(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】乾燥燃料チップの製造方法及び乾燥燃料チップ
(51)【国際特許分類】
C10L 5/44 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
C10L5/44
(21)【出願番号】P 2019094263
(22)【出願日】2019-05-20
【審査請求日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2018158374
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】322007578
【氏名又は名称】河原井 泰央
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】河原井 武夫
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-521191(JP,A)
【文献】特開2006-291155(JP,A)
【文献】特開2003-206490(JP,A)
【文献】特開2012-143676(JP,A)
【文献】特許第6124494(JP,B1)
【文献】特開2013-082869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/44
C10B 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質燃料チップ火力発電や産業用木質燃料チップボイラー等の木質燃料チップの需要元に供給する木質燃料チップの原料として、樹木、樹木の枝葉、灌木または竹を含む植物の原料バイオマスの少なくともいずれかから乾燥燃料チップを製造する方法において、
目的とする粒径のチップに前記原料バイオマスを切削または破砕する工程を含み、
前記切削または破砕する工程では、前記目的とする粒径のチップとともに、前記目的とする粒径より小径の小粒径チップとオガ粉状の副産物が含まれる粉粒混合状態のままのフレーク状副産物に切削または破砕し、
前記目的とする粒径のチップと前記フレーク状副産物の混合状態とし
てフレーク混合チッ
プを得る工程と、
前
記フレーク混合チッ
プに含まれる前記フレーク状副産物の過半が炭化した半炭化状態になるまで
、バイオマス燃料製造装置を用いて乾燥する工程と、
乾燥した前
記フレーク混合チッ
プを、前記目的とする粒径を満足する目的とする乾燥燃料チップと、半炭化した前記フレーク状副産物に分別する工程と、を含
み、
前記バイオマス燃料製造装置は、
一方端部側が自動開閉蓋で塞がれ、他方端部側が開放された円筒状容器と、
開放された前記他方端側には、前記フレーク混合チップを投入するための投入ホッパとを有し、
前記投入ホッパから、前記円筒状容器に投入される前記フレーク混合チップにより、前記他方端側が実質的に閉じて、前記円筒状容器の内部が半密閉状態となるよう構成され、
前記乾燥する工程において、フレーク状副産物の少なくとも一部が、半密閉状態となった円筒状容器の内部で加熱されて熱分解を起こし、前記熱分解によって生ずる熱分解ガスによって、前記フレーク混合チップを乾燥させる自給燃料とする、
乾燥燃料チップの製造方法。
【請求項2】
前記分別された半炭化したフレーク状副産物を、前記木質燃料チップの需要元にフレーク半炭化バイオマスとして供給可能としたことを特徴とする、請求項1に記載の乾燥燃料チップの製造方法。
【請求項3】
乾燥した前記フレーク状副産物から、所定粒径より小径の粉状半炭化物を分別して、粉状半炭化物とフレーク状炭化物を得る工程を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の乾燥燃料チップの製造方法。
【請求項4】
請求項
3に記載の前記粉状半炭化物と前記フレーク状炭化物を、木質燃料チップ需要元に供給する代わりに、農作物を含む植物栽培用肥料、培土の原料及び添加物ならびに土壌改良剤、畜産を含む動物用飼料の添加物、ペット用消臭剤として供給可能としたことを特徴とする乾燥燃料チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質燃料チップを始めとする燃料チップの製造方法及び燃料チップに係り、特に乾燥させたバイオマス燃料チップの製造方法及びバイオマス燃料チップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバイオマス燃料の例が、本発明者による特許文献1~3に記載されている。特許文献1に記載のものは、公園、街路、道路の法面、里山等に自然繁茂する雑草及び樹木や灌木の幹等の植物をエネルギーとして利用するために、それらすべての植物をバイオマスとし、このバイオマスを乾燥した後、バイオマスのかさばりの原因である一部を粉砕し、かさばりを解消して、粉粒混合状態のバイオマスとすることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2に記載のものでは、雑草などを中心とするバイオマスを乾燥炭化することで、バイオマス燃料に加工する機械を提供するために、ドーム状の水槽の内側に大きな加熱室を設け、加熱室の中に蒸気管と回転する乾燥炭化ドラムを組み込み、一つの燃焼炉の炎で蒸気管と乾燥炭化ドラムを同時に加熱している。
【0004】
さらに、特許文献3に記載のものでは、製造されるバイオマス燃料の形状・大きさの不揃いと、乾燥炭化度合いのばらつきを解消するために、加工ラインを回転ドラムの排出部よりも下流側の工程に設けて、製造されるバイオマス燃料の形状・大きさの不揃いを解消している。
【0005】
本発明は、上記特許文献1~3に記載されたバイオマス燃料とバイオマス燃料の製造方法を改良するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5438090号公報
