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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、及び、液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20221115BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20221115BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/14 609
B41J2/18
B41J2/14 605
B41J2/01 209
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018034457
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019147336
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-02-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 啓太
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-036238(JP,A)
【文献】特開2014-061695(JP,A)
【文献】特開2012-030582(JP,A)
【文献】特開2015-039780(JP,A)
【文献】国際公開第2015/199181(WO,A1)
【文献】特開2008-149579(JP,A)
【文献】特開2012-061717(JP,A)
【文献】特開2015-134507(JP,A)
【文献】特開2017-124618(JP,A)
【文献】特開2014-188837(JP,A)
【文献】特開2014-080024(JP,A)
【文献】特開2012-011629(JP,A)
【文献】特開2011-143331(JP,A)
【文献】特開2011-240343(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0239241(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別流路と、
前記複数の個別流路から液体を貯留する貯留室に液体を戻す帰還流路である第1共通流路と、
前記帰還流路である第2共通流路と、
前記貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第3共通流路と、を備え、
前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、
前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、
前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、
前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、
前記ある第1個別流路における前記連通路、及び、前記ある第2個別流路における前記連通路は、それぞれ、前記連通路における前記連通方向の中心を通る第1中心線であって、前記連通方向と直交しかつ前記配列方向及び前記延在方向の双方を通る面に沿った第1中心線に関して、非対称な形状を有し、かつ、前記第3共通流路における前記配列方向の中心を通る第2中心線であって、前記延在方向に沿った第2中心線に関して、互いに対称な形状を有することを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
複数の個別流路と、
液体を貯留する貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第1共通流路と、
前記供給流路である第2共通流路と、
前記複数の個別流路から前記貯留室に液体を戻す帰還流路である第3共通流路と、を備え、
前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、
前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、
前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、
前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、
前記ある第1個別流路における前記連通路、及び、前記ある第2個別流路における前記連通路は、それぞれ、前記連通路における前記連通方向の中心を通る第1中心線であって、前記連通方向と直交しかつ前記配列方向及び前記延在方向の双方を通る面に沿った第1中心線に関して、非対称な形状を有し、かつ、前記第3共通流路における前記配列方向の中心を通る第2中心線であって、前記延在方向に沿った第2中心線に関して、互いに対称な形状を有することを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項3】
複数の個別流路と、
前記複数の個別流路から液体を貯留する貯留室に液体を戻す帰還流路である第1共通流路と、
前記帰還流路である第2共通流路と、
前記貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第3共通流路と、を備え、
前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、
前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、
前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、
前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、
前記ある第1個別流路における前記連通方向の、前記延在方向に対する鋭角側の角度、及び、前記ある第2個別流路における前記連通方向の、前記延在方向に対する鋭角側の角度が、共に、60度未満であることを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項4】
複数の個別流路と、
液体を貯留する貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第1共通流路と、
前記供給流路である第2共通流路と、
前記複数の個別流路から前記貯留室に液体を戻す帰還流路である第3共通流路と、を備え、
前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、
前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、
前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、
前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、
前記ある第1個別流路における前記連通方向の、前記延在方向に対する鋭角側の角度、及び、前記ある第2個別流路における前記連通方向の、前記延在方向に対する鋭角側の角度が、共に、60度未満であることを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項5】
複数の個別流路と、
前記複数の個別流路から液体を貯留する貯留室に液体を戻す帰還流路である第1共通流路と、
前記帰還流路である第2共通流路と、
前記貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第3共通流路と、を備え、
前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、
前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、
前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、
前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、
前記ある第1個別流路における前記連通方向の、前記延在方向に対する鋭角側の角度、及び、前記ある第2個別流路における前記連通方向の、前記延在方向に対する鋭角側の角度が、互いに等しいことを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項6】
複数の個別流路と、
液体を貯留する貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第1共通流路と、
前記供給流路である第2共通流路と、
前記複数の個別流路から前記貯留室に液体を戻す帰還流路である第3共通流路と、を備え、
前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、
前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、
前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、
前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、
前記ある第1個別流路における前記連通方向の、前記延在方向に対する鋭角側の角度、及び、前記ある第2個別流路における前記連通方向の、前記延在方向に対する鋭角側の角度が、互いに等しいことを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項7】
複数の個別流路と、
前記複数の個別流路から液体を貯留する貯留室に液体を戻す帰還流路である第1共通流路と、
前記帰還流路である第2共通流路と、
前記貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第3共通流路と、を備え、
前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、
前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、
前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、
前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、
