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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
   H02P 23/04 20060101AFI20221115BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H02P23/04
A47L9/28 U
A47L9/28 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018183474
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020049092
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】益子 弘識
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-001039(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0247796(US,A1)
【文献】特開2015-000343(JP,A)
【文献】特開2018-094681(JP,A)
【文献】特開2011-201004(JP,A)
【文献】特開平02-102628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 23/04
A47L 9/28
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに着脱可能に取り付けられるバッテリパックと、
前記バッテリパックから供給される電力により駆動するモータと、
前記バッテリパックから前記モータへの供給電力の導通及び遮断を行う供給回路と、
前記供給回路のPWM制御を行うことで前記モータへの供給電力を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、第1制御を実行可能であり、前記第1制御では、前記バッテリパックの電圧値が第1電圧範囲にあるときに第1デューティ比で前記供給回路を導通させ、前記バッテリパックの電圧値が前記第1電圧範囲より低い第2電圧範囲にあるときに前記第1デューティ比よりも低い第2デューティ比で前記供給回路を導通させ
前記バッテリパックの電圧値が前記第1電圧範囲にあるときに前記第1デューティ比で前記供給回路を導通させた場合の前記モータの回転数範囲と、前記バッテリパックの電圧値が前記第2電圧範囲にあるときに前記第2デューティ比で前記供給回路を導通させた場合の前記モータの回転数範囲と、の間に、本電動作業機の共振周波数が存在する、電動作業機。
【請求項2】
前記バッテリパックから前記モータへの供給電力を切り替えるモード切替部を有し、
前記制御部は、
前記モード切替部が第1モードを選択すると、前記第1制御を実行し、
前記モード切替部が第2モードを選択すると、第2制御を実行し、前記第2制御では、前記バッテリパックの電圧値が前記第1電圧範囲及び前記第2電圧範囲のいずれにあっても、第3デューティ比で前記供給回路を導通させる、請求項1に記載の電動作業機。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1制御において、前記バッテリパックの電圧値が前記第1電圧範囲より高い第3電圧範囲にあるときに、前記バッテリパックの電圧値が低下するほど、前記供給回路を導通させるデューティ比を増加させる、請求項1又は2に記載の電動作業機。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1制御において、前記バッテリパックの電圧値が前記第3電圧範囲にあるときに前記モータの回転数が一定となるように前記供給回路を制御する、請求項に記載の電動作業機。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1制御において、前記バッテリパックの電圧値が前記第1電圧範囲にある場合でも、前記モータの回転数が前記共振周波数と一致する場合には前記第2デューティ比で前記供給回路を導通させる、請求項に記載の電動作業機。
【請求項6】
