(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】ヒータおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20221115BHJP
H05B 3/10 20060101ALI20221115BHJP
H01C 7/04 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
G03G15/20 510
H05B3/10 Z
H01C7/04
(21)【出願番号】P 2019003779
(22)【出願日】2019-01-11
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】木村 健太郎
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-301413(JP,A)
【文献】特開平11-233237(JP,A)
【文献】特開平08-124658(JP,A)
【文献】特開平11-273836(JP,A)
【文献】特開2001-217102(JP,A)
【文献】特開昭64-050501(JP,A)
【文献】特開平10-294204(JP,A)
【文献】特開平05-198407(JP,A)
【文献】特開2013-254873(JP,A)
【文献】特開2003-017225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 3/10
H01C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および前記第1面とは反対側に位置する第2面とを有する基板と;
前記第1面に配置された抵抗発熱体と;
前記第2面に配置され、マンガンと、コバルトと、銅とを含有
し、鉛
およびニッケルを含有しないサーミスタと;
を具備し、
前記サーミスタは、前記マンガンおよび前記コバルトの質量含有率が、他の成分の質量含有率よりも大きい、ヒータ。
【請求項2】
第1面および前記第1面とは反対側に位置する第2面とを有する基板と;
前記第1面に配置された抵抗発熱体と;
前記第2面に配置され、マンガンと、コバルトと、銅とを含有するサーミス
タであって、前記マンガン、前記コバルト、前記銅の順で質量含有率が大きく、鉛
およびニッケルを含有しない、サーミスタと;
を具備する、ヒータ。
【請求項3】
前記サーミスタは、前記マンガンおよび前記コバルトの質量含有率が、他の成分の質量含有率よりも大きい、請求項2に記載のヒータ。
【請求項4】
前記サーミスタは、前記マンガン、前記コバルト、前記銅の質量含有率の合計が50[質量%]以上70[質量%]以下である、請求項1~3のいずれか1つに記載のヒータ。
【請求項5】
前記サーミスタは、2[質量%]以上15[質量%]以下のルテニウムを含有する、請求項1~4のいずれか1つに記載のヒータ。
【請求項6】
通過する媒体を加熱する請求項1~5のいずれか1つに記載のヒータと;
前記媒体を加熱時に加圧する加圧ローラと;
を具備し、
前記媒体を前記加圧ローラにより前記加熱および前記加圧することで、前記媒体に付着したトナー像を定着させる、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ヒータおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機やファクシミリ等におけるトナー定着、リライタブルカードリーダにおける印字消去等に用いられるヒータが知られている。ヒータは、給電用の電極から供給された電力により、基板の一面上に形成された抵抗発熱体を発熱させる。また、基板の他面上にはサーミスタが配置され、サーミスタで検知された温度に基づいてヒータへの電力供給を制御し、適切な温度に調節する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなヒータにおいては、サーミスタを構成する成分として鉛を含んでおり、環境に配慮したサーミスタの設計が求められている。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、環境に配慮したヒータおよび画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るヒータは、基板、抵抗発熱体、サーミスタを具備する。基板は、第1面および第1面とは反対側に位置する第2面を有する。抵抗発熱体は、第1面に配置される。サーミスタは、第2面に配置され、鉛を含有しない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、環境に配慮したヒータおよび画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るヒータを基板の第1面側から示す平面図である。
