(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/01 20060101AFI20221115BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20221115BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
G03G15/01 S
G03G21/00 384
B41J2/525
(21)【出願番号】P 2018227264
(22)【出願日】2018-12-04
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 なつ子
(72)【発明者】
【氏名】岡村 憩
(72)【発明者】
【氏名】木村 丈信
(72)【発明者】
【氏名】中野 良樹
(72)【発明者】
【氏名】森本 浩史
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-222323(JP,A)
【文献】特開2011-243186(JP,A)
【文献】特開2015-081943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/01
G03G 21/00
B41J 2/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数回の画像形成によって、上層画像と、前記上層画像の下地である下地画像とを同一の記録媒体に重ねて形成する際の画像処理を行う処理部と、
入力画像データに基づいて前記下地画像を特定する特定部と、
を備え、
前記処理部は、前記上層画像における、前記特定部により特定された前記下地画像の輪郭部分と一致する部分に、前記上層画像の背景部の色と同等の色を有する縁画像を加える処理を行
い、
前記背景部の色は、前記記録媒体が透明である場合、画像が形成された後の記録媒体の使用態様に応じた色である、
画像処理装置。
【請求項2】
複数回の画像形成によって、上層画像と、前記上層画像の下地である下地画像とを同一の記録媒体に重ねて形成する際の画像処理を行う処理部と、
入力画像データに基づいて前記下地画像を特定する特定部と、
を備え、
前記処理部は、前記上層画像における、前記特定部により特定された前記下地画像の輪郭部分と一致する部分に、前記上層画像の背景部の色と同等の色を有する縁画像を加える処理を行い、
前記背景部の色は、前記記録媒体の色である、
画像処理装置。
【請求項3】
前記縁画像は、前記上層画像の背景部の色と同等の色で、かつ、前記上層画像とは異なる色で構成される、
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記上層画像の画像データにおいて、前記上層画像に係る全色のうち、何れかの色に係る画素値が0より大きい画像部と、前記画像データに係る全色の画素値が0となる非画像部との境界から、前記非画像部側に向けて所定幅の範囲に前記縁画像を加える、
請求項1
~3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記境界から前記非画像部側に前記所定幅の範囲に、前記画像データに係る全色のうち、何れかの色に係る画素値が0より大きい画像が位置する場合、前記画像と重ならないように、前記縁画像を補正する、
請求項
4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記特定部により特定された、前記上層画像と同一サイズのデータ下地画像よりも大きく、かつ、前記縁画像が加えられる範囲内に収まる大きさになるように、前記下地画像のサイズを変更する、
請求項1~
5の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記データ下地画像に用いられる色に係る画素値が0となる非画像部と、前記画素値が0より大きい画像部との境界から前記非画像部側に向けて、前記データ下地画像の色と同じ色の縁が付加されるように、前記下地画像のサイズを変更する、
請求項
6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
所定の選択肢の中から、ユーザーの指令に基づいて前記背景部の色に最も近い色を
前記縁画像の色として選択する選択部を備える、
請求項
1~7の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記選択部は、前記所定の選択肢を前記ユーザーに提示する制御を行う、
請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記処理部は、前記背景部の色の検出情報を取得し、前記検出情報に基づいて、前記縁画像の色を決定する、
請求項
2または請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記処理部は、前記縁画像の端部領域における、色および明るさの少なくとも一方に関するパラメーターが、前記縁画像の端部に向かうにつれ小さくなるように、平滑化処理を行う、
請求項1~10の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記処理部は、前記平滑化処理により、前記縁画像のサイズを調整する、
請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記処理部は、
前記上層画像に隣接する第1縁画像と、前記第1縁画像に対して前記上層画像とは反対側で、前記第1縁画像に隣接する第2縁画像とを加える処理を行い、
前記第2縁画像において前記平滑化処理を行う、
請求項11または請求項12に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記処理部は、前記第2縁画像の画像データにおいて、前記第2縁画像に用いられる全色のうち、何れかの色に係る画素値が0より大きい画像部と、全色の画素値が0となる非画像部との境界を含む、所定範囲に対して正規分布に従うように前記平滑化処理を行う、
請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記処理部は、前記第1縁画像と前記第2縁画像との境界が前記正規分布の頂点になるように前記平滑化処理を行う、
請求項14に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記処理部は、所定の条件に応じて、前記第2縁画像のサイズを調整するように、前記所定範囲を変更する、
請求項14または請求項15に記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記処理部は、所定の条件に応じて、前記第2縁画像のサイズを調整するように、前記パラメーターの分布を、前記境界を基準とした前記第2縁画像の内側および外側の何れかに移動させる、
請求項14~16の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項18】
