記載の方法。
[A3] 前記半値幅が、30~150μm、好ましくは50~150μm、より好ましくは60~140μmである[A1]または[A2]に記載の方法。
[A4] 前記複合粒子が、球状の形態を有する[A1]~[A3]の何れか1に記載の方法。
【0074】
[A5] 前記複合粒子の形成が、前記スラリーを噴霧乾燥することにより行われる[A1]~[A4]の何れか1に記載の方法。
[A6] 前記複合粒子の形成が、前記スラリーをロータリーアトマイザー方式のスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥することにより行われる[A1]~[A5]の何れか1に記載の方法。
[A7] 前記バインダーが、前記スラリーに含まれる固形分の質量に対して、3~15質量%、好ましくは5~10質量%の量で前記スラリーに含まれる[A1]~[A6]の何れか1に記載の方法。
【0075】
[A8] 前記混合物が、前記複合粒子と、前記複合粒子に対して、33~67質量%、好ましくは38~57質量%の水とを含む混合物である[A1]~[A7]の何れか1に記載の方法。
[A9] 前記スラリーに含まれる固形分の質量(A)と、前記スラリーに含まれる液体の質量(B)との比率(A:B)が、1:1~1:9、好ましくは1:2~1:4である[A1]~[A8]の何れか1に記載の方法。
[A10] 前記炭素粒子が、2~100μm、好ましくは5~50μmの平均粒径を有する[A1]~[A9]の何れか1に記載の方法。
【0076】
[A11] 前記炭素粒子が、活性炭粒子である[A1]~[A10]の何れか1に記載の方法。
[A12] 前記炭素粒子が、前記スラリーに含まれる固形分の質量に対して、20~90質量%、好ましくは30~60質量%の量で前記スラリーに含まれる[A1]~[A11]の何れか1に記載の方法。
[A13] 前記炭酸カルシウム粒子が、100μm以下(例えば、0.2~100μm)、好ましくは10μm以下(例えば、0.2~10μm)の平均粒径を有する[A1]~[A12]の何れか1に記載の方法。
【0077】
[A14] 前記炭酸カルシウム粒子が、前記スラリーに含まれる固形分の質量に対して、5~75質量%、好ましくは40~70質量%の量で前記スラリーに含まれる[A1]~[A13]の何れか1に記載の方法。
[A15] 前記炭素粒子と前記炭酸カルシウム粒子との粒径比が、10:1~1:10である[A1]~[A14]の何れか1に記載の方法。
[A16] 前記炭素粒子と前記炭酸カルシウム粒子との質量比が、5:1~1:5である[A1]~[A15]の何れか1に記載の方法。
【0078】
[A17] 前記バインダーが、セルロース誘導体である[A1]~[A16]の何れか1に記載の方法。
[A18] 前記セルロース誘導体が、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、またはヒドロキシプロピルセルロースである[A17]に記載の方法。
[A19] 前記セルロース誘導体が、カルボキシメチルセルロースである[A17]または[A18]に記載の方法。
【0079】
[A20] 前記成形が、圧縮成形により行われる[A1]~[A19]の何れか1に記載の方法。
[A21] 前記成形が、打錠成形により行われる[A1]~[A20]の何れか1に記載の方法。
[A22] 前記成形が、0.6~1.0g/cm3、好ましくは0.7~0.9g/cm3の密度を有する成形体が得られるように行われる[A1]~[A21]の何れか1に記載の方法。
[A23] 前記成形が、1~5kNの圧力をかけることにより行われる[A1]~[A22]の何れか1に記載の方法。
【0080】
[B1] 炭素粒子と炭酸カルシウム粒子とバインダーと水とを含むスラリーを噴霧乾燥することにより複合粒子を形成すること、
前記複合粒子と水とを含む混合物を成形して、成形体を得ること、および
前記成形体を乾燥させること
を含む、香味吸引器用炭素熱源の製造方法。
【0081】
[B2] 前記複合粒子は、平均粒径D50が10~150μmであり、且つ半値幅が10~150μmである[B1]に記載の方法。
[B3] 前記平均粒径D50が、10~120μm、好ましくは50~150μm、より好ましくは70~120μmである[B2]に記載の方法。