前記モータによって回転される集塵ファンを有する集塵機である、請求項1から5のいずれか一項に記載の電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着脱可能に取り付けられるバッテリパックの電力で動作する電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すような電動作業機においては、電動作業機の固有の共振周波数(固有振動数)と一致する回転数でモータが回転すると、モータのステータや本体ハウジング等が共振を起こし、騒音が発生する虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-208577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリ駆動の電動作業機においては、バッテリの容量が低下して出力電圧が低下するのに従ってモータへの印加電圧も低下し、モータの回転数が徐々に低下する。このため、電動作業機の共振周波数とモータ回転数が一致し共振した状態においてモータの駆動が継続してしまう虞があった。
【0005】
上記課題を鑑み本願発明は、電動作業機の固有の共振周波数とモータ回転数が一致した状態でのモータの駆動の継続を抑制することの可能な電動作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、電動作業機である。この電動作業機は、
ハウジングと、
前記ハウジングに着脱可能に取り付けられるバッテリパックと、
前記バッテリパックから供給される電力により駆動するモータと、
前記バッテリパックから前記モータへの供給電力の導通及び遮断を行う供給回路と、
前記供給回路のPWM制御を行うことで前記モータへの供給電力を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、第1制御を実行可能であり、前記第1制御では、前記バッテリパックの電圧値が第1電圧範囲にあるときに第1デューティ比で前記供給回路を導通させ、前記バッテリパックの電圧値が前記第1電圧範囲より低い第2電圧範囲にあるときに前記第1デューティ比よりも低い第2デューティ比で前記供給回路を導通させ
前記バッテリパックの電圧値が前記第1電圧範囲にあるときに前記第1デューティ比で前記供給回路を導通させた場合の前記モータの回転数範囲と、前記バッテリパックの電圧値が前記第2電圧範囲にあるときに前記第2デューティ比で前記供給回路を導通させた場合の前記モータの回転数範囲と、の間に、本電動作業機の共振周波数が存在する
【0008】
前記バッテリパックから前記モータへの供給電力を切り替えるモード切替部を有し、
前記制御部は、
前記モード切替部が第1モードを選択すると、前記第1制御を実行し、
前記モード切替部が第2モードを選択すると、第2制御を実行し、前記第2制御では、前記バッテリパックの電圧値が前記第1電圧範囲及び前記第2電圧範囲のいずれにあっても、第3デューティ比で前記供給回路を導通させてもよい。
【0009】
前記制御部は、前記第1制御において、前記バッテリパックの電圧値が前記第1電圧範囲より高い第3電圧範囲にあるときに、前記バッテリパックの電圧値が低下するほど、前記供給回路を導通させるデューティ比を増加させてもよい。
【0010】
前記制御部は、前記第1制御において、前記バッテリパックの電圧値が前記第3電圧範囲にあるときに前記モータの回転数が一定となるように前記供給回路を制御してもよい。
【0011】
前記制御部は、前記第1制御において、前記バッテリパックの電圧値が前記第1電圧範囲にある場合でも、前記モータの回転数が前記共振周波数と一致する場合には前記第2デューティ比で前記供給回路を導通させてもよい。
【0012】
前記電動作業機は、前記モータによって回転される集塵ファンを有する集塵機であってもよい。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電動作業機の固有の共振周波数とモータ回転数が一致した状態でのモータの駆動の継続を抑制することの可能な電動作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る集塵機1の右側断面図。
図2】集塵機1の平面図。
図3図1の操作パネル30の拡大図。
図4】集塵機1の概略ブロック図。
図5】集塵機1におけるモータ23の回転数と騒音値の関係の一例を示すグラフ。
図6】集塵機1のミドルモードにおける、バッテリパック40の出力端子における電圧値(電池電圧)に対する3相ブリッジ回路67へのPWM信号のデューティ比とモータ23の回転数の各関係の一例を示すグラフ。
図7】比較例の集塵機のミドルモードにおける、バッテリパック40の出力端子における電圧値(電池電圧)に対する3相ブリッジ回路67へのPWM信号のデューティ比とモータ23の回転数の各関係の一例を示すグラフ。
図8】集塵機1のハイモードにおける、バッテリパック40の出力端子における電圧値(電池電圧)に対する3相ブリッジ回路67へのPWM信号のデューティ比とモータ23の回転数の各関係の一例を示すグラフ。