【
図2】実施形態に係るヒータを基板の第2面側から示す平面図である。
【
図3】サーミスタの剥離試験の結果を示す図である。
【
図4】サーミスタに含有されるルテニウムの含有量[質量%]とシート抵抗値[kg/□]との関係を示す図である。
【
図5】実施形態に係るヒータが用いられた実施形態の定着装置を示す断面図である。
【
図6】実施形態に係るヒータが用いられた実施形態の画像形成装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施形態に係るヒータ1は、基板11、抵抗発熱体12、サーミスタ16を具備する。基板11は、第1面11aおよび第1面11aとは反対側に位置する第2面11bを有する。抵抗発熱体12は、第1面11aに配置される。サーミスタ16は、第2面11bに配置され、鉛を含有しない。
【0010】
また、以下に説明する実施形態に係るヒータ1は、基板11、抵抗発熱体12、サーミスタ16を具備する。基板11は、第1面11aおよび第1面11aとは反対側に位置する第2面11bを有する。抵抗発熱体12は、第1面11aに配置される。サーミスタ16は、第2面11bに配置され、マンガンと、コバルトと、銅およびニッケルの一方または両方と、を含有し、鉛を含有しない。
【0011】
また、以下に説明する実施形態に係るヒータ1は、基板11、抵抗発熱体12、サーミスタ16を具備する。基板11は、第1面11aおよび第1面11aとは反対側に位置する第2面11bを有する。抵抗発熱体12は、第1面11aに配置される。サーミスタ16は、第2面11bに配置され、マンガン、コバルト、銅およびニッケルの一方または両方、の順で質量含有率が大きく、鉛を含有しない。
【0012】
また、以下に説明する実施形態に係るサーミスタ16は、マンガンおよびコバルトの質量含有率が、他の成分の質量含有率よりも大きい。
【0013】
また、以下に説明する実施形態に係るサーミスタ16は、マンガン、コバルト、銅、およびニッケルの質量含有率の合計が50[質量%]以上70[質量%]以下である。
【0014】
また、以下に説明する実施形態に係るサーミスタ16は、2[質量%]以上15[質量%]以下のルテニウムを含有する。
【0015】
また、以下に説明する実施形態に係る画像形成装置としての複写機100は、通過する媒体を加熱するヒータ1と、媒体を加熱時に加圧する加圧ローラ203と、を具備し、媒体を加圧ローラ203により加熱および加圧することで、媒体に付着したトナー像を定着させる。
【0016】
[実施形態]
実施形態に係るヒータを図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係るヒータを基板の第1面側から示す平面図である。
図2は、実施形態に係るヒータを基板の第2面側から示す平面図である。なお、
図1、
図2では、説明を分かりやすくするために、基板の第1面側を正方向、第2面側を負方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。
【0017】
実施形態に係るヒータ1は、電子機器類に搭載され、主に通過する紙などの媒体を加熱するものである。ヒータ1は、
図1に示すように、基板11と、抵抗発熱体12と、第1導体13と、給電用電極14と、被覆層15とを備える。また、ヒータ1は、
図2に示すように、複数のサーミスタ16と、第2導体17と、被覆層18とを備える。
【0018】
基板11は、耐熱性および絶縁性を有し、本実施形態では、長尺の矩形状に形成されている。基板11は、例えば、アルミナや窒化アルミニウム等のセラミック、ガラスセラミックまたは耐熱複合材料などからなる平板である。基板11は、ヒータ1を装着できるスペースに応じた厚みを有しており、例えば、0.5[mm]程度~1.0[mm]程度である。なお、基板11の形状は、長さ方向(X軸方向)および長さ方向と交差する幅方向(Y軸方向)を有していればこれに限定されるものではなく、外周において凹部、凸部、欠けなどが形成されていてもよい。
【0019】
