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特許7176400連続溶融金属めっき方法及び連続溶融金属めっき装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】連続溶融金属めっき方法及び連続溶融金属めっき装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/26 20060101AFI20221115BHJP
   C23C 2/06 20060101ALI20221115BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20221115BHJP
   C23C 2/20 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C23C2/26
C23C2/06
C23C2/40
C23C2/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018241046
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020100886
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 茂
(72)【発明者】
【氏名】小原 裕樹
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-226551(JP,A)
【文献】特開2004-107717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00- 2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼帯をめっき浴中に連続的に浸漬してめっきする連続溶融金属めっき方法であって、
前記めっき浴は、Alを4質量%以上22質量%以下、Mgを1.0質量%以上6.5質量%以下含有するZnめっき浴であり、
前記めっき浴から引き上げられた前記鋼帯にガスワイピングノズルによりガスを吹き付けることによって前記鋼帯の表面に付着した溶融金属膜の膜厚を調節するガスワイピング工程と、
前記ガスワイピング工程の後に、水吹付ノズルから前記鋼帯に水滴を吹き付ける水吹付工程と、
を含み、
前記水吹付工程において、
前記水吹付ノズルから噴出される全ての前記水滴の個数に対する、粒径が0.07mm以上1.50mm以下である前記水滴の個数の割合が80%以上であり、
前記水滴の吐出時速度は、0.5m/sec以上10m/sec以下である、
連続溶融金属めっき方法。
【請求項2】
得られるめっき鋼板の動摩擦係数が0.3以上0.5以下である、請求項1に記載の連続溶融金属めっき方法。
【請求項3】
前記水吹付工程において、
前記水吹付ノズルから噴出される全ての前記水滴の個数に対する、粒径が0.10mm以上0.70mm以下である前記水滴の個数の割合が80%以上である
請求項1又は2に記載の連続溶融金属めっき方法。
【請求項4】
鋼帯をめっき浴中に連続的に浸漬してめっきする連続溶融金属めっき装置であって、
前記めっき浴は、Alを4質量%以上22質量%以下、Mgを1.0質量%以上6.5質量%以下含有するZnめっき浴であり、
前記連続溶融金属めっき装置は、
前記めっき浴から引き上げられた前記鋼帯にガスを吹き付けることによって前記鋼帯の表面に付着した溶融金属膜の膜厚を調節するガスワイピングノズルと、
前記溶融金属膜の膜厚が前記ガスワイピングノズルにより調節された前記鋼帯に水滴を吹き付ける水吹付ノズルと、
前記水吹付ノズルの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記水吹付ノズルから噴出される全ての前記水滴の個数に対する、粒径が0.07mm以上1.50mm以下である前記水滴の個数の割合が80%以上となり、
前記水滴の吐出時速度が0.5m/sec以上10m/sec以下となるように前記水吹付ノズルの動作を制御する、
連続溶融金属めっき装置。
【請求項5】
得られるめっき鋼板の動摩擦係数が0.3以上0.5以下である、請求項4に記載の連続溶融金属めっき装置。
【請求項6】
前記水吹付ノズルは、1流体ノズルである、
請求項4又は5に記載の連続溶融金属めっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続溶融金属めっき方法及び連続溶融金属めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続溶融金属めっき装置は、鋼帯に代表される金属帯を亜鉛などの溶融金属でめっきするための装置である。この連続溶融金属めっき装置は、溶融金属を貯留しためっき槽中に配置されるロールとして、金属帯の搬送方向を変更するシンクロールと、金属帯の形状を平坦に矯正する一対のサポートロールを備える。めっき浴内に斜め方向に向けて導入された金属帯は、シンクロールによって搬送方向を鉛直方向上方に変更された後、一対のサポートロールの間に挟まれながら通過してめっき浴外に引き上げられる。その後、金属帯に当該金属帯の厚み方向の両側から一対のガスワイピングノズルによりガスを吹き付けて、金属帯の表面に付着して引き上げられた余剰の溶融金属を掻き取ることにより、溶融金属の付着量(以下、「目付量」とも称する。)が調節される。
