(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】外壁不陸計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 3/20 20060101AFI20221115BHJP
E04B 2/72 20060101ALI20221115BHJP
E04B 2/56 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
G01B3/20 Z
E04B2/72 Z
E04B2/56 605Z
E04B2/56 641Z
E04B2/56 642Z
(21)【出願番号】P 2018188442
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】阿辺山 隆義
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-062207(JP,U)
【文献】特開平10-169052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/00-3/56
E04B 2/72
E04B 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設置される外壁パネルの鉛直方向の不陸を、2つの細長な計測体を互いに鉛直方向へスライド自在に係止してなる計測具によって前記建物の屋内側から計測する外壁不陸計測方法であって、
前記外壁パネルは、平板状の外壁材と、前記外壁材の屋内側の板面に鉛直方向へ沿って固定される長尺な取付材とを有しており、
前記計測具は、前記取付材に着脱自在に保持、固定され、
前記計測具の一方の計測体の下端部を、前記外壁パネルよりも屋内側に位置し、水平方向へ伸びる躯体の上面に当接し、
前記計測具の他方の計測体を鉛直方向へスライドさせて下端部を前記外壁パネルの下端に引掛け、
前記一方の計測体と、前記他方の計測体との鉛直方向の差を計測することを特徴とする外壁不陸計測方法。
【請求項2】
前記外壁パネルは、当該外壁パネルの設置高さを調整する調整具を、前記外壁パネルの屋内側に固定されることを特徴とする請求項1に記載の外壁不陸計測方法。
【請求項3】
前記調整具は、前記取付材の下端部に固定されることを特徴とする請求項2に記載の外壁不陸計測方法。
【請求項4】
前記計測具は、前記一方の計測体及び前記他方の計測体のそれぞれの屋内側の面に目盛を形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の外壁不陸計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物に設置される外壁パネルの鉛直方向の不陸を計測する外壁不陸計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の基礎上に設置される1階外壁パネルの鉛直方向の不陸を確認するために、建物の屋外側より基礎の上面から外壁パネルの下端までの距離をさしがねで計測することがある。この計測方法は、さしがねを基礎の上面や外壁パネルの下端に押し当てて数値を計測するもので、基準となる設計上の基礎の上面から外壁パネルの下端までの距離と、計測した実際の数値と、を比較した結果、外壁パネルの鉛直方向の不陸が認められた場合は、屋内側に設置された調整具で不陸を調整される。しかしこの計測方法では、その都度基礎の高さに目線を合わせてさしがねを押し当てなければならず、また、屋外側から数値を計測する作業員と、計測した数値に基づいて屋内側から外壁パネルの鉛直方向の不陸を調整する作業員との二人体制で行わなければならないため、時間や手間が掛かっていた。そして、上階に設置される外壁パネルの不陸を屋外側から確認する場合は、外壁足場が設置されている期間でなければ外壁パネルの不陸を確認することができないため、外壁足場を撤去した後に外壁パネルの不陸を確認する必要が生じても容易に確認作業を行うことができなかった。
【0003】
