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特許7176142各アルコール飲用者において飲用し得るアルコール飲料の種類に対応する飲用量の上限値に関する情報を提供するシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】各アルコール飲用者において飲用し得るアルコール飲料の種類に対応する飲用量の上限値に関する情報を提供するシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20221114BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20221114BHJP
【FI】
G16H20/00
G06Q50/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022035845
(22)【出願日】2022-03-09
【審査請求日】2022-05-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522093443
【氏名又は名称】清瀬 直迪
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】清瀬 直迪
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-150989(JP,A)
【文献】特表2011-524850(JP,A)
【文献】飲酒のガイドライン,厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト,[online],[2022年6月3日検索日],2021年08月18日,p.1-4,インターネット:<https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-003.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール飲料の飲用量の上限値を提供するシステムであって、中央コンピュータの入力部及び出力部と各アルコール飲用者に帰属している個別のコンピュータの入力部及び出力部とを、ネットワークによって結合した上で、以下のステップによって、各アルコール飲用者において飲用し得るアルコール飲料の種類に対応する飲用量の上限値に関する情報を提供するシステム。
1 各アルコール飲用者の所定期間におけるアルコール飲料の種類毎の合計総量を、自らがアルコール依存状態か、又はアルコール依存の可能性のある状態か、又は正常な状態の何れかであるかにつき、前記各状態に対応する番号を特定した上で、前記合計総量の信号を前記番号と共に、個別のコンピュータの出力部から中央コンピュータの入力部への伝達。
2 中央コンピュータのメモリ内に予め備えている前記各番号によって類別されている前記1の所定期間における前記アルコール飲料の種類毎の飲用し得る上限値に関するデータ前記1によって伝達された番号を伴う合計総量との大小関係を、中央コンピュータの演算処理部における対比によって、前記1によって伝達された合計総量が前記上限値を超えているか否かに関する前記対比の結果につき、中央コンピュータの出力部から個別のコンピュータの入力部に対する応答信号の伝達
3 前記2において、飲用量が上限値を超えているという回答の場合、アルコール飲用者のアルコール飲料の種類及び前記1の所定期間と共に、自らが前記1の何れかの状態にあるかを改めて当該状態に対応する番号と共に特定した上で、個別のコンピュータの出力部から中央コンピュータの入力部への当該期間中におけるアルコール飲料の種類に対応する飲用量の上限値の問い合わせを行う信号の伝達。
4 前記3の伝達に対し、中央コンピュータの演算処理部の作動によって、伝達されたアルコール飲料の種類、番号、及び前記1の所定期間に対応して、中央コンピュータのメモリ内に備えている上限値に関するデータを選択することによって、当該アルコール飲料の種類及び当該期間における飲用し得るアルコール飲料の飲用量の上限値に関するデータを中央コンピュータの出力部から個別のコンピュータの入力部に対する応答信号の伝達
【請求項2】
ステップ2の応答及びステップ4の応答が、アルコール飲料の種類毎に含有されている純アルコール量を基準とするデータに立脚していることを特徴とする請求項1記載の各アルコール飲用者において飲用し得るアルコール飲料の種類に対応する飲用量の上限値に関する情報を提供するシステム。
【請求項3】
ステップ2及びステップ4の応答の基準が、アルコール飲料の種類毎に含有されている純アルコール量ではなく、個別のアルコール飲料の種類毎に異なる基準に立脚していることを特徴とする請求項1記載の各アルコール飲用者において飲用し得るアルコール飲料の種類に対応する飲用量の上限値に関する情報を提供するシステム。
