(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】光パターンを補正するための方法、自動車両の照明装置、および自動車両の照明用組立体
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/04 20060101AFI20221114BHJP
F21S 41/153 20180101ALI20221114BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20221114BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20221114BHJP
G06T 5/00 20060101ALI20221114BHJP
G01M 11/06 20060101ALI20221114BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20221114BHJP
F21Y 105/10 20160101ALN20221114BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20221114BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20221114BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20221114BHJP
【FI】
B60Q1/04 Z
F21S41/153
F21S41/143
F21V7/00 590
G06T5/00 725
G01M11/06
F21W102:13
F21Y105:10
F21Y115:10
F21Y115:15
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2021551824
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2020054799
(87)【国際公開番号】W WO2020178061
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-09-30
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】アリ、カンジ
(72)【発明者】
【氏名】ヤセール、アルメイオ
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0169943(US,A1)
【文献】特開2010-095048(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026437(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/003887(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
F21S 41/153
F21S 41/143
F21V 7/00
G06T 5/00
G01M 11/06
F21W 102/13
F21Y 105/10
F21Y 115/10
F21Y 115/15
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源(2)のマトリックスを有した自動車両の照明装置(1)によってもたらされる光パターンを補正するための方法であって、
a) 前記光源(2)の幾つかの解像度データ(10)をもたらす段階と、
b) 前記解像度データ(10)を用いて、前記光パターンのテストマップ(4)をシミュレートする段階と、
c) 前記テストマップ(4)の歪みマップ(5)をシミュレートする段階であって、各歪みマップ(5)が歪み因子に関連付けられている段階と、
d) 前記照明装置(1)によって前記テストマップを投射することで、実際の歪んだ光パターン(6)を得る段階と、
e) 前記実際の歪んだ光パターン(6)を前記歪みマップと比較して、前記実際の歪んだ光パターン(6)に最も近似した前記歪みマップである目標歪みマップを見いだす段階と、
f) 前記目標歪みマップに関連付けられた前記歪み因子を、制御ユニット内に保存する段階と、
g) 補正因子を適用して前記実際の歪んだ光パターンを補正することで、補正された光パターン(7)を得る段階であって、前記補正因子は、保存された前記目標歪みマップの前記歪み因子の逆数である段階と、
を備えた方法。
【請求項2】
前記段階e)がゴニオメータによって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記解像度データは、光源の数、マトリックス配列の行数および列数、並びに/または各光源の電力値を含んでいる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
マトリックス配列の各光源には、ある電力値によって電力が供給され、前記段階g)において前記補正因子は、前記マトリックス配列の光源の1つ毎に電力を供給する前記電力値の1つ毎における補正である、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記電力値はパルス幅変調値である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記段階g)の後に、