一方、高低差を計測する器具として、2つのさしがねを互いにスライド自在に固定し、それぞれの尺体の下端を高低差のある各々の段差面に押し当てて2つの尺体の差を計測するものが提案されている(例えば、特許文献1)。また、T字状の張り出し部を備えた外筒に、外筒よりも長い細長な内筒を挿入し、内筒の下端を水平面に当接するとともに張り出し部をスライドさせて基礎の上端に押し当て、外筒と内筒の差を読み取って基礎の高さを計測する測定方法が考案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-119308
【文献】特開2016-114531
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら特許文献1及び特許文献2に記載の発明は、いずれも外壁パネルの鉛直方向の不陸を計測するためのものではなく、外壁パネルにそのまま用いることができる計測具とはいえない。また、外壁パネルの不陸を効率的に計測できる方法はこれまでに考案されていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであって、建物に設置される外壁パネルの鉛直方向の不陸を容易に計測することができる外壁不陸計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の外壁委不陸測定方法は、 建物に設置される外壁パネルの鉛直方向の不陸を、2つの細長な計測体を互いに鉛直方向へスライド自在に係止してなる計測具によって前記建物の屋内側から計測する外壁不陸計測方法であって、
前記外壁パネルは、平板状の外壁材と、前記外壁材の屋内側の板面に鉛直方向へ沿って固定される長尺な取付材とを有しており、
前記計測具は、前記取付材に着脱自在に保持、固定され、
前記計測具の一方の計測体の下端部を、前記外壁パネルよりも屋内側に位置し、水平方向へ伸びる躯体の上面に当接し、
前記計測具の他方の計測体を鉛直方向へスライドさせて下端部を前記外壁パネルの下端に引掛け、
前記一方の計測体と、前記他方の計測体との鉛直方向の差を計測することを特徴としている。
【0008】
本発明の外壁不陸計測方法は、前記外壁パネルが、当該外壁パネルの設置高さを調整する調整具を、前記外壁パネルの屋内側に固定されることを特徴としている。
【0010】
本発明の外壁不陸計測方法は、前記計測具及び前記調整具が、前記取付材の下端部に固定されることを特徴としている。
【0011】
本発明の外壁不陸計測方法は、前記計測具は、前記一方の計測体及び前記他方の計測体のそれぞれの屋内側の面に目盛を形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の外壁不陸計測方法によると、計測具の一方の計測体の下端部を、外壁パネルよりも屋内側に位置し、水平方向へ伸びる躯体の上面に当接し、計測具の他方の計測体をスライドさせて下端部を外壁パネルの下端に引掛け、一方の計測体と、他方の計測体との鉛直方向の差を計測するので、計測具をスライドさせるだけで躯体から外壁パネルの下端までの距離を屋内側から容易に計測することができる。更に、計測具は、取付材に着脱自在に保持、固定されるので、他方の計測体をスライドさせた後に計測具を取付材に保持させれば、計測具から手を離しても計測具を落下させることなく容易に距離を計測することができ、利便性を向上させることができる。
【0013】
本発明の外壁不陸計測方法によると、外壁パネルは、外壁パネルの設置高さを調整する調整具を屋内側に固定されているので、計測具で躯体の上面から外壁パネルの下端までの距離を計測する計測作業と、外壁パネルの設置高さを修正する調整作業と、を屋内側から1人の作業員で行うことができ、施工性を向上させることができる。
【0015】
本発明の外壁不陸計測方法によると、計測具及び調整具は、外壁パネルの取付材の下端部に固定されるので、一方の計測体と他方の計測体との差を確認しながら調整具で外壁パネルの設置高さを調整することができ、外壁パネルの不陸の確認作業と外壁パネルの設置高さの調整作業とを同時に行って作業効率を向上させることができる。
【0016】