図9】集塵機1の固有の共振周波数が図5及び図6の例と異なる場合のミドルモードにおける、バッテリパック40の出力端子における電圧値(電池電圧)に対する3相ブリッジ回路67へのPWM信号のデューティ比とモータ23の回転数の各関係の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0017】
図1及び図2により、集塵機1における互いに直交する前後、上下、左右方向を定義する。集塵機1は、電動作業機の一例であって、タンク部10と、本体としてのヘッド部20と、を備える。タンク部10及びヘッド部20は、相互に分離可能である。
【0018】
タンク部10は、上部が開放された底付の筒状で、水平断面が図2に示すように略四角形(図示の例では丸みを帯びた正方形ないし長方形)となっている。タンク部10は、前側の側面に吸込口11を有し、吸込口11に図示しないホースを着脱可能に接続できる。タンク部10内には、吸込口11から吸い込まれた空気が通過する際に塵埃(粉塵)を分離する(吸引した塵埃をろ過する)筒状のフィルタ装置15が設けられる。
【0019】
フィルタ部としてのフィルタ装置15は、ゴム等の環状の弾性体16と、外周面に細かい網目を有する布等で形成されるフィルタ17と、を含む。弾性体16の下部に、フィルタ17の上部が一周に渡って縫い付けられて一体化される。弾性体16は、タンク部10とヘッド部20とに挟持され、タンク部10とヘッド部20との間を気密に塞ぐ。フィルタ装置15は、軸が上下方向と略平行な略円錐台側面形状であって、集塵ファン25を囲む。
【0020】
空気はフィルタ17の外周面を通過することでフィルタ装置15内部のフィルタ内空間14に進入可能であるが、空気に含まれる塵埃はフィルタ17の網目を通過できず、フィルタ17の外周面でろ過され、フィルタ17の外周面上に付着するか下方へ落下する。タンク部10内の空間は、塵埃収容室13であり、塵埃収容室13のうちフィルタ装置15の外側の空間に、フィルタ装置15により分離された塵埃を収容する。
【0021】
ヘッド部20は、タンク部10の上部に、例えば図示しないクランプ機構によって着脱可能に固定される。ヘッド部20により、タンク部10の上部開口、すなわちタンク開口が閉塞される。ヘッド部20の上面には、集塵機1の持ち運び用のハンドル27が設けられる。ヘッド部20は、ヘッドハウジング21の内部に、モータ23と、モータ冷却用ファン24と、集塵ファン25と、を有する。タンク部10と、ヘッドハウジング21が、集塵機1のハウジング(外殻部)を構成する。
【0022】
モータ23は、その駆動軸が上下方向に延びるようにヘッド部20内に配設される。モータ23はここではブラシレスモータであり、モータ23の上部には、モータ23に駆動電流を供給するためのスイッチング素子を搭載したスイッチング素子基板26が上下方向と略垂直に設けられる。スイッチング素子基板26に搭載された複数のスイッチング素子は、図4の3相ブリッジ回路67を構成する。モータ冷却用ファン24と集塵ファン25は、モータ23の駆動軸に取り付けられ、モータ23によって回転駆動される。モータ冷却用ファン24は、モータ23の直下に位置する軸流ファンであり、下方に向かう気流を発生する。集塵ファン25は、モータ冷却用ファン24の下方に設けられた遠心ファンである。
【0023】
図2に示すように、ヘッド部20の前面には、集塵機1の動作を使用者が切り替えるための操作パネル30が設けられる。操作パネル30は、メイン電源スイッチ31と、強弱切替スイッチ32と、起動/待機スイッチ33と、電池残量表示スイッチ34と、電池残量表示部35と、を有する。メイン電源スイッチ31は、モータ23の電流経路に設けられた接点スイッチである。強弱切替スイッチ32は、後述のハイモードとミドルモードとを切り替えるためのスイッチである。ハイモードでは、ミドルモードと比較してモータ23の回転数が高い。ミドルモードよりもモータ23の回転数が低いローモードがあってもよい。
【0024】
起動/待機スイッチ33は、起動モードと待機モードを切り替えるスイッチである。メイン電源スイッチ31がオンのとき、起動モードであればモータ23が駆動し、待機モードであればモータ23は駆動しない。メイン電源スイッチ31がオフのときは、起動モードでも待機モードでもモータ23は駆動しない。起動モードにおいてメイン電源スイッチ31をオンからオフにすると、再びメイン電源スイッチ31をオンにしたときに直ちにモータ23が駆動する。待機モードの状態でメイン電源スイッチ31をオフにすると、再びメイン電源スイッチ31をオンにしても待機モードのままとなり、モータ23は駆動しない。図2に示すように、集塵機1は、着脱可能に装着した2つのバッテリパック40を電源とするコードレスタイプであり、電池残量表示スイッチ34を押すと、電池残量表示部35に各バッテリパック40の残量がLED等により複数段階で表示される。
