(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
H01F17/00 B
(21)【出願番号】P 2019025629
(22)【出願日】2019-02-15
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】水上 貴嗣
(72)【発明者】
【氏名】三好 弘己
(72)【発明者】
【氏名】葭中 圭一
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-299120(JP,A)
【文献】特開2004-047849(JP,A)
【文献】特開2003-158015(JP,A)
【文献】特開2005-032976(JP,A)
【文献】特開2008-053675(JP,A)
【文献】特開2013-120932(JP,A)
【文献】特開2015-171316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の側面を有する直方体状の素体と、
前記素体内において、前記第1の側面と平行な主面において1ターンを超えて巻回された渦巻状のコイル導体層と、
を備え、
前記コイル導体層は、前記コイル導体層の内側から前記コイル導体層の外側に向かう第1方向において隣り合う2つの配線部分の配線間隔が、前記コイル導体層の内側から前記コイル導体層の外側に向かい前記第1方向と異なる第2方向において隣り合う2つの配線部分の配線間隔と異なり、
前記第2方向において隣り合う2つの配線部分
の一方が円弧状の湾曲部で
あり、2つの前記配線部分の他方が屈曲する形状である、
インダクタ部品。
【請求項2】
第1の側面を有する直方体状の素体と、
前記素体内において、前記第1の側面と平行な主面において1ターンを超えて巻回された渦巻状のコイル導体層と、
を備え、
前記コイル導体層は、前記コイル導体層の内側から前記コイル導体層の外側に向かう第1方向において隣り合う2つの配線部分の配線間隔が、前記コイル導体層の内側から前記コイル導体層の外側に向かい前記第1方向と異なる第2方向において隣り合う2つの配線部分の配線間隔と異なり、
前記第2方向において隣り合う2つの配線部分の少なくとも一方が円弧状の湾曲部であり、
前記コイル導体層は、前記第1の側面に直交する方向から視て、環状の第1軌道に沿った配線部分と、前記第1軌道より内側の環状の第2軌道に沿った配線部分とを含み、
前記第1軌道に沿った配線部分は、2つ以上の第1直線部と前記第1直線部同士を接続する第1角部とを含み、
前記第2軌道に沿った配線部分は、前記第1直線部と平行な2つ以上の第2直線部と前記第2直線部同士を接続する第2角部とを含み、
前記第1直線部と前記第2直線部の第1配線間隔S1に対する、前記第1角部と前記第2角部の第2配線間隔S2の比S2/S1は、1.8以上、3.1以下である、
インダクタ部品。
【請求項3】
前記第2配線間隔は、22μm以上、82μm以下である、
請求項2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
第1の側面を有する直方体状の素体と、
前記素体内において、前記第1の側面と平行な主面において1ターンを超えて巻回された渦巻状のコイル導体層と、
を備え、
前記コイル導体層は、前記コイル導体層の内側から前記コイル導体層の外側に向かう第1方向において隣り合う2つの配線部分の配線間隔が、前記コイル導体層の内側から前記コイル導体層の外側に向かい前記第1方向と異なる第2方向において隣り合う2つの配線部分の配線間隔と異なり、
前記第2方向において隣り合う2つの配線部分はともに円弧状の湾曲部であり、内側の前記湾曲部の曲率半径R4は、外側の前記湾曲部の曲率半径R2より大きい
、
インダクタ部品。
【請求項5】
内側の前記湾曲部の曲率半径R4と、外側の前記湾曲部の曲率半径R2との差は、60μm以下である、
請求項4に記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インダクタ部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品は、種々の電子機器に搭載されている。その電子部品の1つとして、例えば積層型のインダクタ部品が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、携帯電話などの電子機器で使用される信号の高周波化に伴い、電子機器には高周波信号に対応した小型インダクタ部品が要求されている。単純にインダクタ部品を小型化すると、配線断面積が減少し、コイル内径も小さくなるため、取得可能なインダクタンス値(L値)やQ値の最大値は低下する。このため、高周波信号に用いられる小型のインダクタ部品において、単位体積当たりのL値やQ値等の特性の取得効率を向上する方法が今後重要となってくる。
【0005】
具体的には、例えば、特許文献1のようなインダクタ部品の構造のまま、インダクタンス値を増加しようとすると、コイル導体層の層数を多くする必要がある。この場合、積層方向に積層体が大きくなり、インダクタ部品の外形が大きくなり、小型化を実現できなくなる。また、特許文献1のようなインダクタ部品において、同じ外形でインダクタンス値を増加させるためにコイル導体層当たりのターン数を1ターン以上にすると、各コイル導体層において平行となる2つの配線により発生する磁束が互いに干渉してQ値が低下してしまう。
