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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20221115BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20221115BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20221115BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20221115BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H01L21/88 T
H01L21/88 R
H01L21/92 602H
H01L21/92 602L
H01L21/92 603D
H01L21/92 603G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019035719
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020141054
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】松田 慶太
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228583(JP,A)
【文献】特開2016-115892(JP,A)
【文献】特開2018-006391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205-21/3215
H01L 21/60-21/607
H01L 21/768
H01L 23/48-23/50
H01L 23/52-23/538
H01L 23/12-23/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体領域と、
前記半導体領域上に設けられた第1の有機絶縁層と、
前記第1の有機絶縁層上に位置する縁部を含むバンプ下地膜と、
少なくとも前記バンプ下地膜の前記縁部上から前記バンプ下地膜周りの前記第1の有機絶縁層上にわたって設けられ、前記第1の有機絶縁層に接し、前記バンプ下地膜の表面を露出させる第1の開口を有する第2の有機絶縁層と、
前記第1の開口を覆い前記バンプ下地膜に接する半田バンプと、
を備え
前記第2の有機絶縁層を構成する材料が、前記第1の有機絶縁層と前記バンプ下地膜との隙間に入り込んでいる、半導体装置。
【請求項2】
前記第1の有機絶縁層は、前記半導体領域上に形成された信号配線としての金属配線を露出させる第2の開口を有し、
当該半導体装置は、前記第1の有機絶縁層上のグランド配線領域に設けられたグランド配線としての第1の金属膜と、前記グランド配線領域から隔離した信号配線領域に設けられ、前記第2の開口を通じて前記金属配線と接続する信号配線としての第2の金属膜と、を更に備え、
前記バンプ下地膜は、前記第1の金属膜を覆う第1の部分と、前記第1の部分と分離しており前記第2の金属膜を覆う第2の部分とを含む、請求項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、半導体装置の製造方法に関する技術が記載されている。特許文献1に記載された方法では、Auバンプの下地膜(UBM(Under Bump Metal)膜)として使用している導電膜(下層からTi膜/Pd膜)で再配線を形成する。Ti膜及びPd膜を、スパッタ法を用いて成膜する。再配線の抵抗が問題となる場合には、Pd膜上にAu膜を形成し、下層からTi膜/Pd膜/Au膜を有する再配線構造とする。
【0003】
特許文献2に記載された方法は、第1金属層を形成する工程と、カバー膜を形成する工程と、第2金属層を形成する工程とを含む。カバー膜を形成する工程では、第1金属層の外周の領域に、Cu、Ti、Al、MgおよびCrの何れかよりなるカバー膜を形成する。第2金属層を形成する工程では、第1金属層をシードメタルとして、カバー膜を構成する材料とは異なり、かつNi、PdまたはAlから選択された金属の無電解メッキ処理を行う。第2金属層は、第1金属層の上面に位置し、かつカバー膜の外側には延在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-150578号公報