【請求項4】
各アルコール飲用者がステップ1及び/又はステップ3の伝達に際し、自らの血糖値及び/又は最高血圧値を同時に伝達し、血糖値及び/又は最高血圧値が少ないほど、ステップ2及び/又はステップ4の応答における上限値が大きいことを特徴とする請求項1、2、3の何れか一項に記載の各アルコール飲用者において飲用し得るアルコール飲料の種類に対応する飲用量の上限値に関する情報を提供するシステム。
【請求項5】
ステップ2及びステップ4の応答が、女性か男性かによって相違しており、ステップ1及びステップ3の伝達に際し、アルコール飲用者が女性か男性かの情報をも伝達することを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか一項に記載の各アルコール飲用者において飲用し得るアルコール飲料の種類に対応する飲用量の上限値に関する情報を提供するシステム。
【請求項6】
ステップ2、ステップ4のデータが年齢によって相違しており、20才~29才、30才~39才、40才~49才、50才~59才、60才~69才、70才~79才、80才~89才、90才~100才の各段階に区分されており、ステップ1及びステップ3の伝達に際し、アルコール飲用者が自らの年齢を伝達することを特徴とする請求項1、2、3、4、5の何れか一項に記載の各アルコール飲用者において飲用し得るアルコール飲料の種類に対応する飲用量の上限値に関する情報を提供するシステム。
【請求項7】
各アルコール飲用者が、ステップ1及び/又はステップ3の伝達に際し、自らのアルコール感受性遺伝子検査の結果、体内におけるアルコールの代謝機能が活性型遺伝子を有するか、又は低活性型の遺伝子を有するかを同時に伝達し、活性型の場合には、低活性型の場合よりも、ステップ2及び/又はステップ4の応答における上限値が大きいことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6の何れか一項に記載の各アルコール飲用者において飲用し得るアルコール飲料の種類に対応する飲用量の上限値に関する情報を提供するシステム。
【請求項8】
各アルコール飲用者が、ステップ1及び/又はステップ3の伝達に際し、自らのアルコール感受性遺伝子検査の結果、アルコール依存に陥らない程度において、高活性型、活性型、低活性型の何れの遺伝子を有するかを同時に伝達し、高活性型、活性型、低活性型の順序にて、ステップ2及び/又はステップ4の応答における上限値が大きいことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7の何れか一項に記載の各アルコール飲用者において飲用し得るアルコール飲料の種類に対応する飲用量の上限値に関する情報を提供するシステム。
【請求項9】
各アルコール飲用者がステップ3の伝達に際し、所定期間における複数種類のアルコール飲料の飲用量を所定の比率にて伝達し、中央コンピュータがステップ4において当該所定の比率に対応して飲用し得る種類毎のアルコール飲料の飲用量の上限値を応答することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8の何れか一項に記載の各アルコール飲用者において飲用し得るアルコール飲料の種類に対応する飲用量の上限値に関する情報を提供するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール飲料の飲用者が、アルコール飲料の種類に対応して飲用し得る飲用量の上限値に関する情報を提供し得るシステムの実現を対象としている。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料における飲用量については、一般的な基準が存在する。
【0003】
即ち、安全かつ適切な飲用量としては、純アルコールの量に換算した場合、1週間にて約100gが上限値とされている。
【0004】
これに対し、厚生労働省が提示している上限値は、1日平均20g、1週間の平均140gである。
【0005】
前記上限値は、アルコール依存状態に至らないことを基準としており、しかも男性の場合には、その2倍を上限値とする見解も存在する。
【0006】
このような一般的な基準が存在するにも拘らず、現実にはアルコール依存者、及びアルコール依存に陥る可能性のある飲用者、即ちアルコール依存の予備段階にある飲用者は増加傾向にある。
【0007】
しかも、これらのアルコール飲用者は禁酒又は断酒を行ったところで、相当の割合にて再び飲酒状態に陥るという傾向にある。
因みに、NPO法人が行った調査によれば、アルコール依存者が治療のために禁酒したところで、2か月半以内に50%が再発状態に陥り、更に2年後には約80%が再び飲酒状態に陥っている。
【0008】
