(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】アンテナコイル
(51)【国際特許分類】
H01F 27/00 20060101AFI20221115BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20221115BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20221115BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H01F27/00 160
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F17/04 Z
H01F27/29 G
H01F27/28 K
H01F27/28 123
(21)【出願番号】P 2019025630
(22)【出願日】2019-02-15
【審査請求日】2020-10-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】杉江 宏之
(72)【発明者】
【氏名】後藤田 朋孝
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-091359(JP,A)
【文献】特開平08-124749(JP,A)
【文献】特開2010-258314(JP,A)
【文献】特開2018-019165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/00
H01F 17/04
H01F 27/29
H01F 27/28
H01Q 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延びる柱状の軸部と、前記軸部の前記第1の方向における第1端部,第2端部にそれぞれ設けられた第1支持部,第2支持部とを有するコアと、
前記第1支持部,前記第2支持部にそれぞれ設けられた第1端子電極,第2端子電極と、
前記軸部に巻回された巻線部と、前記第1端子電極,前記第2端子電極にそれぞれ接続された第1端,第2端とを有する
1本のワイヤと、を備え、
前記軸部に巻回されたターン数は、特定の周波数の入力信号に対して特定のインダクタンス値を実現するために必要な理論上のターン数よりも多く、
前記巻線部の少なくとも一部分は、前記第1の方向における隣り合うターンの間に間隔が設けられており、
前記間隔は、前記特定の周波数の入力信号に対して前記特定のインダクタンス値±10%のインダクタンス値を示すように設定されている
アンテナコイル。
【請求項2】
前記軸部に巻回されたターン数は18以上30以下であり、周波数が10MHzの入力信号に対して3.7μH±10%のインダクタンス値を示す、請求項1に記載の
アンテナコイル。
【請求項3】
前記軸部に巻回されたターン数は20以上23以下であり、周波数が10MHzの入力信号に対して3.7μH±5%のインダクタンス値を示す、請求項2に記載の
アンテナコイル。
【請求項4】
前記軸部に巻回されたターン数は21であり、周波数が10MHzの入力信号に対して3.7μH±5%のインダクタンス値を示す、請求項1に記載の
アンテナコイル。
【請求項5】
周波数が10MHzの入力信号に対して26.5以上100以下のQ値を示す、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の
アンテナコイル。
【請求項6】
周波数が10MHzの入力信号に対して35以上60以下のQ値を示す、請求項5に記載の
アンテナコイル。
【請求項7】
前記軸部は、長さ寸法が3mm以上6mm以下であり、幅寸法が1.5mm以上2.7mm以下であり、高さ寸法が1.5mm以上2.7mm以下である、請求項1から請求項6の何れか一項に記載の
アンテナコイル。
【請求項8】
前記軸部は、長さ寸法が5mmであり、幅寸法が2mmであり、高さ寸法が2mmである、請求項7に記載の
アンテナコイル。
【請求項9】
前記コアは、長さ寸法が4mm以上7mm以下であり、幅寸法が2.0mm以上3.2mm以下であり、高さ寸法が2.0mm以上3.2mm以下である、請求項1から請求項8の何れか一項に記載の
アンテナコイル。
【請求項10】