【0006】
本開示の目的は、特性の取得効率が向上したインダクタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様であるインダクタ部品は、第1の側面を有する直方体状の素体と、前記素体内において、前記第1の側面と平行な主面において1ターンを超えて巻回された渦巻状のコイル導体層と、を備え、前記コイル導体層は、前記コイル導体層の内側から前記コイル導体層の外側に向かう第1方向において隣り合う2つの配線部分の配線間隔が、前記コイル導体層の内側から前記コイル導体層の外側に向かい前記第1方向と異なる第2方向において隣り合う2つの配線部分の配線間隔と異なる。
【0008】
隣り合う2つの配線部分では、それぞれに流れる電流によって発生する磁束が互いに打ち消し合う。上記の構成によれば、隣り合う2つの配線部分の配線間隔が異なることによって、互いの磁束の打ち消し合いが低減される部分を有するため、特性の取得効率が向上する。なお、上記における「配線間隔」は、隣り合う2つの配線部分の間の最短距離を示す。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、特性の取得効率が向上したインダクタ部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】コイル導体層及び外部電極層を示す絶縁体層の平面図。
【
図6】コイル導体層及び外部電極層を示す絶縁体層の平面図。
【
図7】(a),(b)は、コイル導体層の一部拡大図。
【
図9】曲率半径の差R4-R2とQ値の関係を示す説明図。
【
図11】配線間隔の比S2/S1とQ値の関係を示す説明図。
【
図12】(a)(b)は変更例のインダクタのコイル導体層を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態を説明する。
なお、添付図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、または別の図面中のものと異なる場合がある。
【0012】
図1は、インダクタ部品1の外観を示す概略斜視図である。インダクタ部品1は、素体10を備えている。素体10は、インダクタ部品1の各部材を配置する基体であり、概略で直方体状である。なお、本明細書において、「直方体状」には、角部や稜線部が面取りされた直方体や、角部や稜線部が丸められた直方体が含まれるものとする。また、「直方体状」は、主面及び側面の一部又は全部に凹凸などが形成された形状であってもよく、対向する面が完全に平行となっておらず、多少の傾きがある形状であってもよい。
【0013】
素体10は、実装面11を有している。この実装面11は、インダクタ部品1を回路基板に実装する際に、回路基板と対向する面である。素体10は、実装面11と平行な上面12を有している。また、素体10は、実装面11に対して直交する二対の面を有している。この二対の面のうちの一方の一対の面を第1の側面13及び第2の側面14とし、二対の面のうちの他方の一対の面を第1の端面15及び第2の端面16とする。なお、第1の端面15及び第2の端面16は、第1の側面13及び第2の側面14と直交する。
【0014】
本明細書において、上面12及び実装面11と垂直な方向を「高さ方向」、第1の側面13と第2の側面14と垂直な方向を「幅方向」、第1の端面15と第2の端面16と垂直な方向を「長さ方向」とする。具体的な例示として、「長さ方向L」、「高さ方向T」、「幅方向W」を
図1に図示する。そして、「幅方向」の大きさを「幅寸法」、「高さ方向」の大きさを「高さ寸法」、「長さ方向」の大きさを「長さ寸法」とする。なお、以下ではインダクタ部品1の高さ方向における実装面11側を下側、上面12側を上側とする。
【0015】
図2に示す素体10において、長さ方向Lの大きさ(長さ寸法L1)は、0mmよりも大きく、1.0mm以下が好ましい。例えば、長さ寸法L1は、0.6mmである。また、素体10において、幅方向Wの大きさ(幅寸法W1)は、0mmよりも大きく、0.6mm以下であることが好ましい。幅寸法W1は、0.36mm以下であることが好ましく、0.33mm以下であることがより好ましい。例えば、素体10の幅寸法W1は、0.3mmである。また、素体10において、高さ方向Tの大きさ(高さ寸法T1)は、0mmよりも大きく、0.8mm以下であることが好ましい。例えば、素体10の高さ寸法T1は、0.4mmである。
【0016】
インダクタ部品1は、素体10の表面に露出する第1外部電極20と第2外部電極30とを有している。第1外部電極20は、素体10の実装面11において露出している。また、第1外部電極20は、素体10の第1の端面15において露出している。第2外部電極30は、素体10の実装面11において露出している。また、第2外部電極30は、素体10の第2の端面16において露出している。つまり、実装面11には、第1外部電極20と第2外部電極30とが露出している。言い換えると、素体10において第1外部電極20と第2外部電極30とが露出する面が実装面11である。