[B4] 前記半値幅が、30~150μm、好ましくは50~150μm、より好ましくは60~140μmである[B2]または[B3]に記載の方法。
【0082】
[B5] 前記複合粒子が、球状の形態を有する[B1]~[B4]の何れか1に記載の方法。
[B6] 前記複合粒子の形成が、前記スラリーをロータリーアトマイザー方式のスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥することにより行われる[B1]~[B5]の何れか1に記載の方法。
[B7] 前記バインダーが、前記スラリーに含まれる固形分の質量に対して、3~15質量%、好ましくは5~10質量%の量で前記スラリーに含まれる[B1]~[B6]の何れか1に記載の方法。
【0083】
[B8] 前記混合物が、前記複合粒子と、前記複合粒子に対して、33~67質量%、好ましくは38~57質量%の水とを含む混合物である[B1]~[B7]の何れか1に記載の方法。
[B9] 前記スラリーに含まれる固形分の質量(A)と、前記スラリーに含まれる液体の質量(B)との比率(A:B)が、1:1~1:9、好ましくは1:2~1:4である[B1]~[B8]の何れか1に記載の方法。
[B10] 前記炭素粒子が、2~100μm、好ましくは5~50μmの平均粒径を有する[B1]~[B9]の何れか1に記載の方法。
【0084】
[B11] 前記炭素粒子が、活性炭粒子である[B1]~[B10]の何れか1に記載の方法。
[B12] 前記炭素粒子が、前記スラリーに含まれる固形分の質量に対して、20~90質量%、好ましくは30~60質量%の量で前記スラリーに含まれる[B1]~[B11]の何れか1に記載の方法。
[B13] 前記炭酸カルシウム粒子が、100μm以下(例えば、0.2~100μm)、好ましくは10μm以下(例えば、0.2~10μm)の平均粒径を有する[B1]~[B12]の何れか1に記載の方法。
【0085】
[B14] 前記炭酸カルシウム粒子が、前記スラリーに含まれる固形分の質量に対して、5~75質量%、好ましくは40~70質量%の量で前記スラリーに含まれる[B1]~[B13]の何れか1に記載の方法。
[B15] 前記炭素粒子と前記炭酸カルシウム粒子との粒径比が、10:1~1:10である[B1]~[B14]の何れか1に記載の方法。
[B16] 前記炭素粒子と前記炭酸カルシウム粒子との質量比が、5:1~1:5である[B1]~[B15]の何れか1に記載の方法。
【0086】
[B17] 前記バインダーが、セルロース誘導体である[B1]~[B16]の何れか1に記載の方法。
[B18] 前記セルロース誘導体が、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、またはヒドロキシプロピルセルロースである[B17]に記載の方法。
[B19] 前記セルロース誘導体が、カルボキシメチルセルロースである[B17]または[B18]に記載の方法。
【0087】
[B20] 前記成形が、圧縮成形により行われる[B1]~[B19]の何れか1に記載の方法。
[B21] 前記成形が、打錠成形により行われる[B1]~[B20]の何れか1に記載の方法。
[B22] 前記成形が、0.6~1.0g/cm3、好ましくは0.7~0.9g/cm3の密度を有する成形体が得られるように行われる[B1]~[B21]の何れか1に記載の方法。
[B23] 前記成形が、1~5kNの圧力をかけることにより行われる[B1]~[B22]の何れか1に記載の方法。
【0088】
[C1] 炭素粒子と炭酸カルシウム粒子とバインダーとを含み、平均粒径D50が10~150μmであり、かつ半値幅が10~150μmである複合粒子。
[C2] 前記平均粒径D50が、10~120μm、好ましくは50~150μm、より好ましくは70~120μmである[C1]に記載の複合粒子。
[C3] 前記半値幅が、30~150μm、好ましくは50~150μm、より好ましくは60~140μmである[C1]または[C2]に記載の複合粒子。
【0089】
[C4] 前記複合粒子が、球状の形態を有する[C1]~[C3]の何れか1に記載の複合粒子。
[C5] 前記バインダーが、3~15質量%、好ましくは5~10質量%の量で前記複合粒子に含まれる[C1]~[C4]の何れか1に記載の複合粒子。