【文献】特開2017-228583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置を基板などにフリップチップ実装するため、ボールグリッドアレイ(Ball Grid Array:BGA)のパッケージが用いられることがある。この様な半導体装置の配線層の上には半田バンプが形成される(例えば特許文献1、2を参照)。半田と配線層との間での金属材の相互拡散を抑制するため、配線層と半田バンプとの間にはバンプ下地膜(UBM膜)が設けられる。また、半導体領域上には、例えばポリイミド膜などの有機絶縁層が、配線層の層間膜として設けられる。
【0006】
しかしながら、ポリイミドなどの有機絶縁材料と金属材料との熱膨張率差に起因して、半田ボール搭載時に発生する熱応力などによりバンプ下地膜が有機絶縁層から剥がれ易いという問題がある。バンプ下地膜と有機絶縁層との間に隙間が生じると、その隙間に半田が侵入するおそれがある。半田が侵入すると、バンプ下地膜と配線層との界面で破断が生じ易くなり、半導体装置の信頼性が低下する。
【0007】
そこで、本開示は、バンプ下地膜と有機絶縁層との隙間への半田の侵入を低減して信頼性を向上できる半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る半導体装置の製造方法は、半導体領域上に第1の有機絶縁層を形成する工程と、第1の有機絶縁層に接する縁部を含むバンプ下地膜を形成する工程と、バンプ下地膜の熱処理を行う工程と、少なくともバンプ下地膜の縁部上からバンプ下地膜周りの第1の有機絶縁層上にわたって設けられ、第1の有機絶縁層に接し、バンプ下地膜の表面を露出させる第1の開口を有する第2の有機絶縁層を形成する工程と、を含む。
【0009】
一実施形態に係る半導体装置は、半導体領域と、半導体領域上に設けられた第1の有機絶縁層と、第1の有機絶縁層上に位置する縁部を含むシード金属膜と、シード金属膜上に設けられたバンプ下地膜と、少なくともバンプ下地膜の縁部上からバンプ下地膜周りの第1の有機絶縁層上にわたって設けられ、第1の有機絶縁層に接し、バンプ下地膜の表面を露出させる第1の開口を有する第2の有機絶縁層と、第1の開口を覆いバンプ下地膜に接する半田バンプと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、バンプ下地膜と有機絶縁層との隙間への半田の侵入を低減して信頼性を向上できる半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置1Aを示す平面図である。
図2図2は、図1に示されたII-II線に沿った断面(半田バンプ17の下地構造)の拡大図である。
図3図3の(a)~(c)は、半導体装置1Aの製造方法における各工程を示す断面図である。
図4図4の(a)~(c)は、半導体装置1Aの製造方法における各工程を示す断面図である。
図5図5の(a)、(b)は、半導体装置1Aの製造方法における各工程を示す断面図である。
図6図6は、一実施形態による半導体装置1A及びその製造方法によって得られる効果を説明するための図である。
図7図7は、変形例に係る工程を示す断面図である。
図8図8は、変形例において有機絶縁層32を形成した状態を示す断面図である。
図9図9は、変形例に係る製造方法によって得られる効果を説明するための図である。
図10図10の(a)は、特許文献2に記載された半導体装置の比較例の構造の一部を拡大して示す断面図である。図10の(b)は、図10の(a)の一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の半導体装置の製造方法及び半導体装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置1Aを示す平面図である。図1に示すように、半導体装置1Aは、半導体領域10と、半導体領域10の表面に設けられた複数の半田バンプ17とを備えるBGAタイプの半導体装置である。複数の半田バンプ17は、半導体領域10の面上において平面的に分散して配置されている。半田バンプ17は、例えば錫および銀の合金(Sn-Ag)などの金属によって構成される略球状の構造体である。
