(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】揮発性液体判定装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 3/38 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
G01M3/38 L
(21)【出願番号】P 2018224834
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】浅野 基広
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝生
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-114500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0136072(US,A1)
【文献】特表2007-515621(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110036(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/203479(WO,A1)
【文献】特開2001-067566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
G01J 5/00- 5/62
G01N 21/00-21/01;21/17-21/61
G06T 7/00- 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性液体を貯蔵するタンクを撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像に基づき、前記揮発性液体が揮発して形成されたガス雲を抽出する抽出部と、
前記ガス雲の画像における面積であるガス雲面積を算出する計算部と、
前記ガス雲面積に基づき、前記揮発性液体の揮発レベルを判定する判定部と、を備え、
前記撮像部は、所定の撮像時間の間、前記タンクを撮像し、
前記抽出部は、前記撮像時間の間、前記撮像部により撮像された前記タンクの画像から、前記ガス雲を複数回抽出し、
前記計算部は、複数回抽出された前記ガス雲の画像における面積であるガス雲面積をそれぞれ算出し、算出した複数の前記ガス雲面積に基づき、前記ガス雲の画像における最大面積であるガス雲最大面積を算出し、
前記判定部は、前記ガス雲最大面積に基づき、前記揮発性液体の揮発レベルを判定する、
揮発性液体判定装置。
【請求項2】
前記撮像部は、前記撮像時間の間、所定のフレームレートで前記タンクを撮像して複数のフレーム画像を出力し、
前記抽出部は、前記複数のフレーム画像毎に、前記ガス雲を抽出し、
前記計算部は、抽出された複数の前記ガス雲の画像における面積であるガス雲面積をそれぞれ算出し、算出された複数の前記ガス雲面積のうち、最大値を前記ガス雲最大面積として算出する、
請求項
1に記載の揮発性液体判定装置。
【請求項3】
判定時間は、前記撮像時間より短い時間であると定義され、
閾値時間は、前記判定時間より短い時間であると定義され、
前記撮像部は、前記撮像時間の間、前記タンクを撮像して複数のフレーム画像を出力し、
前記抽出部は、前記複数のフレーム画像のうち、時系列で前記判定時間毎に、連続的又は間欠的に合計で前記閾値時間以上のフレーム画像において前記ガス雲であると判定した領域を前記ガス雲として抽出することにより、複数の前記ガス雲を抽出し、
前記計算部は、抽出された前記複数のガス雲の画像における面積であるガス雲面積をそれぞれ算出し、算出された前記ガス雲面積のうち、最大値を前記ガス雲最大面積として算出する、
請求項
1に記載の揮発性液体判定装置。
【請求項4】
前記タンクの上端から前記揮発性液体の液面までの長さを取得する取得部を更に備え、
前記計算部は、取得された前記長さに基づき、算出した前記ガス雲最大面積を補正する、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の揮発性液体判定装置。
【請求項5】
前記計算部は、前記タンクと前記撮像部との間の距離に基づき、前記ガス雲面積として実際の面積を算出する、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の揮発性液体判定装置。
【請求項6】
前記タンクは、前記タンクの側壁の内面を摺動しつつ前記揮発性液体の液面とともに昇降する摺動部を含み、
前記判定部は、前記タンクのサイズを取得し、前記ガス雲最大面積と前記タンクのサイズとの比に基づき、前記摺動部の劣化度合いを判定する、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の揮発性液体判定装置。
【請求項7】
前記判定部の判定結果を保存するための記憶部と、
前記タンクの環境の気象条件を測定する測定部と、を更に備え、
前記判定部は、前記気象条件を時刻情報とともに前記判定結果に対応付けて前記記憶部に保存する、
請求項1~
6のいずれか1項に記載の揮発性液体判定装置。
【請求項8】
揮発性液体を貯蔵するタンクを撮像する撮像工程と、
前記撮像工程において撮像された画像に基づき、前記揮発性液体が揮発して形成されたガス雲を抽出する抽出工程と、
前記ガス雲の画像における面積であるガス雲面積を算出する計算工程と、
前記ガス雲面積に基づき、前記揮発性液体の揮発レベルを判定する判定工程と、を備え、
前記撮像工程は、所定の撮像時間の間、前記タンクを撮像し、
前記抽出工程は、前記撮像時間の間、前記撮像工程により撮像された前記タンクの画像から、前記ガス雲を複数回抽出し、
前記計算工程は、複数回抽出された前記ガス雲の画像における面積であるガス雲面積をそれぞれ算出し、算出した複数の前記ガス雲面積に基づき、前記ガス雲の画像における最大面積であるガス雲最大面積を算出し、
前記判定工程は、前記ガス雲最大面積に基づき、前記揮発性液体の揮発レベルを判定する、
揮発性液体判定方法。
【請求項9】
揮発性液体を貯蔵するタンクを撮像する撮像工程と、
前記撮像工程において撮像された画像に基づき、前記揮発性液体が揮発して形成されたガス雲を抽出する抽出工程と、
前記ガス雲の画像における面積であるガス雲面積を算出する計算工程と、
前記ガス雲面積に基づき、前記揮発性液体の揮発レベルを判定する判定工程と、をコンピュータに実行させ
