(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】車両用変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 3/093 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
F16H3/093
(21)【出願番号】P 2018129036
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 将英
(72)【発明者】
【氏名】北岡 圭史
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-164192(JP,A)
【文献】特開昭55-54750(JP,A)
【文献】特開2008-69832(JP,A)
【文献】特開平7-269659(JP,A)
【文献】特開2003-269606(JP,A)
【文献】米国特許第04458551(US,A)
【文献】特開2008-213639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの動力が入力される第1入力軸
と、
前記第1入力軸からの動力が入力される第2入力軸と、
前記第1入力軸
または前記第2入力軸から動力が伝達されるカウンタ軸と、
アイドラ軸およびリバースアイドラ軸と、
リバースギヤを有するリバース軸と、
ディファレンシャルギヤを有するディファレンシャル装置と、
第1シフトフォーク、第2シフトフォークおよび第3シフトフォークと、を変速機ケース内に備え、車両に横置きに搭載された車両用変速機であって、
前記第1入力軸は、中速駆動ギヤと、第1出力ギヤとを有し、
前記第2入力軸は、低速駆動ギヤと、高速駆動ギヤと、第1入力ギヤとを有し、前記第1入力軸より下方かつ前方に配置され、
前記カウンタ軸は、前記低速駆動ギヤおよび前記中速駆動ギヤと噛み合う低中速従動ギヤと、前記高速駆動ギヤと噛み合う高速従動ギヤと、前記ディファレンシャルギヤと噛み合う第2出力ギヤと、を有し、前記
第1入力軸より下方かつ後方であって前記第2入力軸より上方かつ後方に配置され、
前記アイドラ軸は、前記第1出力ギヤと噛み合う第1アイドラギヤと、前記第1入力ギヤと噛み合う第2アイドラギヤと、を有し、前記第1入力軸より下方かつ前方であって、第1入力軸と第2入力軸との間に配置され、
前記リバースアイドラ軸は、前記第1出力ギヤと噛み合う第1リバースアイドラギヤと、前記リバースギヤと噛み合う第2リバースアイドラギヤと、を有し、前記第1入力軸より上方かつ後方であって、前記第1入力軸と前記リバース軸との間に配置され、
前記リバース軸は、前記ディファレンシャルギヤと噛み合う第3出力ギヤを更に有し、前記
第1入力軸より上方かつ後方に配置され、
前記第1シフトフォークは、前記低速駆動ギヤの同期機構を操作し、前記第1入力軸と前記アイドラ軸の間を通るように配置され、
前記第2シフトフォークは、前記中速駆動ギヤの同期機構を操作し、
前記第3シフトフォークは、前記高速駆動ギヤの同期機構を操作することを特徴とする車両用変速機。
【請求項2】
前記リバースギヤの同期機構を操作する第4シフトフォークを備え、前記第4シフトフォークは、前記第1入力軸と前記リバースアイドラ軸との間を通ることを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
【請求項3】
前記リバースギヤの同期機構を操作する第4シフトフォークを備え、
前記アイドラ軸および前記リバースアイドラ軸は、それぞれ軸方向の両端部にギヤを有し、
前記第1シフトフォークは、前記アイドラ軸の近傍であって前記アイドラ軸のギヤの配置されていない部分を通るように配置され、
前記第4シフトフォークは、前記リバースアイドラ軸の近傍であって前記リバースアイドラ軸のギヤの配置されていない部分を通るように配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用変速機。
【請求項4】
前記アイドラ軸および前記リバースアイドラ軸は、それぞれ軸方向の両端部にギヤを有し、
前記第3シフトフォークは、前記アイドラ軸または前記リバースアイドラ軸に対して前記第1入力軸と反対側を通るように配置され、かつ、前記アイドラ軸の前記両端部のギヤの間を通るように配置されることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の変速機の変速装置としては、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された変速装置は、変速機の多段化にあたって、第一シンクロ装置、第二シンクロ装置、第三シンクロ装置、第四シンクロ装置を各々操作する複数のシフトフォークと、これらの複数のシフトフォークをシフトフィンガーを介して制御するコントロールロッドとを備え、第二シンクロ装置を操作するシフトフォークと第三シンクロ装置を操作するシフトフォークとを、コントロールロッドに設けた第一シフトフィンガーで制御して、第一シンクロ装置を操作するシフトフォークと第四シンクロ装置を操作するシフトフォークとを、コントロールロッドの第一シフトフィンガーの反対側に設けた第二シフトフィンガーで制御するようになっている。
【0003】
特許文献1に記載のものは、第二シンクロ装置と第三シンクロ装置を第一シフトフィンガーで制御して、第一シンクロ装置と第四シンクロ装置を第二シフトフィンガーで制御することになる。このため、単にコントロールロッド上の設置位置を変更した第一シフトフィンガーと第二シフトフィンガーとで制御するだけで、各シンクロ装置の切換え方向を反転できるため、変速操作機構をより簡略化して構成することができる。よって、シンクロ装置の切換え方向が反転する変速機であっても、変速操作機構をシンプルに構成できるため、変速操作機構をコンパクトに構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、変速機を多段化すると、シフトフォークの数が増加するため、シフトフォークの配置等によっては、変速機が大型化するおそれがある。また、変速機を多段化する際にシフトフォークが長くなると、シフトフォークが剛性の低下により変形するおそれがある。しかしながら、特許文献1に記載のものは、変速機を多段化に伴うこれらの問題について考慮されていない。
