IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】物理量センサー、電子機器および移動体
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/125 20060101AFI20221115BHJP
   G01P 15/08 20060101ALI20221115BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
G01P15/125 Z
G01P15/08 101A
H01L29/84 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018203181
(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2020071069
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】松浦 由幸
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-249805(JP,A)
【文献】特開2010-249806(JP,A)
【文献】特開2018-91820(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0041927(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00-15/18
B81B 1/00- 7/04
B81C 1/00-99/00
H01L29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直行する3軸をX軸、Y軸およびZ軸としたとき、
Z軸に沿う方向を厚さ方向とする基板と、
前記基板に設けられ、物理量を検出するセンサー素子と、を備え、
前記センサー素子は、
前記基板に対して前記物理量の検出軸である前記X軸に沿う方向に変位する可動部と、
前記基板に固定されている固定電極と、を備え、
前記可動部は、
前記固定電極と前記X軸に沿う方向に対向して配置されている可動電極と、
前記可動電極を支持し、前記可動電極よりも前記Z軸に沿う方向の長さが長い質量部と、を備え
前記可動電極の前記Z軸に沿う方向の長さをh1、前記質量部の前記Z軸に沿う方向の長さをh2としたとき、h2/h1>3の関係を満足することを特徴とする物理量センサー。
【請求項2】
前記質量部は、前記固定電極よりも前記Z軸方向に沿う長さが長い請求項1に記載の物理量センサー。
【請求項3】
前記可動電極および前記固定電極は、前記Z軸方向に沿う長さが等しい請求項2に記載の物理量センサー。
【請求項4】
前記センサー素子は、
前記基板に固定されている固定部と、
前記固定部と前記可動部とを接続するばねと、を備えている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の物理量センサー。
【請求項5】
前記ばねは、前記質量部よりも前記Z軸方向に沿う方向の長さが短い請求項4に記載の物理量センサー。
【請求項6】
前記固定電極は、
前記Y軸に沿う方向に並んで配置されている第1固定電極および第2固定電極を備え、
前記第1固定電極は、
第1幹部と、
前記第1幹部から前記Y軸に沿う方向の両側に延出している複数の第1固定電極指と、を備え、
前記第2固定電極は、
第2幹部と、
前記第2幹部から前記Y軸に沿う方向の両側に延出している複数の第2固定電極指と、を備えている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の物理量センサー。
【請求項7】
前記第1幹部および前記第2幹部は、それぞれ、前記X軸および前記Y軸に対して傾斜した軸に沿って延在している請求項6に記載の物理量センサー。
【請求項8】
前記第1幹部および前記第2幹部は、前記X軸に対して線対称である請求項6または7に記載の物理量センサー。
【請求項9】
前記第1幹部から前記第2幹部側に延出している前記第1固定電極指および前記第2幹部から前記第1幹部側に延出している前記第2固定電極指は、それぞれ、前記X軸に沿って複数配置され、前記Y軸方向の長さが前記X軸に沿う方向の一方側に向けて漸増し、
前記第1幹部から前記第2幹部と反対側に延出している前記第1固定電極指および前記第2幹部から前記第1幹部と反対側に延出している前記第2固定電極指は、それぞれ、前記X軸に沿って複数配置され、前記Y軸方向の長さが前記X軸に沿う方向の他方側に向けて漸増している請求項6ないし8のいずれか1項に記載の物理量センサー。
【請求項10】
X軸方向に隣り合う一対の前記第1固定電極指の間に前記可動電極指が位置し、
一方の前記第1固定電極指と前記可動電極指との離間距離と、他方の前記第1固定電極指と前記可動電極指との離間距離と、が異なり、
X軸方向に隣り合う一対の前記第2固定電極指の間に前記可動電極指が位置し、
一方の前記第2固定電極指と前記可動電極指との離間距離と、他方の前記第2固定電極指と前記可動電極指との離間距離と、が異なっている請求項9に記載の物理量センサー。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の物理量センサーを有することを特徴とする電子機器。
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の物理量センサーを有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量センサー、電子機器および移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている物理量センサーは、加速度を検出可能な加速度センサーであり、基板と、基板に固定されたデバイス基板と、を有する。また、デバイス基板は、基板に固定された固定部と、固定部にばねを介して接続され、基板に対して回転方向に変位可能な可動部と、可動部に設けられた可動電極指と、基板に固定され、可動電極指と対向配置された固定電極指と、を有する。このような構成の物理量センサーでは、加速度が加わると可動部が回転方向に変位し、その変位に伴う可動電極指と固定電極指との間の静電容量の変化に基づいて、受けた加速度を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-67579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、加速度の検出感度を高める方法として、加速度を受けたときに可動する部分すなわち可動部および可動電極指からなる可動体の質量を増加させる方法があり、可動体の質量を増加させる方法として、デバイス基板を厚くする方法がある。しかしながら、デバイス基板の厚さをその全域において一様に厚くしてしまうと、可動電極指および固定電極指までもが厚くなり、可動電極指と固定電極指と間の粘性抵抗が増大して可動電極指のダンピングが増大してしまう。そのため、可動体の質量増に伴う検出感度の向上が、可動電極指のダンピング増に打ち消されてしまい、検出感度を効果的に高めることができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の物理量センサーは、互いに直行する3軸をX軸、Y軸およびZ軸としたとき、
Z軸に沿う方向を厚さ方向とする基板と、
前記基板に設けられ、物理量を検出するセンサー素子と、を備え、
前記センサー素子は、
前記基板に対して前記物理量の検出軸である前記X軸に沿う方向に変位する可動部と、
前記基板に固定されている固定電極と、を備え、
前記可動部は、
前記固定電極と前記X軸に沿う方向に対向して配置されている可動電極と、
前記可動電極を支持し、前記可動電極よりも前記Z軸に沿う方向の長さが長い質量部と、を備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の第1実施形態に係る物理量センサーを示す平面図である。
図2図1中のA-A線断面図である。
図3】第1可動電極指および第1固定電極指を示す平面図である。
図4】第2可動電極指および第2固定電極指を示す平面図である。
図5図1中のB-B線断面図である。
図6図1中のC-C線断面図である。
図7】本発明の効果を説明するのに用いるモデルを示す斜視図である。
図8図1中のD-D線断面図である。
図9図1中のE-E線断面図である。
図10図1に示す物理量センサーの製造工程を示す図である。