る揮発性液体判定プログラムであって、
前記撮像工程は、所定の撮像時間の間、前記タンクを撮像し、
前記抽出工程は、前記撮像時間の間、前記撮像工程により撮像された前記タンクの画像から、前記ガス雲を複数回抽出し、
前記計算工程は、複数回抽出された前記ガス雲の画像における面積であるガス雲面積をそれぞれ算出し、算出した複数の前記ガス雲面積に基づき、前記ガス雲の画像における最大面積であるガス雲最大面積を算出し、
前記判定工程は、前記ガス雲最大面積に基づき、前記揮発性液体の揮発レベルを判定する、
揮発性液体判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクに貯蔵された揮発性液体の揮発レベルを判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス収容部から漏洩したガスを検出する技術として、特許文献1で提案されている技術がある。この特許文献1に記載の技術では、ガス収容部における漏洩位置に応じた、漏洩ガス雲の2次元モデル形状を風向及び風速毎に予め作成して記憶しておき、この2次元モデル形状を用いて、ガスの漏洩位置等が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、従来から、揮発性液体を貯蔵するタンクが汎用されている。このようなタンクにおいて、揮発性液体の揮発成分により形成されたガス雲を検出する際に、上記特許文献1に記載の技術を適用することが考えられる。しかしながら、例えばタンクが屋外に設置されている場合には、風向及び風速は一定ではなく、任意の周期で頻繁に変化することがあり得る。このため、一定の風向及び風速を考慮して作成された2次元モデルを用いる特許文献1に記載の技術では、十分に対応することが困難となっている。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、揮発性液体の揮発レベルを、より正確に判定することが可能な揮発性液体判定装置、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る揮発性液体判定装置は、
揮発性液体を貯蔵するタンクを撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像に基づき、前記揮発性液体が揮発して形成されたガス雲を抽出する抽出部と、
前記ガス雲の画像における面積であるガス雲面積を算出する計算部と、
前記ガス雲面積に基づき、前記揮発性液体の揮発レベルを判定する判定部と、を備え、
前記撮像部は、所定の撮像時間の間、前記タンクを撮像し、
前記抽出部は、前記撮像時間の間、前記撮像工程により撮像された前記タンクの画像から、前記ガス雲を複数回抽出し、
前記計算部は、複数回抽出された前記ガス雲の画像における面積であるガス雲面積をそれぞれ算出し、算出した複数の前記ガス雲面積に基づき、前記ガス雲の画像における最大面積であるガス雲最大面積を算出し、
前記判定部は、前記ガス雲最大面積に基づき、前記揮発性液体の揮発レベルを判定する。
【0007】
本発明の第2態様に係る揮発性液体判定方法は、
揮発性液体を貯蔵するタンクを撮像する撮像工程と、
前記撮像工程において撮像された画像に基づき、前記揮発性液体が揮発して形成されたガス雲を抽出する抽出工程と、
前記ガス雲の画像における面積であるガス雲面積を算出する計算工程と、
前記ガス雲面積に基づき、前記揮発性液体の揮発レベルを判定する判定工程と、を備え、
前記撮像工程は、所定の撮像時間の間、前記タンクを撮像し、
前記抽出工程は、前記撮像時間の間、前記撮像工程により撮像された前記タンクの画像から、前記ガス雲を複数回抽出し、
前記計算工程は、複数回抽出された前記ガス雲の画像における面積であるガス雲面積をそれぞれ算出し、算出した複数の前記ガス雲面積に基づき、前記ガス雲の画像における最大面積であるガス雲最大面積を算出し、
前記判定工程は、前記ガス雲最大面積に基づき、前記揮発性液体の揮発レベルを判定する。
【0008】
本発明の第3態様に係る揮発性液体判定プログラムは、
揮発性液体を貯蔵するタンクを撮像する撮像工程と、
前記撮像工程において撮像された画像に基づき、前記揮発性液体が揮発して形成されたガス雲を抽出する抽出工程と、
前記ガス雲の画像における面積であるガス雲面積を算出する計算工程と、
前記ガス雲面積に基づき、前記揮発性液体の揮発レベルを判定する判定工程と、をコンピュータに実行させる揮発性液体判定プログラムであって、
前記撮像工程は、所定の撮像時間の間、前記タンクを撮像し、
前記抽出工程は、前記撮像時間の間、前記撮像工程により撮像された前記タンクの画像から、前記ガス雲を複数回抽出し、
前記計算工程は、複数回抽出された前記ガス雲の画像における面積であるガス雲面積をそれぞれ算出し、算出した複数の前記ガス雲面積に基づき、前記ガス雲の画像における最大面積であるガス雲最大面積を算出し、
前記判定工程は、前記ガス雲最大面積に基づき、前記揮発性液体の揮発レベルを判定する、
揮発性液体判定プログラムである。
【0009】
第1態様、第2態様、第3態様によれば、揮発性液体を貯蔵するタンクが撮像され、その撮像された画像に基づき、揮発性液体が揮発して形成されたガス雲が抽出される。抽出されたガス雲の画像における面積であるガス雲面積が算出され、算出されたガス雲面積に基づき、揮発性液体の揮発レベルが判定される。このため、揮発性液体の揮発レベルを、より正確に判定することができる。
【0011】
上記第1態様、第2態様、第3態様によれば、撮像時間の間、タンクが撮像される。このため、タンク内にガス雲が溜まって、最初は撮像部により撮像されない場合でも、撮像時間が経過するまでには、タンクの外部にガス雲が出ると考えられるので、ガス雲を撮像することが可能になる。また、撮像時間の間、撮像されたタンクの画像から、ガス雲が複数回抽出される。複数回抽出されたガス雲のガス雲面積がそれぞれ算出される。複数のガス雲面積に基づき、ガス雲最大面積が算出される。ガス雲最大面積に基づき、揮発性液体の揮発レベルが判定される。ガス雲最大面積は、少なくとも、そのガス雲を形成するだけの揮発性液体の揮発成分が存在していたということを表す。このため、揮発性液体の揮発レベルを、より正確に判定することができる。
【0012】
上記第1態様において、例えば、
前記撮像部は、前記撮像時間の間、所定のフレームレートで前記タンクを撮像して複数のフレーム画像を出力し、
前記抽出部は、前記複数のフレーム画像毎に、前記ガス雲を抽出し、