【0006】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、変速機を小型化でき、シフトフォークの変形を防止できる車両用変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、駆動源からの動力が入力される第1入力軸と、前記第1入力軸からの動力が入力される第2入力軸と、前記第1入力軸または前記第2入力軸から動力が伝達されるカウンタ軸と、アイドラ軸およびリバースアイドラ軸と、リバースギヤを有するリバース軸と、ディファレンシャルギヤを有するディファレンシャル装置と、第1シフトフォーク、第2シフトフォークおよび第3シフトフォークと、を変速機ケース内に備え、車両に横置きに搭載された車両用変速機であって、前記第1入力軸は、中速駆動ギヤと、第1出力ギヤとを有し、前記第2入力軸は、低速駆動ギヤと、高速駆動ギヤと、第1入力ギヤとを有し、前記第1入力軸より下方かつ前方に配置され、前記カウンタ軸は、前記低速駆動ギヤおよび前記中速駆動ギヤと噛み合う低中速従動ギヤと、前記高速駆動ギヤと噛み合う高速従動ギヤと、前記ディファレンシャルギヤと噛み合う第2出力ギヤと、を有し、前記第1入力軸より下方かつ後方であって前記第2入力軸より上方かつ後方に配置され、前記アイドラ軸は、前記第1出力ギヤと噛み合う第1アイドラギヤと、前記第1入力ギヤと噛み合う第2アイドラギヤと、を有し、前記第1入力軸より下方かつ前方であって、第1入力軸と第2入力軸との間に配置され、前記リバースアイドラ軸は、前記第1出力ギヤと噛み合う第1リバースアイドラギヤと、前記リバースギヤと噛み合う第2リバースアイドラギヤと、を有し、前記第1入力軸より上方かつ後方であって、前記第1入力軸と前記リバース軸との間に配置され、前記リバース軸は、前記ディファレンシャルギヤと噛み合う第3出力ギヤを更に有し、前記第1入力軸より上方かつ後方に配置され、前記第1シフトフォークは、前記低速駆動ギヤの同期機構を操作し、前記第1入力軸と前記アイドラ軸の間を通るように配置され、前記第2シフトフォークは、前記中速駆動ギヤの同期機構を操作し、前記第3シフトフォークは、前記高速駆動ギヤの同期機構を操作することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、変速機を小型化でき、シフトフォークの変形を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の正面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のレフトケースを外した状態の正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のレフトケースを取り外した状態の車両用変速機の左側面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の各軸を通る断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の他の実施例に係る車両用変速機のレフトケースを外した状態の正面図である。
【
図8】
図8は、本発明の他の実施例に係る車両用変速機のレフトケースを取り外した状態の車両用変速機の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、駆動源からの動力が入力される第1入力軸および第2入力軸と、第1入力軸および第2入力軸から動力が伝達されるカウンタ軸と、アイドラ軸およびリバースアイドラ軸と、リバースギヤを有するリバース軸と、ディファレンシャルギヤを有するディファレンシャル装置と、第1シフトフォーク、第2シフトフォークおよび第3シフトフォークと、を変速機ケース内に備え、車両に横置きに搭載された車両用変速機であって、第1入力軸は、中速駆動ギヤと、第1出力ギヤとを有し、第2入力軸は、低速駆動ギヤと、高速駆動ギヤと、第1入力ギヤとを有し、第1入力軸より下方かつ前方に配置され、カウンタ軸は、低速駆動ギヤおよび中速駆動ギヤと噛み合う低中速従動ギヤと、高速駆動ギヤと噛み合う高速従動ギヤと、ディファレンシャルギヤと噛み合う第2出力ギヤと、を有し、入力軸より下方かつ後方であって第2入力軸より上方かつ後方に配置され、アイドラ軸は、第1出力ギヤと噛み合う第1アイドラギヤと、第1入力ギヤと噛み合う第2アイドラギヤと、を有し、第1入力軸より下方かつ前方であって、第1入力軸と第2入力軸との間に配置され、リバースアイドラ軸は、第1出力ギヤと噛み合う第1リバースアイドラギヤと、リバースギヤと噛み合う第2リバースアイドラギヤと、を有し、第1入力軸より上方かつ後方であって、第1入力軸とリバース軸との間に配置され、リバース軸は、ディファレンシャルギヤと噛み合う第3出力ギヤを更に有し、入力軸より上方かつ後方に配置され、第1シフトフォークは、低速駆動ギヤの同期機構を操作し、第1入力軸とアイドラ軸の間を通るように配置され、第2シフトフォークは、中速駆動ギヤの同期機構を操作し、第3シフトフォークは、高速駆動ギヤの同期機構を操作することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、変速機を小型化でき、シフトフォークの変形を防止できる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の一実施例に係る車両用変速機について、図面を用いて説明する。
【0012】
図1から
図8は、本発明の一実施例に係る車両用変速機を示す図である。
図1から