本発明の外壁不陸計測方法によると、計測具は、一方の計測体及び他方の計測体のそれぞれの屋内側の面に目盛を形成されているので、一方の計測体及び他方の計測体の鉛直方向の差を詳細に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】1階の外壁パネルの不陸を計測具で計測する状況を示す正面図。
【
図3】(a)は計測具を示す斜視図、(b)は第2計測体を第1計測体に対して上方へスライドさせた計測具を示す斜視図、(c)は第2計測体を第1計測体に対して下方へスライドさせた計測具を示す斜視図。
【
図4】計測具の第2計測体を第1計測体に対して上下方向へスライドさせた様子を第1平板部側から見た状態を示す斜視図。
【
図8】計測具の第1計測体を基礎の上面に当接する様子を示す垂直断面図。
【
図9】(a)は計測具の第1計測体を梁材の上面に当接する様子を示す垂直断面図、(b)は上階の外壁パネルの不陸を計測具で計測する様子を示す垂直断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、外壁不陸計測方法の最良実施形態について各図を参照しつつ説明する。外壁不陸計測方法は、建物に設置される外壁パネルの鉛直方向の不陸を計測具によって建物の屋内側から計測する方法であって、主に1階に設置される外壁パネルの不陸を確認する際に用いられるものであるが、2階以上の階に設置される外壁パネルの不陸を確認する場合にも用いることができる。第1実施形態では、基礎の上方に設置される1階外壁パネルの鉛直方向の不陸を確認する場合について説明する。なお、本願において「躯体」とは、建築基準法施行令第1条3号に規定する「構造耐力上主要な部分」を指し、各実施形態の基礎及び梁材も含むものとする。
【0019】
<第1実施形態>
外壁不陸計測方法は、
図1及び
図2に示すように、2つの細長な計測体11、12を係止してなる計測具1の一方の計測体である第1計測体11の下端部を、建物Aに設置される外壁パネル2よりも屋内側に位置する水平な基礎3の上面31に当接し、計測具1の他方の計測体である第2計測体12の下端部を、鉛直方向へスライドさせて外壁パネル2の下端21に引掛け、第1計測体11と、第2計測体12との差を計測するものである。
【0020】
図1及び
図4に示すように、計測具1は、鉛直方向へ延びる長尺な器具で、第1計測体11と、該第1計測体11の内部で長手方向、且つ、鉛直方向へスライド自在な第2計測体12と、を備えている。
図3及び
図4に示すように、第1計測体11は、薄板材からなる長尺な第1平板部11aと、該第1平板部11aよりも短い板材である第2平板部11bとを第1平板部11aの上方部分で相対向させ、両平板部11a、11bを互いに離隔して所定間隔の隙間11cを形成させた状態で、両平板部11a、11bのそれぞれの両側縁同士を第1側板11d及び第2側板11eによって連結固定している。また、第1平板部11aの下端部には、第2平板部11bと反対方向へ折曲した第1爪片11fを形成しており、第1平板部11aの第2平板部11bと反対側の板面には、長手方向へ沿って目盛11gが刻まれている。さらに、第2側板11eは、第2平板部11bの下端部の位置で両平板部11a、11b同士を連結しており、第2側板11eの上方には両平板部11a、11bの側方向へ開く細長いスリット11hが形成されている。
【0021】
図3及び
図4に示すように、第2計測体12は、第1計測体11の前記隙間11c内に長手方向へスライド自在に挿入される板状の挿入部12aと、該挿入部12aの上端にスリット11h側へ突出した板状の突出部12bと、を有する略L字形の部材である。また、挿入部12aの下端には、前記第1爪片11fと反対方向へ折曲した第2爪片12cが形成されており、挿入部12aの第1平板部11a側の板面には目盛12dが刻まれている。第2計測体12は、スリット11hに沿って第2側板11eの上端まで下方へスライド移動することができるとともに、第2平板部11bの下端まで上方へスライド移動することができる。
【0022】
図3(a)に示すように、計測具1は、突出部12bの下端と第2平板部11bの上端との高さを合せると、第1爪片11fの下端と第2爪片12cの下端とが同じ高さになるように形成されている。したがって、
