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特許7176216エージングレスシーラントフィルム及び該エージングレスシーラントフィルムを用いた巻取体、積層体、包装材料、包装体
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  • 特許-エージングレスシーラントフィルム及び該エージングレスシーラントフィルムを用いた巻取体、積層体、包装材料、包装体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】エージングレスシーラントフィルム及び該エージングレスシーラントフィルムを用いた巻取体、積層体、包装材料、包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20221115BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/32 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018063475
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019172322
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 文彦
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-238475(JP,A)
【文献】特開2008-162607(JP,A)
【文献】特開2014-213937(JP,A)
【文献】特開2003-327756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、コート層(E)と、積層体において最表面層となるシーラント層(G)とを含む、包装袋用の、エージングレスシーラントフィルムであって、
コート層(E)は、
前記エージングレスシーラントフィルムの片面の最表面層であり、
ポリオレフィン系樹脂が分散した水性分散液を、塗布および乾燥して形成した層であり、
前記水性分散液は、不揮発性水性化助剤を含んでおらず、
シーラント層(G)は、前記エージングレスシーラントフィルムのもう1方の片面の最表面層である、
エージングレスシーラントフィルム。
【請求項2】
シーラント層(G)が、LDPEまたはLLDPEを含む、
請求項1に記載の、エージングレスシーラントフィルム。
【請求項3】
前記水性分散液中に分散している前記ポリオレフィン系樹脂の数平均粒子径が、1μm以下である、
請求項1または2に記載の、エージングレスシーラントフィルム。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂が、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂である、請求項3に記載の、エージングレスシーラントフィルム。
【請求項5】
前記不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂が、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物に由来する構造を、全不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂中に、0.01質量%以上、5質量%以下の割合で含む、
請求項4に記載の、エージングレスシーラントフィルム。
【請求項6】
請求項1~の何れか1項に記載のエージングレスシーラントフィルムから作製された、耐ブロッキング性シーラントフィルム巻取体。
【請求項7】
少なくとも、基材層(A)と、請求項1~の何れか1項に記載のエージングレスシーラントフィルムのコート層(E)面とが、貼り合わせられた構成を有する、エージングレス積層体。
【請求項8】
さらに、ドライラミネーション接着剤層(C)と、金属元素含有バリア層(D)とを含む、請求項に記載のエージングレス積層体。
【請求項9】
更に、補強層(B)を含む、請求項またはに記載の、エージングレス積層体。
【請求項10】
金属元素含有バリア層(D)が、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着膜、酸化アルミニウム蒸着膜、酸化珪素蒸着膜、なる群から選ばれる1種または2種以上である、
請求項またはに記載の、エージングレス積層体。
【請求項11】
請求項7~10の何れか1項に記載のエージングレス積層体から作製された、包装材料。
【請求項12】
請求項11に記載の包装材料から作製された、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋用のエージングレスシーラントフィルム、該エージングレスシーラントフィルムから作製された耐ブロッキング性シーラントフィルム巻取体、該エージングレスシーラントフィルムまたは該耐ブロッキング性エージングレスシーラントフィルム巻取体から作製されたエージングレス積層体、該エージングレス積層体から作製された包装材料、包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押し出しラミネートによってシーラント層が積層された積層体は、シーラント層の接着強度が弱い為にシーラント層が剥離を生じ易く、包装袋を開封する際に、手で袋を引き裂くと、引き裂き端部にシーラント層の剥がれに伴うシーラント層の伸び破断が発生し、引き裂きラインが乱れ、引き裂き性、即ち、手切れ性がよくないという問題があった。
【0003】
特許文献1~3参照には、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01~5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下のように小さくなるように分散した水性分散液であって、且つその水性分散体中には不揮発性水性化助剤を含まないように形成した水性分散液の塗膜を有する積層体が接着性と手切り開封性に優れていることが記載されている。
【0004】
しかし、これらに記載された積層体はエージングレスで用いることは不可能であり、更には、耐落下衝撃性(高落袋強度)は充分では無かった。
