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  • 特許-複合断熱材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】複合断熱材
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/04 20060101AFI20221114BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20221114BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20221114BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20221114BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20221114BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20221114BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20221114BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20221114BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20221114BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20221114BHJP
【FI】
F16L59/04
B32B7/027
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/658
H01M50/204 401H
H01M50/209
H01M50/289
H01M50/293
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021559476
(86)(22)【出願日】2019-03-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 CN2019078965
(87)【国際公開番号】W WO2020186494
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-11-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521437965
【氏名又は名称】ホーフェイ ゴション ハイテク パワー エナジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ヤー
(72)【発明者】
【氏名】チォン, チェン
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ, スティーブン
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106931278(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105906977(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0380244(US,A1)
【文献】国際公開第2017/106524(WO,A1)
【文献】特開2018-206605(JP,A)
【文献】特表2002-501969(JP,A)
【文献】米国特許第9099762(US,B2)
【文献】米国特許第08765230(US,B1)
【文献】特開2018-091480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/04
B32B 7/027
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/658
H01M 50/293
H01M 50/289
H01M 50/209
H01M 50/204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンドイッチ構造を有する複合断熱材であって、
熱伝導率が25mW/mK以下のエアロゲル材料からなる中間層、及び、
難燃性樹脂マトリックスをそれぞれ含む二つの難燃層を含み、
前記難燃層はそれぞれ、50~70重量%の難燃性樹脂マトリックスを含み、
前記中間層は、前記二つの難燃層に挟まれており、
前記難燃層は、更に、機能性充填材として、前記難燃性樹脂マトリックス中に分散された膨張性黒鉛、高温分解性材料、及び相変化材料を含み、
前記高温分解性材料は、高温で分解して、不燃性ガスを生成し、
前記相変化材料は、高温で相変化が起きている間に著しく熱を吸収し、相変化を起こしつつ大量のエネルギーを貯蔵することができる複合断熱材。
【請求項2】
前記中間層の厚さが300μm以上である、請求項1に記載の複合断熱材。
【請求項3】
前記エアロゲル材料は、白剤と、インダーとを含む、請求項1又は2に記載の複合断熱材。
【請求項4】
前記乳白剤が、SiC、TiO 、又はカーボンブラックである、請求項3に記載の複合断熱材。
【請求項5】
前記バインダーが、ガラス繊維である、請求項3に記載の複合断熱材。
【請求項6】
前記難燃層の厚さが100μm以上1000μm以下である、請求項1に記載の複合断熱材。
【請求項7】
前記難燃層は、該難燃層の全重量に対して、15~40重量%の膨張性黒鉛を含む、請求項1又はに記載の複合断熱材。
【請求項8】
前記難燃層は、該難燃層の全重量に対して、5~10重量%の相変化材料を含む、請求項1又はに記載の複合断熱材。
【請求項9】
前記難燃層は、該難燃層の全重量に対して、10~30重量%の高温分解性材料を含む、請求項1又はに記載の複合断熱材。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の複合断熱材の製造方法であって、