前記ある第1個別流路における前記連通方向の、前記延在方向のうち前記第3共通流路を液体が流れる流れ方向に対する角度が、前記ある第2個別流路における前記連通方向の、前記流れ方向に対する角度よりも小さく、
前記ある第1個別流路における前記連通路の断面積が、前記ある第2個別流路における前記連通路の断面積よりも大きいことを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項8】
複数の個別流路と、
液体を貯留する貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第1共通流路と、
前記供給流路である第2共通流路と、
前記複数の個別流路から前記貯留室に液体を戻す帰還流路である第3共通流路と、を備え、
前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、
前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、
前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、
前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、
前記ある第1個別流路における前記連通方向の、前記延在方向のうち前記第3共通流路を液体が流れる流れ方向に対する角度が、前記ある第2個別流路における前記連通方向の、前記流れ方向に対する角度よりも小さく、
前記ある第1個別流路における前記連通路の断面積が、前記ある第2個別流路における前記連通路の断面積よりも大きいことを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項9】
液体吐出ヘッドと、
制御部と、を備え、
前記液体吐出ヘッドは、
少なくとも1つのノズル、前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路、及び、前記少なくとも1つのノズルに連通する少なくとも1つの圧力室、をそれぞれ有する複数の個別流路と、
前記複数の個別流路に含まれる複数の前記圧力室にそれぞれ対向する複数のアクチュエータと、
前記複数の個別流路から液体を貯留する貯留室に液体を戻す帰還流路である第1共通流路と、
前記帰還流路である第2共通流路と、
前記貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第3共通流路と、を備え、
前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、
前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、
前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、
前記複数の第1個別流路は、前記第3共通流路に対して、前記液体吐出ヘッドに対する吐出対象の相対移動方向の上流に位置し、
前記複数の第2個別流路は、前記第3共通流路に対して、前記相対移動方向の下流に位置し、
前記制御部は、
前記複数の第1個別流路に属する前記複数のアクチュエータを、前記連通方向が前記延在方向と平行な場合の規定タイミングよりも前に駆動し、
前記複数の第2個別流路に属する前記複数のアクチュエータを、前記規定タイミングよりも後に駆動することを特徴とする、液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給流路及び帰還流路を含む共通流路を備えた液体吐出ヘッド、及び、液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
共通供給路(供給流路)及び共通回収路(帰還流路)が配列方向に交互に配列された液体吐出ヘッドが知られている(特許文献1参照)。特許文献1では、配列方向に互いに隣接する供給流路と帰還流路との間に、供給流路と帰還流路とを結ぶ複数の個別流路が設けられている。各個別流路は、1つのノズル及び当該1つのノズルの直上を通る連通路(特許文献1では、圧力室がこれに対応する。)を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-030582号公報(図3(b))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、1つの供給流路又は帰還流路に対して配列方向の一方に設けられた複数の個別流路(第1個別流路)、及び、当該1つの供給流路又は帰還流路に対して配列方向の他方に設けられた複数の個別流路(第2個別流路)は、共に、供給流路及び帰還流路が延びる方向である延在方向に対して斜めの、一定の方向に延びている。つまり、特許文献1では、複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、連通路が当該1つの供給流路又は帰還流路から延びる方向である連通方向は、延在方向に対して斜めであり、かつ、延在方向の一方のベクトルを有するのに対し、複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、延在方向において上記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、連通方向は、延在方向に対して斜めであり、かつ、延在方向の他方のベクトルを有する。この場合、供給流路から個別流路を通って帰還流路に向けて液体が流れるときに、連通路を通る液体の流れによって、上記ある第1個別流路のノズルから吐出される液体には、延在方向の一方の力が作用し、上記ある第2個別流路のノズルから吐出される液体には、延在方向の他方の力が作用する。即ち、延在方向に互いに隣接する2つのノズルから吐出される液体のそれぞれに、延在方向において互いに逆方向の力が作用する。これにより、当該2つのノズルから吐出された液体は、延在方向において互いに逆方向に飛翔し、所望の位置に対してそれぞれ延在方向の一方及び他方にずれた位置に着弾することとなる。このため、特許文献1の構成では、延在方向においてドットの疎密が生じてしまう。
【0005】
本発明の目的は、延在方向におけるドットの疎密を抑制可能な液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る液体吐出ヘッドは、複数の個別流路と、前記複数の個別流路から液体を貯留する貯留室に液体を戻す帰還流路である第1共通流路と、前記帰還流路である第2共通流路と、前記貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第3共通流路と、を備え、前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、前記連通路は、前記連通方向に延びていることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2観点に係る液体吐出ヘッドは、複数の個別流路と、液体を貯留する貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第1共通流路と、前記供給流路である第2共通流路と、前記複数の個別流路から前記貯留室に液体を戻す帰還流路である第3共通流路と、を備え、前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、前記連通路は、前記連通方向に延びていることを特徴とする。
【0008】
本発明の第3観点に係る液体吐出ヘッドは、複数の個別流路と、前記複数の個別流路から液体を貯留する貯留室に液体を戻す帰還流路である第1共通流路と、前記帰還流路である第2共通流路と、前記貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第3共通流路と、を備え、前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、前記ある第1個別流路における前記連通路、及び、前記ある第2個別流路における前記連通路は、それぞれ、前記連通路における前記連通方向の中心を通る第1中心線であって、前記連通方向と直交しかつ前記配列方向及び前記延在方向の双方を通る面に沿った第1中心線に関して、非対称な形状を有し、かつ、前記第3共通流路における前記配列方向の中心を通る第2中心線であって、前記延在方向に沿った第2中心線に関して、互いに対称な形状を有することを特徴とする。
本発明の第4観点に係る液体吐出ヘッドは、複数の個別流路と、液体を貯留する貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第1共通流路と、前記供給流路である第2共通流路と、前記複数の個別流路から前記貯留室に液体を戻す帰還流路である第3共通流路と、を備え、前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、前記ある第1個別流路における前記連通路、及び、前記ある第2個別流路における前記連通路は、それぞれ、前記連通路における前記連通方向の中心を通る第1中心線であって、前記連通方向と直交しかつ前記配列方向及び前記延在方向の双方を通る面に沿った第1中心線に関して、非対称な形状を有し、かつ、前記第3共通流路における前記配列方向の中心を通る第2中心線であって、前記延在方向に沿った第2中心線に関して、互いに対称な形状を有することを特徴とする。
本発明の第5観点に係る液体吐出ヘッドは、複数の個別流路と、前記複数の個別流路から液体を貯留する貯留室に液体を戻す帰還流路である第1共通流路と、前記帰還流路である第2共通流路と、前記貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第3共通流路と、を備え、前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、前記ある第1個別流路における前記連通方向の、前記延在方向に対する鋭角側の角度、及び、前記ある第2個別流路における前記連通方向の、前記延在方向に対する鋭角側の角度が、共に、60度未満であることを特徴とする。
本発明の第6観点に係る液体吐出ヘッドは、複数の個別流路と、液体を貯留する貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第1共通流路と、前記供給流路である第2共通流路と、前記複数の個別流路から前記貯留室に液体を戻す帰還流路である第3共通流路と、を備え、前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、前記ある第1個別流路における前記連通方向の、前記延在方向に対する鋭角側の角度、及び、前記ある第2個別流路における前記連通方向の、前記延在方向に対する鋭角側の角度が、共に、60度未満であることを特徴とする。