【0003】
上記の連続溶融金属めっき装置を用いて鋼帯をめっきすることによって、めっき鋼板を製造することができる。従来、このようにして製造されるめっき鋼板の特性を向上させるための技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、めっき鋼板のめっき層として、Znを主成分とし、Alを2質量%以上7質量%以下含有するものが適用される場合に、めっき鋼板の耐疵付き性を向上させるための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-234314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、めっき鋼板のめっき層として、Znを主成分とし、Alを4質量%以上22質量%以下、Mgを1.0質量%以上6.5質量%以下含有するものが適用されることがある。このような組成のめっき層が形成されることにより、めっき鋼板の耐食性が向上する。一方、このような組成のめっき層が形成されためっき鋼板の摩擦係数は比較的小さくなる。したがって、このような組成のめっき層が形成されためっき鋼板の摩擦係数を大きくすることが望まれている。
【0006】
めっき鋼板の摩擦係数を大きくすることにより、例えば、ボルトを用いてめっき鋼板を他の部材と締結する際に、容易に十分な締結力を得ることができる。また、めっき鋼板の摩擦係数を大きくすることにより、例えば、ドリルを用いてめっき鋼板に穴を開ける際に、ドリルがめっき鋼板の表面を滑ることが抑制され、正確な位置に穴を開けることができる。また、めっき鋼板の摩擦係数を大きくすることにより、例えば、めっき鋼板の上に置かれたものがめっき鋼板の表面を滑ることを抑制することができる。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、Znを主成分とし、Alを4質量%以上22質量%以下、Mgを1.0質量%以上6.5質量%以下含有するめっき層が形成されためっき鋼板の摩擦係数を効果的に大きくすることが可能な、新規かつ改良された連続溶融金属めっき方法及び連続溶融金属めっき装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、鋼帯をめっき浴中に連続的に浸漬してめっきする連続溶融金属めっき方法であって、前記めっき浴は、Alを4質量%以上22質量%以下、Mgを1.0質量%以上6.5質量%以下含有するZnめっき浴であり、前記めっき浴から引き上げられた前記鋼帯にガスワイピングノズルによりガスを吹き付けることによって前記鋼帯の表面に付着した溶融金属膜の膜厚を調節するガスワイピング工程と、前記ガスワイピング工程の後に、水吹付ノズルから前記鋼帯に水滴を吹き付ける水吹付工程と、を含み、前記水吹付工程において、前記水吹付ノズルから噴出される全ての前記水滴の個数に対する、粒径が0.07mm以上1.50mm以下である前記水滴の個数の割合が80%以上であり、前記水滴の吐出時速度は、0.5m/sec以上10m/sec以下である、連続溶融金属めっき方法が提供される。
上記において、得られるめっき鋼板の動摩擦係数が0.3以上0.5以下であってもよい。
【0009】
前記水吹付工程において、前記水吹付ノズルから噴出される全ての前記水滴の個数に対する、粒径が0.10mm以上0.70mm以下である前記水滴の個数の割合が80%以上であってもよい。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、鋼帯をめっき浴中に連続的に浸漬してめっきする連続溶融金属めっき装置であって、前記めっき浴は、Alを4質量%以上22質量%以下、Mgを1.0質量%以上6.5質量%以下含有するZnめっき浴であり、前記連続溶融金属めっき装置は、前記めっき浴から引き上げられた前記鋼帯にガスを吹き付けることによって前記鋼帯の表面に付着した溶融金属膜の膜厚を調節するガスワイピングノズルと、前記溶融金属膜の膜厚が前記ガスワイピングノズルにより調節された前記鋼帯に水滴を吹き付ける水吹付ノズルと、前記水吹付ノズルの動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記水吹付ノズルから噴出される全ての前記水滴の個数に対する、粒径が0.07mm以上1.50mm以下である前記水滴の個数の割合が80%以上となり、前記水滴の吐出時速度が0.5m/sec以上10m/sec以下となるように前記水吹付ノズルの動作を制御する、連続溶融金属めっき装置が提供される。
上記において、得られるめっき鋼板の動摩擦係数が0.3以上0.5以下であってもよい。
【0011】
前記水吹付ノズルは、1流体ノズルであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、Znを主成分とし、Alを4質量%以上22質量%以下、Mgを1.0質量%以上6.5質量%以下含有するめっき層が形成されためっき鋼板の摩擦係数を効果的に大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る連続溶融金属めっき装置の概略構成を示す模式図である。