【0017】
第1外部電極20は、第1の端面15において、素体10の実装面11から、素体10の高さの略1/2の長さに形成されている。第1外部電極20は、幅方向Wにおいて、素体10の略中央に形成され、第1外部電極20の幅寸法は、素体10の幅寸法より小さく、例えば0.24mmである。なお、第1外部電極20は、例えば実装面11において、第1の端面15から0.15mmの長さに形成されている。第2外部電極30は、第2の端面16において、素体10の実装面11から、素体10の高さの略1/2の長さに形成されている。本実施形態において、第2外部電極30は、幅方向Wにおいて、素体10の略中央に形成され、第2外部電極30の幅寸法は、素体10の幅寸法より小さく、例えば0.24mmである。なお、第2外部電極30は、例えば実装面11において、第2の端面16から0.15mmの長さに形成されている。また、第1外部電極20及び第2外部電極30の幅寸法は、素体10の幅寸法と等しくてもよい。
【0018】
図2、
図3及び
図4は、インダクタ部品1の内部構造を含む各部の構成を説明するための図である。インダクタ部品1は、素体10内に設けられたコイル40を有している。
図2及び
図3では、素体10内に位置するコイル40と、後述する第1外部電極20及び第2外部電極30の下地層21,31とを実線にて示すとともに、素体10を二点鎖線にて示している。また、
図2では、素体10外に位置する後述の第1外部電極20及び第2外部電極30の被覆層22,32を省略することにより、素体10の内部を判り易くしている。
【0019】
図5に示すように、素体10は、第1の側面13と平行な長方形状の主面を有する板状の複数の絶縁体層60を含み、複数の絶縁体層60が第1の側面13と垂直な幅方向Wに積層されて構成された直方体状である。従って、幅方向Wは、絶縁体層60の積層方向である。また、幅方向Wと垂直な長さ方向L及び高さ方向Tはそれぞれ、積層方向と垂直な層内方向の一つである。個々の絶縁体層には、それぞれを区別する符号「61,62,63a~63h,64,65」を付している。以下の説明において、複数の絶縁体層を区別しない場合には符号「60」を用い、個々を区別する場合には符号「61,62,63a~63h,64,65」を用いる。
【0020】
なお、絶縁体層60の主面は、導体層形成、積層、焼成、硬化などの製造プロセスによって、第1の側面13とは完全に平行とはならず、多少の傾きを有する場合や、面内に凹凸を含む場合がある。このような場合も、絶縁体層60の主面は、第1の側面13と実質的に平行とする。また、焼成や硬化等の製造プロセスによって、絶縁体層60同士の界面が明確となっていない場合がある。
【0021】
絶縁体層60の材料としては、例えば、比透磁率が「2」以下の材料が好ましく、例えば、硼珪酸ガラスなどのガラス、アルミナ、ジルコニア、ポリイミド樹脂等の非磁性材料を用いることができる。なお、絶縁体層60の材料は、比透磁率が「1」に近いことがより好ましい。ただし、インダクタ部品1の使用態様によって、絶縁体層60は磁性体材料からなってもよく、フェライトや磁性粉含有樹脂などを材料に用いてもよい。
【0022】
絶縁体層61,65の色は、他の絶縁体層62,63a~63h,64の色と異なる。
図1では、これらの絶縁体層61,65をハッチング及び実線にて他の絶縁体層と区別して示している。これにより、インダクタ部品1の実装時に、インダクタ部品1の横転等の検出が可能となる。なお、絶縁体層61,65の色は、他の絶縁体層62,63a~63h,64の色と同じであってもよく、長さ寸法L1、幅寸法W1、高さ寸法T1がそれぞれ異なる値となっていれば、上記のように色が同じであっても横転等の検出が可能となる。
【0023】
第1外部電極20及び第2外部電極30は、インダクタ部品1内のコイル40に対する電気信号の入出力端子であり、インダクタ部品1を回路基板に実装する際の回路配線との接続部分となる。
【0024】
図3に示すように、本実施形態の第1外部電極20は、下地層21と被覆層22とを含む。下地層21は、素体10に埋め込まれている。下地層21は、幅方向Wから視てL字状に形成されている。また、本実施形態の第2外部電極30は、下地層31と被覆層32とを含む。下地層31は、素体10に埋め込まれている。下地層31は、幅方向Wから視てL字状に形成されている。
【0025】
第1外部電極20,第2外部電極30は、素体10の表面のうち、幅方向Wと平行な面のみから露出しているため、コイル40の周囲を幅方向Wに通過する磁束が、第1外部電極20,第2外部電極30に遮られない。また、インダクタ部品1を回路基板に実装した場合に、上記磁束は回路基板の主面と平行となり、回路基板の回路配線に遮られ難くなる。従って、インダクタ部品1のQ値を向上できる。
【0026】
被覆層22,32の材料としては、耐はんだ性やはんだ濡れ性の高い材料を用いることができる。例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、錫(Sn)、金(Au)等の金属、又はこれらの金属を含む合金などを用いることができる。また、被覆層は、複数の層により形成することもできる。例えば、被覆層22,32は、第1外部電極20と第2外部電極30とを被覆するNiめっきと、Niめっきの表面を覆うSnめっきとを含む。この被覆層22,32は、第1外部電極20及び第2外部電極30の表面の酸化を防ぐ。この被覆層22,32は、素体10から突出していてもよく、また素体10の各面と同一面を形成していてもよい。