エアロゲル材料からなる前記中間層を形成するプロセス、及び
前記中間層の両側に前記難燃層を設けるプロセスを含む、複合断熱材の製造方法。
【請求項11】
複数のセルと、隣接する二つのセル間に配置されたスペーサーとを含む電池パックであって、前記スペーサーは請求項1~のいずれか1項に記載の複合断熱材を含む、電池パック。
【請求項12】
請求項11に記載の電池パックを含む装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝播を阻止するために電池モジュール又は電池パックで使用される断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、過去20年で新エネルギー車の動力源として非常に望ましいものとなった。グラファイト負極と層構造を有するLiMO(M=Ni、Co、Mnの二元系又は三元系)正極とを備える現在市販されているリチウムイオン電池は、セルレベルで250Wh/kgを超える重量エネルギーを有する。本業界ではより高いエネルギー密度(>300Wh/kg)が求め続けられている。
【0003】
NCM系電池又はNCA系電池は、エネルギー密度が比較的低い(160~180Wh/kg)リン酸リチウムイオン電池に比べてエネルギー密度が高いという点で非常に有利である。しかし、化学的活性物質の組成割合が高いため、安全性に問題がある。セルが高温や過充電、内部ショート等の影響を受けると、熱暴走状態になり、熱伝播によって電池パックが発火したり爆発したりする可能性があり、個人の安全を著しく損なうおそれがある。
【0004】
そのため、電池モジュール又は電池パック内において、熱暴走状態にある一つの又は複数のセルにおける熱伝播を阻止することが重要である。
【0005】
ガラス繊維、アスベスト繊維、ケイ酸塩等の断熱材料からなる断熱フィルムは、一般的に電池モジュール又は電池パックに使用され、断熱壁や難燃剤として機能する。しかし、当該技術分野では一般的に、このような断熱フィルムは、厚みがあり、効果が比較的小さいと認識されている。
【0006】
一方、エアロゲル材料は、超低熱伝導率を有することが知られており、断熱材料として用いられてきた。例えば、特許文献1には、断熱材料として使用できるレゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)エアロゲルを調製する方法が開示されている。しかし、エアロゲル自体は、構造強度が低く、非常に壊れやすいため、電子機器の断熱シートとして個別に使用した場合の効果は乏しい。また、高温で使用すると、エアロゲルの熱伝導率は大幅に増加する可能性がある。
【0007】
特許文献2には、マトリックスとして樹脂材料を含む二つの外層の間に配置されたエアロゲル材料を含む断熱用複合材料が開示されている。上記エアロゲル材料は、二つの外層で保護されているので、機械的強度を高めることができる。しかし、上記複合材料はガスエンジンにおいて断熱用に用いられ、主に防火用に用いられている。
【0008】
特許文献3には、二つの難燃層の間に配置されたエアロゲル材料と、一つの難燃層の外面に配置された熱伝導層とを含む、熱保存用及び断熱用のシージングとしての複合材料が開示されている。上記二つの難燃層はアルミ箔又はガラス繊維の難燃性生地であるため、エアロゲル材料との密着性が低い場合がある。
【0009】
したがって、断熱材として効果的に作用して電池パックを保護するための、独自の構造を有する複合断熱材を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】中国特許出願公開第103933900号明細書
【文献】中国特許出願公開第103047013号明細書
【文献】中国特許出願公開第106931278号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の技術的課題に鑑みてなされたものである。特に、一つの態様において、本発明は、電池パック内での熱伝播の問題を解決し、かつ一つのセルが熱暴走した場合の熱伝播を阻止できるようにする複合断熱材を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、また、一つのセルが熱暴走しても、電池パックが熱損傷を受けないように保護することができ、電池パックの安全設計を確保することができる、本発明の複合断熱材を含む電池パックを提供することを目的とする。
【0013】
更に、他の態様において、本発明は、本発明の複合断熱材の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
一つの態様において、上記目的を達成するために、サンドイッチ構造を有する複合断熱材であって、25mW/m-K以下の超低熱伝導率を有するエアロゲル材料からなる中間層、及び、難燃性樹脂マトリックスを含む二つの難燃層を含み、上記中間層は、前記二つの難燃層に挟まれており、前記難燃層は、更に、機能性充填材として、前記難燃性樹脂マトリックス中に分散された膨張性黒鉛、高温分解性材料、及び相変化材料を含む、複合断熱材を提供する。
【0015】
更に、複数のセルと、隣接する二つのセル間に配置されたスペーサーとを含む電池パックであって、スペーサーは本発明の複合断熱材を含む、電池パックを提供する。
【0016】
更に、本発明の電池パックを含む装置を提供する。
【0017】
他の態様において、エアロゲル材料からなる中間層を形成するプロセス、及び、中間層の両側に難燃層を設けるプロセスを含む本発明の複合断熱材の製造方法を提供する。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態において、上記中間層を形成するプロセスは、
(1)エアロゾル形成用前駆体の安定した溶液を調製する工程、
(2)上記溶液を重縮合反応によってゲル化する工程、
(3)工程(2)で得られたゾルを熟成する工程、及び
(4)熟成したゲルを超臨界乾燥させて、所望の形態や形状に成形する工程を含む。
【0019】