図2A】本実施形態に係る連続溶融金属めっき装置が備える水吹付ノズルの概略構成の一例を示す模式図である。
図2B】本実施形態に係る連続溶融金属めっき装置が備える水吹付ノズルの概略構成の他の一例を示す模式図である。
図3】ガスワイピング工程及び水吹付工程における鋼帯の表面の様子を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<1.連続溶融金属めっき装置>
まず、図1図2A及び図2Bを参照しながら、本発明の実施形態に係る連続溶融金属めっき装置1について説明する。図1は、本実施形態に係る連続溶融金属めっき装置1の概略構成を示す模式図である。図2Aは、本実施形態に係る連続溶融金属めっき装置1が備える水吹付ノズル20の概略構成の一例を示す模式図である。図2Bは、本実施形態に係る連続溶融金属めっき装置が備える水吹付ノズルの概略構成の他の一例を示す模式図である。
【0016】
図1に示されるように、連続溶融金属めっき装置1は、鋼帯2を、溶融金属を満たしためっき浴3に連続的に浸漬することにより、鋼帯2の表面に溶融金属を付着させた後、鋼帯2の表面に付着した溶融金属膜の膜厚を調節し、さらに、鋼帯2の表面に付着した溶融金属膜に凹凸を形成する装置である。連続溶融金属めっき装置1は、めっき槽4と、スナウト5と、シンクロール6と、上下一対のサポートロール7,8と、トップロール9と、ガスワイピングノズル10と、水吹付ノズル20と、制御装置30とを備える。
【0017】
鋼帯2は、溶融金属によるめっき処理が施される対象となる金属帯である。めっき浴3は、Znを主成分とするZnめっき浴であり、具体的には、Alを4質量%以上22質量%以下、Mgを1.0質量%以上6.5質量%以下含有するZnめっき浴である。Al及びMgが上記のように含有されためっき浴3を用いることにより、めっき鋼板の耐食性や外観を向上させることができる。なお、めっき浴3は、Zn、Al及びMg以外の他の元素を含有してもよい。例えば、めっき浴3は、Siを0.001質量%以上1.000質量%以下含有することが好ましい。それにより、めっき鋼板のめっき層と鋼帯2との密着性を向上させることができる。また、めっき浴3は、Ti、Nb、Fe、Ni、Cr、Sn、Mn又はBから選ばれる1種若しくは2種以上を、単独又は複合で、0.0001質量%以上1.0000質量%以下含有してもよく、その他の不純物を含有してもよい。不純物としては、例えば、Pb、Sb、Co、Cu、In、Bi、Be、Zr、Ca、Sr、Y、Ce、Hfが挙げられる。
【0018】
めっき槽4は、溶融金属からなるめっき浴3を貯留する。スナウト5は、上端が例えば焼鈍炉の出口側に接続され、下端がめっき浴3内に浸漬させて傾斜して設けられる。シンクロール6は、めっき浴3内の下方に配設される。シンクロール6は、サポートロール7,8よりも大きい直径を有する。シンクロール6は、鋼帯2の搬送に伴って図示の時計回りに回転し、スナウト5を通ってめっき浴3内に斜め下方に向けて導入された鋼帯2の搬送方向を、鉛直方向上方へ変更する。
【0019】
サポートロール7,8は、めっき浴3中のシンクロール6の上方に配設され、シンクロール6によって方向転換され、鉛直方向上方に引き上げられる鋼帯2を鋼帯2の厚み方向の両側から挟み込む。サポートロール7,8は、引き上げられる鋼帯2の振動を抑制する。サポートロール7,8は、対にせずに1つだけであってもよいし、3つ以上設けられてもよい。あるいは、サポートロール7,8の配置が省略されていてもよい。トップロール9は、めっき浴3の上方であって、シンクロール6の上方に配設される。トップロール9は、鉛直方向上方に搬送される鋼帯2の搬送方向を搬出方向へ変更する。
【0020】
ガスワイピングノズル10は、めっき浴3から引き上げられた鋼帯2の表面の溶融金属の目付量を調節するためのものである。ガスワイピングノズル10は、めっき浴3から引き上げられた鋼帯2の厚み方向の両側に1対設けられ、サポートロール7,8の上方、かつ、トップロール9の下方においてめっき浴3の浴面から所定の高さの位置に配設される。ガスワイピングノズル10は、めっき浴3から引き上げられた鋼帯2にガス(例えば、窒素)を吹き付けることによって、鋼帯2の表面に付着した溶融金属膜の膜厚を調節する。以下では、ガスワイピングノズル10から噴出されるガスをワイピングガスとも称する。
【0021】
具体的には、ガスワイピングノズル10の鋼帯2側の端部である先端部には、鋼帯2の幅方向に延在するスリットが形成され、当該スリットからワイピングガスが噴出される。当該スリットは、鋼帯2の幅方向の両端部より外側まで延在して形成される。それにより、ワイピングガスは、鋼帯2の幅方向の全域に吹き付けられる。したがって、鋼帯2の幅方向の全域にわたって鋼帯2の表面に付着した溶融金属膜の膜厚が調節される。
【0022】
水吹付ノズル20は、鋼帯2の表面に付着した溶融金属膜に凹凸を形成するためのものである。水吹付ノズル20は、めっき浴3から引き上げられた鋼帯2の厚み方向の両側に、鋼帯2から所定の距離を空けて1対設けられ、ガスワイピングノズル10の上方、かつ、トップロール9の下方においてめっき浴3の浴面から所定の高さの位置に配設される。水吹付ノズル20は、溶融金属膜の膜厚がガスワイピングノズル10により調節された鋼帯2に水滴を吹き付けることによって、鋼帯2の表面に付着した溶融金属膜に凹凸を形成する。