前記コアは、長さ寸法が5.5mmであり、幅寸法が2.5mmであり、高さ寸法が2.5mmである、請求項9に記載の
アンテナコイル。
【請求項11】
前記第1端子電極及び第2端子電極は、前記第1支持部及び第2支持部の底面から上端までの高さ寸法が100μm以上200μm以下である、請求項1から請求項10の何れか一項に記載の
アンテナコイル。
【請求項12】
前記第1端子電極及び前記第2端子電極は、前記第1支持部及び第2支持部の底面から上端までの高さ寸法が150μmである、請求項11に記載の
アンテナコイル。
【請求項13】
前記巻線部の隣り合うターンの間隔が100μm以上200μm以下である部分が存在する、請求項1から請求項12の何れか一項に記載の
アンテナコイル。
【請求項14】
前記巻線部の隣り合うターンの間隔が150μmである部分が存在する、請求項13に記載の
アンテナコイル。
【請求項15】
前記巻線部の隣り合うターンの間隔は、前記巻線部の両端を除いて均一である、請求項13又は14に記載の
アンテナコイル。
【請求項16】
前記巻線部の巻幅は、前記軸部の長さ寸法の70%以上である、請求項13から請求項15の何れか一項に記載の
アンテナコイル。
【請求項17】
前記ワイヤの芯線の直径は、30μm以上100μm以下である、請求項1から請求項16の何れか一項に記載の
アンテナコイル。
【請求項18】
前記ワイヤの芯線の直径は、50μm以上70μm以下である、請求項17に記載の
アンテナコイル。
【請求項19】
前記コアは、比透磁率が50以上100以下の材料からなる、請求項1から請求項18の何れか一項に記載の
アンテナコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コアに巻回されたワイヤを有するアンテナコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、巻線型インダクタ部品は、種々の電子機器に搭載されている。巻線型インダクタ部品は、コアと、コアに巻回されたワイヤとを有している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の巻線型インダクタ部品は、例えば、無線通信回路のアンテナコイルのように、外部から巻線型インダクタ部品に入射した磁束により巻線型インダクタ部品に生じる電気信号を出力する用途に用いられる場合がある。また、アンテナコイルに用いられる巻線型インダクタ部品においては、並列共振回路の共振周波数を所定のキャリア周波数に同調させるため、所定のインダクタンス値が設定される場合がある。
【0005】
本開示の目的は、所定のインダクタンス値が設定されたアンテナコイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様であるアンテナコイルは、第1の方向に延びる柱状の軸部と、前記軸部の前記第1の方向における第1端部,第2端部にそれぞれ設けられた第1支持部,第2支持部とを有するコアと、前記第1支持部,第2支持部にそれぞれ設けられた第1端子電極,第2端子電極と、前記軸部に巻回された巻線部と、前記第1端子電極,前記第2端子電極にそれぞれ接続された第1端,第2端を有する1本のワイヤと、を備え、前記巻線部は、所定のインダクタンス値に対して、前記軸部に巻回されたターン数が多くなるように、前記第1の方向における隣り合うターンの間隔が設定されている。
【0007】
この構成によれば、所定のインダクタンス値が設定されたアンテナコイルを提供できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、所定のインダクタンス値が設定されたアンテナコイルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の巻線型インダクタ部品の概略正面図。
【
図2】一実施形態の巻線型インダクタ部品の概略端面図。
【
図3】一実施形態の巻線型インダクタ部品の概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一態様である巻線型インダクタ部品の一実施形態を説明する。
なお、添付図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、または別の図面中のものと異なる場合がある。
【0011】
図1、
図2及び