[C6] 前記炭素粒子が、2~100μm、好ましくは5~50μmの平均粒径を有する[C1]~[C5]の何れか1に記載の複合粒子。
【0090】
[C7] 前記炭素粒子が、活性炭粒子である[C1]~[C6]の何れか1に記載の複合粒子。
[C8] 前記炭素粒子が、20~90質量%、好ましくは30~60質量%の量で前記複合粒子に含まれる[C1]~[C7]の何れか1に記載の複合粒子。
[C9] 前記炭酸カルシウム粒子が、100μm以下(例えば、0.2~100μm)、好ましくは10μm以下(例えば、0.2~10μm)の平均粒径を有する[C1]~[C8]の何れか1に記載の複合粒子。
【0091】
[C10] 前記炭酸カルシウム粒子が、5~75質量%、好ましくは40~70質量%の量で前記複合粒子に含まれる[C1]~[C9]の何れか1に記載の複合粒子。
[C11] 前記炭素粒子と前記炭酸カルシウム粒子との粒径比が、10:1~1:10である[C1]~[C10]の何れか1に記載の複合粒子。
[C12] 前記炭素粒子と前記炭酸カルシウム粒子との質量比が、5:1~1:5である[C1]~[C11]の何れか1に記載の複合粒子。
【0092】
[C13] 前記バインダーが、セルロース誘導体である[C1]~[C12]の何れか1に記載の複合粒子。
[C14] 前記セルロース誘導体が、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、またはヒドロキシプロピルセルロースである[C13]に記載の複合粒子。
[C15] 前記セルロース誘導体が、カルボキシメチルセルロースである[C13]または[C14]に記載の複合粒子。
【0093】
[D1] [A1]~[A23]の何れか1に記載の方法により製造される香味吸引器用炭素熱源。
[D2] [B1]~[B23]の何れか1に記載の方法により製造される香味吸引器用炭素熱源。
[D3] 前記炭素熱源が、140~250Nの強度および0.6~1.0g/cm3の密度を有する[D1]または[D2]に記載の香味吸引器用炭素熱源。
[D4] 前記炭素熱源が、140~250Nの強度および0.7~0.9g/cm3の密度を有する[D1]~[D3]の何れか1に記載の香味吸引器用炭素熱源。
【0094】
[E1] [D1]~[D4]の何れか1に記載の炭素熱源を含む香味吸引器。
[E2] 吸口端から先端まで延びる筒状のホルダと、前記先端に設けられた[D1]~[D4]の何れか1に記載の炭素熱源と、前記ホルダの内側で前記炭素熱源の下流に設けられた香味源とを備える香味吸引器。
[E3] 前記ホルダの内側で前記吸口端側に設けられたフィルター部を更に備える[E2]に記載の香味吸引器。
[E4] 前記ホルダと前記香味源との間に介在されるアルミニウム貼合紙を更に備える[E2]または[E3]に記載の香味吸引器。
【実施例
【0095】
[試験例1]複合粒子
1-1.複合粒子の調製
<複合粒子A1の調製>
(1)スラリーA1の調製
炭素粒子として、活性炭粒子、具体的にはクラレコールSA2300(平均粒径:6.6μm、BET比表面積:2100~2400m2/g、クラレケミカル株式会社)とクラレコールPW-Y(粒径:45μm以下、BET比表面積:1300~1500m2/g、クラレケミカル株式会社)との混合物(2:8の質量比)を使用した。炭酸カルシウム粒子として、カルピンF(平均粒径:3μm、かためかさ密度:0.66g/cm、矢橋工業株式会社)を使用した。バインダーとして、カルボキシメチルセルロース、具体的にはサンローズF10LC(日本製紙株式会社)を使用した。
【0096】
43質量%の炭素粒子と、49.5質量%の炭酸カルシウム粒子と、7.5質量%のバインダーとからなる固形分と、水とを、1:3.5の固液比(質量比)で、ラボミキサーを用いて混合して、スラリーA1を調製した。
【0097】
(2)噴霧乾燥
スラリーA1を噴霧乾燥して複合粒子を調製した。噴霧乾燥は、ロータリーアトマイザー方式の噴霧乾燥装置(RDL-050CM)を用いて行った。具体的には、原料スラリーを、高速回転するディスクに送り、遠心力で加熱気体中に液滴を飛び散らせて微粒化した。これにより、複合粒子A1(平均粒径(D50)76μm)を調製した。噴霧乾燥条件は、以下のとおりとした。
ディスク径:60mm
ディスク回転数:8000~13000rpm