前記補正された光パターン(7)を得る段階と、
前記補正された光パターン(7)を前記歪みマップと比較して、前記補正された光パターン(7)に最も近似した目標歪みマップを見いだす段階と、
保存されている前記歪み因子を、前記目標歪みマップに関連付けられた前記歪み因子で更新する段階と、
更なる補正因子を適用して前記補正された光パターンを補正することで、再補正された光パターンを得る段階であって、当該補正因子は、前記目標歪みマップの前記歪み因子の逆数である段階と、
が更に行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ある光パターンをもたらすように企図された、ソリッドステート光源(2)のマトリックス配列と、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法の各段階を実行するためのキャリブレータと、
を備えた自動車両の照明装置。
【請求項8】
前記マトリックス配列は、少なくとも2000個のソリッドステート光源(2)を備えている、請求項7に記載の自動車両の照明装置。
【請求項9】
自動車両の照明装置(1)と、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法の各段階を実行するための外部キャリブレータ(30)と、
前記補正因子を前記光パターンに適用するための外部補正器(31)と、
を備えた自動車両の照明用組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車両の照明装置の分野に関し、より特定的には光パターンの管理の仕方に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタル式照明装置は、自動車メーカーによって中高級市場向け製品に採用されることが増えている。
【0003】
これらのデジタル式照明装置は通常、ピクセル化技術に依存している。そのようなデジタル式光源は通常、LEDのストライプやマトリックスと、それらのLEDによって放出される光を投射する、背後に様々なレンズを有した光学系とを備えている。これらのレンズは、投射されたビームに、使用者によって知覚され得る何らかの歪みを生じさせることがある。この歪みの大きさや形状は、レンズの型式によって左右される(樽形、糸巻形…)。さらに、この物理的な問題点の知覚は、モジュールの解像度に相対的に比例し、LEDの数が多いほど、投射ビームの歪み効果は大きくなる。
【0004】
この問題は今日に至るまで想定されてきたが、そのための解決策が提供されている。
【0005】
文献DE 10 2016 103649 A1(独国特許出願公開第102016103649号明細書)には、照明装置の周囲に光ピクセル同士から形成される出力光像を生成するために、照明装置による発光を制御する照明装置が開示されている。これは、発光装置からの光ビームの経路内に配置された光学素子によってなされる。出力光像と元の光像との間の倍率が、光学部品の影響によって元の光像の光ピクセルの組に亘って不均一となっているのである。しかし、この解決策は、種々の自動車両用光源に容易に組み込まれるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102016103649号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明は、前述した幾何学的問題を改善するための代替的な解決策を、請求項1記載の光パターンを補正するための方法、請求項7記載の自動車両の照明装置、および請求項9記載の自動車両の照明用組立体によって提供するものである。本発明の好適な諸実施形態は、各従属請求項に定義されている。
【0008】
別様に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての用語(技術的、科学的用語を含む)は、当該技術において通例であるように解釈されるべきものである。さらに、一般的な語法による用語類も、やはり関連技術において通例であるように解釈されるべきであって、本明細書で明確にそう定義されない限り、理想化されたり過度に形式的であったりする意味に解釈されるべきではない。
【0009】
この本文において、用語「備える/含む(comprises)」や、その派生語(例えば「備えている/含んでいる(comprising)」など)は、排他的な意味に理解されるべきではない。即ち、これらの用語は、説明されたり定義されたりするものが更なる要素や段階などを含み得るという可能性を排除するように解釈されるべきではないのである。
【0010】
第1の発明態様において、本発明は、光源のマトリックスを有した自動車両の照明装置によってもたらされる光パターンを補正するための方法であって、
a) 光源の幾つかの解像度データをもたらす段階と、
b) 解像度データを用いて、光パターンのテストマップをシミュレートする段階と、
c) テストマップの歪みマップをシミュレートする段階であって、各歪みマップが歪み因子に関連付けられている段階と、
d) 照明装置によってテストマップを投射することで、実際の歪んだ光パターンを得る段階と、
e) 実際の歪んだ光パターンを歪みマップと比較して、実際の歪んだ光パターンに最も近似した歪みマップである目標歪みマップを見いだす段階と、