図3に示す巻線型インダクタ部品10は、例えば回路基板等に実装される表面実装型の巻線型インダクタ部品である。回路基板は、例えば、近距離無線通信の通信回路が実装された基板である。巻線型インダクタ部品10は、近距離無線通信のための送信/受信アンテナとして利用される。例えば、
図4に示すように、近距離無線通信機に用いられる並列共振回路は、巻線型インダクタ部品10、抵抗101、コンデンサ102を備える。巻線型インダクタ部品10は、抵抗101と直列に接続され、巻線型インダクタ部品10と抵抗101の直列回路に対して並列にコンデンサ102が接続される。
【0012】
本実施形態の巻線型インダクタ部品10は、コア20と、第1端子電極41及び第2端子電極42と、ワイヤ60とを有する。コア20は、第1の方向Ldに延びる柱状の軸部21と、第1の方向における軸部21の第1端部,第2端部にそれぞれ設けられた第1支持部22,第2支持部23とを有している。軸部21は例えば四角柱状であるが、他の多角形柱状や円柱状、錐体状であってもよい。第1支持部22と第2支持部23は、軸部21の第1端と第2端とからそれぞれ第1の方向Ldと直交する第2の方向Td及び第3の方向Wdに延びる主面が四角形の板状である。第1支持部22及び第2支持部23は、軸部21を実装対象(回路基板)と平行に支持する。第1支持部22及び第2支持部23は、軸部21と一体である。
【0013】
第1端子電極41は、第1支持部22の底面36に設けられ、第2端子電極42は、第2支持部23の底面36に設けられている。なお第1支持部22の底面36、第2支持部23の底面36は、第2の方向Tdの一方側(
図2における紙面下側)の面である。
【0014】
ワイヤ60は、第1の方向Ldが巻回軸となるように軸部21に巻回された巻線部61を有している。巻線部61は、軸部21に対して単一の層を形成するように、軸部21に直接巻回されている。ワイヤ60は、第1端子電極41,第2端子電極42にそれぞれ接続された第1端62,第2端63を有している。本実施形態の巻線型インダクタ部品10の巻線部61は、後述するように、所定のインダクタンス値に対して、軸部21に巻回されたターン数がなるべく多くなるように、第1の方向Ldにおいて隣り合うターンの間隔が設定されている。
【0015】
なお、軸部21、第1支持部22,第2支持部23は、角部や稜線部が面取りされた形状や、角部や稜線部が丸められた形状であってもよい。また、軸部21、第1支持部22,第2支持部23の主面、端面、側面の一部又は全部に凹凸などが形成されていてもよい。また、軸部21、第1支持部22,第2支持部23では対向する面が必ずしも完全に平行となっている必要はなく、多少の傾きがあってもよい。
【0016】
本明細書において、第2の方向Tdは、第1の方向Ldに垂直な方向のうち、巻線型インダクタ部品10が回路基板に実装された際、回路基板と垂直となる方向であり、第3の方向Wdは、第1の方向Ldに垂直な方向のうち、回路基板と平行となる方向となる。したがって、第2の方向Tdは、第1端子電極41と第2端子電極42とが形成された第1支持部22と第2支持部23の底面36に垂直な方向であり、第3の方向Wdは、底面36に平行な方向となる。
【0017】
巻線型インダクタ部品10において、第1の方向Ldの大きさ(長さ寸法L1)は、4mm以上、7mm以下が好ましい。本実施形態の巻線型インダクタ部品10の長さ寸法L1は、例えば5.5mmである。また、巻線型インダクタ部品10において、第3の方向Wdの大きさ(幅寸法W1)は、2mm以上、3.2mm以下であることが好ましい。本実施形態の巻線型インダクタ部品10の幅寸法W1は、例えば2.5mmである。また、巻線型インダクタ部品10において、第2の方向Tdの大きさ(高さ寸法T1)は、2mm以上、3.2mm以下であることが好ましい。本実施形態の巻線型インダクタ部品10の高さ寸法T1は、例えば2.5mmである。
【0018】
軸部21の第1の方向Ldの大きさ(長さ寸法L2)は、3mm以上、6mm以下が好ましい。本実施形態の軸部21の長さ寸法L2は、例えば5mmである。また、軸部21の第3の方向Wdの大きさ(幅寸法W2)は、1.5mm以上、2.7mm以下であることが好ましい。本実施形態の軸部21の幅寸法W2は、2mmである。また、軸部21の第2の方向Tdの大きさ(高さ寸法T2)は、1.5mm以上、2.7mm以下であることが好ましい。本実施形態の軸部21の高さ寸法T2は、2mmである。