本発明の第7観点に係る液体吐出ヘッドは、複数の個別流路と、前記複数の個別流路から液体を貯留する貯留室に液体を戻す帰還流路である第1共通流路と、前記帰還流路である第2共通流路と、前記貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第3共通流路と、を備え、前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、前記ある第1個別流路における前記連通方向の、前記延在方向に対する鋭角側の角度、及び、前記ある第2個別流路における前記連通方向の、前記延在方向に対する鋭角側の角度が、互いに等しいことを特徴とする。
本発明の第8観点に係る液体吐出ヘッドは、複数の個別流路と、液体を貯留する貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第1共通流路と、前記供給流路である第2共通流路と、前記複数の個別流路から前記貯留室に液体を戻す帰還流路である第3共通流路と、を備え、前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、前記ある第1個別流路における前記連通方向の、前記延在方向に対する鋭角側の角度、及び、前記ある第2個別流路における前記連通方向の、前記延在方向に対する鋭角側の角度が、互いに等しいことを特徴とする。
本発明の第9観点に係る液体吐出ヘッドは、複数の個別流路と、前記複数の個別流路から液体を貯留する貯留室に液体を戻す帰還流路である第1共通流路と、前記帰還流路である第2共通流路と、前記貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第3共通流路と、を備え、前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、前記ある第1個別流路における前記連通方向の、前記延在方向のうち前記第3共通流路を液体が流れる流れ方向に対する角度が、前記ある第2個別流路における前記連通方向の、前記流れ方向に対する角度よりも小さく、前記ある第1個別流路における前記連通路の断面積が、前記ある第2個別流路における前記連通路の断面積よりも大きいことを特徴とする。
本発明の第10観点に係る液体吐出ヘッドは、複数の個別流路と、液体を貯留する貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第1共通流路と、前記供給流路である第2共通流路と、前記複数の個別流路から前記貯留室に液体を戻す帰還流路である第3共通流路と、を備え、前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、前記ある第1個別流路における前記連通方向の、前記延在方向のうち前記第3共通流路を液体が流れる流れ方向に対する角度が、前記ある第2個別流路における前記連通方向の、前記流れ方向に対する角度よりも小さく、前記ある第1個別流路における前記連通路の断面積が、前記ある第2個別流路における前記連通路の断面積よりも大きいことを特徴とする。
本発明の第11観点に係る液体吐出ヘッドは、複数の個別流路と、液体を貯留する貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路及び前記複数の個別流路から前記貯留室に液体を戻す帰還流路を含む第1共通流路組と、前記供給流路及び前記帰還流路を含む第2共通流路組と、を備え、前記第1共通流路組及び前記第2共通流路組は、配列方向に配列され、前記第1共通流路組及び前記第2共通流路組のそれぞれにおいて、前記供給流路及び前記帰還流路は、前記配列方向に配列され、かつ、共に延在方向に延び、前記複数の個別流路は、前記第1共通流路組の前記供給流路と前記帰還流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路組の前記供給流路と前記帰還流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、前記複数の個別流路のそれぞれは、少なくとも1つのノズル及び前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路を有し、前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第1共通流路組の前記供給流路から前記第1共通流路組の前記帰還流路に向けて延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通路が前記第2共通流路組の前記供給流路から前記第2共通流路組の前記帰還流路に向けて延びる方向である連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、前記連通路は、前記連通方向に延びていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る液体吐出装置は、液体吐出ヘッドと、制御部と、を備え、前記液体吐出ヘッドは、少なくとも1つのノズル、前記少なくとも1つのノズルの直上を通る連通路、及び、前記少なくとも1つのノズルに連通する少なくとも1つの圧力室、をそれぞれ有する複数の個別流路と、前記複数の個別流路に含まれる複数の前記圧力室にそれぞれ対向する複数のアクチュエータと、前記複数の個別流路から液体を貯留する貯留室に液体を戻す帰還流路である第1共通流路と、前記帰還流路である第2共通流路と、前記貯留室から前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路である第3共通流路と、を備え、前記第1共通流路、前記第2共通流路及び前記第3共通流路は、配列方向に配列され、前記配列方向において前記第1共通流路と前記第2共通流路との間に前記第3共通流路が配置され、前記複数の個別流路は、前記第1共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第1個別流路、及び、前記第2共通流路と前記第3共通流路とを結ぶ複数の第2個別流路を含み、前記複数の第1個別流路のうちの1つの、ある第1個別流路における、前記連通路が前記第3共通流路から延びる方向である連通方向、及び、前記複数の第2個別流路のうちの1つの、ある第2個別流路であって、前記第3共通流路が延びる方向である延在方向において前記ある第1個別流路に含まれるノズルに隣接するノズルを含む、ある第2個別流路における、前記連通方向は、共に、前記延在方向に対して斜めであり、かつ、前記延在方向の一方のベクトルを有し、前記複数の第1個別流路は、前記第3共通流路に対して、前記液体吐出ヘッドに対する吐出対象の相対移動方向の上流に位置し、前記複数の第2個別流路は、前記第3共通流路に対して、前記相対移動方向の下流に位置し、前記制御部は、前記複数の第1個別流路に属する前記複数のアクチュエータを、前記連通方向が前記延在方向と平行な場合の規定タイミングよりも前に駆動し、前記複数の第2個別流路に属する前記複数のアクチュエータを、前記規定タイミングよりも後に駆動することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るヘッド1を備えたプリンタ100の平面図である。
図2】ヘッド1の平面図である。
図3図2のIII-III線に沿ったヘッド1の断面図である。
図4】プリンタ100の電気的構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るヘッド201の平面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係るヘッド301の平面図である。
図7図6のVII-VII線に沿ったヘッド301の断面図である。
図8】本発明の第4実施形態に係るヘッド401の平面図である。
図9】本発明の第5実施形態に係るヘッド501の平面図である。
図10】本発明の第6実施形態に係るヘッド601の平面図である。
図11図10のXI-XI線に沿ったヘッド601の断面図である。
図12】本発明の第7実施形態に係るヘッド701の図3に対応する断面図である。
図13】本発明の第8実施形態に係るヘッド801の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
先ず、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係るヘッド1を備えたプリンタ100の全体構成について説明する。
【0012】
プリンタ100は、4つのヘッド1を含むヘッドユニット1x、プラテン3、搬送機構4及び制御部5を備えている。
【0013】
プラテン3の上面に、用紙9が載置される。
【0014】
搬送機構4は、搬送方向にプラテン3を挟んで配置された2つのローラ対4a,4bを有する。制御部5の制御により搬送モータ4mが駆動されると、ローラ対4a,4bが用紙9を挟持した状態で回転し、用紙9が搬送方向に搬送される。
【0015】
ヘッドユニット1xは、ライン式(位置が固定された状態でノズル21(図2及び図3参照)から用紙9に対してインクを吐出する方式)であって、紙幅方向に長尺である。4つのヘッド1は、紙幅方向に千鳥状に配置されている。
【0016】
ここで、紙幅方向は、搬送方向と直交する。紙幅方向及び搬送方向は、共に、鉛直方向と直交する。
【0017】
制御部5は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)を有する。ASICは、ROMに格納されたプログラムに従い、記録処理等を実行する。記録処理において、制御部5は、PC等の外部装置から入力された記録指令(画像データを含む。)に基づき、各ヘッド1のドライバIC1d(図3及び図4参照)及び搬送モータ4mを制御し、用紙9上に画像を記録する。
【0018】
次いで、図2及び図3を参照し、ヘッド1の構成について説明する。
【0019】
ヘッド1は、流路基板11及びアクチュエータユニット12を有する。
【0020】
流路基板11は、図3に示すように、互いに接着された6枚のプレート11a~11fを有する。プレート11dには、共通流路30が形成されている。プレート11a~11fには、共通流路30に連通する複数の個別流路20が形成されている。
【0021】
