(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】超音波素子、及び超音波装置
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
H04R17/00 330G
(21)【出願番号】P 2018200009
(22)【出願日】2018-10-24
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博則
(72)【発明者】
【氏名】小島 力
(72)【発明者】
【氏名】大橋 幸司
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰幸
(72)【発明者】
【氏名】今井 克浩
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-188208(JP,A)
【文献】特開2018-085612(JP,A)
【文献】特開2017-201678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/14
B06B 1/06
H01L 41/047-41/053
41/23
41/31 -41/319
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一面、及び前記第一面と表裏を為す第二面と、前記第一面から前記第二面までを貫通する開口部と、前記開口部を囲う隔壁部とを有する素子基板と、
前記素子基板の前記第一面に設けられて前記開口部を覆い、前記開口部に臨む第三面と、前記第三面と表裏を為す第四面とを有する支持膜と、
前記支持膜の前記第四面に設けられ、前記第三面から前記第四面に向かう膜厚方向から見た平面視において、前記隔壁部とともに、前記支持膜の前記開口部と重なる領域に所定の振動領域を区画する支持壁と、
前記支持膜の、前記隔壁部及び前記支持壁により囲われる前記振動領域に設けられた圧電素子と、
前記支持膜の前記第四面に対向して設けられる封止板と、を備え、
前記封止板は、前記支持壁に対向する位置に、前記支持壁に向かって突出する梁部を有し、前記梁部と前記支持壁とが接合されており、
前記振動領域は、前記隔壁部の縁及び前記支持壁の縁により囲われた領域であり、
前記振動領域を区画する前記支持壁の縁に沿った方向及び前記膜厚方向に直交する前記支持壁の幅は、前記梁部の幅よりも小さい
ことを特徴とする超音波素子。
【請求項2】
第一面、及び前記第一面と表裏を為す第二面と、前記第一面から前記第二面までを貫通する開口部と、前記開口部を囲う隔壁部とを有する素子基板と、
前記素子基板の前記第一面に設けられて前記開口部を覆い、前記開口部に臨む第三面と、前記第三面と表裏を為す第四面とを有する支持膜と、
前記支持膜の前記第四面に設けられ、前記第三面から前記第四面に向かう膜厚方向から見た平面視において、前記隔壁部とともに、前記支持膜の前記開口部と重なる領域に所定の振動領域を区画する支持壁と、
前記支持膜の、前記隔壁部及び前記支持壁により囲われる前記振動領域に設けられた圧電素子と、
前記支持膜の前記第四面に対向して設けられる封止板と、を備え、
前記封止板は、前記支持壁に対向する位置に、前記支持壁に向かって突出する梁部を有し、前記梁部と前記支持壁とが接合されており、
前記梁部と前記支持壁とが接着部材により接合されており、
前記振動領域は、前記隔壁部の縁及び前記支持壁の縁により囲われた領域であり、
前記振動領域を区画する前記支持壁の縁に沿った方向及び前記膜厚方向に直交する前記支持壁の幅は、前記梁部の幅よりも大きい
ことを特徴とする超音波素子。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2に記載の超音波素子と、
前記圧電素子に対して駆動信号を入力する駆動回路と、