抵抗発熱体12は、第1導体13と電気的に接続されており、基板11の厚み方向(Z軸方向)における第1面11aに設けられている。抵抗発熱体12は、電気を流すことで発熱する。抵抗発熱体12は、例えば銀-パラジウム系やグラファイト系、酸化ルテニウム系等の発熱体ペーストで形成された発熱体パターンである。本実施形態では、抵抗発熱体12は、X軸方向に沿って配置されている。抵抗発熱体12に含まれる抵抗発熱体12aと、抵抗発熱体12bとは、Y軸方向において離間して配置されている。抵抗発熱体12a,12bは、ヒータ1の幅方向における長さが一定となるように、長さ方向に沿った帯状にそれぞれ配置されている。
【0020】
第1導体13は、抵抗発熱体12に電力を供給するものであり、基板11の第1面11aに設けられている。第1導体13は、例えば銀(Ag)系等の導体ペーストで第1面11aに形成された導体パターンである。本実施形態における第1導体13は、ヒータ1(基板11)の長さ方向であるX軸方向において、抵抗発熱体12と電気的に接続されている。第1導体13に含まれる導体13aおよび導体13bと、導体13cとは、X軸方向において離間して設けられ、その間に抵抗発熱体12a,12bがそれぞれ配置されている。導体13aは、抵抗発熱体12aの長さ方向に沿って形成されており、一方の端部が電極14aと、他方の端部が抵抗発熱体12aの一方の端部と電気的に接続されている。導体13bは、抵抗発熱体12bの長さ方向に沿って形成されており、一方の端部が電極14bと、他方の端部が抵抗発熱体12bの一方の端部と電気的に接続されている。導体13cは、抵抗発熱体12a,12bの他方の端部とそれぞれ電気的に接続されている。つまり、第1導体13は、抵抗発熱体12の長さ方向に沿って電気的に接続されている。
【0021】
給電用電極14は、第1導体13に電気的に接続されるものであり、基板11の第1面11aに設けられている。給電用電極14に含まれる一対の電極14a,14bは、
図1に示すように、X軸方向において基板11の端部に設けられている。一対の電極14a,14bは、導体13a,13bとそれぞれ電気的に接続され、導体13a,13bと通電される。なお、
図1において、一対の電極14a,14bは、基板11の一方の端部に設けられているが、両端部にそれぞれ設けられていてもよいし、他方の端部に設けられていてもよい。また、一対の電極14a,14bは、通常、導体13a,13bとそれぞれ一体的に基板11の第1面11aに形成されているが、一対の電極14a,14bと、導体13a,13bとがそれぞれ分離して形成されてもよい。また、一対の電極14a,14bは、基板11のうち、導体13a,13bが設けられた第1面11aに配置されているが、導体13a,13bが設けられた面とは反対側の第2面11bに配置されていてもよい。この場合、一対の電極14a,14bは、基板11に形成されたスルーホールを介して、導体13a,13bとそれぞれ電気的に接続される。
【0022】
被覆層15は、保護層であり、基板11の第1面11aに設けられた抵抗発熱体12および第1導体13を覆っているものであり、本実施形態では帯状に形成されている。被覆層15は、抵抗発熱体12および第1導体13を覆っていることで、抵抗発熱体12および第1導体13が直接大気に露出することを防止し、外部からの干渉(例えば、機械的、化学的、電気的な干渉)によって抵抗発熱体12および第1導体13が損傷・破損することを抑制するものである。
【0023】
サーミスタ16は、基板11の温度を検知するための温度検知素子である。
図2に示すように、サーミスタ16は、基板11の第2面11bの、基板11の長さ方向における複数の位置に設けられている。すなわち、サーミスタ16は、基板11の長さ方向における基板11の中央と両端側に配置されている。このように、ヒータ1では、複数のサーミスタ16により、基板11の長さ方向における複数の位置の温度がそれぞれ検知される。サーミスタ16は、基板11の第2面11bに直接配置された印刷サーミスタである。このため、いわゆるチップサーミスタと比較して温度感知が早く、優れた温度制御応答性を有している。またサーミスタ16は、チップサーミスタと比較してサイズや配置の自由度が高い。なお、サーミスタ16の具体的な特性や組成等は後述する。
【0024】
第2導体17は、複数のサーミスタ16のそれぞれに電力を供給するための複数の導体としての帯状のサーミスタ用導体である。第2導体17は、
図2に示すように、サーミスタ16に接続された接続部17aと、基板11の長さ方向(X軸方向)に沿って延びる直線状の導通部17bと、電力を供給する端子部材(図示せず)にそれぞれ接続される電極部17cとを有する。また、第2導体17は、各サーミスタ16を互いに電気的に接続している。
【0025】