前記計算部は、抽出された複数の前記ガス雲の画像における面積であるガス雲面積をそれぞれ算出し、算出された複数の前記ガス雲面積のうち、最大値を前記ガス雲最大面積として算出してもよい。
【0013】
本態様によれば、撮像時間の間、所定のフレームレートでタンクが撮像されて複数のフレーム画像が出力され、複数のフレーム画像毎に、ガス雲が抽出される。抽出された複数のガス雲面積がそれぞれ算出され、算出された複数のガス雲面積のうち、最大値がガス雲最大面積として算出される。このため、複数のフレーム画像のうち、ガス雲が最大になったときの面積が最大面積とされるので、ガス雲最大面積を、より正確に算出することができる。
【0014】
上記第1態様において、例えば、
判定時間は、前記撮像時間より短い時間であると定義され、
閾値時間は、前記判定時間より短い時間であると定義され、
前記撮像部は、前記撮像時間の間、前記タンクを撮像して複数のフレーム画像を出力し、
前記抽出部は、前記複数のフレーム画像のうち、時系列で前記判定時間毎に、連続的又は間欠的に合計で前記閾値時間以上のフレーム画像において前記ガス雲であると判定した領域を前記ガス雲として抽出することにより、複数の前記ガス雲を抽出し、
前記計算部は、抽出された前記複数のガス雲の画像における面積であるガス雲面積をそれぞれ算出し、算出された前記ガス雲面積のうち、最大値を前記ガス雲最大面積として算出してもよい。
【0015】
本態様によれば、複数のフレーム画像のうち、時系列で判定時間毎に、連続的又は間欠的に合計で閾値時間以上のフレーム画像においてガス雲であると判定した領域がガス雲として抽出されることにより、複数のガス雲が抽出される。したがって、例えば瞬間的に強い風が吹いてガス雲が広がった場合でも、閾値時間未満のフレーム画像においてガス雲であると判定された領域は、ガス雲として抽出されない。このため、より正確にガス雲を抽出することができる。その結果、ガス雲最大面積を、より正確に算出することができ、揮発性液体の揮発レベルを、より正確に判定することができる。
【0016】
上記第1態様において、例えば、
前記タンクの上端から前記揮発性液体の液面までの長さを取得する取得部を更に備え、
前記計算部は、取得された前記長さに基づき、算出した前記ガス雲最大面積を補正してもよい。
【0017】
本態様では、タンクの上端から揮発性液体の液面までの長さに基づき、算出されたガス雲最大面積が補正される。タンクが撮像された画像に基づき、抽出されたガス雲は、実際には、タンクの上端から揮発性液体の液面まで延びていると考えられる。このため、本態様によれば、ガス雲最大面積を、より正確に算出することができる。
【0018】
上記第1態様において、例えば、
前記計算部は、前記タンクと前記撮像部との間の距離に基づき、前記ガス雲面積として実際の面積を算出してもよい。
【0019】
上記第1態様において、例えば、
前記タンクは、前記タンクの側壁の内面を摺動しつつ前記揮発性液体の液面とともに昇降する摺動部を含み、
前記判定部は、前記タンクのサイズを取得し、前記ガス雲最大面積と前記タンクのサイズとの比に基づき、前記摺動部の劣化度合いを判定してもよい。
【0020】
本態様では、ガス雲は、タンクの側壁の内面を摺動しつつ揮発性液体の液面とともに昇降する摺動部から漏洩した、揮発性液体の揮発成分により形成される。この場合、ガス雲最大面積が同じでも、タンクのサイズが大きい場合に比べて、タンクのサイズが小さい方が、摺動部の劣化が進んでいると考えられる。そこで、本態様によれば、ガス雲最大面積とタンクのサイズとの比に基づき、摺動部の劣化度合いが判定される。このため、摺動部の劣化度合いを、より正確に判定することができる。
【0021】
上記第1態様において、例えば、
前記判定部の判定結果を保存するための記憶部と、
前記タンクの環境の気象条件を測定する測定部と、を更に備え、
前記判定部は、前記気象条件を時刻情報とともに前記判定結果に対応付けて前記記憶部に保存してもよい。
【0022】
本態様によれば、気象条件が時刻情報とともに判定結果に対応付けて記憶部に保存される。したがって、異なる時刻に判定された判定結果を比較する際に、気象条件が類似していれば、高い信頼度で比較することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る揮発性液体判定装置、方法及びプログラムは、揮発性液体の揮発レベルを、より正確に判定することができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態の揮発性液体判定装置の構成例を概略的に示すブロック図である。
【
図2】漏洩判定ユニットのハードウェア構成例を概略的に示すブロック図である。
【
図3】抽出部によるガス雲の抽出結果を表すフレーム画像を概略的に示す図である。
【
図5】揮発性液体判定装置の動作例を概略的に示すフローチャートである。
【
図6】抽出部によるガス雲の抽出結果を表すフレーム画像を概略的に示す図である。
【
図7】抽出部によるガス雲の抽出結果を表すフレーム画像を概略的に示す図である。
【
図8】ガス雲最大面積を算出する別の手順例を概略的に示すフローチャートである。
【
図9】第2の変形された実施形態の揮発性液体判定装置の構成例を概略的に示すブロック図である。
【
図10】ガス雲最大面積を表すフレーム画像を概略的に示す図である。
【
図11】ガス雲最大面積を表すフレーム画像を概略的に示す図である。
【
図12】
図10のガス雲最大面積の補正例を概略的に示す図である。
【
図13】
図11のガス雲最大面積の補正例を概略的に示す図である。
【
図14】ガス雲最大面積を表すフレーム画像と、赤外線カメラにより撮像された浮き屋根式屋外タンクの面積と、を概略的に示す図である。
【
図15】ガス雲最大面積を表すフレーム画像と、赤外線カメラにより撮像された浮き屋根式屋外タンクの面積と、を概略的に示す図である。
【
図16】揮発性液体を貯蔵する浮き屋根式屋外タンクを概略的に示す断面図である。
【
図17】揮発性液体を貯蔵する浮き屋根式屋外タンクを概略的に示す断面図である。
【
図18】浮き屋根式屋外タンクを撮像するカメラの配置例を概略的に示す図である。
【
図19】カメラにより撮像された浮き屋根式屋外タンクの映り方の例を概略的に示す図である。
【
図20】カメラにより撮像された浮き屋根式屋外タンクの映り方の例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(本発明の基礎となった知見)
図16、
図17は、それぞれ、揮発性液体を貯蔵する浮き屋根式屋外タンクを概略的に示す断面図である。