【0014】
例えば半導体装置1Aが窒化ガリウム(GaN)系半導体からなる高電子移動度トランジスタ(HEMT)である場合、半導体領域10は、GaNチャネル層と、AlGaNバリア層(もしくはInAlNバリア層)とを含む。なお、半導体領域10は、HEMT以外の電界効果トランジスタ(FET)、あるいはそれ以外の半導体機能デバイスのための半導体層を含んでもよい。
【0015】
半導体領域10の表面には、グランド配線領域11と、信号配線領域12とが設けられている。グランド配線領域11は、半導体領域10の表面のほぼ全面にわたって設けられ、その平面形状は半導体装置1Aの平面形状とほぼ相似しており、一例では略長方形である。或る方向に対向するグランド配線領域11の一対の辺11a、11bには半円状のN個(図示例では5個)の切り欠き11cが形成され、各切り欠き11cの内側に信号配線領域12が設けられている。信号配線領域12の平面形状は例えば円形である。グランド配線領域11と信号配線領域12とは互いに隔離しており、グランド配線領域11と信号配線領域12との間には半円環状の隙間領域13が設けられている。図示例では、グランド配線領域11の一方の辺11aに沿って2つの信号配線領域12が並んで配置され、グランド配線領域11の他方の辺11bに沿って3つの信号配線領域12が並んで配置されている。
【0016】
複数の半田バンプ17は、M個(図示例では12個)のグランド半田バンプ17aと、N個の信号半田バンプ17bとを含む。M個のグランド半田バンプ17aは、グランド配線領域11において、互いに直交する行方向及び列方向に沿って二次元状に並んでいる。N個の信号半田バンプ17bは、信号配線領域12上に設けられ、その一部(図示例では2個)がグランド配線領域11の辺11aに沿って並び、残部(図示例では3個)がグランド配線領域11の辺11bに沿って並んでいる。
【0017】
図2は、図1に示されたII-II線に沿った断面(半田バンプ17の下地構造)の拡大図である。図2に示すように、半導体装置1Aは、半導体領域10の面上に設けられた金属配線21、及び、半導体領域10の面上に設けられた有機絶縁層31(第1の有機絶縁層)を備える。さらに、半導体装置1Aは、金属膜22及び23、バンプ下地膜26、及び有機絶縁層32(第2の有機絶縁層)を備える。なお、図2では、図1に示した半導体領域10及び半田バンプ17の図示を省略している。
【0018】
金属配線21は、半導体領域10上の無機絶縁層(例えばSiN層またはSiO2層)上に設けられた信号配線である。金属配線21は、半導体領域10とオーミック接触を成す電極(例えばソース電極及びドレイン電極)、あるいは半導体領域10とショットキ接触を成す電極(例えばゲート電極)に接続されている。金属配線21は、例えば金(Au)といった金属により構成されている。金属配線21の厚さは、例えば0.5μm~3.0μmの範囲内であり、一実施例では1μmである。
【0019】
有機絶縁層31は、配線層の間に設けられる誘電体の層間膜である。有機絶縁層31は、主に樹脂からなり、一例ではポリイミドからなる。有機絶縁層31は、半導体領域10の面上の全面にわたって設けられており、無機絶縁層及び金属配線21を覆う。有機絶縁層31は、金属配線21の一部を露出させる開口31aを金属配線21上に有する。開口31aは、本実施形態における第2の開口の例である。半導体領域10の厚さ方向からみて、開口31aは、信号半田バンプ17b(図1を参照)と重なる。有機絶縁層31の厚さは、例えば1μm~6μmの範囲内である。
【0020】
