(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】テニスボール用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
A63B 39/00 20060101AFI20221115BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20221115BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20221115BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221115BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221115BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20221115BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
A63B39/00 Z
C08L21/00
C08K3/34
C08K3/04
C08K3/013
C08L7/00
C08L9/00
(21)【出願番号】P 2018236311
(22)【出願日】2018-12-18
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 建彦
(72)【発明者】
【氏名】田口 順則
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡明
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 邦夫
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-029769(JP,A)
【文献】特開2015-038183(JP,A)
【文献】特開昭61-143455(JP,A)
【文献】特表2015-501873(JP,A)
【文献】特開平10-323408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
A63B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ゴムと、高扁平充填剤とを含むゴム組成物であって、
上記高扁平充填剤の平均粒子径D
50が1μm以上50μm以下であり、この平均粒子径D
50を、その平均厚さTで除すことにより求められる扁平度DLが40以上200以下であり、
上記基材ゴム100質量部に対する上記高扁平充填剤の量が、5質量部以上100質量部以下であり、
上記ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムの、JIS K6251に準拠して温度23±1℃で測定される引張歪み10%から30%の領域における引張弾性率がE1とされ、引張歪み70%から100%の領域における引張弾性率がE2とされるとき、比(E2/E1)が0.60以上1.00未満であるテニスボール用ゴム組成物。
【請求項2】
上記高扁平充填剤に該当しない充填剤をさらに含み、
上記高扁平充填剤及び上記高扁平充填剤に該当しない充填剤の合計量が、上記基材ゴム100質量部に対して、20質量部以上150質量部以下である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
上記高扁平充填剤に該当しない充填剤の平均粒子径D
50が0.01μm以上50μm以下である請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
上記高扁平充填剤と上記高扁平充填剤に該当しない充填剤との合計量に対する上記高扁平充填剤の割合が、30質量%以上である請求項2又は3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
上記高扁平充填剤に該当しない充填剤が、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、クレー、タルク、炭酸マグネシウム、マイカ、水酸化マグネシウム、珪藻土、酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化ビスマスからなる群から選択される請求項2から4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
上記高扁平充填剤が、タルク、グラファイト及びグラフェンからなる群から選択される請求項1から5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
上記基材ゴムが、ブタジエンゴム及び天然ゴムを含んでおり、この基材ゴム中のブタジエンゴムの配合量Bの天然ゴムの配合量Nに対する質量比B/Nが、1.4以下である請求項1から6のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
その40℃における窒素ガス透過係数Gが、1.5×10
-9(cm
3・cm/cm
2/sec/cmHg)以下である請求項1から7のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項9】
硫黄含有量が0.01質量%以上10質量%以下である請求項1から8のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項10】
ショアA硬度Haが20以上88以下である請求項1から9のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項11】
JIS K6251に準拠して得られる破断点伸びEB(%)と、上記硬度Haとの積EB×Haが、1,000以上100,000以下である請求項
