(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】車両電子制御装置、要求装置、及び故障検出システム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20221115BHJP
B60S 5/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
G01M17/007 H
B60S5/00
(21)【出願番号】P 2019044685
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】成田 信昭
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-171361(JP,A)
【文献】特開2009-037533(JP,A)
【文献】特開2018-152743(JP,A)
【文献】特開2002-047998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00- 17/10
B60S 3/00- 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され前記車両の異常を示す故障コードが記憶される故障記憶装置(14)を有する車両電子制御装置(10)と、前記車両電子制御装置に前記故障コードを読み出す読み出し要求を出力する要求装置(3)と、を備える故障検出システム(1)であって、
前記車両電子制御装置は、
前記車両の異常診断を実行する診断実行部(54)から診断結果を取得し、前記故障記憶装置に前記診断結果に基づいて前記故障コードを記憶するコード記憶部(55)と、
前記故障記憶装置における前記故障コードの記憶内容が適正であるか否かを表すための付加情報を取得し、前記付加情報を前記故障コードと対応付けて記憶する付加情報記憶部(56)と、
を備え、
当該故障検出システムは、
前記読み出し要求の対象とされる前記故障コードに対応付けられた前記付加情報を取得し、前記付加情報に基づいて前記故障コードの記憶内容が適正であるか否かを判断し、適正でないと判断した場合に、前記要求装置に前記故障コードの記憶内容が適正でないことを認識させる認識部(57、76)
を備え、
前記故障コードは、前記車両の検査の判断に用いられる特定故障コードであ
り、
前記付加情報記憶部は、前記異常診断が実行されて前記特定故障コードが記憶されたか否かを表す診断実行情報を前記付加情報として取得して記憶し、
前記認識部は、前記特定故障コードの記憶内容が適正であるか否かの判断に、前記診断実行情報を用い、
前記診断実行情報は、前記車両電子制御装置が初期化された以降の経過時間を表す経過時間情報であり、
前記認識部は、前記経過時間情報が、予め定められた経過時間閾値よりも短い時間を表す場合に、前記特定故障コードの記憶内容が適正でないと判断する
故障検出システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の故障検出システムであって、
前記診断実行情報は、前記診断実行部による前記診断結果を表す情報であり、
前記認識部は、前記付加情報記憶部によって前記診断実行情報が記憶されていない場合に、前記特定故障コードの記憶内容が適正でないと判断する
故障検出システム。
【請求項3】
請求項1
又は請求項
2に記載の故障検出システムであって、
前記付加情報記憶部は、前記
車両電子制御装置の状態が異常であるか否かを表す状態情報、を前記付加情報として記憶し、
前記認識部は、前記状態情報が、前記
車両電子制御装置の状態が異常であることを表す場合に、前記特定故障コードの記憶内容が適正でないと判断する
故障検出システム。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の故障検出システムであって、
前記
車両電子制御装置は、
予め定められた出力条件が満たされる場合に、前記要求装置に前記特定故障コードの記憶内容と前記付加情報とを出力する情報出力部(58)
を備える故障検出システム。
【請求項5】
請求項
4に記載の故障検出システムであって、
前記情報出力部は、前記特定故障コードの記憶内容と前記付加情報とを、前記車両に固有の識別情報に基づいて暗号化して送付する
故障検出システム。
【請求項6】
請求項
4又は請求項
5に記載の故障検出システムであって、
前記情報出力部は、前記読み出し要求が出力されたことを前記出力条件として用い、前記読み出し要求が出力された場合に、前記特定故障コードの記憶内容と前記付加情報とを出力する
故障検出システム。
【請求項7】
請求項
4又は請求項
5に記載の故障検出システムであって、
前記車両電子制御装置は、前記認識部としての車両側認識部(57)を備える
故障検出システム。
【請求項8】
請求項
7に記載の故障検出システムであって、
前記情報出力部は、前記特定故障コードの記憶内容が適正であると判断されたことを前記出力条件として、前記特定故障コードの記憶内容が適正であると判断された場合に、前記要求装置に前記特定故障コードの記憶内容と前記付加情報とを出力する