金属膜22は本実施形態における第1の金属膜の例であり、グランド配線として機能する。金属膜23は本実施形態における第2の金属膜の例であり、信号配線として機能する。金属膜22及び23は、有機絶縁層31上に設けられ、例えば金(Au)といった金属からなる。金属膜22は、図1に示されたグランド配線領域11上に設けられ、その平面形状はグランド配線領域11と一致する。具体的には、金属膜22は、半導体領域10の表面のほぼ全面にわたって設けられ、その平面形状は半導体装置1Aの平面形状とほぼ相似しており、一例では略長方形である。或る方向に対向する金属膜22の一対の辺には、図1に示した切り欠き11cに対応する半円状の切り欠きが形成され、各切り欠きの内側に金属膜23が設けられている。金属膜23は、図1に示された信号配線領域12上に設けられ、その平面形状は信号配線領域12と一致する。金属膜22と金属膜23とは互いに離れており、その間隔d1は例えば50~300μmの範囲内である。金属膜23は、有機絶縁層31に形成された開口31aを埋め込むと共に開口31aを完全に覆っており、開口31aを通じて金属配線21と接続している。金属膜22、23の厚さは、例えば0.5~5.0μmの範囲内であり、一実施例では2μmである
【0021】
バンプ下地膜26は、金属膜22上に設けられ金属膜22を覆う部分26a(第1の部分)と、金属膜23上に設けられ金属膜23を覆う部分26b(第2の部分)とを含んで構成されている。本実施形態では、部分26aは金属膜22の上面及び側面を覆い、部分26aの縁部26cは金属膜22周辺の有機絶縁層31上に位置し、有機絶縁層31に接している。また、部分26bは金属膜23の上面及び側面を覆い、部分26bの縁部26dは金属膜23周辺の有機絶縁層31上に位置し、有機絶縁層31に接している。部分26aと部分26bとは、隙間領域13(図1を参照)を挟んで互いに分離している。
【0022】
バンプ下地膜26は、シード金属膜24と、シード金属膜24上に設けられた主膜25とを主に含んで構成されている。シード金属膜24は、例えばチタン(Ti)、パラジウム(Pd)といった金属を主に含む。一例では、シード金属膜24は、金属膜22、23上に設けられたTi層と、Ti層上に設けられたPd層とを含む。この場合、Ti層の厚さは例えば5nm~100nmの範囲内であり、一実施例では5nmである。また、Pd層の厚さは例えば10nm~500nmの範囲内であり、一実施例では10nmである。このシード金属膜24は、主膜25を無電解めっき処理により形成する際のシードメタルとして用いられる。また、シード金属膜24は、主膜25がNi(もしくはNiCr)を含み金属配線21がAuを含む場合に、Ni(もしくはNiCr)とAuとが合金を形成することを妨げる。
【0023】
主膜25は、シード金属膜24上に設けられた金属膜であり、シード金属膜24に接する。主膜25は、例えばニッケル(Ni)若しくはニッケル・クロム合金(NiCr)といった金属を主に含む。主膜25は、半田バンプ17を構成する半田と金属配線21を構成する金(Au)とが相互拡散することを防ぐために設けられる。主膜25がNi層である場合、その厚さは例えば3μm~6μmの範囲内である。主膜25の縁部25cは、シード金属膜24からはみ出している。縁部25cは、厚み方向に有機絶縁層31と隙間をあけて設けられてもよく、有機絶縁層31と接してもよい。
【0024】
有機絶縁層32は、例えば感光性樹脂を主に含む。感光性樹脂は、例えば感光性ポリイミドである。一例では、有機絶縁層32は有機絶縁層31と同じ材料からなる。有機絶縁層32は、少なくともバンプ下地膜26の縁部26c、26d上からバンプ下地膜26周りの有機絶縁層31上にわたって設けられており、有機絶縁層31と接している。本実施形態では、有機絶縁層32は、半導体領域10の面上の全面にわたって設けられており、バンプ下地膜26から露出した有機絶縁層31を覆う。有機絶縁層32は、バンプ下地膜26の部分26aを露出させる開口32aと、バンプ下地膜26の部分26bを露出させる開口32bとを有する。開口32a、32bは、本実施形態における第1の開口の例である。半導体領域10の厚さ方向からみて、開口32aはグランド半田バンプ17a(図1を参照)と重なり、開口32bは信号半田バンプ17b(図1を参照)と重なる。グランド半田バンプ17aは、開口32aを覆い、開口32aを通じてバンプ下地膜26の部分26aの主膜25に接する。信号半田バンプ17bは、開口32bを覆い、開口32bを通じてバンプ下地膜26の部分26bの主膜25に接する。有機絶縁層32の厚さは、例えば1.0~10.0μmの範囲内である。
【0025】