図11図1に示す物理量センサーの製造方法を説明するための断面図である。
図12図1に示す物理量センサーの製造方法を説明するための断面図である。
図13図1に示す物理量センサーの製造方法を説明するための断面図である。
図14図1に示す物理量センサーの製造方法を説明するための断面図である。
図15】本発明の第2実施形態に係る物理量センサーを示す断面図である。
図16】本発明の第2実施形態に係る物理量センサーを示す断面図である。
図17】本発明の第2実施形態に係る物理量センサーを示す断面図である。
図18】本発明の第2実施形態に係る物理量センサーを示す断面図である。
図19】本発明の第3実施形態に係る物理量センサーを示す断面図である。
図20】本発明の第3実施形態に係る物理量センサーを示す断面図である。
図21】本発明の第3実施形態に係る物理量センサーを示す断面図である。
図22】本発明の第3実施形態に係る物理量センサーを示す断面図である。
図23】本発明の第4実施形態に係る電子機器としてのスマートフォンを示す平面図である。
図24】本発明の第5実施形態に係る電子機器としての慣性計測装置を示す分解斜視図である。
図25図24に示す慣性計測装置が有する基板の斜視図である。
図26】本発明の第6実施形態に係る電子機器としての移動体測位装置の全体システムを示すブロック図である。
図27図26に示す移動体測位装置の作用を示す図である。
図28】本発明の第7実施形態に係る移動体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の物理量センサー、電子機器および移動体を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0008】
<第1実施形態>
【0009】
図1は、本発明の第1実施形態に係る物理量センサーを示す平面図である。図2は、図1中のA-A線断面図である。図3は、第1可動電極指および第1固定電極指を示す平面図である。図4は、第2可動電極指および第2固定電極指を示す平面図である。図5は、図1中のB-B線断面図である。図6は、図1中のC-C線断面図である。図7は、本発明の効果を説明するのに用いるモデルを示す斜視図である。図8は、図1中のD-D線断面図である。図9は、図1中のE-E線断面図である。図10は、図1に示す物理量センサーの製造工程を示す図である。図11および図14は、それぞれ、図1に示す物理量センサーの製造方法を説明するための断面図である。
【0010】
各図には、互いに直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸を図示している。また、X軸に沿うすなわち平行な方向を「X軸方向」、Y軸に沿うすなわち平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に沿うすなわち平行な方向を「Z軸方向」とも言う。また、各軸の矢印先端側を「プラス側」とも言い、反対側を「マイナス側」とも言う。また、Z軸方向プラス側を「上」とも言い、Z軸方向マイナス側を「下」とも言う。
【0011】
また、本願明細書において、「直交」とは、90°で交わっている場合の他、90°から若干傾いた角度、例えば90°±10°以内の範囲で交わっている場合も含むものである。具体的には、X軸がYZ平面の法線方向に対して±10°以内の範囲で傾いている場合、Y軸がXZ平面の法線方向に対して±10°以内の範囲で傾いている場合、Z軸がXY平面の法線方向に対して±10°以内の範囲で傾いている場合についてもそれぞれ「直交」に含まれる。また、本願明細書において、「平行」とは、完全に平行となっている場合の他、一方が他方に対して若干、例えば±10°以内の範囲で傾斜している場合も含むものである。
【0012】
図1に示す物理量センサー1は、X軸方向の加速度Axを検出することのできる加速度センサーである。この物理量センサー1は、基板2と、基板2上に配置されたセンサー素子3と、センサー素子3を覆うように基板2に接合された蓋8と、を有している。
【0013】
-基板-
図1に示すように、基板2は、上面側に開放する凹部21を有している。また、Z軸方向からの平面視で、凹部21は、センサー素子3よりも大きく形成され、その内側にセンサー素子3を内包している。また、基板2は、上面側に開放する3つの溝25、26、27を有している。また、基板2は、凹部21の底面に設けられた3つの突起状のマウント部22、23、24を有している。マウント部22には後述する第1固定電極41が接合され、マウント部23には後述する第2固定電極46が接合され、マウント部24には後述する固定部51が接合されている。
【0014】
基板2としては、アルカリ金属イオンを含むガラス材料、例えば、テンパックスガラス、パイレックスガラス(いずれも登録商標)のような硼珪酸ガラスで構成されたガラス基板を用いることができる。これにより、基板2の加工が容易となる。さらには、基板2とセンサー素子3とを陽極接合により接合することができ、これらを強固に接合することができる。また、光透過性を有する基板2が得られ、物理量センサー1の外側からセンサー素子3の状態を視認することができる。ただし、基板2としては、ガラス基板に限定されず、例えば、シリコン基板やセラミックス基板を用いてもよい。
【0015】
また、図1に示すように、溝25、26、27には配線71、72、73が設けられている。配線71、72、73の一端部は、それぞれ、蓋8の外側に露出し、外部装置との電気的な接続を行う端子として機能する。また、図2に示すように、配線71の他端部は、マウント部22上で第1固定電極41と電気的に接続され、配線72の他端部は、マウント部23上で第2固定電極46と電気的に接続され、配線73は、マウント部24上で固定部51と電気的に接続されている。
【0016】
-蓋-
図2に示すように、蓋8は、下面側に開放する凹部81を有している。また、蓋8は、凹部81内にセンサー素子3を収納するようにして、基板2の上面に接合されている。そして、蓋8および基板2によって、センサー素子3を気密的に収納する収納空間SSが形成されている。このような蓋8は、シリコン基板で構成され、ガラスフリット89を介して接合されている。ただし、蓋8の構成材料や蓋8と基板2との接合方法については、特に限定されない。
【0017】
-センサー素子-
図1に示すように、センサー素子3は、基板2に固定された固定電極4と、基板2に固定された固定部51と、固定部51に対して加速度Axの検出軸であるX軸方向に変位する可動部52と、固定部51と可動部52とを連結するばね53、54と、を有している。また、可動部52は、質量部としての基部50と、基部50に支持されている可動電極6と、を有している。センサー素子3は、リン(P)、ボロン(B)等の不純物がドープされたシリコン基板からなるセンサー基板30をドライエッチングによってパターニングすることで形成することができる。また、センサー素子3は、陽極接合によってマウント部22、23、24に接合されている。ただし、センサー素子3の材料や、センサー素子3と基板2との接合方法としては、特に限定されない。
【0018】
図1に示すように、固定部51は、X軸方向に延在する長手形状をなし、X軸方向のマイナス側の端部においてマウント部24に接合されている。以下では、Z軸方向からの平面視で、固定部51を二等分し、X軸に沿った仮想軸をセンサー素子3の中心軸Cとも言う。
【0019】
基部50は、Z軸方向からの平面視で、枠状をなし、固定部51、ばね53、54および第1、第2固定電極41、46を囲んでいる。また、基部50は、中心軸Cに対してY軸方向プラス側に位置し、その内側に第1固定電極41が配置された第1開口部528と、中心軸Cに対してY軸方向マイナス側に位置し、その内側に第2固定電極46が配置された第2開口部529と、を有している。
【0020】
ばね53、54は、それぞれ、X軸方向に弾性変形可能であり、このばね53、54が弾性変形することにより、基部50が固定部51に対してX軸方向に変位する。ばね53は、固定部51のX軸方向プラス側において固定部51と基部50とを接続し、ばね54は、固定部51のX軸方向マイナス側において固定部51と基部50とを接続している。
【0021】
また、固定電極4は、第1開口部528内に位置する第1固定電極41と、第2開口部529に位置する第2固定電極46と、を有している。
【0022】
第1固定電極41は、マウント部22に接合された第1固定部42と、第1固定部42に支持された第1幹部43と、第1幹部43からY軸方向両側に延出した複数の第1固定電極指44と、を有している。