10に記載のゴム組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のゴム組成物を用いて得られるコアを備えたテニスボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テニスボール用ゴム組成物に関する。詳細には、本発明は、テニスボールのコアに用いるゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
テニスボールは、ゴム組成物からなるコアと、このコアを被覆するフェルト(メルトン)とを備えている。このコアは、中空の球体である。硬式テニスで使用されるテニスボールでは、コアの内部に、大気圧よりも40kPaから120kPa高い圧力の圧縮ガスが充填されている。このテニスボールは、加圧テニスボール(プレッシャーボール)とも称される。
【0003】
加圧テニスボールでは、大気圧よりも高いコアの内圧により、優れた反発性能と良好な打球感とが付与される。一方、コアの内圧が大気圧よりも高いことに起因して、充填された圧縮ガスが徐々にコアから漏出する。ガスの漏出によって、コアの内圧が大気圧付近まで減少する場合がある。コアの内圧が減少したテニスボールは、反発性能及び打球感に劣る。反発性能及び打球感の経時変化が少ないテニスボールが要望されている。
【0004】
また、プレー中、テニスボールは大きな力で打撃され、地面でバウンドする。打撃時及びバウンド時に、テニスボールは高速で伸縮変形する。高速での伸縮変形が繰り返されることにより、コアをなすゴム物性が劣化する。コアのゴム物性が劣化したテニスボールは、反発性能及び打球感に劣る。テニスボールには、打撃に対する耐久性の向上も求められている。
【0005】
特開昭61-143455号公報では、ガスの漏出を防止するための材料として、鱗片状ないし平板状充填剤を配合したゴム材料が提案されている。このゴム材料では、鱗片状又は平板状充填剤がガスの透過を阻害することにより、このゴム材料からなるコアからのガスの漏出が防止されうる。しかし、このゴム材料からなるコアを備えたテニスボールが、繰り返し打撃されたときの耐久性は、十分ではない。
【0006】
特開2011-188877号広報、特開2011-18878号広報及び特開2011-177369号広報では、コアを伸縮しにくいフェルトで被覆したテニスボールが開示されている。これらのテニスボールでは、フェルトによって、打撃時の伸縮変形が抑制されるが、コアをなすゴム組成物の耐久性は、改善されていない。
【0007】
特開昭60-106471号公報には、1,2結合含有ポリブタジエン、天然ゴム及び/又は1,4結合含有ハイシスポリブタジエンを所定の割合で配合したゴム組成物からなるコアが開示されている。特開平10-323408号公報では、平均繊維径が1μm以下のポリアミド短繊維を含有したゴム組成物から得られるコアを用いたテニスボールが提案されている。特開2004-16532号公報には、ゴム-ポリオレフィン-ナイロン三元共重合体に由来し、かつ、ナイロン短繊維を含有する複合体を含むゴム組成物が架橋されてなるコアを備えたテニスボールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭61-143455号公報
【文献】特開2011-188877号公報
【文献】特開2011-188878号公報
【文献】特開2011-177369号公報
【文献】特開昭60-106471号公報
【文献】特開平10-323408号公報
【文献】特開2004-16532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開昭60-106471号広報で提案された基材ゴムの変更による打撃耐久性の向上効果は、十分満足できるものではない。特開平10-323408号公報及び特開2004-16532号公報でゴム組成物に配合されるポリアミド繊維の配合量によっては、ゴム組成物の硬度が大きくなり、打球感が低下する場合がある。また、特開昭60-106471号広報、特開平10-323408号広報及び特開2004-16532号広報に開示されたゴム組成物では、ガスの漏出防止に対する対策がなされておらず、経時的に反発性能及び打球感が変動する場合がある。
【0010】
本発明の目的は、打撃耐久性に優れ、かつ適正な打球感及び反発性能を長期間維持することが可能なテニスボールを得るためのゴム組成物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るゴム組成物は、基材ゴムと、高扁平充填剤とを含む。この高扁平充填剤の平均粒子径D50は1μm以上50μm以下である。この高扁平充填剤の平均粒子径D50を、その平均厚さTで除すことにより求められる扁平度DLは、40以上200以下である。この基材ゴム100質量部に対するこの高扁平充填剤の量は、5質量部以上100質量部以下である。このゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムの、JIS K6251に準拠して温度23±1℃で測定される引張歪み10%から30%の領域における引張弾性率がE1とされ、引張歪み70%から100%の領域における引張弾性率がE2とされるとき、比(E2/E1)は0.60以上1.00未満である。
【0012】
好ましくは、このゴム組成物は、この高扁平充填剤に該当しない充填剤をさらに含む。好ましくは、この高扁平充填剤及びこの高扁平充填剤に該当しない充填剤の合計量は、この基材ゴム100質量部に対して、20質量部以上150質量部以下である。
【0013】
好ましくは、この高扁平充填剤に該当しない充填剤の平均粒子径D50は0.01μm以上50μm以下である。好ましくは、この高扁平充填剤とこの高扁平充填剤に該当しない充填剤との合計量に対するこの高扁平充填剤の割合は、30質量%以上である。
【0014】