【0023】
なお、水吹付ノズル20が設けられる数は、上記の例に特に限定されない。例えば、水吹付ノズル20から噴出される水滴が鋼帯2の幅方向の全域に当たるように水吹付ノズル20を鋼帯2の幅方向に沿って複数対配設することにより、鋼帯2の幅方向の全域にわたって鋼帯2の表面に付着した溶融金属膜に凹凸を形成することができる。また、例えば、鋼帯2の表面の一部に凹凸を形成することが求められる場合には、水吹付ノズル20から噴出される水滴が当該部分に当たるように水吹付ノズル20を1対又は2対以上配設することにより、鋼帯2の表面の一部に凹凸を形成することができる。
【0024】
図2A及び図2Bに示されるように、水吹付ノズル20は、本体部22と、流路24と、噴出口26とを含む。本体部22は、例えば、円柱状であり、ステンレス鋼等を用いて形成され、本体部22には、水吹付ノズル20から噴出される水滴の形状及び分布を変えるための構造体(例えば、ノズルチップ)が入れられることもある。流路24は、図示しない外部タンクから供給される水の通路であり、本体部22の内部に本体部22の軸方向に延びて設けられる。噴出口26は、流路24を流れる水を水吹付ノズル20の外部へ噴出するための開口である。噴出口26は、本体部22の鋼帯2側に設けられ、流路24と連通する。噴出口26の形状及び構造は多岐にわたり、どのような形状及び分布で対象物(本実施形態では鋼帯2)に向けて水吹付ノズル20から水滴を噴出するかにより、例えば、フルコーン型、直射型(ソリッド型)、フラット型、ホローコーン型等に代表される分類がある。噴出口26をフルコーン型とすることにより、鋼帯2の比較的広い範囲に円状に水滴70が当たるように水滴70を噴出することができる。また、噴出口26を直射型(ソリッド型)とすることにより、鋼帯2の比較的限られた狭い範囲に水滴70が当たるように水滴70を噴出することができる。また、噴出口26をフラット型とすることにより、鋼帯2に直線状に水滴70が当たるように水滴70を噴出することができる。また、噴出口26をホローコーン型とすることにより、鋼帯2に円環状に水滴70が当たるように水滴70を噴出することができる。
【0025】
水吹付ノズル20の基本的な構造は、流路24の噴出口26側の流路面積が、流路24の噴出口26側とは逆側の流路面積より小さくなることで、図示しない外部タンクから流路24へ供給された水が、流路24の噴出口26側で圧力及び流速が高められて噴出口26から水吹付ノズル20の外部へ噴出されるようになっており、このとき、噴出口26から噴出される水は、空気による抵抗力及び水の噴出方向の剪断力と、水の表面張力とが釣り合うまで分裂することによって水滴化する。ここで、図2A及び図2Bは、水吹付ノズルの一例を示し、具体的には、図2Aはフルコーンノズルの一例を示し、図2Bは直射ノズルの一例を示している。具体的には、図2Aに示されるフルコーンノズルでは、噴出口26aは、鋼帯2側に進むにつれて拡径する略円錐形状を有する。また、図2Bに示される直射ノズルでは、噴出口26bは、本体部22の軸方向に延びる略円筒形状を有する。本実施形態で用いられる水吹付ノズル20は、圧縮空気等の気体と水とを混合させることなく水滴70を噴出する1流体ノズルに代表され、水吹付ノズル20として1流体ノズルを適用することにより、噴出口26から噴出される水滴70の粒径が過度に小さくなることを抑制することができる。
【0026】
ここで、水吹付ノズル20から噴出される水滴70の粒径φ及び吐出時速度Vは、水吹付ノズル20内の水圧(例えば、流路24内の水圧)に依存する。また、水吹付ノズル20内の水圧は、水吹付ノズル20へ供給される水の流量Qに依存する。したがって、同一の水吹付ノズル20を使用する場合、水吹付ノズル20へ供給される水の流量Qを変化させることによって、水吹付ノズル20から噴出される水滴70の粒径φ及び吐出時速度Vを変化させることができる。なお、本実施形態において、水滴70の吐出時速度Vは、水滴70が鋼帯2に向けて噴出口26から噴出される際の速度のうち鋼帯2の厚み方向の成分を意味する。
【0027】
水吹付ノズル20には、水圧センサ28が設けられる。水圧センサ28は、水吹付ノズル20内の水圧を検出し、検出結果を制御装置30へ出力する。
【0028】
制御装置30は、水吹付ノズル20の動作を制御する。制御装置30は、例えば、水吹付ノズル20へ供給される水の流量を調節する図示しない調整弁に対して動作指令を出力することにより、水吹付ノズル20の動作を制御する。
【0029】
制御装置30は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、データ等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)装置などのデータ格納用記憶装置等で構成される。
【0030】
<2.連続溶融金属めっき方法>
