(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】光走査装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/29 20060101AFI20221115BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
G02F1/29
G01S7/481 A
(21)【出願番号】P 2018184036
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】西野 利晴
(72)【発明者】
【氏名】古山 将樹
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-133887(JP,A)
【文献】特開平06-051221(JP,A)
【文献】特開2014-153375(JP,A)
【文献】特開平01-116513(JP,A)
【文献】特開2005-024679(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154910(WO,A1)
【文献】特開2018-189521(JP,A)
【文献】米国特許第04564853(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104536133(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00- 1/125
G02F 1/21- 7/00
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G02B 5/00- 5/136
G02B 6/35
G02B 26/00-26/12
G02F 1/13
G02F 1/137-1/141
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発光する発光素子を備えた光源と、
前記光源から出射されたレーザ光の進行方向に配置され、入射したレーザ光を第1方向と略平行な方向に偏向して出射可能な偏向装置と、
前記偏向装置から出射されたレーザ光を、前記偏向装置の出射角よりも大きな角度で反射する第1光学部材と、
前記第1方向と略平行な方向における反射角が前記第1光学部材での反射角であって、前記第1方向と異なる第2方向と略平行な方向において所定の反射角となるように、前記第1光学部材にて反射されたレーザ光を反射する第2光学部材と、
を具備
し、
前記第2光学部材は、前記第1方向に積み重ねられた複数の平面反射板を備え、
複数の前記平面反射板それぞれは、前記第1方向と略平行な方向を軸として回転した位置に配置され、
複数の前記平面反射板の回転角は、前記第1方向において、所定の周期で最小値から最大値まで変化する光走査装置。
【請求項2】
前記第1光学部材は、双曲面形状の反射面を備えている、請求項1記載の光走査装置。
【請求項3】
前記第1方向をzとし、前記第1方向および前記第2方向と略直交する方向をxとしたときに、前記反射面の形状はx=az
2である
請求項2記載の光走査装置。
【請求項4】
前記第2方向と略平行な方向におけるレーザ光の反射角は前記回転角の2倍である、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記第1方向をzとし、前記第1方向および前記第2方向と略直交する方向をxとし、前記回転角の最大値をγ
MAXとし、前記回転角が変化する周期のピッチをpとし、前記第2光学部材の前記回転角をγとしたとき、
γ=γ
MAX[-1+(2/π)・cos-1{cos(2πz/p)}]である、
請求項4記載の光走査装置。
【請求項6】
前記偏向装置は、液晶素子を備える
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項7】
レーザ光が偏向されずに前記偏向装置を透過したときに、レーザ光が前記第1光学部材に入射する位置と、前記第1光学部材の前記反射面がレーザ光の進行方向に対して垂直となる位置とが異なるように、前記光源、前記偏向装置、および、前記第1光学部材が配置されている、
請求項2又は請求項3記載の光走査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置に関し、レーザ光を走査して対象物に照射する光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光走査装置は、プロジェクタ、光通信の切替器、レーザ加工装置、センサなどに用いることが可能である。光走査装置の一例として、LIDAR(Light Detection and Ranging)と呼ばれる距離測定装置が知られている。LIDARは、光学的に周囲の物体との距離を測定するセンサである。LIDARは、対象物にパルス状のレーザ光を照射し、対象物で反射されたレーザ光が戻るまでの往復時間から距離を計測する。最近では、LIDARは、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driving Assistant System)や自動運転に使われている。