図8において、上下前後左右方向は、車両の上下前後左右方向を基準として車両に配置された状態の車両用変速機の上下前後左右方向とし、前後方向に対して直交する方向が左右方向、車両用変速機の高さ方向が上下方向である。
【0013】
まず、構成を説明する。
図1において、自動車等の車両に搭載される車両用変速機(以下、単に自動変速機という)1は、例えば、AMT(Automated Manual Transmission)から構成される。
【0014】
自動変速機1は、変速機ケース2を備えている。変速機ケース2は、レフトケース3およびライトケース4を有し、ライトケース4の右端部には駆動源としてのエンジン5が連結されている。ライトケース4には流体継手からなるトルクコンバータ6が収容されている。
【0015】
図3、
図4、
図5において、レフトケース3には変速歯車機構7が収容されている。変速歯車機構7は、車両の幅方向に延びる第1入力軸8と、それぞれ第1入力軸8と平行に配置されるアイドラ軸9、リバースアイドラ軸10、第2入力軸11、カウンタ軸12およびリバース軸13とを備えている。なお、
図3、
図4、
図5は、レフトケース3を取り外した状態を示しているが、変速歯車機構7は、レフトケース3の内方に位置している。
【0016】
レフトケース3にはディファレンシャル装置14が設けられている。ディファレンシャル装置14は、デフケース14Aと、デフケース14Aの外周部に取付けられたディファレンシャルギヤ14Bとを有する。デフケース14Aには左右のドライブシャフト82L、82R(
図6参照)の一端部が連結されており、ドライブシャフトの他端部側には左右の駆動輪83L、83R(
図6参照)が連結されている。
【0017】
エンジン5は、クランク軸が車両の幅方向に延びるように、いわゆる横置きレイアウトのエンジンから構成されており、本実施例の車両は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両である。自動変速機1も同様に、その内部の回転軸が車両の幅方向に延びるように横置きに配置されている。
【0018】
第1入力軸8は、トルクコンバータ6に連結されており、トルクコンバータ6は、エンジンの動力を第1入力軸8に伝達する。第1入力軸8には、一対の中速駆動ギヤ151、152、および第1出力ギヤ153が設けられている。
【0019】
アイドラ軸9には、第1出力ギヤ153と噛合う第1アイドラギヤ161が軸方向の一端部、および第2アイドラギヤ162が軸方向の他端部に設けられている。
【0020】
リバースアイドラ軸10には、第1出力ギヤ153と噛合う第1リバースアイドラギヤ184が軸方向の一端部、および第2リバースアイドラギヤ185が軸方向の他端部に設けられている。
【0021】
第2入力軸11には、第2アイドラギヤ162と噛合う第1入力ギヤ167、一対の低速駆動ギヤ165、166、および一対の高速駆動ギヤ163、164が設けられている。
【0022】
カウンタ軸12には、一対の低速駆動ギヤ165、166および一対の中速駆動ギヤ151、152の両方と噛合う一対の低中速従動ギヤ172、173、一対の高速駆動ギヤ163、164と噛合う一対の高速従動ギヤ170、171、および第2出力ギヤ174が設けられている。
【0023】
リバース軸13には、第2リバースアイドラギヤ185と噛合う後進ギヤ26、および第3出力ギヤ187が設けられている。
【0024】
車両の前進時においては、変速歯車機構7は、第1入力軸8の動力が第1出力ギヤ153から第1アイドラギヤ161を介してアイドラ軸9に伝達された後、第2アイドラギヤ162から第1入力ギヤ167を介して第2入力軸11に伝達される。その後、第2入力軸11から一対の低速駆動ギヤ165、166から一対の低中速従動ギヤ172、または一対の高速駆動ギヤ163、164から一対の高速従動ギヤ170、171のいずれかのギヤ段を介してカウンタ軸12に伝達される第1の動力伝達経路を有する。第1の動力伝達経路において低速段または高速段が成立可能となる。
【0025】
車両の前進時においては、変速歯車機構7は、第1入力軸8の動力が一対の中速駆動ギヤ151、152から一対の低中速従動ギヤ172のいずれかのギヤ段を介してカウンタ軸12に伝達される第2の動力伝達経路を有する。第2の動力伝達経路において中速段が成立可能となる。
【0026】
車両の後進時において、変速歯車機構7は、第1入力軸8の動力が第1出力ギヤ153から第1リバースアイドラギヤ184を介してリバースアイドラ軸10に伝達された後、第2リバースアイドラギヤ185から後進ギヤ26を介してリバース軸13に伝達される後進の動力伝達経路を有する。後進の動力伝達経路において後進段が成立可能となる。
【0027】
ディファレンシャル装置14には、第2出力ギヤ174および第3出力ギヤ187の両方と噛合うディファレンシャルギヤ14Bが設けられている。これにより、エンジン5の動力は、車両の前進時は第2出力ギヤ174から、車両の後進時は第3出力ギヤ187からディファレンシャルギヤ14Bを介してディファレンシャル装置14に伝達された後、左右の駆動輪に伝達される。
【0028】
図1において、レフトケース3の上部には変速装置31が設けられている。
図2において、レフトケース3の上部にはレフトケース3の前側から後側に向かって上方に傾斜する傾斜部3Aが設けられており、変速装置31は、傾斜部3Aに取付けられている。
【0029】
変速装置31は、プレート部材32と、シフトアンドセレクト軸33と、油圧発生装置34と、油圧回路35とを含んで構成されている。
【0030】
レフトケース3の傾斜部3Aには開口部3aが形成されており、プレート部材32は、開口部3aを覆うようにして傾斜部3Aに取付けられている。シフトアンドセレクト軸33は、プレート部材32の内部に設けられており、傾斜部3Aの傾斜方向と同方向に延びている。すなわち、シフトアンドセレクト軸33は、レフトケース3の前側から後側に向かって上方に傾斜している。
【0031】
プレート部材32にはプレート部材32の下側の側壁32Aから下方に延び筒状部32aと上側の側壁32Bから上方に延びる筒状部32bが設けられている。