前記特定部は、前記入力画像データにおいて、指定領域内に位置する特色画像、または、特色が指定された色指定領域内に位置する特色画像を下地画像として特定する、
請求項1~17の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項19】
前記特定部は、前記入力画像データ内に、他の色と異なるタイミングで形成される第1特色画像と、前記他の色と同じタイミングで形成される第2特色画像とがある場合、前記第1特色画像を前記下地画像として特定する、
請求項1~18の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項20】
前記特定部により前記下地画像が特定された場合、前記下地画像と前記上層画像との出力順序を決定する順序決定部を備える、
請求項1~19の何れか1項に記載の画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置において、記録媒体に下地画像を形成した上で、当該下地画像の上に上層画像を形成する技術が知られている。パッケージ等に用いられる記録媒体の背景色は白色ではない場合が多いので、例えばYMCKの4色を用いて当該記録媒体に画像を印刷すると、当該画像における狙いの色を再現できない場合が多くなる。
【0003】
例えば、記録媒体が透明シートである場合、YMCKの各色の画像は記録媒体に定着された後、光を透過させてしまうため、当該画像における狙いの色を再現できない。そのため、上記のような技術では、例えば白色の下地画像を記録媒体に形成した上で、他の色の上層画像を下地画像の上に形成することで、上層画像における狙いの色を再現することを可能にする。また、下地画像に銀色のメタリックトナーを用いる場合、金色や、その他の色彩を有する金属的な質感を再現することが可能になる。
【0004】
下地画像においては、一回の作像プロセスでは、十分な付着量が得られなかったり、定着できなかったりする場合があるので、下地画像と上層画像とを別々の画像形成動作によって、記録媒体に形成される技術が有効になる。このような技術では、記録媒体に下地画像と上層画像とを重ねた際に、下地画像の転写位置と、上層画像の転写位置とがずれてしまう場合がある。
【0005】
このような上層画像と下地画像との位置のずれ(以下、「位置ずれ」という)を目立たなくするため、例えば特許文献1には、下地画像が上層画像に対してはみ出す領域を検出して、検出した領域の下地画像の画素値を0にする技術が開示されている。これにより、下地画像が上層画像に対してはみ出すことを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような対策を行っても、なおも上層画像と下地画像との位置ずれが発生する場合がある。例えば、記録媒体に形成された下地画像のサイズが設計値に対して伸縮する場合がある。これは、加熱定着を用いる画像形成装置では熱に起因し、インクを用いる画像形成装置ではインクの水分に起因する。
【0008】
このような下地画像の伸縮の状態によっては、上記の位置ずれが発生しやすくなる。位置ずれが発生すると、上層画像から下地画像がはみ出す、または、上層画像において下地画像のない部分が存在するという画像不良が発生するおそれがある。特に、低明度の記録媒体に白色トナーやメタリックトナーによって下地画像を形成する場合、上層画像から下地画像がはみ出た部分が目立ちやすく、画像不良として認識されやすくなる。
【0009】
特許文献1に記載の構成では、上記のような下地画像の伸縮について考慮していないため、位置ずれを抑制する構成として限界のある構成となっていた。
【0010】
本発明の目的は、上層画像と下地画像との位置ずれに起因した画像不良の発生を低減することが可能な画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る画像処理装置は、
複数回の画像形成によって、上層画像と、前記上層画像の下地である下地画像とを同一の記録媒体に重ねて形成する際の画像処理を行う処理部と、
入力画像データに基づいて前記下地画像を特定する特定部と、
を備え、
前記処理部は、前記上層画像における、前記特定部により特定された前記下地画像の輪郭部分と一致する部分に、前記上層画像の背景部の色と同等の色を有する縁画像を加える処理を行い、
前記背景部の色は、前記記録媒体が透明である場合、画像が形成された後の記録媒体の使用態様に応じた色である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上層画像と下地画像との位置ずれに起因した画像不良の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る画像処理部が適用された画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】画像形成装置の制御系の主要部を示す図である。
【
図3】背景部分の色が有色である記録媒体に画像が形成された状態を示す図である。
【
図10】
図4~
図9に示す各データで構成された入力画像データを示す図である。
【
図11】本実施の形態に係る画像処理部を示すブロック図である。
【
図13】下地画像がない状態で記録媒体に形成された上層画像を示す図である。
【
図14】上層画像と下地画像との位置ずれの一例を示す図である。
【
図15B】記録媒体に形成された上層画像および縁画像を示す図である。
【
図16】表示部に表示された、色の選択肢の一例を示す図である。
【
図17】画像処理部における画像処理制御の動作例を示すフローチャートである。
【
図18A】下地画像のサイズを変更した状態における、記録媒体に形成された上層画像および縁画像を示す図である。
【
図18B】下地画像のサイズを変更しない状態における、記録媒体に形成された上層画像および縁画像を示す図である。
【
図19】上層画像、第1縁画像および第2縁画像を示す図である。
【
図20】任意の位置での第1縁画像および第2縁画像を示す図である。
【
図21】
図20の横方向の位置に対する第1縁画像および第2縁画像の階調分布を示す図である。
【
図23】
図21における位置に対する第1縁画像および第2縁画像の階調分布を境界の内側および外側に移動させたときの状態を示す図である。
【
図24】
図21における位置に対する第1縁画像および第2縁画像の階調分布の、所定範囲を調整したときの状態を示す図である。
【
図25】縁画像の色を検出情報に基づく色としたときの、記録媒体に形成された上層画像および縁画像を示す図である。
【
図26】銀色トナーによる下地画像であるときの、記録媒体に形成された上層画像および縁画像を示す図である。
【
図27A】所定幅内に別の画像が存在する例を示す図である。
【
図27B】所定幅内に別の画像が存在する例を示す図である。
【
図32】各実施例における評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理部が適用された画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。