【0023】
第1幹部43は、棒状をなし、その一端が第1固定部42に接続され、他端が自由端となっている。また、第1幹部43は、Z軸方向からの平面視で、X軸およびY軸のそれぞれに対して傾斜した軸Q1に沿って延在している。軸Q1は、X軸方向プラス側ほど中心軸Cとの離間距離が大きくなるように傾斜している。これにより、第1固定部42を固定部51の近くに配置し易くなる。なお、X軸に対する軸Q1の傾きとしては、特に限定されないが、例えば、10°以上、45°以下であることが好ましく、10°以上、30°以下であることがより好ましい。これにより、第1固定電極41のY軸方向への広がりを抑制することができ、センサー素子3の小型化を図ることができる。
【0024】
第1固定電極指44は、第1幹部43からY軸方向プラス側に延出した第1固定電極指441と、第1幹部43からY軸方向マイナス側に延出した第1固定電極指442と、を含んでいる。このように、第1固定電極指44を第1幹部43からY軸方向の両側へ延出させる構成とすることにより、第1固定電極指44を第1幹部43の片側から延出させた場合と比べて、第1固定電極指44の長さを短くすることができる。そのため、第1固定電極指44が破損し難くなる。
【0025】
また、第1固定電極指441、442は、それぞれ、X軸方向に沿って互いに離間して複数設けられている。また、第1固定電極指441は、X軸方向プラス側に位置するものほど短く、第1固定電極指442は、X軸方向プラス側に位置するものほど長い。
【0026】
第2固定電極46は、マウント部23に固定された第2固定部47と、第2固定部47に支持された第2幹部48と、第2幹部48からY軸方向両側に延出した複数の第2固定電極指49と、を有している。
【0027】
第2幹部48は、棒状をなし、その一端が第2固定部47に接続され、他端が自由端となっている。また、第2幹部48は、Z軸方向からの平面視で、X軸およびY軸のそれぞれに対して傾斜した軸Q2に沿って延在している。軸Q2は、X軸方向プラス側ほど中心軸Cとの離間距離が大きくなるように傾斜している。これにより、第2固定部47を固定部51の近くに配置し易くなる。なお、X軸に対する軸Q2の傾きとしては、特に限定されないが、例えば、10°以上、45°以下であることが好ましく、10°以上、30°以下であることがより好ましい。これにより、第2固定電極46のY軸方向への広がりを抑制することができ、センサー素子3の小型化を図ることができる。
【0028】
また、軸Q2は、中心軸Cに対して軸Q1と線対称である。言い換えると、第1幹部43と第2幹部48とは、中心軸CすなわちX軸に対して線対称に配置されている。これにより、第1固定電極41および第2固定電極46をセンサー素子3内にバランスよく配置することができる。なお、第1幹部43および第2幹部48の構成としては、特に限定されず、例えば、それぞれ、X軸方向に沿って延在していてもよいし、途中で屈曲または湾曲していてもよい。また、第1幹部43と第2幹部48は、中心軸Cに対して非対称であってもよい。
【0029】
このように、第1幹部43および第2幹部48を傾斜させて、第1固定部42および第2固定部47を固定部51の近傍に設けることにより、熱や残留応力等に起因して基板2に反りや撓みが生じた際の可動部52と固定電極4とのZ軸方向のずれの差、具体的には、第1可動電極指64と第1固定電極指44とのZ軸方向のずれの差、第2可動電極指69と第2固定電極指49とのZ軸方向のずれの差を効果的に抑制することができる。そのため、検出精度の高い物理量センサー1となる。
【0030】
第2固定電極指49は、第2幹部48からY軸方向マイナス側に延出した第2固定電極指491と、第2幹部48からY軸方向プラス側に延出した第2固定電極指492と、を含んでいる。このように、第2固定電極指49を第2幹部48からY軸方向の両側へ延出させることにより、第2固定電極指49を第2幹部48の片側から延出させた場合と比べて、第2固定電極指49の長さを短くすることができる。そのため、第2固定電極指49が破損し難くなる。
【0031】
また、第2固定電極指491、492は、それぞれ、X軸方向に沿って互いに離間して複数設けられている。また、第2固定電極指491は、X軸方向プラス側に位置するものほど短く、第2固定電極指492は、X軸方向プラス側に位置するものほど長い。
【0032】
また、図1に示すように、可動電極6は、第1開口部528内に位置し、可動部52に支持された第1可動電極指64と、第2開口部529内に位置し、可動部52に支持された第2可動電極指69と、を有している。
【0033】
第1可動電極指64は、第1幹部43に対してY軸方向プラス側に位置し、第1固定電極指441とX軸に沿って対向する第1可動電極指641と、第1幹部43に対してY軸方向マイナス側に位置し、第1固定電極指442とX軸に沿って対向する第1可動電極指642と、を有している。また、第1可動電極指641は、X軸方向に沿って互いに離間して複数設けられ、複数の第1固定電極指441と櫛歯状にかみ合っている。同様に、第1可動電極指642は、X軸方向に沿って互いに離間して複数設けられ、複数の第1固定電極指442と櫛歯状にかみ合っている。
【0034】
また、第1可動電極指641は、X軸方向プラス側に位置するものほど短く、第1可動電極指642は、X軸方向プラス側に位置するものほど長い。これら各第1可動電極指64は、対をなす第1固定電極指44に対してX軸方向プラス側に位置し、第1固定電極指44とギャップを介して対向している。
【0035】
第1可動電極指64は、そのX軸方向マイナス側において対をなす第1固定電極指44と対向し、X軸方向プラス側において対をなさない、つまり、他の第1可動電極指64と対をなす第1固定電極指44と対向している。そして、図3に示すように、第1可動電極指64は、対をなす第1固定電極指44との離間距離D1が、対をなさない第1固定電極指44との離間距離D2よりも小さくなるように配置されている。これにより、対をなす第1固定電極指44との間に形成される静電容量をより大きくすることができ、対をなさない第1固定電極指44との間に形成される静電容量をより小さくすることができる。
【0036】
第2可動電極指69は、第2幹部48に対してY軸方向マイナス側に位置し、第2固定電極指491と対向する第2可動電極指691と、第2幹部48に対してY軸方向プラス側に位置し、第2固定電極指492と対向する第2可動電極指692と、を有している。また、第2可動電極指691は、X軸方向に沿って互いに離間して複数設けられ、複数の第2固定電極指491と櫛歯状にかみ合っている。同様に、第2可動電極指692は、X軸方向に沿って互いに離間して複数設けられ、複数の第2固定電極指492と櫛歯状にかみ合っている。
【0037】
また、第2可動電極指691は、X軸方向プラス側に位置するものほど短く、第2可動電極指692は、X軸方向プラス側に位置するものほど長い。これら各第2可動電極指69は、対をなす第2固定電極指49に対してX軸方向マイナス側に位置し、第2固定電極指49とギャップを介して対向している。
【0038】
第2可動電極指69は、そのX軸方向プラス側において、対をなす第2固定電極指49と対向し、X軸方向マイナス側において、対をなさない、つまり、他の第2可動電極指69と対をなす第2固定電極指49と対向している。そして、図4に示すように、第2可動電極指69は、対をなす第2固定電極指49との離間距離D3が、対をなさない第2固定電極指49との離間距離D4よりも小さくなるように配置されている。これにより、対をなす第2固定電極指49との間に形成される静電容量をより大きくすることができ、対をなさない第2固定電極指49との間に形成される静電容量をより小さくすることができる。
【0039】
以上、物理量センサー1の構成について簡単に説明した。このような物理量センサー1に加速度Axが加わると、その加速度Axの大きさに基づいて、可動部52がばね53、54を弾性変形させながらX軸方向に変位する。このような変位に伴って、第1可動電極指64と第1固定電極指44とのギャップおよび第2可動電極指69と第2固定電極指49とのギャップがそれぞれ変化し、この変位に伴って、第1可動電極指64と第1固定電極指44との間の静電容量および第2可動電極指69と第2固定電極指49との間の静電容量の大きさがそれぞれ変化する。そのため、これら静電容量の変化に基づいて加速度Axを検出することができる。
【0040】