ここで、連続溶融金属めっき装置1を用いた連続めっきについて説明する。連続溶融金属めっき装置1は、図示しない駆動源により鋼帯2を移動させ、装置内の各部を通板させる。鋼帯2は、スナウト5を通じてめっき浴3中に斜め下方に向けて連続的に導入され、シンクロール6を周回して、搬送方向が鉛直方向上方に変更される。次いで、鋼帯2は、サポートロール7,8の間を通過して上昇し、めっき浴3外に引き上げられる。その後、ガスワイピングノズル10から鋼帯2にワイピングガスが吹き付けられることにより、鋼帯2に付着している余剰の溶融金属が掻き取られて、鋼帯2の溶融金属膜の膜厚が調節される。つまり、鋼帯2の表面に対する溶融金属の付着量が所定の目付量に調節される。その後、水吹付ノズル20から鋼帯2に水滴が吹き付けられることにより、鋼帯2の溶融金属膜の表面に凹凸が形成される。以上のようにして、連続溶融金属めっき装置1は、表面に凹凸が形成されためっき鋼板を製造する。
【0031】
上記のように、連続溶融金属めっき装置1を用いた連続めっきでは、鋼帯2をめっき浴3中に連続的に浸漬してめっきが行われる。また、連続溶融金属めっき装置1を用いた連続めっきでは、めっき浴3から引き上げられた鋼帯2にガスワイピングノズル10によりガスを吹き付けることによって鋼帯2の表面に付着した溶融金属膜の膜厚を調節するガスワイピング工程が行われる。また、連続溶融金属めっき装置1を用いた連続めっきでは、ガスワイピング工程の後に、鋼帯2に水滴を吹き付ける水吹付工程が行われる。ここで、本実施形態に係る連続溶融金属めっき方法によれば、水吹付工程において、水吹付ノズル20の動作を適切に制御することによって、めっき鋼板の摩擦係数を効果的に大きくすることができる。以下では、このような水吹付工程について詳細に説明する。
【0032】
図3を参照しながら、水吹付工程の詳細について説明する。図3は、ガスワイピング工程及び水吹付工程における鋼帯2の表面の様子を説明するための模式図であり、図1における領域Xを拡大したものである。
【0033】
図3に示されるように、本実施形態に係る連続溶融金属めっき方法では、ガスワイピングノズル10から噴出されるワイピングガス60が鋼帯2に吹き付けられることによって鋼帯2の表面に付着した溶融金属膜50の膜厚が調節された後、水吹付ノズル20から噴出される水滴70が鋼帯2に吹き付けられることによって鋼帯2の表面に付着した溶融金属膜50に凹凸51が形成される。以下では、凹凸51の大きさは、凹凸51に含まれる凹部52と凸部53との間の鋼帯2の厚み方向の距離の程度を意味する。
【0034】
ここで、めっき鋼板の摩擦係数の大きさは、溶融金属膜50に形成される凹凸51の大きさに依存する。さらに、凹凸51の大きさは、水吹付ノズル20から噴出される水滴70の粒径φ及び吐出時速度Vに依存する。例えば、水滴70の粒径φが小さいほど又は水滴70の吐出時速度Vが小さいほど、水滴70の運動エネルギーが小さくなり、水滴70が溶融金属膜50に当たって形成される凹凸51の大きさが小さくなる。一方、水滴70の粒径φが大きいほど又は水滴70の吐出時速度Vが大きいほど、水滴70の運動エネルギーが大きくなり、水滴70が溶融金属膜50に当たって形成される凹凸51の大きさが大きくなる。ただし、水滴70の粒径φが過度に大きい場合、水滴70が溶融金属膜50に当たるより前に水滴70が空気抵抗によって分裂することにより、水滴70が溶融金属膜50に当たって形成される凹凸51の大きさが小さくなりやすい。したがって、水吹付ノズル20から噴出される水滴70の粒径φ及び吐出時速度Vを適切に調節することにより、めっき鋼板の摩擦係数を効果的に大きくすることができる。
【0035】
水吹付工程において、制御装置30は、水吹付ノズル20の動作を制御する。具体的には、制御装置30は、水吹付ノズル20へ供給される水の流量Qを調節する図示しない調整弁の開度を制御する。水の流量Qを変化させることによって、水吹付ノズル20内の水圧を変化させることができる。それにより、水吹付ノズル20から噴出される水滴70の粒径φ及び吐出時速度Vを変化させることができる。
【0036】
具体的には、制御装置30は、水圧センサ28の検出値を用いて調整弁の開度を制御する。それにより、水吹付ノズル20内の水圧を適切に調節することができる。したがって、水吹付ノズル20から噴出される水滴70の粒径φ及び吐出時速度Vを適切に調節することができる。
【0037】
このように、制御装置30は、水吹付ノズル20の動作を制御することによって、水吹付ノズル20から噴出される水滴70の粒径φ及び吐出時速度Vを適切に調節する。それにより、凹凸51の大きさを適正化することができるので、めっき鋼板の摩擦係数を効果的に大きくすることができる。
【0038】
なお、上記では、制御装置30が水圧センサ28を用いて調整弁の開度を調節する例について説明したが、調整弁の開度を調節する手段はこのような例に特に限定されない。例えば、水吹付ノズル20に流量計が設けられ、当該流量計により検出される水吹付ノズル20内の水の流量に基づいて調整弁の開度が調節されてもよい。
【0039】
ここで、本件発明者は、後述にて説明する試験を行うことによって、Alを4質量%以上22質量%以下、Mgを1.0質量%以上6.5質量%以下含有するZnめっき浴をめっき浴3として用いた連続溶融金属めっき方法において、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出され、鋼帯2に吹き付けられる水滴70の粒径φ及び吐出時速度Vの目標値に関する以下の知見を得た。