図2は、画像形成装置1の制御系の主要部を示す図である。
【0015】
図1,2に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙Sに二次転写することにより、画像を形成する。
【0016】
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0017】
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20,画像処理装置の一例としての画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60および制御部101を備える。
【0018】
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)102、ROM(Read Only Memory)103、RAM(Random Access Memory)104等を備える。CPU102は、ROM103から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM104に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0019】
制御部101は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(WideArea Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部101は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙Sに画像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0020】
図1に示すように、画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0021】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11により、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることが可能となる。
【0022】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0023】
図2に示すように、操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部101から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部101に出力する。
【0024】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部101の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。また、画像処理部30の詳細については後述する。
【0025】
図1に示すように、画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0026】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示および説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、CまたはKを添えて示すこととする。
図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0027】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414およびドラムクリーニング装置415等を備える。
【0028】
感光体ドラム413は、例えばドラム状の金属基体の外周面に、有機光導電体を含有させた樹脂よりなる感光層が形成された有機感光体よりなる。
【0029】
制御部101は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度で回転させる。
【0030】
帯電装置414は、例えばスコロトロンであり、コロナ放電を発生させることにより、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。
【0031】
露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。その結果、感光体ドラム413の表面のうちレーザー光が照射された画像領域には、背景領域との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0032】
現像装置412は、二成分逆転方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分の現像剤を付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0033】
現像装置412には、例えば帯電装置414の帯電極性と同極性の直流現像バイアス、または交流電圧に帯電装置414の帯電極性と同極性の直流電圧が重畳された現像バイアスが印加される。その結果、露光装置411によって形成された静電潜像にトナーを付着させる反転現像が行われる。
【0034】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に当接され、弾性体よりなる平板状のドラムクリーニングブレード415A等を有し、中間転写ベルト421に転写されずに感光体ドラム413の表面に残留するトナーを除去する。
【0035】
また、本実施の形態では、白色トナー用の画像形成ユニット41Tが設けられている。画像形成ユニット41Tは、その他の有色トナー用の画像形成ユニット41と同様の構成となっており、有色トナーの上層に白色トナーを供給可能な位置に配置されている。また、白色トナーは、後述する追い刷りの際の下地画像を用紙Sに形成する際にも用いられる。
【0036】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424およびベルトクリーニング装置426等を備える。
【0037】
中間転写ユニット42は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向の下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写ニップにおけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0038】
中間転写ベルト421は、導電性および弾性を有するベルトであり、制御部101からの制御信号によって回転駆動される。