【0005】
さらに、接着剤は基材に直接塗布して用いられているが、基材に印刷等によって絵柄が設けられてあった場合には、該絵柄に接着剤を塗布すると、接着剤に含有された溶剤等によって該絵柄の再溶解が生じてしまっていた。また、基材にスリット加工(切れやすくなるように点線など貫通した微小孔をあける)した場合、基材に接着剤を塗布すると、該微小孔を通じてから反対側に接着剤が漏洩する恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3699935号公報
【文献】特許第5029007号公報
【文献】特許第5415670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述のような問題点を解決するためになされたものであり、その課題は、接着剤を用いても、基材に印刷等によって設けられた絵柄の再溶解が生じず、スリット加工された基材を用いても、スリットの微小孔を通じてから反対側に接着剤が漏洩することがなく、エージングをせずに使用可能な包装袋用のエージングレスシーラントフィルム、該エージングレスシーラントフィルムを用いた積層体、及び該積層体を用いた包装材料、該包装材料をから作製した包装袋を提供することである。
【0008】
また、包装袋を開封する際の手切れ性もよく、更に、積層体を製造する際の有機溶剤の排出量も少なくできるという、性能、使用適性に優れると共に、環境に対しても悪影響の少ない包装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、種々研究の結果、特定の素材による特定の層構成を有するシーラントフィルム、該シーラントフィルムを用いた積層体、及び該積層体を用いた包装材料、包装体が、上記課題を解決し得ることを見出したものである。
【0010】
そして、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.少なくとも、コート層(E)と、シーラント層(G)とを含む、包装袋用の、エージングレスシーラントフィルムであって、
コート層(E)は、
前記エージングレスシーラントフィルムの片面の最表面層であり、
ポリオレフィン系樹脂が分散した水性分散液を、塗布および乾燥して形成した層であり、
前記水性分散液は、不揮発性水性化助剤を実質的に含んでおらず、
シーラント層(G)は、前記エージングレスシーラントフィルムのもう1方の片面の最表面層である、
エージングレスシーラントフィルム。
2.シーラント層(G)が、LDPEまたはLLDPEを含む、
上記1に記載の、エージングレスシーラントフィルム。
3.前記水性分散液中に分散している前記ポリオレフィン系樹脂の数平均粒子径が、1μm以下である、
上記1または2に記載の、エージングレスシーラントフィルム。
4.前記ポリオレフィン系樹脂が、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂である、上記3に記載の、エージングレスシーラントフィルム。
5.前記不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂が、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物に由来する構造を、全不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂中に、0.01質量%以上、5質量%以下の割合で含む、
上記4に記載の、エージングレスシーラントフィルム。
6.コート層(E)の厚さが、0.05μm以上、5μm以下である、上記1~5の何れかに記載の、エージングレスシーラントフィルム。
7.上記1~6の何れかに記載のエージングレスシーラントフィルムから作製された、耐ブロッキング性シーラントフィルム巻取体。
8.少なくとも、基材層(A)と、上記1~6の何れかに記載のエージングレスシーラントフィルムのコート層(E)面とが、貼り合わせられた構成を有する、
エージングレス積層体。
9.さらに、ドライラミネーション接着剤層(C)と、金属元素含有バリア層(D)とを含む、上記8に記載のエージングレス積層体。
10.更に、補強層(B)を含む、上記8または9に記載の、エージングレス積層体。
11.金属元素含有バリア層(D)が、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着膜、酸化アルミニウム蒸着膜、酸化珪素蒸着膜、なる群から選ばれる1種または2種以上である、
上記9または10に記載の、エージングレス積層体。
12.上記8~11の何れかに記載のエージングレス積層体から作製された、包装材料。14.上記13に記載の包装材料から作製された、包装袋。
【発明の効果】
【0011】
耐ブロッキング性に優れて、巻取体形態での保管性に優れた、包装袋用のエージングレスシーラントフィルムを得ることができる。
【0012】
また、本発明の包装袋用のエージングレスシーラントフィルムは、新たに接着剤を用いずに、そのまま簡便に用いることができ、スリット(微小孔)付き基材フィルムを用いても接着剤がスリットから漏洩せず、耐溶剤性に劣る素材からなるフィルムやインクジェット印刷等の耐溶剤性に劣る絵柄を有するフィルムを用いても基材や絵柄が崩れることなく、簡便に貼り合わせることが可能である。
【0013】
本発明のエージングレスシーラントフィルムを用いることで、積層体をエージングせずに作製することができ、リードタイムを短縮できる。
【0014】
得られた積層体から作製された包装体を用いた包装袋は、シーラント層がアルコールなどの溶剤や酸、アルカリ性の内容物等に接しても接着性が低下され難いことで、耐内容物性を発揮することが出来る。
【0015】
また、包装袋を開封する際の手切れ性もよく、更に、積層体を製造する際の有機溶剤の排出量も少なくすることが可能であり、性能、使用適性に優れると共に、環境に対しても悪影響の少ない積層体、包装材料、包装袋を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るエージングレスシーラントフィルムの一例を示す断面図である。
図2】本発明に係る積層体の一例を示す断面図である。
図3】本発明に係る積層体の別態様の一例を示す断面図である。