好ましくは、この高扁平充填剤に該当しない充填剤は、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、クレー、タルク、炭酸マグネシウム、マイカ、水酸化マグネシウム、珪藻土、酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化ビスマスからなる群から選択される。
【0015】
好ましくは、この高扁平充填剤は、タルク、グラファイト及びグラフェンからなる群から選択される。
【0016】
好ましくは、この基材ゴムは、ブタジエンゴム及び天然ゴムを含んでいる。この基材ゴム中のブタジエンゴムの配合量Bの天然ゴムの配合量Nに対する質量比B/Nは、1.4以下である。
【0017】
好ましくは、このゴム組成物の40℃における窒素ガス透過係数Gは1.5×10-9(cm3・cm/cm2/sec/cmHg)以下である。
【0018】
好ましくは、このゴム組成物の硫黄含有量は0.01質量%以上10質量%以下である。好ましくは、このゴム組成物のショアA硬度Haは、20以上88以下である。
【0019】
好ましくは、このゴム組成物の、JIS K6251に準拠して得られる破断点伸びEB(%)と、この硬度Haとの積EB×Haは、1,000以上100,000以下である。
【0020】
このテニスボールは、前述したいずれかのゴム組成物を用いて得られるコアを備えている。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るゴム組成物は、所定の形状を有する高扁平充填剤を、適正な量で含んでいる。このゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムの引張歪み10%から30%の領域における引張弾性率E1は、この加硫ゴムからなるコアの硬度及び反発弾性と相関する。この加硫ゴムの引張歪み70%から100%の領域における引張弾性率E2は、このコアを備えたテニスボールが打撃されたときの変形量に影響する。このゴム組成物から得られる加硫ゴムでは、引張弾性率E1に対する引張弾性率E2の比(E2/E1)が適正である。比(E2/E1)が適正な加硫ゴムからなるコアを備えたテニスボールが打撃されたときの変形量は、小さい。このテニスボールでは、繰り返し打撃によるゴムの劣化が抑制される。このテニスボールは、打撃耐久性に優れている。さらに、このゴム組成物から得られるコアでは、高扁平充填剤によって、打球感が阻害されることなく、ガスの漏出が防止される。このゴム組成物によれば、好適な打球感及び反発性能を長期間維持することが可能なテニスボールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るテニスボールの一部切り欠き断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るテニスボール2が示された一部切り欠き断面図である。このテニスボール2は、中空のコア4と、このコア4を被覆する2枚のフェルト部6と、この2枚のフェルト部6の間隙に位置するシーム部8とを有している。コア4の厚みは、通常、3mmから4mm程度である。コア4の内部には、圧縮ガスが充填されている。コア4の表面には、2枚のフェルト部6が、接着剤により貼り付けられている。
【0025】
コア4は、本発明の一実施形態に係るゴム組成物から形成されている。このゴム組成物は、100質量部の基材ゴムと、5質量部以上100質量部以下の高扁平充填剤とを含んでいる。本願明細書において、高扁平充填剤とは、その平均粒子径D50が1μm以上50μm以下であり、かつ、この平均粒子径D50をその平均厚さで除すことにより求められる扁平度DLが40以上200以下の充填剤を意味する。
【0026】
高扁平充填剤は、多数の扁平粒子からなる。このゴム組成物において、高扁平充填剤をなす多数の扁平粒子は、基材ゴムを主成分とするマトリックスに分散している。本願明細書において、基剤ゴムを主成分とするマトリックスを「ゴム成分」と記載する場合がある。
【0027】
このゴム組成物から得られるコア4では、ゴム成分のマトリックスに分散する多数の扁平粒子が、その内部における気体分子の移動を阻害する。このコア4を備えたテニスボール2では、高扁平充填剤をなす多数の扁平粒子によって、経時的なガスの漏出が防止される。このテニスボール2では、好適な打球感及び反発性が長期間維持されうる。
【0028】
さらに、このゴム組成物では、高扁平充填剤をなす多数の扁平粒子の形状に起因して、高扁平充填剤とゴム成分との界面に、多くの化学的及び/又は物理的な結合が生じるため、所謂界面効果が増大する。この大きな界面効果により、高扁平充填剤とゴム成分との密着性が向上する。このゴム組成物は、ゴム成分とよく密着する高扁平充填剤によって、効果的に補強されうる。
【0029】
本発明に係るゴム組成物では、このゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムの、特定の引張歪み領域における引張特性が測定される。具体的には、JIS K6251に準拠し、温度23±1℃にて、引張歪み10%から30%の領域における引張弾性率E1と、引張歪み70%から100%の領域における引張弾性率E2とが、測定される。この加硫ゴムからなるコア4及びこのコア4を備えたテニスボール2において、引張弾性率E1は、コア4の硬度及び反発弾性と相関し、引張弾性率E2は、打撃時のテニスボール2の変形量に影響する。本発明者等は、鋭意検討の結果、この引張弾性率E1に対する引張弾性率E2の比(E2/E1)を適正な範囲に設定することで、打球感等の他物性を阻害することなくゴム組成物を補強して、得られるテニスボール2の打撃に対する耐久性を向上しうることを見出し、本発明を完成した。
【0030】
即ち、このゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムの、引張歪み10%から30%の領域における引張弾性率E1に対する、引張歪み70%から100%の領域における引張弾性率E2の比(E2/E1)は0.60以上1.00未満である。この比(E2/E1)が0.60以上1.00未満であるゴム組成物を用いて得られるコア4を備えたテニスボール2が打撃されたときの変形量は、小さい。このテニスボール2では、繰り返し打撃によるゴムの劣化が抑制される。このテニスボール2は、打撃耐久性に優れている。この観点から、比(E2/E1)は、0.62以上が好ましく、0.63以上がより好ましく、0.65以上が特に好ましい。引張弾性率E1及びE2の測定方法については、実施例にて後述する。