図18は、浮き屋根式屋外タンクを撮像するカメラの配置例を概略的に示す図である。
図19、
図20は、それぞれ、カメラにより撮像された浮き屋根式屋外タンクの映り方の例を概略的に示す図である。
図16~
図20を用いて、本発明の基礎となった知見が説明される。
【0026】
例えば
図16において、揮発性液体10を貯蔵する浮き屋根式屋外タンク15は、外観がほぼ円柱形状で、浮き屋根20が揮発性液体10の上に浮かべられた構造を有する。このため、
図16、
図17に示されるように、揮発性液体10の受入れ及び払出しによる揮発性液体10の液面の昇降とともに、浮き屋根20が昇降する。そこで、浮き屋根式屋外タンク15の側壁内面25と浮き屋根20の外周との間には、シール部材30が配設されている。シール部材30は、浮き屋根20が昇降すると、側壁内面25を摺動する。このシール部材30によって、揮発性液体10への雨水の混入、揮発性液体10の蒸発等が防止されている。
【0027】
揮発性液体10としては、原油又はガソリンが例示される。シール部材30の経年劣化等に起因して、シール部材30と浮き屋根式屋外タンク15の側壁内面25との間に隙間が生じると、この隙間から揮発性液体10の揮発成分が漏洩する。そこで、浮き屋根式屋外タンク15を赤外線カメラで撮像して、揮発性液体10の揮発成分で形成されたガス雲を検出することが考えられる。
【0028】
浮き屋根式屋外タンク15から揮発性液体10の揮発成分が漏洩した場合、例えば原油及びガソリンの比重が空気より大きいため、原油及びガソリンの揮発成分は、浮き屋根20の直ぐ上方に溜まり易くなる。この浮き屋根20の直ぐ上方に溜まった揮発成分は、風が吹いたときに初めて、浮き屋根式屋外タンク15の外側に拡散して、外部から見えることになる。一方、上記特許文献1に記載の装置が検出対象としている配管等からのガス漏洩は、通常、直ぐに大気中に拡散して見ることができるので、屋根式屋外タンク15の場合と異なっている。
【0029】
しかしながら、浮き屋根式屋外タンク15を見下ろして浮き屋根20を直接撮像できるように、赤外線カメラを設置するための専用の設置塔を建設することは、コスト及びスペースの観点から現実的ではない。このため、例えば
図18に示されるように、浮き屋根式屋外タンク15を撮像する赤外線カメラ100は、既存の建物35に設置されることになる。この場合、建物35が十分に高ければ、例えば
図19に示されるように、浮き屋根式屋外タンク15の浮き屋根20を直接撮像することができる。なお、
図19では、シール部材30の図示が省略されている。
【0030】
しかし、一般に、浮き屋根式屋外タンク15は非常に大型のものが多く、赤外線カメラ100で撮像しようとしても、浮き屋根式屋外タンク15の浮き屋根20まで見える程度に高い建物35が浮き屋根式屋外タンク15の近くにあるとは限らない。このため、建物35の高さが不十分であれば、例えば
図20に示されるように、浮き屋根式屋外タンク15の上端より下方であって、浮き屋根20の上方に溜まっている揮発性液体10の揮発成分を撮像することができない。
【0031】
一方、上記特許文献1に記載の装置が検出対象としている配管等からのガス漏洩は、通常、直ぐに大気中に拡散する。したがって、配管等からのガス漏洩に比べて、浮き屋根式屋外タンク15から漏洩した揮発性液体10の揮発成分を検出することは、困難になっている。そこで、本発明者は、揮発性液体10の揮発レベルを、より正確に判定することが可能な発明を想到した。
【0032】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態が、図面を参照しながら説明される。なお、各図面において、同じ構成要素には同じ符号が用いられ、詳細な説明は、適宜、省略される。
【0033】
図1は、本実施形態の揮発性液体判定装置50の構成例を概略的に示すブロック図である。
図2は、漏洩判定ユニット200のハードウェア構成例を概略的に示すブロック図である。本実施形態の揮発性液体判定装置50は、赤外線カメラ100、漏洩判定ユニット200を備える。
【0034】
図1において、赤外線カメラ100(撮像部の一例に相当)は、赤外線を用いて、浮き屋根式屋外タンク15(例えば
図18、タンクの一例に相当)を含む被写体を所定のフレームレートで撮像して、複数のフレーム赤外画像(以下、単に「フレーム画像」と称される)を出力する。赤外線カメラ100は、光学系110、フィルター120、二次元イメージセンサー130、信号処理部140及び通信インターフェース(IF)150を備える。
【0035】
光学系110は、被写体のフレーム赤外画像を二次元イメージセンサー130の受光面に結像する。フィルター120は、光学系110と二次元イメージセンサー130との間に配置され、光学系110を通過した赤外光のうち、特定波長帯の赤外線のみを通過させる。フィルター120を通過する特定波長帯は、検知対象の揮発性液体10の種類に依存する。揮発性液体10が、例えばガソリン又は原油の場合、3.2~3.4[μm]の波長帯を通過させるフィルター120が用いられる。
【0036】
二次元イメージセンサー130は、例えば、冷却型インジウムアンチモン(InSb)イメージセンサーであり、フィルター120を通過した赤外線を受光して、受光信号を出力する。信号処理部140は、二次元イメージセンサー130から出力されたアナログの受光信号を、デジタル信号に変換し、公知の画像処理をする。信号処理部140は、画像処理後のデジタル信号であるフレーム赤外画像の画像データFDを出力する。通信IF150は、漏洩判定ユニット200との通信を行う。通信IF150は、信号処理部140から出力された画像データFDを漏洩判定ユニット200へ送信する。
【0037】
漏洩判定ユニット200は、例えば、パーソナルコンピュータ(デスクトップ型コンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレット型コンピュータ等を含む)、スマートフォン等で構成される。漏洩判定ユニット200は、ディスプレイ210、操作部220、通信IF230、制御回路240、電子ブザー270を備える。制御回路240は、中央演算処理装置(CPU)250、メモリ260、周辺回路(図示省略)を含む。
【0038】
通信IF230は、赤外線カメラ100の通信IF150と通信を行う。通信IF230は、赤外線カメラ100の通信IF150から送信された画像データFDを受信する。通信IF230は、受信した画像データFDを制御回路240へ出力する。電子ブザー270は、CPU250により制御されて、後述のように、例えば浮き屋根式屋外タンク15の点検を促す等の警報を発する。