【0032】
シフトアンドセレクト軸33の下部と上部は、それぞれ筒状部32a、32bに挿通されており、シフトアンドセレクト軸33は、セレクト操作に応じてプレート部材32に対して軸線方向に移動自在、かつ、変速操作に応じてプレート部材32に対して軸線周りに回転するように筒状部32a、32bに支持されている。
【0033】
図1において、油圧発生装置34は、リザーバタンク41、アキュムレータ42、オイルポンプ43、モータ44を備えており、リザーバタンク41、アキュムレータ42、オイルポンプ43、モータ44は、プレート部材32に一体に取付けられている。
【0034】
リザーバタンク41は、変速装置31を作動させるためのオイルを貯留している。リザーバタンク41に貯留されるオイルを、加圧してプレート部材32に一体に形成された図示しないオイル通路を通してアキュムレータ42に供給する。
【0035】
アキュムレータ42は、オイルの圧力を蓄え、図示しない油圧通路を通して、プレート部材32に形成されたセレクト油圧室35a(
図2参照)、図示しない第1のシフト油圧室および第2のシフト油圧室にオイルを供給する。
【0036】
図1において、油圧回路35は、図示しないセレクトソレノイド、第1のシフトソレノイドおよび第2のシフトソレノイドを有する。
【0037】
セレクトソレノイドは、セレクト油圧室35aにオイルを供給または供給を停止するスイッチ機能と、セレクト油圧室35aに供給される油圧の大きさを調整する機能を有する。
【0038】
第1のシフトソレノイドは、図示しない第1のシフト油圧室にオイルを供給または供給を停止するスイッチ機能と、第1のシフト油圧室に供給される油圧の大きさを調整する機能を有する。
【0039】
第2のシフトソレノイドは、図示しない第2のシフト油圧室にオイルを供給または供給を停止するスイッチ機能と、第2のシフト油圧室に供給される油圧の大きさを調整する機能を有する。
【0040】
図2において、シフトアンドセレクト軸33の外周部には図示しないピン部材によって筒状部材36が取付けられており、筒状部材36は、シフトアンドセレクト軸33と一体で移動する。
【0041】
シフトアンドセレクト軸33の上部と下部とは筒状部材36の上端と下端から下方および上方に突出しており、筒状部材36は、シフトアンドセレクト軸33の下部と上部を除いた中間部の外周部に取付けられている。
【0042】
筒状部材36にはフィンガー部36A、36B、シフトレバー36C、シフトガイド36D、ディテントカム36Eおよびマグネット36Fが一体に設けられている。
【0043】
フィンガー部36A、36B、シフトレバー36Cとは、筒状部材36の同一の側面、すなわち、レフトケース3の内方側の側面においてシフトアンドセレクト軸33の軸方向に並んで設置されている。
【0044】
ディテントカム36Eは、シフトアンドセレクト軸33を挟んでシフトレバー36Cと反対側で、かつ、シフトアンドセレクト軸33の軸方向においてシフトレバー36Cと同じ位置に設置されている。
【0045】
マグネット36Fおよびシフトガイド36Dは、シフトアンドセレクト軸33を挟んでフィンガー部36A、36Bと反対側に設置されている。
【0046】
油圧回路35は、セレクトピストン45を有し、セレクトピストン45は、セレクト油圧室35aに摺動自在に設けられている。筒状部材36の上端には凹形状のばね受け36aが形成されており、ばね受け36aと側壁32Bの間にはコイルスプリング47が介装されている。コイルスプリング47は、シフトアンドセレクト軸33を軸方向で下方に付勢する。
【0047】
セレクトピストン45の一端部は、シフトアンドセレクト軸33の下端に接触しており、セレクトソレノイドが、アキュムレータ42のオイルをセレクト油圧室35aに供給すると、セレクトピストン45の他端に油圧が作用する。これにより、セレクトピストン45がコイルスプリング47の付勢力に抗してシフトアンドセレクト軸33を上方に移動させる。
【0048】
セレクトソレノイドが、アキュムレータ42からセレクト油圧室35aにオイルを供給することを停止すると、シフトアンドセレクト軸33がコイルスプリング47に付勢されて下方に移動する。このようにしてシフトアンドセレクト軸33が軸線方向に移動する。
【0049】
油圧回路35は、図示しないシフトピストン46を有する。シフトレバー36Cは、シフトピストン46に嵌合している。シフトピストン46は、油圧回路35に摺動自在に設置されており、一端部が第1のシフト油圧室に挿入され、他端部が第2のシフト油圧室に挿入されている。
【0050】
第1のシフトソレノイドによってアキュムレータ42から第1のシフト油圧室にオイルが供給されると、シフトピストン46が第2のシフト油圧室側(右側)に移動する。これにより、シフトピストン46によってシフトレバー36Cが押圧され、シフトアンドセレクト軸33が一方に回転する。
【0051】
第1のシフトソレノイドによってアキュムレータ42から第1のシフト油圧室に供給されるオイルが停止され、第2のシフトソレノイドによって第2のシフト油圧室にオイルが供給されると、シフトピストン46が第1のシフト油圧室側(左側)に移動する。
【0052】
これにより、シフトピストン46によってシフトレバー36Cが押圧され、シフトアンドセレクト軸33が他方向に回転する。このようにシフトアンドセレクト軸33は、シフトピストン46によって軸線周りに回転する。本実施例のセレクトピストン45は、本発明のセレクト操作部材を構成し、シフトピストン46は、本発明のシフト操作部材を構成する。
【0053】
フィンガー部36Aは、シフトヨーク51Aおよびシフトヨーク51Bの図示しない二股形状の嵌合部に選択的に嵌合され、フィンガー部36Bは、シフトヨーク51Cおよびシフトヨーク51Dの図示しない二股形状の嵌合部に選択的に嵌合される。
【0054】
図3、
図4、
図5において、シフトヨーク51Aは、第1入力軸8と平行に延びるシフタ軸52Aに連結されており、シフタ軸52Aにはシフトフォーク53Aが連結されている。
【0055】