図3(b)に示すように、第2計測体12を上方へスライドさせると、上方へ持ち上がった第2爪片12cの下端から第1爪片11fの下端までの第1距離H1分だけ挿入部12aが上方へ持ち上がり、この第1距離H1は、
図4(a)に示すように、第1平板部11a側から挿入部12aの目盛12dを読むことによって正確な数値を把握することができる。
【0023】
図3(c)に示すように、第2計測体12をスリット11hに挿入させて下方へスライドさせると、下方へ下がった第2爪片12cの下端から第1爪片11fの下端までの第2距離H2分だけ挿入部12aが下方へ下がることになる。つまり第2距離H2は、
図4(b)に示すように、第1平板部11aの目盛11gで第1平板部11aの上端から突出部12bの下端までの距離を読むことによって正確な数値を把握することができる。なお、本実施形態では第2計測体12を第1平板部11a及び第2平板部11bとの間にスライド自在に係止させているが、第2計測体12を第1計測体11にスライド自在に係止することができるのであれば他の構成としてもよい。
【0024】
計測具1の大きさは特に限定されないが、
図3(a)に示すように、突出部12bの下端と第2平板部11bの上端との高さを揃えた状態での全体の高さが、500mm~600mm程度とすることが望ましい。このような高さであれば、その都度基礎3近くまで目線を近づけることなく容易に目盛11g、12dを読みとることができ、作業負担を軽減することができる。また、計測具1の材質は特に限定されないが、厚さ1.5mm~2mm程度で形成されたステンレスなどの耐衝撃性と耐食性に優れた金属製とすることが望ましい。このような材質であれば、工事現場で他の器具や部材と一緒に保管したり、躯体や外壁パネル2など他の硬い部材に第1計測体11及び第2計測体12を当接したりしても簡単に破損、腐食することを防止できる。
【0025】
外壁パネル2は、
図5~
図7に示すように、建物の外壁面を形成する平板状の外壁材2aと、外壁材2aの屋内側の板面に鉛直方向へ沿って固定され、屋内側へ開くリップ溝形鋼で形成された長尺な取付材2bとを有しており、
図1に示すように、この取付材2bを鉛直方向へ延びる柱や間柱などの外壁支持材4に従来既知の金具41で固定することにより外壁パネル2を建物Aに設置することができる。また、
図6に示すように、取付材2bは、外壁材2aの水平方向の両端部に固定されており、その下端部には、外壁パネル2の設置高さを調整する調整具5と連結するための連結具6が設置されている。連結具6は、取付材2bのリップ裏面に当接する平板状の当接板6aと、外壁パネル2の下端21を受けるとともに調整具5と連結される側面視L字形の連結板6bと、から形成されている。
【0026】
調整具5は、
図6及び
図7に示すように、外壁パネル2の屋内側の下端部に固定される金具で、連結具6の連結板6bに固定される側面視L字形の固定部51と、固定部51を貫通し、先端を下方へ向けるボルト52と、ボルト52の先端に、ボルト52に対して回転不能に固定されるナット53と、から形成される。固定部51の水平部分の略中央には、ボルト52に貫通され、内周面に雌ねじを有するボルト孔5aが形成されており、また、ナット53の下端には座金5bが回転自在にかしめられている。なお、
図6に示すように、連結具6の当接板6a、連結板6b、及び固定部51は、低頭ボルトなどで一体的に連結される。
【0027】
図1及び
図7に示すように、調整具5は、外壁パネル2よりも屋内側に設置される受け金具7に設置される。受け金具7は、長手方向の両端部を外壁支持材4に支持され、外壁材21の面内方向且つ水平方向へ延びて上方に開く長尺なリップ溝形鋼であり、底面に調整具5のナット53を載置される。なお、1階に設置される受け金具7は、1階の床下換気を確保するため基礎3の上面31との間に隙間を形成している。また、
図5及び
図7に示すように、受け金具7の屋外側の側端と外壁材2aの屋内側の側端との間には隙間が形成されており、この隙間に計測具1を差し込むことができる。
【0028】
調整具5を使用して外壁パネル2の設置高さを調整する場合は、