接続部17aは、基板11の幅方向(Y軸方向)に延びる部分を有しており、導通部17bの一端部に連結されている。このように接続部17aが延ばされることで、基板11の幅方向に対する導通部17bの位置が調整されている。導通部17bは、基板11の長さ方向(X軸方向)に沿って基板11の端部まで延ばされている。複数の導通部17bは、基板11の幅方向に間隔をあけて配置されている。
【0026】
電極部17cは、基板11の長さ方向(X軸方向)における端部まで延ばされた導通部17bの他端部に形成されている。基板11の長さ方向における端部において、電極部17cは、基板11の長さ方向に間隔をあけて配置されている。電極部17cは、画像形成装置等の電子機器の電源部(図示せず)に接続された端子部材(図示せず)が接続されることで、端子部材を介してサーミスタ16へ給電される。
【0027】
被覆層18は、基板11の第2面11bに設けられたサーミスタ16および第2導体17を被覆する保護層である。被覆層18の材料は、被覆層15と同じにすることができる。本実施形態では、基板11の幅方向(Y軸方向)の全体を覆うよう、帯状に形成されている。また、第2導体17のうち、被覆層18が配置されていない基板11の長さ方向(X軸方向)の両端が、電極部17cである。
【0028】
ヒータ1が有する抵抗発熱体12やサーミスタ16の数および配置、さらに、第1導体13、第2導体17といった各構成は、
図1、
図2に示した構成に限定されるものではなく、ヒータ1の用途や性能等に応じて変更されてもよい。
【0029】
実施形態に係るヒータ1では、基板11の第2面11bに配置されたサーミスタ16は、シート抵抗値を100[kΩ/□]~10000[kΩ/□]とすることができる。サーミスタ16の抵抗値は[kΩ/□]オーダー以上の高い値が一般的だが、このシート抵抗値の範囲にすれば、例えば抵抗値の測定精度に影響なく測定することができ、サーミスタ性能が好ましい。また、サーミスタ16は、B定数を-2700[K]以下とすることができる。ここで、「B定数」は、温度変化に対するサーミスタ16の感度を表す物性値である。サーミスタ16がこのような物性値を有することで、基板11の温度を精度よく検知することができる。
【0030】
また、実施形態に係るサーミスタ16は、鉛(Pb)を含有しない。このため、環境に配慮したサーミスタ16を備えるヒータ1を提供することができる。ここで、「鉛を含有しない」とは、第2面11bに配置されたサーミスタ16を基板11の厚さ方向に切断し、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)JXA-8200(日本電子社製)を用いて測定した鉛の含有量が検出限界以下であることをいう。また、後述するサーミスタ16中の各成分の含有量および質量含有率も、鉛の含有量と同様に測定することができる。
【0031】
また、実施形態に係るサーミスタ16は、マンガンと、コバルトと、銅およびニッケルの一方または両方と、を含有し、鉛を含有しない。このため、環境に配慮しつつ基板11の温度を精度よく検知できるサーミスタ16を備えるヒータ1を提供することができる。
【0032】
また、実施形態に係るサーミスタ16は、マンガン、コバルト、銅およびニッケルの一方または両方、の順で質量含有率が大きく、鉛を含有しない。このため、環境に配慮しつつ基板11の温度を精度よく検知できるサーミスタ16を備えるヒータ1を提供することができる。
【0033】
また、サーミスタ16は、マンガンおよびコバルトの質量含有率が、他の成分の質量含有率よりも大きい。このため、環境に配慮しつつ基板11の温度を精度よく検知できるサーミスタ16を備えるヒータ1を提供することができる。
【0034】
また、実施形態に係るサーミスタ16は、マンガン、コバルト、銅、およびニッケルの質量含有率の合計が50[質量%]以上70[質量%]以下である。質量含有率の合計が50[質量%]未満となると、B定数が-2700[K]を超えてしまい、サーミスタ16が基板11の温度を精度よく検知することができなくなるため、好ましくない。一方、質量含有率の合計が70[質量%]を超えると、サーミスタ16に含まれる他の成分、例えば基板11と結着させるために配合するガラス量が少なく密着強度に影響が出たり、抵抗値をコントロールする導電物質量が少なく抵抗値が高くなる影響が出たりするため、好ましくない。
【0035】
また、実施形態に係るサーミスタ16は、2[質量%]以上15[質量%]以下のルテニウムを含有する。ルテニウムの含有量が2[質量%]未満、あるいは15[質量%]を超えると、サーミスタ16のシート抵抗値が100[kΩ/□]~10000[kΩ/□]の範囲外となるため、基板11の温度を精度よく検知できないことがある。
【0036】