従って、アルコール依存者又はその予備状態にあるアルコール飲用者においては、飲用量の上限値を設定した上で、長期的に減酒の状態にて依存状態又は依存の予備状態を是正するという方針が最も現実に適った対処方法である。
【0009】
このように、所定の期間におけるアルコール飲料の適切な飲用量の上限値は、アルコール依存者、その予備状態の飲用者、正常な飲用者において基準が相違している。
【0010】
ニコチン患者、即ち禁煙患者の場合には、特許文献1に示すような禁煙治療療法を提供するプログラム及びシステムが提示されている。
【0011】
然るに、アルコール飲料については、アルコール依存者、又は依存に陥る可能性の段階にある飲用者、又は正常な飲用者に対応して、適切な飲用量に関する情報、特に飲用量の上限値に関する情報を提供するようなシステムは、これまで提唱されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第6339298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、アルコール飲料の飲用者において、アルコール依存の程度に応じて、飲用し得るアルコール飲料の飲用量の上限値に関する情報を提供するシステムの構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明は、以下の基本構成を採用している。
アルコール飲料の飲用量の上限値を提供するシステムであって、中央コンピュータの入力部及び出力部と各アルコール飲用者に帰属している個別のコンピュータの入力部及び出力部とを、ネットワークによって結合した上で、以下のステップによって、各アルコール飲用者において飲用し得るアルコール飲料の種類に対応する飲用量の上限値に関する情報を提供するシステム。
1 各アルコール飲用者の所定期間におけるアルコール飲料の種類毎の合計総量を、自らがアルコール依存状態か、又はアルコール依存の可能性のある状態か、又は正常な状態の何れかであるかにつき、前記各状態に対応する番号を特定した上で、前記合計総量の信号を前記番号と共に、個別のコンピュータの出力部から中央コンピュータの入力部への伝達。
2 中央コンピュータのメモリ内に予め備えている前記各番号によって類別されている前記1の所定期間における前記アルコール飲料の種類毎の飲用し得る上限値に関するデータ前記1によって伝達された番号を伴う合計総量との大小関係を、中央コンピュータの演算処理部における対比によって、前記1によって伝達された合計総量が前記上限値を超えているか否かに関する前記対比の結果につき、中央コンピュータの出力部から個別のコンピュータの入力部に対する応答信号の伝達
3 前記2において、飲用量が上限値を超えているという回答の場合、アルコール飲用者のアルコール飲料の種類及び前記1の所定期間と共に、自らが前記1の何れかの状態にあるかを改めて当該状態に対応する番号と共に特定した上で、個別のコンピュータの出力部から中央コンピュータの入力部への当該期間中におけるアルコール飲料の種類に対応する飲用量の上限値の問い合わせを行う信号の伝達。
4 前記3の伝達に対し、中央コンピュータの演算処理部の作動によって、伝達されたアルコール飲料の種類、番号、及び前記1の所定期間に対応して、中央コンピュータのメモリ内に備えている上限値に関するデータを選択することによって、当該アルコール飲料の種類及び当該期間における飲用し得るアルコール飲料の飲用量の上限値に関するデータを中央コンピュータの出力部から個別のコンピュータの入力部に対する応答信号の伝達
【発明の効果】
【0015】
前記基本構成によるシステム(以下「本システム」と略称する。)においては、アルコール飲料の飲用者が依存状態にある場合、依存状態の可能性がある場合、又は正常な場合の3ケースに対応して、ステップ1及びステップ3によって伝達された段階において、3ケースがそれぞれ対応する番号と共に特定され、かつステップ2の上限値を超えているか否かの応答及びステップ4の上限値に関する応答において3ケースに即した適切な応答を実現することができる。
【0016】
しかも、個別のアルコール飲料の飲用者が、アルコール依存状態から当該依存状態の可能性がある状態に変化した場合、当該依存状態の可能性がある状態から正常な状態に変化した場合には、ステップ1及びステップ3において伝達する自らの状態につき、対応する番号を変化させることによって、当該変化に対応する応答を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】中央コンピュータと個別のコンピュータとの結合関係を示す本システムの構成図である。