【0025】
図1及び図2に示すように、ヘッド部20内には、モータ23を収容するモータケーシング29が設けられる。図2に示すように、モータケーシング29の左右両側には、それぞれ端子保持板56及び所定数の端子57が設けられる。モータケーシング29から見て左右一方の端子保持板56及び所定数の端子57が第1端子保持板及び第1端子であり、他方の端子保持板56及び所定数の端子57が第2端子保持板及び第2端子である。左右の端子保持板56は、互いに平行である。端子57は、バッテリパック40の端子との電気的接続用の端子であって、端子保持板56に保持される。バッテリパック40は、自身のレール部41と、ヘッド部20に設けられたレール受け部55と、の係合により、上方からスライド装着され、これにより集塵機1側の端子57とバッテリパック40の端子とが互いに接触して互いに電気的に接続される。バッテリパック40は、ラッチ操作部42を操作しながら上方に引き上げて取り外すことができる。
【0026】
バッテリパック40は、ヘッド部20に設けられたバッテリ収容室50に収容保持される。2つのバッテリパック40は、左右方向に並び、互いに前後及び上下方向位置が等しくかつ平行となるように装着される。バッテリ収容室50は、壁部51と蓋体52とによって外部と隔てられた空間である。蓋体52は、ヘッドハウジング21に揺動可能に支持され、バッテリ収容室50を開閉可能である。蓋体52は、係止部材としてのフック53によって閉鎖状態に係止可能である。
【0027】
バッテリ収容室50は、上下方向においてフィルタ装置15の上部開口(以下「フィルタ開口」とも表記)よりも下側に延在し、かつ、モータ23の駆動軸の径方向においてフィルタ開口内部に位置する。図2においてフィルタ装置15を示す二点鎖線は、弾性体16の上面の内縁、すなわちフィルタ開口の内縁を示す。本実施の形態では、バッテリ収容室50の内外を隔てる壁部51の外面及び内面が共に上下方向においてフィルタ開口よりも下側に延在する。図2に示すように、モータケーシング29から見て左右一方の端子保持板56及び所定数の端子57と、他方の端子保持板56及び所定数の端子57とは、第1方向としての左右方向に並び、第2方向としての前後方向においてモータケーシング29と少なくとも部分的に重なるように配置される。また、バッテリパック40の前後方向位置と、モータケーシング29の前後方向位置と、が互いに部分的に重なる。
【0028】
集塵機1においてモータ23を駆動すると、モータ冷却用ファン24及び集塵ファン25が回転駆動される。集塵ファン25の回転により、タンク部10内が負圧になり、吸込口11に吸込み力が発生する。すると、塵埃が空気と共に吸込口11からタンク部10内に吸い込まれる。その後、フィルタ17によって塵埃と空気は分離され、塵埃は塵埃収容室13のうちフィルタ17の外側の空間に溜められる。一方、空気は、フィルタ17の外周面を通過してフィルタ内空間14に入り、ヘッドハウジング21の一部を構成するファンカバー28の下面の図示しない開口部を通って集塵ファン25に下方から吸い込まれ、モータ23と隔てられた空間を抜けて外部に排気される。塵埃はフィルタ17の外周面で捕集されて塵埃収容室13内に溜められる。
【0029】
図4は、集塵機1の概略ブロック図である。図4では、図2に示す2つのバッテリパック40を、バッテリパック40A、40Bと区別して図示している。モータ23に駆動電流を供給するために供給回路としての3相ブリッジ回路(インバータ回路)67が設けられる。3相ブリッジ回路67は、3相ブリッジ接続されたFETやIGBT等のスイッチング素子を有する。ドライバ回路65は、制御部としての工具制御回路63の制御により、3相ブリッジ回路67の各スイッチング素子のゲート(制御端子)にPWM制御信号を印加する。工具制御回路63は、メイン電源スイッチ31がオンかつ起動/待機スイッチ33がオンになると、ドライバ回路65を介して3相ブリッジ回路67を制御し、強弱切替スイッチ32の操作に応じたモード(ハイモード又はミドルモード)でモータ23を駆動する。工具制御回路63は、電池残量表示スイッチ34がオンされると、バッテリパック40A及びバッテリパック40Bの残容量を電池残量表示部35に表示する。
【0030】
工具制御回路63の駆動電力は、並列接続されたバッテリパック40A及びバッテリパック40Bの各々から入力された電圧V1、V2から生成される。図示は省略したが、工具制御回路63は、レギュレータ及びマイコン(マイクロコントローラ)を含み、前記レギュレータが、入力された電圧V1、V2から前記マイコンの駆動電力を生成する。工具制御回路63内の、前記レギュレータよりもバッテリパック40A及びバッテリパック40B側、あるいは前記マイコン側には、前記マイコンへの電力供給を遮断する図示しないスイッチング回路が接続される。メイン電源スイッチ31がオンのときには、前記スイッチング回路がオンとなり、前記マイコンへの駆動電力が供給され前記マイコンが起動する。メイン電源スイッチ31がオフのときには、前記スイッチング回路がオフとなり、前記マイコンへの駆動電力は供給されない。メイン電源スイッチ31のオンオフに連動して前記スイッチング回路をオンオフする機構の図示は省略している。