【0031】
このゴム組成物では、引張弾性率E1は特に限定されず、比(E2/E1)が前述した数値範囲となるように適宜設定される。打撃耐久性の観点から、引張歪み10%から30%における引張弾性率E1は、2.0MPa以上が好ましく、2.5MPa以上がより好ましい。打球感の観点から、好ましい引張弾性率E1は、7.5MPa以下である。
【0032】
このゴム組成物では、引張弾性率E2は特に限定されず、比(E2/E1)が前述した数値範囲となるように適宜設定される。打撃耐久性の観点から、引張歪み70%から100%の領域における引張弾性率E2は、1.1MPa以上が好ましく、1.5MPa以上がより好ましい。打球感の観点から、好ましい引張弾性率Eは、5.0MPa以下である。
【0033】
本発明の効果が得られる限り、高扁平充填剤の種類は特に限定されない。例えば、その平均粒子径D50が1μm以上50μm以下であり、かつ、この平均粒子径D50をその平均厚さで除すことにより求められる扁平度DLが40以上200以下である高扁平充填剤として、タルク、グラファイト、グラフェン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ等が挙げられる。タルク、グラファイト及びグラフェンからなる群から選択される高扁平充填剤が好ましい。2種以上が併用されてもよい。
【0034】
より好ましい高扁平充填剤は、タルクである。タルクは、Mg3Si4O10(OH)2で示される含水ケイ酸マグネシウムを主成分とする粘土鉱物である。代表的には、タルクは、25~35質量%のMgOと、50~65質量%のSiO2とを含む化学組成を有する。本発明の効果が得られる限り、マグネシウムの一部がアルミニウム、鉄等に置換されてもよい。Al2O3含量3質量%未満、Fe2O3含量2質量%未満、CaO含量4質量%未満のタルクが好ましい。タルクが、カルサイト(CaCO3)、マグネサイト(MgCO3)、ドロマイト(CaMg(CO3)2)等の不純物を少量含んでもよい。
【0035】
前述した平均粒子径D50及び扁平度DLを有する限り、タルクの種類は特に限定されず、天然物、天然物の加工品及び合成品から適宜選択されうる。市販されたタルクを用いることも可能である。
【0036】
タルクは、通常、マグネシウムの水酸化物が構成する八面体が、ケイ素酸化物が構成する四面体に挟まれた層状構造を有している。タルクでは、層間の結合力が弱い。そのため、粉砕により層状剥離しやすく、扁平度DLの大きい粒子が得られやすい。従って、天然物であるタルクを、既知の装置を用いて粉砕又は造粒することにより、所定の形状を有するタルクを得ることも可能である。例えば、粉砕法による場合、ローラーミル、レイモンドミル等による摩砕式粉砕法、アドマイザー、ハンマーミル、ミクロンミル等による衝撃式粉砕法、ジェットミル、ボールミル等による衝突式粉砕法等の乾式粉砕法、粗粉砕したタルク粉末を水と接触させ、流動可能なスラリー状として粉砕する湿式粉砕法等が適宜選択して用いられる。湿式粉砕に適した装置としては、ボールミル、ビーズミル、湿式ジェットミル、ディスコプレックス等が例示される。必要に応じて、粉砕後に分級することにより、所定の形状を有するタルクが得られてもよい。
【0037】
通常、グラフェンは、多数の炭素原子が平面状に結合した単層構造をなしており、グラフェンシートとも称される。グラフェンが、グラフェンシートの積層体又は集合体を含んでもよい。ガス漏出防止の観点から、グラフェンシートの積層数は、100以下が好ましく、50以下がより好ましく、20以下が特に好ましい。
【0038】
グラフェンの製造方法は特に限定されない。例えば、グラファイト、グラファイト酸化物等から、剥離法、超音波処理法、化学蒸着法、エピタキシャル成長法等、既知の方法により得られてもよい。本発明の目的が達成される限り、市販されているグラフェンを用いてもよい。具体的には、XG Sciences社の商品名「xGnP-M-5」、イーエムジャパン社の商品名「G-12」、Graphene Laboratories社の商品名「GNP-C1」、アイテック社の商品名「iGrafen」等が例示される。
【0039】
グラファイトは、複数のグラフェンシートが、1層毎に少しずつずれた状態で積層してなる炭素材料であり、黒鉛とも称される。グラファイトの種類及び製造方法は特に限定されない。例えば、土状黒鉛、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、半鱗状黒鉛等の天然黒鉛、天然黒鉛を加工して得られる膨張黒鉛及び膨張化黒鉛、無定型炭素を熱処理して得られる人造黒鉛等が挙げられる。本発明の目的が達成される限り、市販されているグラファイトを用いてもよい。具体的には、イメリス社の商品名「SFG44」、「C-THERM 011」及び「P44」、日本黒鉛社の商品名「CP」、「UP」及び「GR」等が例示される。
【0040】
カーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブ(Single-walled carbon nanotube;SWNT)であってもよく、多層カーボンナノチューブ(Multi-walled carbon nanotube;MWNT)であってもよく、それらの混合物であってもよい。また、そのカーボンナノチューブは、アームチェア型構造であってもよく、ジグザグ型構造であってもよく、らせん型構造であってもよく、それらの混合物であってもよい。
【0041】