を備えることを特徴とする超音波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波素子、及び超音波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開口部を有する基板の一面側に開口部を覆う支持膜を設け、開口部に対応する位置の支持膜上に圧電素子を配置した超音波素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の超音波素子では、支持膜の基板とは反対側の面に、梁部を介して封止板が接続されている。これにより、支持膜、梁部及び封止板によりキャビティを形成することで、圧電素子を振動させる領域を確保している。そして、このような超音波素子では、開口部を覆う支持膜のうち、平面視において、互いに対向する一対の基板の隔壁の縁と、互いに対向する一対の梁部の縁と、により囲われる領域が圧電素子により振動する振動部となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の超音波素子では、互いに対向する一対の梁部の中心に圧電素子が位置するように、梁部を支持膜に接合させている。しかし、梁部と支持膜との張り合わせ誤差により、梁部の位置が所定の位置からずれる、すなわち、互いに対向する一対の梁部の中心に圧電素子が位置しないことがある。そうすると、振動部における圧電素子の相対位置が変化するため、所望する周波数特性が発揮できないといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一適用例に係る超音波素子は、第一面、及び前記第一面と表裏を為す第二面と、前記第一面から前記第二面までを貫通する開口部と、前記開口部を囲う隔壁部とを有する素子基板と、前記素子基板の前記第一面に設けられて前記開口部を覆い、前記開口部に臨む第三面と、前記第三面と表裏を為す第四面とを有する支持膜と、前記支持膜の前記第四面に設けられ、前記第三面から前記第四面に向かう膜厚方向から見た平面視において、前記隔壁部とともに、前記支持膜の前記開口部と重なる領域に所定の振動領域を区画する支持壁と、前記支持膜の、前記隔壁部及び前記支持壁により囲われる前記振動領域に設けられた圧電素子と、前記支持膜の前記第四面に対向して設けられる封止板と、を備え、前記封止板は、前記支持壁に対向する位置に、前記支持壁に向かって突出する梁部を有し、前記梁部と前記支持壁とが接合されていることを特徴とする。
【0007】
本適用例の超音波素子において、前記振動領域は、前記隔壁部の縁及び前記支持壁の縁により囲われた領域であり、前記振動領域を区画する前記支持壁の縁に沿った方向及び前記膜厚方向に直交する前記支持壁の幅は、前記梁部の幅よりも小さいことが好ましい。
【0008】
本適用例の超音波素子において、前記梁部と前記支持壁とが接着部材により接合されており、前記振動領域は、前記隔壁部の縁及び前記支持壁の縁により囲われた領域であり、前記振動領域を区画する前記支持壁の縁に沿った方向及び前記膜厚方向に直交する前記支持壁の幅は、前記梁部の幅よりも大きいことが好ましい。
【0009】
本発明の一適用例に係る超音波装置は、上述した適用例の超音波素子と、前記圧電素子に対して駆動信号を入力する駆動回路と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第一実施形態の超音波装置の一例である距離測定装置の概略構成を示すブロック図。
【
図2】第一実施形態の超音波素子の構成を模式的に示す平面図。
【
図3】
図2におけるA-A線で切断した超音波素子を模式的に示す断面図。
【
図4】第一実施形態の超音波素子の概略を模式的に示す断面斜視図。
【
図5】第一実施形態の超音波素子の製造工程の概略を示す図。
【
図6】第一実施形態の超音波素子の製造工程の概略を示す図。
【
図7】第二実施形態の超音波素子の概略を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第一実施形態]
以下、第一実施形態について説明する。
図1は、第一実施形態の超音波装置の一例である距離測定装置1の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の距離測定装置1は、超音波素子10と、超音波素子10を制御する制御部20とを備える。この距離測定装置1では、制御部20は、駆動回路30を介して超音波素子10を制御し、超音波素子10から超音波を送信する。そして、対象物により超音波が反射され、超音波素子10により反射波が受信されると、制御部20は、超音波の送信タイミングから超音波の受信タイミングの時間に基づいて、超音波素子10から対象物までの距離を算出する。
以下、このような距離測定装置1の構成について、具体的に説明する。
【0012】
[超音波素子10の構成]
図2は、超音波素子10の概略を模式的に示す平面図である。なお、
図2において、封止板45の図示は省略している。
図2に示すように、超音波素子10には、互いに交差するX方向及びY方向に沿って、複数の超音波トランスデューサー50が2次元アレイ状に配置されている。なお、