【0031】
バッテリパック40A及びバッテリパック40Bは、それぞれ電池制御回路を含み、工具制御回路63との通信機能や、過放電、過電流、電池高温等の異常に対する保護機能を有する。バッテリパック40Aの出力電圧V1及びバッテリパック40Bの出力電圧V2は、電池切替スイッチ66によって選択されたいずれか一方が、3相ブリッジ回路67に供給される。電池切替スイッチ66は、工具制御回路63からの電池切替信号により、バッテリパック40A及びバッテリパック40Bのいずれに接続されるかが決められる。電池切替スイッチ66は、バッテリパック40A及びバッテリパック40Bの一方をモータ23に接続し、他方をモータ23から遮断する。工具制御回路63は、モータ23に接続している一方のバッテリパック(バッテリパック40A、40Bの一方)の電圧値が24Vまで低下すると、モータ23に接続するバッテリパックを他方のバッテリパック(バッテリパック40A、40Bの他方)に切り替えるように、電池切替スイッチ66を制御する。ヒューズF1、F2は、過電流保護用に、バッテリパック40Aと電池切替スイッチ66との間、及びバッテリパック40Bと電池切替スイッチ66との間にそれぞれ設けられる。
【0032】
図5は、集塵機1におけるモータ23の回転数と騒音値の関係の一例を示すグラフである。基本的には、モータ23の回転数が低いほど騒音値は低くなる。しかし、モータ23の回転数が集塵機1の固有の共振周波数(固有振動数)と一致する回転数付近では、モータ23のステータや本体ハウジング等が共振を起こし、騒音値が高くなる。図5の例では、ミドルモードの回転数の範囲である21,000-21,700rpm(第1共振周波数帯)と、15,500-16,100rpm(第2共振周波数帯)と、において、騒音値が高くなっている。
【0033】
図6は、集塵機1のミドルモードにおける、バッテリパック40の出力端子における電圧値(電池電圧)に対する3相ブリッジ回路67へのPWM信号のデューティ比とモータ23の回転数の各関係の一例を示すグラフである。図6において、横軸のバッテリパック40の電圧値は、モータ23に接続されている、すなわちモータ23に電力を供給しているバッテリパック40の電圧値である。図7図9についても同様である。尚、バッテリパック40の電圧値は、満充電時には40V程度であるが、バッテリパック40の残容量が低下するのに従って低下し、バッテリパック40が過放電となるときには23V程度となる。工具制御回路63は、ミドルモードにおいて第1制御を行う。工具制御回路63は、第1制御では、バッテリパック40の電圧値が第1電圧範囲としての30-35Vの範囲の場合と、バッテリパック40の電圧値が第2電圧範囲としての30V未満の範囲の場合と、バッテリパック40の電圧値が第3電圧範囲としての35Vを超える範囲の場合と、において、互いに異なるデューティ比で3相ブリッジ回路67を導通させる。以下、具体的に説明する。
【0034】
工具制御回路63は、バッテリパック40の電圧値が30-35Vの場合、デューティ比50%(第1デューティ比の例示)で3相ブリッジ回路67を導通させる定デューティ制御を行う。工具制御回路63は、バッテリパック40の電圧値が30V未満の場合、デューティ比25%(第2デューティ比の例示)で3相ブリッジ回路67を導通させる定デューティ制御を行う。すなわち、工具制御回路63は、バッテリパック40の電圧値が30Vを下回るとデューティ比を50%から25%まで低下させる。これにより、モータ23の回転数が15,500-16,100rpm(第2共振周波数帯)の範囲にある状態が継続することを抑制できる。工具制御回路63は、バッテリパック40の電圧値が30-35Vの場合でも、モータ23にかかる負荷の状況等によってモータ23の回転数が低下し15,500-16,100rpm(第2共振周波数帯)の範囲にある場合には、デューティ比25%で3相ブリッジ回路67を導通させてもよい。
【0035】
バッテリパック40の電圧値が30-35Vの場合、及び30Vを下回っている場合においては、定デューティ制御が行われるため、バッテリパック40の電圧値が低下するにつれてモータ23の回転数は徐々に低下する。なお、工具制御回路63は、モータ23に接続している一方のバッテリパック40の電圧値が30Vを下回る前に、他方のバッテリパック40をモータ23に接続するように電池切替スイッチ66を制御してもよい。この場合、デューティ比の低下によるモータ23の回転数の急激な落ち込みを避けることができる。