f) 目標歪みマップに関連付けられた歪み因子を、制御ユニット内に保存する段階と、
g) 補正因子を適用して実際の歪んだ光パターンを補正することで、補正された光パターンを得る段階であって、補正因子は、保存された目標歪みマップの歪み因子の逆数である段階と、
を備えた方法を提案する。
【0011】
この方法により、自動車両の光パターンの歪みの、その場での、或いは外部での補正が可能となる。その場合、補正された光パターンの歪み因子は、元の光パターンよりも、真っ直ぐなパターンに近いものとなる。
【0012】
歪み因子が保存されることから、その歪み因子を、自動車両の照明装置の通常使用時にソフトウェアの補正因子として適用することができる。
【0013】
補正因子は、実際の歪んだ光パターンの歪みを補正することを目的としている。従って、この目的を達成するための1つの手段は、樽形方向と糸巻形方向の2つの方向に歪みの尺度を設定することである。実際の歪んだマップに最も近い像として樽形の歪みマップが選択された場合には、それを補償するために同じ値の糸巻形の因子が実際の光パターンに適用されることとなる。
【0014】
幾つかの特定の実施形態では、段階e)はゴニオメータによって行われる。この装置は、結果を歪みマップと比較するに足る精度を有している。
【0015】
幾つかの特定の実施形態では、解像度データは、光源の数、マトリックス配列の行数および列数、並びに/または各光源の電力値を含んでいる。
【0016】
これらの値は、歪みマップを実際の歪んだ光パターンと比較するのに有用であるが、それは歪みを補正するための代替手段をもたらし得るものだからである。
【0017】
幾つかの特定の実施形態では、マトリックス配列の各光源には、ある電力値によって電力が供給され、段階g)において補正因子は、マトリックス配列の光源の1つ毎に電力を供給する電力値の1つ毎における補正である。
【0018】
これは、歪みの問題を解決する代替手段の一つであり、(電子的にか、物理的なレンズによってかの何れかで)包括的な歪み因子を適用することに代えて、各光源の電力値を変更し、その結果として各光源の光強度を変化させることで歪みを補正するものである。
【0019】
幾つかの特定の実施形態では、電力値はパルス幅変調値である。
【0020】
パルス幅変調値は、最大電流値を変えずに総電力値を変化させる手段をもたらすため、光源を制御するのによく用いられる。
【0021】
幾つかの特定の実施形態では、段階g)の後に、
補正された光パターンを得る段階と、
補正された光パターンを歪みマップと比較して、補正された光パターンに最も近似した目標歪みマップを見いだす段階と、
保存されている歪み因子を、目標歪みマップに関連付けられた歪み因子で更新する段階と、
更なる補正因子を適用して、補正された光パターンを補正することで、再補正された光パターンを得る段階であって、当該補正因子は、目標歪みマップの歪み因子に関連している段階と、
が更に行われる。
【0022】
1段階だけでは元の光パターンの歪みを補正するのに十分でない場合には、必要に応じて光パターンを再補正するプロセスを循環させてもよい。
【0023】
第2の発明態様において本発明は、
ある光パターンをもたらすように企図された、ソリッドステート光源のマトリックス配列と、
第1の発明態様による方法の各段階を実行するためのキャリブレータと、
を備えた自動車両の照明装置を提供する。
【0024】
この照明装置は、もたらされる光パターンの歪みを自動補正するという有利な機能性を提供してくれる。
【0025】
幾つかの特定の実施形態では、マトリックス配列は、少なくとも2000個のソリッドステート光源を備えている。
【0026】
用語「ソリッドステート(solid state)」は、電力を光へと変換するために半導体を用いるソリッドステートエレクトロルミネッセンスによって放出される光を表す。白熱照明に比べて、ソリッドステート照明は、熱の発生を減少させ、より少ないエネルギー消散で可視光を作り出す。ソリッドステート電子照明装置の概して小さな嵩は、もろいガラス管/球や長細いフィラメント線に比べて、衝撃や振動に対してより強い耐性を与えるものである。それらはまた、フィラメントの蒸発を排除して、発光装置の寿命を増大させる可能性を有している。これらの型式の照明における幾つかの例は、光源として、電気フィラメント、プラズマ、またはガスよりも寧ろ、半導体発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、または高分子発光ダイオード(PLED)を備えている。
【0027】
この方式の典型的な例として、マトリックス(行列)配列がある。行同士が投射距離範囲でグループ化され、各グループの各列が角度間隔を表し得る。この角度の値は、マトリックス配列の解像度に依るが、典型的には0.01°毎列から0.5°毎列の間に含まれる。従って、必要に応じて、より真っ直ぐなパターンを生じさせるように各ピクセルの光強度を適合させ得る。
【0028】
第3の発明態様において、本発明は、
自動車両の照明装置と、
第1の発明態様による方法の各段階を実行するための外部キャリブレータと、
補正因子を光パターンに適用するための外部補正器と、
を備えた自動車両の照明用組立体を提供する。
【0029】
この組立体は、車両の製造組立ラインで用いられて、ラインから出てきたばかりで調整されている光パターンをもたらし得る。
【0030】