【0039】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0040】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0041】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側、つまり、一次転写ローラー422と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0042】
その後、用紙Sが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙Sに二次転写される。具体的には、バックアップローラー423Bに二次転写バイアスを印加し、用紙Sの表面側、つまり、中間転写ベルト421と当接する側にトナーと同極性の電荷を付与し、かつ二次転写ローラ―424に、バックアップローラー423Bよりも相対的に高い電位になるような電圧を印加することにより、トナー像は用紙Sに静電的に転写され、当該用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
【0043】
ベルトクリーニング装置426は、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。なお、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成いわゆるベルト方式の二次転写ユニットを採用しても良い。
【0044】
定着部60は、用紙Sの定着面、つまりトナー像が形成されている面側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙Sの裏面つまり定着面の反対の面側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、および加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙Sを挟持して搬送する定着ニップが形成される。
【0045】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。
【0046】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52および搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類毎に収容される。搬送経路部53は、レジストローラー体53a等の複数の搬送ローラーを有する。
【0047】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aにより機外に排紙される。
【0048】
次に、追い刷りについて説明する。
パッケージ等に用いられる記録媒体の背景色は白色ではない場合が多いので、例えばYMCKの4色を用いて当該記録媒体に画像を印刷すると、当該画像における狙いの色を再現できない場合が多くなる。
【0049】
このような記録媒体に画像を印刷する際、例えば白色の下地画像を記録媒体に形成した上で、他の色の上層画像を、下地画像が形成された記録媒体に形成する、いわゆる追い刷りが行われる。追い刷りにより、下地画像の上に上層画像が形成されることで、上層画像における狙いの色を再現することが可能となる。
【0050】
追い刷りでは、記録媒体への作像、転写、定着の画像形成動作が、下地画像と、上層画像とで複数回に分けて行われる。追い刷りが行われるパターンは、各画像形成ユニット41の配列順が、下地画像と上層画像の記録媒体への重なり順とが一致していないような場合が該当する。
【0051】
例えば、本実施の形態では、下地画像に白色トナーを用いる場合、白色トナーは、有色トナーの上層になるように、各画像形成ユニット41が配列されている。そのため、上記の記録媒体に画像形成する際、下地画像と上層画像とで複数回の画像形成動作が行われる。
【0052】
例えば、
図3に示すような、背景色が有色である記録媒体S1に画像G1,G2,G3を形成する例について説明する。
図3に示す記録媒体S1の色は、例えば赤色であり、その測色値は、L*値が29、a*値が48、b*値が21である。
【0053】
画像G1は、星形状の画像であり、K色の星形の縁部G11(薄いドット表示)と、Y色、M色およびC色を合成した星部G12(濃いドット表示)とで構成されている。画像G2は、Y色のみで構成された星形状の画像である。画像G3は、「IMAGE」で構成される、白色トナーによる文字画像である。
図3に示す例では、画像G1に白色トナーによる下地画像が形成されるものとする。なお、下地画像に用いられる白色トナーの量は、例えばL*値が80、a*値が0.2、b*値が0.6に対応する量である。
【0054】
このような画像G1,G2,G3を記録媒体S1に形成する場合、本実施の形態に係る画像形成装置1では、
図1に示す画像形成ユニット41のうち、最も上側の画像形成ユニット41Tから、順に画像が形成されていく。
【0055】
図4に示すように、白色の画像形成ユニット41Tは、画像G3の白色の文字画像で構成された第1白色画像データT1に対応した画像を形成する。
図5に示すように、Y色の画像形成ユニット41Yは、画像G1の星部G12および画像G2で構成されたY色画像データY1に対応した画像を形成する。
【0056】
図6に示すように、M色の画像形成ユニット41Mは、画像G1の星部G12で構成されたM色画像データM1に対応した画像を形成する。
図7に示すように、C色の画像形成ユニット41Cは、画像G1の星部G12で構成されたC色画像データC1に対応した画像を形成する。
図8に示すように、K色の画像形成ユニット41Kは、画像G1の縁部G11で構成されたK色画像データK1に対応した画像を形成する。
【0057】
また、
図4~8に示す各画像とは異なるタイミングで、画像G1の下地として下地画像G4が形成される。下地画像G4は、例えば、白色トナーで形成される。この場合、
図9に示すように、白色トナーの画像形成ユニット41Tは、下地画像G4で構成された第2白色画像データT2に対応した画像を形成する。なお、
図4~9に示す画像データは、例えば、PC(Personal Computer)等で作成されたデータが画像形成装置1に入力されることで形成される。
【0058】
図3に示すような記録媒体S1では、背景色が有色であるので、下地画像G4が先に記録媒体S1に形成されて、その後、上層画像である画像G1,G2,G3が記録媒体S1に形成される。
【0059】
例えば、
図10に示すように、各画像データが入力画像データとして存在する場合、画像形成動作がされる画像形成ユニット41に対応する画像データから順に画像処理部30に出力されていく。具体的には、第2白色画像データT2、第1白色画像データT1、Y色画像データY1、M色画像データM1、C色画像データC1、K色画像データK1の順に画像処理される。
【0060】
