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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】ゴム部材の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/30 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
B29D30/30
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018175918
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020044760
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(72)【発明者】
【氏名】谷口 昌幸
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-215461(JP,A)
【文献】特開2014-088101(JP,A)
【文献】特開2016-101677(JP,A)
【文献】特開平11-129347(JP,A)
【文献】特開2017-056665(JP,A)
【文献】特開2008-272899(JP,A)
【文献】特開2011-102023(JP,A)
【文献】特開昭61-049835(JP,A)
【文献】特開平01-078826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面にゴムシートを圧着して、前記基材と前記ゴムシートとが一体になったゴム部材を製造するゴム部材の製造方法であって、
エアが内填されて膨張したブラダーを用いて、前記基材の表面に重ねられた前記ゴムシートをエア圧により前記基材に圧着するブラダー圧着工程と、
複数枚並べられた円盤状のディスクローラから構成される押さえローラを用いて、前記ゴムシートを前記基材に圧着するローラ圧着工程とを備えており、
前記ブラダー圧着工程とローラ圧着工程とを連続して行うに際して、
前記ローラ圧着工程に続いて、前記ブラダー圧着工程を行うことを特徴とするゴム部材の製造方法。
【請求項2】
基材の表面にゴムシートを圧着して、前記基材と前記ゴムシートとが一体になったゴム部材を製造するゴム部材の製造方法であって、
エアが内填されて膨張したブラダーを用いて、前記基材の表面に重ねられた前記ゴムシートをエア圧により前記基材に圧着するブラダー圧着工程と、
複数枚並べられた円盤状のディスクローラから構成される押さえローラを用いて、前記ゴムシートを前記基材に圧着するローラ圧着工程とを備えており、
前記ブラダー圧着工程とローラ圧着工程とを連続して行い、
前記基材が、表面に凹凸を有する基材であることを特徴とするゴム部材の製造方法。
【請求項3】
前記表面に凹凸を有する基材が、幅方向の中央部に、前記ゴムシートの厚みの1.5倍以上の深さの凹部が形成されている基材であることを特徴とする請求項に記載のゴム部材の製造方法。
【請求項4】
基材の表面にゴムシートを圧着して、前記基材と前記ゴムシートとが一体になったゴム部材を製造するゴム部材の製造装置であって、
前記基材を搬送する搬送コンベアと、
前記搬送コンベア上を搬送される前記基材の所定の位置に、前記基材の搬送速度と等しい速度で前記ゴムシートを供給するゴムシート供給装置と、
前記ゴムシートを押圧するブラダーと、
前記ゴムシートを押圧する押さえローラとを備えており、
前記ブラダーと前記押さえローラは、前記搬送コンベアと前記ゴムシート供給装置とが合流する位置よりも下流側に設けられており、
前記ブラダーは、前記搬送コンベアの上方に搬送方向に対して直角方向に設けられた回転軸により回転自在に支持され、エアの内填により膨張するように構成されており、
前記押さえローラは、前記搬送コンベアの上方に搬送方向に対して直角方向に設けられた回転軸によりそれぞれ個別に回転自在で径方向に搖動自在に支持された、複数の円盤状のディスクローラにより形成されていることを特徴とするゴム部材の製造装置。
【請求項5】