【文献】特許第5432302号公報
【文献】特許第6130573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のバイオマス燃料(以後、旧バイオマス燃料と言う)は、雑草を始めとする樹木の枝葉、灌木、竹、篠、笹、蔦、栽培バイオマス作物、農作物残渣、間伐材を含む森林残渣(以後、総称して原料バイオマスと言う)等の、太さ3センチ程度までのソフトバイオマスと呼ばれる原料バイオマスを、任意の寸法に単純に裁断している。
【0008】
そして、特許文献2に記載のバイオマス燃料製造装置(以後、燃料製造装置とも言う)によりバイオマス燃料に加工している。この旧バイオマス燃料は、農業温室暖房用燃料として開発されており、「半炭化バイオマス燃料」と一般的に呼ばれている。
【0009】
然し、近年世界的に、旧バイオマス燃料とは形状及び性質の異なる「半炭化バイオマス燃料」の生産技術の改良および実用化が進められている。
【0010】
世界的規模で実用化が進められている半炭化バイオマス燃料の技術は、欧米の主導により開発されており、既存のバイオマス燃料である木質ペレットの欠点である吸湿による形崩れを防止し、さらに発熱量を増強することを目的としている。そのため、対象となるペレット用の原料バイオマス全体を250~300℃の温度で炭化した後、半炭化ペレットに加工している。日本においては、この欧米で着手された技術は基礎技術として輸入され、応用技術の開発および実用化が進められている。
【0011】
この半炭化バイオマス燃料に対して旧バイオマス燃料は、国内に存在する膨大な量の未開発の原料バイオマスを有効利用し、日本伝統の製炭技術を応用してバイオマス燃料に加工したものである。より詳細にかつ厳密に説明すると、旧バイオマス燃料では、原料バイオマスを半炭化するのではなく乾燥の領域に留め、その中でも乾燥を過度に進めた「過乾燥」の状態にしている。得られたバイオマス燃料は、「過乾燥バイオマス燃料」と呼ぶべきものであり、日本の伝統技術である日本伝統の製炭技術に基づき製造されたものである。
【0012】
旧バイオマス燃料の製造における基本は、任意の寸法もしくは所定寸法に裁断した原料バイオマスを、単純に乾燥することにある。その際、乾燥を過度に進めた過乾燥の状態を実現している。
【0013】
単純な乾燥であっても、総加熱量が一定量を超えて乾燥させると、早く乾燥した葉や細い枝は焦げて炭化する。従来は、この時点で乾燥を止めた過乾燥状態を実現して、旧バイオマス燃料を製造していた。この旧バイオマス燃料の製造方法は、原料バイオマス全体を半炭化する輸入技術の半炭化技術と、この点で基本的に相違している。
【0014】
過乾燥を連続して効率的に行える装置として、特許文献2や特許文献3に記載のバイオマス燃料製造装置がある。これらの装置は実用化がなされている。
【0015】
上述したとおり、旧バイオマス燃料も半炭化燃料の一種ではあるが、欧米主導の前記半炭化バイオマス燃料とはその製造方法が根本的に異なり、また完成したバイオマス燃料の形状も異なる。したがって旧バイオマス燃料は、明確に「過乾燥バイオマス燃料」として新たに分類されるべきものである。
【0016】
過乾燥バイオマス燃料を新たに分類付けるために、従来分類されている他のバイオマス燃料との対比が必要となる。そこで、過乾燥バイオマス燃料の他のバイオマス燃料に対する長所と短所および特徴を以下に記載した。詳細を後述する、本発明に係る新過乾燥バイオマス燃料も含めての対比である。
【0017】
新、旧過乾燥バイオマス燃料の最大の優位性は、原料である原料バイオマスを始めとする未利用バイオマスが、国内に膨大かつ無限大に近い状態で存在し、それらに容易にアクセスできることにある。ここで述べる未利用バイオマスは、従来使用されている木質燃料チップや木質ペレット燃料の原料としての樹木の幹材には適合しない、いわば廃棄予定の分類に適合するものである。また、建築資材等の原料にもなり得ないものである。しかしながら未利用バイオマスは、ひとたびその植生地から採集されても、地面から早期に再生することが可能であり、身近な生活環境の中にも大量に存在する。
【0018】
また、新・旧過乾燥バイオマス燃料は、半永久的な長期保管が可能な高熱量のバイオマス燃料である。その理由は、バイオマス燃料の相当部分が半炭化しており、その結果バイオマス燃料全体の含水分量が12%前後で安定し、半炭化した炭化物が保管剤の働きをしているからである。このため、新・旧過乾燥バイオマス燃料を燃焼させる際には、炭化物が低温で着火することに加え、未炭化の部分も乾燥が進んだ状態にあるので比較的低温で着火可能であり、燃焼効率が極めて高い高熱量のバイオマス燃料が得られる。
【0019】
一方、新・旧過乾燥バイオマス燃料では、単位重量当たりの嵩密度が小さいことおよび原料バイオマスの種類によって嵩密度がばらつくことが短所として挙げられる。単位重量当たりの嵩密度を原料バイオマスのいくつかの種類について例示すると、針葉樹の枝葉では約0.004m3/kg、孟宗竹では約0.0037m3/kg、雑草では0.0048m3/kgである。このような原料バイオマスの種類による嵩密度のばらつきが解決すべき課題として残っている。
【0020】
ところで旧バイオマス燃料は、ソフトバイオマスと呼ばれる単純な裁断が可能な雑草を主とする草本系バイオマスと、ソフトバイオマスに準ずる細い樹木の枝葉を原料バイオマス用に特化したものを原料としている。そのため、旧バイオマス燃料の製造方法や装置は、木質系未利用バイオマスや竹、灌木等の新バイオマス燃料の原料使用については考慮しておらず、それら原料から新バイオマス燃料を生産することには適していない。
【0021】