図4】本発明に係る積層体のさらに別態様の一例を示す断面図である。
図5】本発明に係る包装袋の一例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<エージングレスシーラントフィルム>
本発明の包装袋用のエージングレスシーラントフィルムは、少なくとも、コート層(E)と、シーラント層(G)とを含む。
【0018】
本発明の包装袋用のエージングレスシーラントフィルムは、耐ブロッキング性に優れていることで、シーラントフィルム巻取体の形態での保管性にも優れる。
【0019】
コート層(E)は、シーラント層(G)上に形成されていてもよく、シーラント層(G)上に形成された、ポリオレフィン系接着剤層(F)等の他層上に形成されていても良い。
【0020】
[コート層(E)]
コート層(E)は、塗布および乾燥によって形成された層であり、エージングレスシーラントフィルムの片面の最表面層である。
【0021】
コート層(E)は、エージングレスシーラントフィルムを用いて作製した積層体中において、層間接着性を付与する層である。
【0022】
尚、コート層(E)と同組成の接着剤を、ポリオレフィン系接着剤層(F)と隣接しない層に用いることも可能であるが、その場合は、コート層(E)でない、普通のコート層に分類される。
【0023】
上記構成を有することによって、積層体内は、良好な接着性が得られている。
【0024】
コート層(E)の厚さは、0.05μm以上、5μm以下が好ましい。上記範囲よりも薄いと、コート層(E)が不均質になり易く、上記範囲よりも厚いと、コート層(E)内にピンホールボイド等が発生し易くなり、接着性が低下し易くなる。
【0025】
コート層(E)の成分にはポリオレフィン系のコート剤を用いて、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法などの公知方法によって塗布、乾燥等することで形成することができる。
【0026】
コート層(E)は、ポリオレフィン系樹脂が分散した水性分散液から形成された層であることが好ましい。
【0027】
コート層(E)をポリオレフィン系樹脂が分散した水性分散液から形成する場合には、例えば、該水性分散液を塗布した後に80~120℃で乾燥して形成することが好ましい。
【0028】
更に、該ポリオレフィン系樹脂は、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂であることがより好ましい。
【0029】
該水性分散液中のポリオレフィン系樹脂の含有率は、1~60質量%が好ましく、3~55質量%がより好ましく、5~50質量%がさらに好ましく、10~45質量%が特に好ましい。含有率を上記範囲にすることで、良好な成膜性を得られる。
【0030】
ここで、前記水性分散液は、不揮発性水性化助剤を実質的に含んでいないことが好ましい。これにより、コート層(E)の可塑化を防止出来、エージングせずに、コート層(E)界面の接着強度を高めることが出来る。
【0031】
したがって、本発明のエージングレスシーラントフィルムを用いて作製した積層体は、エージングせずにシーラント層は高接着強度を発揮することでリードタイムの短縮が可能であり、アルコールなどの溶剤や酸、アルカリ性の内容物等に接しても接着性が低下され難い為に、該積層体から作製された包装体を用いた包装袋は、耐内容物性を発揮することが出来る。
【0032】
「不揮発性水性化助剤を実質的に含有しない」とは、不揮発性水性化助剤を積極的には系に添加しないことにより、結果的にこれらを含有しないことを意味する。こうした不揮発性水性化助剤は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、ポリオレフィン樹脂成分に対して、例えば0.1質量%未満程度含まれていても差し支えない。
【0033】
水性分散液の主たる溶剤は水であるが、水溶性のアルコール類やエーテル類等は含有されていてもよく、樹脂成分に可塑剤等として添加されていた少量の有機溶剤成分を含んでいてもよい。
【0034】
更に、揮発性の水性化助剤ならば少量を含有してもよく、例えば、アンモニアや揮発性の有機アミン化合物のような塩基性化合物を含むことで、分散した不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂の微粒子の凝集を防止して、安定性を付与できる。
【0035】
また、水性分散液を用いることによって、積層体製造時の有害な有機溶剤の排出量を低減することができるので、環境に対する悪影響を少なくすることもできる。
【0036】
また、ポリオレフィン系樹脂は、前記水性分散液中で、微粒子状態で分散しており、該微粒子の数平均粒子径は、1μm以下であることが好ましく、0.01μm以上、1μm以下であることがより好ましい。また、重量平均粒子径も、1μm以下であることが好ましく、0.01μm以上、1μm以下であることがより好ましい。上記範囲よりも小さいと水性分散液を作製することが困難になって工程が複雑化する為にコストが上昇してしまう傾向になり、上記範囲よりも大きいと、コート層(E)が不均質になり易く、接着性を低下させる虞がある。
【0037】
上記の通り、コート層(E)の形成には、水性溶剤を用いて、不揮発性水性化助剤を実質的に含まずに作製していることで、本発明の包装袋用のエージングレスシーラントフィルムは、耐ブロッキング性に優れて、巻取体形態での補完性に優れる。
【0038】
また、コート層(E)が接着性を有することから、本発明のエージングレスシーラントフィルムを用いた積層体を作製する際には、新たに接着剤を用いずに、本発明のエージングレスシーラントフィルムをそのまま簡便に基材フィルム等と貼り合わせて用いることが可能であり、有孔基材フィルムと貼り合わせても該孔を接着剤で埋めてしまうことも無く維持することが可能であり、更には、耐溶剤性に劣るフィルムとの貼り合わせや、インクジェット印刷等の耐溶剤性に劣る絵柄を有するフィルムとの貼り合わせも可能である。
【0039】
(ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂とは、1種または2種以上のα-オレフィンを原料モノマーとして用いた単独重合体または共重合体である。
【0040】