図2では、X方向とY方向とが直交する場合を例示している。
本実施形態では、Y方向に配置された複数の超音波トランスデューサー50により、1チャネルの送受信列素子群が構成される。また、当該1チャネルの送受信列素子群がY方向に沿って複数並んで配置されることで、1次元アレイ構造の超音波素子10が構成される。ここで、超音波トランスデューサー50が配置される領域をアレイ領域Arとする。
なお、
図2は、説明の便宜上、超音波トランスデューサー50の配置数を減らしているが、実際には、より多くの超音波トランスデューサー50が配置されている。
【0013】
図3は、
図2におけるA-A線で切断した超音波素子10を模式的に示す断面図であり、
図4は、超音波素子10の概略を模式的に示す断面斜視図である。
図3及び
図4に示すように、超音波素子10は、素子基板41と、支持膜42と、圧電素子43と、支持壁44と、封止板45と、を含んで構成されている。
【0014】
[素子基板41の構成]
素子基板41は、第一面411、及び第一面411と表裏を為す第二面412を有し、例えばSi等の半導体基板により構成されている。本実施形態では、素子基板41には、Y方向に長手となる開口部41Aが、X方向に複数設けられている。
各開口部41Aは、素子基板41の第一面411から第二面412までを貫通する貫通孔であり、当該貫通孔の第一面411側に支持膜42が設けられる。すなわち、支持膜42により開口部41Aの第一面411側が覆われている。なお、開口部41Aには、クロストークの影響を抑制するために、樹脂等が充填されて振動抑制層が形成されていてもよい。
ここで、素子基板41の支持膜42と接合される部分は隔壁部41Bであり、開口部41Aは、隔壁部41Bにより、±X側及び±Y側の四方が囲われることで形成される。よって、±X側の隔壁部41Bは、X方向で互いに対向し、±Y側の隔壁部41BはY方向で互いに対向する。
【0015】
[支持膜42の構成]
支持膜42は、例えばSiO2及びZrO2の積層体等より構成され、素子基板41の開口部41Aに臨む第三面421及び当該第三面421の裏面である第四面422を有する。すなわち、支持膜42は、開口部41Aを構成する隔壁部41Bにより支持され、開口部41Aの第一面411側を覆う。この支持膜42の厚み寸法は、素子基板41に対して十分小さい厚み寸法となる。
【0016】
[支持壁44の構成]
支持壁44は、例えば樹脂により構成されており、エッチング等により支持膜42の第四面422側に設けられている。このような、支持壁44は、X方向が長手方向とされ、Y方向に複数設けられる。本実施形態では、支持壁44は、アレイ領域Ar内において、±X側端部間に亘って形成されている。
【0017】
このような構成では、支持膜42は、第三面421から第四面422に向かう膜厚方向から見た平面視において、開口部41Aを構成する隔壁部41Bの縁と、支持壁44の縁とにより、複数の振動領域としての振動部423に区画される。
具体的には、開口部41Aの±Y側端部においては、支持膜42のうち、X方向に延びる1つの隔壁部41Bの縁と、Y方向に延びる一対の隔壁部41Bの互いに向かい合う2つの縁と、X方向に延びる1つの支持壁44の縁とにより囲われる領域が振動部423となる。また、開口部41Aの端部以外においては、支持膜42のうち、Y方向に延びる一対の隔壁部41Bの互いに向かい合う2つの縁と、X方向に延びる一対の支持壁44の互いに向かい合う2つの縁とにより囲われる領域が振動部423となる。
【0018】
支持壁44は、当該支持壁44の縁に沿った方向及び支持膜42の膜厚方向と直交する方向、すなわち、Y方向における幅W1が、例えば20μmとされており、後述する梁部451の幅WRよりも小さい。また、支持壁44は、後述する梁部451の取付面452に対向する接合面441を有する。
【0019】
[圧電素子43の構成]
圧電素子43は、支持膜42の第四面422側において、各振動部423の中心部にそれぞれ設けられている。この圧電素子43は、例えば、支持膜42側から下部電極431、圧電膜432、及び上部電極433を積層した積層体により構成されている。
このような超音波トランスデューサー50では、下部電極431及び上部電極433の間に所定周波数の矩形波電圧、つまり駆動信号が印加されることで、圧電膜432が撓んで振動部423が振動して超音波が送出される。また、被検体から反射された超音波により振動部423が振動されると、圧電膜432の上下で電位差が発生する。これにより、下部電極431及び上部電極433の間に発生する電位差を検出することで、受信した超音波を検出することが可能となる。