【0039】
ディスプレイ210は、例えば液晶ディスプレイパネルを含む。ディスプレイ210は、CPU250により制御されて、後述のように、例えばタンク点検等のメッセージを表示する。なお、ディスプレイ210は、液晶ディスプレイパネルに限られない。ディスプレイ210は、有機EL(electroluminescence)パネルなどの他のパネルを含んでもよい。
【0040】
操作部220は、例えばマウス又はキーボードを含む。操作部220は、ユーザにより操作されると、その操作内容を示す操作信号を制御回路240に出力する。なお、ディスプレイ210がタッチパネル式ディスプレイの場合には、マウス又はキーボードに代えて、タッチパネル式ディスプレイが操作部220を兼用してもよい。
【0041】
メモリ260は、
図2に示されるように、例えば、リードオンリーメモリ(ROM)261、ランダムアクセスメモリ(RAM)262、ハードディスクドライブ(HDD)263を含む。なお、メモリ260の構成は、
図2に示される例に限られない。例えば、メモリ260は、HDD263を含まなくてもよい。例えば、メモリ260は、更に、電気的に消去書き換え可能なROM(EEPROM)を含んでもよい。メモリ260の例えばHDD263は、CPU250を動作させる本実施形態の制御プログラムを記憶する。
【0042】
CPU250は、HDD263に記憶された本実施形態の制御プログラムに従って動作することによって、抽出部251、計算部252、判定部253の機能を有する。すなわち、HDD263に記憶されている本実施形態の制御プログラムは、抽出部251を実現する抽出プログラム、計算部252を実現する計算プログラム、判定部253を実現する判定プログラムを含む。抽出プログラム、計算プログラム、判定プログラムは、記憶領域が分けられた一つの媒体に記憶されてもよい。代替的に、抽出プログラム、計算プログラム、判定プログラムは、互いに別の媒体に記憶されてもよい。
【0043】
なお、CPU250を動作させる本実施形態の制御プログラムを、HDD263に代えて、ROM261が記憶してもよく、EEPROMが記憶してもよい。また、漏洩判定ユニット200は、CPU250に代えて又は加えて、CPU250の全機能又は一部の機能と同一機能を果たす他のハードウェアを備えてもよい。
【0044】
図2において、バス201は、CPU250、ROM261、RAM262、HDD263、ディスプレイ210、操作部220、通信IF230、電子ブザー270を互いに接続する。バス201は、
図2の例では、全ての接続対象を共通に接続する単一のバスで構成されている。代替的に、バス201は、例えば、一部の接続対象を接続する第1バスと、残りの接続対象を接続する第2バスと、第1バス及び第2バスを接続する第3バスと、を含む複数のバスで構成されてもよい。
【0045】
CPU250の抽出部251は、赤外線カメラ100から送信された画像データFDに対して、公知の手法で画像処理を行う。抽出部251により行われる画像処理は、例えば特許第6245418号公報に記載されている手法を採用することができる。特許第6245418号公報には、ガス漏れの監視対象を複数の時刻で撮影した赤外画像に対して画像処理をするガス検知用画像処理装置であって、漏れたガスによる温度変化を示す第1の周波数成分データよりも周波数が低く、前記監視対象の背景の温度変化を示す第2の周波数成分データを、前記赤外画像を示す画像データから除く処理をする画像処理部を備えるガス検知用画像処理装置が記載されている。なお、抽出部251は、他の公知の手法で画像処理を行ってもよい。
【0046】
抽出部251は、上記画像処理を行った後で、更に、公知の手法でノイズ除去処理及び閾値処理を行って、画像データFDから、揮発性液体10の揮発成分で形成されたガス雲を抽出する。
【0047】
図3は、抽出部251によるガス雲の抽出結果を表すフレーム画像を概略的に示す図である。
図3の左上図は、赤外線カメラ100による撮像開始時の浮き屋根式屋外タンク15のフレーム画像を示す。揮発性液体10の揮発成分で形成されたガス雲(以下、単に「ガス雲」と称される)が、無風のために浮き屋根20の直ぐ上方に溜まっている状態では、赤外線カメラ100に映らないため、
図3の左上図に示されるように、抽出部251によりガス雲が抽出されないこともある。
【0048】
このため、本実施形態では、赤外線カメラ100は、第1時間T1(本実施形態では例えばT1=10[分])に亘って、浮き屋根式屋外タンク15を撮像して、ガス雲が映るか否かを確認する。本実施形態において、第1時間T1は撮像時間の一例に相当する。この場合において、本実施形態では、赤外線カメラ100は、第2時間T2(本実施形態では例えばT2=1/10[秒])毎に、浮き屋根式屋外タンク15を撮像して、フレーム画像を出力する。言い換えると、赤外線カメラ100は、1/T2[フレーム/秒]のフレームレート(本実施形態では例えば10[フレーム/秒]のフレームレート)で、浮き屋根式屋外タンク15を撮像する。
【0049】
図3の右上図は、撮像開始から1分経過時の浮き屋根式屋外タンク15のフレーム画像を示す。この右上図では、ガス雲40が抽出されている。
図3の左下図は、撮像開始から6分経過時の浮き屋根式屋外タンク15のフレーム画像を示す。この左下図では、撮像開始時(左上図)と同様に、ガス雲40が抽出されていない。
図3の右下図は、撮像開始から10分経過時の浮き屋根式屋外タンク15のフレーム画像を示す。この右下図では、ガス雲40が抽出されている。
【0050】
図1に戻って、CPU250の計算部252は、各フレーム画像において抽出されたガス雲40の画像における面積であるガス雲面積をそれぞれ算出し、ガス雲面積の最大値であるガス雲最大面積を算出する。計算部252は、本実施形態では、抽出されたガス雲40に対応する二次元イメージセンサー130の画素数を、ガス雲40の画像における面積であるガス雲面積として算出する。代替的に、計算部252は、二次元イメージセンサー130の画素とガス雲40の大きさとの関係を表す換算係数を用いて、実際のガス雲40を赤外線カメラ100の光軸に直交する平面に投影した投影像の面積である実面積を算出してもよい。この換算係数は、赤外線カメラ100と浮き屋根式屋外タンク15との間の距離、光学系110の倍率等を考慮して予め求めて、メモリ260(例えばROM261又はHDD263)に記憶させておいてもよい。