α-オレフィンの具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ヘキセンのような炭素原子数2~8、好ましくは2~6のα-オレフィンが挙げられる。好ましいα-オレフィンは、エチレン、プロピレンである。
【0041】
また、ポリオレフィンはモノマーとしてα-オレフィン以外の他のモノマーを併用した共重合体であってもよい。そのような他のモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーが挙げられる。
【0042】
コート層(E)に好ましく用いられるポリオレフィン系樹脂の具体例としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、シングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン-α・オレフィン共重合体、低密度ポリエチレン(LDPE)、アイオノマー等のポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン系樹脂;ポリブタジエン系樹脂、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体;不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂、等が挙げられる。
【0043】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、5,000~200,000であることが好ましく、10,000~150,000であることがより好ましく、20,000~120,000であることがさらに好ましく、30,000~100,000であることが特に好ましく、35,000~80,000であることが最も好ましい。
【0044】
重量平均分子量が上記範囲未満であると、基材との接着性が低下したり、得られる塗膜が硬くてもろくなったりする傾向があり、一方、重量平均分子量が上記範囲を超えると、樹脂の水性化が困難になる傾向がある。
【0045】
(不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂)
不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂とは、不飽和カルボン酸またはその誘導体とα-オレフィンとの共重合体や、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸またはその誘導体を反応させて得られる樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂の主鎖または側鎖に不飽和カルボン酸が組み込まれ、ポリオレフィン系樹脂と不飽和カルボン酸との間に化学的結合が形成されてなる形態を有した樹脂である。
【0046】
共重合の形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。また、2元共重合であっても、3元以上の共重合であってもよい。
【0047】
不飽和カルボン酸とは、1分子中に1個または2個以上の不飽和結合と、1個または2個以上のカルボキシル基とを有する化合物である。
【0048】
不飽和カルボン酸の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸およびフマル酸等の不飽和ジカルボン酸;ならびにそれらの誘導体が挙げられる。
【0049】
不飽和カルボン酸の誘導体としては、上記した酸の塩化物、アミド、エステルおよび無水物が挙げられ、不飽和ジカルボン酸の場合には、ハーフエステル、ハーフアミド等のハーフ誘導体も挙げられる。
【0050】
上記酸のエステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ジメチルアミノエチルエステル等が挙げられる。
【0051】
前記不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂は、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物由来の構造を、全不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂中に、0.01質量%以上、5質量%以下の割合で含むものであることが好ましい。上記範囲よりも少ないと、樹脂の水性化(液状化)が困難になり易く、良好な水性分散体を得ることが困難になり易い。上記範囲よりも多いと、水性分散液の安定性が低下して、水性分散液中における不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂の数平均粒子径を上記範囲に調整することが困難になり易く、接着性を低下させる虞がある。
【0052】
(不揮発性水性化助剤)
本発明において、不揮発性水性化助剤は、水性分散体の製造において、水性化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される、不揮発性の薬剤や化合物である。
【0053】
ここで、不揮発性とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは、常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。
【0054】
不揮発性水性化助剤としては、例えば、乳化剤、界面活性剤等の保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子などが挙げられる。
【0055】
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0056】
界面活性剤等の保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン-プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常は5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸-無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられる。
【0057】
[シーラント層(G)]