故障検出システム。
【請求項9】
請求項
7又は請求項
8に記載の故障検出システムであって、
前記車両側認識部は、前記特定故障コードの記憶内容が適正でないと判断した場合に、前記要求装置に対して無応答又は否定応答を行うことによって、前記要求装置に前記特定故障コードの記憶内容が適正でないことを認識させる
故障検出システム。
【請求項10】
請求項
9に記載の故障検出システムであって、
前記要求装置は、
前記読み出し要求を出力した後に、前記
車両電子制御装置による無応答又は否定応答が有る場合に、前記読み出し要求の対象とされる前記特定故障コードの記憶内容が適正でないことを認識する
故障検出システム。
【請求項11】
請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載の故障検出システムであって、
前記要求装置は前記認識部としての要求側認識部(76)を備え、
前記要求側認識部は、前記
車両電子制御装置から出力された前記付加情報に基づいて前記故障コードの記憶内容が適正であるか否かを判断し、適正でないと判断した場合に、前記要求装置に前記故障コードの記憶内容が適正でないことを認識させる
故障検出システム。
【請求項12】
車両に搭載され前記車両の異常を示す故障コードが記憶される故障記憶装置(14)を有し
、前記故障コードを読み出す読み出し要求を出力する要求装置(3)から前記読み出し要求を受信する車両電子制御装置であって、
前記車両電子制御装置は、
前記車両の異常診断を実行する診断実行部(54)から診断結果を取得し、前記故障記憶装置に前記診断結果に基づいて前記故障コードを記憶するコード記憶部(55)と、
前記故障記憶装置における前記故障コードの記憶内容が適正であるか否かを表すための付加情報を取得し、前記付加情報を前記故障コードと対応付けて記憶する付加情報記憶部(56)と、
を備え、
当該車両電子制御装
置は、
前記読み出し要求の対象とされる前記故障コードに対応付けられた前記付加情報を取得し、前記付加情報に基づいて前記故障コードの記憶内容が適正であるか否かを判断し、適正でないと判断した場合に、前記要求装置に前記故障コードの記憶内容が適正でないことを認識させる認識部(57、76)
を備え、
前記故障コードは、前記車両の検査の判断に用いられる特定故障コードであ
り、
前記付加情報記憶部は、前記異常診断が実行されて前記特定故障コードが記憶されたか否かを表す診断実行情報を前記付加情報として取得して記憶し、
前記認識部は、前記特定故障コードの記憶内容が適正であるか否かの判断に、前記診断実行情報を用い、
前記診断実行情報は、前記車両電子制御装置が初期化された以降の経過時間を表す経過時間情報であり、
前記認識部は、前記経過時間情報が、予め定められた経過時間閾値よりも短い時間を表す場合に、前記特定故障コードの記憶内容が適正でないと判断する
車両電子制御装置。
【請求項13】
車両に搭載され前記車両の異常を示す故障コードが記憶される故障記憶装置(14)を有する車両電子制御装置(10)に、前記故障コードを読み出す読み出し要求を出力する要求装置(3)であって、
前記車両電子制御装置は、
前記車両の異常診断を実行する診断実行部(54)から診断結果を取得し、前記故障記憶装置に前記診断結果に基づいて前記故障コードを記憶するコード記憶部(55)と、
前記故障記憶装置における前記故障コードの記憶内容が適正であるか否かを表すための付加情報を取得し、前記付加情報を前記故障コードと対応付けて記憶する付加情報記憶部(56)と、
を備え、
当該要求装
置は、
前記読み出し要求の対象とされる前記故障コードに対応付けられた前記付加情報を取得し、前記付加情報に基づいて前記故障コードの記憶内容が適正であるか否かを判断し、適正でないと判断した場合に、前記要求装置に前記故障コードの記憶内容が適正でないことを認識させる認識部(57、76)
を備え、
前記故障コードは、前記車両の検査の判断に用いられる特定故障コードであ
り、
前記付加情報記憶部は、前記異常診断が実行されて前記特定故障コードが記憶されたか否かを表す診断実行情報を前記付加情報として取得して記憶し、
前記認識部は、前記特定故障コードの記憶内容が適正であるか否かの判断に、前記診断実行情報を用い、
前記診断実行情報は、前記車両電子制御装置が初期化された以降の経過時間を表す経過時間情報であり、
前記認識部は、前記経過時間情報が、予め定められた経過時間閾値よりも短い時間を表す場合に、前記特定故障コードの記憶内容が適正でないと判断する
要求装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に異常が発生したことを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車載の各種センサ、アクチュエータなどに何らかの異常が発生したことを車載の電子制御装置(以下、ECU)がOBDにより検出し、検出された結果を表す故障コードを記憶する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両に搭載されたECUが記憶している故障コードを車両の外部装置である検査ツールによって読み出して表示し、整備員が検査ツールに表示された故障コードを確認して故障箇所を認識する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ECUは、Electronic Control unitの略である。OBDはOn board Diagnosticsの略であり、所謂自己診断、すなわち異常診断を実行することを意味する。