【0020】
本実施形態では、
図2に示すように、下部電極431は、Y方向に沿って直線状に形成されており、1チャネルの送受信列素子群を構成する複数の超音波トランスデューサー50を接続する。この下部電極431の両端部には、駆動端子431Aが設けられる。
また、上部電極433は、X方向に沿って直線状に形成されており、X方向に並ぶ超音波トランスデューサー50を接続する。そして、上部電極433の±Y側端部は共通電極線433Aに接続される。この共通電極線433Aは、X方向に複数配置された各上部電極433同士を結線し、その端部には、回路基板に電気接続される共通端子433Bが設けられている。
この駆動端子431A及び共通端子433Bは、それぞれ駆動回路30に接続され、駆動端子431Aには、駆動回路30から駆動信号が入力され、共通端子433Bには、所定の共通電位、例えば、-3Vが印加される。
【0021】
超音波素子10から超音波を送信する際、上記のように、上部電極433に共通電位が印加され、下部電極431に駆動信号が入力される。
図2に示すように、各送受信部素子群のそれぞれに対応して駆動端子431Aが設けられているので、各送受信部素子群に対して独立して駆動信号を入力することができる。このため、駆動回路30から駆動信号を入力する駆動端子431Aを選択することで、各送受信部素子群を遅延駆動させたり、同時駆動させたり、個別駆動させたりすることができる。
【0022】
[封止板45の構成]
封止板45は、素子基板41を補強する機能を有する。この封止板45は、Z方向から見た際の平面形状が例えば素子基板41と同形状に形成され、Si等の半導体基板や、絶縁体基板により構成される。
【0023】
この封止板45には、素子基板41の対向する面から、支持壁44に向かって突出する梁部451が設けられている。梁部451は、例えば、エッチング等により封止板45と一体に形成されており、アレイ領域Ar内において、±X側端部間に亘って設けられている。また、梁部451は、支持壁44に対向する取付面452を有し、当該取付面452が支持壁44の接合面441に接着部材により接合される。これにより、封止板45のうち振動部423に対向する領域では、振動部423との間に所定寸法のギャップが設けられ、振動部423の振動が阻害されない。
【0024】
本実施形態では、梁部451は、Y方向における幅WRが、例えば40μmとされている。すなわち、梁部451は、幅WRが支持壁44の幅W1よりも大きい。
【0025】
[制御部20の構成]
制御部20は、超音波素子10を駆動させる駆動回路30と、演算部40とを含んで構成されている。また、制御部20には、その他、距離測定装置1を制御するための各種データや各種プログラム等を記憶した記憶部を備えていてもよい。
【0026】
駆動回路30は、超音波素子10の駆動を制御するためのドライバー回路であり、例えば
図1に示すように、基準電位回路31、切替回路32、送信回路33、及び受信回路34等を備える。
基準電位回路31は、超音波素子10の上部電極433の共通端子433Bに接続され、上部電極433に基準電位、例えば-3V等を印加する。
切替回路32は、アレイ領域Arに配置された各超音波トランスデューサー50の下部電極431の駆動端子431Aと、送信回路33と、受信回路34とに接続される。この切替回路32は、スイッチング回路により構成されており、各駆動端子431Aのそれぞれと送信回路33とを接続する送信接続、及び、各駆動端子431Aのそれぞれと受信回路34とを接続する受信接続を切り替える。
【0027】
送信回路33は、切替回路32及び演算部40に接続される。そして、送信回路33は、切替回路32が送信接続に切り替えられた際に、演算部40の制御に基づいて、アレイ領域Ar内の各超音波トランスデューサー50にパルス波形の駆動信号を出力し、超音波素子10から超音波を送信させる。
【0028】
[超音波素子10の製造方法]
次に、上述のような超音波素子10の製造方法について説明する。
図5及び
図6は、本実施形態における超音波素子10の製造工程の概略を示す図である。
図5に示すように、超音波素子10を製造するには、先ず、素子基板41及び封止板45を製造する。
具体的には、Siの半導体基板の一方の面側を熱酸化処理し、半導体基板の表面にSiO
2膜を形成する。さらに、SiO
2膜上にZr層を形成し、これを熱酸化処理して、ZrO
2層を形成する。これらのSiO
2及びZrO