前記ディスクローラの各々の幅が2~5mmであり、内周面と前記回転軸の外周面の間に円筒状のスポンジローラが嵌め込まれて、前記スポンジローラを介して前記回転軸に支持されるように構成されていることを特徴とする請求項に記載のゴム部材の製造装置。
【請求項6】
基材の表面にゴムシートを圧着して、前記基材と前記ゴムシートとが一体になったゴム部材を製造するゴム部材の製造方法であって、
請求項4または請求項5に記載のゴム部材の製造装置を用いて、
エアが内填されて膨張したブラダーを用いて、前記基材の表面に重ねられた前記ゴムシートをエア圧により前記基材に圧着するブラダー圧着工程と、
複数枚並べられた円盤状のディスクローラから構成される押さえローラを用いて、前記ゴムシートを前記基材に圧着するローラ圧着工程とを備えており、
前記ブラダー圧着工程とローラ圧着工程とを連続して行うことを特徴とするゴム部材の製造方法。
【請求項7】
前記ブラダー圧着工程に続いて、前記ローラ圧着工程を行うことを特徴とする請求項6に記載のゴム部材の製造方法。
【請求項8】
前記ローラ圧着工程に続いて、前記ブラダー圧着工程を行うことを特徴とする請求項6に記載のゴム部材の製造方法。
【請求項9】
前記基材が、表面に凹凸を有する基材であることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載のゴム部材の製造方法。
【請求項10】
前記基材が、サイドウォールであることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載のゴム部材の製造方法。
【請求項11】
前記表面に凹凸を有する基材が、幅方向の中央部に、前記ゴムシートの厚みの1.5倍以上の深さの凹部が形成されている基材であることを特徴とする請求項9に記載のゴム部材の製造方法。
【請求項12】
前記ゴムシートの厚みが、0.3~2.0mmであることを特徴とする請求項6ないし請求項11のいずれか1項に記載のゴム部材の製造方法。
【請求項13】
前記ブラダー圧着工程において、前記ブラダーの内圧が0.02~0.05MPaとなるように、前記エアの内填を調整することを特徴とする請求項6ないし請求項12のいずれか1項に記載のゴム部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面にゴムシートを圧着して、基材とゴムシートとが一体になったゴム部材を製造するゴム部材の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの製造においては、所定の長さに切断された各種の未加硫ゴム部材を圧着して貼り合わせることにより一体化させることが一般的に行われており、例えば、種類の異なるゴム部材同士の粘着を保つ、あるいは下地の黒色ゴムの上に浮き出させた白色など異色のゴムをカバーする等の目的から、基材となるゴム部材の表面の必要箇所に未加硫のゴムシートを圧着して貼り付けることが行われている。
【0003】
このとき、通常は、円柱状の押さえローラを用いて押圧することにより、一体化を図っているが、平らな基材とゴムシートとの一体化には有効であるものの、サイドウォールなどのように凹凸や段差がある基材にゴムシートを圧着する場合には、ゴムシートを基材の表面形状に沿って押圧することができず、圧着不足で基材とゴムシートとの間にエアが残る恐れがある。このようなエア残りがあると、加硫後の製品タイヤにおいて、基材とゴムシートとの間に密着不良や外観不良が発生して、スクラップとして廃棄せざるを得なくなる。
【0004】
そこで、複数のディスクローラにより構成された押さえローラを用いて、基材の表面形状に合わせて個々のディスクローラが上下動することにより、押圧するゴムシートの圧着装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、複数のディスクローラにより構成された押さえローラは、押圧時、ゴムシートに皺が発生しやすいという問題がある。
【0006】