【0019】
第1支持部22,第2支持部23は、上述した第1端子電極41,第2端子電極42が形成された底面36の他に、軸部21の側を向く内面31と、内面31の反対側を向く端面32と、内面31及び底面36に垂直な一対の側面33,34と、底面36の反対側を向く上面35とを有している。第1支持部22の内面31は、第2支持部23の内面31と対向している。
【0020】
コア20は、例えば、ニッケル(Ni)-亜鉛(Zn)系フェライト、マンガン(Mn)-Zn系フェライト、アルミナ等の焼結体、樹脂、金属磁性粉含有樹脂などの成形体などである。
【0021】
第1端子電極41,第2端子電極42は、例えば、銀(Ag)を含むガラスペーストを塗布焼き付けた下地層と、下地層の表面に形成された銅(Cu)、Ni、スズ(Sn)等のめっき層で構成される。第1端子電極41,第2端子電極42は、底面36を覆う底面部電極51だけでなく内面31,端面32、側面33,34側に一部が回り込んだ側面部電極52を有している。底面部電極51は、第1支持部22,第2支持部23の底面36の全体を覆っている。側面部電極52は、第1支持部22,第2支持部23の内面31,端面32,側面33,34の一部(下側部分)を覆っている。
【0022】
ワイヤ60は、例えば円形状の断面を有する芯線と、芯線の表面を被覆する被覆材とを含む。芯線の材料としては、例えば、CuやAg等の導電性材料を主成分とすることができる。被覆材の材料としては、例えばポリウレタン、ポリエステル、ポリアミドイミド等の絶縁樹脂材料を用いることができる。本実施形態において、ワイヤ60の芯線の直径は約60μmである。被覆材の厚さは、例えば4μmである。
【0023】
図1に示すように、ワイヤ60は、軸部21に巻回された巻線部61と、第1端子電極41,第2端子電極42にそれぞれ接続された第1端62,第2端63、第1端62,第2端63と巻線部61との間に掛け渡された渡り部64,65とを有している。第1端62,第2端63は、第1端子電極41,第2端子電極42のうち、底面部電極51に熱圧着され、芯線が第1端子電極41,第2端子電極42に接続されている。
【0024】
(作用)
次に、上記の巻線型インダクタ部品10の作用を説明する。
巻線型インダクタ部品10は、第1の方向Ldに延びる柱状の軸部21と、軸部21の第1の方向Ldにおける第1端部,第2端部にそれぞれ設けられた第1支持部22,第2支持部23とを有するコア20と、第1支持部22,第2支持部23のそれぞれに設けられた第1端子電極41,第2端子電極42と、軸部21に巻回された巻線部61と、第1端子電極41,第2端子電極42にそれぞれ接続された第1端62,第2端63とを有するワイヤ60と、を備える。巻線部61は、所定のインダクタンス値に対して、軸部21に巻回されたターン数が多くなるように、第1の方向Ldにおいて隣り合うターンの間隔が設定されている。
【0025】
ここで、巻線型インダクタ部品10がアンテナコイルとして用いられる場合に外部から入射した磁束により発生する誘導電圧について説明する。誘導電圧は、アンテナコイルの性能を測る指標であり、できるだけ高いことが好ましい。
【0026】
ファラデーの電磁誘導の法則(V=-N(ΔΦ/Δt))より、一定磁界H(H=B/μ0)に置いたアンテナコイルとしての巻線型インダクタ部品10に発生する誘導電圧Vinducedは下式で表せる。
【0027】
【数1】
なお、上記の式において、μ
0:真空透磁率、μrod:比透磁率、Arod:軸部断面積、N:ターン数、fc:キャリア周波数、である。
【0028】
上記の式から、磁界H、比透磁率μrod、軸部断面積Arod、キャリア周波数fcなどが一定の条件においては、ターン数Nが多いほど大きな誘導電圧Vinducedが得られることがわかる。一方、前述したように、所定のインダクタンス値が設定されたアンテナコイルにおいては、ターン数Nとインダクタンス値との相関関係により、自由にターン数Nを設定することはできない。
【0029】