本明細書を完全なものとするよう、また本発明のより深い理解に備えるために、一連の図面が提供される。当該図面は、本明細書の不可欠な部分を成し、本発明の実施形態を示しているが、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではなく、単に本発明を如何にして実施することができるかの例示として解釈されるべきである。図面は、以下の各図を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による自動車両の照明装置の全体斜視図。
【
図3】本発明による自動車両の照明用組立体を示す図。
【0032】
これらの図では、以下の参照番号が用いられている。
1 照明装置
2 LED
3 キャリブレータ
4 テストマップ
5 歪みマップ
6 実際の歪んだ光パターン
7 補正された光パターン
10 解像度データ
30 外部キャリブレータ
31 外部補正器
100 自動車両
【発明を実施するための形態】
【0033】
例示される実施形態は、当業者が本明細書に記載されたシステムやプロセスを具現化して実施するのを可能とするに足るほど詳細に説明されている。各実施形態は、多くの代替形態で提供することができ、本明細書に記載された例に限定して解釈されるべきではない、ということを理解するのが重要である。
【0034】
従って、実施形態は種々のやり方で改変することができ、種々の代替形態をとることができるが、それらの特定の諸実施形態を例として図面に示すと共に、以下で詳細に説明する。開示された特定の形態に限定する意図はない。それどころか、添付の特許請求の範囲内に入っている全ての改変、均等物、および代替物が包含されるべきである。
【0035】
図1は、本発明による自動車両の照明装置の全体斜視図である。
【0036】
この照明装置1は、自動車両100に搭載されると共に、
ある光パターンをもたらすように企図された、LEDのマトリックス配列2と、
LEDのマトリックス配列2によってもたらされる光パターンの幾何学的形状をその場での較正を行うためのキャリブレータ3と、
を備えている。
【0037】
このマトリックス構成は、2000ピクセルを超える解像度を有した、高解像度モジュールである。ただし、投射モジュールを製造するのに用いられる技術に制限があると考えられるものではない。
【0038】
このマトリックス構成の第1例は、モノリシック光源を備えている。このモノリシック光源は、数列×数行に配置されたモノリシックなエレクトロルミネセント(電界発光)素子のマトリックスを備えている。モノリシックマトリックスにおいて、各エレクトロルミネセント素子は、共通基板から成長させることができ、個別にか、或いはエレクトロルミネセント素子同士のサブセット(小集団)毎にかのいずれかで選択的に作動可能となるよう、電気的に接続されている。基板は、主として半導体材料で作られていてよい。基板は、1つないし複数の他の材料、例えば非半導体材料(金属や絶縁体)を含んで成っていてもよい。かくして、各エレクトロルミネセント素子またはエレクトロルミネセント素子の各グループが、光ピクセルを形成することができ、従って、そ(れら)の素子の材料へ電力が供給されたときに光を放出することができるのである。そのようなモノリシックマトリックスの構成によって、プリント回路基板上に半田付けされるよう企図された従来の発光ダイオード群と比べて、選択的に点灯可能なピクセル同士を互いにかなり近接させて配置することが可能となる。モノリシックマトリックスは、共通基板に対して垂直に測定した高さの主寸法が略1マイクロメートルであるエレクトロルミネセント素子を備えていてよい。
【0039】
モノリシックマトリックスは、マトリックス配列によるピクセル化された光ビームの生成および/または投射を制御するように制御センターに結合されている。かくして制御センターは、マトリックス配列の各ピクセルの発光を個別に制御することができる。
【0040】
上記で提示したものに代えて、マトリックス配列は、ミラー(反射鏡)のマトリックスに結合された主光源を備えていてもよい。かくして、光を放出する少なくとも1つの発光ダイオードで形成された少なくとも1つの主光源と、主光源からの光線を反射によって投射光学素子へ差し向ける光電素子のアレイとの組立体によって、ピクセル化された光源が形成される。その光電素子のアレイは、例えば「Digital Micro-mirror Device(デジタルマイクロミラーデバイス)」の頭字語DMDによっても知られるマイクロミラーのマトリックスである。適切な場合には補助光学素子が、少なくとも1つの光源の光線を集中させてマイクロミラーアレイの表面の方へ差し向けるように、それらの光線同士を集めることができる。
【0041】
各マイクロミラーは、2つの決められた位置、各光線が投射光学素子の方へ反射される第1位置と、各光線が投射光学素子とは異なる方向へ反射される第2位置との間を回動することができる。2つの決められた位置は、全てのマイクロミラーについて同様の向きにされ、マイクロミラーのマトリックスを支持する基準面に対して当該マイクロミラーのマトリックスの仕様で定められた特有の角度を成している。そのような角度は、一般的には20°未満であり、通常は約12°であってよい。かくして、マイクロミラーのマトリックス上に入射する光ビームの一部を反射する各マイクロミラーが、ピクセル化された光源の基本発光体を成す。この基本発光体を、基本光ビームを放出したりしなかったりするよう選択的に作動させるための、各ミラーの位置変更の作動および制御は、制御センターによって制御される。