【0036】
工具制御回路63は、バッテリパック40の電圧値が35Vを超えている場合、バッテリパック40の電圧値が低下するにつれて3相ブリッジ回路67を導通させるデューティ比を徐々に高め、モータ23の回転数が20,700rpmで一定となるように定回転数制御を行う。具体的には、バッテリパック40の電圧値が満充電に対応する40Vのときはデューティ比を39%とし、バッテリパック40の電圧値が35Vになったときにデューティ比が50%になるように、バッテリパック40の電圧値が低下するにつれてデューティ比を緩やかに高めていく。これにより、モータ23の回転数が21,000-21,700rpm(第1共振周波数帯)の範囲にある状態が継続することを抑制できる。
【0037】
図7は、比較例の集塵機のミドルモードにおける、バッテリパック40の出力端子における電圧値(電池電圧)に対する3相ブリッジ回路67へのPWM信号のデューティ比とモータ23の回転数の各関係の一例を示すグラフである。この比較例では、工具制御回路63は、バッテリパック40の電圧値に関わらず、ミドルモードにおいて、デューティ比50%で3相ブリッジ回路67を導通させる定デューティ制御を行う。このため、バッテリパック40の電圧値が35-40Vの範囲の大部分において、モータ23の回転数が21,000-21,700rpm(第1共振周波数帯)の範囲にある。また、バッテリパック40の電圧値が30Vを下回って低下する過程で、モータ23の回転数が15,500-16,100rpm(第2共振周波数帯)の範囲に入る。したがって、モータ23の回転数が21,000-21,700rpm(第1共振周波数帯)の範囲あるいは15,500-16,100rpm(第2共振周波数帯)の範囲にある状態が継続することになり、騒音値が高くなる。図6で説明したミドルモードにおける第1制御では、比較例における騒音値が高くなる問題を好適に解決できる。
【0038】
図8は、集塵機1のハイモードにおける、バッテリパック40の出力端子における電圧値(電池電圧)に対する3相ブリッジ回路67へのPWM信号のデューティ比とモータ23の回転数の各関係の一例を示すグラフである。工具制御回路63は、ハイモードにおいて第2制御を行う。工具制御回路63は、第2制御では、バッテリパック40の電圧値が34Vを超えている場合、バッテリパック40の電圧値が低下するにつれて3相ブリッジ回路67を導通させるデューティ比を徐々に高め、モータ23の回転数が26,000rpmで一定となるように定回転数制御を行う。具体的には、バッテリパック40の電圧値が満充電に対応する40Vのときはデューティ比を80%とし、バッテリパック40の電圧値が34Vになったときにデューティ比が100%になるように、バッテリパック40の電圧値が低下するにつれてデューティ比を緩やかに高めていく。これにより、モータ23の回転数が不要に高くなることを抑制して消費電力を抑えることができる。工具制御回路63は、バッテリパック40の電圧値が34V以下の場合、デューティ比100%(第3デューティ比の例示)で3相ブリッジ回路67を導通させる定デューティ制御を行う。
【0039】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0040】
(1) 工具制御回路63は、ミドルモードでは、バッテリパック40の電圧値が30-35Vの場合に3相ブリッジ回路67に印加するPWM信号のデューティ比を50%とし、バッテリパック40の電圧値が30V未満になるとデューティ比を25%に落とす。これにより、モータ23の回転数が15,500-16,100rpm(第2共振周波数帯)の範囲にある状態が継続することを抑制し、騒音を低減することができる。
【0041】
(2) 工具制御回路63は、ミドルモードでは、バッテリパック40の電圧値が35Vを超えている場合、バッテリパック40の電圧値が低下するにつれて3相ブリッジ回路67に印加するPWM信号のデューティ比を徐々に高め、モータ23の回転数が20,700rpmで一定となるように定回転数制御を行う。これにより、モータ23の回転数が21,000-21,700rpm(第1共振周波数帯)の範囲にある状態が継続することを抑制し、騒音を低減することができる。
【0042】
(3) 工具制御回路63は、ハイモードではミドルモードと異なる制御を行い、具体的には、バッテリパック40の電圧値が34Vを超えている場合、バッテリパック40の電圧値が低下するにつれて3相ブリッジ回路67に印加するPWM信号のデューティー比を徐々に高め、バッテリパック40の電圧値が34V以下の場合、3相ブリッジ回路67に印加するPWM信号のデューティー比を100%とする。これにより、ミドルモードにおける騒音を低減しながらも、モータ23の回転数が21,000-21,700rpm(第1共振周波数帯)及び15,500-16,100rpm(第2共振周波数帯)の範囲とならないハイモードにおいては、モータ23の回転数を充分高くでき、使用者の作業性を向上できる。