シーラント層(G)は、エージングレスシーラントフィルムおよび該エージングレスシーラントフィルムを用いた積層体にヒートシール性と耐屈曲性、耐衝撃性等の機能を付与する層である。
【0058】
シーラント層(G)は、1層であっても、2層以上から構成されていてもよい。2層以上の場合には、同組成の層であっても、異なる組成の層であってもよい。
【0059】
但し、シーラント層(G)は、エージングレスシーラントフィルムおよび該エージングレスシーラントフィルムを用いた積層体の片面の最表面層であり、最表面を構成する層は、ヒートシール性に優れた樹脂を含むことが好ましい。
【0060】
具体的な樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることができ、例えば、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸その他等の不飽和カルボン酸で変性したポリオレフィン系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸の三元共重合体樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)などが挙げられる。
【0061】
シーラント層(G)には、上記の樹脂の1種または2種以上を用いた樹脂フィルムまたはシート、更には、押出または共押出物、樹脂塗布膜等を用いることができる。
【0062】
上記の樹脂には、必要に応じて、公知の耐屈曲性改良剤、無機又は有機添加剤等を配合することができる。
【0063】
上記の樹脂層を形成するフィルムないしシートとしては、未延伸フィルムないしシート、あるいは1軸方向または2軸方向に延伸した延伸フィルムないしシート等のいずれのものでも使用することができる。
【0064】
上記の中でも、シーラント層(G)は、ヒートシール性の観点から、ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましく、特に、低密度ポリエチレン(LDPE)または直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含むことが好ましく、特に、LLDPEを含むことが好ましい。
【0065】
フィルム化またはシート化されたシーラント層(G)を作製する方法としては、上記のシーラント層(G)用の樹脂を含む単層の樹脂フィルムまたはシートをそのまま用いてもよく、樹脂フィルムないしシート上に、上記のシーラント層(G)用の樹脂を押出または共押出してもよく、樹脂フィルムまたはシートと上記のシーラント層(G)用の樹脂を含む樹脂フィルムまたはシートとを接着剤によって貼り合わせてもよい。
【0066】
シーラント層(G)の厚さは、5~500μmが好ましく、10~250μmがより好ましく、15~100μmが更に好ましい。上記範囲よりも薄いと、十分なヒートシール強度を得難くなり易く、上記範囲よりも厚いと、コスト上昇を招くと共にフィルムが硬くなり作業性が悪化し易い傾向になる。
【0067】
<シーラントフィルム巻取体>
本発明のシーラントフィルム巻取体は、本発明のエージングレスシーラントフィルムをロール巻きしたものである。巻きm数については、フィルムの厚みにもよるが500mから4000m巻が好ましく、1000m~2000m巻がより好ましい。
【0068】
<エージングレス積層体>
本発明のエージングレス積層体は、
少なくとも、基材層(A)と、エージングレスシーラントフィルムのコート層(E)面とが、貼り合わせられた構成を有する。
【0069】
そして、さらには、必要に応じて、ドライラミネーション接着剤層(C)と、金属元素含有バリア層(D)と、ポリオレフィン系接着剤層(F)とを含むこともでき、また更には、補強層(B)を含むこともできる。
【0070】
本発明の高落袋強度積層体は、必要に応じて、上記以外にも、上記と同種または異種の層を、含むことも出来る。
【0071】
そして、本発明のエージングレス積層体は、積層終了後に、エージング処理が施すことなく、用いることが出来る。
【0072】
本発明の積層体が含む各層、各層の積層順等について、以下に説明する。
【0073】
[基材層(A)]
基材層(A)には、一般的に包袋用包装材料に用いられる樹脂フィルムまたはシートや、合成紙や、紙基材等のフィルムまたはシートを用いることが出来、引張強度、屈曲強度、衝撃強度などの機械的強度に優れると共に、印刷適性に優れるものが好ましい。
【0074】
基材層(A)をエージングレスシーラントフィルムのコート層(E)に直接貼り合わせる場合においては、有孔基材フィルムまたはシート、耐溶剤性に劣るフィルムまたはシート、インクジェット印刷等の耐溶剤性に劣る絵柄を有するフィルムまたはシートを用いることも可能である。
【0075】
基材層(A)は、1層であっても、2層以上から構成されていてもよい。2層以上の場合には、同組成の層であっても、異なる組成の層であってもよい。
【0076】
また、一軸または二軸延伸された樹脂フィルムまたはシートであることが好ましい。
【0077】
具体的な樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、MXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)等のポリアミド系樹脂;セロファン;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリウレタン系樹脂;アセタール系樹脂;EVOH等が挙げられる。
【0078】
包装する内容物の種類や充填後の加熱処理の有無等の使用条件に応じて、適するものを自由に選択して使用することが出来るが、上記の中でも、ポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂が好ましい。
【0079】
特に、一軸または二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはシートや、二軸延伸ポリプロピレンフィルムまたはシート等が好適である。
【0080】
基材層(A)に用いる樹脂フィルム又はシートは、必要に応じて、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料等のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、他の性能に悪影響を与えない範囲で目的に応じて、任意に添加することができる。