ここで、マンガン、コバルト、銅の質量含有率の合計とサーミスタ16の物性との関係について説明する。マンガン、コバルト、銅の質量含有率の合計を変えてサーミスタ16の物性、特に剥離の有無について試験を行った。試験は、マンガン、コバルト、銅の質量含有率の合計を60[質量%]、65[質量%]、70[質量%]、75[質量%]、80[質量%]と変化させたサーミスタ16に、片面にエポキシ樹脂接着材(面積φ2mm)がついたピンをサーミスタ16に接着して水平に引っ張ったときのパターン剥離の有無を目視で確認した。なお、剥離試験の結果、パターン剥離は無いことが求められる。
【0037】
試験結果を
図3に示す。
図3から明らかであるとおり、マンガン、コバルト、銅の質量含有率の合計が60[質量%]、65[質量%]、70[質量%]、すなわちマンガン、コバルト、銅の質量含有率の合計が70[質量%]以下のときは剥離が無く、サーミスタ16として問題ないことが判明した。一方、マンガン、コバルト、銅の質量含有率の合計が70[質量%]を超えたとき、すなわち、マンガン、コバルト、銅の質量含有率の合計が75[質量%]、80[質量%]のときは剥離が有るため、サーミスタ16として問題があることが判明した。以上のことから、マンガン、コバルト、銅の質量含有率の合計は70[質量%]以下であることが好ましい。
【0038】
さらに、マンガン、コバルト、ニッケルを含有するサーミスタ16、マンガン、コバルト、銅、ニッケルを含有するサーミスタ16についても、
図3に示したサーミスタ16と同様の結果が得られた。以上のことから、マンガン、コバルト、銅およびニッケルの質量含有率の合計は70[質量%]以下であることが好ましい。
【0039】
次に、サーミスタ16に含有されるルテニウムの含有量[質量%]と、シート抵抗値[kΩ/□]との関係について試験を行った。試験結果を
図4に示す。
図4では、横軸にルテニウムの含有量[質量%]、縦軸にシート抵抗値[kΩ/□]を示す。なお、シート抵抗値[kΩ/□]は、25℃の条件下での測定結果である。
図4から明らかであるとおり、サーミスタ16のシート抵抗値が100[kΩ/□]~10000[kΩ/□]の範囲となるルテニウム含有量[質量%]は、2[質量%]以上15[質量%]以下であることが判明した。
【0040】
上述したように、実施形態に係るヒータ1は、基板11、抵抗発熱体12、サーミスタ16を具備する。基板11は、第1面11aおよび第1面11aとは反対側に位置する第2面11bを有する。抵抗発熱体12は、第1面11aに配置される。サーミスタ16は、第2面11bに配置され、鉛を含有しない。このため、環境に配慮したヒータ1を提供することができる。
【0041】
また、実施形態に係るヒータ1は、基板11、抵抗発熱体12、サーミスタ16を具備する。基板11は、第1面11aおよび第1面11aとは反対側に位置する第2面11bを有する。抵抗発熱体12は、第1面11aに配置される。サーミスタ16は、第2面11bに配置され、マンガンと、コバルトと、銅およびニッケルの一方または両方と、を含有し、鉛を含有しない。このため、環境に配慮しつつ基板11の温度を精度よく検知できるヒータ1を提供することができる。
【0042】
また、実施形態に係るヒータ1は、基板11、抵抗発熱体12、サーミスタ16を具備する。基板11は、第1面11aおよび第1面11aとは反対側に位置する第2面11bを有する。抵抗発熱体12は、第1面11aに配置される。サーミスタ16は、第2面11bに配置され、マンガン、コバルト、銅およびニッケルの一方または両方、の順で質量含有率が大きく、鉛を含有しない。このため、環境に配慮しつつ基板11の温度を精度よく検知できるヒータ1を提供することができる。
【0043】
また、実施形態に係るサーミスタ16は、マンガンおよびコバルトの質量含有率が、他の成分の質量含有率よりも大きい。このため、環境に配慮しつつ基板11の温度を精度よく検知できるヒータ1を提供することができる。
【0044】
また、実施形態に係るサーミスタ16は、マンガン、コバルト、銅、およびニッケルの質量含有率の合計が50[質量%]以上70[質量%]以下である。このため、環境に配慮しつつ基板11の温度を精度よく検知できるヒータ1を提供することができる。
【0045】
また、実施形態に係るサーミスタ16は、2[質量%]以上15[質量%]以下のルテニウムを含有する。このため、環境に配慮しつつ基板11の温度を精度よく検知できるヒータ1を提供することができる。
【0046】
[定着装置の構成]
つぎに、一例として実施形態のヒータ1を用いた実施形態の定着装置について図面を参照して説明する。