【0051】
上述のように、本実施形態では、赤外線カメラ100は、第1時間T1(本実施形態では例えばT1=10[分])に亘って、第2時間T2(本実施形態では例えばT2=1/10[秒])毎に、浮き屋根式屋外タンク15を撮像して、フレーム画像を出力する。したがって、本実施形態では6000個のフレーム画像が出力される。このため、計算部252は、6000個のフレーム画像のガス雲の面積を算出し、互いに比較して、最大面積を算出する。
図3の例では、計算部252は、
図3の右下図(撮像開始から10分経過時)のガス雲40の面積を最大面積として算出する。
【0052】
図1に戻って、CPU250の判定部253は、計算部252によって算出されたガス雲40の最大面積と、判定基準情報400(
図4)と、に基づき、浮き屋根式屋外タンク15のリスク度合い(揮発性液体10の揮発レベルの一例に相当)を判定する。
【0053】
図4は、判定基準情報400を概略的に示す図である。判定基準情報400は、メモリ260の例えばROM261又はHDD263に、上記判定プログラムの一部として、予め記憶されている。判定基準情報400は、レベル欄401、リスク欄402、判定基準欄403、対処欄404を含む。レベル欄401には、判定レベルが登録されている。本実施形態では、レベル欄401には、「0」、「1」、「2」、「3」の4レベルが登録されている。リスク欄402には、浮き屋根式屋外タンク15のリスク度合いが登録されている。本実施形態では、リスク欄402には、レベル欄401の「0」、「1」、「2」、「3」に対応して、それぞれ、「無し」、「軽」、「中」、「高」の4つのリスク度合いが登録されている。
【0054】
判定基準欄403には、ガス雲40の最大面積ARを用いて、リスク度合いの判定基準が登録されている。レベル欄401の「0」に対応して、判定基準欄403には、ガス雲40の最大面積AR=0が登録されている。つまり、ガス雲40が抽出されないときに、リスク度合いが「無し」と判定される。レベル欄401の「1」に対応して、判定基準欄403には、「0<AR<PX1」が登録されている。レベル欄401の「2」に対応して、判定基準欄403には、「PX1≦AR<PX2」が登録されている。レベル欄401の「3」に対応して、判定基準欄403には、「PX2≦AR」が登録されている。
【0055】
閾値PX1,PX2は、揮発性液体10の揮発成分の引火性などに応じて、揮発性液体10の種類毎に設定される。閾値PX1,PX2は、閾値情報265(
図1)に含まれ、メモリ260の例えばHDD263又はROM261に、上記判定プログラムの一部として、予め記憶されている。
【0056】
対処欄404には、レベル欄401の内容に対応して、ユーザが講じるべき対処の内容が登録されている。但し、レベル欄401の「0」に対応する対処欄404には、対処する必要がないため、何も登録されていない。そこで、判定部253は、判定結果が「AR=0」のときには、例えば「異常はありません」というメッセージを、ディスプレイ210に表示してもよい。
【0057】
レベル欄401の「1」に対応する対処欄404には、レベルが悪化していないことを確認するために、半年ごとの継続検査を推奨することが登録されている。そこで、判定部253は、判定結果が「0<AR<PX1」のときには、例えば「半年ごとのカメラによる継続検査を推奨します」というメッセージを、ディスプレイ210に表示する。判定部253は、更に、電子ブザー270を周期的にオンオフ(例えば1秒オン1秒オフ)させて、ユーザの注意を喚起してもよい。
【0058】
レベル欄401の「2」に対応する対処欄404には、レベルが悪化していないことを確認するために、1か月ごとの継続検査を推奨することが登録されている。そこで、判定部253は、判定結果が「PX1≦AR<PX2」のときには、例えば「1か月ごとのカメラによる継続検査を推奨します」というメッセージを、ディスプレイ210に表示する。判定部253は、更に、電子ブザー270を周期的にオンオフ(例えば0.5秒オン0.5秒オフ)させて、ユーザの注意を喚起してもよい。
【0059】
レベル欄401の「3」に対応する対処欄404には、タンク点検、修理を推奨することが登録されている。そこで、判定部253は、判定結果が「PX2≦AR」のときには、例えば「直ぐにタンクを点検して修理して下さい」というメッセージを、ディスプレイ210に表示する。判定部253は、更に、電子ブザー270を連続的に動作させて、浮き屋根式屋外タンク15の点検を促す。
【0060】
図5は、揮発性液体判定装置50の動作例を概略的に示すフローチャートである。ステップS500において、赤外線カメラ100は、10[フレーム/秒]のフレームレートで、第1時間T1(本実施形態では例えばT1=10[分])に亘って、浮き屋根式屋外タンク15を撮像する。ステップS505において、抽出部251は、各フレーム画像からガス雲を抽出する。ステップS510において、計算部252は、抽出されたガス雲の面積をフレーム画像毎に算出し、最大面積ARを算出して、メモリ260に保存する。ステップS515において、判定部253は、最大面積ARと閾値PX1,PX2(
図4)とを比較して、リスク度合いを判定する。ステップS520において、判定部253は、判定結果に応じたメッセージをディスプレイ210に表示する。
【0061】
以上説明されたように、本実施形態では、所定のフレームレートで、第1時間T1に亘って、浮き屋根式屋外タンク15が撮像され、各フレーム画像からガス雲が抽出される。抽出されたガス雲の面積がフレーム画像毎に算出され、最大面積が算出される。そして、最大面積ARと閾値PX1,PX2とが比較されて、リスク度合いが判定される。ガス雲の最大面積は、少なくとも、そのガス雲を形成するだけの揮発性液体10の揮発成分が存在していたということを表す。このため、本実施形態によれば、浮き屋根式屋外タンク15のリスク度合いを、より正確に判定することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、電子ブザー270を備えているが、これに限られず、電子ブザー270を備えなくてもよい。また、
図5に示される動作は、定期的に実行されるのが好ましく、例えば1か月毎に実行されてもよく、例えば1週間毎に実行されてもよいが、降雨時は避けるのが好ましい。
【0063】
(第1の変形された実施形態)
図6、
図7は、抽出部251によるガス雲の抽出結果を表すフレーム画像を概略的に示す図である。