【0003】
LIDARには、例えば、同軸光学系方式、分離光学系方式、及びCCD/CMOSイメージセンサ方式などがある。
同軸光学系方式は、例えばポリゴンミラーや、MEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーを用いて光を上下左右方向に光を走査させる。
【0004】
分離光学系方式は、電気的に位相を変えることにより、光の出射角を変える方式が提案されている。この構成は、可動部がなく、同軸光学系方式と比較してより安価に製造できる可能性がある。
光走査装置は、周囲の様々な物体を走査可能であることが望ましく、広い範囲にレーザ光を走査可能であることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、広範囲に光を走査可能である光走査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による光走査装置は、レーザ光を発光する発光素子を備えた光源と、前記光源から出射されたレーザ光の進行方向に配置され、入射したレーザ光を第1方向と略平行な方向に偏向して出射可能な偏向装置と、前記偏向装置から出射されたレーザ光を、前記偏向装置の出射角よりも大きな角度で反射する第1光学部材と、記第1方向と略平行な方向における反射角が前記第1光学部材での反射角であって、前記第1方向と異なる第2方向と略平行な方向において所定の反射角となるように、前記第1光学部材にて反射されたレーザ光を反射する第2光学部材と、を具備し、前記第2光学部材は、前記第1方向に積み重ねられた複数の平面反射板を備え、複数の前記平面反射板それぞれは、前記第1方向と略平行な方向を軸として回転した位置に配置され、複数の前記平面反射板の回転角は、前記第1方向において、所定の周期で最小値から最大値まで変化する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、広範囲に光を走査可能な光走査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る光走査装置の一構成例を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る光走査装置の一構成例を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の光走査装置の偏向装置(オフ状態)の構成を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の光走査装置の偏向装置(オン状態)の構成を概略的に示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の光走査装置における第1光学部材の反射ミラーの形状の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の光走査装置における偏向装置と第1光学部材との位置関係の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の光走査装置における第1光学部材の反射ミラーへの光の入射角と出射角との関係の一例を示した図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の光走査装置における第1光学部材の反射ミラーへの光の入射角と出射角との関係の一例を示した図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の光走査装置における第2光学部材の一構成例を概略的に示す図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態の光走査装置における第2光学部材の一部(1/2ピッチ)を概略的に示す図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態の光走査装置から出射される光が対象物を走査する動きを概略的に示す図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態の光走査装置の第1光学部材と偏向装置との位置関係の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0011】
[第1実施形態]
図1および
図2は、本発明の第1実施形態に係る光走査装置の一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の光走査装置10は、例えばレーザ光を用いて照射方向にある対象物の所定範囲を走査する。
【0012】
光走査装置10は、光源駆動部20からの駆動信号と、偏向装置駆動部30からの駆動信号により動作を制御される。光源駆動部20と偏向装置駆動部30とは、光走査装置10に含まれていても構わない。