【0040】
上記の連続溶融金属めっき方法では、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出される水滴70の粒径φを0.07mm以上1.50mm以下とし、水滴70の吐出時速度Vを0.5m/sec以上とすることによって、めっき鋼板の摩擦係数を効果的に大きくすることができる。ここで、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出される水滴70の粒径φが0.07mm以上1.50mm以下である場合は、具体的には、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出される水滴70の粒径φが主として0.07mm以上1.50mm以下となる場合を意味し、より具体的には、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出される全ての水滴の個数に対する粒径φが0.07mm以上1.50mm以下である水滴の個数の割合が80%以上である場合を意味する。
【0041】
また、上記の連続溶融金属めっき方法では、めっき鋼板の摩擦係数をより適切な大きさとする観点では、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出される水滴70の粒径φを0.10mm以上0.70mm以下とすることが好ましい。ここで、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出される水滴70の粒径φが0.10mm以上0.70mm以下である場合は、具体的には、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出される水滴70の粒径φが主として0.10mm以上0.70mm以下となる場合を意味し、より具体的には、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出される全ての水滴の個数に対する粒径φが0.10mm以上0.70mm以下である水滴の個数の割合が80%以上である場合を意味する。
【0042】
また、上記の連続溶融金属めっき方法では、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出される水滴70の吐出時速度Vを過度に大きくならないようにすることで(例えば、10m/sec以下とすることで)、溶融金属膜50の変形量が過度に大きくなることを抑制することができる。それにより、溶融金属膜50の膜厚が部分的に過度に薄くなることに起因して、めっき鋼板の耐食性を十分に確保することが困難となることを抑制することができる。つまり、めっき鋼板の摩擦係数を効果的に大きくしつつ、めっき鋼板の耐食性を十分に確保することができる。
【0043】
ここで、水滴70の粒径φの確認方法について説明する。水滴70の粒径φは、水吹付ノズル20から水滴70が噴出されている状態で、平面状の可視化用レーザ(シートレーザ)を水吹付ノズル20の噴出口26側の空間に照射し、当該レーザが照射されている状態で、水吹付ノズル20から水滴70が噴出される映像をハイスピードカメラ(例えば、10,000コマ/秒以上の撮影ができるカメラ)によって1ショット撮影し、当該撮影した映像を画像解析ソフト(一般的なPIV解析ソフト等)により粒径φの分布としてデータ化することで確認することができる。なお、水吹付ノズル20のノズル径及び水吹付ノズル20へ供給される水の流量Qが定まれば、水吹付ノズル20から噴出される水滴70の状態は略一定となるため、一般的に水滴70の粒径φは、水吹付ノズル20が上述した連続溶融金属めっき装置1に取り付けられていない状態(オフライン状態)で確認する。
【0044】
水滴70の吐出時速度Vの確認方法について説明する。水滴70の吐出時速度Vは、水吹付ノズル20から水滴70が噴出される映像を上記のハイスピードカメラによって水吹付ノズル20の軸方向に対して垂直方向から撮影し、当該撮影した映像を用いて、ある特定の水滴70の移動量及び当該移動に掛かった時間から算出することができる。なお、水吹付ノズル20において流路面積が最小となる部分(以下、最小部とも称する)の径及び水吹付ノズル20へ供給される水の流量Qに基づいて、水吹付ノズル20の最小部から噴出される液柱の速度を算出し、簡易的に水滴70の吐出時速度Vを求めることもできる。
【0045】
なお、上記の連続溶融金属めっき方法では、水吹付ノズル20の噴出口26から鋼帯2までの距離を10mm以上400mm以下とすることが好ましい。当該距離が10mm未満である場合、鋼帯2が連続的に搬送される際に生じる振動により水吹付ノズル20と鋼帯2とが接触する可能性が高くなる。また、当該距離が10mm未満である場合、高温となっている鋼帯2から水吹付ノズル20を保護するため、水吹付ノズル20に温度上昇対策(例えば、冷却システムの設置)を施すことが必要となる可能性が高くなる。また、当該距離が400mmより大きい場合、水吹付ノズル20から噴出された水滴70の速度が空気による抵抗力により大きく減衰し、水滴70が周辺の空気の流れによる影響を受けやすくなることで、鋼帯2の表面に付着した溶融金属膜50に形成される凹凸51の大きさにムラが生じる可能性が高くなる。一方、水吹付ノズル20の噴出口26から鋼帯2までの距離を10mm以上400mm以下とした場合、上記のような可能性を低減することができる。なお、上記のような可能性をより低減する観点では、水吹付ノズル20の噴出口26から鋼帯2までの距離を30mm以上200mm以下とすることがより好ましい。