【0081】
具体的な紙基材としては、例えば、強サイズ性の晒または未晒の紙基材、あるいは純白ロ-ル紙、クラフト紙、板紙、コート紙、キャストコート紙、加工紙、上質紙、等を使用することができる。
【0082】
基材層(A)に用いられる樹脂フィルムまたはシートは、金属または金属酸化物が蒸着されていてもよい。
【0083】
また、基材層(A)及び基材層(A)を構成するフィルム又はシートは、密着性を向上させるために、積層前に、予め、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的な処理や、化学薬品を用いた酸化処理などの化学的な処理を施しておいてもよい。
【0084】
基材層(A)の厚さは、10μm以上、50μm以下が好ましく、15μm以上、40μm以下がより好ましい。
【0085】
上記範囲よりも薄いと、積層体の剛性が低すぎる為に高落袋強度を発揮し難い傾向になり、上記範囲よりも厚いと、積層体の剛性が高くなりすぎて、積層体の加工が困難になり易く、内容物充填性も悪化し易い。
【0086】
[補強層(B)]
補強層(B)は、必要に応じて積層体に含まれる層であり、引張り強度、屈曲強度、衝撃強度、突き刺し強度、破断強度、靭性、剛性等の補強を担う層である。補強層(B)を含むことによって、基材層(A)やシーラント層(G)等の他層の構成の選択肢を広げることが出来る。
【0087】
補強層(B)には、基材層(A)と同様な、公知又は市販の樹脂の一軸または二軸延伸フィルムまたはシートを用いることが出来、包装する内容物の種類や使用条件に応じて、適するものを自由に選択して使用することが出来る。
【0088】
上記の中でも、ポリブチレンテレフタレートや、ポリアミド系樹脂特にナイロン系樹脂の、一軸または二軸延伸フィルムまたはシートが好適である。
【0089】
補強層(B)は、1層であっても、2層以上から構成されていてもよい。2層以上の場合には、同組成の層であっても、異なる組成の層であってもよい。
【0090】
更に、基材層(A)と同様に、金属または金属酸化物が蒸着されていてもよく、密着性を向上させる為の前処理がされていてもよい。
【0091】
[ドライラミネーション接着剤層(C)]
ドライラミネーション接着剤層(C)は、積層体中の層間接着性を付与する層である。
【0092】
ドライラミネーション接着剤層(C)は、公知又は市販のドライラミネーション(DL)接着剤を用いて形成することが出来る。
【0093】
ドライラミネーション接着剤の具体例としては、二液硬化型ポリウレタン系接着剤、二液硬化型ポリエステル系接着剤、ポリオレフィン系(低密度ポリエチレン、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン、アイオノマー等)の熱接着性樹脂等が挙げられる。
【0094】
ドライラミネーション接着剤層(C)は、ドライラミネーションによって形成されていることで、ドライラミネーション接着剤層(C)中のピンホールボイド発生による接着性の低下を防止出来る。また、積層体製造時の有機溶剤の排出量を低減することができ、環境に対する悪影響を少なくすることができる。
【0095】
ドライラミネーション接着剤層(C)は、1層であっても、2層以上から構成されていてもよい。2層以上の場合には、同組成の層であっても、異なる組成の層であってもよい。
【0096】
また、積層体中の2箇所以上に、同組成または異なる組成のドライラミネーション接着剤層(C)が積層されていてもよい。
【0097】
[金属元素含有バリア層(D)]
金属元素含有バリア層(D)は、バリア性を有する層であり、金属箔、または金属元素を含有する無機物または無機酸化物からなる蒸着膜を用いることが出来、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着膜、酸化アルミニウム蒸着膜、酸化珪素蒸着膜、なる群から選ばれる1種または2種以上が好ましく、特にアルミニウム箔またはアルミニウム蒸着膜が好ましい。
【0098】
また、金属元素含有バリア層(D)は1層または2層以上で構成されていてもよい。2層以上で構成される場合は、それぞれの層は同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよく、隣接して積層されていなくてもよい。
【0099】
ここで、バリア性は、内容物の外部への透過遮断性、ガスバリア性、遮光性等を指すものであり、必要に応じて選ばれるものである。
【0100】
内容物の外部への透過遮断性によって、内容物の保存性を高めることができる。
【0101】
ガスバリア性は、具体的には、酸素バリア性、水蒸気バリア性等が挙げられ、酸素や水蒸気が外部から包装袋に浸入して内容物を劣化させたり、包装袋内部の水分が包装袋外部へと散逸したりすることを防止出来、内容物の保存性を高めることができる。
【0102】
遮光性は、具体的には、可視光遮光性、紫外線遮光性等が挙げられ、光による内容物の劣化を防止出来、内容物の保存性を高めることができる。
【0103】
金属元素含有バリア層(D)の厚さは、15nm~20μmが好ましい。金属箔の場合は、5μm~20μmが好ましく、1nm~20μmがより好ましい。蒸着膜の場合は、15~200nmが好ましく、より好ましい厚みは蒸着種によって異なるが、アルミニウム蒸着膜の場合には、1~100nmがより好ましく、15~60nmがより好ましく、10~40nmが特に好ましい。酸化珪素蒸着膜または酸化アルミニウム蒸着膜の場合には、1~100nmがより好ましく、10~50nmが更に好ましく、20~30nmが特に好ましい。
【0104】
金属元素含有バリア層(D)が金属箔である場合には、金属元素含有バリア層(D)は、ドライラミネーション接着剤層(C)やコート層(E)を介して他層に接着することが出来る。
【0105】
金属元素含有バリア層(D)が蒸着膜である場合には、金属元素含有バリア層(D)は、従来公知の無機物または無機酸化物を用いて、従来公知の方法により形成することができ、その組成および形成方法は特に限定されない。
【0106】