一方、国内に大量に存在する、単純裁断が不可能で幹径15cm~20cm程度までの、樹木の梢端部を含む、枝葉、間伐材、雑木、灌木、竹等の木質系未利用原料バイオマス(以後、原料バイオマスと言う)は、切削機で任意の粒径のチップに容易に切削可能であるので、燃料チップとして、木質チップ火力発電や産業用バイオマスボイラー等向けの産業用バイオマス燃料としての利用が推奨されている。しかしながらこれら原料バイオマスの実用可能なレベルでの利用領域は少なく、原料バイオマスの実用的な燃料化技術の開発が求められている。
【0022】
原料バイオマスの実用的な燃料化技術における最大の課題は、原料バイオマスの切削チップ化に伴い大量に発生する、目的の粒径以下であって、従来技術においては燃料としての利用価値がない、小粒径チップとオガ粉の混合状態にあるフレーク状副産物(以後、副産物と言う)の処理技術である。
【0023】
原料バイオマスではその種類によっても異なるが、一般的に副産物の発生量が、必要とされる目的の粒径の切削チップより多くなり、切削チップの製品化においては、目的の粒径の切削チップと副産物を分別する工程が必要となる。
【0024】
木質チップ火力発電や大型木質ボイラーの燃料として普及している、通常の産業用木質燃料チップ(以後、木質燃料チップと言う)の従来の生産においては、原料原木と呼ばれる樹木の幹材を、切削機により任意の粒径の切削チップに切削する。この切削の際に副産物が発生するので、切削チップ化と同時に、篩により目的の粒径の切削チップと副産物に分別している。
【0025】
しかしながら原料バイオマスの切削チップを生産する場合には、全体に占める副産物の比率が高い上に高水分であるので、切削機により切削チップを製造することと、篩を用いて切削チップと副産物を分別することを、同時に実行するのが極めて困難になる。そのため従来用いられている木質燃料チップの生産方法を適用することが難しい。
【0026】
原料バイオマスを燃料チップとして使用するために切削すると、切削チップの含水分量は、樹木の枝葉を原料とした場合に60~70%であり、竹を原料とした場合には約90%に達することもあり、燃料用チップの実用基準の上限とされる40%までの乾燥が必要となる。
【0027】
従って、原料バイオマスをバイオマス燃料として実用化するためには、原料バイオマスを切削する際に大量に発生する副産物を効果的に分別処理すること、切削チップを簡素または容易な方法で乾燥すること、大量に発生する副産物を有効利用することが必要である。
【0028】
また、従来の木質チップ火力発電や産業用木質チップボイラー等で使用される木質燃料チップにおいても、燃焼効率を向上させるために含水分量を40%まで低下させる乾燥が必要である。従って木質燃料チップにおいても、原料バイオマスの切削チップと同様に、効果的な乾燥技術を開発することが求められている。
【0029】
従来は、含水分率40%の乾燥木質燃料チップを得るために、含水分率50%~60%の高水分の原料原木を集積場に収集集積し、1年~2年の長期にわたり集積貯蔵し、原料原木の自然乾燥の限界とされる、含水分率が40%程度になるまで自然乾燥した。原料原木の含水分率が40%程度まで低下したら、含水分率40%を実用基準とする木質燃料チップを切削により得ていた。
【0030】
従って、木質燃料チップを生産するために原木を貯蔵および自然乾燥する従来の方法では、原料原木の生産性と乾燥条件の地域差が大きくなる上に、大量の原木を広大な貯木場(集積場)に集積し、1~2年と言う長期にわたり自然乾燥せざるを得ない。そのため、木質燃料チップの生産効率が向上せず、生産コストを高める一因となっている。この不具合を回避するためには、原木の貯蔵および自然乾燥工程を省いた生産を可能にすることと、高水分の切削チップを効率的に乾燥することが必要である。
【0031】
上記した木質燃料チップの乾燥方法は、原木貯蔵自然乾燥法と呼ばれ、原料原木は末口径がおおよそ15cm以上で長さが4m程度であり、建築資材用の原木と競合する大口径原木である。一方、本発明が対象とする原料バイオマスは、建築資材用の原木とは競合しない大きさであるとともに形状が異なる。しかしながら現状では、木質燃料チップの乾燥と原料バイオマスの破砕チップの乾燥において共に効果的な乾燥技術が無く、それらの双方に適用可能な効果的な乾燥技術の開発が求められている。
【0032】
また、原木の貯蔵および自然乾燥による木質燃料チップ生産においては、原木切削の過程で相当量の副産物が発生し、原木の切削と同時に副産物は篩で選別されて廃棄物として処理されている。この副産物を有効活用することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記課題を解決するための本発明の特徴は、木質チップ火力発電や産業用木質チップボイラー等の木質燃料チップの需要元に供給する木質燃料チップの原料として、樹木、樹木の枝葉、灌木または竹等を含む植物の原料バイオマスの少なくともいずれかから乾燥燃料チップを製造する方法において、目的とする粒径のチップに前記原料バイオマスを切削または破砕する工程を含み、ここで、前記切削または破砕工程では、前記目的とする粒径のチップとともに、前記目的とする粒径より小径の小粒径チップとオガ粉状の副産物が含まれる粉粒混合状態のままのフレーク状副産物に切削または破砕し、前記目的とする粒径のチップと前記フレーク状副産物の混合状態として切削フレーク混合チップまたは破砕フレーク混合チップのいずれかを得る工程と、前記切削フレーク混合チップまたは破砕フレーク混合チップに含まれる前記フレーク状副産物の過半が炭化した半炭化状態になるまで乾燥する工程と、乾燥した前記切削フレーク混合チップまたは破砕フレーク混合チップを、前記目的とする粒径を満足する目的とする乾燥燃料チップと、半炭化したフレーク状副産物に分別する工程を含むことにある。そしてこの特徴において、前記分別された半炭化したフレーク状副産物を、前記木質燃料チップ需要元にフレーク半炭化バイオマスとして供給可能にすることが好ましい。
【0034】