共通流路30は、図2に示すように、配列方向(搬送方向と平行な方向)に配列された帰還流路31,32及び供給流路33を含む。帰還流路31,32及び供給流路33は、それぞれ延在方向(紙幅方向と平行な方向)に延びている。配列方向において帰還流路31と帰還流路32との間に供給流路33が配置されている。
【0022】
供給流路33は、供給口33xを介してサブタンク7の貯留室7aと連通している。帰還流路31,32は、それぞれ、排出口31y,32yを介して貯留室7aと連通している。供給口33xは、供給流路33における延在方向の一方(図2の上方)の端部に形成されている。排出口31y,32yは、それぞれ、帰還流路31,32における延在方向の他方(図2の下方)の端部に形成されている。
【0023】
サブタンク7は、ヘッド1と共にキャリッジ2に搭載されている。貯留室7aは、インクを貯留するメインタンク(図示略)と連通し、メインタンクから供給されたインクを貯留する。
【0024】
個別流路20は、帰還流路31と供給流路33とを結ぶ複数の第1個別流路20a、及び、帰還流路32と供給流路33とを結ぶ複数の第2個別流路20bを含む。第1個別流路20aは、配列方向において帰還流路31と供給流路33とに跨っている。第2個別流路20bは、配列方向において帰還流路32と供給流路33とに跨っている。
【0025】
ここで、供給口33x及び排出口31y,32yの配列方向の長さは互いに同じであるが、各排出口31y,32yの延在方向の長さは供給口33xの延在方向の長さの半分である。即ち、各排出口31y,32yの面積は供給口33xの面積の半分である。当該構成は、各帰還流路31,32に接続する個別流路20の数が、供給流路33に接続する個別流路20の数の半分であり、各帰還流路31,32を流れるインクの量が供給流路33を流れるインクの量の半分になることを考慮したものである。
【0026】
図2中の太矢印及び図3中の矢印は、インクの流れを示す。
【0027】
図2に示すように、貯留室7a内のインクは、制御部5の制御により循環ポンプ7pが駆動されることで、供給口33xから供給流路33に供給される。供給流路33に供給されたインクは、供給流路33内を延在方向の一方から他方に向かって移動しつつ、第1個別流路20a及び第2個別流路20bのそれぞれに供給される。第1個別流路20aに供給されたインクは、帰還流路31に流入し、帰還流路31内を延在方向の一方から他方に向かって移動する。そして当該インクは、排出口31yを介して帰還流路31から排出され、貯留室7aに戻される。第2個別流路20bに供給されたインクは、帰還流路32に流入し、帰還流路32内を延在方向の一方から他方に向かって移動する。そして当該インクは、排出口32yを介して帰還流路32から排出され、貯留室7aに戻される。このようにヘッド1とサブタンク7との間でインクを循環させることで、インク内の気泡の除去やインクの増粘防止が実現される。
【0028】
各個別流路20は、ノズル21、連通路22、2つの圧力室23、2つの接続流路24及び2つの連結流路25を含む。図3に示すように、ノズル21は、プレート11fに形成された貫通孔で構成されている。連通路22は、ノズル21の直上を通る流路であり、プレート11eに形成された貫通孔で構成されている。連通路22は、ノズル21の直上を通る流路であることから、その内部におけるインクの流れが、ノズル21から吐出されるインクの飛翔方向に影響を及ぼす。圧力室23は、プレート11aに形成された貫通孔で構成されている。接続流路24は、プレート11b~11dに形成された貫通孔で構成され、鉛直方向に延びている。連結流路25は、プレート11b,11cに形成された貫通孔で構成されている。
【0029】
圧力室23、接続流路24及び連結流路25は、第1圧力室23a、第1接続流路24a及び第1連結流路25aと、第2圧力室23b、第2接続流路24b及び第2連結流路25bとに分類される。第1圧力室23a、第1接続流路24a及び第1連結流路25aと、第2圧力室23b、第2接続流路24b及び第2連結流路25bとは、配列方向にノズル21を挟んでいる。第1圧力室23a、第1接続流路24a及び第1連結流路25aは、配列方向においてノズル21よりも供給流路33に近い位置、又は、鉛直方向において供給流路33と重なる位置にある。第2圧力室23b、第2接続流路24b及び第2連結流路25bは、配列方向においてノズル21よりも供給流路33から遠い位置にある。第1圧力室23aの一部及び第1連結流路25aは、鉛直方向において供給流路33と重なっている。第2圧力室23bの一部及び第2連結流路25bは、鉛直方向において帰還流路31又は帰還流路32と重なっている。
【0030】
第1圧力室23aは、第1接続流路24a及び連通路22を介して、ノズル21と連通している。第2圧力室23bは、第2接続流路24b及び連通路22を介して、ノズル21と連通している。第1圧力室23a及び第2圧力室23bは、第1接続流路24a、連通路22及び第2接続流路24bを介して、互いに連通している。第1接続流路24aは、第1圧力室23aにおける配列方向においてノズル21により近い一端と、連通路22における配列方向において供給流路33により近い一端とを接続している。第2接続流路24bは、第2圧力室23bにおける配列方向においてノズル21により近い一端と、連通路22における配列方向の他端とを接続している。第1連結流路25aは、供給流路33と、第1圧力室23aにおける配列方向の他端とを連結している。第2連結流路25bは、帰還流路31又は帰還流路32と、第2圧力室23bにおける配列方向の他端とを連結している。
【0031】
各個別流路20に供給されたインクは、第1連結流路25a及び第1圧力室23aを通って略水平に移動し、さらに第1接続流路24aを通って下方に移動して、連通路22に流入する。当該インクは、連通路22を通って水平に移動し、一部がノズル21から吐出され、残りが第2接続流路24bを通って上方に移動し、第2圧力室23b及び第2連結流路25bを通って略水平に移動して、帰還流路31又は帰還流路32に流入する。
【0032】
流路基板11の上面(プレート11aの上面)には、図2に示すように、複数の圧力室23が開口している。圧力室23は、4つの圧力室列23R1~23R4を形成している。4つの圧力室列23R1~23R4は、それぞれ延在方向に延び、配列方向に配列されている。4つの圧力室列23R1~23R4のうち、図2の左側2つの圧力室列23R1,23R2は、第1個別流路20aの第1圧力室23a及び第2圧力室23bから構成されている。4つの圧力室列23R1~23R4のうち、図2の右側2つの圧力室列23R3,23R4は、第2個別流路20bの第1圧力室23a及び第2圧力室23bから構成されている。各圧力室列23R1~23R4において、圧力室23は、配列方向に同じ位置で、かつ、延在方向に等間隔で配置されている。一方、圧力室列23R1~23R4間においては、圧力室23の延在方向の位置がずれている。これにより、全ての圧力室23において、延在方向の位置が、当該圧力室23以外の圧力室23と異なっている。
【0033】
流路基板11の下面(プレート11fの下面)には、複数のノズル21が開口している。ノズル21は、それぞれ延在方向に延びかつ配列方向に配列された2つのノズル列21R1,21R2を形成している。2つのノズル列21R1,21R2のうち、図2の左側のノズル列21R1は、第1個別流路20aのノズル21から構成され、配列方向において圧力室列23R1,23R2に挟まれている。2つのノズル列21R1,21R2のうち、図2の右側のノズル列21R2は、第2個別流路20bのノズル21から構成され、配列方向において圧力室列23R3,23R4に挟まれている。各ノズル列21R1,21R2において、ノズル21は、配列方向に同じ位置で、かつ、延在方向に等間隔で配置されている。一方、ノズル列21R1,21R2間においては、ノズル21の延在方向の位置がずれている。これにより、全てのノズル21において、延在方向の位置が、当該ノズル21以外のノズル21と異なっている。
【0034】
ここで、複数の第1個別流路20aのうち図2の最も上側にある第1個別流路20aを「ある第1個別流路20x」、複数の第2個別流路20bのうち図2の最も上側にある第2個別流路20bを「ある第2個別流路20y」とする。第1個別流路20xに含まれるノズル21と、第2個別流路20yに含まれるノズル21とは、延在方向に互いに隣接している(即ち、これら2つのノズル21の間には他のノズル21が配置されていない)。第1個別流路20xの連通路22及び第2個別流路20yの連通路22は、共に、供給流路33から延在方向に対して斜めの方向(延在方向及び配列方向の双方と交差する方向)に延びている。換言すると、第1個別流路20xの連通方向(連通路22が供給流路33から延びる方向)D1及び第2個別流路20yの連通方向D2は、共に、延在方向に対して斜めである。連通方向D1,D2は、配列方向において互いに逆で、かつ、延在方向において互いに同じ方向(延在方向の一方)の、ベクトルを有する。
【0035】
本実施形態では、全ての第1個別流路20aの連通路22が、供給流路33から互いに同じ方向(連通方向D1)に延びている。全ての第2個別流路20bの連通路22が、供給流路33から互いに同じ方向(連通方向D2)に延びている。
【0036】
連通方向D1の延在方向に対する鋭角側の角度θ1、及び、連通方向D2の延在方向に対する鋭角側の角度θ2は、互いに等しく、60度未満(略45度)である。
【0037】
全ての第1個別流路20aにおいて、帰還流路31に接続する一端20a1と供給流路33に接続する他端20a2との延在方向における間隔I1は、同じである。全ての第2個別流路20bにおいて、供給流路33に接続する一端20b1と帰還流路32に接続する他端20b2との延在方向における間隔I2は、同じである。間隔I1及び間隔I2は、互いに等しい。一端20a1は、第1個別流路20aの第2連結流路25bにおける第2圧力室23bと反対側の端部に相当する。他端20a2は、第1個別流路20aの第1連結流路25aにおける第1圧力室23aと反対側の端部に相当する。一端20b1は、第2個別流路20bの第1連結流路25aにおける第1圧力室23aと反対側の端部に相当する。他端20b2は、第2個別流路20bの第2連結流路25bにおける第2圧力室23bと反対側の端部に相当する(図3参照)。
【0038】
各個別流路20において、ノズル21は、連通路22における連通方向D1,D2の中央に配置されている。
【0039】
アクチュエータユニット12は、流路基板11の上面に配置され、複数の圧力室23を覆っている。
【0040】
アクチュエータユニット12は、図3に示すように、下から順に、振動板12a、共通電極12b、複数の圧電体12c及び複数の個別電極12dを含む。振動板12a及び共通電極12bは、流路基板11の上面の略全体に配置されており、複数の圧力室23を覆っている。一方、圧電体12c及び個別電極12dは、圧力室23毎に設けられており、圧力室23のそれぞれと対向している。