下地画像G4である第2白色画像データT2に対応する画像は、他の画像よりも先に記録媒体S1に定着される。第1白色画像データT1、Y色画像データY1、M色画像データM1、C色画像データC1、K色画像データK1に対応する各画像は、中間転写ベルト421等で重ね合わされた上で、下地画像G4が定着された記録媒体S1に転写される。
【0061】
次に、本実施の形態に係る画像処理部30の詳細について説明する。
図11は、本実施の形態に係る画像処理部30を示すブロック図である。
【0062】
画像処理部30は、CPU、ROM、RAM等を備えており、上記の追い刷りに係る画像処理を行う。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働して画像処理部30の動作を集中制御する。
【0063】
具体的には、
図11に示すように、画像処理部30は、特定部31と、処理部32と、選択部33と、順序決定部34とを有する。
【0064】
特定部31は、入力画像データに基づいて下地画像を特定する。より詳細には、特定部31は、例えば、
図10に示す各画像の入力画像データがある場合、その中から下地画像に係る画像データを特定する。
【0065】
特定部31は、例えば、入力画像データにおいて、指定領域内に位置する白色画像(特色画像)を下地画像として特定する。指定領域は、
図10に示す入力画像データの場合、上層画像G1に対応する領域である。指定領域は、ユーザーによって指定された領域であっても良いし、予め指定された領域であっても良い。
【0066】
特定部31は、下地画像に係る画像データから、下地画像の輪郭部分を特定する。
【0067】
処理部32は、追い刷り、つまり、複数回の画像形成によって、上層画像と、上層画像の下地である下地画像とを同一の記録媒体に重ねて形成する際の画像処理を行う。処理部32は、上層画像における、特定部31により特定された下地画像の輪郭部分と一致する部分に、上層画像の背景部の色と同等の色を有する縁画像を加える処理を行う。
【0068】
背景部は、例えば記録媒体の色、または、記録媒体が透明である場合、画像が形成された後の記録媒体の使用態様に応じた色である。記録媒体の使用態様に応じた色としては、例えば、画像が形成された記録媒体の背後に配置されるものの色である。透明である記録媒体の場合、記録媒体の背後に配置されるものの色が、記録媒体を介して上層画像の背景の色となるからである。なお、記録媒体は用紙等のシートに限定されず、画像形成可能な媒体であれば、どのような媒体でも良い。
【0069】
また、背景部の色と同等の色は、背景部の色と同一の色だけでなく、同一の色と所定差以内(例えば、色差ΔEが3以下)の色が含まれる。また、所定差は、ユーザーによって適宜変更され得る。
【0070】
処理部32は、上層画像データにおける画像部と、非画像部との境界から、非画像部側に向けて所定幅の範囲に縁画像を加える。画像部は、画像データにおける上層画像に用いられる全色のうち、何れかの色に係る画素値が0より大きい部分である。非画像部は、画像データに用いられる全色の色に係る画素値が全て0となる部分である。
【0071】
所定幅は、例えば0.8mmであり、位置ずれにより、上層画像から下地画像がはみ出た部分を考慮した幅に適宜設定され得る。
【0072】
追い刷りにおいては、記録媒体に下地画像と上層画像とを重ねた際に、下地画像の転写位置と、上層画像の転写位置とがずれる位置ずれが発生する場合がある。位置ずれは、追い刷りの際、下地画像と上層画像とで複数回の画像形成を行うことに起因して発生する。具体的には、位置ずれの発生原因としては、記録媒体の追い刷り対象部分が転写ニップの位置を通過するタイミングが、各画像形成の度に微妙にずれる場合が挙げられる。
【0073】
また、位置ずれの発生原因としては、1回目の画像形成において、記録媒体に形成された画像のサイズが設計値に対して伸縮したような場合が挙げられる。これは、本実施の形態のように、加熱定着を用いる画像形成装置1では熱に起因し、インクを用いる画像形成装置ではインクの水分に起因する。
【0074】
例えば、
図12に示すように、上層画像G5に係る画像データがあったとする。この上層画像G5は、例えば、
図3に示すような色付きの印刷媒体S1に下地画像無しで印刷すると、
図13に示すように、所望の画像の色とは異なる色の印刷物が作成されるような色を有する。
【0075】
そのため、
図14に示すように、当該上層画像G5と同サイズの下地画像G6を記録媒体S1に形成した上で、上層画像G5を記録媒体S1に形成する。しかし、この上層画像G5と、下地画像G6との間で位置ずれが発生した場合、上層画像G5から下地画像G6がはみ出た部分G61が存在するという画像不良が発生する。
【0076】
そこで、本実施の形態では、
図15Aに示すように、処理部32が、上層画像G5の周囲を取り囲むような縁画像G7を加える処理を行う。縁画像G7は上層画像G5の各辺の外側に所定幅G71を有して形成される。そのため、
図15Bに示すように、下地画像G6がはみ出た部分G61を縁画像G7により隠すことができるので、上記の画像不良を目立たなくすることができる。
【0077】
図11に示すように、選択部33は、所定の選択肢の中から縁画像の色を選択する。所定の選択肢は、例えば、画像形成装置1に予め記憶されている複数の色の選択肢である。
【0078】
具体的には、選択部33は、所定の選択肢の中から、ユーザーの指令に基づいて、背景部の色に最も近い色を縁画像の色として選択する。
【0079】
選択部33は、所定の選択肢を例えば表示部22に表示させる等、ユーザーに提示するように制御する。そして、
図16に示すように、表示部22には、所定の選択肢が表示される。
図16では、選択肢における色は、黒、赤、紺の3色である例が示されている。
【0080】
ユーザーが表示部22を見て、選択肢に係る色を選択すると、選択部33が表示部22からの指令に基づいた色を縁画像の色として選択する。例えば、記録媒体の色が黒である場合、選択肢における、所定の色値を有する黒をユーザーが選択することで、縁画像G7が記録媒体の色と同等の色に設定される。
【0081】
このようにすることで、ユーザーが背景部に近い色として選択した色を縁画像の色とすることができるとともに、縁画像G7の色の自由度を向上させることができる。
【0082】
なお、選択肢における色は、画像形成する記録媒体に応じて適宜設定可能である。
【0083】
順序決定部34は、特定部31により下地画像が特定された場合、下地画像と上層画像との出力順序を決定する。順序決定部34は、例えば、紙種が色紙等のような記録媒体である場合、下地画像が上層画像より先に出力されるように出力順序を決定する。また、順序決定部34は、紙種が透明フィルム等のような記録媒体である場合、下地画像が上層画像より後に出力されるように出力順序を決定する。このようにすることで、所望の順序で画像を記録媒体に形成することが可能となる。
【0084】
次に、画像処理部30における画像処理制御を実行するときの動作例について説明する。
図17は、画像処理部30における画像処理制御の動作例を示すフローチャートである。
図17における処理は、例えば、画像形成装置1の制御部101が印刷ジョブの実行指示を受け付けたときに適宜実行される。