上記課題を解決するための本発明の他の特徴は、木質チップ火力発電や産業用木質チップボイラー等の木質燃料チップの需要元に供給する木質燃料チップの原料として、樹木、樹木の枝葉、灌木または竹等を含む植物の原料バイオマスと、樹木の枝葉、樹木の剪定枝、雑草または栽培バイオマス作物等を含む植物由来の原料バイオマスの少なくともいずれかから乾燥燃料チップを製造する方法において、前記原料バイオマスを、目的とする粒径以下のチップに破砕し、この破砕においては、前記原料バイオマスを前記目的とする粒径より小径の小粒径チップとオガ粉が混合されたフレーク状破砕チップに破砕し、前記フレーク状破砕チップを、小粒径チップとオガ粉状のいずれか早期に乾燥する方が半炭化状態になるまで乾燥してフレーク状バイオマス燃料を得る工程とを含むことにある。
【0035】
そして上記各特徴において、乾燥した前記フレーク状副産物から、目的とする粒径より小径の粉状半炭化物を分別して、粉状半炭化物とフレーク状炭化物を得る工程を含んでいてもよく、乾燥した前記フレーク状破砕チップから、所定粒径より小径の粉状半炭化物を分別して、粉状半炭化物とフレーク状炭化物を得る工程を含んでいてもよい。
【0036】
さらに、前記粉状半炭化物と前記フレーク状炭化物を、木質燃料チップ需要元に供給する代わりに、農作物を含む植物栽培用肥料、培土の原料及び添加物ならびに土壌改良剤、畜産を含む動物用飼料の添加物、ペット用消臭剤として供給可能としてもよい。
【0037】
なお、乾燥燃料チップが上記いずれかの特徴に記載の乾燥燃料チップの製造方法に従って製造されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、日本の国土の約70%を占める森林や国土の約40%を占める過疎地周りの里地里山、道路、河川に生育する、膨大且つ無限大な量の未開発ソフトバイオマス及び未利用バイオマスを、半炭化物混合状のバイオマス燃料として利用可能にしたので、再生エネルギー資源として利用が可能になる。
【0039】
従来の産業用木質燃料チップを生産する場合には原料原木を自然乾燥していたが、高含水分率の副産物を過乾燥および半炭化するようにしたので、原料原木の自然乾燥工程を省くことが可能になり、産業用木質燃料チップの生産コストを大幅削減でき生産性の向上が可能になる。また、良質な乾燥木質燃料チップを生産することが可能になる。
【0040】
これまで廃棄処分されていた、原料原木の切削時に発生するフレーク状副産物を、フレーク混合チップの乾燥時に、その大部分を半炭化したので、良質なフレーク燃料を得ることができる。フレーク燃料は半炭化燃料ペレット、バイオガス等、既存のバイオマス燃料生産の原料資材として活用可能であり、さらに、農業用土壌改良材、畜産飼料などの添加材への利用等を含めた、汎用性の高い産業用原料および生産資材として利用することもできる。本発明によれば、木質燃料チップの乾燥と木質チップ切削の際に発生する副産物の乾燥および半炭化と半炭化した副産物の分別を、バイオマス燃料製造装置が備える1台の乾燥機で1工程の作業で同時に遂行できるので、生産コストの大幅な削減が可能になる。また、乾燥燃料チップとフレーク燃料を低価格に生産できる。
【0041】
本発明によれば、木質乾燥燃料チップと、未開発ソフトバイオマス及び未利用バイオマスを原料とするフレーク燃料、フレーク状バイオマス燃料を生産することが可能になるので、カーボンニュートラル燃料としてCO2削減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明に係る、乾燥燃料チップの製造方法及び副産物の生産システムを説明する図である。
【
図2】従来のバイオマス燃料の生産方法を説明する図である。
【
図3】木質燃料チップの生産と乾燥の方法を説明する図である。
【
図4】本発明に係る乾燥燃料チップ製造装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下本発明に係る乾燥燃料チップの実施例について、図面に基づいて説明するが、初めに、旧バイオマス燃料と、旧バイオマス燃料を改良した本発明に係る新バイオマス燃料について説明し、次にフレーク混合チップの過乾燥について説明する。
【0044】
図2に示すように、旧バイオマス燃料は、単純な裁断が可能な原料バイオマス2であるソフトバイオマス17を単純に裁断し、バイオマス燃料製造装置10(詳細は
図4参照)を用いて単純に乾燥させられただけのものである。早く乾燥する細い枝や葉のみが焦げて炭化するまで、過度に乾燥させた後、炭化して脆くなった部分のみを後工程で粉砕し、粉炭する。その形状は、粉炭と乾燥し裁断のみ実行された枝や茎の混合状態にある。
【0045】
図1に示すように、新バイオマス燃料は、単純な裁断が不可能なソフトバイオマス17を含む多様な原料バイオマス2を、破砕機で目的の粒径の破砕チップと、目的の粒径より小径の破砕チップと、フレーク状副産物30の混合状態の破砕フレーク混合チップ4(以後、フレーク混合チップ4とも言う)に破砕する。乾燥工程では、旧バイオマス燃料と同じバイオマス燃料製造装置10を用いるが、早く乾燥する副産物30のオガ粉を含むフレーク状部分の過半が半炭化するまで乾燥させる。これにより、乾燥破砕チップと粉炭が混合した、フレーク状バイオマス燃料13(以後、フレーク燃料と言う)が得られる。
【0046】
次に、フレーク混合チップ4の過乾燥について説明する。上述した通り、本発明に係るバイオマス燃料の乾燥においては、単純な乾燥を用いることが基本であり、半炭化を目的とする焙煎又は焙煎に準ずる技術を用いてはいない。
【0047】
木質チップ火力発電や木質チップボイラー等に供給する、産業用木質チップ燃料生産用の原料原木23及び原料バイオマス2を、任意の粒径のチップに破砕する。破砕の際に発生した、目的の粒径以下の副産物30を分別せずに、上述の粉粒混合状態にしたものがフレーク混合チップ4である。
【0048】
過乾燥は、このフレーク混合チップ4を、バイオマス燃料製造装置10(