続いて、上述した半導体装置1Aの製造方法について説明する。まず、基板上に半導体領域10をエピタキシャル成長する。この成長は、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて行われる。次に、半導体領域10上に、図示しない電極(例えばゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極)を形成する。電極は、例えば半導体領域10上に開口を有するレジストマスクを形成し、レジストマスクの開口内及びレジストマスク上に電極材料となる金属を蒸着し、レジストマスク上の金属をレジストマスクと共に除去する(リフトオフ)ことにより形成される。続いて、半導体領域10上に無機絶縁層(例えばSiN層)を形成する。無機絶縁層の形成は、例えばプラスマCVD法により行うことができる。
【0026】
図3の(a)~(c)、図4の(a)~(c)、並びに図5の(a)、(b)は、半導体装置1Aの製造方法における無機絶縁層の形成より後の各工程を示す断面図である。上記の工程に続き、図3の(a)に示すように、無機絶縁層上に、所定の平面パターンを有する金属配線21を例えば電解メッキ法により形成する。このとき、金属配線21と電極とは、無機絶縁層に形成された開口を介して互いに接続される。
【0027】
続いて、金属配線21が設けられた半導体領域10の面上に、有機絶縁層31を形成する。有機絶縁層31の形成は、例えば有機絶縁層31の材料(例えばポリイミド)を半導体領域10上にスピンコートすることにより行われる。そして、開口31aに対応する開口パターンを有するマスク(不図示)を有機絶縁層31上に形成し、このマスクを介して有機絶縁層31をエッチングすることにより、開口31aを形成して金属配線21を露出させる。マスク材料は、例えばSiNもしくはSiO2である。マスクの開口の形成には、フォトリソグラフィー技術もしくは電子線リソグラフィー技術が用いられる。なお、開口31aは、プラズマを用いたドライエッチングにより形成され得る。
【0028】
続いて、図3の(b)に示すように、所定の平面パターンを有する金属膜22、23を例えば電解メッキ法により有機絶縁層31上に形成する。この工程では、図1に示すグランド配線領域11に金属膜22を形成し、信号配線領域12に金属膜23を形成する。このとき、金属膜23は、有機絶縁層31の開口31aを介して金属配線21に接続される。
【0029】
続いて、図3の(c)に示すように、半導体領域10上の全面にシード金属膜24を形成し、このシード金属膜24により、金属膜22及び23の上面及び側面、並びに金属膜22、23から露出した有機絶縁層31の表面を覆う。シード金属膜24は、例えばスパッタ法により形成される。一実施例では、厚さ5nmのTi層をスパッタ法により形成したのち、その上に、厚さ10nmのPd層をスパッタ法により形成する。こうして形成されるシード金属膜24は、金属膜22を覆う部分24aと、金属膜23を覆う部分24bと、有機絶縁層31上に位置する部分24cとを含む。
【0030】
続いて、図4の(a)に示すように、フォトレジストRをシード金属膜24上に形成する。フォトレジストRは、部分24c上に開口Raを有し、開口Raを通じて部分24cのみを露出させる。フォトレジストRは例えばネガ型レジストである。その場合、ネガ型レジストをシード金属膜24上に塗布し、開口Raに相当する領域を除く他の領域を露光し現像することにより、露光されていない開口Raに相当する領域のみを除去することができる。フォトレジストRは、シード金属膜24の部分24a及び24bを覆うと共に、部分24a及び24bの周縁部に隣接する部分24cの一部を覆う。そして、フォトレジストRの開口Raから露出したシード金属膜24の部分24cを、エッチングにより除去する。エッチングは、例えばヨウ素系エッチャント(製品名「AURUM」シリーズ、関東化学株式会社製)を用いたウェットエッチング、或いは反応性イオンエッチング(RIE)といったドライエッチングである。これにより、シード金属膜24の部分24aと部分24bとが互いに分離する。また、部分24a、24bの周囲において、有機絶縁層31上に位置し且つ有機絶縁層31に接するシード金属膜24の縁部が残存する。その後、フォトレジストRを除去する。
【0031】