本実施形態の巻線型インダクタ部品10では、巻線部61が所定のインダクタンス値に対して、軸部21に巻回されたターン数が多くなるように、第1の方向Ldにおいて隣り合うターンの間隔が設定されている。すなわち、巻線部61の隣り合うターンの間隔を大きくすると、ターン間から漏れる磁束によるターン間の磁気結合の低下や、巻線部61により発生する磁束が周回する平均磁路長が長くなることによる磁気抵抗の増加によって、1ターン当りに取得できるインダクタンス値が低下する。これにより、所定のインダクタンス値に対して、巻線部61のターン数を多くすることができ、より高い誘導電圧Vinducedが得られる。このように、巻線型インダクタ部品10は、所定のインダクタンス値が設定されたアンテナコイルとして適切である。
【0030】
巻線型インダクタ部品10は、ターン数は18以上30以下であり、周波数が10MHzの入力信号に対して3.7μH±10%のインダクタンス値を示すことが好ましい。更に、ターン数は20以上23以下であり、周波数が10MHzの入力信号に対して3.7μH±5%のインダクタンス値を示すことが好ましい。本実施形態は、ターン数は21であり、周波数が10MHzの入力信号に対して3.7μH±5%のインダクタンス値を示す。ターン数が多いと、より高い誘導電圧Vinducedが得られる。一方、ターン数が多くなると、所定のインダクタンス値を設定するために隣り合うターンの間隔をより大きくする必要がある。したがって、ターン数に適切な上限を設定することで巻線型インダクタ部品10の大型化やQ値の低下を抑制できる。
【0031】
巻線型インダクタ部品10は、周波数が10MHzの入力信号に対して26.5以上100以下のQ値を示すことが好ましく、周波数が10MHzの入力信号に対して35以上60以下のQ値を示すことがより好ましい。Q値が高い方が損失を小さくできる。一方、Q値に適切な上限を設定することで、共振で得られる信号の帯域を確保できる。
【0032】
巻線型インダクタ部品10の軸部21は、長さ寸法L2が3mm以上6mm以下であり、幅寸法W2が1.5mm以上2.7mm以下であり、高さ寸法T2が1.5mm以上2.7mm以下であることが好ましい。本実施形態において、軸部21は、長さ寸法L2が5mmであり、幅寸法W2が2mmであり、高さ寸法T2が2mmである。軸部21の長さ寸法L2が大きいほど、ターン数をより大きくする余地が得られる。また、軸部21の幅寸法W2及び高さ寸法T2が大きいほど、軸部21の断面積を大きくできる。これにより、より高い誘導電圧Vinducedを得ることができる。一方、軸部21の長さ寸法L2、幅寸法W2及び高さ寸法T2に適切な上限を設定することで、巻線型インダクタ部品10の大型化を抑制できる。
【0033】
巻線型インダクタ部品10において、コア20の外形寸法は、長さ寸法L1が4mm以上7mm以下であり、幅寸法W1が2.0mm以上3.2mm以下であり、高さ寸法T1が2.0mm以上3.2mm以下であることが好ましい。なお、コア20は、長さ寸法L1が5.5mmであり、幅寸法W1が2.5mmであり、高さ寸法T1が2.5mmであることがより好ましい。
【0034】
巻線型インダクタ部品10において、第1端子電極41,第2端子電極42は、実装面から上端までの高さ寸法T4が100μm以上200μm以下であることが好ましい。本実施形態において、高さ寸法T4が150μmである。第1端子電極41,第2端子電極42の高さ寸法T4が大きいほど、実装時の実装はんだの付着量、付着面積が増え、巻線型インダクタ部品10の実装強度を確保できる。また、第1端子電極41,第2端子電極42の高さ寸法T4が小さいほど、ワイヤ60により発生した磁束の損失が減り、Q値を高く確保できる。
【0035】
巻線型インダクタ部品10において、ワイヤ60の隣り合うターンの間隔が100μm以上200μm以下である部分が存在することが好ましく、間隔が150μmである部分が存在することがより好ましい。間隔が大きいほど所定のインダクタンス値に対して多くのターン数を巻回できる。一方、間隔に適切な上限を設定することにより、所定寸法の軸部21(コア20)で巻線部61を構成することができる。
【0036】
巻線部61の隣り合うターンの間隔は、第1の方向Ldの両端のターンの間隔を除いて均一としてもよい。例えば、巻線部61の巻幅L5は、軸部21の長さ寸法の70%以上である。
【0037】
巻線型インダクタ部品10において、ワイヤ60の芯線の直径は、30μm以上100μm以下であることが好ましく、50μm以上70μm以下であることがより好ましい。ワイヤ60の芯線の直径が一定値より大きいことで、電気抵抗成分の増大を抑制し、高いQ値が得られる。また、ワイヤ60の芯線の直径が一定値より小さいことで、コア20に対する巻回、つまりワイヤ60の加工を容易にできる。