異常診断では、車両に対する予め定められた診断項目について異常の有無が検出され、検出された異常に対応する故障コードが記録される。診断項目に応じて様々な故障コードが予め設定されている。
【0006】
近年は、故障コードのうちの少なくとも1つであって自動車検査登録制度(以下、車検)で車両の保安基準を満たさない異常が発生したことを表す故障コード(以下、特定故障コード)を用いた自動車検査手法が提案されている。例えば、検査ツールによって車両に搭載されたECUが記録している特定故障コードが読み出されると、車検は不合格であると判断される。
【0007】
このような自動車検査手法において、車検を合格にする際は、ECUに記憶されてきた特定故障コードを初期化、すなわち消去する必要がある。ECUに記憶されてきた特定故障コードの消去は、検査ツールを用いて行われ得る。
【0008】
しかしながら、ECUに記録されてきた特定故障コードが誤って消去されると、検査ツールは該誤って消去された特定故障コードに基づいて車検を行うと考えられる。つまり、検査ツールによってこのような適正でない特定故障コードを用いて車検が行われると、故障が検出されていないものとして、誤って車検を通過するおそれがある。
【0009】
また、このような自動車検査手法においては、誤った特定故障コードが記録されていると、誤った特定故障コードに基づいて、誤って車検を通過するおそれがある。
また、このような自動車検査手法においては、例えば、車検を未実施の車両に、車検を未実施の車両に搭載されていたECUに替えて、特定故障コードが検出されず既に車検を合格している車両のECUが不適正に搭載された場合、車検を未実施の車両が誤って車検を通過するおそれがある。
【0010】
本開示の1つの局面は、誤って車検を通過することを抑制できる技術、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の1つの局面は、車両に搭載され車両の異常を示す故障コードが記憶される故障記憶装置(14)を有する車両電子制御装置(10)と、車両電子制御装置に故障コードを読み出す読み出し要求を出力する要求装置(3)と、を備える故障検出システム(1)である。車両電子制御装置は、コード記憶部(55)と、付加情報記憶部(56)と、を備える。コード記憶部は、車両の異常診断を実行する診断実行部(54)から診断結果を取得し、故障記憶装置に診断結果に基づいて故障コードを記憶する。
【0012】
付加情報記憶部は、故障記憶装置における故障コードの記憶内容が適正であるか否かを表すための付加情報を取得し、付加情報を故障コードと対応付けて記憶する。当該故障検出システムは、認識部(57、76)を備える。認識部は、読み出し要求の対象とされる故障コードに対応付けられた付加情報を取得し、付加情報に基づいて故障コードの記憶内容が適正であるか否かを判断し、適正でないと判断した場合に、要求装置に故障コードの記憶内容が適正でないことを認識させる。
【0013】
故障コードは、車両の検査の判断に用いられる特定故障コードである。
この結果、要求装置は、付加情報に基づいて、読み出し要求の対象とされる特定故障コードの記憶内容が適正でないことを認識することができる。そして、例えば、特定故障コードの記憶内容が適正でないことが認識された場合に車検を通過させないことによって、誤って車検を通過することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】故障検出システム、車両制御装置、検査ツールの構成を示すブロック図。
【
図3】ツール制御部の機能を説明する機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.全体構成]
図1に示す故障検出システム1は、車両に異常が発生したことを検出するためのシステムである。故障検出システム1は、車両に搭載される車両制御装置2と、整備工場等で整備員によって用いられる検査ツール3と、を備える。車両制御装置2は少なくとも1つのECU10を備える。
【0016】
故障検出システム1では、車両制御装置2は、故障コード(以下、DTC)を記憶するように構成されている。DTCとは、車両制御装置2が搭載された車両の異常を示す故障コードをいう。DTCは、Diagnostic Trouble Codeの略である。DTCのうち、道路運送車両法の保安基準を満たさない異常を示すDTCを特定DTCという。
【0017】
車両制御装置2では、車両において道路運送車両法の保安基準を満たさない異常が検出されると、ECU10によって、ECU10が備える記憶装置に該異常に対応する特定DTCが記憶される。
【0018】