シフトフォーク53Aは、第2入力軸11に設けられた低速用の同期機構169に移動自在に嵌合されている。低速用の同期機構169は、シフトフォーク53Aによって移動されて一対の低速駆動ギヤ165、166のいずれか一方のギヤと第2入力軸11とを連結する。
【0056】
シフトヨーク51Bは、第1入力軸8と平行に延びるシフタ軸52Bに連結されている。シフタ軸52Bは、連結部52Cを介して第1入力軸8と平行に延びるシフタ軸52Dに連結されており、シフタ軸52Dにはシフトフォーク53Bが連結されている。
【0057】
シフトフォーク53Bは、第2入力軸11に設けられた高速用の同期機構168に移動自在に嵌合されている。高速用の同期機構168は、シフトフォーク53Bによって移動されて一対の高速駆動ギヤ163、164いずれか一方のギヤと第2入力軸11とを連結する。
【0058】
シフトフォーク53Cは、第1入力軸8に設けられた中速用の同期機構154に移動自在に嵌合されている。中速用の同期機構154は、シフトフォーク53Cによって移動されて一対の中速駆動ギヤ151、152のいずれか一方のギヤと第1入力軸8とを連結する。
【0059】
シフトヨーク51Dは、第1入力軸8と平行に延びるシフタ軸52Fに連結されている。シフタ軸52Fは、連結部52Gを介して第1入力軸8と平行に延びるシフタ軸52Hに連結されており、シフタ軸52Hにはシフトフォーク53Dが連結されている。
【0060】
シフトフォーク53Dは、リバース軸13に設けられた後進用の同期機構188に移動自在に嵌合されている。後進用の同期機構188は、シフトフォーク53Dよって移動されて後進ギヤ26とリバース軸13とを連結する。
【0061】
図2において、変速装置31にはインタロックプレート37が設けられている。インタロックプレート37は、フィンガー部36Aがシフトヨーク51Aとシフトヨーク51Bの両方を同時に選択することを防止し、フィンガー部36Bがシフトヨーク51Cとシフトヨーク51Dの両方を同時に選択することを防止する。
【0062】
プレート部材32にはボス部32Cが設けられており、ボス部32Cにはディテントピン48が設けられている。ディテントピン48は、シフトアンドセレクト軸33の軸方向と直交する方向においてディテントカム36Eに対向している。
【0063】
ディテントピン48は、ボス部32Cに固定された筒状保持部48Aと、筒状保持部48Aに保持されたコイルスプリング48Bと、ボス部32Cに摺動自在に収容され、コイルスプリング48Bによってディテントカム36Eに押圧される移動体48Cとを有する。
【0064】
ディテントカム36Eとディテントピン48は、ディテント機構38を構成しており、ディテント機構38は、シフトアンドセレクト軸33が軸線方向および回転方向に移動するときに、ディテントカム36Eに沿って移動体48Cが転動する。
【0065】
ディテント機構38は、ディテントカム36Eが軸線方向および回転方向に移動するときに、移動体48Cをディテントカム36Eに押し付けるコイルスプリング48Bの押し付け力を作用させることによって、シフトアンドセレクト軸33に操作力を付与する。
【0066】
プレート部材32にはボス部32Dが設けられており、ボス部32Dにはガイドピン49が設けられている。ガイドピン49は、シフトアンドセレクト軸33の軸方向と直交する方向においてシフトガイド36Dに対向している。
【0067】
シフトガイド36Dにはシフトパターンに沿った形状のガイド溝36dが形成されており、ガイド溝36dにはガイドピン49の先端部49aが挿入されている。ガイド溝36dは、シフトアンドセレクト軸33がセレクト方向に移動するとともに、シフト方向に回転するのに伴ってガイドピン49に沿って移動する。
【0068】
変速終了後において、ガイドピン49の先端部49aが変速段に応じたガイド溝36dの壁面に当接する。これにより、シフトアンドセレクト軸33のセレクト方向およびシフト方向への移動量が規制されて、シフトアンドセレクト軸33がセレクト方向およびシフト方向にがたつくことが防止される。
【0069】
プレート部材32の外周部には位置センサ50が設けられており、位置センサ50は、シフトアンドセレクト軸33の軸方向においてマグネット36Fに対向している。
【0070】
具体的には、位置センサ50は、シフトアンドセレクト軸33がニュートラル位置に位置した状態においてマグネット36Fに対向している。位置センサ50は、シフトアンドセレクト軸33がニュートラル位置にあることを検出し、図示しない制御回路に検出信号を送信する。本実施例のマグネット36Fは、本発明の磁性体を構成する。
【0071】
図3、
図4、
図5において、第1入力軸8は、変速機ケース2の上下方向、および前後方向において、略中央に配置される。第2入力軸11は、第1入力軸8より下方かつ前方に配置されている。
【0072】
また、カウンタ軸12は、第1入力軸8より下方かつ後方であって、第2入力軸11より上方かつ後方に配置されている。
【0073】
また、アイドラ軸9は、軸方向の両端部に第1アイドラギヤ161と、第2アイドラギヤ162と、を有しており、第1入力軸8より下方かつ前方であって、第1入力軸8と第2入力軸11との間に配置されている。
【0074】
リバース軸13は、第1入力軸8より上方かつ後方に配置されている。
【0075】
リバースアイドラ軸10は、第1入力軸8より上方かつ後方であって、第1入力軸8とリバース軸13との間に配置されている。
【0076】
シフトフォーク53Aは、第1入力軸8とアイドラ軸9の間を通るように配置されている。また、シフトフォーク53Aは、アイドラ軸9の近傍であってアイドラ軸9の第1アイドラギヤ161と第2アイドラギヤ162が配置されていない部分を通るように配置されている。
【0077】
シフトフォーク53Bは、アイドラ軸9またはリバースアイドラ軸10に対して第1入力軸8と反対側を通るように配置され、かつ、アイドラ軸9の第1アイドラギヤ161と第2アイドラギヤ162の間を通るように配置されている。
【0078】