本発明の複合断熱材は、中間層として断熱性エアロゲル材料と、外層として3種類の機能性充填材を含む強靭な樹脂層とを有するので、優れた断熱性を有しつつ十分な機械的支持を達成することができる。したがって、本発明の複合断熱材は、従来技術における上記の技術的問題を解決し、かつ一つのセルが熱暴走した場合の熱伝播を阻止できるようにすることができる。更に、上記複合断熱材を含む電池パックは、一つのセルが熱暴走しても、電池パックが熱損傷を受けないように保護することができ、電池パックの安全設計を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
添付図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、かつ本明細書の一部として組み込まれ、本発明の実施形態を示し、説明と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0021】
図1】サンドイッチ構造を有する本発明の複合断熱材の断面模式図である。
図2】比較例3及び実施例7~9における試験用電池パックの構造を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の技術的思想を当業者が容易に実施できるように、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されず、種々の態様で実施できる。
【0023】
本発明は、サンドイッチ構造を有する複合断熱材であって、25mW/m-K以下の超低熱伝導率を有するエアロゲル材料からなる中間層、及び、難燃性樹脂マトリックスを含む二つの難燃層を含み、上記中間層は、上記二つの難燃層に挟まれており、上記難燃層は、更に、機能性充填材として、上記難燃性樹脂マトリックス中に分散された膨張性黒鉛、高温分解性材料、及び相変化材料を含む、複合断熱材を提供する。
【0024】
図1は、サンドイッチ構造を有する本発明の複合断熱材の断面模式図である。
【0025】
次に、上記複合断熱材について、図1を参照して具体的に説明する。
【0026】
図1に示すように、複合断熱材100は、二つの難燃層120に挟まれたエアロゲル材料からなる中間層110を含む。すなわち、中間層110の両側には、二つの難燃層120が設けられている。難燃層120はそれぞれ、マトリックスとして難燃性樹脂130と、難燃性樹脂マトリックス中に分散された膨張性黒鉛140、高温分解性材料150、及び相変化材料160の3種類の機能性充填材とを含む。
【0027】
中間層110は、中間層110の熱伝導率が25mW/m-K以下となるような適度な空隙率及び厚さを有するエアロゲル材料からなる。
【0028】
エアロゲル材料は空隙率が高く、材料内部において空孔が複雑につながった状態になっているので、熱伝導率が極めて低い。熱伝導は、主に気体伝導、固体伝導、及び放射伝導の3つの方法で起こることが知られている。中でも、気体伝導では、気体の多くは熱伝導率が非常に低いので、移動する熱量が最も少ない。したがって、断熱材料の多くは、材料全体の熱伝導率が低くなるよう、固体材料の体積の一部を空気が占める多孔質構造を有することが一般的である。
【0029】
本発明に係るエアロゲル材料の空隙率は、大抵の一般的な断熱材料の空隙率よりもはるかに高い。上記エアロゲル材料の空隙率は、空気体積率(%)で表すことができる。いくつかの実施態様において、上記エアロゲル材料の空気体積率は、95%より大きく、97%より大きいことが好ましく、99%より大きいことがより好ましい。いくつかの実施形態において、上記エアロゲル材料の孔径は、100nm以下であってもよく、50nm以下がより好ましく、10nm以下が最も好ましい。
【0030】
本発明に係るエアロゲル材料の厚さは、約300μm以上であってもよく、約500μm以上が好ましく、約1000μm以上がより好ましい。厚さが300μm未満であると、所望の断熱効果が得られない場合がある。厚さの上限は特に限定されないが、製造の容易性、電池パックとの適合性の観点から、2000μm以下が好ましく、1200μm以下がより好ましい。
【0031】
上記のように、本発明に係るエアロゲル材料の熱伝導率は、25mW/m-K以下であり、5mW/m-K以下がより好ましい。熱伝導率が25mW/m-Kより大きいと、所望の断熱効果が得られない場合がある。
【0032】
本発明によると、上記エアロゲル材料は、シリカ、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、ヴァンディア、酸化ネオジム、サマリア、ホルミア、炭素(カーボンナノチューブを含む)、その他の金属酸化物、及びそれらの任意の組合せから選択されるナノサイズの材料から製造できる。上記エアロゲル材料は、シリカ、酸化チタン、炭素、又はそれらの任意の組み合わせから製造されることがより好ましい。上記エアロゲル材料はシリカから製造されることが最も好ましい。ここで、「ナノサイズ」とは、材料の粒径がナノスケールであること、例えば、粒径が500nm以下であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下であることを意味する。
【0033】
また、上記エアロゲル材料は、主成分として上記のエアロゲル形成材料と、添加剤とを含んでもよい。添加剤を含む場合、上記エアロゲル材料は、エアロゲル材料の全重量に対して、約60~90重量%のエアロゲル形成材料を含んでもよい。上記添加剤は、上記エアロゲル材料の構造安定性又は凝集性を高めたり、別の物理的な利益をもたらすように作用してもよい。例えば、上記エアロゲル材料は、バインダーとして長さが10μm~2mmのガラス繊維等のガラス繊維を含んでもよく、それにより上記複合材料が強化されて適度な機械的強度を有するようになる。また、特に高温では、放射熱伝導が起こることがある。そのため、上記エアロゲル材料は、通常、特に高温での熱放射を防ぐためにSiC、TiO、又はカーボンブラック等の乳白剤を含んでもよい。上記乳白剤は、単結晶状であっても多結晶状であってもよい。上記乳白剤は、粒子状であってもよく、その粒径は1~50μmであってもよい。上記粒径は、HORIBA LA-960等のレーザー式粒度分析装置で測定できる。ここで、粒径とは、多結晶粒子の二次粒径のことであってもよい。