ここで、加速度Axの検出感度を高める方法として、加速度Axを受けたときに可動する部分すなわち可動部52の質量を増加させる方法があり、可動部52の質量を増加させる方法として、センサー素子3が形成されたセンサー基板30の厚さh(Z軸方向の長さ)を厚くする方法がある。しかしながら、センサー基板30の厚さhをその全域において一様に厚くしてしまうと、第1、第2可動電極指64、69および第1、第2固定電極指44、49までもが厚くなり、第1可動電極指64と第1固定電極指44との間の粘性抵抗および第2可動電極指69と第2固定電極指49との間の粘性抵抗が増大して可動部52のダンピング特性が悪化してしまう。可動部52のダンピング特性が悪化すると、Q値の低下やブラウンノイズの増加が生じ、検出感度が低下する要因ともなる。そのため、可動部52の質量増に伴う加速度Axの検出感度の向上が可動部52のダンピング特性の悪化に打ち消されてしまい、加速度Axの検出感度を効果的に高めることができない。
【0041】
そこで、本実施形態の物理量センサー1では、図5および図6に示すように、可動部52において、第1、第2可動電極指64、69の厚さh1を厚くすることなく、つまり厚さh1を一定としつつ、基部50の厚さh2だけを厚くしている。すなわち、h1<h2の関係を満足している。このような関係を満足することにより、可動部52のダンピング特性の悪化を抑制しつつ、可動部52の質量を増加させることができる。そのため、加速度Axの検出感度を効果的に高めることができ、優れた検出感度を有する物理量センサー1が得られる。ここで、第1、第2可動電極指64、69とは、対応する第1、第2固定電極指44、49との間に静電容量を形成する部分を言い、それ以外の部分が基部50に相当する。
【0042】
以下、上記の効果についてより詳細に説明する。以下では、説明の便宜上、図7に示すモデルを用いて説明する。また、センサー基板30の厚さをhとし、ばね53、54の幅をwとし、ばね53、54のばね長をbとし、第1、第2可動電極指64、69および第1、第2固定電極指44、49が対向している部分の長さをlとし、第1、第2可動電極指64、69および第1、第2固定電極指44、49のギャップをdとし、可動部52のZ軸方向からの平面視での面積をAとする。さらには、センサー基板30の構成材料のヤング率をEとし、比重をaとする。また、第1、第2可動電極指64、69および第1、第2固定電極指44、49の間の誘電率をεとし、第1、第2可動電極指64、69および第1、第2固定電極指44、49の間に存在するガスの粘性係数をμとする。また、可動電極指と固定電極指とのペア数をnとする。
【0043】
まず、単純に、センサー基板30の厚さhを増加させた場合について説明する。可動電極指と固定電極指との間に生じるダンピング定数D(粘性定数)は、下記の式(1)で表される。ダンピング定数Dは、センサー基板30の厚さhの3乗に比例するが、可動電極指と固定電極指とのギャップである電極間ギャップdの3乗に反比例する関係がある。式(1)から、厚さhを単純に増加させると、厚さhの3乗(h)に比例してダンピング定数Dが増加し、ノイズ特性や周波数応答特性の悪化に直結することが分かる。
【0044】
【数1】
【0045】
Q値は、下記の式(2)で表される。なお、式(2)に含まれるバネ定数kとマス質量Mは、式(3)および式(4)で表され、どちらもセンサー基板30の厚さhに比例して増加することが分かる。さらに、式(2)に、式(3)および式(4)を代入すると式(2)の右辺となる。式(2)から、Q値は、厚さhの2乗(h)に反比例することが分かる。つまり、厚さhの増加に伴い、Q値が低下し、大きく減衰することで帯域が低下すると言える。
【0046】
【数2】
【0047】
【数3】
【0048】
【数4】
【0049】
また、このとき、センサー素子3が持つブラウンノイズBNEAは、下記の式(5)で表される。ダンピング定数Dは、センサー基板30の厚さhの3乗に比例し、マス質量Mは、構造体の厚さhに比例する。そのため、ブラウンノイズBNEAは、厚さhの平方根(√h)に比例して増加することが分かる。
【0050】
【数5】
【0051】
また、基板2に対して可動する部分(可動部52とばね53、54の集合体)の共振角周波数ωは、下記の式(6)で表される。ばね定数kとマス質量Mは、センサー基板30の厚さhに比例することから、共振角周波数ωは、厚さhには依存しないことが分かる。
【0052】
【数6】
【0053】
また、検出の感度Sは、下記の式(7)で表される。マス質量Mとばね定数kは、センサー基板30の厚さhに比例するため、感度Sは、厚さhに比例することが分かる。
【0054】
【数7】
【0055】
以上、センサー基板30の厚さhを増加させた場合について説明した。まとめると、センサー基板30の厚さhだけを単純に増加させた場合、ダンピング定数Dは、厚さhの3乗(h)に比例して大きくなり、Q値は、厚さhの2乗(h)に反比例して小さくなる。また、ブラウンノイズBNEAは、厚さhの平方根(√h)に比例して大きくなる。また、ばね定数kとマス質量Mは、厚さhに比例するため、共振角周波数ωは、厚さhの増加に関係なく一定値となる。最終的に、感度Sは、厚さhに比例して大きくなるが、感度SとブラウンノイズBNEAの比S/Nは、√hとなる。
【0056】
このように、センサー基板30の厚さhを単純に増加させると、Q値の低下とブラウンノイズBNEAの増加を招くため、ダンピング定数DとQ値とを一定に保ちつつ厚さhを増加させるのが望ましい。ダンピング定数DとQ値とを一定に保ちつつ厚さhを変更した場合に、各特性が厚さhに対してどのように依存するかを順に説明する。
【0057】
ダンピング定数Dを一定に保つために、式(1)でセンサー基板30の厚さhを増加させる場合は、電極間ギャップdも同じ比率で増加させる。これは、電極間ギャップdが厚さhに比例する、つまり、d∝hの関係が成り立つためである。センサー素子3は、過度な共振・減衰特性を持たないのが望ましいため、一般的にはQ値が常に1程度になるように設計する。ここで、上述の通り、ダンピング定数Dが一定になるように設計されているとすれば、式(2)においてマス質量Mとばね定数kの積M・kが常に一定になるようにする必要がある。マス質量Mは、センサー基板30の厚さhに比例するため、マス質量Mとばね定数kの積M・kを一定にするためには、ばね定数kが厚さhに反比例するように設計する必要がある。したがって、下記の式(8)を満たすように、ばね幅wやばね長bを設計することにより、Q値を一定にすることができる。
【0058】
【数8】
【0059】
ダンピング定数Dは、センサー基板30の厚さhには依存せず、マス質量Mは、センサー基板30の厚さhに比例することから、下記の式(9)に示すように、ブラウンノイズBNEAは、センサー基板30の厚さhに反比例することが分かる。ここで、式(9)中のTは絶対温度、kはボルツマン定数である。
【0060】
【数9】
【0061】
また、上述した式(4)および式(8)の条件を満たす場合、共振角周波数ωは、下記の式(10)に示すように、センサー基板30の厚さhに反比例する。つまり、厚さhが増加すると、共振角周波数ωは、低下することが分かる。
【0062】
【数10】
【0063】
また、感度Sは、下記の式(11)で表される。電極間ギャップdとマス質量Mは、センサー基板30の厚さhに比例し、ばね定数kは、センサー基板30の厚さhに反比例するため、感度Sは、厚さhに比例することが分かる。
【0064】
【数11】
【0065】
以上、ダンピング定数DとQ値とを一定に保ちつつ厚さhを増加させる場合について説明した。まとめると、センサー基板30の厚さhの増加に伴い電極間ギャップdを比例させて増加させることにより、ダンピング定数Dを一定値とする。また、マス質量Mは、厚さhに比例するが、ばね定数kを厚さhに反比例する設計とすることによりQ値を一定値とする。このとき、共振角周波数ωは、厚さhに反比例し、ブラウンノイズBNEAは、厚さhに反比例する。最終的に、感度Sは、厚さhに比例して大きくなり、感度SとブラウンノイズBNEAの比S/Nは、厚さhの2乗(h)に比例する。このように、ダンピング定数DとQ値とを一定に保ちつつ厚さhを増加させる場合は、厚さhだけを単純に増加させる場合と比べて、S/Nが大きくなると言える。
【0066】