図2】ステップ1~4に対応するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本システムは、以下の基本構成に立脚している:アルコール飲料の飲用量の上限値を提供するシステムであって、図1に示すように、中央コンピュータ1の入力部及び出力部と各アルコール飲用者に帰属している個別のコンピュータ2の入力部及び出力部とを、ネットワーク3によって結合した上で、図2に示すように、以下のステップによって、各アルコール飲用者において飲用し得るアルコール飲料の種類に対応する飲用量の上限値に関する情報を提供するシステム。
1 各アルコール飲用者の所定期間におけるアルコール飲料の種類毎の合計総量を、自らがアルコール依存状態か、又はアルコール依存の可能性のある状態か、又は正常な状態の何れかであるかにつき、前記各状態に対応する番号を特定した上で、前記合計総量の信号を前記番号と共に、個別のコンピュータ2の出力部から中央コンピュータ1の入力部への伝達。
2 中央コンピュータ1のメモリ内に予め備えている前記各番号によって類別されている前記1の所定期間における前記アルコール飲料の種類毎の飲用し得る上限値に関するデータ前記1によって伝達された番号を伴う合計総量との大小関係を、中央コンピュータ1の演算処理部における対比によって、前記1によって伝達された合計総量が前記上限値を超えているか否かに関する前記対比の結果につき、中央コンピュータ1の出力部から個別のコンピュータ2の入力部に対する応答信号の伝達
3 前記2において、飲用量が上限値を超えているという回答の場合、アルコール飲用者のアルコール飲料の種類及び前記1の所定期間と共に、自らが前記1の何れかの状態にあるかを改めて当該状態に対応する番号と共に特定した上で、個別のコンピュータ2の出力部から中央コンピュータ1の入力部への当該期間中におけるアルコール飲料の種類に対応する飲用量の上限値の問い合わせを行う信号の伝達。
4 前記3の伝達に対し、中央コンピュータ1の演算処理部の作動によって、伝達されたアルコール飲料の種類、番号、及び前記1の所定期間に対応して、中央コンピュータ1のメモリ内に備えている上限値に関するデータを選択することによって、当該アルコール飲料の種類及び当該期間における飲用し得るアルコール飲料の飲用量の上限値に関するデータを中央コンピュータ1の出力部から個別のコンピュータ2の入力部に対する応答信号の伝達
【0019】
ステップ1、ステップ3に関与するアルコール飲料の飲用者は、前記のように3段階存在するが、当該3段階に対応して、ステップ2、ステップ4の応答において異なる基準を設定しており、その結果、各段階に対応して適切な上限値を提供できる技術的メリットについては、既に効果の項において指摘した通りである。
【0020】
ステップ1においては、個別のアルコール飲料の飲用者が所定期間におけるアルコール飲料の種類及び飲用量を伝達することを要件としているが、通常、所定期間としては、1週間、又は精々10日を設定する場合が多い。
ステップ3においても、所定期間として、ステップ1と同一である1週間又は10日を設定する。
【0021】
背景技術の項において指摘したように、アルコール飲料の飲用量の上限値は、アルコールの量(実際には重量)を基準として設定されているが、通常のアルコール飲料の飲用者においては、ビール、日本酒、ワイン等の個別のアルコール飲料を飲用した場合、各アルコール飲料に含有されているアルコールの量を正確かつ速やかに算定し、かつ伝達することは困難である。
【0022】
そのため、ステップ1においては、アルコール飲料の種類及び当該種類に対応する量を伝達している。
同様に、ステップ3においても、アルコール飲料の種類を特定した上で、アルコール飲用者が飲用量の上限値等に関する問い合わせを、中央コンピュータ1に伝達することを要件としている。
【0023】
背景技術の項において説明したように、飲用しているアルコール飲料の飲用量の上限値は、当該アルコール飲料における純アルコール量を基準としている。
【0024】
このような基準に対応して、前記基本構成においては、ステップ2の応答及びステップ4の応答が、アルコール飲料の種類毎に含有されている純アルコール量を基準とするデータに立脚していることを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0025】
上記実施形態の場合には、ステップ2、ステップ4の応答に際し、純アルコール量によるシンプルな基準によって、速やかな応答を行うことができる。
【0026】
例えば、ビール及び焼酎、ウイスキー等の蒸留酒の飲用量が多いほど、死亡率が上がる一方、ワインの飲用量が多い場合には、そのような因果関係が存在せず、日本酒の場合には、その中間であるという報告も行われている。
【0027】
このような報告を考慮し、前記基本構成においては、ステップ2及びステップ4の応答の基準が、アルコール飲料の種類毎に含有されている純アルコール量ではなく、個別のアルコール飲料の種類毎に異なる基準に立脚していることを特徴とする実施形態を採用することもできる。