【0085】
図17に示すように、画像処理部30は、入力画像データを取得する(ステップS101)。次に、画像処理部30は、入力画像データの中に、下地画像の画像データがあるか否かについて判定する(ステップS102)。
【0086】
判定の結果、下地画像がない場合(ステップS102、NO)、処理はステップS107に遷移する。一方、下地画像がある場合(ステップS102、YES)、画像処理部30は、下地画像を記録媒体に出力する(ステップS103)。
【0087】
次に、画像処理部30は、追い刷りが開始されたか否かについて判定する(ステップS104)。追い刷りが開始されたとは、例えば、下地画像が形成された記録媒体が、給紙部51等に再度配置されて、当該記録媒体に上層画像の画像形成が開始されたことである。
【0088】
判定の結果、追い刷りが開始されていない場合(ステップS104、NO)、ステップS104の処理が繰り返される。一方、追い刷りが開始された場合(ステップS104、YES)、画像処理部30は、記録媒体の背景部の色を取得したか否かについて判定する(ステップS105)。
【0089】
判定の結果、背景部の色を取得していない場合(ステップS105、NO)、ステップS105の処理が繰り返される。一方、背景部の色を取得した場合(ステップS105、YES)、画像処理部30は、縁画像を画像データに加える処理を実行する(ステップS106)。
【0090】
次に、画像処理部30は、上層画像を記録媒体に出力する(ステップS107)。ステップS107における上層画像は、ステップS102において、NOと判定された場合、縁画像を有しておらず、また、ステップS106の後である場合、縁画像を有している。ステップS107の後、本制御は終了する。
【0091】
以上のように構成された本実施の形態によれば、上層画像から下地画像がはみ出た部分を縁画像により隠すことができるので、上記の画像不良を目立たなくすることができる。その結果、上層画像と下地画像との位置ずれに起因した画像不良の発生を低減することができる。
【0092】
また、上層画像の画像部と非画像部との境界から所定幅の範囲に縁画像を形成するので、記録媒体表面における質感を十分に残すことができる。例えば、特開2008-65156号公報には、紙と同じ色のトナーを紙全体に形成し、その上に画像を形成する技術が開示されているが、この技術では、紙表面がトナーで覆われるので、紙の質感を損なうこととなる。
【0093】
それに対し、本実施の形態では、記録媒体における上層画像および縁画像が形成されていない部分における記録媒体表面の質感を十分に残すことができるので、記録媒体の質感を含めた所望の印刷物を作成することができる。
【0094】
なお、上記実施の形態では、下地画像については、入力画像データのサイズのまま、記録媒体に出力していたが、本発明はこれに限定されず、下地画像のサイズを入力画像データ上の下地画像よりも大きくしても良い。
【0095】
具体的には、
図18Aに示すように、処理部32は、特定部31により特定された画像データ上のデータ下地画像G62(二点鎖線)よりも大きく、かつ、縁画像G7が加えられる範囲内に収まる大きさになるように、下地画像G6(実線)のサイズを変更する。
【0096】
処理部32は、データ下地画像G62における画像部と、非画像部との境界(二点鎖線上の位置)から、縁画像G7の幅よりも狭い幅の縁が付加されるように下地画像G6のサイズを変更する。画像部は、データ下地画像G62に用いられる白色に係る画素値が0より大きい部分である。非画像部は、データ下地画像G62に用いられる白色に係る画素値が0となる部分であり、二点鎖線よりも外側の部分である。
【0097】
下地画像G6において、データ下地画像G62に対して付加される幅は、例えば0.5mmであり、縁画像G7の幅を考慮した幅に適宜設定され得る。
【0098】
位置ずれが発生すると、上層画像G5から下地画像G6がはみ出た部分G61が発生することの他、
図18Bに示すように、上層画像G5において下地画像G6のない部分G51が存在する。上層画像G5と記録媒体S1とを重ねた際の色味や、ユーザーによっては、当該部分G51が画像不良と判断される場合がある。
【0099】
しかし、
図18Aに示すように、下地画像G6のサイズを大きくすることで、上層画像G5における下地画像G6がない部分G51が発生することを抑制することができる。その結果、上記の画像不良を目立たなくすることができ、ひいては上層画像G5と下地画像G6との位置ずれに起因した画像不良の発生を低減することができる。
【0100】
また、上記実施の形態では、上層画像G5に、一定の色を有する縁画像G7を加えるのみであったが、本発明はこれに限定されない。処理部32は、縁画像の端部領域における階調分布が、縁画像の端部に向かうにつれ小さくなるように平滑化処理を行うようにしても良い。
【0101】
平滑化処理を行うことで、処理部32は、縁画像のサイズを調整する。具体的には、
図19に示すように、処理部32は、上層画像G5に隣接する第1縁画像G8を加える処理を行う。第1縁画像G8は、上記の縁画像G7と同様の幅を有する画像である。
【0102】
そして、処理部32は、上層画像G5とは反対側で第1縁画像G8に隣接する第2縁画像G9を加える処理を行い、第2縁画像G9において平滑化処理を行う。画像データ上における第2縁画像G9は、第1縁画像G8と同様の幅である。
【0103】
ここで、
図20に示すように、横方向に左から第2縁画像G9、第1縁画像G8が並ぶ部分の拡大図を参照しながら、平滑化処理の具体例について説明する。
図20では、縦方向における任意の位置での第2縁画像G9および第1縁画像G8のみを示している。
【0104】
なお、第2縁画像G9は、左端の位置が画像データ内における位置A1であり、右端の位置が位置A2である。また、第1縁画像G8は、左端の位置が画像データ内における位置A2であり、右端の位置が位置A3である。位置A3より右側には、上層画像G5が位置する。第1縁画像G8および第2縁画像G9における画像データ内における階調値はX1である。
【0105】
図21に示すように、処理部32は、第2縁画像G9における画像部と、上層画像データにおける非画像部との境界を含む、第2縁画像G9における所定範囲となる部分の階調分布の平滑化処理を行う。
【0106】
ここでいう画像部は、第2縁画像G9の部分であり、第2縁画像G9に用いられる全色のうち、何れかの色に係る画素値が0より大きい部分である。非画像部は、位置A1よりも左側の部分である、画像データにおける全色に係る画素値が0となる部分である。所定範囲は、例えば、画像データ上の第2縁画像G9全体の範囲である位置A2から位置A1までの範囲である。
【0107】
処理部32は、第2縁画像G9において、上層画像G5とは反対側、つまり、位置A2から位置A1に向かう方向に向かうにつれ、第2縁画像G9の階調分布を小さくするように平滑化処理を行う。
【0108】
処理部32は、位置A1から位置A2までの範囲における、階調分布を取得し、当該範囲内の階調値の平均値を算出する。位置A1から位置A2までの階調値は全てX1であるので、当該平均値はX1となる。