【0013】
図1には、光源12からレーザ光が出射する方向(X方向)と、偏向装置14から出射されるレーザ光の方向(X方向からZ方向に向けて出射角θoだけ回転した方向)とを通る平面(X-Z平面)に対して、垂直な方向(Y方向)から光走査装置10を見たときの、光走査装置10の各構成の配置例を概略的に示している。
【0014】
図2には、光源12からレーザ光が出射する方向(X方向)と、X方向およびZ方向(第1方向)と略直交するY方向(第2方向)とを通る平面(X-Y平面)に対して、垂直な方向(Z方向)から光走査装置10を見たときの、光走査装置10の各構成の配置例を概略的に示している。
【0015】
光走査装置10は、光源12と、偏向装置14と、第1光学部材16と、第2光学部材18と、を備えている。
光源12は、光源駆動部20から出力された駆動信号により、例えばレーザ光を発光する発光素子(図示せず)を備える。発光素子は、偏向装置14に向けて、レーザ光を発光する。発光素子は、レーザダイオードなどで構成される。レーザ光としては、例えば、赤外線レーザ光(例えば波長λ=905nm)が用いられる。また、発光素子は、所定の周波数を有するパルス信号としてレーザ光(すなわち、パルス状のレーザ光)を発生することが可能である。
【0016】
光源駆動部20は、光源12の発光素子の動作を制御する。光源駆動部20は、レーザ光に含まれるパルスのタイミングを制御する。パルスのタイミングには、パルス信号の周期、パルス信号の周波数、及びパルス幅が含まれる。
【0017】
偏向装置14は、光源12から出射されたレーザ光の進行方向に配置され、光源12から出射されたレーザ光を受け、このレーザ光を透過する。また、偏向装置14は、偏向装置駆動部30から出力された駆動信号により、光源12から出射されたレーザ光の出射角θoを制御する。
【0018】
なお、本実施形態では、偏向装置14は、X方向から入射したレーザ光を出射角θoで一方向(Z方向と略平行な方向)に偏向させるものであればよく、X方向に対して上下方向および左右方向に偏向させる必要はない。換言すると、偏向装置14は入射したレーザ光をZ方向に走査することができる。偏向装置14は、X方向から入射したレーザ光の進行方向がZ方向側へ出射角θoだけ回転するように駆動される。
【0019】
偏向装置14は、屈折率が変化する様々な光学素子備えている。偏向装置14は、熱光学素子、電気光学素子、電界吸収型光学素子、自由キャリア吸収型光学素子、又は磁気光学素子などを用いることが可能である。偏向装置14は、例えば、MEMS、LCOS(Liquid crystal on silicon)、ポリゴンミラー、液晶素子などの光学素子を少なくとも1つ備えている。
【0020】
本実施形態では、偏向装置14は、例えば液晶素子から構成される。偏向装置14は、対向して配置された一対の基板と、一対の基板間に挟持された液晶層とを備えている。一方の基板には、偏光領域前面に複数の領域の各々において、光の位相を制御することが可能である。
【0021】
図3は、第1実施形態の光走査装置の偏向装置(オフ状態)の構成を概略的に示す図である。
図4は、第1実施形態の光走査装置の偏向装置(オン状態)の構成を概略的に示す図である。
【0022】
偏向装置14は、液晶パネルを備えている。液晶パネルは、対向配置された基板21、22と、基板21、22間に挟持された液晶層23とを備える。基板21、22の各々は、透明基板から構成され、例えば、ガラス基板から構成される。基板21は、光源12に対向配置され、光源12からの赤外線レーザは、基板21側から液晶層23に入射する。なお、光源12側に基板22を配置してもよい。
【0023】
液晶層23は、基板21、22間を貼り合わせるシール材(図示せず)によって囲まれた領域に封入された液晶材料により構成される。シール材は、例えば、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、又は紫外線・熱併用型硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいて基板21又は基板22に塗布された後、紫外線照射、又は加熱等により硬化させられる。
【0024】
液晶材料は、基板21、22間に印加された電界に応じて液晶分子の配向が操作されて光学特性が変化する。液晶モードとしては、例えば、ポジ型(P型)のネマティック液晶を用いたホモジニアスモードが用いられる。
【0025】
すなわち、ホモジニアスモードでは、電界を印加しないとき(オフ状態)には、
図3に示すように、基板面に対して概略水平方向に液晶分子を配向させる。液晶の配向は、液晶層23を挟むように設けられた配向膜(図示せず)によって制御される。ホモジニアスモードの液晶分子配列は、電界を印加しない時に液晶分子の長軸(ダイレクタ)が概略水平方向に配向し、電界を印加したとき(オン状態)に、
図4に示すように液晶分子のダイレクタが垂直方向に向かって傾く。
【0026】