以上のように、センサー基板30の厚さhが均一である構成の場合、厚さhを増加させて高感度化を試みた場合に、様々なトレードオフの関係により、感度SとブラウンノイズBNEAの比S/Nの大幅な増加が見込めない。つまり、(a)センサー基板30の厚さhのみを単純に増加させた場合は、ダンピング定数Dの増加により、ブラウンノイズBNEAや周波数特性の悪化を招くし、(b)ダンピング定数DとQ値とを一定に保ちつつセンサー基板30の厚さhを増加させた場合も、同様に、センサー基板30の厚さhに比例した感度Sの増加しか見込めない。さらに、ブラウンノイズBNEAもセンサー基板30の厚さhに比例して増加するため、感度SとブラウンノイズBNEAの比S/Nは、1のままである。
【0067】
そこで、物理量センサー1では、前述したように、可動部52において、第1、第2可動電極指64、69の厚さh1を一定としつつ、基部50の厚さh2だけを厚くしている。この場合、可動電極指と固定電極指との間に生じるダンピング定数Dは、上述の式(1)に表したように、厚さh1の3乗(h1)に比例し、電極間ギャップdの3乗(d)に反比例する。そして、厚さh1と電極間ギャップdが一定であるため、ダンピング定数Dも一定となる。
【0068】
また、基部50の厚さh2の増加に伴い、Q値が一定になるように設計すると、マス質量M、ばね定数k、ブラウンノイズBNEA、共振角周波数ωの各パラメータと、基部50の厚さh2との比例関係は、前述した2つの従来構造における場合と同じ関係になる。感度Sは、下記の式(12)に表される。電極間ギャップdは一定であり、マス質量Mは、基部50の厚さh2に比例し、ばね定数kは、基部50の厚さh2に反比例するため、感度Sは、基部50の厚さh2の2乗(h2)に比例する。このように、感度Sが厚さh2の2乗に比例するのは、電極間ギャップdが基部50の厚さh2に依存しないため、ダンピング定数Dを増加させずに基部50の厚さh2を増加させることができるためである。
【0069】
【数12】
【0070】
まとめると、本実施形態によれば、電極間ギャップdを一定にすればダンピング定数Dが一定となる。また、マス質量Mは、基部50の厚さh2に比例するが、ばね定数kを厚さh2に反比例する設計とすることにより、Q値が一定となる。このとき、共振角周波数ωは、厚さh2に反比例し、ブラウンノイズBNEAは、厚さh2に反比例する。そのため、最終的には、感度Sは、厚さh2の2乗(h2)に比例し、感度SとブラウンノイズBNEAの比S/Nは、厚さh2の3乗(h2)に比例して大きくなる。したがって、第1、第2可動電極指64、69の厚さh1を一定に保ったまま、基部50の厚さh2を増加させることにより、前述した2つの従来構造と比べて、感度Sを大きく向上させることが可能となる。その結果、優れた検出感度を有する物理量センサー1となる。
【0071】
なお、厚さh1、h2は、h1<h2の関係を満足していればよい。つまり、h2/h1>1の関係を満足していればよいが、例えば、h2/h1>1.5の関係を満足することが好ましく、h2/h1>2の関係を満足することがより好ましく、h2/h1>3の関係を満足することがさらに好ましい。これにより、第1、第2可動電極指64、69の厚さh1に対して、基部50の厚さh2を十分に大きくすることができ、基部50の質量を効果的に増加させることができる。そのため、上述した効果をより顕著に発揮することができる。なお、h2/h1の値は、各第1、第2可動電極指64、69でそれぞれ同一でも異なっていてもよい。さらには、1つの第1、第2可動電極指64、69でh2/h1が異なる部位を有していてもよい。
【0072】
また、h1<h2の関係は、少なくとも1つの第1、第2可動電極指64、69が満足していればよいが、50%以上の第1、第2可動電極指64、69が満足していることが好ましく、75%以上の第1、第2可動電極指64、69が満足していることがより好ましく、95%以上の第1、第2可動電極指64、69が満足していることがさらに好ましい。これにより、上述した効果をより顕著に発揮することができる。また、各第1、第2可動電極指64、69は、その長手方向の全域においてh1<h2の関係を満足していることが好ましいが、一部においてh1<h2の関係を満足していてもよい。
【0073】
また、h1<h2の関係は、少なくとも基部50の一部の領域において満足していればよいが、基部50の50%以上の領域で満足していることが好ましく、75%以上の領域で満足していることがより好ましく、95%以上の領域で満足していることがさらに好ましい。これにより、基部50の質量をより効果的に増加させることができ、上述した効果をより顕著に発揮することができる。
【0074】
また、図5および図6に示すように、基部50の厚さh2は、第1、第2固定電極指44、49の厚さh3よりも大きい。すなわち、基部50は、第1、第2固定電極指44、49よりもZ軸方向に沿う長さが長く、h3<h2の関係を満足している。これにより、基部50と第1、第2固定電極指44、49との対向面積を低減することができ、これらの間に存在するガスに起因したダンピング特性の悪化を抑制することができる。そのため、より優れた検出感度を有する物理量センサー1となる。
【0075】
なお、厚さh2、h3は、例えば、h2/h3>1.5の関係を満足することが好ましく、h2/h3>2の関係を満足することがより好ましく、h2/h3>3の関係を満足することがさらに好ましい。これにより、第1、第2固定電極指44、49の厚さh3に対して、基部50の厚さh2を十分に大きくすることができ、基部50の質量を効果的に増加させることができる。そのため、上述した効果をより顕著に発揮することができる。
【0076】
また、h3<h2の関係は、少なくとも1つの第1、第2固定電極指44、49が満足していればよいが、50%以上の第1、第2固定電極指44、49が満足していることが好ましく、75%以上の第1、第2固定電極指44、49が満足していることがより好ましく、95%以上の第1、第2固定電極指44、49が満足していることがさらに好ましい。これにより、上述した効果をより顕著に発揮することができる。また、各第1、第2固定電極指44、49は、その長手方向の全域においてh3<h2の関係を満足しているのが好ましいが、一部においてh3<h2の関係を満足していてもよい。
【0077】
特に、本実施形態では、第1、第2固定電極指44、49の厚さh3が第1、第2可動電極指64、69の厚さh1と等しい。すなわち、h1≒h3、特にh1=h3の関係を満足している。また、第1、第2可動電極指64、69と第1、第2固定電極指44、49とがZ軸方向において同じ高さに位置しており、Z軸方向にずれることなくX軸方向に並んでいる。そのため、第1、第2可動電極指64、69と第1、第2固定電極指44、49との対向面積を最大限に大きくすることができる。また、第1、第2固定電極指44、49が第1、第2可動電極指64、69に対してZ軸方向に突出し、当該突出した部分が基部50と対向することによるダンピング特性の悪化を効果的に抑制することができる。そのため、より優れた検出感度を有する物理量センサー1となる。なお、h1とh3が等しいとは、h1とh2が一致する場合の他、例えば、±5%以内程度の製造上生じうる誤差を含む意味である。ただし、厚さh3としては、特に限定されず、h3<h1であってもよいし、h3>h1であってもよい。また、h3>h1である場合には、例えば、h3=h2であってもよい。
【0078】
また、図8および図9に示すように、本実施形態では、ばね53、54の厚さh4は、基部50の厚さh2よりも小さい。すなわち、h4<h2の関係を満足している。このように、ばね53、54の厚さh4を基部50の厚さh2と異ならせることにより、基部50の厚さh2に関わらずにばね53、54の厚さh4を設計することができる。そのため、ばね53、54のばね定数の調整がより容易となる。
【0079】
また、厚さh4は、例えば、1>h4/h2≧0.3の関係を満足することが好ましく、1>h4/h2≧0.4の関係を満足することがより好ましく、1>h4/h2≧0.5の関係を満足することがさらに好ましい。このような関係を満足することにより、ばね53、54の厚さh4が過度に小さくなり、ばね53、54の機械的強度が過度に低下してしまうことを抑制することができる。そのため、十分な機械的強度を有する物理量センサー1が得られる。なお、厚さh4としては、特に限定されず、h4=h2であってもよいし、h4>h2であってもよい。
【0080】
また、本実施形態では、センサー素子3の各部の上面が面一となっており、第1、第2可動電極指64、69、第1、第2固定電極指44、49およびばね53、54の下面が、それぞれ、その他の部分の下面に対して上側にずれている。このような構成とすることにより、後述する製造方法でも説明するように、センサー素子3の製造が容易となる。
【0081】