【0041】
なお、共通電極12b、振動板12a及びプレート11a~11cにおいて、供給口33x及び排出口31y,32y(図2参照)に対応する位置には、貫通孔が形成されている。供給口33x及び排出口31y,32yは、ヘッド1の上面に開口しており、上記貫通孔を介して供給流路33及び帰還流路31,32と連通している。
【0042】
複数の個別電極12d及び共通電極12bは、ドライバIC1dと電気的に接続されている。ドライバIC1dは、共通電極12bの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極12dの電位を変化させる。具体的には、ドライバIC1dは、制御部5からの制御信号に基づいて駆動信号を生成し、当該駆動信号を個別電極12dに付与する。これにより、個別電極12dの電位が所定の駆動電位とグランド電位との間で変化する。このとき、振動板12a及び圧電体12cにおいて個別電極12dと圧力室23とで挟まれた部分(アクチュエータ12x)が、圧力室23に向かって凸となるように変形することにより、圧力室23の容積が変化し、圧力室23内のインクに圧力が付与され、ノズル21からインクが吐出される。
【0043】
アクチュエータユニット12は、複数の圧力室23のそれぞれと対向する複数のアクチュエータ12xを有する。本実施形態では、各個別流路20において、2つの圧力室23と対向するアクチュエータ12xを同時に駆動させることで、ノズル21から吐出されるインクの飛翔速度を増大させることができる。
【0044】
本実施形態では、上述のとおり、連通方向D1,D2が、延在方向において互いに同じ方向(延在方向の一方)のベクトルを有する(図2参照)。そのため、各個別流路20において、供給流路33から個別流路20を通って帰還流路31,32に向けてインクが流れるときに、連通路22を通るインクの流れによって、ノズル21から吐出されるインクに延在方向の一方の力が作用する。これにより、ノズル21から吐出されたインクは、延在方向において互いに同じ方向(延在方向の一方)に飛翔し、所望の位置に対して延在方向の一方にずれた位置に着弾することとなる。この場合、インクの着弾位置がずれるものの、ヘッド1の全てのノズル21から吐出されるインクの着弾位置が互いに同じ方向にずれるため、延在方向におけるドットの疎密は抑制される。
【0045】
一方、配列方向において、連通方向D1,D2は、互いに逆方向のベクトルを有する。そのため、供給流路33から個別流路20を通って帰還流路31,32に向けてインクが流れるときに、連通路22を通るインクの流れによって、第1個別流路20aのノズル21から吐出されるインクと、第2個別流路20bのノズル21から吐出されるインクとに、配列方向において互いに逆方向の力が作用する。具体的には、第1個別流路20aのノズル21から吐出されるインクには、供給流路33から帰還流路31に向かう方向(図2の左方)の力が作用する。第2個別流路20bのノズル21から吐出されるインクには、供給流路33から帰還流路32に向かう方向(図2の右方)の力が作用する。そのため、何ら対策を行わない場合、第1個別流路20aのノズル21から吐出されたインク及び第2個別流路20bのノズル21から吐出されるインクは、配列方向において互いに逆方向に飛翔し、所望の位置に対してそれぞれ配列方向の一方及び他方にずれた位置に着弾することとなる。
【0046】
そこで、制御部5は、第1個別流路20aに属するアクチュエータ12xを規定タイミングよりも前に駆動し、第2個別流路20bに属するアクチュエータ12xを規定タイミングよりも後に駆動する。規定タイミングは、連通方向D1,D2が延在方向と平行な場合におけるアクチュエータ12xの駆動タイミングである。連通方向D1,D2が延在方向と平行な場合、インクの着弾位置の所望の位置に対する配列方向のずれは生じない。
【0047】
本実施形態では、ヘッド1がライン式であり、第1個別流路20aは供給流路33に対して搬送方向の上流(即ち、ヘッド1に対する吐出対象である用紙9の相対移動方向の上流)、第2個別流路20bは供給流路33に対して搬送方向の下流(相対移動方向の下流)に位置する。第1個別流路20aに属するアクチュエータ12xを規定タイミングで駆動した場合、第1個別流路20aのノズル21から吐出されたインクは、供給流路33から第1個別流路20aを通って帰還流路31に向かうインクの流れの影響により、搬送方向の上流に飛翔し、所望の位置に対して搬送方向の上流に着弾することとなる。本実施形態では、第1個別流路20aに属するアクチュエータ12xを規定タイミングよりも前に駆動することで、第1個別流路20aのノズル21から吐出されたインクの着弾位置が、搬送方向の下流に補正される。第2個別流路20bに属するアクチュエータ12xを規定タイミングで駆動した場合、第2個別流路20bのノズル21から吐出されたインクは、供給流路33から第2個別流路20bを通って帰還流路32に向かうインクの流れの影響により、搬送方向の下流に飛翔し、所望の位置に対して搬送方向の下流に着弾することとなる。本実施形態では、第2個別流路20bに属するアクチュエータ12xを規定タイミングよりも後に駆動することで、第2個別流路20bのノズル21から吐出されたインクの着弾位置が、搬送方向の上流に補正される。
【0048】
以上に述べたように、本実施形態によれば、第1個別流路20xの連通方向D1及び第2個別流路20yの連通方向D2は、共に、延在方向に対して斜めであり、かつ、延在方向の一方(図2の上方)のベクトルを有する。そのため、延在方向におけるドットの疎密を抑制できる。
【0049】
複数の第1個別流路20aのそれぞれにおける連通方向D1、及び、複数の第2個別流路20bのそれぞれにおける連通方向D2が、共に、延在方向に対して斜めであり、かつ、延在方向の一方(図2の上方)のベクトルを有する。この場合、供給流路33における延在方向の一方、及び、帰還流路31,32における延在方向の他方に、空いたスペースが生じる。当該スペースに供給口33x及び排出口31y,32yを設け、スペースを有効活用することで、延在方向においてヘッド1を小型化できる。
【0050】
第1個別流路20aにおける間隔I1と、第2個別流路20bにおける間隔I2とが、互いに等しい。これにより、第1個別流路20aと第2個別流路20bとの間での、連通路22を流れるインクの流量の差が抑制され、インクの吐出量や飛翔速度のばらつきを抑制できる。なお、「間隔I1,I2が互いに等しい」とは、間隔I1,I2の差がない場合の他、間隔I1,I2の差はあるが当該差が微小(間隔I1,I2の平均値の5%以下等)の場合も含む。
【0051】
ノズル21は、連通路22における連通方向D1,D2の中央に配置されている。この場合、特に、ノズル21から吐出されるインクの飛翔方向が、連通路22を通るインクの流れの影響を受け易い。したがって、延在方向におけるドットの疎密の問題が顕著化し得る。この点、本実施形態は、連通方向D1,D2が延在方向に対して斜めでありかつ延在方向の一方のベクトルを有するという要件を具備することで、延在方向におけるドットの疎密を抑制できるため、上記構成において特に有効である。
【0052】
各個別流路20は、2つの圧力室23を有する。この場合、各個別流路20において、2つの圧力室23と対向するアクチュエータ12xを同時に駆動させることで、ノズル21から吐出されるインクの飛翔速度を増大させることができる。
【0053】
第1個別流路20xにおける連通方向D1の延在方向に対する鋭角側の角度θ1、及び、第2個別流路20yにおける連通方向D2の延在方向に対する鋭角側の角度θ2は、共に、60度未満である。この場合、連通方向D1,D2における延在方向のベクトルが比較的大きくなり、延在方向におけるドットの疎密が生じ易くなり得る。この点、本実施形態は、連通方向D1,D2が延在方向に対して斜めでありかつ延在方向の一方のベクトルを有するという要件を具備することで、延在方向におけるドットの疎密を抑制できるため、上記構成において特に有効である。
【0054】
角度θ1,θ2は、互いに等しい。この場合、供給流路33から個別流路20を通って帰還流路31,32に向けてインクが流れるときに、連通路22を通るインクの流れによって、ノズル21から吐出されるインクに作用する力が、第1個別流路20xと第2個別流路20yとで互いに等しくなる。これにより、延在方向におけるドットの疎密をより確実に抑制できる。なお、「角度θ1,θ2が互いに等しい」とは、角度θ1,θ2の差がない場合の他、角度θ1,θ2の差はあるが当該差が微小(角度θ1,θ2の平均値の5%以下等)の場合も含む。
【0055】
制御部5は、第1個別流路20aに属するアクチュエータ12xを連通方向D1,D2が延在方向と平行な場合の規定タイミングよりも前に駆動し、第2個別流路20bに属するアクチュエータ12xを規定タイミングよりも後に駆動する。この場合、延在方向におけるドットの疎密については個別流路20の構成により抑制する一方、配列方向におけるドットの疎密については制御部5の制御により抑制できる。
【0056】
<第2実施形態>
続いて、図5を参照し、本発明の第2実施形態に係るヘッド201について説明する。本実施形態は、共通流路230の構成が第1実施形態と異なる。図5中の太矢印は、インクの流れを示す。
【0057】
共通流路230は、配列方向に配列された供給流路231,232及び帰還流路233を含む。供給流路231,232及び帰還流路233は、それぞれ延在方向に延びている。配列方向において供給流路231と供給流路232との間に帰還流路233が配置されている。
【0058】
本実施形態において、第1個別流路20aは、供給流路231と帰還流路233とを結ぶ。第2個別流路20bは、供給流路232と帰還流路233とを結ぶ。
【0059】
供給流路231,232は、それぞれ、供給口231x,232xを介して貯留室7aと連通している。帰還流路233は、排出口233yを介して貯留室7aと連通している。排出口233yは、帰還流路233における延在方向の一方(図5の上方)の端部に形成されている。供給口231x,232xは、それぞれ、供給流路231,232における延在方向の他方(図5の下方)の端部に形成されている。
【0060】
供給口231x,232x及び排出口233yの配列方向の長さは互いに同じであるが、各供給口231x,232xの延在方向の長さは排出口233yの延在方向の長さの半分である。即ち、各供給口231x,232xの面積は排出口233yの面積の半分である。これは、各供給流路231,232に接続する個別流路20の数が、帰還流路233に接続する個別流路20の数の半分であり、各供給流路231,232を流れるインクの量が帰還流路233を流れるインクの量の半分になることを考慮したものである。