また、ローラに代えて、エアを内填することにより膨張するブラダーを用いて、ゴムシートを圧着することも考えられるが、ブラダーはゴム製であり、エアの内填により楕円状に膨張するため、ゴムシートの幅方向の全体を均一に押圧できない場合があり、エアが残ってしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-56665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した問題点に鑑み、表面に凹凸を有する基材にゴムシートを圧着する場合であっても、基材とゴムシートとが、皺やエア残りが発生することなく十分に圧着されて一体化されたゴム部材を提供することができるゴム部材の製造技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題の解決について鋭意検討を行い、以下に記載する発明によれば上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
請求項1に記載の発明は、
基材の表面にゴムシートを圧着して、前記基材と前記ゴムシートとが一体になったゴム部材を製造するゴム部材の製造方法であって、
エアが内填されて膨張したブラダーを用いて、前記基材の表面に重ねられた前記ゴムシートをエア圧により前記基材に圧着するブラダー圧着工程と、
複数枚並べられた円盤状のディスクローラから構成される押さえローラを用いて、前記ゴムシートを前記基材に圧着するローラ圧着工程とを備えており、
前記ブラダー圧着工程とローラ圧着工程とを連続して行うに際して、
前記ローラ圧着工程に続いて、前記ブラダー圧着工程を行うことを特徴とするゴム部材の製造方法である。
【0013】
請求項に記載の発明は、
基材の表面にゴムシートを圧着して、前記基材と前記ゴムシートとが一体になったゴム部材を製造するゴム部材の製造方法であって、
エアが内填されて膨張したブラダーを用いて、前記基材の表面に重ねられた前記ゴムシートをエア圧により前記基材に圧着するブラダー圧着工程と、
複数枚並べられた円盤状のディスクローラから構成される押さえローラを用いて、前記ゴムシートを前記基材に圧着するローラ圧着工程とを備えており、
前記ブラダー圧着工程とローラ圧着工程とを連続して行い、
前記基材が、表面に凹凸を有する基材であることを特徴とするゴム部材の製造方法である。
【0015】
請求項に記載の発明は、
前記表面に凹凸を有する基材が、幅方向の中央部に、前記ゴムシートの厚みの1.5倍以上の深さの凹部が形成されている基材であることを特徴とする請求項に記載のゴム部材の製造方法である。
【0018】
請求項に記載の発明は、
基材の表面にゴムシートを圧着して、前記基材と前記ゴムシートとが一体になったゴム部材を製造するゴム部材の製造装置であって、
前記基材を搬送する搬送コンベアと、
前記搬送コンベア上を搬送される前記基材の所定の位置に、前記基材の搬送速度と等しい速度で前記ゴムシートを供給するゴムシート供給装置と、
前記ゴムシートを押圧するブラダーと、
前記ゴムシートを押圧する押さえローラとを備えており、
前記ブラダーと前記押さえローラは、前記搬送コンベアと前記ゴムシート供給装置とが合流する位置よりも下流側に設けられており、
前記ブラダーは、前記搬送コンベアの上方に搬送方向に対して直角方向に設けられた回転軸により回転自在に支持され、エアの内填により膨張するように構成されており、
前記押さえローラは、前記搬送コンベアの上方に搬送方向に対して直角方向に設けられた回転軸によりそれぞれ個別に回転自在で径方向に搖動自在に支持された、複数の円盤状のディスクローラにより形成されていることを特徴とするゴム部材の製造装置である。
【0019】
請求項に記載の発明は、
前記ディスクローラの各々の幅が2~5mmであり、内周面と前記回転軸の外周面の間に円筒状のスポンジローラが嵌め込まれて、前記スポンジローラを介して前記回転軸に支持されるように構成されていることを特徴とする請求項に記載のゴム部材の製造装置である。
請求項6に記載の発明は、
基材の表面にゴムシートを圧着して、前記基材と前記ゴムシートとが一体になったゴム部材を製造するゴム部材の製造方法であって、
請求項4または請求項5に記載のゴム部材の製造装置を用いて、
エアが内填されて膨張したブラダーを用いて、前記基材の表面に重ねられた前記ゴムシートをエア圧により前記基材に圧着するブラダー圧着工程と、
複数枚並べられた円盤状のディスクローラから構成される押さえローラを用いて、前記ゴムシートを前記基材に圧着するローラ圧着工程とを備えており、
前記ブラダー圧着工程とローラ圧着工程とを連続して行うことを特徴とするゴム部材の製造方法である。