【0028】
上記実施形態の場合には、ステップ2及びステップ4の応答に際し、各アルコール飲料に対応した適切な上限値を設定することができる。
【0029】
前記3段階の何れの場合においても、血糖値及び最高血圧値が低いほど、ステップ2及びステップ4の応答における上限値を高く設定することができる。
【0030】
このような状況に対応して、前記基本構成においては、各アルコール飲用者がステップ1及び/又はステップ3の伝達に際し、自らの血糖値及び/又は最高血圧値を同時に伝達し、血糖値及び/又は最高血圧値が少ないほど、ステップ2及び/又はステップ4の応答における上限値が大きいことを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0031】
上記実施形態の場合には、各アルコール飲用者の血糖値及び/又は最高血圧値に対応したアルコール飲用量の上限値に関する情報を確保することができる。
【0032】
背景技術の項において説明したように、女性の場合と男性の場合とでは、飲用し得るアルコール飲料の飲用量の上限値が相違しており、女性の場合には、男性の約1/2とされている。
【0033】
このような状況に対応して、前記基本構成においては、ステップ2及びステップ4の応答が、女性か男性かによって相違しており、ステップ1及びステップ3の伝達に際し、アルコール飲用者が女性か男性かの情報をも伝達することを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0034】
上記実施形態の場合には、女性か男性かの相違によって、適切なアルコール飲用量の上限値に関する情報を確保することができる。
【0035】
アルコール飲料の飲用量の適切な上限値は、血液循環の程度によっても左右され、しかも若い年代の方が血液循環量が多く、その結果、前記上限値も高い状況にある。
【0036】
このような年齢と上限値との関係に基づき、前記基本構成においては、ステップ2、ステップ4のデータが年齢によって相違しており、20才~29才、30才~39才、40才~49才、50才~59才、60才~69才、70才~79才、80才~89才、90才~100才の各段階に区分されており、ステップ1及びステップ3の伝達に際し、アルコール飲用者が自らの年齢を伝達することを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0037】
上記実施形態の場合には、各年代に対応して、ステップ2、ステップ4における応答に際し、適切な情報を提供することができる。
【0038】
アルコール飲料に対する親和性、即ち体内における分解機能の程度、及びアルコール依存に陥らない程度は遺伝によって左右されるが、近年、独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター及び愛知県がんセンター研究所等の研究によって、前記の各程度を左右する遺伝子が解明されている。
【0039】
具体的には、ALDH2遺伝子(アルデヒドデヒドロゲナーゼ2遺伝子)について、活性型である場合には、体内におけるアルコール分解機能が高く、所謂酒豪タイプであり、低活性型の場合には、分解機能が高くはないが十分飲用可能な通常タイプであり、非活性型の場合には、殆どアルコールを受け付けない所謂下戸タイプに該当する。
【0040】
前記3タイプのうち、所謂非活性型の遺伝子を有し、所謂下戸のタイプは、本発明による上限値による情報の提供は不要である。
【0041】
このような状況に即して、前記基本構成においては、各アルコール飲用者が、ステップ1及び/又はステップ3の伝達に際し、自らのアルコール感受性遺伝子検査の結果、体内におけるアルコールの代謝機能が活性型遺伝子を有するか、又は低活性型の遺伝子を有するかを同時に伝達し、活性型の場合には、低活性型の場合よりも、ステップ2及び/又はステップ4の応答における上限値が大きいことを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0042】
上記実施形態の場合には、各アルコール飲料の飲用者自らが有している活性型又は低活性型の遺伝子に対応して、適切な上限値を確保することができる。
【0043】
他方、ADH1B遺伝子(アルコールデヒドロゲナーゼ1B遺伝子)においては、アルコール依存に陥り難い程度として、高活性型、活性型、低活性型に区分されており、高活性型の場合には依存に陥り難い状況にあり、低活性型の場合には依存に陥り易い状況にあり、活性型の場合には、その中間の状況にある。
【0044】
このような状況に対応して、前記基本構成においては、各アルコール飲用者が、ステップ1及び/又はステップ3の伝達に際し、自らのアルコール感受性遺伝子検査の結果、アルコール依存に陥らない程度において、高活性型、活性型、低活性型の何れの遺伝子を有するかを同時に伝達し、高活性型、活性型、低活性型の順序にて、ステップ2及び/又はステップ4の応答における上限値が大きいことを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0045】