【0034】
いくつかの実施態様において、本発明に係るエアロゲル材料は、エアロゲル材料の全重量に対して、約60~90重量%のエアロゲル形成材料(例えば、粒径10nmのSiO、又はナノサイズのSiO及びナノサイズのTiOの組合せ)、5~30重量%の粒径20μmのSiC、及び2~10重量%の長さ100μmのガラス繊維を含んでもよい。
【0035】
本発明に係るエアロゲル材料は、超低熱伝導率を与えるだけでなく、軽量で熱安定性が高い等の利点を有してもよく、本発明に有用でありうる。
【0036】
上記エアロゲルは、通常、その骨格を形成するモノマーが相互に反応して、結合した架橋高分子からなるゾルを形成し、溶液の堆積物が高分子内の空孔を満たすゾル-ゲル重合により製造される。
【0037】
次いで、生成物を超臨界条件下で超臨界乾燥させる。超臨界条件は特に限定されず、当該技術分野で一般的に用いられている条件で超臨界乾燥させてもよい。例えば、熟成したゲルを、超臨界乾燥に用いる媒体の臨界温度以上の超臨界温度でインキュベートしてエアロゲルを得てもよい。上記超臨界乾燥に用いる媒体は、二酸化炭素、メタノール、及びエタノールから選択してもよく、二酸化炭素が好ましい。上記超臨界乾燥は、超臨界温度が30~60℃、好ましくは40~45℃、圧力が1.01MPa以上(好ましくは5.06MPa以上、より好ましくは7.38MPa以上)、保持時間が2~5時間、好ましくは2~3時間の条件で行ってもよい。
【0038】
上記超臨界乾燥では、溶液が蒸発し、結合した架橋高分子骨格が残る。上記生成物の固体伝導性を低くするためには、接触抵抗が高くなるように、また固体マトリックス中の熱経路を複雑化できるように、生成物の粒径を小さく(5~20nm)する必要がある。これにより、固体伝導による伝熱の速度が低下する。気体伝導に関しては、ナノ材料(例えば、フュームドシリカ)の孔径は、空気分子の平均自由輸送経路(74nm)より小さいため、対流伝熱は低くできる。
【0039】
また、本発明に係るエアロゲル材料は、高温での収縮率が極めて低い。例えば、上記エアロゲル材料を600℃で24時間加熱した場合、収縮率は、0.5%未満であってもよく、0.1%未満が好ましく、約0%がより好ましい。更に、上記エアロゲル材料を900℃で24時間加熱した場合、収縮率は、2%未満であってもよく、1.5%未満が好ましく、1%未満がより好ましい。
【0040】
本発明によれば、上記エアロゲル材料は、電池の動作中に熱膨張が起こり隣接するセルによって圧縮力が加えられると変形することがある。具体的には、寸法3×3mm、厚さ1mmの試験片に10kg(5×5mm)の荷重を1時間かけた圧縮実験において、本発明に係るエアロゲル材料の圧縮率は、10%以上であり、10~15%が好ましい。
【0041】
上記エアロゲル材料の形成は、エアロゲルの骨格を形成するためのモノマー、溶媒、及び任意に上記の添加剤を含む、エアロゲル材料形成用の溶液を必要とするものである。
【0042】
上記エアロゲル材料形成用の溶媒としては、特に限定されず、当該技術分野で一般的に用いられる、エアロゲル形成用の任意の溶媒を用いることができる。上記溶媒は、例えば、水若しくは水とエタノールとの混合物等の水性液体、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、若しくはジメチルカーボネート等の有機溶媒、又は1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス[(トリフルオロメチル)スルホニル]アミド等のイオン性液体であってもよい。
【0043】
以下に、本発明に係るエアロゲル材料の具体的な製造方法について説明する。
【0044】
上記のように、エアロゲル材料からなる中間層110は、二つの難燃層120によって挟まれている。図1に示すように、中間層110の両側には、二つの難燃層120が設けられている。二つの難燃層120の組成は、実際の必要性に応じて、同じであっても異なっていてもよい。
【0045】
難燃層120はそれぞれ、マトリックスとして難燃性樹脂130と、マトリックス中に分散された3種類の機能性充填材140、150、及び160とを含む。上記難燃性樹脂は、機械的な支持を与えることができ、上記3種類の機能性充填材のホストとなることができる。
【0046】
上記難燃性樹脂は、機能性材料のホストとなり機械的強度を与える耐熱性ポリマーである。これらの具体的な種類としては、耐熱性を有し、上記複合断熱材を機械的に支持できるものであれば特に限定されない。具体的には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の硫化物により芳香環が連結されたポリマー;ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、及びポリベンゾチアゾール(PBT)等の芳香族複素環を有するポリマー;はしご状ポリマー;及びシリコン-窒素モノマー、ホウ素-窒素モノマー、及びリン-窒素モノマーから調製される無機ポリマー及び半有機ポリマー等が挙げられる。例えば、ポリケイ酸塩は、熱的に安定であり得る特定の種類の無機ポリマーであってもよい。
【0047】
また、上記難燃性樹脂は、追加の難燃剤としてヘテロ原子を含む添加剤を含んでもよい。上記添加剤は、更に、無機材料を含んでもよく、例えば、三水和アルミナ、水酸化マグネシウム、又はベーマイト等の金属水酸化物、ホウ酸亜鉛又は酸化亜鉛等の金属酸化物、及びヒドロキシステン酸亜鉛等の無機塩が挙げられる。更に、長さ10μm~2mmのガラス繊維をバインダーとして添加して、上記複合材料の機械的強度を向上させることもできる。
【0048】