シフトフォーク53Cは、アイドラ軸9とリバースアイドラ軸10との間、さらに、シフタ軸52Bとシフタ軸52Fとの間に配置されている。シフトフォーク53Dは、リバースアイドラ軸10の近傍であってリバースアイドラ軸10の第1アイドラギヤ161と第2アイドラギヤ162が配置されていない部分を通るように配置されている。
【0079】
シフトフォーク53Dは、リバースアイドラ軸10の上方を通ってリバース軸13の上方の位置に延びている。
【0080】
図6において、変速機ケース2の内部は、隔壁94によってトルクコンバータ室91Aとギヤ室92Aとに仕切られている。トルクコンバータ室91Aは、トルコンハウジング91の内部の空間であって、トルクコンバータ室91Aにはトルクコンバータ6が収容されている。
【0081】
ギヤ室92Aは、トランスミッションケース92の内部の空間であって、ギヤ室92Aには平行軸歯車機構からなる常時噛合式の変速歯車機構7が収容されている。本実施例の変速機1は、前進7速、後進1速の変速段を有する。
【0082】
変速歯車機構7は、エンジン5のクランク軸5Aからトルクコンバータ6を介して動力が伝達される第1入力軸8と、それぞれ第1入力軸8と平行に設置されるアイドラ軸9、リバースアイドラ軸10、第2入力軸11、カウンタ軸12およびリバース軸13とを備えている(
図4、
図5参照)。エンジン5は、クランク軸5Aが車幅方向に延びるように設置される横置きエンジンから構成されている。
【0083】
トルクコンバータ6は、ドライブプレート6Aを介してクランク軸5Aに連結されるフロントカバー6Bと、フロントカバー6Bに連結されたシェル6Cとを備えており、エンジン5と変速機1との間でオイルを介して動力を伝達する流体継手を構成している。
【0084】
クランク軸5Aと連結されたシェル6Cの内面には、図示しないポンプインペラが固定されている。シェル6Cの内部には、図示しないタービンランナがポンプインペラに対向して設置されており、タービンランナは、第1入力軸8に接続されている。ポンプインペラとタービンランナの間には図示しないステータが設置されている。
【0085】
トルクコンバータ6において、クランク軸5Aが回転すると、ドライブプレート6Aを介してフロントカバー6B、シェル6Cおよびポンプインペラが一体で回転する。このとき、ポンプインペラの回転による遠心力によって、トルクコンバータ6の内部の流体に、ポンプインペラからタービンランナに向かう流れが生じる。
【0086】
この流体の流れによりタービンランナが回転され、タービンランナに接続された第1入力軸8が回転する。ステータは、タービンランナからの流体の流れをポンプインペラの回転方向に沿うように変換することにより、エンジン5の動力を増幅させる。
【0087】
第1入力軸8は、軸中心に油路が形成されたタービン軸8aと、タービン軸8aの外周部にタービン軸8aと同軸上に設けられた中空の第1入力軸8とを有する。タービン軸8aは第1入力軸8に挿入され、タービン軸8aと第1入力軸8とはニードルベアリングを介して相対回転自在に配置されている。
【0088】
タービン軸8aの一端部(図の右端部)にはトルクコンバータ6が連結されており、エンジン5の動力は、トルクコンバータ6を介してタービン軸8aに伝達される。
【0089】
変速歯車機構7は、遊星歯車機構7Aを有する。遊星歯車機構7Aは、タービン軸8aと第1入力軸8の外周部にタービン軸8aと同軸上に設けられており、第1入力軸8に対してエンジン5側に設置されている。
【0090】
遊星歯車機構7Aは、タービン軸8aと第1入力軸8の一端部とを連結し、タービン軸8aの回転を減速しながら第1入力軸8に伝達可能に構成されている。
【0091】
遊星歯車機構7Aと第1入力軸8の一端部との間にはワンウェイクラッチ25が設置されており、ワンウェイクラッチ25は、タービン軸8aから第1入力軸8に第1入力軸8の回転速度を上昇させる方向の動力を伝達し、第1入力軸8からタービン軸8aに、回転速度を上昇させる方向の動力を伝達しないように構成されている。
【0092】
これにより、ワンウェイクラッチ25は、タービン軸8aから第1入力軸8に動力を伝達可能とし、第1入力軸8からタービン軸8aに動力を伝達不能とする。
【0093】
変速歯車機構7は、ブレーキ装置131を有する。ブレーキ装置131は、タービン軸8aの径方向外方にタービン軸8aと同軸上に設置されている。ブレーキ装置131が差動するとタービン軸8aからワンウェイクラッチ25を介して第1入力軸8に動力が伝達される。
【0094】
遊星歯車機構7Aのギヤ比を任意に設定することにより、タービン軸8aの回転から伝達された回転を減速して第1入力軸8に伝達できる。すなわち、遊星歯車機構7Aは、減速機として機能する。
【0095】
タービン軸8aの他端部(図の左端部)と第1入力軸8の他端部にはクラッチ装置141が設けられており、クラッチ装置141は、クラッチカバー93に収容されている。
【0096】
第1入力軸8の軸方向においてトルクコンバータ6とクラッチ装置141の間には4速段用の中速駆動ギヤ151、5速段用の中速駆動ギヤ152、第1出力ギヤ153および同期機構154が設けられている。
【0097】
4速段用の中速駆動ギヤ151および5速段用の中速駆動ギヤ152は、第1入力軸8に相対回転自在に支持されており、第1出力ギヤ153は、第1入力軸8と一体で回転する。
【0098】
同期機構154は、シフト操作によって4速段または5速段に操作されると、同期機構154が中立位置から図示しないシフトフォークによって4速段用の中速駆動ギヤ151または5速段用の中速駆動ギヤ152側に移動される。
【0099】
例えば、自動によるシフト操作が行われる場合には、同期機構154は、図示しないアクチュエータによって駆動される。アクチュエータは、運転者によって操作されるシフトレバーがドライブレンジにシフトされた状態において、予めスロットル開度と車速とをパラメータとして設定された変速マップに基づいて同期機構154および後述する同期機構168、169を操作して変速段の制御を行う。