2の積層体により支持膜42を形成する。そして、支持膜42上に圧電素子43及び支持壁44を形成し、その後、半導体基板の他方の面側をエッチングすることにより、開口部41Aを有する素子基板41を形成する。
また、別の半導体基板をエッチングすることにより、梁部451を有する封止板45を形成する。
【0029】
次に、梁部451の取付面452に接着部材を転写し、当該接着部材により、梁部451と支持壁44とを接合する。
この際、
図6に示すように、封止板45のアライメントがずれて、梁部451と支持壁44と接合位置が所定の位置からずれることがある。このような場合において、本実施形態では、振動部423が、互いに対向する一対の隔壁部41Bと支持壁44とにより区画されるので、梁部451の接合位置がずれたとしても、振動部423における圧電素子43の相対位置は変化することがない。そのため、振動部423は、梁部451の接合位置に関わらず、所望の超音波特性を発揮することができる。
【0030】
また、本実施形態では、梁部451は、幅WRが支持壁44の幅W1よりも大きい、すなわち、取付面452が接合面441よりも大きい。これにより、梁部451の接合位置がずれたとしても、そのずれを取付面452の大きさにより補うことができる。そのため、梁部451を支持壁44に確実に接合させることができる。
さらに、支持壁44は、幅W1が梁部451の幅WRよりも小さくなるように形成されるので、支持膜42の幅に対する支持壁44の相対的な幅を小さくすることができる。すなわち、支持膜42に占める支持壁44との接続部分の面積を小さくできるので、支持膜42に圧電素子43をより多く配置することができる。
【0031】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の超音波素子10は、第一面411及び第二面412と、第一面411から第二面412までを貫通する開口部41Aと、開口部41Aを囲う隔壁部41Bとを有する素子基板41を備える。素子基板41の第一面411には、開口部41Aを覆い、開口部41Aに臨む第三面421及び第三面421と表裏を為す第四面422を有する支持膜42が設けられている。支持膜42の第四面422には、第三面421から第四面422に向かう膜厚方向から見た平面視において、隔壁部41Bとともに、支持膜42の開口部41Aと重なる領域に振動部423を区画する支持壁44が設けられている。当該振動部423には、圧電素子43が設けられている。そして、支持壁44には、封止板45から当該支持壁44に向かって突出した梁部451が接着部材により接合されている。これにより、例えば、封止板45のアライメントがずれて、梁部451と支持壁44との接合位置がずれたとしても、振動部423における圧電素子43の相対位置は変化することがない。そのため、振動部423は、梁部451の接合位置に関わらず、所望の超音波特性を発揮することができる。
【0032】
本実施形態では、支持壁44は、Y方向における幅W1が梁部451の幅WRよりも小さい。そのため、支持膜42の幅に対する支持壁44の相対的な幅を小さくすることができる。すなわち、支持膜42に占める支持壁44との接続部分の面積を小さくできるので、支持膜42に圧電素子43をより多く配置することができる。
【0033】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について説明する。
上述した第一実施形態では、支持壁44は、Y方向における幅W1が梁部451の幅WRよりも小さくなるように形成される例を示した。これに対して、第二実施形態では、支持壁44Aは、幅W2が梁部451の幅WRよりも大きくなるように形成される点で、上記第一実施形態と相違する。
【0034】
図7は、第二実施形態の超音波素子10を模式的に示す断面図である。
図7に示すように、本実施形態では、第一実施形態と同様、支持膜42の第四面422側に、支持壁44Aが形成される。支持壁44Aは、Y方向における幅W2が、例えば60μmとされている。
【0035】
また、封止板45には、第一実施形態と同様、支持壁44に向かって突出する梁部451が一体に設けられている。そして、当該梁部451と支持壁44とは、接着部材により接合される。
また、梁部451は、第一実施形態と同様、Y方向における幅WRが、例えば40μmとされている。すなわち、本実施形態では、支持壁44Aは、幅W2が、梁部451の幅WRよりも大きくなるように形成される。そのため、支持壁44Aの梁部451と対向する接合面441Aが大きくなる。