【実施例
【0046】
以下では、Alを4質量%以上22質量%以下、Mgを1.0質量%以上6.5質量%以下含有するZnめっき浴をめっき浴3として用いた鋼帯2の連続めっきにおいて、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出される水滴70の粒径φ及び吐出時速度Vと、めっき鋼板の摩擦係数との関係について確認するために行った試験の結果について説明する。
【0047】
本試験では、上述した本実施形態に係る連続溶融金属めっき装置1と同様の構成を有する試験装置にて連続めっきを行った。なお、本試験では、水吹付ノズル20の噴出口26から鋼帯2までの距離を100mmとした。そして、連続めっき後に得られためっき鋼板の静摩擦係数及び動摩擦係数を測定し、それぞれの摩擦係数を評価した。
【0048】
静摩擦係数及び動摩擦係数の測定について説明する。まず、上記の連続めっきを行っためっき鋼板を切断し、幅150mm、長さ100mm、厚み0.6mmである矩形板状試験片と、直径20mm、厚み0.6mmである円板状試験片とを作成した。矩形板状試験片の上に円板状試験片を配置し、矩形板状試験片と円板状試験片とを接触させ、円板状試験片に上から下方向への荷重(垂直荷重)をかけ、円板状試験片を矩形板状試験片に押し当てた状態で、矩形板状試験片に水平方向の荷重(水平荷重)をかけ、矩形板状試験片を円板状試験片に対して摺動させた。最初に矩形板状試験片が動き始めるときの水平荷重を垂直荷重で除した値を静摩擦係数とし、矩形板状試験片を300回往復させた間での水平荷重の平均値を垂直荷重で除した値を動摩擦係数とした。なお、試験条件として、垂直荷重を3.14kNとし、矩形板状試験片が摺動する速度を150mm/secとし、矩形板状試験片が摺動する距離を45mmとした。
【0049】
ここで、同一のめっき鋼板において、上記のような試験で測定された摩擦係数(試験時摩擦係数)の大きさと、実際にめっき鋼板が使用される際の摩擦係数(使用時摩擦係数)の大きさとが異なることがある。具体的には、鋼帯2の表面に付着した溶融金属膜50に形成されている凹凸51の大きさが過度に大きい場合、使用時摩擦係数が試験時摩擦係より小さくなることがある。このことは、凹凸51の大きさが過度に大きい場合、実際にめっき鋼板が使用されるまでの間に、凸部53の一部が外部からの衝撃等によりめっき鋼板から取れることに起因する。例えば、めっき鋼板が製造されてから実際に使用されるまでの間にめっき鋼板がロール状に巻き取られ、めっき鋼板の表面が擦られることにより凸部53の一部がめっき鋼板から取れることによって、使用時摩擦係数が小さくなることがある。本実施例では、実際にめっき鋼板が使用される際の静摩擦係数(使用時静摩擦係数)が大きくなる順に、試験で測定された静摩擦係数(試験時静摩擦係数)を「□」、「△」、「○」、「◎」の4段階で評価した。また、実際にめっき鋼板が使用される際の動摩擦係数(使用時動摩擦係数)が大きくなる順に、試験で測定された動摩擦係数(試験時動摩擦係数)を「□」、「△」、「○」の3段階で評価した。
【0050】
具体的には、試験時静摩擦係数が0.25以上0.60以下である場合を「◎」とし、試験時静摩擦係数が0.20以上0.25未満又は試験時静摩擦係数が0.60より大きく0.70以下である場合を「○」とし、試験時静摩擦係数が0.10以上0.20未満である場合を「△」とし、試験時静摩擦係数が0.10未満又は0.70より大きい場合を「□」とした。
【0051】
また、試験時動摩擦係数が0.3以上0.5以下である場合を「○」とし、試験時動摩擦係数が0.2以上0.3未満又は試験時動摩擦係数が0.5より大きい場合を「△」とし、試験時動摩擦係数が0.2未満である場合を「□」とした。
【0052】
また、本試験では、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出される水滴70の粒径φ及び吐出時速度Vをさまざまに異ならせた各種試験条件にて連続めっきを行った。また、比較例として、ガスワイピング工程の後に水吹付工程を行わない試験条件での連続めっきも行った。
【0053】
本試験の結果を表1に示す。表1は、Alを11質量%、Mgを3質量%含有するZnめっき浴をめっき浴3として用いた場合の結果である。表1中の「水滴平均粒径」は、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出される全ての水滴の粒径の平均値を示す。表1に示す「粒径φが0.07mm以上1.50mm以下である水滴の割合」は、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出される全ての水滴の個数に対する粒径φが0.07mm以上1.50mm以下である水滴の個数の割合を示す。表1に示す「粒径φが0.10mm以上0.70mm以下である水滴の割合」は、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出される全ての水滴の個数に対する粒径φが0.10mm以上0.70mm以下である水滴の個数の割合を示す。なお、計測が困難なほどに粒径が小さい水滴(例えば、粒径φが0.001mm未満の水滴)は、上記の「全ての水滴」には含まれないものとする。