【0100】
また、アクチュエータは、シフトレバーがリバースレンジにシフトされた状態において後述する同期機構188を操作する。なお、同期機構154、168、169、188は、スリーブとシンクロナイザリングとを有する一般的な同期機構であり、具体的な構成の説明は省略する。
【0101】
同期機構154が中立位置から4速段用の中速駆動ギヤ151側に移動すると、4速段用の中速駆動ギヤ151が同期機構154に嵌合することにより、同期機構154を介して第1入力軸8と4速段用の中速駆動ギヤ151とが連結され、4速段用の中速駆動ギヤ151が第1入力軸8と一体で回転する。
【0102】
同期機構154が中立位置から5速段用の中速駆動ギヤ152側に移動すると、5速段用の中速駆動ギヤ152が同期機構154に嵌合することにより、同期機構154を介して第1入力軸8と5速段用の中速駆動ギヤ152とが連結され、5速段用の中速駆動ギヤ152が第1入力軸8と一体で回転する。
【0103】
アイドラ軸9には第1アイドラギヤ161と第1アイドラギヤ161よりも小径の第2アイドラギヤ162とが設けられており、第1アイドラギヤ161、162は、アイドラ軸9と一体で回転する。第1アイドラギヤ161は、第1出力ギヤ153に噛み合っており、第1出力ギヤ153からの動力をアイドラ軸9に伝達する。
【0104】
第2入力軸11にはクラッチ装置141側からトルクコンバータ6側に向かって1-2速段用の高速駆動ギヤ163、3速段用の高速駆動ギヤ164、6速段用の低速駆動ギヤ165、7速段用の低速駆動ギヤ166および第1入力ギヤ167が設けられている。
【0105】
1-2速段用の高速駆動ギヤ163から7速段用の低速駆動ギヤ166は、第2入力軸11に相対回転自在に設けられており、第1入力ギヤ167は、第2入力軸11と一体で回転する。第1入力ギヤ167は、アイドラ軸9の第2アイドラギヤ162に噛み合っており、第1入力ギヤ167には第2アイドラギヤ162から動力が伝達される。
【0106】
1-2速段用の高速駆動ギヤ163と3速段用の高速駆動ギヤ164との間には同期機構168が設けられており、6速段用の低速駆動ギヤ165と7速段用の低速駆動ギヤ166との間には同期機構169が設けられている。
【0107】
同期機構168は、シフト操作によって1速段または2速段にシフトされると、1-2速段用の高速駆動ギヤ163を第2入力軸11に連結し、シフト操作によって3速段にシフトされると、3速段用の高速駆動ギヤ164を第2入力軸11に連結する。
【0108】
同期機構169は、シフト操作によって6速段にシフトされると、6速段用の低速駆動ギヤ165を第2入力軸11に連結し、シフト操作によって7速段にシフトされると、7速段用の低速駆動ギヤ166を第2入力軸11に連結する。同期機構168、169は、同期機構154と同様に動作する。
【0109】
カウンタ軸12にはクラッチ装置141側からトルクコンバータ6側に向かって1-2-4速段用の高速従動ギヤ170、3-5速段用の高速従動ギヤ171、6速段用の低中速従動ギヤ172、7速段用の低中速従動ギヤ173および前進用の第2出力ギヤ174が設けられている。
【0110】
高速従動ギヤ170から低中速従動ギヤ173は、カウンタ軸12とスプライン嵌合しており、カウンタ軸12と一体的に回転する。前進用の第2出力ギヤ174は、カウンタ軸12と一体に形成されてカウンタ軸12と一体で回転する。
【0111】
1-2-4速段用の高速従動ギヤ170は、4速段用の中速駆動ギヤ151と1-2速段用の高速駆動ギヤ163とに噛み合っており、3-5速段用の高速従動ギヤ171は、3速段用の高速駆動ギヤ164と5速段用の中速駆動ギヤ152とに噛み合っている。
【0112】
6速段用の低中速従動ギヤ172は、6速段用の低速駆動ギヤ165に噛み合っており、7速段用の低中速従動ギヤ173は、7速段用の低速駆動ギヤ166に噛み合っている。
【0113】
前進用の第2出力ギヤ174は、ディファレンシャル装置14のディファレンシャルギヤ14Bに噛み合っている。これにより、カウンタ軸12の動力は、前進用の第2出力ギヤ174およびディファレンシャルギヤ14Bを経てディファレンシャル装置14に伝達される。
【0114】
ディファレンシャル装置14は、デフケース14Aと、デフケース14Aの外周部に取付けられたディファレンシャルギヤ14Bと、デフケース14Aに収容された差動機構14Cとを有する。
【0115】
差動機構14Cには左右のドライブシャフト82L、82Rを介して左右の駆動輪83L、83Rが連結されている。ディファレンシャル装置14は、エンジン5の動力を差動機構14Cによって左右のドライブシャフト82L、82Rに分配して左右の駆動輪83L、83Rに伝達する。
【0116】
リバースアイドラ軸10には第1リバースアイドラギヤ184と第1リバースアイドラギヤ184よりも小径の第2リバースアイドラギヤ185とが設けられており、第1リバースアイドラギヤ184、第2リバースアイドラギヤ185は、リバースアイドラ軸10と一体で回転する。第1リバースアイドラギヤ184は、第1出力ギヤ153に噛み合っている。
【0117】
リバース軸13には後進ギヤ26と、後進ギヤ26よりも小径に形成された後進用の第3出力ギヤ187とが設けられており、後進用の第3出力ギヤ187は、リバース軸13と一体で回転する。
【0118】
後進ギヤ26は、第2リバースアイドラギヤ185に噛み合っており、後進用の第3出力ギヤ187は、ディファレンシャルギヤ14Bに噛み合っている。
【0119】
リバース軸13には同期機構188が設けられている。同期機構188は、シフト操作によって後進段にシフトされると、後進ギヤ26をリバース軸13に連結する。
【0120】
このとき、後進用の第3出力ギヤ187からディファレンシャルギヤ14Bに動力が伝達され、ディファレンシャルギヤ14Bが前進時と反対方向に回転し、車両が後進される。なお、同期機構188は、同期機構154と同様に動作するので、具体的な構成の説明は省略する。
【0121】
なお、
図7、
図8、