図4参照)を用いて、単純に乾燥させるだけのことである。そのメカニズムは、バイオマス燃料製造装置10が備える加熱用燃焼器33で加熱された内部が高温になった半密閉容器32内で、フレーク混合チップ4を高温に曝しながら撹拌流動するものである。フレーク混合チップ4は、半密閉容器32内を流動方向の全長の約2/3程度流動する間に、半密閉容器32の容器壁面からの輻射熱および伝熱で自然に乾燥される。
【0049】
半密閉容器32の流動方向中間部までで既に乾燥したフレーク混合チップ4は、半密閉容器32の流動方向の終端部付近である、加熱用燃焼器33で高温加熱された部分に達すると、特に乾燥が進んでいる副産物30中のオガ粉状や小粒径のチップが、高温の半密閉容器32の壁面に直接接することにより、高温で焙煎され炭化する。
【0050】
しかしながら、半密閉容器32の高温加熱部分は半密閉容器32の終端部付近のみであるから、その部分を流動するフレーク混合チップ4が焙煎状態にあるのは短時間だけである。そのため、副産物30中のオガ粉や小粒径チップ等の早く乾燥したものは完全に炭化するが、比較的粒径の大きいチップ等の乾燥が進んでいないものは、表面のみが焦げて炭化した極度の乾燥状態になる。それよりさらに大粒径のチップは、表面に炭化の影響を受ける程度の乾燥状態になり、全体としてフレーク状であるフレーク燃料13が形成される。このように本発明では、過度の乾燥を故意に起こさせている。
【0051】
この一連の処理において副産物30が炭化する際には、熱分解による分解熱と、高温の熱分解ガスと、乾燥による大量の高温の水蒸気とが発生する。これらは半密閉容器32の内部に充満し、半密閉容器32の内部を高温かつ酸欠状態にする。その上、軽度の加圧状態にするので、乾燥が均一かつ迅速に進行する。これは、日本古来の製炭窯の構造と原理を応用している。
【0052】
製炭窯の構造と原理の応用を具体的に、
図4を用いて説明する。半密閉容器32の一端側には、乾燥した粗フレーク混合燃料を排出するフレーク状バイオマス燃料排出口34が設けられている。フレーク状バイオマス燃料排出口34には、図示しない自動開閉蓋が取付けられており、粗フレーク混合燃料を半密閉容器32から排出するとき以外は、この自動開閉蓋は常時閉となっている。したがって半密閉容器32は、粗フレーク混合燃料の排出時以外では、一方端部側が塞がれ他方端部側が開放された円筒状容器である。
【0053】
一方端部側が塞がれ他方端部側が開放された円筒状容器の、他方端部側である開放側には、フレーク混合チップ4を受け容れるフレーク混合チップ投入ホッパ31が設けられている。フレーク混合チップ投入ホッパ31は、フレーク混合チップ4が供給されていない時は開放状態にあるが、フレーク混合チップ4が供給されると、フレーク混合チップ4が蓋の働きをして半密閉容器32を開放状態から実質的に閉じた状態にする。これにより、半密閉容器32の内部は、外気の影響を受けない半密閉状態になる。この半密閉の状態は、製炭窯におけると同様な状態である。
【0054】
半密閉容器32内をフレーク混合チップ4が流動することにより、フレーク混合チップ4の一部が早く乾燥し、大部分が半炭化した過乾燥状態になる。半密閉状態になった半密閉容器32の内部には、副産物30が半炭化する際に発生する熱分解熱が加えられ、高温の熱分解ガスと乾燥の際に発生する高温の水蒸気の混合ガスが充満していて、外気より高い加圧状態になっている。半密閉容器32の高められた内圧は、投入ホッパ31の蓋の役割を果たすフレーク混合チップ4を押圧して、半密閉容器32の内部の混合ガスを噴き出させ、半密閉状態の半密閉容器32の内部温度を一定の高温状態に保つ。これにより、乾燥と半炭化が連鎖的かつ円滑に進行する。これは製炭窯の原理と同じ原理である。
【0055】
以上の工程を経て、原料のフレーク混合チップ4は、粉粒混合状態のフレーク燃料13となって半密閉容器32から排出される。ここで、半密閉容器32内の温度が210℃前後で推移するので、乾燥状態のフレーク混合チップ4の温度も同程度になる。炭化した高温の副産物30は半密閉容器32内で撹拌されることにより急速に冷却され、半密閉容器32から排出されるとともにさらに冷却が進み、発火点よりはるかに低い温度になる。なお、上記説明では破砕フレーク混合チップ4を用いた場合について説明したが、切削フレーク混合チップ5を用いる場合も、同様の処理が実行される。
【0056】
図1ないし
図3に戻り、本発明に係る乾燥燃料チップ11の製造方法について説明する。
図1は、本発明に係る、乾燥燃料チップ11の製造方法及びフレーク状副産物30の生産システムを説明する図である。森林1や里山6から得られた樹木や樹木の枝葉、里山6や公園等の環境整備現場8から得られた樹木の枝葉、灌木や竹、剪定枝、農地から得られた農作物や雑草等が原料バイオマスとして利用される。
【0057】
図3を用いて説明する。
図3は、木質燃料チップ28の生産と乾燥の方法を説明する図である。木質チップ火力発電や大型木質チップボイラーで使用されている、一般的な木質燃料チップ28の規格では、粒径が30mm~50mm、含水分率の上限が40%である。しかしながら、燃焼の高効率化のために30%以下の含水分率の要求が高まっている。
【0058】
木質燃料チップ28の原料は、上述したように、造成林を含む森林の樹木21を原料原木23として採集22したものであり、末口径20cm~50cm程度の原料原木23と呼ばれる丸太の伐採材である。原料の採取時の含水分率は、一般的に50%~60%であり、季節等の条件によっては含水分率は70%に達することもある。
【0059】
図2は、従来のバイオマス燃料の生産方法を説明する図である。従来は、土場と呼ばれる原料原木集積乾燥場24に、採集22した原料原木23を集積し、1年~2年の長期にわたって自然乾燥していた。なお、原料原木23の自然乾燥の限界は含水分率40%とされており、これが木質燃料チップ28の含水分率の規格上限を40%にしている理由である。
【0060】