上記のように、膨張性黒鉛140、高温分解性材料150、及び相変化材料160の3種類の機能性充填材は、上記難燃性樹脂マトリックス130に含まれている。本発明の発明者らは驚くべきことに、外側樹脂層に含まれる3種類の機能性充填材の組み合わせは、エアロゲル材料からなる中間層と共に使用すると、一つのセルが熱暴走した場合の熱伝播を大幅に抑制することができるため、一つのセルが熱暴走しても、電池パックが熱損傷を受けないように保護することができ、電池パックの安全設計を確保することができることを見出した。
【0049】
具体的なメカニズムは不明であるが、電池パック内の一つのセルが熱暴走すると、温度が臨界温度を超えた場合に膨張性黒鉛の体積が劇的に増加することがあり、その膨張した材料が熱暴走したセルから空気を追い出すと推測される。上記高温分解性物質は、無機化合物や消火機能を有するガス(CO等)に分解することがあり、その結果、難燃性が向上する可能性がある。また、上記相変化材料は、高温で相変化反応を起こすことがあり、大量の熱を吸収することができる。
【0050】
従って、上記複合断熱材は、熱暴走を阻止するための超低熱伝導率を与える中間層としてのエアロゲル材料と共に用いると、一つのセルが熱暴走した場合の熱伝播を抑制でき、電池パックの安全性を高めることができる。
【0051】
本発明によれば、二つの難燃層120は、上記複合断熱材の全重量の10~30重量%、好ましくは15~25重量%を構成する。また、難燃層120はそれぞれ、難燃層120の全重量に対して、50~70重量%、好ましくは55~65重量%の難燃性樹脂マトリックス130を含む。また、難燃層120はそれぞれ、難燃層120の全重量に対して、15~40重量%、好ましくは20~35重量%の膨張性黒鉛140を含む。また、難燃層120はそれぞれ、難燃層120の全重量に対して、10~30重量%、好ましくは15~25重量%の高温分解性材料150を含む。更に、難燃層120はそれぞれ、難燃層120の全重量に対して、5~10重量%、好ましくは6~8重量%の相変化材料160を含む。
【0052】
本発明によれば、難燃層120の厚さは100μm以上であり、200μm以上が好ましい。厚さが100μm未満であると、所望の断熱性や難燃性を得ることができない。また、難燃層120の厚さは、製造しやすさ及び電池パックへの適合性の観点から、1000μm以下であってもよく、800μm以下が好ましい。
【0053】
膨張性黒鉛140は、粒子状であっても薄片状であってもよい。上述のように、上記膨張性黒鉛は、高温で極端な体積膨張を起こし、パックから空気を追い出すことができる。一般に、上記膨張性黒鉛は、天然黒鉛をクロム酸浴に浸漬した後、濃硫酸に浸漬して結晶格子面を剥離させ、黒鉛を膨張させて比表面積の大きい層状構造を得ることにより製造する。このプロセスでは、硫黄含有化合物又は窒素含有化合物をインターカレーション剤として添加してもよい。
【0054】
上記膨張性黒鉛の層は、熱の影響を受けてアコーディオン状に分離し、黒鉛薄片は膨張する。インターカレーション剤の量にもよるが、膨張は180~250℃の温度で開始できる。上記膨張現象は急激に起こる。上記膨張性黒鉛は、最終的に初期体積の500倍以上の体積に膨張する可能性がある。上記膨張性黒鉛は、膨張前の初期粒径が20μm以下であってもよい。
【0055】
上記膨張性黒鉛は、上述のように、難燃層120中に、15~40重量%含まれていてもよく、20~35重量%含まれることが好ましい。15重量%未満であると、所望の膨張効果が得られず、熱暴走したセルから空気を押し出す効果が不十分になる。
【0056】
上記高温分解性材料は、高温(例えば、200℃を超える温度)で分解して、不燃性ガス(例えば、CO)を生成し、オンセットセルの熱暴走を阻止することができる。上記高温分解性材料は、高温で分解して不燃性ガスを発生するものであれば特に限定されない。具体的には、CaCO、NaCO、NaHCO、KCO、KHCO、CaHCO、及びMgCO等の無機炭酸塩、並びにポリプロピレンカーボネート(PPC)及びポリエチレンカーボネート等の有機炭酸塩等が挙げられる。
【0057】
上記高温分解性材料は、上記のように、難燃層120中に、10~30重量%含まれていてもよく、15~25重量%含まれることが好ましい。10重量%未満であると、所望のガス発生効果が得られず、ガスによる消火機能が不十分になる。
【0058】
上記相変化材料160は、高温(例えば、250~300℃)で相変化が起きている間に著しく熱を吸収し、相変化を起こしつつ大量のエネルギーを貯蔵することができる。このように、難燃層120で使用して電池システム全体の温度を下げることができる。上記相変化材料としては、上記温度範囲で相変化するものであれば特に限定されない。具体的には、パラフィンワックス、ギ酸、カプリル酸、グリセリン、パルミチン酸メチル、ペンタデカノン、その他の糖水和物、及び脂質誘導体等が挙げられる。
【0059】
上記相変化材料は、上記のように、難燃層120中に、5~10重量%含まれていてもよく、6~8重量%含まれることが好ましい。5重量%未満であると、所望の吸熱効果が得られない。
【0060】
難燃層120は、スピンコート法及びブレードコート法等の従来のコーティング法によって、中間層であるエアロゲル材料の両側に塗布することができる。例えば、上記難燃性樹脂に、上記膨張性黒鉛、高温分解性材料、相変化材料の充填材を混合し、混練することにより、上記難燃性樹脂中にこれらの充填材を均一に分散させることができる。次いで、生成物を中間層であるエアロゲル材料の両側にスピンコート法により塗布し、硬化させて難燃層120を得る。上記硬化プロセスは、官能基である-COOH、-SOH、-RSOOH、又は-RCOSHを有する有機酸等の有機酸や三フッ化ホウ素等を添加して架橋反応を開始させ、難燃層120を得る工程を含んでもよい。
【0061】
本発明によれば、上記複合断熱材は、エアロゲル材料からなる中間層を形成するプロセスと、中間層の両側に難燃層を設けるプロセスとを含む方法によって作製される。
【0062】
いくつかの実施態様において、上記中間層を形成するプロセスは、
(1)エアロゾル形成用前駆体の安定した溶液を調製する工程、
(2)上記溶液を重縮合反応によってゲル化する工程、
(3)工程(2)で得られたゾルを熟成する工程、及び
(4)熟成したゲルを超臨界乾燥させて、所望の形態や形状に成形する工程、を含む。