図8は、ガス雲最大面積を算出する別の手順例を概略的に示すフローチャートである。
図8には、
図5のステップS510に相当する手順例が示されている。第1の変形された実施形態における赤外線カメラ100の動作は、上記実施形態と同じである。
図6、
図7を参照しつつ、
図8に従って、ガス雲の最大面積を算出する別の手法が説明される。
【0064】
図6に示されるように、赤外線カメラ100による浮き屋根式屋外タンク15の撮像開始時には、ガス雲は抽出されていない。撮像開始から1秒経過時(つまり10枚目)のフレーム画像では、ガス雲40が抽出されている。また、撮像開始から10秒経過時(つまり100枚目)のフレーム画像では、1秒経過時と異なる形状のガス雲40が抽出されている。
【0065】
図8のステップS800において、計算部252は、第3時間T3(本第1の変形された実施形態では例えば、10[秒])の各フレーム画像において、ガス雲として抽出された画素のガス雲抽出時間を積算する。ステップS805において、計算部252は、ガス雲抽出時間の合計が第4時間T4(本第1の変形された実施形態では例えば、1[秒])以上の画素を真正のガス雲と判定する。本実施形態において、第3時間T3は判定時間の一例に相当し、第4時間T4は閾値時間の一例に相当する。
【0066】
例えば、
図6において、撮像開始から1秒経過時(つまり10枚目)のフレーム画像において、ガス雲40として抽出された画素は、0.1[秒]が積算される。また、撮像開始から10秒経過時(つまり100枚目)のフレーム画像において、ガス雲40として抽出された画素は、0.1[秒]が積算される。したがって、1秒経過時と10秒経過時との両方でガス雲40として抽出された画素の積算値は、0.2[秒]となる。
【0067】
第3時間T3(本第1の変形された実施形態では例えば、10[秒])に亘って撮像されたフレーム画像において、ガス雲40として抽出された画素の積算値が第4時間T4(本第1の変形された実施形態では例えば、1[秒])以上の画素が、真正のガス雲と判定される。つまり、100枚のフレーム画像のうちで、連続的又は間欠的に、10枚以上のフレーム画像においてガス雲として抽出された画素が、真正のガス雲と判定される。このようにして、
図6に示されるように、0~10秒の結果として、真正のガス雲40が判定される。
【0068】
図8のステップS810において、計算部252は、真正のガス雲と判定された画素の面積(本第1の変形された実施形態では、上記実施形態と同様に、画素数)を算出して、メモリ260の例えばRAM262に保存する。ステップS815において、計算部252は、第1時間T1の全てのフレーム画像の面積算出処理が終了したか否かを判定する。第1時間T1の全てのフレーム画像の面積算出処理が終了していなければ(ステップS815でNO)、処理はステップS800に戻って、ステップS800~S810において、次の第3時間T3のフレーム画像について、面積算出処理が行われる。すなわち、時系列で第3時間T3毎に、第3時間T3の各フレーム画像について、面積算出処理が行われる。
【0069】
このようにして、
図7に示されるように、0~10秒の結果、10~20秒の結果、20~30秒の結果、・・・、9分50~10分0秒の結果として、それぞれ、ガス雲40の面積が算出され、合計で60個のガス雲40の面積が算出される。9分50~10分0秒の結果として、ガス雲40の面積が算出されると(ステップS810)、第1時間T1の全てのフレーム画像の面積算出処理が終了して(ステップS815でYES)、処理はステップS820に進む。
【0070】
ステップS820において、計算部252は、メモリ260に保存されている60個のガス雲の面積のうち、最大面積を算出する。例えば
図7の例では、10~20秒の結果として算出されたガス雲40の面積が最大になっている。
【0071】
例えば、上記実施形態のように、ガス雲40の最大面積を算出する手法として、フレーム画像毎の面積を比較して、最大面積を用いる場合には、瞬間的に風が強く吹いたときの面積が最大面積になる可能性があることから、風などの影響を受け易くなる。これに対して、本第1の変形された実施形態では、第3時間T3(本実施形態では例えば、10[秒])に亘って撮像された100枚のフレーム画像のうち、連続的又は間欠的に、第4時間T4以上(つまり10枚以上)のフレーム画像においてガス雲40として抽出された画素が、真正のガス雲と判定される。このため、本第1の変形された実施形態によれば、風などの影響を排して、より正確にガス雲を抽出することができる。
【0072】
(第2の変形された実施形態)
図9は、第2の変形された実施形態の揮発性液体判定装置50Aの構成例を概略的に示すブロック図である。
図10、
図11は、それぞれ、ガス雲最大面積を表すフレーム画像を概略的に示す図である。
図12、
図13は、それぞれ、
図10、
図11のガス雲最大面積の補正例を概略的に示す図である。
図10、
図11では、ガス雲最大面積が同じで、浮き屋根20の高さが異なっている。なお、
図10~
図13では、シール部材30(例えば
図16)の図示が省略されている。
【0073】
第2の変形された実施形態の揮発性液体判定装置50Aは、赤外線カメラ100、漏洩判定ユニット200、タンク管理ユニット300を含む。タンク管理ユニット300は、例えばパーソナルコンピュータ(デスクトップ型コンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレット型コンピュータ等を含む)等で構成され、浮き屋根式屋外タンク15を管理する。タンク管理ユニット300は、通信IF310を備え、残量情報320を記憶する。残量情報320は、浮き屋根式屋外タンク15に貯蔵されている揮発性液体10の残量を含む。通信IF310は、漏洩判定ユニット200の通信IF230と通信を行う。通信IF310は、残量情報320を漏洩判定ユニット200の通信IF230へ送信する。漏洩判定ユニット200のCPU250は、受信された残量情報320を、メモリ260の例えばRAM262(
図2)に保存する。
【0074】
漏洩判定ユニット200のメモリ260の例えばROM261又はHDD263(
図2)は、タンク情報266を記憶する。タンク情報266は、浮き屋根式屋外タンク15の底面積及び高さを含む。漏洩判定ユニット200のCPU250の計算部252は、揮発性液体10の残量を、浮き屋根式屋外タンク15の底面積で除算して、浮き屋根20の高さを算出する。計算部252は、更に、浮き屋根式屋外タンク15の高さから、浮き屋根20の高さを減算して、浮き屋根式屋外タンク15の上端から浮き屋根20までの長さを算出する。