【0027】
図2に示すように、下地層21は、絶縁体層63a~63hのそれぞれの角に設けられ、幅方向Wに並ぶ複数の外部導体層23を含む。複数の外部導体層23は、幅方向Wにおいて互いに直接接続され、1つの下地層21を形成する。同様に、下地層31は、幅方向Wに設けられた複数の外部導体層33を含む。複数の外部導体層33は、幅方向Wにおいて互いに直接接続され、1つの下地層31を形成する。なお、外部導体層23,33は、
図2に示すように、幅方向に全面で接触する場合に限られず、絶縁体層63a~63hの主面上に形成されて互いに直接接触していなくてもよい。この場合、外部導体層23,33の間に位置する絶縁体層63b~63hを貫通する導体層やビアによって外部導体層23,33が幅方向Wに電気的に接続されていてもよいし、互いに全く電気的に接続されていなくてもよい。
【0028】
図3に示すように、コイル40の第1端は、第1外部電極20に接続され、コイル40の第2端は、第2外部電極30に接続されている。
コイル40は、第1外部電極20及び第2外部電極30を介して入出力される電流により発生する磁束を集中させ、大きなインダクタンスを発生させるコイル部40aと、コイル部40aの両端をそれぞれ第1外部電極20,第2外部電極30に接続する第1引出導体層40b,第2引出導体層40cとを有している。
【0029】
図4及び
図5に示すように、コイル部40aは、素体10内において、幅方向Wに配列された複数のコイル導体層41~48と、コイル導体層41~48を幅方向Wに電気的に接続するビア導体層51~57を含む。
【0030】
図4及び
図5に示すように、各コイル導体層41~48は、素体10内において、絶縁体層63a~63hの主面に沿って1ターンを超えて巻回された渦巻状の導体層である。渦巻状とは、平面に沿った螺旋形状(スパイラル)のことであり、立体螺旋(ヘリカル)とは区別される。なお、
図4では、絶縁体層60(63a~63h)の外形を二点鎖線にて示している。
【0031】
図4に示すように、本実施形態のコイル導体層41~48は、2つの環状の軌道O1,O2に概略沿うように渦巻状(スパイラル状)である。従って、本実施形態のコイル導体層41~48のターン数は、1ターン超2ターン以下である。ただし、コイル導体層41~48のターン数は、1ターンを超えていればよく、2ターンを超えていてもよい。本実施形態において、環状の軌道O1,O2はそれぞれ、長方形状である。また、
図4に示すように、コイル導体層41~48は、幅方向Wから視て、一部が互いに重なり合って2つの環状の軌道O1,O2を形成している。なお、「互いに重なる」とは、製造ばらつき等によって、僅かに重ならない場合も含む。なお、コイル部40aの形状(軌道O1,O2の形状)は、上述の長方形状のほか、多角形状、円形状、楕円形状、又はこれらの複数の図形の組合せ、等であってもよい。また、外周軌道O1の形状と内周軌道O2の形状が相違するものであってもよい。
【0032】
図4及び
図5に示すように、各コイル導体層41~48は、絶縁体層63b~63hを幅方向Wに貫通するビア導体層51~57を介して電気的に直列に接続されている。なお、
図4及び
図5では、ビア導体層51~57を、コイル導体層41~48の間の一点鎖線として示している。
【0033】
各コイル導体層41~48、ビア導体層51~57、第1引出導体層40b、及び第2引出導体層40cの材料としては、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)等の電気抵抗の小さい金属や、これらの金属を主成分とする合金等の導電性材料により形成されている。また、各外部導体層23,33は、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)等の電気抵抗の小さい金属や、これらの金属を主成分とする合金等の導電性材料により形成されている。さらに、これら導電性材料中にガラスが分散する構成であってもよい。
【0034】
図2及び
図3に示すように、コイル部40a及び第1,第2引出導体層40b,40cは、実装面11の中心から実装面11と直交する方向に延びる軸線に対して、回転対称(180度回転)な構造を有している。このため、第1外部電極20及び第2外部電極30と、第1外部電極20及び第2外部電極30が接続される基板配線の接続関係を逆にしても、同様の特性が得られる。
【0035】
コイル導体層について詳述する。
本実施形態において、
図4及び
図5に示す絶縁体層63a~63hのコイル導体層41~48は、同じ技術思想に基づいて形成されたものである。従って、ここでは、1つのコイル導体層、例えば絶縁体層63hのコイル導体層48について詳述し、他のコイル導体層41~47についての図面及び説明を省略する。
【0036】
図6は、絶縁体層63hの主面上のコイル導体層48、第2引出導体層40c、外部導体層23,33を示す。