形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレーティング法等の物理気相成長法(PhysicalVaporDeposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(ChemicalVaporDeposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0107】
蒸着膜を形成する際に、蒸着対象表面には必要に応じて前処理が可能であり、具体的には、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的な処理や、化学薬品などを用いて処理する酸化処理などの化学的な処理を施してもよい。
【0108】
金属元素含有バリア層(D)は、蒸着膜である場合には、基材層(A)や補強層(B)を構成するフィルムまたはシート上に形成されていてもよく、または、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体からなるフィルムまたはシート上に形成されていてもよい。
【0109】
[エージングレス積層体の作製方法]
本発明のエージングレスシーラントフィルムは、シーラント層(G)としてのフィルムの上に、コート層(E)を形成するためのコート剤を塗布して、乾燥して得ることができる。
【0110】
そして、エージングレス積層体は、上記で得たエージングレスシーラントフィルムのコート層(E)面に、基材層(A)としてのフィルムを重ねて、100~200℃に加熱されたニップロール等の加熱プレス装置で熱圧して、必要に応じて冷却し、得ることができる。
【0111】
<エージング処理>
本発明のエージングレスシーラントフィルムとエージングレス積層体は、ポリオレフィン系樹脂が分散した水性分散液を、塗布および乾燥した後はエージング処理を必要としない。
【0112】
エージングレスシーラントフィルムは、エージング処理を施さなくとも、優れた耐ブロッキング性を示し、シーラントフィルム巻取体の保管性にも優れ、シーラントフィルム巻取体からエージングレスシーラントフィルムを取り出してエージングレス積層体を積層する際にもブロッキングが発生し難く、生産性に優れる。
【0113】
エージングレス積層体は、エージングレスシーラントフィルムを貼り合わせて積層体を作製した後において、エージング処理を施さなくとも、該貼り合わせの界面と各層界面のラミネート強度は充分に高く、これを用いて作製された包装袋は、内容物が高重量であっても、優れた落袋強度(耐落下衝撃性)と手切り開封性を示す。
【0114】
また、エージング工程を省くことで、エージングレスシーラントフィルムとエージングレス積層体の生産性が向上し、リードタイムを短縮することができる。
【0115】
<包装材料>
本発明の包装材料は、上記のエージングレス積層体からなるものである。
【0116】
<耐溶剤性包装体>
本発明の耐溶剤性包装体は、上記の包装材料から作製され、例えば、袋状にヒートシールして製造することができる。
【0117】
本発明に係る包装袋の態様は、特に限定はされず、例えば、包装材料を折り畳んだり、二枚重ねたりして、三方シール形式や四方シール形式の袋、或いは、ピロー形式の袋などの平袋のほか、スタンディングパウチなどの自立袋、ガゼット袋、或いは、これらの応用形態などいずれの態様の包装袋でもよい。
【実施例
【0118】
実施例に用いた原材料は下記の通りである。
PETフィルム1:東洋紡(株)社製二軸延伸PETフィルム、T-4102。片面コロナ処理。12μm厚。
PETフィルム2:PETフィルム1のコロナ処理面にインクジェット印刷による絵柄層を形成したフィルム。
PETフィルム3:東レフィルム加工(株)社製二軸延伸PETフィルム、1310。片面アルミニウム蒸着。12μm厚。
PETフィルム4:PETフィルム1に、微小貫通孔によるスリット加工を施して作製した。
ナイロンフィルム1:東洋紡(株)社製二軸延伸ナイロンフィルム、ハーデンフィルムN7476。15μm厚。片面アルミニウム蒸着。
ナイロンフィルム2:東洋紡(株)社製二軸延伸ナイロンフィルム、ハーデンフィルムN1200。両面コロナ処理。厚さ15μm。
LLDPEフィルム1:三井化学東セロ(株)社製T.U.X-HC。100μm厚。
アルミニウム箔1:東洋アルミニウム(株)社製1N30。7μm厚。
DL接着剤1:東洋モートン社製2液硬化型ポリウレタン系接着剤、TM-570/CAT-RT37=重量比18/1。
コート剤1:ユニチカ(株)社製アローベース。不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂の水性分散液。
コート剤2:三井化学(株)社製A-3210/A-3075。ウレタン系。
【0119】
[実施例1]
シーラント層(G)としてのLLDPEフィルム1の上に、コート層(E)としてのコート剤1を、乾燥後の重量が3g/mになる分量を塗布して、乾燥し、エージングレスシーラントフィルムを得た。得られたエージングレスシーラントフィルムを用いて1000mの巻取体を作製し、耐ブロッキング性を評価した。
【0120】
そして、上記で得た巻取体からエージングレスシーラントフィルムを巻き出して、コート層(E)面に、基材層(A)としてPETフィルム1のコロナ処理面を対向して重ねて、140℃に加熱されたニップロールで熱圧して、冷却し、エージングレス積層体を得た。
【0121】
得られたエージングレス積層体を二枚重ねて三辺をヒートシールして、ラミネート強度測定用の耐溶剤性包装袋を2個作製した。
【0122】
ひとつの耐溶剤性包装袋を用いて、ヒートシール部のラミネート強度を測定した。エージングレス積層体作製からラミネート強度測定までは、1時間以内に実施した。
【0123】
ひとつの耐溶剤性包装袋には、エタノール/水=80/20体積比の混合液を充填して、残る一辺をヒートシールして耐溶剤性包装袋充填物を作製して、40℃で2週間保存した後に、ヒートシール部のラミネート強度を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0124】
[実施例2]
実施例1と同様に操作して、エージングレスシーラントフィルムを得て、実施例1と同様に巻取体を作製して、耐ブロッキング性を評価した。
【0125】