なお、液晶モードとして、ネガ型(N型)のネマティック液晶を用いた垂直配向(VA:Vertical Alignment)モードを用いてもよい。すなわち、VAモードでは、電界を印加しない時には基板面に対して概略垂直方向に液晶分子を配向させる。VAモードの液晶分子配列は、電界を印加しない時に液晶分子の長軸(ダイレクタ)が概略垂直方向に配向し、電界を印加した時に液晶分子のダイレクタが水平方向に向かって傾く。
【0027】
基板21の液晶層23側には、マトリクス状に配置された複数のセル電極25を備える。任意の数のセル電極群を単位電極と呼称する。単位電極のサイズは、これを構成するセル電極の数を変更することで変えることができる。単位電極は、1つ又はマトリクス状に配置された複数のセル電極を備える。セル電極25は、透明電極から構成され、例えばITO(インジウム錫酸化物)が用いられる。
【0028】
複数の単位電極は、互いに電気的に分離されており、また、複数のセル電極25は、互いに電気的に分離されている。すなわち、各セル電極25に対して個別に電圧制御が可能であり、また、各単位電極に対して個別に電圧制御が可能である。
【0029】
基板22の液晶層23側には、1つの共通電極26が設けられる。共通電極26は、液晶パネルの液晶層23が設けられる領域全体に平面状に形成される。共通電極26は、透明電極から構成され、例えばITOが用いられる。
【0030】
なお、液晶パネルとして、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)方式を用いた透過型液晶パネル(透過型LCOS)を用いてもよい。透過型LCOSを用いることで、電極を微細加工することが可能となり、より小型の液晶パネルを実現できる。透過型LCOSでは、シリコン基板(又は透明基板上に形成されたシリコン層)が用いられる。シリコン基板は、バンドギャップとの関係で、特定の波長以上の波長を有する光(赤外線を含む)を透過するため、LCOSを透過型液晶パネルとして使用することができる。LCOSを使用することにより、セル電極がより小さい液晶パネルとすることができるため、さらに小型化することが可能となる。また、液晶分子の移動度が高いため、レーザを高速で走査することが可能となる。
【0031】
偏向装置駆動部30は、偏向装置14の液晶表示パネルの駆動信号を出力する。偏向装置駆動部30は、共通電極26と複数のセル電極25のそれぞれとに電圧を印加し、液晶層23の液晶分子の配向状態を制御する。
【0032】
まず、オフ状態における液晶パネルの動作を説明する。オフ状態では、液晶層23に電界が印加されず、液晶層23の全領域において、液晶分子は、基板に対して水平方向に配向している。この場合、液晶層23に屈折率の勾配は生じていない。よって、光源12からの赤外線レーザは、液晶パネルに垂直に入射し、そのまま屈折せずに液晶パネルから出射する。
【0033】
次に、液晶パネルのオン状態における動作を説明する。以下では、X軸方向からZ軸側へ向けてレーザ光の進行方向が回転するように走査する動作を例に挙げて説明する。オン状態において、偏向装置駆動部30より、セル電極25及び共通電極26に所定の電圧が印加される。
【0034】
例えば
図4に示すように、液晶層23では、印加電圧が高い(電界が高い)領域では、液晶分子が概略垂直方向に配向し、印加電圧が低い(電界が低い)領域では、液晶分子が概略水平方向に配向し、これらの中間の領域では、印加電圧の大きさに応じて水平方向に対して斜め方向に配向する。これにより、長さW内で赤外線レーザの進行方向に対し垂直の方向の屈折率に勾配が生じる。光源12からの赤外線レーザが液晶パネルに対して概略垂直方向に入射すると、屈折が起こり、出射角θoで液晶パネルから赤外線レーザが出射する。
【0035】
第1光学部材16は、偏向装置14から出射したレーザ光を所定の方向に反射する反射ミラー(θ走査反射ミラー)である。
【0036】
図5は、第1実施形態の光走査装置における第1光学部材の反射ミラーの形状の一例を説明するための図である。
図6は、第1実施形態の光走査装置における偏向装置と第1光学部材との位置関係の一例を説明するための図である。
ここでは、例えば、偏向装置14がA(-L
A、0、0)に配置され、そこからX軸に対して出射角θoの傾きでの正の方向にレーザ光が出射されたとする。
【0037】
第1光学部材16の反射ミラーの形状は、例えば下記(1式)にて表すことができる。
x=az2 (1式)
ここで、aは係数であり、Y方向(奥行方向)における幅や形状は、実装上の要求により決定されるものである。
【0038】
この第1光学部材16の反射ミラー形状を採用したときには、レーザ光の反射角βは、例えば下記(2式)にて表すことができる。
β=π-θo-2α (2式)
【0039】
上記(2式)においてαは、下記(3式)にて表される値である。
α=tan-1[1/{2(a・xB)1/2}] (3式)
上記(3式)において、xBはレーザ光と第1光学部材16の反射ミラーとが交わる点のX座標であって、下記(4式)にて表される。
【0040】