コイル導体層48は、複数の直線部71,72,73,74,75,76,77と、各直線部71,72,73,74,75,76,77の間の湾曲部(角部)81,82,83,84,85,86を有している。直線部71,73,75,77は、素体10の長さ方向Lに延びている。直線部72,74,76は、素体10の高さ方向Tに延びている。つまり、直線部71,73,75,77と、直線部72,74,76は、直交する2つの方向(長さ方向L、高さ方向T)に延びている。
【0037】
直線部71,72,73,74は、外周軌道O1の一部を形成し、直線部75,76,77は、内周軌道O2の一部を形成する。ただし、直線部75の一部は、内周軌道O2の一部を形成し、直線部75の端部が、外周軌道O1の直線部75と接続されている。つまり、この直線部75は、内周軌道O2上の部分と、内周軌道O2と外周軌道O1との間の部分とを有している。
【0038】
本実施形態のコイル導体層48では、長方形状の外周軌道O1(直線部71,72,73,74及び湾曲部81,82,83)を有することによって、外形を大きくできる。また、コイル導体層48では、長方形状の内周軌道O2(直線部75の一部,直線部76.77及び湾曲部85,86)を有することによって、長さ(配線長)を長くできる。このため、インダクタ部品1のQ値は大きくなる。
【0039】
本実施形態において、各湾曲部81~86は、接続する直線部と連続するように、湾曲して形成されている。つまり、各湾曲部81~86は、コイル導体層48の内側の辺と、コイル導体層の外側の辺とを有し、それらの辺は円の約4分の1周分の円弧状である。
【0040】
ここで、コイル導体層48の内側から外側に向かうある方向について、当該方向にコイル導体層48の内側から外側に向かう半直線と交差するコイル導体層48の部分を、当該方向に並ぶ配線部分とする。また、当該方向において並ぶ配線部分のうち,隣り合うものを、当該方向において隣り合う配線部分とする。例えば、
図6に示すように、外周軌道O1の直線部71と、内周軌道O2の直線部75とは、コイル導体層48の内側から外側に向かう第1方向A1において隣り合う配線部分である。同様に、外周軌道O1の湾曲部82と、内周軌道O2の湾曲部86とは、コイル導体層48の内側から外側に向かい第1方向A1と異なる第2方向A2において隣り合う配線部分である。
【0041】
本実施形態において、第2方向A2において隣り合う湾曲部82,86の配線間隔S2は、第1方向A1において隣り合う直線部71,75の配線間隔S1よりも大きい。なお、
図6に示す湾曲部81,85の配線間隔も、直線部71,75の配線間隔S1よりも大きい。つまり、インダクタ部品1は、絶縁体層63hの主面において1ターンを超えて巻回された渦巻状のコイル導体層48を備える。また、コイル導体層48は、第1方向A1において隣り合う2つの配線部分である直線部71,75の配線間隔S1が、第2方向A2において隣り合う2つの配線部分である湾曲部82,86の配線間隔S2と異なる。
【0042】
インダクタ部品1のコイル導体層48のように1ターンを超えて巻回された渦巻状のコイル導体層においては、外周軌道O1において発生する磁束と内周軌道O2において発生する磁束とが打ち消し合うため、1ターン以内で巻回されたコイル導体層と比較して、絶縁体層の主面の面積当たりのL値の取得効率が下がり、Q値も低下する。一方、インダクタ部品1では、配線間隔S1,S2が異なるため、少なくとも配線間隔が大きい側(湾曲部82,86)においては、外周軌道O1と内周軌道O2との間における磁束の打ち消し合いを低減できる。これにより、例えば、インダクタ部品1では、大きさに対するL値の取得効率を向上できる。
【0043】
なお、隣り合う配線部分は、直線部71,75や湾曲部82,86のように、外周軌道O1の配線部分と内周軌道の配線部分との形状が互いに同じ場合に限らない。例えば、外周軌道O1の配線部分が直線状であり、内周軌道O2の配線部分が湾曲状であってもよい。
【0044】
(製造方法)
次に、上述のインダクタ部品1の製造方法について、
図5を参照して説明する。
先ず、絶縁体層61となるべきマザー絶縁体層を形成する。マザー絶縁体層とは、複数の絶縁体層61が繋がった状態でマトリクス状に配列された大判の絶縁体層である。例えばキャリアフィルム上に硼珪酸ガラスを主成分とする絶縁ペーストを塗布し、絶縁体層61となるべきマザー絶縁体層が形成される。本実施形態では、焼成後の比透磁率が「2」以下となる絶縁ペーストを用いた。なお、絶縁体層61に用いられる絶縁ペーストには、絶縁体層62,63a~63h,64に用いられる絶縁ペーストと異なる着色が施されている。
【0045】
次に、絶縁体層62となるべきマザー絶縁体層を形成する。絶縁体層61となるべきマザー絶縁体層上に絶縁ペーストを塗布し、絶縁体層62となるべきマザー絶縁体層を形成する。
【0046】
次に、絶縁体層63aとなるべきマザー絶縁体層を形成する。絶縁体層62となるべきマザー絶縁体層上に絶縁ペーストを塗布し、絶縁体層63aとなるべきマザー絶縁体層を形成する。
【0047】
次に、コイル導体層41、及び外部導体層23,33を形成する。例えば、絶縁体層63aとなるべきマザー絶縁体層上にAgを金属主成分とする導電ペーストを塗布して、導電ペースト層を形成する。この際、コイル導体層41、及び外部導体層23,33に対応する部分が開口されたスクリーン版を用いて導電性ペーストを印刷すてパターニングしてもよいし、感光性の導電ペーストをフォトリソグラフィでパターニングしてもよい。これにより、焼成前のコイル導体層41、及び外部導体層23,33が、絶縁体層63aとなるべきマザー絶縁体層上に形成される。