原料原木23の採集22の際に発生する、幹径約20cm程度以下の梢端部を含む枝葉や間伐材は、従来利用されずに森林1に森林残渣として放置されていた。そこで本発明では、これらの未利用または放置された森林残渣を、未利用原料バイオマス2として利用する。未利用原料バイオマス2は、未利用エネルギー資源としての利用が推奨されているものの、従来、経済面で実用化が困難であった。
【0061】
未利用原料バイオマス2を、粒径20mm~30mm程度の小粒径チップに切削すれば、バイオマス燃料として利用可能とされている。しかし、採集、運搬、集積等の作業に要する経済的コストに起因する採算性に加え、細枝と葉までを一括して切削する以外に燃料化の方法が無く、その場合、切削フレーク混合チップ5のフレーク状副産物30の比率が大きくなり過ぎて、乾燥燃料チップ11の生産の歩留まりが悪いという、採算性における問題があった。
【0062】
この様に、乾燥燃料チップ11の生産における課題は、原料原木23から生産する木質燃料チップ28の場合でも、原料バイオマス2から生産するフレーク燃料13の場合でも、燃料チップ利用施設16へ供給する乾燥燃料チップ11の含水分率である。つまり、乾燥燃料チップ11の含水分率を30%以下まで乾燥させる必要がある。
【0063】
次に、採集現場から原料原木23と原料バイオマス2を採集し、バイオマス燃料製造装置10へ運搬し、乾燥燃料チップ11を製造するまでの様子を
図1に示す。森林1、里地里山6、農地7および環境整備現場8等の、原料原木23や原料バイオマス2の採集現場で、原料原木23や原料バイオマス2を採集する。それとともに、原料原木23や原料バイオマス2の採集現場で、移動式の切削機または破砕機で使用目的に合わせた任意の粒径の切削チップまたはフレークチップに切削または破砕3する。その際、フレーク状副産物30を分別して除去することはせずに、高含水率で粉粒混合状態の切削フレーク混合チップ5または破砕フレーク混合チップ4として、切削フレーク混合チップ5または破砕フレーク混合チップ4を乾燥しかつバイオマス燃料を生産し貯蔵する施設9(以後、バイオマス燃料生産貯蔵施設と言う)に運搬15する。これにより原料原木23や原料バイオマス2を、運搬15、集積および貯蔵、自然乾燥25する各工程を省略でき、生産コストの大幅削減が可能になる。
【0064】
切削フレーク混合チップ5を乾燥する場合には、森林1にある原料原木23を採集現場で、切削チップとフレーク状副産物を含む切削フレーク混合チップ5に切削3する。切削された切削フレーク混合チップ5は、バイオマス燃料生産貯蔵施設9に運搬15および搬入される。バイオマス燃料生産貯蔵施設9が備えるバイオマス燃料製造装置10を用いて、切削フレーク混合チップ5を乾燥し、乾燥が済んだ切削フレーク混合チップ5から乾燥燃料チップ11とフレーク状副産バイオマス燃料12を分別する。バイオマス燃料製造装置10には分別篩36が内蔵されており、自動的かつ流動的に乾燥が済んだ切削フレーク混合チップ5を、乾燥燃料チップ11とフレーク状副産バイオマス燃料12に分別する。分別されたフレーク状副産バイオマス燃料12の一部は、切削フレーク混合チップ5を乾燥するための熱源の燃料として、加熱用燃焼器33へ自動供給される。
【0065】
破砕フレーク混合チップ4を乾燥する場合には、原料バイオマス2の採集現場で原料バイオマス2を破砕フレーク混合チップ4に破砕3する。破砕されて形成された破砕フレーク混合チップ4はバイオマス燃料生産貯蔵施設9に搬入され、バイオマス燃料生産貯蔵施設9が備えるバイオマス燃料製造装置10を用いて乾燥される。破砕フレーク混合チップ4は、乾燥工程を終えればバイオマス燃料加工の全工程が終了し、フレーク状バイオマス燃料13として完成する。完成したフレーク状バイオマス燃料13の一部は、バイオマス燃料製造装置10において破砕フレーク混合チップ4を乾燥するための熱源の燃料として、バイオマス燃料製造装置10が備える加熱用燃焼器33へ自動供給される。
【0066】
なお、本実施例の乾燥のメカニズムは、外部から加熱されることで高温になりかつ極端な酸素欠乏状態にある半密閉容器32の中を、破砕フレーク混合チップ4を撹拌しながら流動させるものである。上述した通り、製炭窯の原理を応用している。早く乾燥する副産物30の大半が、外部から加熱されている所定場所で熱分解を起こし炭化する。
【0067】
上記乾燥においては、熱分解で発生する分解熱を乾燥用の熱源として効率よく利用している。副産物30の熱分解は、外部から加熱されている所定場所で、連鎖的に連続して生じる。発生する熱分解の熱量は、半密閉容器32を加熱するために外部から供給される燃焼熱に匹敵する。
【0068】
所謂、外部から加熱された半密閉容器32内に充満する、副産物30の熱分解から発生した高温の熱分解ガスに、高含水率の切削または破砕フレーク混合チップ4、5を繰り返し反転撹拌させることで、高温の熱分解ガスに晒しながら切削または破砕フレーク混合チップ4、5を流動させる。これにより、切削または破砕フレーク混合チップ4、5の乾燥を促進し、大部分が炭化した副産物30は無水状態近くにまで乾燥する。そして乾燥は、連鎖的に炭化しないチップにまで及ぶ。切削または破砕フレーク混合チップ4、5の粒径が異なる部分における乾燥速度の違いと、副産物30の炭化により発生する分解熱を、効率よく組み合わせて利用している。
【0069】
副産物30が熱分解する規模は、外部から供給される加熱量で調整可能である。切削または破砕フレーク混合チップ4、5を乾燥させるのに必要な熱量の相当部分を、副産物30の熱分解による熱分解ガスが負担できるので、副産物30の熱分解自体も切削または破砕フレーク混合チップ4、5を乾燥させる自給燃料を確保する効果的な手段である。それとともに、切削または破砕フレーク混合チップ4、5を乾燥させる自給熱源を確保する手段でもある。
【0070】
上述した切削または破砕フレーク混合チップ4、5を乾燥させることは、