図21における実線は、入力画像データにおける階調分布を示している。
【0109】
処理部32は、所定範囲、つまり、位置A1から位置A2までの階調分布が、第1縁画像G8と第2縁画像G9との境界が頂点となる正規分布に従うように平滑化処理を行う。具体的には、処理部32は、位置A2の位置をピークとして第2縁画像G9の外側に向かうにつれ階調値が小さくなるように、画像処理を行う(破線参照)。位置A2における第2縁画像G9の階調値は、上述の平均値であるX1とする。
【0110】
また、境界の位置である位置A1では、階調値が、X1の50%の値であるX2となるように、階調値が変化する。これにより、平滑化処理後の第2縁画像G9における横方向の長さが、画像データ上の第2縁画像G9の約2倍の長さとなる。
【0111】
このようにすることで、
図22に示すように、縁画像における端部の部分にぼかしがかかった状態となる。そのため、縁画像と記録媒体の微妙な色の違いによる縁画像と記録媒体との境界を目立ちにくくすることができ、ひいては画像を高画質に見せることができる。
【0112】
また、上記では、平滑化処理を行うパラメーターとして、階調を例示したが、本発明はこれに限定されず、色および明るさの少なくとも一方に関するパラメーターであれば、どのようなパラメーターであっても良い。このようなパラメーターとしては、階調の他、例えば、明度であっても良いし、輝度であっても良い。また、上記のように、例えば、階調のみが平滑化処理されても良いし、階調、明度、輝度のうち複数が平滑化処理されても良い。
【0113】
また、
図23に示すように、処理部32によって、所定の条件に基づいて、階調分布を、境界を基準とした第2縁画像の内側(破線W1)および外側(破線W2)の何れかに移動させるようにしても良い。
【0114】
また、処理部32は、所定の条件に応じて、所定範囲を調整しても良い。具体的には、
図24に示すように、処理部32によって、所定の条件に基づいて、所定範囲を狭める側(破線W3)および広げる側(破線W4)の何れかに調整するようにしても良い。
【0115】
所定の条件には、記録媒体の色および明るさの少なくとも一方を示すパラメーター(例えば、明度、輝度、階調)や、上層画像の色および明るさの少なくとも一方を示すパラメーター(例えば、明度、輝度、階調)が含まれる。
【0116】
例えば、記録媒体の色が比較的暗い色である場合、上層画像からはみ出した下地画像が目立ちやすくなるので、処理部32は、第2縁画像の高濃度領域を広げるように調整する。例えば、
図23に示す例の場合、処理部32は、階調分布を第2縁画像の外側に移動させる。また、
図24に示す例の場合、処理部32は、平滑化範囲を狭める側に調整する。
【0117】
このようにすることで、上層画像からはみ出した下地画像をさらに目立ちにくくすることができる。
【0118】
また、上層画像と記録媒体との光沢差が、ユーザーが視認可能な程度ある場合、縁画像の幅が広いと、当該光沢差に起因して、縁画像が視認されやすくなる可能性がある。この場合、処理部32は、第2縁画像を狭める、または、ぼかすように調整する。例えば、
図23に示す例の場合、処理部32は、階調分布を第2縁画像の内側に移動させる。また、
図24に示す例の場合、処理部32は、平滑化範囲を狭める側に調整する。
【0119】
このようにすることで、上層画像における下地画像がない部分をさらに目立ちにくくすることができる。
【0120】
なお、第2縁画像のサイズの調整は、上記のパターンに限定されず、上層画像の色や、記録媒体の色等によって適宜変更可能である。
【0121】
また、上記実施の形態では、選択部33が選択した色を縁画像の色に設定していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、記録媒体の色の検出情報を取得可能である場合、当該検出情報に基づいて、処理部32が縁画像G7の色を決定しても良い。
【0122】
記録媒体の色については、例えば、画像形成装置1に記録媒体の色を検出可能な検出部を設けることで、検出しても良いし、画像形成装置1外で予め検出部により検出するようにしても良い。
【0123】
処理部32は、記録媒体の色の検出情報を取得したら、白色トナーにおける下地画像上で、所定の照明光によって実現するような、背景部の色の階調を算出し、算出された階調を縁画像の色とする。
【0124】
このようにすることで、
図25に示すように、縁画像G7の色と、記録媒体S1の色とを略一致させることができるので、縁画像G7と記録媒体S1との境界における色の差をさらに目立ちにくくすることができる。
【0125】
また、上記実施の形態では、白色トナーにより下地画像を形成していたが、本発明はこれに限定されず、銀色トナーであっても良い。
【0126】
銀色トナーを下地画像G6に用いると、上層画像G5において金属的な質感を再現することが可能になる一方、位置ずれが発生した際に、上層画像G5からはみ出た部分が目立ちやすくなる。
【0127】
しかし、
図26に示すように、縁画像G7を形成することにより、上層画像G5からはみ出た部分を縁画像G7により隠すことができるので、位置ずれに起因した画像不良の発生を抑制することができる。
【0128】
また、上記実施の形態では、縁画像G7の設けられる範囲が非画像部であった。しかし、例えば、縁画像G7の範囲に、別の画像部が存在する場合がある。別の画像部は、画像データに係る全色のうち、何れかの色に係る画素値が0より大きい画像である。
【0129】
別の画像部が存在する例としては、例えば、
図27Aに示すように、上層画像G5の近傍における所定幅G71より狭い範囲に別の画像G52がある場合や、
図27Bに示すように、上層画像G5の内部に、所定幅G71より狭い間隙G53があるような場合である。
【0130】
このような場合において、縁画像G7を所定幅で形成すると、縁画像G7と別の画像部が重なることとなる。例えば
図27Aの場合、所定幅G71の縁画像G7を形成すると、別の画像部G52と縁画像G7が重なる(破線参照)。また、
図27Bの場合、間隙G53よりも広い範囲に縁画像G7が形成されて、間隙G53を挟んで反対側の上層画像G5と縁画像G7と重なる(破線参照)。なお、
図27Bでは、間隙G53の左辺を基準に縁画像G7が形成された場合についての例である。
【0131】
そのため、処理部32は、境界から非画像部側の所定幅G71の範囲内に画像部が位置する場合、当該画像部と縁画像G7とが重ならないように、縁画像G7を補正する。
【0132】
このようにすることで、縁画像G7と画像部とが重なることを抑制することができるので、所望の画像を形成しやすくすることができる。
【0133】
また、上記各実施の形態では、下地画像に白色トナーおよび銀色トナーの何れか1つの色を用いていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、2つ以上の色を下地画像に用いても良い。
【0134】