前記実施形態の場合には、各アルコール飲用者においては、自らの検査結果による遺伝子が高活性型、活性型、低活性型の何れかに対応して、適切な上限値を確保することができる。
尚、体内におけるアルコール分解機能の活性の程度の遺伝子を伝達する実施形態において、アルコール依存症に陥り難い活性の程度の遺伝子に関する実施形態と両立可能であって、各アルコール飲用者においては、双方の遺伝子をステップ1及び/又はステップ3において伝達し、かつ中央コンピュータ1は、ステップ2及び/ステップ4において同時に伝達された遺伝子に対応する上限値を応答することも可能である。
【0046】
以下、実施例に即して説明する。
【実施例
【0047】
ステップ3の伝達において、アルコール飲料が1種類の場合には、ステップ4の応答もまた当該1種類のアルコール飲料の飲用量の上限値の応答が行われている。
【0048】
しかしながら、ステップ3におけるアルコール飲料の種類は1種類に限定されている訳ではない。
【0049】
このような状況に対応して、実施例は、各アルコール飲用者がステップ3の伝達に際し、所定期間における複数種類のアルコール飲料の飲用量を所定の比率にて伝達し、中央コンピュータ1がステップ4において当該所定の比率に対応して飲用し得る種類毎のアルコール飲料の飲用量の上限値を応答することを特徴としている。
【0050】
ステップ2及びステップ4における応答が、アルコール飲料の種類毎に含まれている純アルコール量を基準とする実施形態に即して、各上限値について具体的に説明するに、アルコール飲料の種類の数を3種類とし、当該3種類のアルコール飲料の比率をそれぞれl,m,nとした場合には、l+m+n=1 が成立する。
【0051】
純アルコールの量を基準として、3種類のアルコール飲料の飲用量の上限値を、A,B,Cとし、かつ当該A,B,Cにおけるアルコール濃度をa,b,cとし、所定期間における飲用可能なアルコールの種類の上限値をXとした場合には、
X=aA=bB=cC が成立する。
【0052】
このような場合、前記実施形態に基づいて、ステップ2及びステップ4における応答は、必然的に相対的比率に対応して、lA,mB,nCを基準としているが、当該基準に立脚した場合の3種類のアルコール飲料の純アルコール量は、laA,mbB,ncCであることから、全体のアルコールは、
laA+mbB+ncC=(l+m+n)X=X
が成立し、ステップ2、ステップ4において正確な応答を行っていることに帰する。
【0053】
純アルコール量を基準とせずに、個別のアルコール飲料の種類毎に異なる基準に立脚している実施形態に即して、各上限値について具体的に説明するに、3種類のアルコール飲料が単独の場合の上限値をA,B,Cとした場合、ステップ4の応答は、lA,mB,nCに立脚しており、前記上限値は、
lA+mB+nC である。
【0054】
l+m+n=1であることを考慮するならば、前記上限値lA+mB+nCは、相対比率l,m,nに即した平均値に即して、正確な応答を行っていることに帰する。
【0055】
このように、実施例の場合には、所定の比率のアルコール飲料、複数個のアルコール飲料について正確な上限値を設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
このように、前記基本構成に立脚している本発明においては、アルコール依存の段階、当該依存の可能性がある段階、及び正常な段階に対応して、個別のアルコール飲用者に対し、アルコール飲料の種類毎の上限値を、ネットワークを介して速やかに応答することが可能とする点において、本発明は画期的であり、その利用範囲は広範である。
【符号の説明】
【0057】
1 中央コンピュータ
2 アルコール飲用者が備えている個別のコンピュータ
3 ネットワーク
【要約】
【課題】アルコール依存の程度に応じて飲用し得る上限値の情報に関するシステム。
【解決手段】中央コンピュータ1と各コンピュータ2とを、ネットワーク3によって結合し、以下のステップによって、飲用量の上限値に関する情報を提供し、かつ上記課題を達成するシステム。
1 アルコール飲用者の所定期間におけるアルコール飲料の種類毎の総量を3段階による依存度の情報と共にコンピュータ2から中央コンピュータ1への伝達。
2 中央コンピュータ1の上限値に関する応答。
3 前記2の回答が飲用量が上限値を超えている場合、アルコール飲用者のアルコール飲料の種類及び次の予定している期間における上限値の問い合わせを3段階の依存度の情報と共に伝達。
4 中央コンピュータ1の前記3の問い合わせに対応する上限値の応答。
【選択図】図2
図1
図2