基材層(A)としてPETフィルム1のコロナ処理面に、DL接着剤1を塗布し、乾燥して、ドライラミネーション接着剤層(C)を形成し、該ドライラミネーション接着剤層(C)を介して、ドライラミネーションによって、アルミニウム箔1を積層して、40℃で3日間エージングし、積層体前駆体を得た。
【0126】
そして、上記で得た巻取体からエージングレスシーラントフィルムを巻き出して、コート層(E)面に、該積層体前駆体のアルミニウム箔1面を対向して重ねて、140℃に加熱されたニップロールで熱圧して、冷却し、エージングレス積層体を得た。
【0127】
そして、実施例1と同様に操作して、同様に評価した。
【0128】
[実施例3]
基材層(A)用PETフィルム1をPETフィルム2に変えて、エージングレスシーラントフィルムのコート層(E)面に、PETフィルム2の絵柄層面を対向して重ねた以外は実施例1と同様に操作して、同様に評価した。
【0129】
[実施例4]
基材層(A)用PETフィルム1をPETフィルム3に変えて、エージングレスシーラントフィルムのコート層(E)面に、PETフィルム3のアルミニウム蒸着面を対向して重ねた以外は実施例1と同様に操作して。同様に評価した。
【0130】
[実施例5]
基材層(A)用PETフィルム1をナイロンフィルム1に変えて、エージングレスシーラントフィルムのコート層(E)面に、ナイロンフィルム1のアルミニウム蒸着面を対向して重ねた以外は実施例1と同様に操作して、同様に評価した。
【0131】
[実施例6]
補強層(B)としてのナイロンフィルム2の片面に、DL接着剤1を塗布、乾燥して、ドライラミネーション接着剤層(C)を形成し、該ドライラミネーション接着剤層(C)を介して、シーラント層(G)としてのLLDPEフィルム1を、ドライラミネーションにより、貼り合わせた。
【0132】
そして、上記ナイロンフィルム2の反対側の片面に、コート層(E)としてのコート剤1を、乾燥後の重量が3g/mになる分量を塗布して、乾燥して、エージングレスシーラントフィルムを得た。得られたエージングレスシーラントフィルムは1000mで巻き取り、ブロッキングなどしないことを確認した。
【0133】
次に、基材層(A)としてのPETフィルム1のコロナ処理面に、DL接着剤1を塗布し、乾燥して、ドライラミネーション接着剤層(C)を形成して、該ドライラミネーション接着剤層(C)を介して、金属元素含有バリア層(D)としてのアルミニウム箔1とをドライラミネートして、積層体前駆体を得た。
【0134】
次に、上記で得たエージングレスシーラントフィルムのコート層(E)面に、上記で得た積層体前駆体の金属元素含有バリア層(D)面を対向させて重ねて、140℃に加熱されたニップロールで熱圧して、冷却し、エージングレス積層体を得た。
【0135】
そして、実施例1と同様に操作して、同様に評価した。
【0136】
[実施例7]
基材層(A)としてのPETフィルム4を用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して、同様に評価した。
【0137】
[比較例1]
基材層(A)としてのPETフィルム2を用いて、コート層(E)用のコート剤1をコート剤2に変えてPETフィルム2の絵柄層面に塗布、乾燥して、エージングレスシーラントフィルムのコート層(E)面に、基材層(A)としてPETフィルム2の絵柄層を対向して重ねた以外は実施例1と同様に操作して、同様に評価した。前記コート品を1000mで巻き取ったところ、コート面と巻き取り裏面で接着してブロッキングを発生してしまい、巻き取って使用することができなかった為、巻き取らずに他基材との貼り合わせを実施した。
【0138】
[比較例2]
基材層(A)としてPETフィルム4のコロナ処理面に、コート層(E)としてのコート剤1を、乾燥後の重量が3g/mになる分量を塗布して、乾燥した。
【0139】
次いで、上記のコート層(E)に、シーラント層(G)としてのLLDPEフィルム1を対向して重ねて、140℃に加熱されたニップロールで熱圧して、冷却し、エージングレス積層体を得た。
【0140】
そして、実施例1と同様に操作して、同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
【0141】
<評価方法>
[耐ブロッキング性]
エージングレスシーラントフィルム1000mを一旦巻き取って巻取体を作製し、次いで巻取体からエージングレスシーラントフィルムを巻き出して、ブロッキングの有無を目視確認した。
【0142】
[絵柄層維持性]
絵柄層を有する積層体に含まれる絵柄層を、透明な基材層を通して目視観察し、絵柄が崩れずに維持できているか否かを確認した。
【0143】
[ラミネート強度]
包装袋の非ヒートシール部から幅15mmの短冊状の試験片を切り出し、試験片の末端短辺部の略10mmを、シーラント層(G)と隣接層とを剥離させ、テンシロン引張試験機((株)オリエンテック製RTC-1310A)を用いて、25℃雰囲気下、T字剥離方式(引張速度50mm/分)により剥離した際の最大荷重を測定し、ラミネート強度(N/15mm幅)とした。
【0144】
[評価結果まとめ]
本発明の実施例1~6のエージングレスシーラントフィルムを用いたエージングレス積層体は、ヒートシール直後及びエタノール/水混合液充填保管後も、強いラミネート強度を示した。
【0145】
しかしながら、本発明におけるコート層(E)を含まない比較例1は、絵柄層が崩れてしまい、更に、エタノール/水混合液充填保管後に劣ったラミネート強度を示した。
【0146】
また、コート層(E)がシーラントフィルムではなく基材層にのみ形成され、本発明のシーラントフィルムを用いずに作製された積層体を用いた比較例2は、基材層の微小貫通孔からコート剤が漏洩してしまった。
【0147】
【表1】
【符号の説明】
【0148】
1 エージングレスシーラントフィルム
2 コート層(E)
3 シーラント層(G)
4 高落袋強度積層体
5 基材層(A)
6 ドライラミネーション接着剤層(C)
7 補強層(B)
8 金属元素含有バリア層(D)
9 ポリオレフィン系接着剤層(F)
10 ガゼット袋
11、11′ 壁面フィルム
12 底面フィルム折り返し部
13a 、13b 底面フィルム切り欠き部
14 ガセット部
15 底部シール部
16a 、16b 側部シール部
17 注出口部シール部
18 上部シール部
19a 、19b 切り欠き部
20 注出口部
21 ハーフカット線
22 ノッチ
図1
図2
図3
図4
図5