このような場合、画像形成装置1に銀色トナーに係る画像形成ユニットをさらに設けるようにしても良い。この場合の画像データは、
図4~
図9の場合と同様にして形成される。
【0135】
例えば、
図3に示す画像G1,G2,G3において、画像G1に白色トナーによる下地画像が形成され、画像G2に銀色トナーによる下地画像が形成される例について説明する。また、画像G3においては、「IMAGE」の文字のうち、「AGE」が白色トナーによる文字画像G31とし、「IM」が銀色トナーによる文字画像G32として
図3に示す画像が記録媒体S1に形成されるものとする。
【0136】
図28に示すように、白色の画像形成ユニット41Tは、画像G3の文字画像G31で構成された第1白色画像データT1に対応した画像を形成する。
図29に示すように、銀色の画像形成ユニットは、画像G3の文字画像G32で構成された第1銀色画像データT3に対応した画像を形成する。Y色画像データY1、M色画像データM1、C色画像データC1、K色画像データK1については、
図5~8と同様である。
【0137】
また、
図5~8,28,29に示す各画像とは異なるタイミングで、画像G1の下地として下地画像G4に加えて、下地画像G10が形成される。下地画像G10は、銀色トナーで形成される。この場合、
図30に示すように、銀色トナーの画像形成ユニットは、下地画像G10で構成された第2銀色画像データT4に対応した画像を形成する。第2白色画像データT2については、
図9と同様である。
【0138】
図3に示すような記録媒体S1では、背景色が有色であるので、下地画像G4,G10が先に記録媒体S1に形成されて、その後、上層画像である画像G1,G2,G3が記録媒体S1に形成される。
【0139】
例えば、
図31に示すように、
図10と同様に各画像データが入力画像データとして存在する場合、画像形成動作がされる画像形成ユニット41に対応する画像データから順に画像処理部30に出力されていく。具体的には、第2白色画像データT2、第2銀色画像データT4、第1白色画像データT1、第1銀色画像データT3、Y色画像データY1、M色画像データM1、C色画像データC1、K色画像データK1の順に画像処理される。
【0140】
これにより、下地画像G4と同様に下地画像G10である第2銀色画像データT4に対応する画像は、他の画像よりも先に記録媒体S1に定着されて、他の画像が、下地画像G10が定着された記録媒体S1に転写される。
【0141】
また、上記実施の形態では、特定部31が入力画像データにおいて、指定領域内に位置する白色画像を下地画像として特定していたが、本発明はこれに限定されない。
【0142】
例えば、特定部31は、入力画像データにおいて、特色が指定された色指定領域内に位置する特色画像を下地画像として特定しても良い。例えば、
図3に示す入力画像データである場合、上層画像G1の領域を色指定領域とし、当該色指定領域において白色が特色として指定されるような場合、特定部31は、入力画像データから
図9に示す画像データT2を下地画像として特定する。このようにしても、特定部31が入力画像データ内の下地画像を特定することができる。
【0143】
また、特定部31は、入力画像データ内に、他の色と異なるタイミングで形成される第1特色画像と、他の色と同じタイミングで形成される、第1特色画像と同じ色の第2特色画像とがある場合、第1特色画像を下地画像として特定するようにしても良い。例えば、
図3に示す入力画像データである場合、下地画像G4とは異なるタイミングで形成される画像G3について、上層画像と輪郭部分を一致させる必要がない。そのため、特定部31は、下地画像G4に係る画像データT2のみを下地画像として特定する。このようにしても、特定部31が入力画像データ内の下地画像を特定することができる。
【0144】
また、上記実施の形態では、画像処理部30に、特定部31、処理部32、選択部33および順序決定部34が組み込まれた構成であったが、本発明はこれに限定されず、特定部31、処理部32、選択部33および順序決定部34が、別々に設けられた構成であっても良い。
【0145】
また、上記実施の形態では、画像処理部30が画像形成装置1に組み込まれていたが、本発明はこれに限定されず、画像処理部30が画像形成装置1以外の装置に組み込まれていても良い。
【0146】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0147】
最後に、
図1に示す画像形成装置1を用いて、上記各実施の形態において出力された画像をユーザーによって確認することで、本発明の有効性を確認する評価実験を行った。
図32は、各実施例における評価結果を示す表である。
【0148】
図32における実施例1は、白色トナーによる下地画像のサイズを変更せずに、上層画像に縁画像を加える処理を行った実施例である。
図32における実施例2は、白色トナーによる下地画像のサイズを変更して、上層画像に縁画像を加える処理を行った実施例である。
図32における実施例3は、白色トナーによる下地画像のサイズを変更して、上層画像に、平滑化処理を行った縁画像を加える処理を行った実施例である。実施例1、実施例2および実施例3における縁画像の色は、ユーザーが所定の選択肢から選んだ色である。
【0149】
図32における実施例4は、白色トナーによる下地画像のサイズを変更して、上層画像に、平滑化処理を行った縁画像を加える処理を行った実施例であって、縁画像の色を、記録媒体の色の検出情報に基づいた色に設定した実施例である。
図32における実施例5は、銀色トナーによる下地画像のサイズを変更して、上層画像に縁画像を加える処理を行った実施例であって、縁画像の色を、ユーザーが所定の選択肢から選んだ色に設定した実施例である。
【0150】
図32における比較例1および比較例2は、入力画像データをそのまま記録媒体に出力させたものである。比較例1は、下地画像に白色トナーを用いたものであり、比較例2は、下地画像に銀色トナーを用いたものである。
【0151】
また、
図32における「×」は、画像不良と判断されたことを示している。「○」は、良好な画像であると判断されたことを示し、「◎」は、全ての実施例における画像のうち、最も良好な画像であると判断されたことを示している。
【0152】
図32に示すように、比較例1の場合、白色の下地画像のはみ出した部分が目立つため、画像不良と判断された。比較例2の場合、銀色の下地画像のはみ出した部分の反射率が高く、ユーザーが記録媒体を確認する環境条件によっては、当該部分が白く見えて目立つため、画像不良と判断された。
【0153】
それに対し、実施例1~実施例5については、いずれも良好な画像であると判断された。特に、実施例4については、縁画像の色が記録媒体の色の検出情報に基づいた色に設定され、かつ、縁画像と背景部との境界にぼかしがかかっているので、縁画像と記録媒体とが区別しにくくなっており、最も良好な画像であると判断された。以上のことから、本発明の有効性が確認された。
【符号の説明】
【0154】
1 画像形成装置
30 画像処理部
31 特定部
32 処理部
33 選択部
34 順序決定部