故障検出システム1では、特定DTCが車検の判断に用いられる。特定DTCを用いた車検の際は、整備工場等において、検査ツール3とECU10とが、ケーブル40によって、互いに通信を行うように接続される。検査ツール3は、ECU10に対して特定DTCを読み出すための読み出し要求を出力する。検査ツール3によってECU10から特定DTCが読み出されると、車検は不合格と判断される。
【0019】
つまり、特定DTCがECU10に記憶されている車両は、車検を不合格となる。
なお、DTCのうちどのDTCを特定DTCとして用いるかという情報や、そのバージョンを表す情報等といった、特定DTCに関する情報(以下、特定DTC情報)は、車検を管理する管理機構のサーバ4に保管されている。管理機構とは、特定DTCによる車検を管理する機構をいう。
【0020】
本実施形態では、検査ツール3によって、サーバ4から特定DTC情報が取得され更新された上で、上述のように特定DTCを用いた車検が実行される。つまり、検査ツール3が、車検の合否を判断する。この場合、検査ツール3は、サーバ4から特定DTC情報を取得し、取得した特定DTC情報を検査ツール3に保存する。そして、検査ツール3は、保存した特定DTC情報に基づいて車検の合否を判断する。
【0021】
[1-2.各構成]
次に、本実施形態の故障検出システム1の各構成について詳細に説明する。
(1)車両制御装置
車両制御装置2は、少なくとも1つのECU10を備える。また、車両制御装置2は、バッテリ15を備える。ECU10は、該ECU10に対して予め定められている車両制御を実行する。
【0022】
ECU10は、マイクロコンピュータ(以下、マイコン)11と、通信インタフェース(以下、通信I/F)12と、EEPROM13と、スタティックRAM(以下、SRAM)14と、を備える。マイコン11は、CPU21と、ROM、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ(以下、メモリ)22と、を有する。ECU10には、バッテリ15によって電力が常時供給されている。
【0023】
通信インタフェース12は、ケーブル40を介して検査ツール3と通信を行う。
EEPROM13は、書き換え可能な不揮発性メモリである。EEPROM13はフラッシュメモリ等であってもよい。EEPROM13は、固有識別情報を予め記憶している。固有識別情報とは、車両を識別可能な識別情報であって車両に固有の情報である。具体的には、VINコードが固有識別情報として記憶されている。
【0024】
また、ROM又EEPROM13には、図示しないが、少なくとも、ECU10が実行可能な診断項目のリストと、診断項目に対応付けられるDTCのリストと、が予め記憶されている。また、ROM又EEPROM13には、図示しないが、DTCうちいずれが特定DTCであるかを表すリストが予め記憶されている。
【0025】
SRAM14は、イグニッションスイッチのオン/オフに拘わらずバッテリ15からの電力供給を常時受けて動作する、揮発性メモリである。つまり、SRAM14は、バッテリ15からの電力供給が継続している間は、書き込まれたデータを常時記憶保持する。
【0026】
SRAM14は、特定DTC記憶領域141と、付加情報記憶領域142とを有する。特定DTC記憶領域141は、特定DTCが記憶される領域である。付加情報記憶領域142は、後述する付加情報が記憶される領域である。特定DTCが記憶される領域と該特定DTCについての付加情報が記憶される領域とは、互いに対応づけられている。例えば、ある特定DTCが特定DTC記憶領域141に記憶されると、付加情報記憶領域142のうちの該特定DTCが記憶された特定DTC記憶領域141に対応付けられた領域に、付加情報が記憶される。
【0027】
ECU10の各種機能は、CPU51がメモリ22に格納されたプログラムを実行することにより実現される。また、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。なお、ECU10は、1つのマイコンを備えていてもよいし、複数のマイコンを備えていてもよい。
【0028】
ECU10は、CPU51がプログラムを実行することで実現される機能の構成として、
図2に示すように、初期化部51と、経過時間生成部52、監視部53、診断実行部54と、コード記憶部55と、付加情報記憶部56と、車両側認識部57と、情報出力部58と、を備える。
【0029】
ECU10を構成するこれらの要素を実現する手法はソフトウェアに限るものではなく、その1部又は全部の要素について、1つあるいは複数のハードウェアを用いて実現してもよい。例えば、上記機能がハードウェアである電子回路によって実現される場合、その電子回路は多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路、あるいはこれらの組合せによって実現されてもよい。
【0030】
初期化部51は、初期化要求を受信すると、後述する初期化処理を実行し、少なくともSRAM14における特定DTC記憶領域141の記憶内容、及び付加情報記憶領域142の記憶内容を初期化する。つまり、リセットする。これに伴い、特定DTC記憶領域141に記憶されていた特定DTCや、付加情報記憶領域142に記憶されていた初期化後経過時間や走行履歴が初期化される。