【0061】
貯留室7a内のインクは、制御部5の制御により2つの循環ポンプ7pが駆動されることで、供給口231x,232xから供給流路231,232に供給される。供給流路231に供給されたインクは、供給流路231内を延在方向の他方から一方に向かって移動しつつ、複数の第1個別流路20aのそれぞれに供給される。第1個別流路20aに供給されたインクは、帰還流路233に流入する。供給流路232に供給されたインクは、供給流路232内を延在方向の他方から一方に向かって移動しつつ、複数の第2個別流路20bのそれぞれに供給される。第2個別流路20bに供給されたインクは、帰還流路233に流入する。帰還流路233に流入したインクは、帰還流路233内を延在方向の他方から一方に向かって移動し、排出口233yを介して帰還流路233から排出され、貯留室7aに戻される。
【0062】
第1個別流路20xの連通路22及び第2個別流路20yの連通路22は、共に、帰還流路233から延在方向に対して斜めの方向(延在方向及び配列方向の双方と交差する方向)に延びている。換言すると、第1個別流路20xの連通方向(連通路22が帰還流路233から延びる方向)D21及び第2個別流路20yの連通方向D22は、共に、延在方向に対して斜めである。連通方向D21,D22は、配列方向において互いに逆で、かつ、延在方向において互いに同じ方向(延在方向の一方)の、ベクトルを有する。
【0063】
本実施形態では、全ての第1個別流路20aの連通路22が、帰還流路233から互いに同じ方向(連通方向D21)に延びている。全ての第2個別流路20bの連通路22が、帰還流路233から互いに同じ方向(連通方向D22)に延びている。
【0064】
本実施形態では、共通流路230を構成する3つの流路231~233のうち配列方向の中央にある流路が、供給流路でなく帰還流路233であり、帰還流路233に対して配列方向の両側に、供給流路231,232が配置されている。そのため、第1個別流路20aの連通路22を通るインクの流れ、及び、第2個別流路20bの連通路22を通るインクの流れが、それぞれ、第1実施形態(図2)と逆である。本実施形態では、第1個別流路20aのノズル21から吐出されるインクには、供給流路231から帰還流路233に向かう方向(図5の右方)の力が作用する。第2個別流路20bのノズル21から吐出されるインクには、供給流路232から帰還流路233に向かう方向(図5の左方)の力が作用する。そのため、何ら対策を行わない場合、第1個別流路20aのノズル21から吐出されたインク及び第2個別流路20bのノズル21から吐出されるインクは、配列方向において互いに逆方向に飛翔し、所望の位置に対してそれぞれ配列方向の一方及び他方にずれた位置に着弾することとなる。
【0065】
そこで、本実施形態のヘッド201を備えたプリンタの制御部5(図4)は、第1個別流路20aに属するアクチュエータ12xを規定タイミングよりも後に駆動し、第2個別流路20bに属するアクチュエータ12xを規定タイミングよりも前に駆動する。第1個別流路20aに属するアクチュエータ12xを規定タイミングで駆動した場合、第1個別流路20aのノズル21から吐出されたインクは、供給流路231から第1個別流路20aを通って帰還流路233に向かうインクの流れの影響により、搬送方向の下流に飛翔し、所望の位置に対して搬送方向の下流に着弾することとなる。本実施形態では、第1個別流路20aに属するアクチュエータ12xを規定タイミングよりも後に駆動することで、第1個別流路20aのノズル21から吐出されたインクの着弾位置が、搬送方向の上流に補正される。第2個別流路20bに属するアクチュエータ12xを規定タイミングで駆動した場合、第2個別流路20bのノズル21から吐出されたインクは、供給流路232から第2個別流路20bを通って帰還流路233に向かうインクの流れの影響により、搬送方向の上流に飛翔し、所望の位置に対して搬送方向の上流に着弾することとなる。本実施形態では、第2個別流路20bに属するアクチュエータ12xを規定タイミングよりも前に駆動することで、第2個別流路20bのノズル21から吐出されたインクの着弾位置が、搬送方向の下流に補正される。
【0066】
以上に述べたように、本実施形態によれば、共通流路230の構成が第1実施形態と異なるが、その他の構成が第1実施形態と同様であることにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
例えば、第1個別流路20xの連通方向D21及び第2個別流路20yの連通方向D22は、共に、延在方向に対して斜めであり、かつ、延在方向の一方(図5の上方)のベクトルを有する。そのため、第1実施形態と同様の理論により、延在方向におけるドットの疎密を抑制できる。
【0068】
複数の第1個別流路20aのそれぞれにおける連通方向D21、及び、複数の第2個別流路20bのそれぞれにおける連通方向D22が、共に、延在方向に対して斜めであり、かつ、延在方向の一方(図5の上方)のベクトルを有する。この場合、帰還流路233における延在方向の一方、及び、供給流路231,232における延在方向の他方に、空いたスペースが生じる。当該スペースに排出口233y及び供給口231x,232xを設け、スペースを有効活用することで、延在方向においてヘッド201を小型化できる。
【0069】
制御部5は、第1個別流路20aに属するアクチュエータ12xを連通方向D1,D2が延在方向と平行な場合の規定タイミングよりも後に駆動し、第2個別流路20bに属するアクチュエータ12xを規定タイミングよりも前に駆動する。この場合、延在方向におけるドットの疎密については個別流路20の構成により抑制する一方、配列方向におけるドットの疎密については制御部5の制御により抑制できる。
【0070】
<第3実施形態>
続いて、図6及び図7を参照し、本発明の第3実施形態に係るヘッド301について説明する。本実施形態は、ヘッド301の流路構成が第1実施形態と異なる。図6中の太矢印及び図7中の矢印は、インクの流れを示す。
【0071】
ヘッド301の流路基板311は、図7に示すように、互いに接着された5枚のプレート311a~311eを有する。プレート311aには、共通流路30が形成されている。供給口33x及び排出口31y,32y(図6参照)は、プレート311aの上面に開口している。プレート311b~311eには、複数の個別流路320が形成されている。複数の個別流路320は、共通流路30の下方に位置している。
【0072】
各個別流路320は、ノズル321、1つの圧力室323(連通路322)及び2つの連結流路325を含む。圧力室323は、ノズル321の直上を通る連通路322に対応する。即ち、圧力室323は、ノズル321の直上に位置し、接続流路等を介さず直接的にノズル321と連通している。
【0073】
ノズル321は、プレート311eに形成された貫通孔で構成されている。圧力室323は、プレート311c,311dに形成された貫通孔で構成されている。プレート311bの下面には、各圧力室323と対向する位置に凹部311bxが形成されている。プレート311bは、凹部311bx内にアクチュエータユニット12の個別電極12d及び圧電体12cが配置されるように、プレート311cの上面に接着されている。アクチュエータユニット12の振動板12a及び共通電極12bは、プレート311cの上面の略全体に配置されており、複数の圧力室323を覆っている。連結流路325は、プレート311b、振動板12a及び共通電極12bに形成された貫通孔で構成されている。
【0074】
個別流路320は、図6に示すように、帰還流路31と供給流路33とを結ぶ複数の第1個別流路320a、及び、帰還流路32と供給流路33とを結ぶ複数の第2個別流路320bを含む。第1個別流路320aは、配列方向において帰還流路31と供給流路33とに跨っている。第2個別流路320bは、配列方向において帰還流路32と供給流路33とに跨っている。
【0075】
ここで、複数の第1個別流路320aのうち図6の最も上側にある第1個別流路320aを「ある第1個別流路320x」、複数の第2個別流路320bのうち図6の最も上側にある第2個別流路320bを「ある第2個別流路320y」とする。第1個別流路320xに含まれるノズル321と、第2個別流路320yに含まれるノズル321とは、延在方向に互いに隣接している(即ち、これら2つのノズル321の間には他のノズル321が配置されていない)。第1個別流路320xの圧力室323(連通路322)及び第2個別流路320yの圧力室323(連通路322)は、共に、供給流路33から延在方向に対して斜めの方向(延在方向及び配列方向の双方と交差する方向)に延びている。換言すると、第1個別流路320xの連通方向(連通路322に対応する圧力室323が供給流路33から延びる方向)D31及び第2個別流路320yの連通方向D32は、共に、延在方向に対して斜めである。連通方向D31,D32は、配列方向において互いに逆で、かつ、延在方向において互いに同じ方向(延在方向の一方)の、ベクトルを有する。
【0076】
本実施形態では、全ての第1個別流路320aの圧力室323(連通路322)が、供給流路33から互いに同じ方向(連通方向D31)に延びている。全ての第2個別流路320bの圧力室323(連通路322)が、供給流路33から互いに同じ方向(連通方向D32)に延びている。
【0077】
各圧力室323における連通方向D31,D32の一端及び他端は、それぞれ、供給流路33、及び、帰還流路31又は帰還流路32と、鉛直方向において重なっている。具体的には、第1個別流路320aの圧力室323は、連通方向D31の一端が供給流路33と鉛直方向に重なり、連通方向D31の他端が帰還流路31と鉛直方向に重なっている。第2個別流路320bの圧力室323は、連通方向D32の一端が供給流路33と鉛直方向に重なり、連通方向D32の他端が帰還流路32と鉛直方向に重なっている。各圧力室323における連通方向D31,D32の一端及び他端のそれぞれに、連結流路325が配置されている。
【0078】
各個別流路320において、2つの連結流路325の一方は、図7に示すように、圧力室323から上方に延び、供給流路33に接続している。2つの連結流路325の他方は、圧力室323から上方に延び、帰還流路31又は帰還流路32に接続している。
【0079】
各個別流路320に供給されたインクは、一方の連結流路25を通って下方に移動し、圧力室323に供給される。圧力室23に供給されたインクは、水平に移動し、一部がノズル321から吐出され、残りが他方の連結流路25を通って上方に移動し、帰還流路31又は帰還流路32に流入する。