以上、物理量センサー1について説明した。このような物理量センサー1は、前述したように、互いに直行する3軸をX軸、Y軸およびZ軸としたとき、Z軸に沿う方向を厚さ方向とする基板2と、基板2に設けられ、物理量である加速度Axを検出するセンサー素子3と、を備えている。また、センサー素子3は、基板2に対して加速度Axの検出軸であるX軸に沿う方向に変位する可動部52と、基板2に固定されている固定電極4と、を備え、可動部52は、固定電極4とX軸に沿う方向に対向して配置されている可動電極6と、可動電極6を支持し、可動電極6よりもZ軸に沿う方向の長さが長い質量部としての基部50と、を備えている。より具体的には、物理量センサー1では、可動電極6が備える第1、第2可動電極指64、69の厚さh1よりも基部50の厚さh2が大きくなっている。厚さh1、h2がこのような関係を満足することにより、可動部52のダンピング特性の悪化を抑制しつつ、可動部52の質量を増加させることができる。そのため、加速度Axの検出感度を効果的に高めることができ、優れた検出感度を有する物理量センサー1が得られる。
【0082】
また、前述したように、基部50は、固定電極4よりもZ軸方向に沿う長さが長い。具体的には、基部50の厚さh2は、固定電極4が有する第1、第2固定電極指44、49の厚さh3よりも大きい。このように、ばね53、54の厚さh4を基部50の厚さh2と異ならせることにより、基部50の厚さh2に関わらずにばね53、54の厚さh4を設計することができる。そのため、ばね53、54のばね定数の調整がより容易となる。
【0083】
また、前述したように、可動電極6および固定電極4は、Z軸方向に沿う長さが等しい。具体的には、可動電極6が有する第1、第2可動電極指64、69の厚さh1および固定電極4が有する第1、第2固定電極指44、49の厚さh3が等しい。そのため、第1、第2可動電極指64、69と第1、第2固定電極指44、49との対向面積を最大限に大きくしつつ、第1、第2固定電極指44、49が第1、第2可動電極指64、69に対してZ軸方向に突出し、当該突出した部分が基部50と対向することによるダンピング特性の悪化を効果的に抑制することができる。そのため、より優れた検出感度を有する物理量センサー1となる。
【0084】
また、前述したように、センサー素子3は、基板2に固定されている固定部51と、固定部51と可動部52とを接続するばね53、54と、を備えている。これにより、簡単な構成で、可動部52を基板2に対してX軸方向に変位可能とすることができる。
【0085】
また、前述したように、ばね53、54は、基部50よりもZ軸方向に沿う方向の長さが短い。すなわち、ばね53、54の厚さh4は、基部50の厚さh2よりも小さい。このように、ばね53、54の厚さh4を基部50の厚さh2と異ならせることにより、基部50の厚さh2に関わらずにばね53、54の厚さh4を設計することができる。そのため、ばね53、54のばね定数の調整がより容易となる。
【0086】
また、前述したように、固定電極4は、Y軸に沿う方向に並んで配置されている第1固定電極41および第2固定電極46を備えている。また、第1固定電極41は、第1幹部43と、第1幹部43からY軸に沿う方向の両側に延出している複数の第1固定電極指44と、を備え、第2固定電極46は、第2幹部48と、第2幹部48からY軸に沿う方向の両側に延出している複数の第2固定電極指49と、を備えている。このような構成とすることにより、各第1、第2固定電極指44、49の長さを抑えつつ、可動電極6と固定電極4との間に形成される静電容量を大きくすることができる。そのため、優れた機械的強度と優れた感度とを有する物理量センサー1となる。
【0087】
また、前述したように、第1幹部43および第2幹部48は、それぞれ、X軸およびY軸に対して傾斜した方向に沿って延在している。これにより、第1固定部42および第2固定部47を固定部51の近傍に設けることができる。そのため、熱や残留応力等に起因して基板2に反りや撓みが生じた際の可動部52と固定電極4とのZ軸方向のずれの差、具体的には、第1可動電極指64と第1固定電極指44とのZ軸方向のずれの差、第2可動電極指69と第2固定電極指49とのZ軸方向のずれの差を効果的に抑制することができる。その結果、検出精度の高い物理量センサー1となる。
【0088】
また、前述したように、第1幹部43および第2幹部48は、中心軸CすなわちX軸に対して線対称である。これにより、第1固定電極41および第2固定電極46をバランスよく配置することができる。
【0089】
また、前述したように、第1幹部43から第2幹部48側(中心軸C側)に延出している第1固定電極指442および第2幹部48から第1幹部43側(中心軸C側)に延出している第2固定電極指492は、それぞれ、X軸に沿って複数配置され、Y軸方向の長さがX軸方向プラス側(X軸に沿う方向の一方側)に向けて漸増している。反対に、第1幹部43から第2幹部48と反対側(中心軸Cと反対側)に延出している第1固定電極指441および第2幹部48から第1幹部43と反対側(中心軸Cと反対側)に延出している第2固定電極指492は、それぞれ、X軸に沿って複数配置され、Y軸方向の長さがX軸方向マイナス側(X軸に沿う方向の他方側)に向けて漸増している。これにより、複数の第1固定電極指44の中に、より短い第1固定電極指44を含ませることができ、第1固定電極指44全体として、より破損し難くなる。同様に、複数の第2固定電極指49の中に、より短い第2固定電極指49を含ませることができ、第2固定電極指49全体として、より破損し難くなる。第1可動電極指64および第2可動電極指69についても同様である。そのため、電極指44、49、64、69の破損がより効果的に抑制され、優れた耐衝撃性を発揮することのできる物理量センサー1となる。
【0090】
また、前述したように、X軸方向に隣り合う一対の第1固定電極指44の間に第1可動電極指64が位置し、対をなす一方の第1固定電極指44と第1可動電極指64との離間距離D1と、対をなさない他方の第1固定電極指44と第1可動電極指64との離間距離D2と、が異なっている。同様に、X軸方向に隣り合う一対の第2固定電極指49の間に第2可動電極指69が位置し、対をなす一方の第2固定電極指49と第2可動電極指69との離間距離D3と、対をなさない他方の第2固定電極指49と第2可動電極指69との離間距離D4と、が異なっている。これにより、対をなす第2固定電極指49との間に形成される静電容量をより大きくすることができ、対をなさない第2固定電極指49との間に形成される静電容量をより小さくすることができる。
【0091】
次に、物理量センサー1の製造方法について説明する。図10に示すように、物理量センサー1の製造方法は、基板2を形成する基板形成工程と、センサー基板30に凹部を形成するセンサー基板加工工程と、センサー基板30を基板2に接合する接合工程と、センサー基板30をエッチングしてセンサー素子3を形成するセンサー素子形成工程と、基板2に蓋8を接合する蓋接合工程と、を有している。
【0092】
(基板形成工程)
まず、ガラス基板で構成された基板2を準備し、フォトリソグラフィー技法とエッチング技法とを用いて、上面側に開放する凹部21および溝25、26、27と、マウント部22、23、24と、を形成する。次に、溝25、26、27内に配線71、72、73を形成する。なお、エッチング技法としては、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング等を用いることができる。
【0093】
(センサー基板形成工程)
次に、図11に示すように、センサー素子3の母材であり、シリコン基板からなるセンサー基板30を準備し、フォトリソグラフィー技法とエッチング技法とを用いて、基板2の下面側に開放する凹部301を形成する。ここで、凹部301は、第1、第2可動電極指64、69および第1、第2固定電極指44、49が形成される部分と、ばね53、54が形成される部分と、を含んで形成される。なお、エッチング技法としては、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング等を用いることができる。
【0094】
(接合工程)
次に、図12に示すように、センサー基板30を凹部301が形成された面を基板2側に向けた姿勢で、基板2の上面に接合する。なお、接合方法としては、特に限定されず、例えば、陽極接合を用いることができる。
【0095】
(センサー素子形成工程)