請求項7に記載の発明は、
前記ブラダー圧着工程に続いて、前記ローラ圧着工程を行うことを特徴とする請求項6に記載のゴム部材の製造方法である。
請求項8に記載の発明は、
前記ローラ圧着工程に続いて、前記ブラダー圧着工程を行うことを特徴とする請求項6に記載のゴム部材の製造方法である。
請求項9に記載の発明は、
前記基材が、表面に凹凸を有する基材であることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載のゴム部材の製造方法である。
請求項10に記載の発明は、
前記基材が、サイドウォールであることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載のゴム部材の製造方法である。
請求項11に記載の発明は、
前記表面に凹凸を有する基材が、幅方向の中央部に、前記ゴムシートの厚みの1.5倍以上の深さの凹部が形成されている基材であることを特徴とする請求項9に記載のゴム部材の製造方法である。
請求項12に記載の発明は、
前記ゴムシートの厚みが、0.3~2.0mmであることを特徴とする請求項6ないし請求項11のいずれか1項に記載のゴム部材の製造方法である。
請求項13に記載の発明は、
前記ブラダー圧着工程において、前記ブラダーの内圧が0.02~0.05MPaとなるように、前記エアの内填を調整することを特徴とする請求項6ないし請求項12のいずれか1項に記載のゴム部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、表面に凹凸を有する基材にゴムシートを圧着する場合であっても、基材とゴムシートとが、皺やエア残りが発生することなく十分に圧着されて一体化されたゴム部材を提供することができるゴム部材の製造技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態に係るゴム部材の製造装置の全体構成を説明する模式側面図である。
図2】本発明の一実施の形態におけるブラダーの模式縦断面図である。
図3】本発明の一実施の形態における押さえローラの模式縦断面図である。
図4】本発明の一実施の形態のブラダー圧着工程における基材、ゴムシートおよびブラダーの配置を示す模式正面図である。
図5】本発明の一実施の形態のブラダー圧着工程における基材、ゴムシートおよびブラダーの状態を示す模式正面図である。
図6】本発明の一実施の形態のローラ圧着工程における基材、ゴムシートおよび押さえローラの配置を示す模式正面図である。
図7】本発明の一実施の形態のローラ圧着工程における基材、ゴムシートおよび押さえローラの状態を示す模式正面図である。
図8A】本発明の一実施の形態において、ブラダーおよび押さえローラで圧着したときの圧着状態を示す図である。
図8B】本発明の一実施の形態において、ブラダーのみで圧着したときの圧着状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施の形態に基づき、図面を用いて、本発明を具体的に説明する。
【0023】
[1]本実施の形態の概要
本実施の形態に係るゴム部材の製造方法は、基材の表面にゴムシートを圧着して、基材とゴムシートとが一体になったゴム部材を製造するにあたって、以下の特徴を備えている。
(1)エアが内填されて膨張したブラダーを用いて、基材の表面に重ねられたゴムシートをエア圧により基材に圧着するブラダー圧着工程を備えている。
(2)複数枚並べられた円盤状のディスクローラから構成される押さえローラを用いて、ゴムシートを基材に圧着するローラ圧着工程を備えている。
(3)ブラダー圧着工程とローラ圧着工程とを連続して行う。
【0024】
このような構成とすることにより、ブラダー圧着による効果とローラ圧着による効果とが相俟って、表面に凹凸を有する基材にゴムシートを圧着する場合であっても、基材とゴムシートとをエア残りを発生することなく十分に圧着して、一体化したゴム部材とすることができる。
【0025】
上記の製造方法は、ゴムシートを押圧するブラダーと押さえローラとを備えた本実施の形態に係るゴム部材の製造装置により実施される。
【0026】
[2]本実施の形態の具体的な態様