【0080】
以上に述べたように、本実施形態によれば、ヘッド301の流路構成が第1実施形態と異なるが、その他の構成が第1実施形態であることにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0081】
例えば、第1個別流路320xの連通方向D31及び第2個別流路320yの連通方向D32は、共に、延在方向に対して斜めであり、かつ、延在方向の一方(図6の上方)のベクトルを有する。そのため、第1実施形態と同様の理論により、延在方向におけるドットの疎密を抑制できる。
【0082】
<第4実施形態>
続いて、図8を参照し、本発明の第4実施形態に係るヘッド401について説明する。本実施形態は、連通路422の形状が第1実施形態と異なる。図8中の太矢印は、インクの流れを示す。
【0083】
本実施形態において、第1個別流路20aにおける連通路422及び第2個別流路20bにおける連通路422は、それぞれ、第1中心線O1に関して非対称な形状を有する。第1中心線O1は、連通路422における連通方向D1,D2の中心を通り、連通方向D1,D2と直交しかつ配列方向及び延在方向の双方を通る面(水平面)に沿った線である。具体的には、各連通路422は、連通方向D1,D2の下流に向かうにつれて、幅が大きくなっている。そして、第1個別流路20aにおける連通路422及び第2個別流路20bにおける連通路422は、第2中心線O2に関して互いに対称な形状を有する。第2中心線O2は、供給流路33における配列方向の中心を通り、延在方向に沿った線である。
【0084】
本実施形態によれば、連通路422が連通方向D1,D2において一定の形状を有さない場合においても、その他の構成が第1実施形態と同様であることにより、延在方向におけるドットの疎密を抑制できる等の効果が得られる。なお、「互いに対称な形状」とは、互いに完全に対称な形状である場合の他、互いに完全に対称ではないもののその形状の差が微小な場合も含む。
【0085】
<第5実施形態>
続いて、図9を参照し、本発明の第5実施形態に係るヘッド501について説明する。本実施形態は、第1個別流路20aにおける連通方向D51、第1個別流路20aと第2個別流路20bとにおける連通路22の断面積の大小関係、供給口533xの位置、及び、供給流路33におけるインクの流れ方向が第1実施形態と異なる。図9中の太矢印は、インクの流れを示す。
【0086】
供給口533xは、供給流路33における延在方向の他方(図9の下方)の端部に形成されている。即ち、供給口533xは、延在方向において、ヘッド501の流路基板11の中心に対して、帰還流路31,32の排出口31y,32yと同じ方向に設けられている。供給口533xから供給流路33に供給されたインクは、供給流路33内を延在方向の他方から一方に向かって移動しつつ、第1個別流路20a及び第2個別流路20bのそれぞれに供給される。供給流路33におけるインクの流れ方向と、帰還流路31,32におけるインクの流れ方向とは、互いに逆の方向である。
【0087】
連通方向D51の流れ方向(延在方向のうち供給流路33をインクが流れる方向であり、本実施形態では延在方向の一方)に対する角度θ51は、連通方向D2の流れ方向に対する角度θ52(角度θ2と同様、略45度)よりも小さく、略30度である。連通方向D51は、連通方向D1と同様、延在方向に対して斜めであり、配列方向において連通方向D2とは逆で、かつ、延在方向において互いに同じ方向(延在方向の一方)の、ベクトルを有する。
【0088】
連通路22の断面積が一定の場合、連通方向の流れ方向に対する角度θ51,θ52が小さくなるほど(即ち、流れ方向に近づくほど)、連通路22を流れるインクの流速が大きくなる。そこで本実施形態では、当該角度が小さい第1個別流路20aの連通路22の断面積を大きくしている。即ち、第1個別流路20aにおける連通路22の断面積は、第2個別流路20bにおける連通路22の断面積よりも大きい。具体的には、第1個別流路20aにおける連通路22の鉛直方向の長さは、第2個別流路20bにおける連通路22の鉛直方向の長さよりも長い。或いは、これに加えて又はこれに代えて、第1個別流路20aにおける連通路22の幅(連通方向D51と直交しかつ配列方向及び延在方向の双方を通る面(水平面)に沿った方向の長さ)は、第2個別流路20bにおける連通路22の幅よりも長い。これにより、第1個別流路20aと第2個別流路20bとにおいて、連通路22を流れるインクの流速を均一化できる。
【0089】
<第6実施形態>
続いて、図10及び図11を参照し、本発明の第6実施形態に係るヘッド601について説明する。本実施形態は、ヘッド601の流路構成が第1実施形態と異なる。共通流路230の構成は、第2実施形態と同じである。図10中の太矢印及び図11中の矢印は、インクの流れを示す。
【0090】
ヘッド601の流路基板611は、図11に示すように、互いに接着された4枚のプレート611a~611dを有する。プレート611a~611cには、共通流路230(供給流路231,232及び帰還流路233)が形成されている。プレート611a~611dには、複数の個別流路620が形成されている。
【0091】
各個別流路620は、ノズル621、連通路622、1つの圧力室623、接続流路624及び連結流路625を含む。各個別流路620におけるノズル621以外の要素は、プレート611a~611cに形成されており、配列方向において共通流路230(供給流路231,232及び帰還流路233)と重なっている。ノズル621は、プレート611dに形成された貫通孔で構成されている。圧力室623は、連結流路625を介して供給流路231又は供給流路232と連通し、かつ、接続流路624及び連通路622を介してノズル621と連通している。連通路622は、ノズル621の直上を通る流路であり、接続流路624とノズル621との間、かつ、接続流路624と帰還流路233との間に配置されている。連通路622は帰還流路233の側方から延び、連結流路625は供給流路231又は供給流路232の側方から延びている。
【0092】
供給流路231,232、帰還流路233、複数の圧力室623及び複数の連結流路625は、プレート611aの上面に開口している。アクチュエータユニット12の振動板12a及び共通電極12bは、プレート611aの上面の略全体に配置されており、供給流路231,232、帰還流路233、複数の圧力室623及び複数の連結流路625を覆っている。振動板12a及び共通電極12bにおいて、供給口231x,232x及び排出口233y(図10参照)に対応する位置には、貫通孔が形成されている。供給口231x,232x及び排出口233yは、ヘッド601の上面に開口しており、上記貫通孔を介して供給流路231,232及び帰還流路233と連通している。
【0093】
個別流路620は、図10に示すように、供給流路231と帰還流路233とを結ぶ複数の第1個別流路620a、及び、供給流路232と帰還流路233とを結ぶ複数の第2個別流路620bを含む。
【0094】
ここで、複数の第1個別流路620aのうち図10の最も上側にある第1個別流路620aを「ある第1個別流路620x」、複数の第2個別流路620bのうち図10の最も上側にある第2個別流路620bを「ある第2個別流路620y」とする。第1個別流路620xに含まれるノズル621と、第2個別流路620yに含まれるノズル621とは、延在方向に互いに隣接している(即ち、これら2つのノズル621の間には他のノズル621が配置されていない)。第1個別流路620xの連通路622及び第2個別流路620yの連通路622は、共に、帰還流路233から延在方向に対して斜めの方向(延在方向及び配列方向の双方と交差する方向)に延びている。換言すると、第1個別流路620xの連通方向(連通路622が帰還流路233から延びる方向)D61及び第2個別流路620yの連通方向D62は、共に、延在方向に対して斜めである。連通方向D61,D62は、配列方向において互いに逆で、かつ、延在方向において互いに同じ方向(延在方向の一方:図10の上方)の、ベクトルを有する。
【0095】
本実施形態では、全ての第1個別流路620aの連通路622が、帰還流路233から互いに同じ方向(連通方向D61)に延びている。全ての第2個別流路620bの連通路622が、帰還流路233から互いに同じ方向(連通方向D62)に延びている。さらに、全ての第1個別流路620aの圧力室623及び連結流路625が、帰還流路233から互いに同じ方向(連通方向D61)に延びている。全ての第2個別流路620bの圧力室623及び連結流路625が、帰還流路233から互いに同じ方向(連通方向D62)に延びている。
【0096】
各個別流路620に供給されたインクは、図11に示すように、連結流路625及び圧力室623を通って水平に移動し、接続流路624を通って下方に移動して、連通路622に流入する。当該インクは、連通路622を通って水平に移動しつつ、一部がノズル621から吐出され、残りが帰還流路233に流入する。
【0097】
以上に述べたように、本実施形態によれば、ヘッド601の流路構成が第1実施形態と異なるが、その他の構成が第1実施形態と同様であることにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
例えば、第1個別流路620xの連通方向D61及び第2個別流路620yの連通方向D62は、共に、延在方向に対して斜めであり、かつ、延在方向の一方(図10の上方)のベクトルを有する。そのため、第1実施形態と同様の理論により、延在方向におけるドットの疎密を抑制できる。
【0099】
<第7実施形態>
続いて、図12を参照し、本発明の第7実施形態に係るヘッド701について説明する。本実施形態は、各個別流路720に含まれるノズル21の数が第1実施形態と異なる。図12中の矢印は、インクの流れを示す。
【0100】
各個別流路720は、2つのノズル21を含む。2つのノズル21(第1ノズル21a及び第2ノズル21b)は、第1接続流路24a及び第2接続流路24bの直下であって、連通路22における連通方向の一端及び他端に配置されている。
【0101】
第1接続流路24aを通って下方に移動し、連通路22に流入したインクは、連通路22を通って水平に移動しつつ、一部が第1ノズル21aから吐出される。残りのインクは、さらに移動し、その一部が第2ノズル21bから吐出され、その残りが第2接続流路24bを通って上方に移動する。
【0102】
以上に述べたように、本実施形態によれば、個別流路720に含まれるノズル21の数が第1実施形態と異なるが、その他の構成が第1実施形態と同様であることにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0103】