【0063】
具体的には、工程(1)において、エアロゾル形成用前駆体の安定な溶液を形成する。上記のように、上記前駆体は、シリカ、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、ヴァンディア、酸化ネオジム、サマリア、ホルミア、炭素(カーボンナノチューブを含む)、その他の金属酸化物、及びそれらの任意の組合せから選択されるナノサイズの材料であってもよい。また、上記溶液は、SiC、TiO、又はカーボンブラック等の乳白剤又はガラス繊維等のバインダーを添加剤として含んでいてもよい。このように、一実施形態では、工程(1)は、前駆体、乳白剤、及びバインダーを含む安定な溶液を調製する工程を含んでもよい。
【0064】
上記安定な溶液を調製する方法は特に限定されず、本発明の所望の特性に影響を与えない限り、任意の適切な方法を用いてもよい。例えば、上記前駆体及び任意の添加剤を、水や水/エタノール混合物等の水性液体、及びN-メチルピロリドンや炭酸プロピレン等の有機溶媒から選択される溶媒に溶解又は分散させてもよい。
【0065】
本発明によれば、工程(1)は、水を用いて安定なケイ酸塩溶液を調製する工程を含むことが好ましい。
【0066】
次に、工程(2)において、重縮合反応により酸化物又はアルコールで架橋させたネットワークを形成して、ナノサイズの前駆体を含む溶液をゲル化してもよい。その結果、溶液の粘度が大幅に増加する。
【0067】
本発明によれば、上記溶液のpHを変化させることにより重縮合反応を開始させることが好ましい。具体的には、上記溶液にアルカリ溶液を添加して上記ナノサイズの前駆体を含む溶液のpHを調整してもよい。本発明において、上記アルカリ溶液は、特に限定されず、NaOHやKOH等のアルカリ金属水酸化物の溶液、MgOH等のアルカリ土類金属水酸化物の溶液、及びNaCO等の炭酸塩の溶液などが挙げられる。また、目標pHは特に限定されず、ナノサイズの前駆体の種類によって決定してもよい。
【0068】
例えば、本発明によれば、上記ナノサイズの前駆体がケイ酸塩及びチタン酸塩を含む場合、NaOHのようなアルカリ溶液を用いて溶液のpHを3~4に調整し、SiO/TiOゾルを形成してもよい。
【0069】
次に、工程(3)において、得られたゲルを熟成し、その間、ゾルがゲルになるまで重縮合反応が続く。その際、ゲルネットワークの収縮や、ゲルの細孔からの溶媒の排出が伴う。上記熟成プロセスは、形成されたゲルに亀裂が生じるのを防止するために重要である。
【0070】
上記熟成プロセスは、45~60℃、好ましくは50~55℃の温度で、8~24時間、好ましくは8~10時間行ってもよい。
【0071】
例えば、工程(2)でSiO/TiOゾルを形成する場合、SiO/TiOゾルを50℃で10時間熟成してゲルを形成してもよい。
【0072】
次に、工程(4)において、得られたゲルを超臨界乾燥させて、所望の形態や形状に成形する。この工程において、溶媒を除去する。
【0073】
上記のように、上記熟成したゲルを、超臨界乾燥に用いる媒体の臨界温度以上の超臨界温度でインキュベートしてエアロゲルを得てもよい。上記超臨界乾燥に用いる媒体は、二酸化炭素、メタノール、及びエタノールから選択してもよく、二酸化炭素が好ましい。上記超臨界乾燥は、超臨界温度が30~60℃、好ましくは40~45℃、保持時間が2~5時間、好ましくは2~3時間の条件で行ってもよい。
【0074】
例えば、工程(3)でSiO/TiOゲルを形成する場合、上記熟成したゲルを、超臨界CO媒体中で、50℃の超臨界温度で2時間インキュベートしてSiO/TiOエアロゲルを形成してもよい。
【0075】
上記工程(1)~(4)により、所望の空隙率及び厚さを有するエアロゲル材料を得て、更なる使用のために静置できる。
【0076】
本発明によれば、上記断熱材を作製するプロセスは、更に、上記中間層の両側に難燃層を設ける工程(5)を含んでもよい。
【0077】
上記のように、上記難燃層は、従来のコーティング法によって、中間層であるエアロゲル材料の両側に塗布することができる。例えば、上記難燃性樹脂に、上記膨張性黒鉛、高温分解性材料、及び相変化材料の充填材を混合し、混練することにより、難燃層形成用混合物を得ることができる。次いで、上記混合物を中間層であるエアロゲル材料の両側にスピンコート法により塗布し、硬化させて難燃層を得る。このようにして、上記(1)~(5)の工程を経て、本発明の複合断熱材を形成することができる。
【0078】
他の態様では、本発明は、複数のセルと、二つの隣接したセル間に配置された、本発明の複合断熱材を含むスペーサーとを含む電池パックを提供する。
【0079】
すなわち、上記複合断熱材は、二つの隣接したセル間の緩衝材として用いることができる。例えば、上記複合断熱材は、電池パックにおいて、二つの隣接したセル間に設置された断熱シート又は断熱フィルムであってもよい。図2に示すように、セルが熱暴走した場合に、上記複合断熱材は、拡散した熱から隣接するセルを保護できる。
【0080】
上記電池パック中のセルユニットとしては、セルは特に限定されず、リチウム二次電池セルのような当該技術分野で使用される通常の二次電池セルであってもよい。例えば、上記セルは、プリズム型セルであっても、パウチ型セルであってもよい。通常、セルは、正極、負極、及び電解質を含む。
【0081】
本発明は、更に、本発明の電池パックを含む装置を提供する。上記電池パックは装置の電源として使用される。上記装置としては、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、及びプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の電気自動車の1つ以上であってもよい。
【実施例
【0082】
以下、実施例を用いて実施形態を詳細に説明するが、これらの実施例に限定されない。
【0083】
比較例1
厚さ1mmのマイカ(IEC-60371-2、AXIM MICA製)を断熱フィルムとして用いた。断熱フィルムをホットプレート(ヒートパッド(HeatPad)、MHI社)上に置き、一方の面をホットプレートに接触させて、300秒で600℃まで加熱した。断熱フィルムの他方の面の温度を記録した。結果を下記表1に示す。