図4に示したバイオマス燃料製造装置10とは異なる他の手段、例えば従来型のロータリーキルン乾燥機等の他のバイオマス乾燥装置でも製造可能であるが、それらを用いた場合には生産効率が大きく低下する。
【0071】
ところで、従来の生産方法を用いて生産される木質燃料チップ28は、自然乾燥した原料原木23を切削機で切削するときに、篩を用いて規格内の木質燃料チップ28と規格外のフレーク状副産物30に分別されて、残ったものである。すなわち、フレーク状副産物30は規格外として除去され廃棄されている。
【0072】
また、本発明に係る原料バイオマス2に対して、6か月から1年程度の長期にわたり自然乾燥させることは、特別な手段を必要としないので、乾燥処理の面からは効果的な方法である。しかしながら、原料バイオマス2の状態で長期間自然乾燥させると、乾燥処理後には、細かい枝が折れ易くなる上に葉が脱落腐敗し、廃棄物としてのゴミが大量に生じる。これは新たなゴミ処理問題を発生させ、生産効率と歩留まりの低下およびゴミ処理費用の増大を招く。この観点から、原料バイオマス2を自然乾燥させることは好ましくない。
【0073】
そこで本発明においては、原料原木23または原料バイオマス2を自然乾燥させる工程を省いている。高含水分の原料原木23または原料バイオマス2を採集22するときに、原料原木23または原料バイオマス2を採集する現場で、移動式の切削機または破砕機を用いて原料原木23または原料バイオマス2を切削または破砕する。その際、原料原木23または原料バイオマス2を、目的とする任意の粒径に切削または破砕フレーク混合チップ4、5に切削または破砕する。切削または破砕された、切削または破砕フレーク混合チップ4、5は、バイオマス燃料生産貯蔵施設9まで運搬15され、バイオマス燃料製造装置10を用いた工業的機械化の一元管理下で、バイオマス燃料製造装置10内で乾燥された後、乾燥燃料チップ11とフレーク状副産バイオマス燃料12に篩分けされる。
【0074】
バイオマス燃料製造装置10内で乾燥された切削または破砕フレーク混合チップ4、5は、総体的含水分率が15%~20%の範囲に収まって乾燥を終える。半炭化した副産物30の大部分は、無水状態に近い極度の乾燥状態にあり、分別が極めて容易になる。従って、木質燃料チップ28を乾燥させること、および副産物30を分別することの、2種の作業の一元管理が可能になり、乾燥燃料チップ11の生産コストを大幅削減でき、生産効率を大幅向上させることができる。
【0075】
本発明に係る燃料チップの乾燥方法は、本発明者による特許文献1に記載の旧バイオマス燃料の製造方法と基本的に同一の乾燥方法である。しかしながら、切削または破砕フレーク混合チップ4、5内で早期に乾燥するものだけを、焦げて半炭化するまで乾燥させているだけなので、木質燃料チップ28として製造を目指した、目的の粒径のチップでは僅かに半炭化の影響を受けた程度の乾燥状態で、乾燥を終える。
【0076】
燃料チップの本乾燥方法においては、乾燥機であるバイオマス燃料製造装置10内で、切削または破砕フレーク混合チップ4、5を単純に乾燥させ、内蔵する篩により自動的かつ流動的に、乾燥燃料チップ11とフレーク状副産バイオマス燃料12に分別する。分別されたフレーク状副産バイオマス燃料12は、粉粒混合状態の良質なフレーク半炭化バイオマス燃料である。これにより、良質な乾燥燃料チップ11と、良質なフレーク状副産バイオマス燃料12が同時に製造される。
【0077】
また本乾燥方法は、特許文献1に記載のソフトバイオマス17の一部を半炭化させる、旧バイオマス燃料の加工技術と基本的に同じである。しかしながら、特許文献1では、単純にソフトバイオマス17を裁断した後、裁断されたソフトバイオマス17の中で早く乾燥する部分を半炭化させ、炭化した部分を後から粉砕している。一方本発明では、原料原木23及び原料バイオマス2を、切削機または破砕機を用いて任意の粒径のチップに切削または破砕して、切削または破砕フレーク混合チップ4、5を得ている。そして、破砕の際に発生した生産目的外のフレーク状副産物30の大部分が半炭化するまで乾燥させ、粉炭を形成する。この点が特許文献1に記載の旧バイオマス燃料の加工方法とは異なっている。
【0078】
図2に示す様に、旧バイオマス燃料は、ソフトバイオマス17を単純に裁断した後、細い枝葉等の早く乾燥し焦げて炭化した部分を粉砕して得られている。その形状は、焚火の燃え残りの様な形状であり、農業用暖房の自給燃料向け生産であった。一方、本発明に係るフレーク状副産バイオマス燃料12は、切削木質燃料チップを乾燥させて生産された後に、所定の粒径に分別された半炭化チップに半炭化オガ粉を混合した、新規なバイオマス燃料であり、大量生産が可能な規格商品となり得るものである。すなわち、切削または破砕フレーク混合チップ4、5に含まれるフレーク状副産物の過半が炭化した半炭化状態になるまで乾燥させ、切削または破砕フレーク混合チップ4、5を、目的の粒径を満足する目的とする乾燥燃料チップと半炭化したフレーク状副産物に分別している。および/または、原料原木等を目的とする粒径より小径の小粒径チップとオガ粉状が混合されたフレーク状破砕チップに破砕した後に、フレーク状破砕チップを、小粒径チップとオガ粉状のいずれか早期に乾燥する方が半炭化状態になるまで乾燥させて、フレーク状バイオマス燃料を得ている。
【0079】
以上詳述した本発明によれば、バイオマス燃料製造装置10を用いて切削または破砕フレーク混合チップ4、5を単純に乾燥して乾燥燃料チップ11を製造している。該乾燥燃料チップ11は、木質チップ火力発電や木質チップボイラー等の需要元に供給される。そのため、産業用木質チップ燃料生産用の原料原木23及び原料バイオマス2を、任意の粒径の切削または破砕フレーク混合チップ4、5に切削または破砕している。切削または破砕の際に発生する、目的の粒径より小径であってフレーク状副産物30を分別しない粉粒混合状態の切削または破砕フレーク混合チップ4、5が、原料フレーク混合チップである。また、フレーク状副産物30に含まれる、小粒径チップと、オガ粉を半炭化させて乾燥したものが、それぞれ乾燥フレーク混合チップと乾燥フレークチップである。乾燥フレーク混合チップと乾燥フレークチップからは、フレーク状副産バイオマス燃料12とフレーク状バイオマス燃料13が得られる。