はじめに、本実施の形態の製造方法を実施するための製造装置について説明し、その後、具体的な製造方法について説明する。
【0027】
1.ゴム部材の製造装置
(1)概要
本実施の形態に係るゴム部材の製造装置は、主に以下の構成を備えている。
(a)基材を搬送する搬送コンベア
(b)搬送コンベア上を搬送される基材の所定の位置に、基材の搬送速度と等しい速度でゴムシートを供給するゴムシート供給装置
(c)搬送コンベアの上方に搬送方向に対して直角方向に設けられた回転軸により回転自在に支持され、エアの内填により膨張するように構成されているブラダー
(d)搬送コンベアの上方に搬送方向に対して直角方向に設けられた回転軸によりそれぞれ個別に回転自在で径方向に搖動自在に支持された、複数の円盤状のディスクローラにより形成されている押さえローラ
【0028】
(2)具体的な構成
図1は、本実施の形態に係るゴム部材の製造装置の全体構成を説明する模式側面図である。図1において、1はゴム部材の製造装置、2はブラダー、3は押さえローラ、4は搬送コンベア、5はゴムシート供給装置である。そして、SWは基材(サイドウォール)、GSはゴムシート(ビニアゴム)である。また、矢印は基材SWの搬送方向を示している。
【0029】
(a)搬送コンベア
搬送コンベア4は、押出成形などにより長尺の帯状に成形された基材SWを、凹凸が設けられた面が上側になるように載置して、矢印方向に搬送する。
【0030】
(b)ゴムシート供給装置
ゴムシート供給装置5は、搬送コンベア4の上方に設けられており、ロール状に巻かれたゴムシートGSを巻き出して、基材SWの搬送速度と同じ速さで搬送コンベア4との合流点に向けて供給する。
【0031】
(c)ブラダー
ブラダー2は搬送コンベア4とゴムシート供給装置5との合流点に設けられており、エアの内填により膨張したブラダー2によって、基材SWにゴムシートGSを押圧する。
【0032】
図2はブラダー2の模式縦断面図であり、21は回転軸、aは内填されたエアである。図2に示すように、ブラダー2は円柱状であり、搬送コンベアの上方に搬送方向に対して直角方向に設けられた水平方向の回転軸21により回転自在に支持されている。ブラダー2は、ゴム製であり、エアaを内填することにより、楕円状に膨張し、膨張した面でゴムシートGSを押圧する。
【0033】
ブラダー2のエアaの圧力は、0.02~0.05MPaに調整することが好ましい。これにより、ゴムシートGSを基材SW表面の凹凸に十分に追従させて、押圧することができる。
【0034】
(d)押さえローラ
本実施の形態において、押さえローラ3は、ブラダー2のさらに下流側に設けられており、搬送コンベアの上方に搬送方向に対して直角方向に設けられた水平方向の回転軸によりそれぞれ個別に回転自在で径方向に搖動自在に支持された、複数の円盤状のディスクローラにより形成されている。押さえローラ3の各ディスクローラが基材SWの表面の凹凸に合わせて上下動することにより、ゴムシートGSを基材SWにさらに押圧することができる。
【0035】
図3は押さえローラ3の模式縦断面図であり、31は回転軸、32はディスクローラ、33はスポンジローラである。図3に示すように、押さえローラ3は、複数のディスクローラ32を備えている。また、ディスクローラ32の内周面と回転軸31の間には円筒状のスポンジローラ33が嵌め込まれており、ディスクローラ32は基材SWの表面の凹凸に追従して径方向に搖動可能に支持されている。なお、押さえローラ3はシリンダにより押さえ方向に押しつけることができるように支持されている。
【0036】
個々のディスクローラ32の幅は、2~5mmであることが好ましい。ディスクローラ32の幅が2mmより小さい場合にはディスクローラの数が多くなりコスト高となり、一方、5mmより大きい場合には基材表面の凹凸に十分に追従することが難しい。
【0037】
なお、ディスクローラ32は軽量な樹脂製であることが好ましく、中でも汎用性樹脂であり機械的強度、耐摩耗性に優れるMCナイロン(登録商標)が特に好ましい。このような材質とすることにより、適切な押圧力と、基材表面の凹凸への追従性を両立させることができる。
【0038】
なお、スポンジローラは、ウレタンなどの発泡性の樹脂で形成されていることが好ましい。上記の材質で形成されていることにより、押さえローラ3の基材表面への追従性をより向上させることができる。