【0084】
比較例2
厚さ2mmのマイカ(IEC-60371-2、AXIM MICA製)を断熱フィルムとして用いた。断熱フィルムをホットプレート上に置き、一方の面をホットプレートに接触させて、300秒で600℃まで加熱した。断熱フィルムの他方の面の温度を記録した。結果を下記表1に示す。
【0085】
実施例1
SiO /TiO エアロゲルの調製
SiO/TiOエアロゲルを、以下の工程(1)~(4)により調製した。
(1)まず、秤量した4gのNaSiO(シグマアルドリッチ製)及び3gのナノサイズのNaTi(シグマアルドリッチ製)を蒸留水100mlに加えてよく撹拌して、NaSiO及びNaTiを含む安定な水溶液を調製した。
(2)アルカリ性溶液(1M KOH、シグマアルドリッチ製)を上記安定な溶液にゆっくりと添加し、上記安定な溶液のpHを3.5に調整してSiO/TiOゾルを形成した。
(3)得られたSiO/TiOゾルを水中で10時間熟成してゲルを形成した。
(4)熟成したゲルを、超臨界CO媒体中で、50℃の超臨界温度で2時間インキュベートしてSiO/TiOエアロゲルを形成した。
【0086】
上記工程(1)~(4)により、72重量%のSiO/TiOを含むエアロゲルを得た。工程(1)では、更に、25重量%のSiC(乳白剤、シグマアルドリッチ製、378097)及び3重量%のガラス繊維(バインダー、旭化成製、PA66)を添加した。得られたSiO/TiOエアロゲルを厚さ0.5mmの断熱中間層として用いた。
【0087】
難燃層の作製
本プロセスでは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂(18235、シグマアルドリッチ製)を、得られたエアロゲルの両側のコーティング層に用いるマトリックス樹脂として用いる。具体的には、膨張性黒鉛(808121、シグマアルドリッチ製)(20μm)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)(389024、シグマアルドリッチ製)(10μm)、及びパラフィン(327204、シグマアルドリッチ製)を、混合物の全重量に対して、膨張性黒鉛が20重量%、PPCが10重量%、パラフィンが5重量%となるようにPPS樹脂に混合し、混練してこれら3種類の充填材を樹脂中に均一に分散させる。
【0088】
得られた混合物を、得られたエアロゲルの両側にスピンコート法により塗布し、硬化させて、それぞれの側に厚さ0.2mmの難燃層を得た。
【0089】
複合断熱フィルムをホットプレート上に置き、一方の面をホットプレートに接触させて、300秒で600℃まで加熱した。断熱フィルムの他方の面の温度を記録した。結果を下記表1に示す。
【0090】
実施例2
得られたエアロゲルの厚さを1mmにしたこと以外は、実施例1と同様にして複合断熱フィルムを作製した。複合断熱フィルムをホットプレート上に置き、一方の面をホットプレートに接触させて、300秒で600℃まで加熱した。断熱フィルムの他方の面の温度を記録した。結果を下記表1に示す。
【0091】
実施例3
得られたエアロゲルの厚さを2mmにしたこと以外は、実施例1と同様にして複合断熱フィルムを作製した。複合断熱フィルムをホットプレート上に置き、一方の面をホットプレートに接触させて、300秒で600℃まで加熱した。断熱フィルムの他方の面の温度を記録した。結果を下記表1に示す。
【0092】
実施例4
本実施例では、実施例1で作製した多層複合材料を用いる。
得られた多層複合材料をホットプレート上に置き、一方の面をホットプレートに接触させて、600秒で600℃まで加熱した。多層複合材料の他方の面の温度を記録した。結果を下記表1に示す。
【0093】
実施例5
本実施例では、実施例2で作製した多層複合材料を用いる。
得られた多層複合材料をホットプレート上に置き、一方の面をホットプレートに接触させて、600秒で600℃まで加熱した。多層複合材料の他方の面の温度を記録した。結果を下記表1に示す。
【0094】
実施例6
本実施例では、実施例3で作製した多層複合材料を用いる。
得られた多層複合材料をホットプレート上に置き、一方の面をホットプレートに接触させて、600秒で600℃まで加熱した。多層複合材料の他方の面の温度を記録した。結果を下記表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1から分かるように、実施例1~3では、厚さは比較例1~2における厚さと同様であるにもかかわらず、300秒で600℃まで加熱した後の反対側の面の表面温度は、比較例1~2の温度よりもはるかに低い。更に、比較例1~2と実施例4~6とを比較したところ、断熱材を600秒で600℃まで加熱しても、反対側の面の温度は非常に低く、これにより、本発明の複合断熱材によって優れた断熱効果が得られることが分かる。また、実施例1~3の比較又は実施例4~6の比較から、エアロゲル層が厚いほど断熱効果が良好であることが分かる。
【0097】
比較例3
厚さ1mmのマイカ(IEC-60371-2、AXIM MICA製)を断熱フィルムとして用い、下記の電池パックにおける断熱効果の評価試験に用いる。
【0098】
図2は、試験用電池パックの構造を模式的に示す斜視図である。
【0099】
図2に示すように、四つのプリズム型セル(230Wh/kg、560Wh/L)を有する電池パック200を試験体として用いる。図2において、セル1、セル2、セル3、及びセル4は、210、220、230、及び240で示し、それぞれ平行に配置する。一枚の断熱フィルムを二つの隣接するセル間に配置する。このように、このパックでは、合計三枚のフィルムを使用した(図2参照)。セル1を強制的に熱暴走させる。その他のセルが熱暴走するまでの待機時間を記録する。比較例3の結果を表2に示す。
【0100】
実施例7