次に、必要に応じてCMP(化学機械研磨)等によってセンサー基板30をその上面側から薄肉化し、センサー基板30を所定の厚さとする。次に、図13に示すように、フォトリソグラフィー技法とエッチング技法とを用いてセンサー基板30をパターニングすることにより、センサー素子3を形成する。この際、凹部301と重なる部分から第1、第2可動電極指64、69、第1、第2固定電極指44、49およびばね53、54が形成される。なお、エッチング技法としては、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング等を用いることができる。
【0096】
(蓋接合工程)
次に、図14に示すように、蓋8を準備し、ガラスフリット89を用いて蓋8を基板2の上面に接合する。これにより、収納空間SSが形成されると共に、収納空間SSにセンサー素子3が収納される。
【0097】
以上の工程により、物理量センサー1が得られる。このような製造方法によれば、センサー基板30の下面に凹部301を形成しているため、物理量センサー1の製造がより容易となる。具体的には、基板2の下面に凹部301を形成することにより、基板2の上面をフラットに保つことができる。そのため、センサー素子形成工程において、フォトリソグラフィー技法によって基板2の上面にエッチング耐性マスクを形成することが容易となると共にその精度も高くなる。そのため、物理量センサー1の製造がより容易となる。
【0098】
<第2実施形態>
図15ないし図18は、それぞれ、本発明の第2実施形態に係る物理量センサーを示す断面図である。なお、図15は、図1中のB-B線断面図に相当し、図16は、図1中のC-C線断面図に相当し、図17は、図1中のD-D線断面図に相当し、図18は、図1中のE-E線断面図に相当する。
【0099】
本実施形態に係る物理量センサー1は、主に、センサー素子3の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の物理量センサー1と同様である。以下の説明では、第2実施形態の物理量センサー1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図15ないし図18では、前述した第1実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0100】
図15ないし図18に示すように、本実施形態の物理量センサー1では、センサー基板30の下面が面一となっており、第1、第2可動電極指64、69、第1、第2固定電極指44、49およびばね53、54の上面が、それぞれ、その他の部分の上面に対して下側にずれている。このような構成によっても、第1、第2可動電極指64、69の厚さh1、第1、第2固定電極指44、49の厚さh3およびばね53、54の厚さh4をそれぞれ基部50の厚さh2よりも小さくすることができる。
【0101】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0102】
<第3実施形態>
図19および図22は、それぞれ、本発明の第3実施形態に係る物理量センサーを示す断面図である。なお、図19は、図1中のB-B線断面図に相当し、図20は、図1中のC-C線断面図に相当し、図21は、図1中のD-D線断面図に相当し、図22は、図1中のE-E線断面図に相当する。
【0103】
本実施形態に係る物理量センサー1は、主に、センサー素子3の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の物理量センサー1と同様である。以下の説明では、第3実施形態の物理量センサー1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図19ないし図22では、前述した第1実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0104】
図19ないし図22に示すように、本実施形態の物理量センサー1では、第1、第2可動電極指64、69、第1、第2固定電極指44、49およびばね53、54の上面が、それぞれ、その他の部分の上面(以下、「センサー基板30の上主面」とも言う)に対して下側にずれ、第1、第2可動電極指64、69、第1、第2固定電極指44、49およびばね53、54の下面が、それぞれ、その他の部分の下面(以下、「センサー基板30の下主面」とも言う)に対して上側にずれている。また、センサー基板30の上主面に対する第1、第2可動電極指64、69、第1、第2固定電極指44、49およびばね53、54の上面のずれ量Daと、センサー基板30の下主面に対する第1、第2可動電極指64、69、第1、第2固定電極指44、49およびばね53、54の下面のずれ量Dbと、が等しい。これにより、センサー素子3が上下対称の形状となり、優れた重量バランスを有するものとなる。したがって、基板2に対して可動部52がよりスムーズに変位し、物理量センサー1の加速度Axの検出感度がより向上する。ただし、ずれ量Da、Dbは、互いに異なっていてもよい。
【0105】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0106】
<第4実施形態>
図23は、本発明の第4実施形態に係る電子機器としてのスマートフォンを示す平面図である。
【0107】
図23に示すスマートフォン1200は、本発明の電子機器を適用したものである。スマートフォン1200には、物理量センサー1と、物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1210と、が内蔵されている。物理量センサー1によって検出された検出データは、制御回路1210に送信され、制御回路1210は、受信した検出データからスマートフォン1200の姿勢や挙動を認識して、表示部1208に表示されている表示画像を変化させたり、警告音や効果音を鳴らしたり、振動モーターを駆動して本体を振動させることができる。
【0108】
このような電子機器としてのスマートフォン1200は、物理量センサー1を有している。そのため、前述した物理量センサー1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0109】
なお、本発明の電子機器は、前述したスマートフォン1200の他にも、例えば、パーソナルコンピューター、デジタルスチールカメラ、タブレット端末、時計、スマートウォッチ、インクジェットプリンタ、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等のウェアラブル端末、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器、魚群探知機、各種測定機器、移動体端末基地局用機器、車両、航空機、船舶等の各種計器類、フライトシミュレーター、ネットワークサーバー等に適用することができる。
【0110】
<第5実施形態>
図24は、本発明の第5実施形態に係る電子機器としての慣性計測装置を示す分解斜視図である。図25は、図24に示す慣性計測装置が有する基板の斜視図である。
【0111】
図24に示す電子機器としての慣性計測装置2000(IMU:Inertial Measurement Unit)は、自動車や、ロボットなどの被装着装置の姿勢や、挙動を検出する慣性計測装置である。慣性計測装置2000は、3軸加速度センサーおよび3軸角速度センサーを備えた6軸モーションセンサーとして機能する。
【0112】
慣性計測装置2000は、平面形状が略正方形の直方体である。また、正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に固定部としてのネジ穴2110が形成されている。この2ヶ所のネジ穴2110に2本のネジを通して、自動車などの被装着体の被装着面に慣性計測装置2000を固定することができる。なお、部品の選定や設計変更により、例えば、スマートフォンや、デジタルカメラに搭載可能なサイズに小型化することも可能である。
【0113】
慣性計測装置2000は、アウターケース2100と、接合部材2200と、センサーモジュール2300と、を有し、アウターケース2100の内部に、接合部材2200を介在させて、センサーモジュール2300を挿入した構成となっている。アウターケース2100の外形は、前述した慣性計測装置2000の全体形状と同様に、平面形状が略正方形の直方体であり、正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に、それぞれネジ穴2110が形成されている。また、アウターケース2100は、箱状であり、その内部にセンサーモジュール2300が収納されている。