【0043】
(4) バッテリパック40及びバッテリ収容室50がフィルタ開口よりも下側に延在するため、バッテリパック40により集塵機1の重心が高くなること及び集塵機1のサイズが高さ方向に大きくなることを抑制でき、集塵機1の移動操作性の悪化を抑制できる。
【0044】
(5) バッテリパック40及びバッテリ収容室50がモータ23の駆動軸の径方向においてフィルタ開口内部に位置するため、バッテリパック40により集塵機1のサイズが前記径方向に大きくなることを抑制でき、集塵機1の移動操作性の悪化を抑制できる。
【0045】
(6) 端子保持板56及び所定数の端子57の組が、左右方向に並び、左右方向においてモータケーシング29の両側に分かれて配置され、前後方向においてモータケーシング29と少なくとも部分的に重なるように配置されるため、端子保持板56及び所定数の端子57の組が前後方向においてモータケーシング29と重ならない場合と比較して、集塵機1の前後方向のサイズアップを抑制でき、また左右のバッテリパック40の左右方向の距離が広がりラッチ操作部42への指入れがしやすい。
【0046】
(7) 集塵機1は、電源として2つのッテリパック40を装着可能なため、装着可能なバッテリパックが1つのみである場合と比較して、装着するバッテリパックの容量が同じであれば、長時間(約2倍の時間)の作業が可能となる。ここで、1つのバッテリパックで大容量を確保する場合、内蔵する二次電池セルの数を増やすことになるが、そうするとバッテリパックが大型かつ高重量となって使い勝手が悪くなる。これに対し集塵機1では、2つのバッテリパックを用いることで、電動工具等に使用されるバッテリパックをそのまま用いても長時間の作業が可能となる。
【0047】
図9は、集塵機1の固有の共振周波数が図5及び図6の例と異なる場合のミドルモードにおける、バッテリパック40の出力端子における電圧値(電池電圧)に対する3相ブリッジ回路67へのPWM信号のデューティ比とモータ23の回転数の各関係の一例を示すグラフである。図9の例では、集塵機1の共振周波数帯は、18,000-18,700rpm(第3共振周波数帯)である。工具制御回路63は、バッテリパック40の電圧値が33-40Vの場合、デューティ比50%で3相ブリッジ回路67を導通させる定デューティ制御を行う。工具制御回路63は、バッテリパック40の電圧値が33V未満の場合、デューティ比25%で3相ブリッジ回路67を導通させる定デューティ制御を行う。すなわち、工具制御回路63は、バッテリパック40の電圧値が33Vを下回るとデューティ比を50%から25%まで低下させる。これにより、モータ23の回転数が18,000-18,700rpm(第3共振周波数帯)の範囲にある状態が継続することを抑制できる。
【0048】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0049】
実施の形態で示したバッテリパック40の電圧値、モータ23の回転数、集塵機1の固有の共振周波数、3相ブリッジ回路67に印加するPWM信号のデューティ比などの具体的数値は一例であり、何ら限定されるものではない。工具制御回路63は、ハイモードにおいて、バッテリパック40の電圧値に関わらず常にデューティ比を100%(最大)としてもよい。本発明の電動作業機は、集塵機以外の他の種類のものであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 集塵機(電動作業機)、
10 タンク部、11 吸込口(ホース取付口)、13 塵埃収容室、14 フィルタ内空間、15 フィルタ装置、16 弾性体、17 フィルタ、
20 ヘッド部(本体)、21 ヘッドハウジング、23 モータ(ブラシレスモータ)、24 モータ冷却用ファン、25 集塵ファン、26 スイッチング素子基板、27 ハンドル、28 ファンカバー、29 モータケーシング、
30 操作パネル、31 メイン電源スイッチ、32 強弱切替スイッチ(タクタイルスイッチ)、33 起動/待機スイッチ、34 電池残量表示スイッチ、35 電池残量表示部、
40 バッテリパック、41 レール部、42 ラッチ操作部、
50 バッテリ収容室、51 壁部、52 蓋体、53 フック、55 レール受け部、56 端子保持板、57 端子、63 工具制御回路、65 ドライバ回路、66 電池切替スイッチ、67 3相ブリッジ回路、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9