【0048】
次に、絶縁体層63bとなるべきマザー絶縁体層を形成する。絶縁体層63aとなるべきマザー絶縁体層上に絶縁ペーストを塗布した後に、ビア導体層51、及び外部導体層23,33が形成される位置をレーザ加工やフォトリソグラフィなどで除去する。これにより、コイル導体層41のビアパッドに対応する位置に貫通孔を有するとともに、外部導体層23,33に対応する角部が切り欠かれた絶縁体層63bとなるべきマザー絶縁体層が形成される。
【0049】
次に、コイル導体層42、ビア導体層51、及び外部導体層23,33を形成する。上述のコイル導体層41と同様に、導電ペーストを塗布して、導電ペースト層を絶縁体層63bとなるべきマザー絶縁体層上に形成する。このとき、導電ペーストは、上述の貫通孔及び切り欠き部分に充填される。これにより、焼成前のコイル導体層42、ビア導体層51、及び外部導体層23,33が、絶縁体層63bとなるべきマザー絶縁体層上に形成される。
【0050】
この後、マザー絶縁体層を形成する工程と、導電ペースト層を形成する工程と、を交互に繰り返すことにより、絶縁体層63c~63hとなるべきマザー絶縁体層、焼成前のコイル導体層42~48、外部導体層23,33、及びビア導体層52~57を形成する。
【0051】
次に、絶縁体層64となるマザー絶縁体層を、上述の絶縁体層62となるマザー絶縁体層と同様にして、絶縁体層63hとなるべきマザー絶縁体層上に形成する。そして、絶縁体層65となるマザー絶縁体層を、上述の絶縁体層61となるマザー絶縁体層と同様にして、絶縁体層64となるべきマザー絶縁体層上に形成する。
【0052】
以上の工程を経て、マトリクス状に配列されるとともに互いにつながった状態の複数の素体10を含むマザー積層体を得る。
次に、ダイシング等によりマザー積層体をカットして未焼成の素体10を得る。カット工程では、カットにより形成されるカット面において外部導体層23,33が素体10から露出する。なお、後述する焼成において素体10が収縮するので、収縮を考慮してマザー積層体をカットする。
【0053】
次に、未焼成の素体10を所定条件で焼成し、素体10を得る。更に、素体10に対してバレル加工を施す。バレル加工後に、外部導体層23,33を被覆する被覆層22を形成する。例えば、被覆層22は、電解めっき法や無電解めっき法により形成することができる。
【0054】
以上の工程を経て、インダクタ部品1が完成する。
なお、上記の製造方法は例示であって、インダクタ部品1の構造が実現できるのであれば、他の公知の製造方法で置き換えたり、追加したりしてもよい。例えば、焼成を行わず、絶縁体層を硬化性樹脂、コイル導体層等をめっき等で形成してもよい。
【0055】
(作用)
次に、上記のインダクタ部品1の作用を説明する。
図4及び
図5に示すように、コイル導体層41~48は、外周軌道O1と内周軌道O2にかけた渦巻状である。
【0056】
図6に示すように、インダクタ部品1は、第1の側面13を有する直方体状の素体10と、素体10内において、第1の側面13と直交する方向に配列され、第1の側面13と平行な主面において1ターンを超えて巻回された渦巻状の複数のコイル導体層41~48とを備えている。各コイル導体層41~48の内側から外側に向かう方向(例えば第1方向A1)において隣り合う2つの配線部分(例えば直線部71,75)の配線間隔(例えば、配線間隔S1)は、コイル導体層41~48の内側から外側に向かう方向(例えば第2方向A2)において隣り合う2つの配線部分(湾曲部82,86)の配線間隔(例えば配線間隔S2)と異なる。これによって、上述したように、インダクタ部品1では、L値の取得効率を向上できる。
【0057】
また、インダクタ部品1においては、以下のような構成を備えることが好ましい。
図7(a)及び
図7(b)は、コイル導体層48の一部を拡大して示す。
図7(a)は、内周軌道O2の湾曲部86の曲率半径R4が、外周軌道O1の湾曲部82の曲率半径R2より大きい例を示す。
図7(b)は、内周軌道O2の湾曲部86の曲率半径R4が、外周軌道O1の湾曲部82の曲率半径R2と同じ(湾曲部82,86が同じ形状)である例を示す。
【0058】
図7(a)に示す例と
図7(b)に示す例のいずれにおいても、湾曲部82,86の配線間隔S2は、直線部72,76の配線間隔S1よりも大きく、上述したL値の取得効率の向上を実現できる。
【0059】
一方、
図7(b)では、内周軌道O2の湾曲部86の形状を、外周軌道O1の湾曲部82の形状と同じとすることにより、内周軌道O2の内側の領域を大きくでき、内周軌道O2の周長を大きくできる。
【0060】
このように、内周軌道O2の周長を大きくすることにより、一般的にはインダクタ部品1のQ値の向上効果が期待できる。しかしながら、本願発明者は、コイル導体層48のような1ターンを超えて巻回された渦巻状のコイル導体層においては、内周軌道O2の周長を大きくすることにより、併走する配線部分の割合が増加し、隣り合う配線部分で磁束の打ち消し合いが発生することに思い至った。これにより、内周軌道O2の周長を大きくすることによるインダクタ部品1のQ値の向上効果が期待するよりも低減することが考えられる。