続いて、図4の(b)に示すように、シード金属膜24上に主膜25を形成することにより、バンプ下地膜26の部分26a、26bを形成する。この工程では、主膜25を、シード金属膜24をシードメタルとする無電解メッキ法により形成する。具体的には、自己触媒メッキの次亜リン酸塩を触媒とする無電解メッキ処理(例えば自己触媒型無電界メッキ処理)により、主膜25を形成する。無電解メッキを使用する理由は、電界メッキに比べて信頼性に優れているからである。シード金属膜24は部分24a、24bに限定して設けられているので、この無電解メッキは選択メッキとなり、主膜25は、部分24a上と、部分24b上とに限定して成長する。但し、主膜25は横方向にも成長するので、主膜25には、シード金属膜24からはみ出た縁部25cが形成される。
【0032】
なお、無電解メッキとは、外部電源を使用せずにメッキを施す方法であり、イオン化傾向を用いる置換型メッキ、還元剤を用いる自己触媒型の無電解メッキ(還元型メッキ)、そして、これらを組み合わせた置換還元型メッキ等がある。ここでは、自己触媒型の無電解メッキを用いたが、他の無電解メッキを用いてもよい。一方、電解メッキとは、外部電源を使用して電極間に電流を流すことで陰極から電子を与え、メッキを施す方法である。
【0033】
続いて、主膜25上に図示しないAu膜を形成する。Au膜の形成は、例えば無電解メッキ処理、電界メッキ処理、蒸着・リフトオフ法、またはスパッタリング法などを用いて行われる。Au膜の厚さは例えば10μmである。
【0034】
続いて、図4の(c)に示すように、バンプ下地膜26を含む生産物を熱処理炉Q内に設置して、バンプ下地膜26の熱処理を行う。熱処理温度は、後の構成で形成される半田バンプ17のリフロー温度よりも高い温度であり、例えば260℃~350℃の範囲内である。熱処理時間は例えば5~60分の範囲内であり、一例では30分である。熱処理の雰囲気は、例えば大気(窒素(N2)及び酸素(O2)の混合雰囲気)、または真空雰囲気、ArやHeの不活性ガス雰囲気である。
【0035】
続いて、図5の(a)に示すように、バンプ下地膜26が形成された半導体領域10の面上に、有機絶縁層32を形成する。前述したように、この有機絶縁層32は、少なくともバンプ下地膜26の縁部26c、26d上からバンプ下地膜26周りの有機絶縁層31上にわたって設けられ、有機絶縁層31に接する。有機絶縁層32の形成は、有機絶縁層31と同様に、例えば有機絶縁層32の材料(例えば感光性ポリイミド)を、バンプ下地膜26上及びバンプ下地膜26から露出した有機絶縁層31上にスピンコートすることにより行われる。そして、開口32a、32bに対応する開口パターンを有するフォトマスクを用いて有機絶縁層32を露光・現像することにより、開口32a、32bを形成してバンプ下地膜26の部分26a及び26bの表面を露出させる。
【0036】
続いて、図5の(b)に示すように、半田バンプ17を形成する。すなわち、開口32aを覆いバンプ下地膜26の部分26aに接するグランド半田バンプ17aと、開口32bを覆いバンプ下地膜26の部分26bに接する信号半田バンプ17bとを形成する。この工程では、フラックスを塗布したのち、例えば直径160μmといった大きさの半田バンプ17を、例えば250℃といった温度下でリフロー(熱処理)形成する。シード金属膜24上に形成したAu膜は、この工程でほぼ半田バンプ17内に拡散する。その後、フラックスの洗浄を行う。以上の工程を経て、図1及び図2に示された本実施形態の半導体装置1Aが作製される。
【0037】
以上に説明した本実施形態による半導体装置1Aの製造方法によって得られる効果について、従来の製造方法が有する課題と共に説明する。図10の(a)は、特許文献2に記載された半導体装置の比較例の構造の一部を拡大して示す断面図である。窒化物半導体を主に含む半導体領域110上には、例えばAuにより構成される金属配線120が設けられ、該金属配線120は、半導体領域110を保護する無機絶縁層141によって覆われている。無機絶縁層141は例えばSiN等のシリコン化合物膜である。無機絶縁層141上には例えばポリイミド等の樹脂からなる有機絶縁層133が設けられている。無機絶縁層141及び有機絶縁層133には、これらを厚み方向に貫通する開口141a、133aが形成されており、これらの開口141a、133aは、例えばAuにより構成される金属配線121によって埋め込まれている。