【0039】
2.ゴム部材の製造方法
次に、上記したゴム部材の製造装置を用いた本実施の形態に係るゴム部材の製造方法について説明する。
【0040】
まず、図1に示すように、基材SWを搬送コンベア4上に載置して搬送する一方、ゴムシートGSをゴムシート供給装置5から供給することにより、ブラダー2の手前で、基材SWとゴムシートGSとを合流させる。
【0041】
このとき、搬送コンベア4による基材SWの搬送速度と、ゴムシート供給装置5によるゴムシートGSの供給速度とは同じ速度となるように設定すると共に、基材SWとゴムシートGSとが所定の位置で押圧されるようにそれぞれを位置決めしておく。
【0042】
合流した基材SWおよびゴムシートGSを、そのまま、搬送ベルト上をブラダー2の位置まで搬送する。このとき、ブラダー2は、所定の内圧(0.02~0.05MPa)となるようにエアが内填されて膨張した状態で、回転軸21(図2)を中心としてフリー回転するように支持されているため、ブラダー2に接したゴムシートGSは膨張したブラダー2に押圧されて、基材SWの凹凸に追従して基材SWに圧着される。
【0043】
このブラダー圧着工程について、図4図5を用いて、さらに詳しく説明する。なお、図4はブラダー圧着工程における基材、ゴムシートおよびブラダーの配置を示す模式正面図であり、図5はブラダー圧着工程における基材、ゴムシートおよびブラダーの状態を示す模式正面図である。
【0044】
図4図5に示すように、基材SWは、一般的に、幅方向の中央部にサイプなどの凹部が形成されている。ゴムシートGSはこの凹部を跨いだ形で供給されるため、凹部にはゴムシートGSと基材SWの間に隙間が生じている。ブラダー2は、ゴムシートGSの幅より大きい長さを有しており、ブラダー2がゴムシートGSの幅全体をカバーするように配置する。
【0045】
ブラダー圧着工程においては、ブラダー2を回転軸の周囲をゴムシートGSおよび基材SWの搬送速度と同じ線速度で回転させながら、ゴムシートGSを下方に向けて押圧する。このようにブラダー2のエア圧を利用して押圧することにより、ゴムシートGSは基材SWの表面に沿って変形し、基材SWに圧着される。
【0046】
しかし、ブラダー2は、押圧時にブラダー2に掛かる張力により、凹部の凸条との際の部分で基材SWの表面に沿うことができないことがあり、この場合、図5に示すように、ゴムシートGSと基材SWの間の矢印で示す箇所に隙間が残ってしまい、エア溜りとなる恐れがある。
【0047】
そこで、本実施の形態においては、次工程として、ローラ圧着工程を備えている。
【0048】
ローラ圧着工程では、複数枚並べられた円盤状のディスクローラから構成される押さえローラを用いて、ゴムシートを基材に圧着している。
【0049】
図6はローラ圧着工程における基材、ゴムシートおよび押さえローラの配置を示す模式正面図であり、図7はローラ圧着工程における基材、ゴムシートおよび押さえローラの状態を示す模式正面図である。
【0050】
図6図7に示すように、押さえローラ3は、ゴムシートGSの幅より大きく、ゴムシートGSの幅全体をカバーするように配置されている。押さえローラ3の個々の円盤状のディスクローラは、押圧時に基材の凹凸に追従して径方向に搖動することができる。また、ブラダーと比較して大きな押圧力が得られる。このため、ブラダー圧着工程でゴムシートGSと基材SWの間に生じた隙間を対応する位置のディスクローラが的確に押圧することができ、図7に示すように、エア溜りのない圧着を得ることができる。
【0051】
3.本実施の形態の効果
以上のように、本実施の形態によれば、ゴムシートGSと基材SWとを、エア溜りの発生を十分に抑制しながら圧着して、一体化することができる。
【0052】
なお、上記では、ブラダー圧着工程をローラ圧着工程よりも前の工程としているが、ローラ圧着工程をブラダー圧着工程よりも前の工程としてもよい。この場合、先に押さえローラで押圧することにより、十分な押圧を得ることができるものの、ゴムシートに皺が発生しやすい。しかし、その後、ブラダーで押圧することにより、この皺が伸ばされて解消されると共に、さらに押圧されるため、十分な圧着を得ることができる。
【0053】