xB=[1-2aLA・tan2θo-(1-4aLA・tan2θo)1/2]
/(2a・tan2θo) (4式)
上述のように、偏向装置14は、レーザ光のビームをXZ平面内で出射角θo偏向させることができる。偏向装置14の出射角θoが例えば略2°~3°であり、第1光学部材16の反射ミラーで反射すると、第1光学部材16での反射光はX方向と略平行な方向に対し角度β(>出射角θo)で第1光学部材16にて反射される。すなわち、第1光学部材16は、偏向装置14の出射角θoよりも大きな角度βでレーザ光をZ方向と略平行な方向に反射することができる。
【0041】
図7および
図8は、第1実施形態の光走査装置における第1光学部材の反射ミラーへの光の入射角と出射角との関係の一例を示した図である。
【0042】
たとえば、LA=25mmであり、a=0.2のとき、第1光学部材16へのレーザ光の入射角θoが2°であったとき、第1光学部材16のレーザ光の出射角βは入射角θoに対して19.9°に拡大される。また、第1光学部材16におけるレーザ光の入射角θoに対する出射角βの拡大率(出射角β/入射角θo)は、偏向装置14とθ第1光学部材16との間隔LAが大きいほど、また第1光学部材16の反射ミラーの形状を表すaの値が大きい程大きくなる。
【0043】
第1光学部材16から出射されたレーザ光のビームは、第2光学部材18へ入射する。
第2光学部材18は、第1光学部材16から入射したレーザ光を所定の方向に反射する反射ミラー(φ走査反射ミラー)である。
【0044】
図9は、第1実施形態の光走査装置における第2光学部材の一構成例を概略的に示す図である。
図10は、第1実施形態の光走査装置における第2光学部材の一部(1/2ピッチ)を概略的に示す図である。
図11は、
図10に示す第2光学部材の一部をZ方向からみたときの図である。
図10では、一例として略直方体形状の平面反射板18Aが複数積み重ねられた第2光学部材18の一部(1/2ピッチ)を示している。
【0045】
第2光学部材18の反射ミラーは、平面反射板18Aが縦方向(Z方向)に連続的に、ピッチpで積み重なった螺旋形状である。積み重ねられた複数の平面反射板18Aそれぞれは、Z方向と略平行な方向を軸として回転角γで回転した位置となっている。平面反射板18Aの回転角γはXY平面内で±γMAXの範囲において変化するものであり、例えば1/2ピッチに配置された複数の平面反射板18Aの回転角は、-γMAX(最小値)からγMAX(最大値)まで所定の間隔(2γMAX/平面反射板の数)で順次変化するものである。
【0046】
第2光学部材18は、例えば
図9に示すように、複数の平面反射板18AそれぞれのZ方向の幅を小さくすることにより、反射ミラーの表面が滑らかに変化するように構成されている。
【0047】
第2光学部材18の反射ミラーの形状は、例えば下記(5式)乃至(7式)により表すことが可能である。
x=v・cosγ (5式)
y=v・sinγ (6式)
γ=γMAX[‐1+(2/π)・cos-1{cos(2πz/p)}] (7式)
なお、上記(5式)および(6式)において、|v|<v0である。v0は実装で決まる定数である。
【0048】
xy平面内で微小なミラー片(平面反射板18A)が、Y軸と並行な方向に対して回転角γの傾きを持つとき、Y軸(x=0)の負の方向からきたレーザ光のビームは、φの方向に反射される。このとき、φは下記(8式)にて表すことができる。
φ=2γ (8式)
【0049】
すなわち、第2光学部材18では、Z方向と略平行な方向におけるレーザ光の反射角が第1光学部材での反射角と等しく、Y方向と略平行な方向におけるレーザ光の反射角は、レーザ光が入射した平面反射板18Aの回転角γの2倍となる。
したがって、レーザ光のビームが第2光学部材18に入射するときのZ軸方向の座標位置(第2光学部材18の位置座標は例えばy=0であるとする)により入射角が変化し、反射光の進行方向(反射角)も変化する。
【0050】
なお、本実施形態では、第1光学部材16から出射されたレーザ光のビームは、第2光学部材18の複数の平面反射板18AのZ軸方向と略平行な回転軸の位置にて、第2光学部材18に入射するように、光源12、第1光学部材16、および第2光学部材18の位置が調整されているものとするが、第1光学部材16と第2光学部材18との配置位置がこれに限定されるものではない。
【0051】
図12は、第1実施形態の光走査装置から出射される光が対象物を走査する動きを概略的に示す図である。
偏向装置14を出射したレーザ光のビーム(XZ平面においてθo偏向)が、第1光学部材(θ走査反射ミラー)16と第2光学部材(φ走査反射ミラー)18とで反射した結果、x=L
AのYZ平面と平行な面上でのレーザ走査の動きの一例を示している。
【0052】
図11によれば、偏向装置14から出射したレーザ光は、1次元の偏向変化(1次元(Z方向)で偏向された光)であったが、第1光学部材16を介して第2光学部材18を出射したレーザ光は2次元の偏向変化(2次元(Y方向とZ方向)で偏向された光)となっている。また、レーザ光による走査範囲は、偏向装置14から出射されたときよりも広い範囲となっている。