金属配線121は、開口141a、133aを通じて金属配線120と接続している。有機絶縁層133上には、無機絶縁層142及び有機絶縁層131が積層されている。無機絶縁層142は例えばSiN等のシリコン化合物膜である。有機絶縁層131は、ポリイミド等の樹脂からなる。金属配線121上には無機絶縁層142及び有機絶縁層131の開口142a、131aが形成されており、開口142a、131aの側面上、および開口142a、131aから露出する金属配線121の表面上には、シード金属膜124が設けられている。シード金属膜124は、例えばTi/Pdによって構成されている。シード金属膜124上には、シード金属膜124をシードメタルとしてメッキ形成された主膜125が設けられている。主膜125は、例えばNi/Auによって構成されている。シード金属膜124及び主膜125は、バンプ下地膜126を構成する。バンプ下地膜126の周縁部は、有機絶縁層131の表面に接触している。バンプ下地膜126上には、図示しない半田バンプが形成される。
【0038】
このような構造において、半田バンプをリフローにより形成する際、或いは半田バンプ形成後の半導体装置1Aを配線基板上にリフローにより実装する際に、ポリイミドなどの有機絶縁材料と金属材料との熱膨張率差に起因して、図10の(b)に示すように、バンプ下地膜126の周縁部が有機絶縁層131から剥がれてしまう場合がある。これによりバンプ下地膜126と有機絶縁層131との間に隙間Gが生じると、この隙間Gに半田が侵入し、この半田が、バンプ下地膜126と金属配線121との界面を破断させてしまうおそれがある。
【0039】
この問題に対し、本実施形態の半導体装置1Aの製造方法は、半導体領域10上に有機絶縁層31を形成する工程と、バンプ下地膜26を形成する工程と、バンプ下地膜26の熱処理を行う工程と、有機絶縁層32を形成する工程とを含む。バンプ下地膜26を形成する工程では、有機絶縁層31上に位置する縁部26c、26dを含むバンプ下地膜26を形成する。有機絶縁層32を形成する工程では、少なくともバンプ下地膜26の縁部26c、26d上からバンプ下地膜26周りの有機絶縁層31上にわたって設けられ、有機絶縁層31に接し、バンプ下地膜26の表面を露出させる開口32a、32bを有する有機絶縁層32を形成する。
【0040】
また、本実施形態の半導体装置1Aは、半導体領域10と、半導体領域10上に設けられた有機絶縁層31と、有機絶縁層31上に位置する縁部26c、26dを含むバンプ下地膜26と、有機絶縁層32と、バンプ下地膜26に接する半田バンプ17とを備える。有機絶縁層32は、少なくともバンプ下地膜26の縁部26c、26d上からバンプ下地膜26周りの有機絶縁層31上にわたって設けられ、有機絶縁層31に接する。有機絶縁層32は、バンプ下地膜26の表面を露出させる開口32a、32bを有しており、グランド半田バンプ17aは開口32aを覆ってバンプ下地膜26に接し、信号半田バンプ17bは開口32bを覆ってバンプ下地膜26に接する。
【0041】
図6は、本実施形態による半導体装置1A及びその製造方法によって得られる効果を説明するための図である。本実施形態では、バンプ下地膜26を形成したのちに、バンプ下地膜26の熱処理を行う。このとき、バンプ下地膜26と有機絶縁層31との接合強度が低い部分においては、これらの熱膨張率差に起因する応力により、バンプ下地膜26が有機絶縁層31から剥がれる(図中のA部分)。そして、その後の工程でバンプ下地膜26及び露出した有機絶縁層31を有機絶縁層32により覆う際、有機絶縁層32の材料がバンプ下地膜26と有機絶縁層31との隙間に入り込む。
【0042】
このように、本実施形態では、バンプ下地膜26と有機絶縁層31との接合強度が低い部分を、半田バンプ17のリフローの前に予め剥離させる。そして、それにより生じる隙間を、有機絶縁層32の材料によって予め埋め込んでおく。これにより、バンプ下地膜26の内部応力が解放され、半田バンプ17のリフローの際の熱による、バンプ下地膜26と有機絶縁層31との間の隙間の発生を低減できる。そして、これによりバンプ下地膜26と有機絶縁層31との隙間への半田の侵入を低減して、半導体装置1Aの信頼性を向上できる。
【0043】