スラリーの吐出速度:15~30L/hour
出口(粒子が出てくるところ)熱風温度:80~120℃
【0098】
<複合粒子A2の調製>
(1)スラリーA2の調製
炭素粒子と炭酸カルシウム粒子とバインダーとからなる固形分と、水とを、1:3の固液比(質量比)で混合したことを除いて、スラリーA1の調製と同様の手順に従ってスラリーA2を調製した。
【0099】
(2)噴霧乾燥
スラリーA2を噴霧乾燥して複合粒子を調製した。噴霧乾燥は、ロータリーアトマイザー方式の噴霧乾燥装置(SD-6.3R型、GEAプロセスエンジニアリング株式会社(旧社名ニロジャパン))を用いて行った。具体的には、原料スラリーを、高速回転するディスクに送り、遠心力で加熱気体中に液滴を飛び散らせて微粒化した。これにより、複合粒子A2(平均粒径(D50)94μm)を調製した。噴霧乾燥条件は、以下のとおりとした。
ディスク径:100mm
ディスク回転数:10000~30000rpm
スラリーの吐出速度:20~40L/hour
出口(粒子が出てくるところ)熱風温度:100~150℃
【0100】
<複合粒子A3の調製>
スラリーA3を噴霧乾燥して複合粒子を調製した。噴霧乾燥は、ロータリーアトマイザー方式の噴霧乾燥装置(SDR-27、アイエス ジャパン株式会社)を用いて行った。具体的には、原料スラリーを、高速回転するディスクに送り、遠心力で加熱気体中に液滴を飛び散らせて微粒化した。これにより、複合粒子A3(平均粒径(D50)110μm)を調製した。噴霧乾燥条件は、以下のとおりとした。
ディスク径:150mm
ディスク回転数:15000~25000rpm
スラリーの吐出速度:70~160L/hour
出口(粒子が出てくるところ)熱風温度:100~140℃
【0101】
<複合粒子Bの調製>
(1)スラリーBの準備
炭素粒子と炭酸カルシウム粒子とバインダーとからなる固形分と、水とを、1:4.75の固液比(質量比)で混合したことを除いて、スラリーA1の調製と同様の手順に従ってスラリーBを調製した。
【0102】
(2)シート化
スラリーBをシート化した。シート化は、CD(コンパクトディスク)ドライヤー(西村鐵工製)を用いて行った。具体的には、以下の手順を実施した。
【0103】
CDドライヤーにおいて、スクレーパーとディスクの間隙を0.2mmに調整した。ディスクを140℃に加熱し、0.8rpmで回転させた。スラリーを循環タンクに供給し、循環タンク内のスラリーを、ポンプを使用してディスクに噴霧した。ディスク上で乾燥した乾燥品(シート状)をスクレーパーで採取した。
【0104】
(3)粉砕分級
得られた乾燥品(シート状)を粉砕分級した。粉砕は、卓上ミル(Wonder Blender)を用いて行い、分級は、篩を用いて行った。具体的には、以下の手順を実施した。
【0105】
乾燥品を篩い、100μm以上300μm以下の原料に分級した。300μmを超える原料を粉砕装置に供給して粉砕した。分級と粉砕の操作を繰り返し、100~300μmの目標粒径を有する粉砕物を得た。得られた粉砕物を複合粒子Bと呼ぶ。
【0106】
1-2.評価方法
(1)粒度分布の測定
複合粒子A1、複合粒子A2、複合粒子A3および複合粒子Bの粒度分布を測定した。粒度分布は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置LMS-2000e(株式会社セイシン企業)を用いて測定した。
【0107】
測定方法および測定条件は、以下のとおりとした。
測定方法: 1.圧縮空気のみでブランク測定を行った。
2.乾式ユニットに試料を適量入れた。
測定条件: 測定範囲 0.20~20000.00μm
圧縮空気圧力 0.1 MPa
計測方法 噴射型乾式測定
【0108】
複合粒子A1、複合粒子A2および複合粒子A3の粒度分布を、それぞれ図5~7に示し、複合粒子Bの粒度分布を図8に示す。
【0109】
(2)顕微鏡観察
複合粒子A1、複合粒子A2、複合粒子A3および複合粒子Bを光学顕微鏡で観察した。複合粒子A2の顕微鏡写真を図9に示し、複合粒子Bの顕微鏡写真を図10に示す。
【0110】
1-3.評価結果