上記難燃層が10重量%の膨張性黒鉛(20μm)のみを含む以外は、実施例1と同様の方法で多層複合材料を作製した。この多層複合材料について、比較例3に示した断熱効果の評価試験を行う。セル1を強制的に熱暴走させる。その他のセルが熱暴走するまでの待機時間を記録する。実施例7の結果を表2に示す。
【0101】
実施例8
上記難燃層が10重量%の膨張性黒鉛(20μm)及び20重量%のPPC(10μm)のみを含むこと以外は、実施例1と同様の方法で多層複合材料を作製した。この多層複合材料について、比較例3に示した断熱効果の評価試験を行う。セル1を強制的に熱暴走させる。その他のセルが熱暴走するまでの待機時間を記録する。実施例8の結果を表2に示す。
【0102】
実施例9
本実施例では、実施例1で作製した多層複合材料を用いる。
この多層複合材料について、比較例3に示した断熱効果の評価試験を行う。セル1を強制的に熱暴走させる。その他のセルが熱暴走するまでの待機時間を記録する。
実施例9の結果を表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
表2から分かるように、膨張性黒鉛を含む実施例7では、比較例3に比べて、セル2、3、及び4が熱暴走するまでの待機時間が大幅に伸びていることがわかる。実施例7と8との比較から分かるように、PPCを添加すると、待機時間を更に伸ばすことができる。同様に、実施例8及び9から分かるように、パラフィンを添加すると、待機時間を更に伸ばすことができる。このように、表2から、本発明の複合断熱材は、従来の断熱材に比べて、優れた断熱効果を有することが分かる。
【0105】
表2に関して、熱暴走までの待機時間を数分改善することは、当該技術分野では大きな改善であることが知られている。また、実施例では、パラフィンの添加量は比較的少量(5重量%)であるが、表2を見ても明らかな効果が得られている。パラフィンの使用量を増やすことで断熱効果を更に向上させることが期待できる。
【0106】
したがって、表1及び表2から、本発明の複合断熱材は、上記で実証された優れた断熱効果により、電池パック内で用いて熱伝播を阻止できることが期待できる。
【0107】
実施例10
本実施例では、実施例1で調製したエアロゲルを用いる。得られたエアロゲルを同じサイズに3分割して試験片とした。
【0108】
収縮率の測定
得られたエアロゲルについて、ASTM C356及び専用の社内技術に準じて収縮率の測定を行う。この「完全浸漬(full soak)」させる方法では、試験材料を完全に浸漬し、それぞれ24時間で100℃、600℃、900℃まで加熱した後、寸法変化を測定する。実施例10の結果を表3に示す。
【0109】
実施例11
得られるエアロゲルが、SiO/TiOを63重量%、SiCを34重量%、ガラス繊維を3重量%含有すること以外は実施例1と同様にしてSiO/TiOエアロゲルを調製した。
得られたエアロゲルを同じサイズに3分割して試験片とした。
【0110】
収縮率の測定
得られたエアロゲルについて、ASTM C356及び専用の社内技術に準じて収縮率の測定を行う。この「完全浸漬(full soak)」させる方法では、試験材料を完全に浸漬し、それぞれ24時間で100℃、600℃、900℃まで加熱した後、寸法変化を測定する。実施例11の結果を表3に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
表3に示すように、実施例10及び11のSiO/TiOエアロゲルは、高温での収縮率が極めて低い。例えば、実施例10及び11では、100℃及び600℃で24時間加熱した後のエアロゲルは収縮していない(0%)。より高い900℃でも、24時間加熱した後のエアロゲルの収縮率はせいぜい、実施例10における1.7%である。一般的に知られているように、SiO/TiOの粒子は、温度が上昇すると焼結及び融合し始め、構造の性質が変化し、伝熱のための固体伝導成分が増加する。しかし、本発明に係る微孔性断熱構造体によれば、収縮率を極めて低くでき、電池に用いた場合の実効性能にほとんど影響を及ぼさない。
【0113】
比較例4
本実施例では、面積3×3mm、厚さ1mmのマイカ(IEC-60371-2、AXIM MICA製)を試験片として用いる。
【0114】
圧縮率の測定
マイカを10kg(5×5mm)の荷重で1時間圧縮する。圧縮試験前及び圧縮試験後の試験片の厚さを記録し、次式に従って試験片の圧縮永久歪みを決定する。
圧縮永久歪み(%)=(t-t)/t
式中、tは圧縮試験前の試験片の厚さを示し、tは圧縮試験後の試験片の厚さを示す。
比較例4の結果を表4に示す。
【0115】
実施例12
エアロゲルを面積3×3mm、厚さ1mmにしたこと以外は、実施例1と同様にしてエアロゲルを調製した。
【0116】
圧縮率の測定
得られたエアロゲルを10kg(5×5mm)の荷重で1時間圧縮する。圧縮試験前及び圧縮試験後の試験片の厚さを記録し、比較例4の式に従って試験片の圧縮永久歪みを決定する。実施例12の結果を表4に示す。
【0117】
実施例13
エアロゲルが、SiO/TiOを63重量%、SiCを34重量%、ガラス繊維を3重量%含有すること以外は実施例1と同様にしてエアロゲルを調製した。得られたエアロゲルは面積3×3mm、厚さ1mmであった。
【0118】
圧縮率の測定
得られたエアロゲルを10kg(5×5mm)の荷重で1時間圧縮する。圧縮試験前及び圧縮試験後の試験片の厚さを記録し、比較例4の式に従って試験片の圧縮永久歪みを決定する。実施例13の結果を表4に示す。
【0119】
【表4】
【0120】
表4から、実施例12及び13の本発明の複合断熱材の中間層としてのエアロゲル材料の圧縮永久歪み(率)は、比較例4のマイカ材料の圧縮永久歪み(率)よりもはるかに高く、これらの複合断熱材は、電池の熱膨張に起因して隣接するセルによって圧縮力が加えられた場合、適切に変形しうることが分かる。このように、本発明の複合断熱材は圧縮可能であるため、リチウム二次電池の動作中の体積変化に適応でき、パウチセルにおける用途に特に有利であると理解される。
【0121】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者には種々の適用及び変更が容易に明らかになるであろう。

図1
図2