本実施形態のように、有機絶縁層32は感光性樹脂を主に含み、有機絶縁層32を形成する工程は、有機絶縁層32を露光及び現像して開口32a、32bを形成する工程を含んでもよい。これにより、有機絶縁層32については、通常エッチングで開口32a、32bを形成するが、感光性樹脂を用いた場合は、露光現像工程で開口ができエッチング工程を省略することが可能となる。
【0044】
本実施形態のように、半導体装置1Aの製造方法は、開口32a、32bを覆いバンプ下地膜26に接する半田バンプ17をリフロー形成する工程を含んでもよい。上述したように、本実施形態の製造方法によれば、半田バンプ17をリフロー形成する際の熱による、バンプ下地膜26と有機絶縁層31との間の隙間の発生を低減できる。従って、半田バンプ17をリフロー形成する場合の半導体装置1Aの信頼性を向上できる。
【0045】
本実施形態のように、バンプ下地膜26の熱処理を行う工程では、半田バンプ17のリフロー温度よりも高い温度で熱処理を行ってもよい。これにより、半田バンプ17のリフロー温度でバンプ下地膜26と有機絶縁層31との剥離が生じ得る箇所を、リフロー前に確実に剥離させておくことができる。従って、半導体装置1Aの信頼性を更に向上できる。
【0046】
本実施形態のように、金属膜22、23の全体がバンプ下地膜26によって覆われていてもよい。これにより、バンプ下地膜26の面積が広くなり、半田と金属膜22、23との接触を更に低減することができる。
【0047】
(変形例)
図7は、上記実施形態の一変形例に係る工程を示す断面図である。この工程は、図4の(c)に示すバンプ下地膜26の熱処理を行ったのち、図5の(a)に示す有機絶縁層32を形成する前に実施される。この工程では、バンプ下地膜26から露出した有機絶縁層31の部分をエッチングする(図中の矢印E)ことにより、当該部分に凹部31bを形成する。エッチングは、例えばO2プラズマを用いた反応性イオンエッチング(RIE)である。凹部31bの深さは、例えば有機絶縁層31の厚さの半分以下(有機絶縁層31の厚さが2μmである場合、1μm以下)である。図8は、上記の工程の後、有機絶縁層32を形成した状態を示す断面図である。同図に示すように、有機絶縁層32は凹部31bを埋め込む。
【0048】
バンプ下地膜26の熱処理を行ってバンプ下地膜26と有機絶縁層31との間に微小な隙間が生じた際、その隙間の大きさによっては、有機絶縁層32の構成材料の粘度との関係で、該構成材料が隙間に入り込まないおそれがある。このような場合、本変形例のように有機絶縁層31のエッチングを行えば、図9の(a)のB部分に示すように、バンプ下地膜26と有機絶縁層31との隙間を拡大することができる。そして、図9の(b)のC部分に示すように、有機絶縁層32を形成する際、有機絶縁層32の構成材料が上記の隙間に入り込み易くなる。故に、有機絶縁層32の構成材料によって隙間を容易に埋め込むことができ、隙間への半田の侵入をより効果的に低減して、半導体装置1Aの信頼性を更に向上できる。
【0049】
本発明による半導体装置の製造方法および半導体装置は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では半導体領域の例としてHEMTを例示したが、本発明は、HEMTに限らず、金属配線および半田バンプを備える様々な半導体装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1A…半導体装置、10…半導体領域、11…グランド配線領域、11a、11b…辺、12…信号配線領域、13…隙間領域、17…半田バンプ、17a…グランド半田バンプ、17b…信号半田バンプ、21…金属配線、22、23…金属膜、24…シード金属膜、25…主膜、25c…縁部、26…バンプ下地膜、26a…(第1の)部分、26b…(第2の)部分、26c、26d…縁部、31…有機絶縁層、31a…開口、31b…凹部、32…有機絶縁層、32a、32b…開口、G…隙間、Q…熱処理炉、R…フォトレジスト、Ra…開口。
図1
図2
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図7
図8
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図10