【0075】
図10と
図11とでは、ガス雲40のガス雲最大面積が同じになっている。したがって、上記実施形態では、判定部253による判定結果は、
図10の浮き屋根式屋外タンク15と、
図11の浮き屋根式屋外タンク15とでは、同じになる。
【0076】
一方、
図10では、浮き屋根式屋外タンク15に貯蔵されている揮発性液体10の残量が多いため、浮き屋根20が、比較的高く位置している。これに対して、
図11では、浮き屋根式屋外タンク15に貯蔵されている揮発性液体10の残量が少ないため、浮き屋根20が、
図10に比べて低く位置している。したがって、
図12、
図13に示されるように、実際には、斜線領域45のガス雲が、浮き屋根式屋外タンク15の上端から浮き屋根20まで延びていると考えられる。
【0077】
そこで、揮発性液体判定装置50Aの計算部252は、ガス雲40のガス雲最大面積を、浮き屋根式屋外タンク15の上端から浮き屋根20(揮発性液体の液面の一例に相当)までの長さの分、増加させる補正を行う。言い換えると、計算部252は、
図12、
図13において、ガス雲40のガス雲最大面積と斜線領域45の面積とを加算した面積を、補正後のガス雲40のガス雲最大面積とする。これによって、第2の変形された実施形態の揮発性液体判定装置50Aによれば、揮発性液体10の揮発成分で形成されているガス雲40のガス雲最大面積を、より正確に算出することができる。
【0078】
なお、本第2の変形された実施形態では、揮発性液体10の残量及び浮き屋根式屋外タンク15の底面積から浮き屋根20の高さが算出されているが、これに限られない。例えば、揮発性液体10の液面の高さを測定するレベル計を、浮き屋根式屋外タンク15に設置してもよい。レベル計としては、静電容量式、フロート式、超音波式等の公知のレベル計を採用することができる。
【0079】
(第3の変形された実施形態)
図14、
図15は、それぞれ、ガス雲最大面積を表すフレーム画像と、赤外線カメラ100により撮像された浮き屋根式屋外タンク15の面積と、を概略的に示す図である。
図14、
図15では、ガス雲40のガス雲最大面積が同じで、浮き屋根式屋外タンク15のサイズが異なっている。すなわち、
図14の浮き屋根式屋外タンク15は、
図15の浮き屋根式屋外タンク15に比べて、大きいサイズになっている。なお、本第3の変形された実施形態における揮発性液体判定装置の構成は、
図1に示される揮発性液体判定装置50と同じである。
【0080】
図14、
図15に示されるように、ガス雲40のガス雲最大面積が同じ場合、サイズの大きい浮き屋根式屋外タンク15(
図14)に比べて、サイズの小さい浮き屋根式屋外タンク15(
図15)の方が、シール部材30の劣化が進んでいると考えられる。そこで、本第3の変形された実施形態では、計算部252は、赤外線カメラ100から送信されたフレーム画像に基づき、浮き屋根式屋外タンク15のサイズを算出する。
【0081】
本第3の変形された実施形態のメモリ260(例えばROM261又はHDD263)は、赤外線カメラ100と浮き屋根式屋外タンク15との間の距離、光学系110の倍率等を考慮して予め求められた、二次元イメージセンサー130の画素と浮き屋根式屋外タンク15の大きさとの関係を表す換算係数を記憶する。
【0082】
計算部252は、赤外線カメラ100から送信されたフレーム画像と、換算係数とを用いて、浮き屋根式屋外タンク15の実際の直径(
図14ではD1、
図15ではD2)と、浮き屋根式屋外タンク15の実際の高さ(
図14ではH1、
図15ではH2)とを算出する。計算部252は、算出した浮き屋根式屋外タンク15の直径及び高さを乗算して、浮き屋根式屋外タンク15の実際の面積VLを算出する。
【0083】
判定部253は、ガス雲40の最大面積ARと浮き屋根式屋外タンク15の面積VLとの比(AR/VL)を算出し、この比(AR/VL)に基づき、浮き屋根式屋外タンク15のシール部材30の劣化度合いを判定する。例えば、メモリ260(例えばROM261又はHDD263)は、予め設定された閾値THを記憶してもよい。判定部253は、比(AR/VL)と閾値THとを比較して、(AR/VL)>THであれば、浮き屋根式屋外タンク15のシール部材30が劣化していると判定してもよい。本第3の変形された実施形態によれば、浮き屋根式屋外タンク15のシール部材30の劣化度合いを、より適切に判定することができる。
【0084】
なお、本第3の変形された実施形態では、赤外線カメラ100から送信されたフレーム画像に基づき、計算部252が、屋根式屋外タンク15の実際の面積VLを算出しているが、これに限られない。屋根式屋外タンク15の実際の面積VLが、メモリ260(例えばROM261又はHDD263)に、予め記憶されていてもよい。
【0085】
(第4の変形された実施形態)
上記各実施形態において、揮発性液体判定装置50,50Aは、更に、浮き屋根式屋外タンク15の近傍に設置され、浮き屋根式屋外タンク15の環境の気象条件を測定する測定部、例えば風向計、風速計、温湿度センサを含んでもよい。風向計、風速計、温湿度センサは、それぞれ、通信機能を有し、漏洩判定ユニット200へ測定値を送信する。漏洩判定ユニット200のCPU250は、受信された風向計、風速計、温湿度センサの測定値を、判定部253の判定結果に対応付けて、HDD263に保存する。この場合において、CPU250は、風向計、風速計、温湿度センサの測定値と、判定部253の判定結果とに、時刻情報を付加してHDD263に保存してもよい。
【0086】
代替的に、CPU250は、風向計、風速計、温湿度センサの測定値を、浮き屋根式屋外タンク15のフレーム画像に対応付けて、HDD263に保存してもよい。この場合において、CPU250は、風向計、風速計、温湿度センサの測定値と、浮き屋根式屋外タンク15のフレーム画像とに、時刻情報を付加してHDD263に保存してもよい。
【0087】
判定部253による判定結果は、風などの気象条件の影響を受ける。そこで、本実施形態によれば、過去の判定結果と比較する場合などに、どの程度の信頼度で比較することが可能かを把握することができる。すなわち、気象条件が類似していれば、信頼度の高い比較を行うことができる。
【符号の説明】
【0088】
15 浮き屋根式屋外タンク
20 浮き屋根
30 シール部材
50 揮発性液体判定装置
100 赤外線カメラ
200 漏洩判定ユニット
251 抽出部
252 計算部
253 判定部
260 メモリ