図3は、実施形態に係るヒータが用いられた実施形態の定着装置を示す断面図である。
図3に示すように、定着装置200は、支持体202の周りに円筒状に巻き回された定着フィルムベルト201の底部にヒータ1が設けられている。定着フィルムベルト201は、例えばポリイミド等の耐熱性を有する樹脂材料によって形成されている。ヒータ1および定着フィルムベルト201に対向する位置には、加圧ローラ203が配置されている。加圧ローラ203は、表面に耐熱性の弾性材料、例えばシリコーン樹脂層204を有しており、定着フィルムベルト201を圧接した状態で、回転軸205まわり(
図3中のP方向)に回転することができる。
【0047】
トナー定着工程では、定着フィルムベルト201とシリコーン樹脂層204との接触面において、媒体である記録用紙(複写用紙)M上に付着したトナー像U1が、定着フィルムベルト201を介してヒータ1により加熱溶融される。その結果、少なくともトナー像U1の表面部分は、融点を超え、軟化して溶融する。その後、加圧ローラ203の用紙排出側において、記録用紙Mは、ヒータ1から離間すると共に、定着フィルムベルト201から離間し、トナー像U2が自然に放熱して再び固化することで、トナー像U2が記録用紙Mに定着する。
【0048】
[画像形成装置の構成]
最後に、一例として実施形態のヒータ1を備えた実施形態の画像形成装置について図面を参照して説明する。
図4は、実施形態に係るヒータが用いられた実施形態の画像形成装置を示す断面図である。なお、本実施形態の画像形成装置は、複写機100として構成されている。
図4に示すように、複写機100には、上述した定着装置200を含む各構成要素が筐体101内に設けられている。筐体101の上部には、ガラス等の透明材料からなる原稿載置台が取り付けられており、画像情報を読み取る対象となる原稿M1を原稿載置台上で往復移動させて(
図4中のQ方向)原稿M1をスキャンするように構成されている。
【0049】
筐体101内の上部には、光照射用ランプと反射鏡とを有する照明装置102が設けられている。照明装置102から照射された光は、原稿載置台上の原稿M1の表面で反射し、短焦点小径結像素子アレイ103によって感光ドラム104上にスリット露光される。なお、感光ドラム104は、回転可能(
図4中のR方向)に設けられている。また、筐体101内に配置された感光ドラム104の近傍には、帯電器105が設けられており、感光ドラム104が帯電器105により一様に帯電される。感光ドラム104は、例えば酸化亜鉛感光層または有機半導体感光層で被覆されている。帯電した感光ドラム104には、短焦点小径結像素子アレイ103によって画像露光が行われた静電画像が形成される。この静電画像は、現像器106による加熱で軟化溶融する樹脂等からなるトナーを用いて顕像化され、トナー像となる。
【0050】
カセット107内に収容されている記録用紙Mは、給送ローラ108と感光ドラム104上のトナー像と同期して上下方向に圧接して回転される一対の搬送ローラ109によって、感光ドラム104上に送り込まれる。そして、転写放電器110によって感光ドラム104上のトナー像が記録用紙M上に転写される。その後、感光ドラム104上から下流側に送られた記録用紙Mは、搬送ガイド111によって定着装置200に導かれて加熱定着処理(上述のトナー定着工程)された後、トレイ112に排出される。なお、トナー像が転写された後、感光ドラム104上の残留トナーは、クリーナ113により除去される。
【0051】
定着装置200において、ヒータ1は、加圧ローラ203の外周に取り付けられたシリコーン樹脂層204に加圧された状態で設けられている。ヒータ1は、記録用紙Mの搬送方向と直交する記録用紙Mの幅方向に、複写機100が複写可能な最大判用紙の幅(長さ)に合わせた有効長、すなわち最大判用紙の幅(長さ)よりも大きい抵抗発熱体12を備える。そして、ヒータ1と加圧ローラ203との間を送られる記録用紙M上の未定着トナー像は、抵抗発熱体12の発熱を利用して溶融され、記録用紙M上に文字、記号、画像等の複写像を現出させる。
【0052】
なお、実施形態のヒータ1を複写機100等の画像形成装置の定着ヒータとして適用した一例について説明したが、ヒータ1の用途を限定するものではない。実施形態のヒータ1は、家庭用電気製品、業務用や実験用の精密機械や化学反応用の機器等に装着して加熱や保温の熱源として使用されてもよい。
【0053】
本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
1 ヒータ
11 基板
12 抵抗発熱体
13 第1導体
14 給電用電極
15、18 被覆層
16 サーミスタ
17 第2導体