【0038】
巻線型インダクタ部品10において、コア20の比透磁率μrodは50以上100以下であることが好ましい。比透磁率μrodが高いほどより高い誘導電圧Vinducedを得ることができる。一方、比透磁率μrodに適切な上限を設定することで、高周波(10MHz)での透磁率を維持できる。
【0039】
[実施例]
次に、巻線型インダクタ部品10の実施例を挙げて上記実施形態による効果をさらに具体的に説明する。
【0040】
表1には、3つの実施例における、N:ターン数[ターン]、L5:巻線部61の巻幅[mm]、インダクタンス値[μH]、通信距離[cm]を示している。実施例の巻線型インダクタ部品10では、比透磁率μrodが50の所定形状のコア20と、直径60μmの芯線のワイヤ60とを用い、表1に示すターン数/巻幅における、インダクタンス値と通信距離を測定した。なお、通信距離は、2つの巻線型インダクタ部品10の一方に所定の信号を入力した際に、他方において一定以上の誘導電圧が発生する距離の最大値である。
【0041】
【表1】
表1に示すように、ターン数及び巻き幅以外を同じ条件とした巻線型インダクタ部品10であっても、巻幅を拡げる、すなわち第1の方向Ldにおける巻線部61の隣り合うターンの間隔を広げることで、所定のインダクタンス値(訳3.7μH)に対して、ターン数を増やすことができることがわかる。そして、ターン数が多くなると、通信距離が伸びており、より高い誘導電圧を得られていることがわかる。
【0042】
以上記述したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)巻線型インダクタ部品10は、第1の方向Ldに延びる柱状の軸部21と、軸部21の第1の方向Ldにおける第1端部,第2端部にそれぞれ設けられた第1支持部22,第2支持部23とを有するコア20と、第1支持部22,第2支持部23にそれぞれ設けられた第1端子電極41,第2端子電極42と、軸部21に巻回された巻線部61と、第1端子電極41,第2端子電極42にそれぞれ接続された第1端62,第2端63を有するワイヤ60と、を備える。巻線部61は、所定のインダクタンス値に対して、軸部21に巻回されたターン数が多くなるように、第1の方向Ldにおける隣り合うターンの間隔が設定されている。これにより、所定のインダクタンス値が設定されたアンテナコイルとして適切な巻線型インダクタ部品10を提供できる。
【0043】
(2)巻線型インダクタ部品10は、巻線部61が所定のインダクタンス値に対して、軸部21に巻回されたターン数が多くなるように、第1の方向Ldにおいて隣り合うターンの間隔が設定されている。これにより、巻線型インダクタ部品10において、所定のインダクタンス値に対して、巻線部61のターン数を多くすることができ、高い誘導電圧が得られる。このため、この巻線型インダクタ部品10は、所定のインダクタンス値が設定されたアンテナコイルとして適切である。
【0044】
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態では、
図1及び
図3に示すように、ワイヤ60の巻線部61において、隣り合うターンの間隔を均等としたが、間隔は適宜変更されてもよい。
【0045】
図5に示すように、巻線部61の中央部分において隣り合うターン間の間隔を他のターンの間隔よりも大きくしてもよい。なお、間隔を大きくターンは、
図5に示す中央部分に限定されず、第1支持部22,第2支持部23付近やそれらの中間位置など、適宜変更してもよい。また、複数の箇所において、第1の方向Ldにて隣り合うターンの間隔を大きくしてもよい。すなわち、巻線部61において第1の方向Ldにて隣り合うターンの間隔は均等でなくてもよい。
【0046】
・上記実施形態に対し、コア20の形状を適宜変更してもよい。例えば、軸部21を第1支持部22,第2支持部23と同じ幅としてもよい。また、軸部21の断面形状を、円形状、楕円形状、多角形状、等としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…巻線型インダクタ部品、20…コア、21…軸部、22…第1支持部、23…第2支持部、41…第1端子電極、42…第2端子電極、60…ワイヤ、61…巻線部、62…第1端、63…第2端、Ld…第1の方向。