ガス漏出防止の観点から、高扁平充填剤の平均粒子径D50(μm)を平均厚さT(μm)で除すことにより求められる扁平度DLは、40以上であり、50以上が好ましく、60以上がより好ましく、80以上が特に好ましい。打撃耐久性の観点から、高扁平充填剤の扁平度DLは、200以下であり、180以下がより好ましい。なお、高扁平充填剤をなす複数の扁平粒子が凝集又は多層化して集合体を形成している場合、扁平度DLは、この集合体を含んだ状態で測定して得られる平均粒子径D50及び平均厚さTから算出される。
【0042】
ガス漏出防止の観点から、高扁平充填剤の平均粒子径D50は、1μm以上であり、2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上が特に好ましい。基材ゴムとの混合性の観点から、平均粒子径D50は50μm以下であり、40μm以下がより好ましく、30μm以下が特に好ましい。本願明細書において、平均粒子径D50(μm)とは、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、セイシン企業社製のLMS-3000)によって測定される粒度分布において、小径側から累積して50体積%となる平均粒子径を意味する。
【0043】
高扁平充填剤の平均厚さTは、その種類によって適宜選択される。ガス漏出防止の観点から、高扁平充填剤の平均厚さTは1.00μm以下が好ましく、0.50μm以下がより好ましく、0.20μm以下が特に好ましい。基材ゴムとの混合性の観点から、平均厚さTは0.001μm以上が好ましく、0.002μm以上がより好ましく、0.003μm以上が特に好ましい。本願明細書において、高扁平充填剤の平均厚さT(μm)は、透過型電子顕微鏡等の顕微鏡観察により測定される。具体的には、高扁平充填剤から採取した複数の粒子を、透過型電子顕微鏡(例えば、日立ハイテクノロジーズ社製のH-9500)で観察して得られた画像から、この高扁平充填剤の平均粒子径D50と同等の大きさの粒子を選択してその厚さを測定する。12個の粒子について得られた測定値の平均値が、この高扁平充填剤の平均厚さTとされる。
【0044】
補強性及びガス漏出防止の観点から、基材ゴム100質量部に対する高扁平充填剤の量は、5質量部以上であり、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましい。打球感の観点から、高扁平充填剤の量は、100質量部以下であり、90質量部以下が好ましい。
【0045】
本発明の効果が得られる範囲で、このゴム組成物は、さらに、高扁平充填剤に該当しない充填剤を含みうる。ここで、高扁平充填剤に該当しない充填剤とは、扁平度DLが40未満である充填剤或いは扁平度DLが200を超える充填剤、又は、平均粒子径D50が1μm未満の充填剤或いは平均粒子径D50が50μmを超える充填剤を意味する。この高扁平充填剤に該当しない充填剤は、好ましくは、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、クレー、タルク、炭酸マグネシウム、マイカ、水酸化マグネシウム、珪藻土、酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化ビスマスからなる群から選択される。ゴム成分との密着性の観点から、炭素系充填剤が好ましく、カーボンブラックが特に好ましい。2種以上を併用してもよい。なお、本願明細書において、炭素系充填剤とは、炭素原子を主構成成分とする多数の粒子からなる充填剤を意味する。好ましくは、その構成成分の90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上が炭素原子である充填剤を意味する。
【0046】
高扁平充填剤に該当しない充填剤の平均粒子径D50は、その種類に応じて適宜選択される。ガス漏出防止の観点から、高扁平充填剤に該当しない充填剤の平均粒子径D50は、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.10μm以上が特に好ましい。打球感の観点から、高扁平充填剤に該当しない充填剤の平均粒子径D50は、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましく、10μm以下が特に好ましい。高扁平充填剤に該当しない充填剤の平均粒子径D50(μm)は、高扁平充填剤と同様の方法にて測定される。
【0047】
本発明の効果が阻害されない限り、高扁平充填剤に該当しない充填剤の配合量は特に限定されない。補強性の観点から、高扁平充填剤に該当しない充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、25質量部以上が特に好ましい。打球感の観点から、高扁平充填剤に該当しない充填剤の配合量は、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が特に好ましい。2種以上を併用する場合、その合計量が上記範囲内となるように調整される。
【0048】
高扁平充填剤と、高扁平充填剤に該当しない充填剤とを併用する場合、補強性の観点から、高扁平充填剤と高扁平充填剤に該当しない充填剤との合計量(総配合量)は、基材ゴム100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、500質量部以上が特に好ましい。打球感の観点から、この合計量は150質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましく、100質量部以下が特に好ましい。
【0049】
高扁平充填剤と、高扁平充填剤に該当しない充填剤とを併用する場合、ガス漏出防止の観点から、高扁平充填剤と高扁平充填剤に該当しない充填剤との合計量(総配合量)に対する高扁平充填剤の割合は、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が特に好ましく、上限値は100質量%である。
【0050】