【0080】
また本発明によれば、フレーク状バイオマス燃料13は、木質チップ火力発電や木質チップボイラー等の需要元に供給される。産業用燃料木質チップ生産用の原料原木23や原料バイオマス2を、切削機または破砕機で任意の粒径の切削または破砕フレーク混合チップ4、5に切削または破砕する。切削または破砕の際に生じた、目的の粒径より小径のフレーク状副産物30を分別せずに粉粒混合状態のままとして、切削または破砕フレーク混合チップ4、5を得る。一方、フレーク状副産物30の大部分が半炭化するまでフレーク状副産物30を乾燥させて、フレーク混合バイオマス燃料を得る。
【0081】
さらに本発明によれば、原料原木23を任意粒径に切削または破砕する際に得られた切削または破砕フレーク混合チップ4、5を、上述の乾燥方法で乾燥して乾燥フレーク混合切削チップを得、その後、乾燥切削チップとフレークバイオマス燃料に分別して、多用途な乾燥燃料チップを得ている。
【0082】
また本発明によれば、乾燥燃料チップを生産する際に、分別して得られるフレーク状副産バイオマス燃料12は、原料原木を任意の粒径に切削して得られた切削フレーク混合チップ5を上述の乾燥方法で乾燥して、生産される。乾燥された切削フレーク混合チップ5は、粗粉粒混合切削チップ燃料となり、乾燥チップと炭化したフレーク状副産物30に分別されて、半炭化バイオマス燃料として提供される。
【0083】
また本発明によれば、原料原木23を切削する際に生じるフレーク状副産物30と同程度の粒径の切削または破砕フレーク混合チップ4、5に、原料バイオマス2を切削または破砕した後、切削または破砕フレーク混合チップ4、5を上述の乾燥方法で乾燥して、乾燥燃料チップが得られる。フレーク状バイオマス燃料13と、フレーク状バイオマス燃料13の生産方法は、本発明における新バイオマス燃料及びそのバイオマス燃料の生産方法の核心を構成する。
【0084】
さらに本発明によれば、フレーク状副産バイオマス燃料12とフレーク状バイオマス燃料13をさらに分別して、粒径の小さい粉状半炭化物14を得ることができる。得られた粉状半炭化物14と半炭化副産物のフレーク燃料は、家庭用暖房機の様な小型バイオマス燃料燃焼機器へ良質な半炭化バイオマス燃料として供給可能である。もしくは、バイオガスや半炭化ペレット燃料等の原料としての利用も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
基本的には、
図1に示すように、森林1及び里地里山6の樹木の枝葉、間伐材、雑木、灌木などを、未利用バイオマスの再生可能エネルギー資源として活用するものであり、庭園、公園、街路樹等の剪定枝、道路、河川、等、環境整備現場8で排出される植物ゴミをエネルギー資源として活用することも含めている。さらに、遊休農地、耕作放棄地等の農地7を活用して原料バイオマス栽培作物をエネルギー資源化することも含まれており、農林業を中心とする、広範囲な分野の未利用エネルギー資源に関して新産業の創出振興に利用できる。
【0086】
フレーク状副産バイオマス燃料12および粉状半炭化物14は、農畜産業の生産資材である、土壌改良剤や肥料添加剤および畜産飼料の添加材として利用可能である。かつて農畜産業分野では化学肥料や化学薬品の無かった時代に、木炭の粒炭や粉炭が野菜栽培や盆栽の肥料として利用され、また家畜の消化器系の病気の治療等、現代科学では後付けできる理論を知らずに利用されていた。その後、科学肥料や化学薬品の普及に伴いこれらの使用は自然消滅の傾向にあった。
【0087】
近年、炭の農業生産資材としての実効性が科学的に分析されるとともに、農畜産業分野では化学肥料や化学薬品に過度に頼ることの見直しが進み、天然由来の材料の使用が進められている。この様な動向の下で、フレーク状副産バイオマス燃料12の主要部分である炭化したフレーク状副産物30は、農畜産業分野の生産資材として十分利用可能である。すなわち、乾燥したフレーク状副産物から、所定粒径より小径の粉状半炭化物を分別して、粉状半炭化物とフレーク状炭化物を得、得られた粉状半炭化物とフレーク状炭化物を、木質燃料チップ火力発電や産業用木質燃料チップボイラーの様な木質燃料チップ需要元に供給する代わりに、農作物を含む植物栽培用肥料、培土の原料及び添加物ならびに土壌改良剤、畜産を含む動物用飼料の添加物、ペット用消臭剤として利用する。
【0088】
また、フレーク状副産バイオマス燃料12や粉状半炭化物14は、バイオガスや半炭化ペレットの原料としての利用も可能である。
【符号の説明】
【0089】
1…森林、2…(未使用)原料バイオマス、3…(原料バイオマス採集現場での)切削または破砕、4…(破砕)フレーク混合チップ、5…切削フレーク混合チップ、6…里地里山、7…農地、8…環境整備現場、9…(原料切削または破砕チップの乾燥を兼ねる)バイオマス燃料生産貯蔵施設、10…バイオマス燃料製造装置、11…乾燥燃料チップ、12…フレーク状副産バイオマス燃料、13…フレーク状バイオマス燃料(フレーク燃料)、14…粉状半炭化物、15…運搬、16…バイオマス燃料利用施設、17…ソフトバイオマス、18…(ソフトバイオマス採集現場での)裁断、19…裁断バイオマス、20…旧バイオマス燃料、21…(森林の)樹木、22…(樹木を原料原木として)採集、23…原料原木、24…原料原木集積乾燥場、25…(原料原木の)自然乾燥、26…原料原木破砕施設、27…木質チップ切削分別装置、28…木質燃料チップ、29…木質燃料チップ利用施設、30…(フレーク状)副産物、31…(切削または破砕フレーク混合チップ)投入ホッパ、32…半密閉容器、33…加熱用燃焼器、34…フレーク状バイオマス燃料(フレーク燃料)排出口、36…分別篩