<第8実施形態>
続いて、図13を参照し、本発明の第8実施形態に係るヘッド801について説明する。本実施形態は共通流路の構成が第1実施形態と異なる。図13中の矢印は、インクの流れを示す。
【0104】
ヘッド801は、帰還流路831及び供給流路832を含む第1共通流路組830xと、供給流路833及び帰還流路834を含む第2共通流路組830yとを有する。
【0105】
これら4本の流路831~834は、配列方向に配列され、かつ、共に延在方向に延びている。つまり、第1共通流路組830x及び第2共通流路組830yは、配列方向に配列されている。第1共通流路組830xにおいて、帰還流路831及び供給流路832は、配列方向に配列され、かつ、共に延在方向に延びている。第2共通流路組830yにおいて、供給流路833及び帰還流路834は、配列方向に配列され、かつ、共に延在方向に延びている。
【0106】
第1共通流路組830x及び第2共通流路組830yのそれぞれに対し、サブタンク7x,7yが設けられている。例えば、サブタンク7x,7yは、互いに異なる種類(色等)のインクを貯留している。
【0107】
供給流路832は、供給口832xを介してサブタンク7xの貯留室7axと連通している。帰還流路831は、排出口831yを介して貯留室7axと連通している。
【0108】
供給流路833は、供給口833xを介してサブタンク7yの貯留室7ayと連通している。帰還流路834は、排出口834yを介して貯留室7ayと連通している。
【0109】
本実施形態において、第1個別流路20aは、帰還流路831と供給流路832とを結ぶ。第2個別流路20bは、供給流路833と帰還流路834とを結ぶ。
【0110】
貯留室7ax内のインクは、制御部5の制御により循環ポンプ7pxが駆動されることで、供給口832xから供給流路832に供給される。供給流路832に供給されたインクは、供給流路832内を延在方向の一方から他方に向かって移動しつつ、複数の第1個別流路20aのそれぞれに供給される。第1個別流路20aに供給されたインクは、帰還流路831に流入し、帰還流路831内を延在方向の一方から他方に向かって移動する。そして当該インクは、排出口831yを介して帰還流路831から排出され、貯留室7axに戻される。
【0111】
貯留室7ay内のインクは、制御部5の制御により循環ポンプ7pyが駆動されることで、供給口833xから供給流路833に供給される。供給流路833に供給されたインクは、供給流路833内を延在方向の一方から他方に向かって移動しつつ、複数の第2個別流路20bのそれぞれに供給される。第2個別流路20bに供給されたインクは、帰還流路834に流入し、帰還流路834内を延在方向の一方から他方に向かって移動する。そして当該インクは、排出口834yを介して帰還流路834から排出され、貯留室7ayに戻される。
【0112】
第1個別流路20xの連通路22は、供給流路832から帰還流路831に向けて、延在方向に対して斜めの方向(延在方向及び配列方向の双方と交差する方向)に延びている。第2個別流路20yの連通路22は、供給流路833から帰還流路834に向けて、延在方向に対して斜めの方向(延在方向及び配列方向の双方と交差する方向)に延びている。換言すると、第1個別流路20xの連通方向(連通路22が供給流路832から帰還流路831に向けて延びる方向)D1及び第2個別流路20yの連通方向(連通路22が供給流路833から帰還流路834に向けて延びる方向)D2は、共に、延在方向に対して斜めである。連通方向D1,D2は、配列方向において互いに逆で、かつ、延在方向において互いに同じ方向(延在方向の一方)の、ベクトルを有する。
【0113】
本実施形態では、全ての第1個別流路20aの連通路22が、供給流路832から帰還流路831に向けて、互いに同じ方向(連通方向D1)に延びている。全ての第2個別流路20bの連通路22が、供給流路833から帰還流路834に向けて、互いに同じ方向(連通方向D2)に延びている。
【0114】
以上に述べたように、本実施形態によれば、共通流路の構成が第1実施形態と異なるが、その他の構成が第1実施形態と同様であることにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0115】
例えば、第1個別流路20xの連通方向D1及び第2個別流路20yの連通方向D2は、共に、延在方向に対して斜めであり、かつ、延在方向の一方(図13の上方)のベクトルを有する。そのため、第1実施形態と同様の理論により、延在方向におけるドットの疎密を抑制できる。
【0116】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0117】
共通流路の数は、上述の第1~第7実施形態では3つであるが、4つ以上であってもよい。
【0118】
第8実施形態では、配列方向の一方(図13の左方)から他方(図13の右方)に向けて、第1共通流路組の帰還流路、第1共通流路組の供給流路、第2共通流路組の供給流路、第2共通流路組の帰還流路が順に配置さているが、これに限定されない。第1共通流路組の供給流路及び帰還流路と第2共通流路組の供給流路及び帰還流路との配列順序は、任意である。例えば、配列方向の一方から他方に向けて、第1共通流路組の帰還流路、第1共通流路組の供給流路、第2共通流路組の帰還流路、第2共通流路組の供給流路が順に配置されてよい。配列方向の一方から他方に向けて、第1共通流路組の供給流路、第1共通流路組の帰還流路、第2共通流路組の供給流路、第2共通流路組の帰還流路が順に配置されてよい。或いは、配列方向の一方から他方に向けて、第1共通流路組の供給流路、第1共通流路組の帰還流路、第2共通流路組の帰還流路、第2共通流路組の供給流路が順に配置されてもよい。
【0119】
供給口及び排出口のサイズ及び位置は、特に限定されない。例えば、上述の実施形態では、第3共通流路の供給口又は排出口の面積が第1共通流路及び第2共通流路の排出口又は供給口の面積よりも大きいが、これらの面積が互いに同じであってもよい。
【0120】
個別流路に含まれるノズルの数は、上述の実施形態では1つ又は2つであるが、3つ以上であってもよい。
【0121】
ノズルは、連通路における連通方向の中央以外の位置に配置されてもよい。
【0122】
個別流路に含まれる圧力室の数は、3つ以上であってもよい。
【0123】
第1個別流路における第1共通流路に接続する一端と第3共通流路に接続する他端との延在方向における間隔、及び、第2個別流路における第3共通流路に接続する一端と第2共通流路に接続する他端との延在方向における間隔が、互いに異なってもよい。
【0124】
ある第1個別流路における連通方向の、延在方向に対する鋭角側の角度、及び、ある第2個別流路における連通方向の、延在方向に対する鋭角側の角度が、互いに異なってもよい。また、これら角度は、60度以上であってもよい。
【0125】
アクチュエータは、圧電素子を用いたピエゾ方式のものに限定されず、その他の方式(例えば、発熱素子を用いたサーマル方式、静電力を用いた静電方式等)のものであってもよい。
【0126】
ヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式(紙幅方向と平行な走査方向に移動しつつノズルから吐出対象に対して液体を吐出する方式)であってもよい。
【0127】
例えば、図2において、ヘッド1がシリアル式で、第1個別流路20aが供給流路33に対して走査方向の下流(即ち、ヘッド1に対する吐出対象である用紙9の相対移動方向の上流)、第2個別流路20bが供給流路33に対して走査方向の上流(相対移動方向の下流)に位置する場合、第1個別流路20aに属するアクチュエータを規定タイミングで駆動すると、第1個別流路20aのノズル21から吐出されたインクは、供給流路33から第1個別流路20aを通って帰還流路31に向かうインクの流れの影響により、走査方向の下流に飛翔し、所望の位置に対して走査方向の下流に着弾することとなる。そこで、この場合は、第1個別流路20aに属するアクチュエータ12xを規定タイミングよりも前に駆動することで、第1個別流路20aのノズル21から吐出されたインクの着弾位置が、走査方向の上流に補正される。また、この場合に、第2個別流路20bに属するアクチュエータ12xを規定タイミングで駆動すると、第2個別流路20bのノズルから吐出されたインクは、供給流路33から第2個別流路20bを通って帰還流路32に向かうインクの流れの影響により、走査方向の上流に飛翔し、所望の位置に対して走査方向の上流に着弾することとなる。そこで、この場合は、第2個別流路20bに属するアクチュエータ12xを規定タイミングよりも後に駆動することで、第2個別流路20bのノズル21から吐出されたインクの着弾位置が、走査方向の下流に補正される。
【0128】
吐出対象は、用紙に限定されず、例えば布、基板等であってもよい。
【0129】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、任意の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってよい。
【0130】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0131】
1;201;301:401:501;601;701;801 ヘッド(液体吐出ヘッド)
5 制御部
7a;7ax,7ay 貯留室
12x アクチュエータ
20;320;620;720 個別流路
20a;320a;620a 第1個別流路
20b;320b;620b 第2個別流路
20x;320x;620x ある第1個別流路
20y;320x;620y ある第2個別流路
21;321;621;21a,21b ノズル
22;322;422;622 連通路
23;323;623 圧力室
24 接続流路
30;230 共通流路
31 帰還流路(第1共通流路)
31y 排出口(第1排出口)
32 帰還流路(第2共通流路)
32y 排出口(第2排出口)
33 供給流路(第3共通流路)
33x 供給口
100 プリンタ(液体吐出装置)
231 供給流路(第1共通流路)
231x 供給口(第1供給口)
232 供給流路(第2共通流路)
232x 供給口(第2供給口)
233 帰還流路(第3共通流路)
233y 排出口
830x 第1共通流路組
830y 第2共通流路組
831,834 帰還流路
832,833 供給流路
D1,D2;D21,D22;D31,D32;D51;D61,D62 連通方向
I1,I2 間隔
O1 第1中心線
O2 第2中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13