【0114】
センサーモジュール2300は、インナーケース2310と、基板2320と、を有している。インナーケース2310は、基板2320を支持する部材であり、アウターケース2100の内部に収まる形状となっている。また、インナーケース2310には、基板2320との接触を防止するための凹部2311や後述するコネクター2330を露出させるための開口2312が形成されている。このようなインナーケース2310は、接合部材2200を介してアウターケース2100に接合されている。また、インナーケース2310の下面には接着剤を介して基板2320が接合されている。
【0115】
図25に示すように、基板2320の上面には、コネクター2330、Z軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340z、X軸、Y軸およびZ軸の各軸方向の加速度を検出する加速度センサー2350などが実装されている。また、基板2320の側面には、X軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340xおよびY軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340yが実装されている。これら各センサー2340x、2340y、2340z、2350として、本発明の物理量センサーを用いることができる。
【0116】
また、基板2320の下面には、制御IC2360が実装されている。制御IC2360は、MCU(Micro Controller Unit)であり、慣性計測装置2000の各部を制御する。記憶部には、加速度および角速度を検出するための順序と内容を規定したプログラムや、検出データをデジタル化してパケットデータに組込むプログラム、付随するデータなどが記憶されている。なお、基板2320にはその他にも複数の電子部品が実装されている。
【0117】
<第6実施形態>
図26は、本発明の第6実施形態に係る電子機器としての移動体測位装置の全体システムを示すブロック図である。図27は、図26に示す移動体測位装置の作用を示す図である。
【0118】
図26に示す移動体測位装置3000は、移動体に装着して用い、当該移動体の測位を行うための装置である。なお、移動体としては、特に限定されず、自転車、自動車、自動二輪車、電車、飛行機、船等のいずれでもよいが、本実施形態では移動体として四輪自動車を用いた場合について説明する。
【0119】
移動体測位装置3000は、慣性計測装置3100(IMU)と、演算処理部3200と、GPS受信部3300と、受信アンテナ3400と、位置情報取得部3500と、位置合成部3600と、処理部3700と、通信部3800と、表示部3900と、を有している。なお、慣性計測装置3100としては、例えば、前述した慣性計測装置2000を用いることができる。
【0120】
慣性計測装置3100は、3軸の加速度センサー3110と、3軸の角速度センサー3120と、を有している。演算処理部3200は、加速度センサー3110からの加速度データおよび角速度センサー3120からの角速度データを受け、これらデータに対して慣性航法演算処理を行い、移動体の加速度および姿勢を含む慣性航法測位データを出力する。
【0121】
また、GPS受信部3300は、受信アンテナ3400を介してGPS衛星からの信号を受信する。また、位置情報取得部3500は、GPS受信部3300が受信した信号に基づいて、移動体測位装置3000の位置(緯度、経度、高度)、速度、方位を表すGPS測位データを出力する。このGPS測位データには、受信状態や受信時刻等を示すステータスデータも含まれている。
【0122】
位置合成部3600は、演算処理部3200から出力された慣性航法測位データおよび位置情報取得部3500から出力されたGPS測位データに基づいて、移動体の位置、具体的には移動体が地面のどの位置を走行しているかを算出する。例えば、GPS測位データに含まれている移動体の位置が同じであっても、図27に示すように、地面の傾斜等の影響によって移動体の姿勢が異なっていれば、地面の異なる位置を移動体が走行していることになる。そのため、GPS測位データだけでは移動体の正確な位置を算出することができない。そこで、位置合成部3600は、慣性航法測位データを用いて、移動体が地面のどの位置を走行しているのかを算出する。
【0123】
位置合成部3600から出力された位置データは、処理部3700によって所定の処理が行われ、測位結果として表示部3900に表示される。また、位置データは、通信部3800によって外部装置に送信されるようになっていてもよい。
【0124】
<第7実施形態>
図28は、本発明の第7実施形態に係る移動体を示す斜視図である。
【0125】
図28に示す自動車1500は、本発明の移動体を適用した自動車である。この図において、自動車1500は、エンジンシステム、ブレーキシステムおよびキーレスエントリーシステムの少なくとも何れかのシステム1510を含んでいる。また、自動車1500には、物理量センサー1が内蔵されており、物理量センサー1によって車体1501の姿勢を検出することができる。物理量センサー1の検出信号は、制御装置1502に供給され、制御装置1502は、その信号に基づいてシステム1510を制御することができる。
【0126】
このように、移動体としての自動車1500は、物理量センサー1を有している。そのため、前述した物理量センサー1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0127】
なお、物理量センサー1は、他にも、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)に広く適用できる。また、移動体としては、自動車1500に限定されず、例えば、飛行機、ロケット、人工衛星、船舶、AGV(無人搬送車)、二足歩行ロボット、ドローン等の無人飛行機等にも適用することができる。
【0128】
以上、本発明の物理量センサー、電子機器および移動体を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、前述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0129】
また、前述した実施形態では、物理量センサーとして加速度を検出する加速度センサーについて説明したが、物理量センサーが検出する物理量としては、加速度に限定されず、例えば、角速度、圧力等であってもよい。
【符号の説明】
【0130】
1…物理量センサー、2…基板、21…凹部、22、23、24…マウント部、25、26、27…溝、3…センサー素子、30…センサー基板、301…凹部、4…固定電極、41…第1固定電極、42…第1固定部、43…第1幹部、44、441、442…第1固定電極指、46…第2固定電極、47…第2固定部、48…第2幹部、49、491、492…第2固定電極指、50…基部、51…固定部、52…可動部、528…第1開口部、529…第2開口部、53、54…ばね、6…可動電極、64、641、642…第1可動電極指、69、691、692…第2可動電極指、71、72、73…配線、8…蓋、81…凹部、89…ガラスフリット、1200…スマートフォン、1208…表示部、1210…制御回路、1500…自動車、1501…車体、1502…制御装置、1510…システム、2000…慣性計測装置、2100…アウターケース、2110…ネジ穴、2200…接合部材、2300…センサーモジュール、2310…インナーケース、2311…凹部、2312…開口、2320…基板、2330…コネクター、2340x、2340y、2340z…角速度センサー、2350…加速度センサー、2360…制御IC、3000…移動体測位装置、3100…慣性計測装置、3110…加速度センサー、3120…角速度センサー、3200…演算処理部、3300…GPS受信部、3400…受信アンテナ、3500…位置情報取得部、3600…位置合成部、3700…処理部、3800…通信部、3900…表示部、A…面積、Ax…加速度、C…中心軸、D1、D2、D3、D4…離間距離、Da、Db…ずれ量、h、h1~h4…厚さ、l…長さ、Q1、Q2…軸、SS…収納空間、b…ばね長、d…電極間ギャップ、w…ばね幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28