【0054】
【表1】
【0055】
表1によれば、粒径φが0.07mm以上1.50mm以下である水滴の割合が80%以上であり、かつ、水滴70の吐出時速度Vが0.5m/sec以上である条件3,4,5,6,8,9において、試験時静摩擦係数又は試験時動摩擦係数の少なくともいずれかが「◎」又は「○」となっていることが分かる。一方で、水吹付工程を行わなかった条件1、水滴70の吐出時速度Vが0.5m/sec以上であるものの、粒径φが0.07mm以上1.50mm以下である水滴の割合が80%未満である条件2,7,11、粒径φが0.07mm以上1.50mm以下である水滴の割合が80%以上であるものの、水滴70の吐出時速度Vが0.5m/sec未満である条件12、粒径φが0.07mm以上1.50mm以下である水滴の割合が80%未満であり、かつ、水滴70の吐出時速度Vが0.5m/sec未満である条件10において、試験時静摩擦係数及び試験時動摩擦係数が「△」又は「□」となっていることが分かる。
【0056】
上記の結果から、水吹付工程において、水滴70の粒径φを0.07mm以上1.50mm以下(具体的には、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出される全ての水滴の個数に対する粒径φが0.07mm以上1.50mm以下である水滴の個数の割合が80%以上)とし、水滴70の吐出時速度Vを0.5m/sec以上とすることによって、Znを主成分とし、Alを4質量%以上22質量%以下、Mgを1.0質量%以上6.5質量%以下含有するめっき層が形成されためっき鋼板の摩擦係数(使用時摩擦係数)を効果的に大きくすることができることが確認された。
【0057】
また、表1によれば、条件3,4,5,6,8,9のうち、粒径φが0.10mm以上0.70mm以下である水滴の割合が80%以上である条件5,8において、試験時静摩擦係数が「◎」となり、かつ、試験時動摩擦係数が「○」となっていることが分かる。一方で、条件3,4,5,6,8,9のうち、粒径φが0.07mm以上1.50mm以下である水滴の割合が80%以上であるものの、粒径φが0.10mm以上0.70mm以下である水滴の割合が80%以上でない条件3,4,6,9において、条件3,4,6では試験時静摩擦係数が「○」となり、条件9では試験時動摩擦係数が「△」となっていることが分かる。
【0058】
上記の結果から、水吹付工程において、水滴70の粒径φを0.10mm以上0.70mm以下(具体的には、水吹付工程で水吹付ノズル20から噴出される全ての水滴の個数に対する粒径φが0.10mm以上0.70mm以下である水滴の個数の割合が80%以上)とし、水滴70の吐出時速度Vを0.5m/sec以上とすることによって、Znを主成分とし、Alを4質量%以上22質量%以下、Mgを1.0質量%以上6.5質量%以下含有するめっき層が形成されためっき鋼板の摩擦係数(使用時摩擦係数)を一層大きくすることができることが確認された。
【0059】
<3.むすび>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
例えば、上記実施形態では、水吹付ノズル20が1流体ノズルである例について説明したが、水吹付ノズル20の種類はこのような例に特に限定されない。例えば、水吹付ノズル20は、圧縮空気等の気体と水とを混合させて水滴70を噴出する2流体ノズルであってもよい。
【0061】
また、例えば、水吹付ノズル20の形状は、図2A又は図2Bの例に特に限定されない。水吹付ノズル20の形状は、水吹付ノズル20から噴出される水滴70の粒径φ及び吐出時速度Vを適切に調節することが可能となるような形状であればよい。例えば、本体部22が円柱状を有さずに、直方体形状を有してもよい。
【0062】
また、例えば、上記実施形態では、水吹付ノズル20が鋼帯2の厚み方向の両側に1対設けられる例について説明したが、水吹付ノズル20が設けられる位置は、このような例に特に限定されない。水吹付ノズル20が設けられる位置は、めっき鋼板において摩擦係数を大きくすることが求められる位置等に応じて適宜変更され得る。例えば、水吹付ノズル20は、鋼帯2の厚み方向の片側にのみ設けられてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 連続溶融金属めっき装置
2 鋼帯
3 めっき浴
4 めっき槽
5 スナウト
6 シンクロール
7,8 サポートロール
9 トップロール
10 ガスワイピングノズル
20 水吹付ノズル
22 本体部
24 流路
26 噴出口
28 水圧センサ
30 制御装置
50 溶融金属膜
51 凹凸
52 凹部
53 凸部
60 ワイピングガス
70 水滴
Q 流量
V 吐出時速度
φ 粒径
図1
図2A
図2B
図3