【0061】
そこで、
図7(a)に示すように、インダクタ部品1では、内周軌道O2の湾曲部86の曲率半径R4が、外周軌道O1の湾曲部82の曲率半径R2より大きいことが好ましい。内周軌道O2の湾曲部86の曲率半径R4と外周軌道O1の湾曲部82の曲率半径R2との差に応じて、直線部72,76の長さが短くなる。このため、外周軌道O1と内周軌道O2とにおいて、互いに平行となる配線部分が短くなり、隣り合う配線部分の間における磁束の打ち消し合いを低減できる。
【0062】
上述したように、隣り合う配線部分の間における磁束の打ち消し合いを低減する観点では、内周軌道O2の湾曲部86の曲率半径R4と外周軌道O1の湾曲部82の曲率半径R2との差が大きい方が好ましい。しかしながら、湾曲部86の曲率半径R4と外周軌道O1の湾曲部82の曲率半径R2との差を大きくすると、内周軌道O2の内側の領域が小さくなり、Q値が低下する。本願発明者は、インダクタ部品1を以下のように実施例として作成することにより、湾曲部86の曲率半径R4と外周軌道O1の湾曲部82の曲率半径R2との関係による特性の変化を確認した。
【0063】
[実施例]
表1には、実施例1~6について、各部の寸法と、配線間隔S1に対する配線間隔S2の比S2/S1,曲率半径差R4-R2を示している。なお、各部の寸法の説明には、
図7(a)に示す部材(湾曲部82,86等)を用いる。
【0064】
【表1】
(実施例1)
実施例1のインダクタ部品は、コイル導体層の配線幅Lw(μm)=18.9、配線間隔S1(μm)=22.0、曲率半径R1(μm)=27.3、曲率半径R2(μm)=8.4、曲率半径R3(μm)=27.3、曲率半径R4(μm)=8.4、配線間隔S2(μm)=38.9とした。このインダクタ部品において、配線間隔S1に対する配線間隔S2の比S2/S1は1.8、内周軌道O2の湾曲部86の曲率半径R4と外周軌道O1の湾曲部82の曲率半径R2との差R4-R2は0.0である。
【0065】
(実施例2)
本実施例2のインダクタ部品は、コイル導体層の配線幅Lw(μm)=18.9、配線間隔S1(μm)=22.0、曲率半径R1(μm)=27.3、曲率半径R2(μm)=8.4、曲率半径R3(μm)=38.9、曲率半径R4(μm)=20.0、配線間隔S2(μm)=43.7とした。このインダクタ部品において、配線間隔S1に対する配線間隔S2の比S2/S1は2.0、内周軌道O2の湾曲部86の曲率半径R4と外周軌道O1の湾曲部82の曲率半径R2との差R4-R2は11.6である。
【0066】
(実施例3)
本実施例3のインダクタ部品は、コイル導体層の配線幅Lw(μm)=18.9、配線間隔S1(μm)=22.0、曲率半径R1(μm)=27.3、曲率半径R2(μm)=8.4、曲率半径R3(μm)=58.9、曲率半径R4(μm)=40.0、配線間隔S2(μm)=52.0とした。このインダクタ部品において、配線間隔S1に対する配線間隔S2の比S2/S1は2.4、内周軌道O2の湾曲部86の曲率半径R4と外周軌道O1の湾曲部82の曲率半径R2との差R4-R2は31.6である。
【0067】
(実施例4)
本実施例4のインダクタ部品は、コイル導体層の配線幅Lw(μm)=18.9、配線間隔S1(μm)=22.0、曲率半径R1(μm)=27.3、曲率半径R2(μm)=8.4、曲率半径R3(μm)=78.9、曲率半径R4(μm)=60.0、配線間隔S2(μm)=60.3とした。このインダクタ部品において、配線間隔S1に対する配線間隔S2の比S2/S1は2.7、内周軌道O2の湾曲部86の曲率半径R4と外周軌道O1の湾曲部82の曲率半径R2との差R4-R2は51.6である。
【0068】
(実施例5)
本実施例5のインダクタ部品は、コイル導体層の配線幅Lw(μm)=18.9、配線間隔S1(μm)=22.0、曲率半径R1(μm)=27.3、曲率半径R2(μm)=8.4、曲率半径R3(μm)=98.9、曲率半径R4(μm)=80.0、配線間隔S2(μm)=66.8とした。このインダクタにおいて、配線間隔S1に対する配線間隔S2の比S2/S1は3.1、内周軌道O2の湾曲部86の曲率半径R4と外周軌道O1の湾曲部82の曲率半径R2との差R4-R2は71.6である。
【0069】
(実施例6)
本実施例6のインダクタ部品は、コイル導体層の配線幅Lw(μm)=18.9、配線間隔S1(μm)=22.0、曲率半径R1(μm)=27.3、曲率半径R2(μm)=8.4、曲率半径R3(μm)=118.9、曲率半径R4(μm)=100.0、配線間隔S2(μm)=76.9とした。このインダクタ部品において、配線間隔S1に対する配線間隔S2の比S2/S1は3.5、内周軌道O2の湾曲部86の曲率半径R4と外周軌道O1の湾曲部82の曲率半径R2との差R4-R2は91.6である。
【0070】
(コイル導体層の寸法とインダクタ部品の特性との関係)
上述の実施例1~6について、上記の寸法のコイル導体層を含むインダクタ部品を作成し、個々のインダクタ部品について、周波数が周波数500MHzの入力信号に対するL値とQ値とを測定した。
【0071】
図8中の点P1~P6は、それぞれ実施例1~6のインダクタ部品について測定したL値を示す。なお、