粒度分布の測定結果から以下のことが分かった。複合粒子A1は、平均粒径D50が76μmで、半値幅が62μmであった(図5参照)。複合粒子A2は、平均粒径D50が94μmで、半値幅が103μmであった(図6参照)。複合粒子A3は、平均粒径D50が110μmで、半値幅が137μmであった(図7参照)。複合粒子Bは、平均粒径D50が221μmで、半値幅が258μmであった(図8参照)。
【0111】
顕微鏡観察から、以下のことが分かった。複合粒子A1、複合粒子A2および複合粒子A3は、球状の形態を有し、粒子表面が滑らかな表面を有していた(図9参照)。複合粒子A2の平均真円度は11.5μmであった(0.12×D50)。一方、複合粒子Bは、粉砕物であるため、球状の形態を有しておらず、滑らかな表面を有していなかった(図10参照)。複合粒子Bの平均真円度は66.7μmであった(0.30×D50)。
【0112】
[試験例2]炭素熱源
試験例1で調製された複合粒子を用いて炭素熱源を製造した。複合粒子A1から炭素熱源A1を製造し、複合粒子A2から炭素熱源A2を製造し、複合粒子A3から炭素熱源A3を製造し、複合粒子Bから炭素熱源B1および炭素熱源B2を製造した。
【0113】
炭素熱源A1、炭素熱源A2、炭素熱源A3、炭素熱源B1、および炭素熱源B2の製造条件を表1にまとめて示す。
【0114】
【表1】
【0115】
2-1.炭素熱源の製造
<炭素熱源A1の製造>
(1)加水
試験例1で調製された複合粒子A1に水を添加した。70質量部の複合粒子A1に30質量部の水を添加した。すなわち、水は、複合粒子A1に対して43質量%の量で添加した。複合粒子A1に洗瓶で水を添加し、得られた混合物を、ケンミックスミキサーを用いて混合した。複合粒子が凝集したため、凝集物を解砕した。解砕は、卓上ミル(Wonder Blender)を用いて行った。これにより、混合物A1と水との混合物(母材)を調製した。表1において「水分量」は、混合物中の水の割合(質量%)を表す。
【0116】
(2)分級
複合粒子A1と水との混合物(母材)を、篩を用いて、500μm以下に分級した。
【0117】
(3)成形
分級後の母材を打錠成形した。打錠成形は、打錠成型機CREC(菊水製作所社製)を用いて行った。母材は、円柱形状に成形した。具体的には、以下の手順を実施した。分級後の母材を定量供給機に供給した。撹拌フィードシューを80rpmで回転させ、母材を定量供給機から撹拌フィードシューに供給した。撹拌フィードシュー内の母材の量を一定に保ちつつ、打錠機回転盤を15rpmで回転し、打錠を実施した。打圧時の圧力は、1.5~3.0kNであった。
【0118】
(4)乾燥
得られた打錠品を乾燥させた。乾燥は、定温乾燥器OF-300S(ASONE製)を用いて行った。具体的には、打錠品を100℃で8.6分間乾燥させた後、200℃で17.3分間乾燥させた。
【0119】
(5)切削
乾燥後の打錠品に、ドリルで貫通孔を開けて、図3に示されるとおり通気路13を設けた。また、乾燥後の打錠品に、切削装置MTC(装置名:カーボン成形品加工試験機、会社名:株式会社山本機械製作所)を用いて面取り加工および十字加工を施した。図3に示されるとおり、面取り加工は、先端面11および基端面12の両方に行い、十字加工は、先端面11のみに行った。加工後、通気路13をエアブローするとともに、十字加工により形成された溝部15をエアブローした。これにより、炭素熱源A1を製造した。
【0120】
製造された炭素熱源A1は、図3に示される形状を有し、以下の寸法を有していた。
全長(中心軸C方向に関する炭素熱源の長さ):13mm
直径(中心軸Cと交差する方向に関する炭素熱源の長さ):6.49mm
中心軸C方向に関する溝部15の深さ(長さ):3.0mm
溝部15の幅(内径):0.6mm
通気路13の内径:1.0mm
【0121】
<炭素熱源A2の製造>
複合粒子A1の代わりに複合粒子A2を使用したこと以外は、炭素熱源A1の製造と同様の手順に従って炭素熱源A2を製造した。
【0122】
<炭素熱源A3の製造>
複合粒子A1の代わりに複合粒子A3を使用したこと以外は、炭素熱源A1の製造と同様の手順に従って炭素熱源A3を製造した。
【0123】
<炭素熱源B1の製造(比較例1)>
複合粒子A1の代わりに複合粒子Bを使用したことと、水を複合粒子Bに対して34質量%の量で添加したこと以外は、炭素熱源A1の製造と同様の手順に従って炭素熱源B1を製造した。
【0124】
<炭素熱源B2の製造(比較例2)>