そして、長尺のゴム部材を連続的に製造する際、表面にサイプなどの凹部が多く形成されているサイドウォールなどを基材とした場合、従来の方法では、エア溜りの発生が避けられないが、本実施の形態の場合には、幅方向の中央部に、前記ゴムシートの厚みの1.5倍以上の深さの凹部が形成されていても、ゴムシートと基材とを隙間なく圧着して、エア溜りの発生が抑制された長尺のゴム部材を連続的に製造することができる。
【0054】
また、厚みが0.2~2.0mmのゴムシートは、基材の凹凸に沿いにくく、且つ皺が発生しやすいが、本実施の形態の製造方法を適用することにより、このようなゴムシートに対しても、基材との間に隙間なく、且つ皺を発生させずに圧着することが可能となる。
【0055】
そして、本実施の形態に示した技術は、サイドウォールを基材として、ビニアゴムなどのゴムシートを圧着する場合、特に顕著な効果を得ることができる。
【実施例
【0056】
以下に実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。
【0057】
1.試験体の作製
本実施の形態の効果を確認するため、ブラダーのみ(比較例1)、押さえローラのみ(比較例2)、ブラダーおよび押さえローラ(実施例)の3通りの圧着手段を用いて、サイドウォールの表面にゴムシートを圧着して一体化されたゴム部材を、10個ずつ作製し、その後、製品タイヤを製造した。
【0058】
なお、ブラダーについては内圧を0.035MPaとし、押さえローラについては幅5mmのディスクローラ23枚で構成させた。
【0059】
2.評価
(1)評価項目
(a)圧着状態
ゴムシート表面に感圧紙を配置して、加圧の程度によって変化する色の変化を観察した。
【0060】
(b)エア残り
圧着後のゴムシート表面を目視して、エア残りの有無を観察した。
【0061】
(c)皺の発生
圧着後のゴムシート表面における皺の発生状況を、目視で観察した。
【0062】
(d)タイヤスクラップ
製造したタイヤにおける基材とゴムシート間における状況を観察し、剥離や外観不良が発生した製品をスクラップ品と判定し、その発生率を求めた。
【0063】
(2)評価結果
評価結果を表1に示す。また、ブラダーのみ(比較例1)、ブラダーおよび押さえローラ(実施例)の押圧手段における圧着状態の調査結果を図8A図8Bに示す。
【0064】
なお、評価は、以下の基準で行った。
良 :圧着状態が全体を十分に圧着できている
エア残りの発生がない
皺の発生がない
可 :部分的に圧着できていない箇所がある
部分的にエア残りが発生
皺の発生が部分的
不可:圧着できていない場所が多い
全面にエア残りが発生
皺の発生が全面
【0065】
また、図8A図8Bにおいて上下方向がゴム部材の幅方向であり、上端側と下端側の縁部は、感圧紙がサイドウォールの凸条上に設置された箇所であり、中央部分が凹部上に設置された箇所である。また、押圧力の掛かり方は、色の濃さで示しており、濃い部分が大きな押圧力が掛かった部分を示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1より、実施例では、タイヤスクラップ率が0%と非常に優れた評価結果が得られていることが分かる。この結果は、圧着状態、エア残りおよび皺の発生状況の評価結果が良好であったことによるものであり、圧着状態が良好でエア残りの発生が抑制されたのは、図8Aに示すように従来技術では押圧力が掛かりにくかった凹部においてもほぼ全域に亘って密着に必要な押圧力が掛かったためである。
【0068】
一方、押圧手段がブラダーのみの比較例1では、図8Bに示すように凹部に押圧力が掛かっていない部分が存在し、エア残りが発生したことにより、タイヤスクラップ率が1.2%となっている。そして、押さえローラのみの比較例2では、ゴムシートに皺が生じて、タイヤスクラップ率が8%となっている
【0069】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 ゴム部材の製造装置
2 ブラダー
3 押さえローラ
4 搬送コンベア
5 ゴムシート供給装置
21、31 回転軸
32 ディスクローラ
33 スポンジローラ
a エア
GS ゴムシート(ビニアゴム)
SW 基材(サイドウォール)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B