【0042】
異なる実施形態において、マトリックス配列は、次のような走査素子に向かってレーザー光源がレーザービームを放出する走査レーザーシステムを備えていてもよい。即ち、レーザービームで波長変換器の表面を探査するように構成された走査素子である。この表面の像が、投射光学素子によって捕捉される。
【0043】
走査素子の探査は、人間の目が投射像の如何なる変位も知覚せぬに足るほど高い速度で実行され得る。
【0044】
レーザー光源の点灯とビームの走査運動との同期制御によって、選択的に点灯させることのできる基本発光体のマトリックスを波長変換素子の表面に生成することが可能となる。走査手段は、レーザービームの反射によって波長変換素子の表面を走査するための可動式マイクロミラーであってよい。走査手段として挙げられるマイクロミラーは、例えば、「Micro-Electro-Mechanical Systems(微小電気機械システム)」を表すMEMS型のものである。但し、本発明は、そのような走査手段に限定されるものではなく、他の種類の走査手段(例えば、回転要素上に配置された一連のミラーであって、当該要素の回転がレーザービームによる伝達面の走査をもたらすものなど)を用いることができる。
【0045】
別の変形例では、光源が複雑なものであって、光素子(発光ダイオードなど)の少なくとも1つのセグメントと、モノリシック光源の表面部分との両者を含んでいてもよい。
【0046】
図2a~
図2dは、本発明による方法の各段階を表している。
【0047】
図2aは、第1の段階を示している。この段階では、キャリブレータ3が、LEDのマトリックス配列の幾つかの解像度データ10を受け取る。これらのデータは、LEDの数、マトリックス配列の行数および列数、並びに/または各LEDの電力値を含んでいてよい。これらのデータは、光パターンのテストマップ4をシミュレートするのに有用なものである。このテストマップは、物理的に投射されても、されなくてもよい。
【0048】
図2bは、この方法の次の段階を示している。テストマップが生成されたならば、テストマップから幾つかの歪みマップ5が生成されるが、各歪みマップが歪み因子に関連付けられている。その結果、キャリブレータ3は、元のマップの幾つかの歪んだ像のデータを有し、それぞれの歪んだ像が歪み因子に関連付けられている。
【0049】
図2cは、この方法の次の段階を示している。この段階では、LEDのマトリックス配列から、実際の歪んだ光パターン6が得られる。この実際の歪んだ光パターン6が、前の段階で生成された歪みマップ5と比較されるが、その比較は、目標歪みマップと呼ばれる最も近似した歪みマップが見いだされるまで行われる。あらゆる歪みマップが歪み因子に関連付けられていたことから、この目標歪みマップは目標歪み因子に関連付けられている。この目標歪み因子は、自動車両の照明装置の制御ユニット内に保存され、更なる較正プロセスで更新されるまでは、ソフトウェアの補正因子として用いられ得るようになっている。
【0050】
図2dは、この方法の最終段階を示している。その段階では、補正因子を適用して実際の歪んだ光パターンを補正することで、補正された光パターン7を得る。補正因子は、目標歪み因子の逆数として算出される補正歪み因子である。この目標を達成するための1つの手段は、樽形方向と糸巻形方向の2つの反対方向に歪みの尺度を設定することである。実際の歪んだマップに最も近い像として樽形の歪みマップが選択された場合には、それを補償するために同じ値の糸巻形因子が実際の光パターンに適用されることとなる。この補正因子は、電子的に適用されるか、或いは、この補正因子と等価な結果の得られるレンズ素子の介在によって適用されるかの何れかであってよい。
【0051】
補正因子を適用する代替手段は、各LEDの電力値に作用させることによるものである。各LEDには通常、パルス幅変調信号(PWM)が供給される。その結果、このPWM値の変化によって、LEDの光強度の変化が達成されることになる。各光源の制御を担当する光ドライバが、前述の較正方法によって定められた適切な値で電力が各ピクセルに供給されるようにPWM値を変化させることとなる。
【0052】
補正された光パターンが完全な形になっていない場合、前の段階で算出された補正因子を用いたテスト光パターンの照合をしつつ、補正因子を選択する段階が繰り返されてもよい。この繰り返しは、
補正された光パターンを得る副段階と、
補正された光パターンを歪みマップを比較して、補正された光パターンに最も近似した歪みマップを見いだす副段階と、
保存されている歪み因子を、目標歪みマップに関連付けられた歪み因子で更新する副段階と、
更なる補正因子を適用して、補正された光パターンを補正することで、再補正された光パターンを得る副段階であって、当該補正因子は、補正された光パターンに最も近似した歪みマップの歪み因子の逆数である副段階と、
を含むであろう。
【0053】
図3は、本発明による自動車両の照明用組立体を示している。この場合、自動車両の照明装置1は標準的な自動車両の照明装置であるが、上述した方法の各段階のうちの一部を実行するのに適した外部キャリブレータ30と、当該方法の最終的な各段階を適用するための外部補正器31とが存在している。これにより、組込み型のキャリブレータを備えてはいない標準的な照明装置においても、この発明を用いることが可能となる。