図7に示すように、ボルト52をスパナなどの工具で回転させて調整を行う。先述したように、ナット53はボルト52に対して回動不能に固定されているので、ボルト52を回転させるとナット53も同時に回転し、また、ボルト52に螺着する固定部51と、連結具6を介して固定部51に連結される外壁パネル2が鉛直方向へ移動する。このとき、ナット53の下端には座金5bが回転自在にかしめられているので、ボルト52を回転させてもボルト52及びナット53が横滑りすることはなく、外壁パネル2の面内方向へのずれを生じさせずに安定して外壁パネル2の鉛直方向の高さを調整することができる。
【0029】
続いて、計測具1を使用して建物Aの基礎3に設置される外壁パネル2の鉛直方向の不陸を計測する外壁不陸計測方法について説明する。まず、
図1に示すように、外壁材2aの水平方向の両端部に設置された2つの取付材2b付近にそれぞれ計測具1を配置し、
図8に示すように、第1平板部11aを屋内側へ向けた状態で受け金具7と外壁材2aとの間の隙間に計測具1を差し込む。そして、第1計測体11の第1爪片11fの下端を基礎3の上面31に押し当て、続いて突出部12bを指で掴みながら、
図2に示すように、第2計測体12を上方へスライドさせて第2爪片12cの上端を外壁パネル2の下端21に引掛ける。このとき、
図1に示すように、突出部12bを挿入する溝8aを有するマグネット8を磁力によって取付材2bに固定し、突出部12bを先端から溝8aに挿入すれば、手を離しても第2計測体12が下方へスライドせず距離を計測することができる。
【0030】
図2に示すように、スライドした第2計測体12の挿入部12aは、第1距離H1分だけ上方に持ち上がることになる。基礎3の上面31から外壁パネル2の下端21までの第3距離H3は、第1距離H1と第2爪片12cの厚みtとの合計値であるので、屋内側から読み取った第1距離H1に第2爪片12cの厚みtを足し合わせれば第3距離H3を把握することができる。
【0031】
このようにして第3距離H3を把握した結果、外壁パネル2の鉛直方向の不陸が認められた場合、すなわち、基準となる設計上の値との差が認められた場合は、外壁パネル2の両端部の第1距離H1を目視確認しながら各取付材2bに連結する調整具5を先述した手順で操作し、各々の第1距離H1が同一の値になるよう外壁パネル2の鉛直方向の不陸を修正する。また、例えば基礎3の上面31が完全な水平ではなく若干傾斜している場合、外壁パネル2の両端部の第1距離H1をそれぞれ微調整することで基礎3の施工誤差を吸収することもできる。
【0032】
<第2実施形態>
次に、外壁不陸計測方法の第2実施形態について各図を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態と同様の構成は同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態の外壁不陸計測方法は、2階以上の階に設置される外壁パネル2の不陸を確認する場合に用いられ、
図9(b)に示すように、第1計測体11の第1爪片11fの下端を、外壁パネル2よりも屋内側に位置する水平な梁材9の上面91に当接し、第2計測体12の第2爪片12cを下方へスライドさせて上端を外壁パネル2の下端21に引掛け、第1計測体11と、第2計測体12との差を計測するものである。
【0033】
外壁パネル2の鉛直方向の割付は、基本的に建物Aの階高を考慮して割付されるため、上階に設置される外壁パネル2の下端21は、建物Aの階高を形成する梁材9の付近に位置することが多い。しかしながら外壁パネル2自体の寸法や建物A全体のバランスを考慮した結果、
図9に示すように、必ずしも外壁パネル2の下端21が梁材9の上面91の上方に位置するとは限らず、上面91の下方に位置する場合がある。また、上階では床下換気を確保する必要がないので、受け金具7は、躯体である梁材9との間に隙間を形成せずに梁材9の上面91に載置される。そして、梁材9と外壁材2aとの間には隙間が形成されており、この隙間に計測具1の第2計測体12を差し込むことができる。なお、外壁支持材4及び調整具5の構成や設置位置は第1実施形態と同様である。
【0034】
続いて、計測具1を使用して上階の外壁パネル2の不陸を計測する外壁不陸計測方法について説明する。なお、