本発明に係るゴム組成物において、好適な基材ゴムの例は、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリクロロプレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、イソブチレン-イソプレン共重合体及びアクリルゴムである。より好ましい基材ゴムは、天然ゴム及びポリブタジエンである。これらのゴムの2種以上が併用されてもよい。
【0051】
天然ゴムとポリブタジエンとが併用される場合、打球感及び耐久性の観点から、天然ゴムの配合量Nに対するポリブタジエンゴムの配合量Bの質量比B/Nは、1.4以下が好ましく、1.0以下がより好ましく、0.4以下が特に好ましい。基材ゴムの全量が、天然ゴムであってもよい。
【0052】
好ましくは、このゴム組成物は、加硫剤、加硫促進剤及び加硫助剤をさらに含んでいる。加硫剤として、例えば、粉末硫黄、不溶性硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄等の硫黄;モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド等の硫黄化合物が挙げられる。加硫剤の配合量は、その種類に応じて調整されるが、反発性能の観点から、基材ゴム100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。加硫剤の配合量は5.0質量部以下が好ましい。
【0053】
好適な加硫促進剤として、例えば、グアニジン系化合物、スルフェンアミド系化合物、チアゾール系化合物、チウラム系化合物、チオウレア系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、アルデヒド-アミン系化合物、アルデヒド-アンモニア系化合物、イミダゾリン系化合物、キサンテート系化合物等が挙げられる。反発性能の観点から、加硫促進剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、1.0質量部以上が好ましく、2.0質量部以上がより好ましい。加硫促進剤の配合量は、6.0質量部以下が好ましい。
【0054】
加硫助剤としては、ステアリン酸等の脂肪酸、亜鉛華等の金属酸化物、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩が例示される。本発明の効果を阻害しない範囲で、ゴム組成物が、さらにカップリング剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、加工助剤、着色剤等の添加剤を含んでもよい。
【0055】
好ましくは、このゴム組成物は硫黄を含んでいる。ゴム組成物中に含まれる硫黄は、架橋構造の形成に寄与しうる。ゴム組成物の架橋密度は、このゴム組成物から得られるテニスボール2の打球感及び反発性能に影響する。反発性能の観点から、このゴム組成物の硫黄含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が特に好ましい。打球感の観点から、硫黄含有量は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下が特に好ましい。本願明細書において、ゴム組成物の硫黄含有量は、第17改正日本薬局方、一般試験法に記載の酸素フラスコ燃焼法に準じて測定される。なお、このゴム組成物に含まれる硫黄は、単体としての硫黄であってもよく、硫黄化合物に含まれる硫黄原子でもよい。この硫黄が、加硫剤又は加硫促進剤に由来するものであってもよい。
【0056】
コア4からのガスの漏出が防止され、好適な打球感及び反発性能が維持される、との観点から、このゴム材料の40℃における窒素ガス透過係数Gは、1.5×10-9(cm3・cm/cm2/sec/cmHg)以下が好ましく、1.0×10-9(cm3・cm/cm2/sec/cmHg)以下がより好ましく、0.7×10-9(cm3・cm/cm2/sec/cmHg)以下が特に好ましい。本願明細書において、窒素ガス透過係数Gは、JIS K7126-1に記載の差圧法に準拠して測定される。
【0057】
打撃時の変形抑制及び反発性能の観点から、このゴム組成物のショアA硬度Haは、20以上が好ましく、40以上がより好ましく、50以上が特に好ましい。打球感の観点から、硬度Haは、88以下が好ましく、85以下がより好ましく、80以下が特に好ましい。硬度Haは、自動硬度計(H.バーレイス社の商品名「デジテストII」)に取り付けられたタイプAデュロメータによって測定される。測定には、熱プレスで成形された、厚みが約2mmであるスラブが用いられる。23℃の温度下に2週間保管されたスラブが、測定に用いられる。測定時には、3枚のスラブが重ね合わされる。
【0058】
打撃時の変形抑制及び反発性能の観点から、このゴム組成物の破断点伸びEB(%)とショアA硬度Haとの積(EB×Ha)は、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましく、5,000以上が特に好ましい。打球感の観点から、積(EB×Ha)は、100,000以下が好ましく、80,000以下がより好ましく、50,000以下が特に好ましい。
【0059】
ゴム組成物の破断点伸びEBは、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」の記載に準拠して測定される。打撃時の変形抑制及び反発性能の観点から、このゴム組成物の破断点伸びEBは100%以上が好ましく、200%以上がより好ましく、300%以上が特に好ましい。打球感の観点から、破断点伸びEBは、700%以下が好ましい。
【0060】
本発明の目的が達成される限り、このゴム組成物を製造する方法は、特に限定されない。例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等既知の混練機に、基材ゴム、高扁平充填剤、高扁平充填剤に該当しない充填剤、添加剤等を適宜投入して溶融混練した後、得られた混練物に加硫剤等を添加して、加圧及び加熱することにより、このゴム組成物が製造されてもよい。なお、炭素系充填剤を添加する場合は、分散性の観点から、予め基剤ゴムと混合されたマスターバッチの状態で、ゴム組成物に添加することが好ましい。