【0053】
上記のように、本実施形態の光走査装置によれば、広範囲に光を走査可能である光走査装置を提供することができる。
【0054】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の光走査装置について図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明において、上述の第1実施形態の光走査装置と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
図13は、第2実施形態の光走査装置の第1光学部材と偏向装置との位置関係の一例を概略的に示す図である。
本実施形態の光走査装置10は、第1光学部材16と偏向装置14との位置関係が上述の第1実施形態と異なっている。
【0056】
例えば、
図6に示す例では、例えば座標(0,y,0)にて、第1光学部材16の反射面が、レーザ光の進む方向(X方向)に対して垂直となる。このため、光源12から出射されたレーザ光が座標(0,y,0)にて第1光学部材16に入射すると、レーザ光は第2光学部材18の方向に反射されず、光源12側へ戻ってしまう。
【0057】
そこで、本実施形態では、第1光学部材16の配置位置をZ軸方向の負側へずらすことにより、偏向装置14でレーザ光が屈折されないときでも、第1光学部材16にてレーザ光が光源12側へ反射されることを回避している。
【0058】
図13に示す例では、第1光学部材16をZ軸方向に-Aだけずらしたときの光源12、偏向装置14、第1光学部材16および第2光学部材18の配置位置を概略的に示している。すなわち、レーザ光が偏向されずに偏向装置14を透過したときに、レーザ光が第1光学部材16に入射する位置と、第1光学部材16の反射面がレーザ光の進行方向に対して垂直となる位置とが異なるように、光源12、偏向装置14、および、第1光学部材16が配置されている。
【0059】
この場合、
図6と同様にレーザ光がX軸方向に沿って出射されたときに、第1光学部材16に入射する座標が(x
B,0,z
B-A)となる。また、偏向装置14にて屈折されず、X軸に沿ってレーザ光が第1光学部材16へ入射したときにも、レーザ光が第2光学部材18へ反射され、光源12へ反射されることがなくなる。
【0060】
上記の構成以外は、本実施形態の光走査装置は上述の第1実施形態と同様の構成である。すなわち、本実施形態によれば、広範囲に光を走査可能である光走査装置を提供することができる。
【0061】
本実施形態では、レーザ光が偏向されずに偏向装置14を透過したときに、レーザ光が第1光学部材16に入射する位置と、第1光学部材16の反射ミラーの反射面がレーザ光の進行方向に対して垂直となる位置とが異なるように、光源12、偏向装置14、および、第1光学部材16が配置されていればよい。したがって、
図13に示す構成以外であっても、例えば、光源12から発光されるレーザ光の進行方向が、X方向からずれるように配置されていてもよい。この場合であっても、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
なお、上記各実施形態では、距離測定装置が扱うレーザ光として赤外線レーザを用いている。しかし、これに限定されず、上記実施形態にかかる距離測定装置は、赤外線以外の光にも適用可能である。
【0063】
上記実施形態の光走査装置10は、車両に搭載される距離測定装置であってもよく、これに限定されず、レーザ光を走査する機能を有する様々な電子機器に適用できる。
【0064】
すなわち、光走査装置10は、レーザ光による走査範囲に存在する対象物によって反射されたレーザ光を検出する受光部をさらに備えていてもよい。受光部にて反射光を検出することにより、光走査装置10は、送信したレーザ光と受信したレーザ光とを用いて、対象物の検出、及び対象物までの距離を測定することが可能となる。受光部は、受光部に入射するレーザ光のうち、特定の方向から入射するレーザ光に制限して、レーザ光の検知動作を行う。
【0065】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、構成要素を変形して具体化することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、1つの実施形態に開示される複数の構成要素の適宜な組み合わせ、若しくは異なる実施形態に開示される構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を構成することができる。例えば、実施形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、これらの構成要素が削除された実施形態が発明として抽出されうる。
【符号の説明】
【0066】
10…光走査装置、12…光源、14…偏向装置、16…第1光学部材、18…第2光学部材、18A…平面反射板、20…光源駆動部、30…偏向装置駆動部。