図9に示すように、外壁パネル2の下端21は、梁材9の上面91よりも下方に位置している。まず、先述したように外壁パネル2の両端部に設置された2つの取付材2b付近にそれぞれ計測具1を配置し、
図9(a)に示すように、受け金具7と外壁材2aとの間に計測具1を差し込んで第1計測体11の第1爪片11fの下端を梁材9の上面91に押し当てる。続いて
図9(b)に示すように、第2計測体12を梁材9と外壁材2aとの間の隙間の上方に移動させてから下方へスライドさせて挿入部12a及び突出部12bをスリット11hに挿入し、第2爪片12cの上端を外壁パネル2の下端21に引掛ける。そして、突出部12bを先述のマグネット8で取付材2bに固定し、距離を計測する。
【0035】
スライドした第2計測体12の挿入部12aは、
図9(b)に示す第2距離H2分だけ下方へ下がることになる。梁材9の上面91から外壁パネル2の下端21までの第4距離H4は、第2距離H2から第2爪片12cの厚みtを差し引いた値であるので、屋内側から読み取った第2距離H2から第2爪片12cの厚みt分を引けば第4距離H4を把握することができる。
【0036】
このようにして第4距離H4を把握した結果、外壁パネル2の鉛直方向の不陸が認められた場合、すなわち、基準となる設計上の値との差が認められた場合は、先述した手順で外壁パネル2の鉛直方向の不陸を修正する。また、梁材9の上面91が完全な水平ではなく若干傾斜している場合は、外壁パネル2の両端部に設置された各調整具5を操作してそれぞれの第2距離H2を微調整することにより梁材9の施工誤差を吸収することができる。なお、外壁パネル2の下端21が梁材9の上面91よりも上方に位置している場合は、第1実施形態と同様の計測方法で不陸を計測することができる。
【0037】
このように、本願の外壁不陸計測方法は、屋内側から1人で容易に外壁パネル2の鉛直方向の不陸を計測することができるとともに、不陸が認められた場合は不陸を確認しながら外壁パネル2の設置高さを微調整することができるので、従来の計測方法と比較して大幅に作業効率を向上させることができる。また、外壁パネル2の下端21が躯体の上面の上方又は下方のどちらに位置していても外壁パネル2の不陸を確認することができるため、利便性を向上させることができる。
【0038】
なお、第1実施形態及び第2実施形態では、第1計測体11及び第2計測体12に目盛11g、12dを刻んだ計測具1を用いているが、必ずしも細かな目盛を両計測体11、12に刻む必要はない。例えば、外壁パネル2の下端21が躯体の上面よりも上方に位置する場合、
図10に示すように、突出部12bの下端から外壁パネル2の高さの基準となる距離(基準となる設計上の外壁パネル2の下端21~躯体の上面までの距離から第2爪片12cの厚みtを差し引いた距離)分下がった位置に第1基準ライン12eのみを挿入部12aの屋内側の面にマーキングしておけば、第1平板部11aの上端と第1基準ライン12eとの高さが揃う位置に外壁パネル2の設置高さを調整することで外壁パネル2の不陸を修正できる。また、外壁パネル2の下端21が躯体の上面よりも下方に位置する場合、第1平板部11aの上端から、外壁パネル2の高さの基準となる距離(基準となる設計上の外壁パネル2の下端21~躯体の上面までの距離に第2爪片12cの厚みtを足し合わせた距離)分下方へ下がった位置に第2基準ライン11iのみを第1平板部11aにマーキングしておけば、突出部12bの下端と第2基準ライン11iとの高さが揃う位置に外壁パネル2の設置高さを調整することで外壁パネル2の不陸を修正できる。
【0039】
また、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明は、平板状に形成された外壁パネルの設置高さを調整する際に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 計測具
11 第1計測体(一方の計測体)
11f 第1爪片
12 第2計測体(他方の計測体)
12c 第2爪片
2 外壁パネル
21 下端
2a 外壁材
2b 取付材
3 基礎(躯体)
31 上面(基礎(躯体)の上面)
5 調整具
9 梁材(躯体)
91 上面(梁材(躯体)の上面)
A 建物