【0061】
混練条件及び加硫条件は、ゴム組成物の配合により選択される。好ましい混練温度は50℃以上180℃以下である。好ましい加硫温度は、140℃以上180℃以下である。加硫時間は2分以上60分以下が好ましい。
【0062】
このゴム組成物を用いて、テニスボール2を製造する方法も、特に限定されない。例えば、このゴム組成物を所定の金型中で加硫成形することにより、2つの半球状のハーフシェルを形成する。この2個のハーフシェルを、その内部にアンモニウム塩及び亜硝酸塩を含む状態で、貼り合わせた後、圧縮成形することにより、中空の球状体であるコア4を形成する。コア4の内部では、アンモニウム塩及び亜硝酸塩の化学反応により窒素ガスが発生する。この窒素ガスにより、コア4の内圧が高められる。次に、予め、ダンベル状に裁断し、その断面にシーム糊を付着させたフェルト部6を、このコア4の表面に貼り合わせることにより、テニスボール2が得られる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0064】
[実施例1]
80質量部の天然ゴム(商品名「SMR CV60」)、20質量部のポリブタジエンゴム(JSR社製の商品名「BR01」)、66質量部のタルク1(イメリス社製の商品名「Mistron HAR」)、5質量部の酸化亜鉛(正同化学社製の商品名「酸化亜鉛2種」)及び0.5質量部のステアリン酸(日油社製の商品名「つばき」)をバンバリーミキサーに投入して、90℃で5分間混練した。得られた混練物を40℃以下に冷却後、3.6質量部の硫黄(三新化学社製の商品名「サンフェルEX」、20%オイル含有)、1質量部の加硫促進剤1(三新化学社製の商品名「サンセラーD」)、1質量部の加硫促進剤2(大内新興化学社製の商品名「ノクセラーCZ」)及び1.88質量部の加硫促進剤3(大内新興化学社製の商品名「ノクセラーDM」)を添加して、オープンロールを用いて50℃で3分間混練することにより、実施例1のゴム組成物を得た。
【0065】
[実施例2-15及び比較例1-15]
下表1-6に示される組成に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例2-15及び比較例1-15のゴム組成物を製造した。なお、炭素系充填剤を配合する場合は、予め、100質量部の基材ゴムと、50質量部の炭素系充填剤とをバンバリーミキサーを用いて90℃で5分間混練してマスターバッチを準備した後、このマスターバッチを、下表1-6に示される組成となるように添加して、それぞれのゴム組成物を得た。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
表1-6に記載された化合物の詳細は、以下の通りである。
NR:天然ゴム、商品名「SMR CV60」
BR:JSR社製のポリブタジエンゴム、商品名「BR01」
タルク1:イメリス社製の商品名「Mistron HAR」、平均粒子径(D50)6.7μm、扁平度(DL)100
マイカ:ヤマグチマイカ社製の商品名「SYA-21」、平均粒子径(D50)27μm、扁平度(DL)90
グラファイト:イメリス社製の商品名「SFG44」、平均粒子径(D50)49μm、扁平度(DL)120
グラフェン:XG Sciences社の商品名「xGnP-M-5」、平均粒子径(D50)5μm、扁平度(DL)700
タルク2:日本タルク社製の商品名「L-1」、平均粒子径(D50)5μm、扁平度(DL)30
タルク3:日本タルク社製の商品名「K-1」、平均粒子径(D50)8μm、扁平度(DL)33
タルク4:日本タルク社製の商品名「SSS」、平均粒子径(D50)13μm、扁平度(DL)20
クレー:イメリス社製のカオリンクレー、商品名「ECKALITE120」、平均粒子径(D50)4μm、扁平度(DL)20
炭酸マグネシウム:神島化学工業社製の商品名「金星」、平均粒子径(D50)6μm、扁平度(DL)10
カーボンブラック:キャボットジャパン社製の商品名「ショウブラックN330」、平均粒子径(D50)0.03μm、扁平度(DL)1
シリカ:東ソー・シリカ社製の商品名「ニプシールVN3」、平均粒子径(D50)20μm、扁平度(DL)1
炭酸カルシウム:白石カルシウム社製の商品名「BF300」、平均粒子径(D50)8μm、扁平度(DL)1
酸化亜鉛:正同化学社製の商品名「酸化亜鉛2種」、平均粒子径(D50)0.6μm、扁平度(DL)1
ステアリン酸:日油社製の商品名「つばき」
イオウ:三新化学社製の不溶性硫黄、商品名「サンフェルEX」、20%オイル含有
加硫促進剤1:三新化学社製の1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、商品名「サンセラーD」
加硫促進剤2:大内新興化学社製のN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、商品名「ノクセラーCZ」
加硫促進剤3:大内新興化学社製のジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、商品名「ノクセラーDM」
【0073】
[硫黄含有量測定]
実施例1-15及び比較例1-15のゴム組成物の硫黄含有量を、第17改正日本薬局方、一般試験法に記載の酸素フラスコ燃焼法に準じて測定した。各ゴム組成物10mgを燃焼させた後、合計55mLのメタノールを添加し、次いで0.005mol/Lの過塩素酸溶液20mLを正確に添加した。10分間放置して得られた溶液を、イオンクロマトグラフィー(島津製作所製のHIC-SP)を用いて測定することにより、硫黄含有量を定量した。得られた硫黄含有量(wt.%)が、下表7-12に示されている。
【0074】
[引張試験]
実施例1-15及び比較例1-15のゴム組成物をそれぞれモールドに投入して、160℃で2分間プレス加硫することにより、厚さ2mmの3号ダンベル型試験片を作製した。JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準じて、23±1℃で引張試験をおこない、各試験片の引張歪み10%、30%、70%及び100%における引張弾性率並びに破断点伸びをそれぞれ測定した。