図9に示すように、シフトフォーク53Dは、第1入力軸8とリバースアイドラ軸10との間を通るように配置されていてもよい。
【0122】
以上のように、本実施例の自動変速機1は、エンジン5からの動力が入力される第1入力軸8および第2入力軸11と、第1入力軸8および第2入力軸11から動力が伝達されるカウンタ軸12と、アイドラ軸9およびリバースアイドラ軸10と、後進ギヤ26を有するリバース軸13と、ディファレンシャルギヤ14Bを有するディファレンシャル装置14と、シフトフォーク53A、53B、53C、53Dを変速機ケース2内に備えている。
【0123】
そして、本実施例の自動変速機1において、第1入力軸8は、中速駆動ギヤ151、152と、第1出力ギヤ153を有し、第2入力軸11は、低速駆動ギヤ165、166と、高速駆動ギヤ163、164と、第1入力ギヤ167とを有し、第1入力軸8より下方かつ前方であってアイドラ軸9より下方に配置されている。
【0124】
また、カウンタ軸12は、低速駆動ギヤ165、166および中速駆動ギヤ151、152と噛み合う低中速従動ギヤ172と、高速駆動ギヤ163、164と噛み合う高速従動ギヤ170、171と、ディファレンシャルギヤ14Bと噛み合う第2出力ギヤ174と、を有し、第1入力軸8より下方かつ後方であって第2入力軸11より上方かつ後方に配置されている。
【0125】
また、アイドラ軸9は、第1出力ギヤ153と噛み合う第1アイドラギヤ161と、第1入力ギヤ167と噛み合う第2アイドラギヤ162と、を有し、第1入力軸8より下方かつ前方に配置され、リバースアイドラ軸10は、第1出力ギヤ153と噛み合う第1リバースアイドラギヤ184と、後進ギヤ26と噛み合う第2リバースアイドラギヤ185と、を有し、第1入力軸8より上方かつ後方に配置され、リバース軸13は、ディファレンシャルギヤ14Bと噛み合う第3出力ギヤ187を更に有し、第1入力軸8より上方かつ後方であってリバースアイドラ軸10より下方かつ後方に配置されている。
【0126】
また、シフトフォーク53Aは、低速駆動ギヤ165、166の低速用の同期機構169を操作し、第1入力軸8とアイドラ軸9の間を通るように配置され、シフトフォーク53Cは、中速駆動ギヤ151、152の中速用の同期機構154を操作し、シフトフォーク53Bは、高速駆動ギヤ163、164の高速用の同期機構168を操作する。
【0127】
これにより、シフトフォーク53Aを軸と軸の間を通るように配置したため、軸の外側を通るよりも軸の径方向外側に広がって大型化することを防止でき変速機を小型化することができる。
【0128】
また、同期負荷が大きい低速用の同期機構169を移動させるシフトフォーク53Aと後進用の同期機構188を移動させるシフトフォーク53Dを直線状に形成して短くすることができるため、それぞれのシフトフォークの剛性を高めることができ、シフトフォークの変形を防止できる。
【0129】
この結果、変速機を小型化でき、シフトフォークの変形を防止できる。
【0130】
後進ギヤ26の後進用の同期機構188を操作するシフトフォーク53Dを備え、シフトフォーク53Dは、第1入力軸8とリバースアイドラ軸10との間を通る。
【0131】
これにより、変速機を小型化でき、シフトフォークの変形を防止できる。
【0132】
本実施例の自動変速機1において、アイドラ軸9およびリバースアイドラ軸10は、それぞれ軸方向の両端部にギヤを有し、シフトフォーク53Aは、アイドラ軸9の近傍であってアイドラ軸9のギヤの配置されていない部分を通るように配置され、シフトフォーク53Dは、リバースアイドラ軸10の近傍であってリバースアイドラ軸10のギヤの配置されていない部分を通るように配置される。
【0133】
これにより、シフトフォーク53Aがアイドラ軸9の近傍のギヤの配置されていない部分を通ることで、アイドラ軸9を変速機の中心側に寄せて配置することができ、シフトフォーク53Aの幅を確保できる。これにより、シフトフォークの剛性を確保できる。
【0134】
また、シフトフォーク53Dがリバースアイドラ軸10の近傍のギヤの配置されていない部分を通ることで、リバースアイドラ軸10を変速機の中心側に寄せて配置でき、シフトフォーク53Dの軸方向の幅を確保できる。これにより、シフトフォークの剛性を確保できる。
【0135】
この結果、シフトフォークの変形を防止できるとともに、変形を防止するためにシフトフォークを大型化する必要が無いため、変速機を小型化できる。
【0136】
本実施例の自動変速機1において、シフトフォーク53Bは、アイドラ軸9またはリバースアイドラ軸10に対して第1入力軸8と反対側を通るように配置され、かつ、アイドラ軸9の両端部のギヤの間を通るように配置される。
【0137】
これにより、シフトフォーク53Bがアイドラ軸9の軸部分を通ることで、アイドラ軸9を変速機の中心側に寄せて配置でき、シフトフォーク53Bの幅を確保できる。このため、シフトフォークの剛性を確保できる。これにより、シフトフォークの変形を防止できるとともに、変形を防止するためにシフトフォークを大型化する必要が無いため、変速機を小型化できる。
【0138】
なお、本実施例の自動変速機1は、アクチュエータによって変速操作されるAMT(Automated Manual Transmission)から構成されているが、MT(Manual Transmission)から構成されてもよい。
【0139】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0140】
1...自動変速機(車両用変速機)、5...エンジン(駆動源)、8...第1入力軸、9...アイドラ軸、10...リバースアイドラ軸、11...第2入力軸、12...カウンタ軸、13...リバース軸、14...ディファレンシャル装置、14B...ディファレンシャルギヤ、53A...シフトフォーク(第1シフトフォーク)、53B...シフトフォーク(第3シフトフォーク)、53C...シフトフォーク(第2シフトフォーク)、53D...シフトフォーク(第4シフトフォーク)