図8の横軸は、湾曲部82,86の配線間隔S2、縦軸はL値である。
図8に示されるように、一定の配線間隔S1(22.0っm)に対して、内周軌道O2の湾曲部86と外周軌道O1の湾曲部82との配線間隔S2を大きくするにつれて、最初はL値が増加するが、ある配線間隔(S2≒40.0μm)を超えると、今度はL値が低下することが判る。このように、L値に関しては、初期はコイル導体層48の内側領域が小さくなる影響に比べて磁束の打ち消し合いを低減する効果が高いが、ある配線間隔を超えるとコイル導体層48の内側領域が小さくなる影響が、磁束の打ち消し合いを低減する効果を上回ることが分かる。
【0072】
図9中の点P1~P6は、実施例1~6のインダクタ部品について測定したQ値を示す。なお、
図9の横軸は、内周軌道O2の湾曲部86の曲率半径R4と外周軌道O1の湾曲部82の曲率半径R2との差R4-R2、縦軸はQ値である。
【0073】
図9に示されるように、曲率半径の差R4-R2が、0より大きく、60μm以下の範囲において、実施例1のインダクタ部品のQ値以上の値が得られる。
図10中の点P1~P6は、実施例1~6のインダクタ部品について測定したQ値を示す。なお、
図10の横軸は、湾曲部82,86の配線間隔S2、縦軸はQ値である。配線間隔S2が配線間隔S1より大きいことにより、インダクタ部品のQ値を向上が、Q値の観点からは配線間隔S2は、22μm以上、82μm以下であることが好ましい。
【0074】
図11中の点P1~P6は、それぞれ上述の実施例1~6のインダクタ部品について測定したQ値を示す。なお、
図11の横軸は、直線部72,76の配線間隔S1に対する湾曲部82,86の配線間隔S2の比S2/S1、縦軸はQ値である。比S2/S1が大きくなると、インダクタ部品のQ値が向上できるが、Q値の観点からは、比S2/S1は1以上、3.7以下であることが好ましい。
【0075】
以上記述したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)インダクタ部品1は、第1の側面13を有する直方体状の素体10と、素体10内において、第1の側面13と平行な主面において1ターンを超えて巻回された渦巻状のコイル導体層41~48とを有している。コイル導体層41~48の内側から外側に向かう第1方向A1において隣り合う2つの配線部分(直線部71,75)の配線間隔S1は、コイル導体層48の内側から外側に向かう第2方向A2において隣り合う2つの配線部分(湾曲部82,86)の配線間隔S2と異なる。
【0076】
隣り合う2つの配線部分では、それぞれに流れる電流によって発生する磁束が互いに打ち消し合う。上記の構成によれば、隣り合う2つの配線部分の配線間隔が異なることによって、互いの磁束の打ち消し合いが低減された部分を有するため、特性の取得効率が向上する。
【0077】
(2)コイル導体層41~48のターン数は、1ターン超2ターン未満である。環状の軌道O1,O2はそれぞれ、長方形状である。長方形状の外周軌道O1及び内周軌道O2を形成する直線部71~77は、コイル部40aの外形を大きくでき、コイル部40aの長さ(周長)を長くできる。そして、コイル部40aの内側を大きくできる。このため、インダクタ部品1のQ値を向上できる。
【0078】
(変更例)
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態における軌道O1,O2の形状は適宜変更することができる。
【0079】
図12(a)に示すように、外周軌道O1と内周軌道O2とを長円形状(円弧形状と直線形状とが合成された形状)としてもよい。また、
図12(b)に示すように、外周軌道O1を楕円形状とするとともに内周軌道O2を円形状としてもよい。なお、外周軌道O1と内周軌道O2との形状は、長方形状、多角形状、長円形状、楕円形状、又はこれらの複数の図形の組合せ、等であってもよい。また、外周軌道O1の形状と内周軌道O2の形状が相違するものであってもよい。例えば、外周軌道O1は、外部導体層に沿って屈曲する形状であってもよく、内周軌道O2は、円形状、楕円形状であってもよい。
【0080】
・上記実施形態に対し、コイル導体層のターン数は、1ターンを超えていればよく、3ターン、4ターンなど2ターンを超える数に適宜変更してもよい。また、1つのインダクタ部品において、ターン数が異なるコイル導体層を含んでいてもよい。
【0081】
・上記実施形態において、絶縁体層、コイル導体層、外部導体層の層数を適宜変更してもよい。
・上記実施形態において、第1外部電極20の下地層21と第2外部電極30の下地層31とを素体10に埋め込みとしたが、素体10の外部に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10…素体、20…第1外部電極、30…第2外部電極、40…コイル、40a…コイル部、40b…第1引出導体層、40c…第2引出導体層、41~48…コイル導体層、60,61,62,63a~63h,64,65…絶縁体層、71~77…直線部(配線部分.第1直線部,第2直線部)、81~86…湾曲部(配線部分,第1角部,第2角部)、A1,A2…直線、O1…外周軌道(第1軌道)、O2…内周軌道(第2軌道)。