【0075】
その後、以下の(式1)及び(式2)に従って、引張歪み10%から30%の領域における引張弾性率E1(MPa)と、引張歪み70%から100%の領域における引張弾性率E2とを求めた。
E1=(E30-E10)/(30-10) (式1)
E2=(E100-E70)/(100-70) (式2)
ここで、E10は、引張歪み10%における引張弾性率であり、E30は引張歪み30%における引張弾性率であり、E70は引張歪み70%における引張弾性率であり、E100は引張歪み100%における引張弾性率である。得られた引張弾性率E1、E2及び比(E2/E1)が、下表7-12に示されている。また、得られた破断点伸びが、EB(%)として、下表7-12に示されている。
【0076】
[窒素ガス透過係数測定]
実施例1-15及び比較例1-15のゴム組成物を用いて、それぞれ、厚さ2mm、直径60mmの円盤状の試験片を準備した。JIS K7126-1「プラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験方法-第1部:差圧法」に準じて、各試験片の厚さ方向の窒素ガス透過係数(cm3・cm/cm2/sec/cmHg)を測定した。測定には、GTRテック社製のガス透過試験機「GTR-30ANI」を使用した。測定条件は、サンプル温度40℃、測定セルの透過断面積15.2cm2、差圧0.2MPaとした。測定はすべて23±0.5℃の室内でおこなった。得られた窒素ガス透過係数が、G(×10-9)として下表7-12に示されている。
【0077】
[硬度]
実施例1-15及び比較例1-15のゴム組成物をそれぞれモールドに投入して、160℃で2分間、プレス加硫することにより、厚さ2mm、幅4mm、長さ30mmの試験片を各3枚作製した。各試験片を23℃の温度下で2週間保管した後、「ASTM-D 2240-68」の規定に準拠して、それぞれ3枚に重ね合わせた試験片に、タイプAデュロメータを装着した自動硬度計(前述の「デジテストII」)を押し付けることにより硬度を測定した。得られたショアA硬度がHaとして下表7-12に示されている。
【0078】
[テニスボールの製造]
実施例1のゴム組成物を、モールドに投入して、150℃で4分間加熱することにより、2枚のハーフシェル(厚さ3.2±0.4mm)を形成した。1枚のハーフシェルに塩化アンモニウム、亜硝酸ナトリウム及び水を投入した後、他のハーフシェルと接着し、150℃で4分間加熱することにより、球状のコアを形成した。このコアの表面に、その断面にシーム糊を付着させたフェルト部2枚を貼り合わせることにより、テニスボール(直径65±1mm)を得た。コアの内圧は、180kPaであった。同様にして、実施例2-15及び比較例1-15のゴム組成物からなるコアをそれぞれ備えたテニスボールを製造した。
【0079】
[打球感]
製造後、大気圧下、気温20±2℃、相対湿度60%の環境下に24時間保存したテニスボールを、50名のプレーヤーにテニスラケットで打撃させ、その打球感を聞き取った。「打球感が良い」と回答したプレーヤーの数に基づき、以下の格付けをおこなった。この結果が、下表6-10に示されている。
A:40人以上
B:30-39人
C:20-29人
D:19人以下
【0080】
[耐久性評価1]
製造後、大気圧下、気温20±2℃、相対湿度60%の環境下で24時間保存したテニスボールのDF値(フォワードデフォメーション値)を、国際テニス連盟の規定に準拠して測定した。具体的には、テニスボールの中心を通って互いに直交する3つの方向(X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向)から、各3回、1インチ圧縮することにより、コンディショニングをおこなって残留応力を除去した。その後、テニスボールに80.07N荷重をかけたときの変形量(mm)をDF値として測定した。測定時の温度は、25℃であった。X軸、Y軸及びZ軸の3方向から荷重したときの変形量をそれぞれ測定して、その平均値を算出した。その後、同じテニスボールをハンマリング試験機で30回打撃した後、再度、DF値の測定を行なった。
【0081】
ハンマリング試験後の変形量DF2とハンマリング試験前の変形量DF1との差(DF2-DF1)の、変形量DF1に対する比を、変化率(%)として算出した。この変化率(%)を指標として、下記判定基準により、テニスボールの打撃耐久性を評価した。この評価結果が、耐久性1として下表7-12に示されている。
A:5.0%未満
B:5.0%以上15.0%未満
C:15.0%以上25.0%未満
D:25.0%以上
【0082】
[耐久性評価2]
製造後、大気圧下、気温20±2℃、相対湿度60%の環境下で24時間保存したテニスボールと、同条件で、3ヶ月間保存したテニスボールとについて、それぞれ、その内圧(大気圧との差)を測定した。3ヶ月保存後のテニスボールの内圧の、24時間保存後のテニスボールの内圧に対する比率(内圧低下率(%))を算出し、以下の判定基準により耐久性(内圧の低下しにくさ)を評価した。この評価結果が、耐久性2として下表7-12に示されている。
A:15%未満
B:15%以上20%未満
C:20%以上25%未満
D:25%以上
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
表7-12に示される通り、実施例のゴム組成物では、比較例のゴム組成物に比べて、打球感を大きくは阻害することなく、打撃に対する耐久性1が向上し、コアの内圧低下が抑制された。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明されたゴム組成物は、圧縮ガスが充填された種々の中空ボールの製造にも適用されうる。
【符号の説明】
【0091】
2・・・テニスボール
4・・・コア
6・・・フェルト部
8・・・シーム部