複合粒子A1の代わりに複合粒子Bを使用したこと以外は、炭素熱源A1の製造と同様の手順に従って炭素熱源B2を製造した。
【0125】
2-2.評価方法
(1)強度
炭素熱源の強度は、以下の通り破壊強度を測定することにより求めた。
測定装置:SHIMAZU EZ-S 500N
ロードセル最大加圧量:500 N
圧縮速度:10 mm/min
圧縮子:先端部がV字のアタッチメント
【0126】
炭素熱源の側部中心をアタッチメントが炭素熱源に垂直に位置するような向きで破断するまで加圧し、破断時の圧力(破壊強度)を測定した。破壊強度の値により強度を以下のとおり評価した。
〇:破壊強度 140[N]以上
△:破壊強度 80[N]以上、140[N]未満
×:破壊強度 80[N]未満
【0127】
(2)着火性
新品フィラメントにしたborgwalgt電熱ライターを使用して、炭素熱源の着火性を評価した。
【0128】
ライターのフィラメントを、炭素熱源に直付けした。ライターのフィラメントの十字と、炭素熱源の溝の十字とが重なるよう直付けした。ライターの出力は、「強」に設定した。ライターのスイッチをONにした時点から吸引開始までの時間を変更して評価した。吸引容量は、55 mL/2secであった。吸引終了時に、ライターを炭素熱源から離した。2パフ目(15秒後)に炭素熱源が赤熱していれば着火と判断した。
【0129】
打錠成型機の上杵側に配置された炭素熱源の面(先端面)を評価した。炭素熱源の先端面は、十字加工により4つの領域(島)に分断されている(図3を参照)。着火した島の数により着火性を評価した。
〇:4つの島が着火した場合
△:2つまたは3つの島が着火した場合
×:1つの島が着火した場合または未着火の場合
【0130】
(3)密度
円柱形状を有する炭素熱源の体積を、円柱の直径および円柱の高さから算出した。また、炭素熱源の質量を測定した。体積および質量の値から炭素熱源の密度[g/cm3]を算出した。炭素熱源の密度は、着火性と相関する指標であり、低密度なほど着火性がよい。
【0131】
2-3.評価結果
評価結果を表2に示す。
【0132】
【表2】
【0133】
炭素熱源A1、炭素熱源A2および炭素熱源A3の製造については、炭素熱源を成形し難いという問題を有しておらず、製造容易性に優れていた。また、炭素熱源A1、炭素熱源A2および炭素熱源A3は、高い強度と優れた着火性とを有していた。炭素熱源A1、炭素熱源A2および炭素熱源A3を製造するために使用した複合粒子A1、複合粒子A2および複合粒子A3は、いずれも、平均粒径が小さく、粒度分布がシャープであった。このため、複合粒子を、成形体全体にわたって均一な密度で、かつ高密度に成形することができ、これにより、製造される炭素熱源の強度を向上させることができるとともに、優れた着火性を提供することができたと考えられる。
【0134】
一方、複合粒子Bを用いて炭素熱源を製造すると、成形し難かった。そこで、成形時に添加される水の量を増やして炭素熱源B1を製造したところ、打錠成型機に成形材料(母材)が付着し易く、とりわけ、打錠成型機で連続生産を行うと、初期は炭素熱源を製造することができたが、徐々に打錠成型機のチャンバ内や圧縮部に母材が付着し、連続生産することができなくなった。製造された炭素熱源B1は、高い強度と優れた着火性とを有していたが、連続生産できないという問題があった。
【0135】
複合粒子Bを用いて、成形時に一般に使用される量の水(すなわち、複合粒子Bに対して30重量%の水)を加えて炭素熱源B2を製造したところ、成形し難く、得られた炭素熱源B2は、着火性に問題は見られなかったが、強度が十分でなかった。
【0136】
複合粒子Bは、複合粒子A1、複合粒子A2および複合粒子A3と比べると、平均粒径が大きく、半値幅も大きかった。このため、複合粒子Bを、成形体全体にわたって均一な密度で、かつ高密度に成形することができず、これにより、成形し難くいという不具合や、製造された炭素熱源の強度が低いという不具合が起こったと考えられる。加えて、複合粒子Bは粉砕物であるため、球状の形態を有しておらず、また、表面に凹凸があり滑らかでなかった。このような複合粒子Bの形状も、成形し難さや炭素熱源の強度の低下に影響したと考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10