【0036】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態では、支持壁44Aは、Y方向における幅W2が梁部451の幅WRよりも大きい。そのため、支持壁44Aにおける梁部451との接合面441Aが大きくなる。これにより、例えば、梁部451を接着部材により支持壁44Aに接合させる場合、梁部451に転写された接着部材は、支持壁44Aの接合面441Aに保持されやすくなる。そのため、接着部材が支持壁44Aの壁部を伝って圧電素子43にまで流れだすことを防ぐことができる。したがって、圧電素子43に接着部材が付着して、所望の周波数特性が得られなくなってしまうことを防ぐことができる。
【0037】
[変形例]
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、及び各実施形態を適宜組み合わせる等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
【0038】
例えば、上記各実施形態において、支持壁44,44Aの幅W1,W2と梁部451の幅WRとが異なる例を示したが、これに限定されない。例えば、支持壁44の幅と梁部451の幅とが同じであってもよい。
【0039】
上記各実施形態において、圧電素子43は、支持膜42の第四面422側に設けられる例を示したが、これに限定されない。例えば、圧電素子43は、支持膜42の第三面421側に設けられていてもよい。
【0040】
上記各実施形態では、梁部451は、封止板45と一体に形成されている例を示したが、これに限定されない。例えば、梁部451と封止板45とは別部材にて設けられ、封止板45に梁部451が取り付けられていてもよい。
【0041】
上記各実施形態において、アレイ領域Ar内において、梁部451が±X側端部間に亘って設けられる構成を例示したが、これに限定されない。
すなわち、X方向に複数設けられる開口部41Aのうち、所定数の開口部41Aを跨いでX方向に長手に設けられる構成とすればよい。
例えば、1つの開口部41Aの-X側に配置される隔壁部41Bから、当該開口部41Aの+X側に配置される隔壁部41Bまでに亘って梁部451が設けられる構成としてもよい。この場合、X方向に対して複数の梁部451が設けられる構成となる。
【0042】
上記各実施形態において、アレイ領域Ar内において、支持壁44が±X側端部間に亘って形成される構成を例示したが、これに限定されない。例えば、支持壁44は、±X側端部間に亘って形成され、さらに、±Y方向に延出されていてもよい。すなわち、支持壁44は、-Z方向から見た平面視において、十字状に形成されていてもよい。この場合、±Y方向に延出された部位は、-Z方向から見た平面視において、隔壁部41Bと重なる位置に形成されていてもよい。
【0043】
上記各実施形態では、アレイ領域Ar内にのみ支持壁44,44A及び梁部451が設けられる構成を例示したが、これに限定されず、例えばアレイ領域Ar外に支持膜42と封止板45とを接合する接合部材が設けられてもよい。
【0044】
上記各実施形態では、梁部451と支持壁44とを接着部材により接合する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、超音波接合や摩擦圧接等の接合技術を用いて梁部451と支持壁44とを直接接合する構成であってもよい。
【0045】
上記各実施形態では、超音波装置の一例として距離測定装置1を例示したが、これに限定されない。例えば、超音波の送受信結果に応じて、構造体の内部断層像を測定する超音波測定装置等に適用することもできる。
【0046】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で上記各実施形態及び変形例を適宜組み合わせることで構成してもよく、また他の構造などに適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…距離測定装置(超音波装置)、10…超音波素子、20…制御部、30…駆動回路、41…素子基板、41A…開口部、41B…隔壁部、42…支持膜、43…圧電素子、44,44A…支持壁、45…封止板、50…超音波トランスデューサー、411…第一面、412…第二面、421…第三面、422…第四面、423…振動部(振動領域)、431…下部電極、431A…駆動端子、432…圧電膜、433…上部電極、433A…共通電極線、433B…共通端子、441,441A…接合面、451…梁部、452…取付面、Ar…アレイ領域。