【0031】
初期化要求は、例えば車両に搭載されている他のECUや検査ツール3等からECU10に対して送信され得る。
なお、初期化部51は、初期化処理の実行に伴って、少なくともSRAM14の記憶内容を初期化するように構成されてもよいし、ECU10全体を初期化するように構成されてもよい。また、初期化部51は、初期化要求を受信したとき以外にも、上述の初期化を実行するように構成されてもよい。例えば、ECU10が車両から取り外される等によって、バッテリ15によるECU10への電力供給が絶たれる場合にも、初期化部51は上述の初期化を実行するように構成されてもよい。
【0032】
経過時間生成部52は、経過時間情報を生成して、SRAM14に記憶する。経過時間情報とは、ECU10が初期化されてからの経過時間を表す情報である。経過時間情報は、初期化後経過時間であってもよい。初期化後経過時間とは、ECU10が初期化されて以降の経過時間そのものである。また、経過時間情報は、ECU10が初期化されて以降に時間の経過に伴って増加するパラメータであれば、初期化後経過時間でなくてもよい。
【0033】
例えば、経過時間情報は、ECU10が初期化された以降に車両が走行した履歴を表す情報である走行履歴であってもよい。走行履歴としては、具体的には、ECU10が初期化された以降のイグニションスイッチのオンオフ回数(以下、オンオフ回数)が挙げられる。
【0034】
本実施形態では、経過時間生成部52は、走行履歴としてのオンオフ回数と上述の初期化後経過時間とを経過時間情報として生成し、SRAM14に記憶するように構成される。オンオフ回数は、例えば、イグニションスイッチがオンされた後にオフされたことを1回としてカウントされてもよい。
【0035】
監視部53は、予め定められた周期で、ECU10の状態を繰り返し監視し、状態情報を繰り返し生成する。状態情報とは、ECU10に異常が生じているか否かを表す情報である。
【0036】
本実施形態では、メモリ異常情報を状態情報として用いる。メモリ異常情報とは、メモリ22におけるROMの異常又はRAMの異常が検出されたか否かを表す情報である。ROMの異常又はRAMの異常が検出される場合、ECU10に異常が生じていると考えられるからである。
【0037】
例えば、ここでいうROMの異常とは、ROMの書き込み値の異常又は読み出しを行う際の異常であり得る。RAMの異常とは、RAMへの書き込みを行う際の異常又は読み出しを行う際の異常であり得る。これらの異常は、例えば、書き込み又は読み出しの対象となるデータのCRCやチェックサム等によって検出可能である。
【0038】
監視部53は、メモリ22におけるROMの異常又はRAMの異常を検出し、これらの異常を検出するとECU10に異常が生じていることを表すメモリ異常情報を生成するように構成されている。
【0039】
診断実行部54は、車両の異常を検出するために異常診断を実行する。診断実行部54は、異常診断が完了するとレディネスフラグをSRAM14に記憶するように構成されてもよい。ここでいう異常診断が完了したとは、異常診断によって正常又は異常が判断されたということである。診断結果は、正常又は異常のいずれかで示される。診断実行部54は、異常診断の実行によって、車両に搭載された各種センサ、アクチュエータなどに何らかの異常が生じているか否かを、予め定められた特定診断項目毎に診断する。
【0040】
特定診断項目とは、車検の合否判断に必要な診断項目である。特定診断項目としては、例えば、アクチュエータの動作特性や、端子状態(すなわち、OPEN又はSHORT)等といった、アクチュエータの状態を診断することが挙げられる。具体的には、特定診断項目について、各種センサの検出値やアクチュエータの消費電流等がモニタされて、モニタ結果に基づいて特定診断項目についての正常又は異常が判断される。
【0041】
但し、これらに限定されるものではなく、特定診断項目としては多種多様な項目が含まれ得る。また、特定診断項目の正常及び異常を判断するための具体的手段についても、多種多様な手段が含まれ得る。
【0042】
なお、特定診断項目について異常が生じているとの結果が得られると、コード記憶部55によって該特定診断項目に対応する特定DTCが特定DTC記憶領域141に記憶される。
【0043】
本実施形態では、診断実行部54は、異常フラグ及び正常フラグのうちの少なくとも一方を用いて、診断結果をSRAM14に記憶する。異常フラグは、異常診断の結果が異常である場合にセットされ、正常である場合にリセットされるフラグである。正常フラグは、異常診断の結果が異常である場合にリセットされ、正常である場合にセットされるフラグである。
【0044】
具体的には、診断実行部54は、例えば次のように異常診断を実行する。なおここでは、診断実行部54が、特定診断項目についてアクチュエータの消費電流をモニタする例を説明する。診断実行部54は、まずアクチュエータ等の電流値を所定時間毎に繰り返し取得する。診断実行部54は、アクチュエータ等の電流値を予め定められた回数(以下、取得回数)取得したか否かを判断する。診断実行部54は、例えば該電流値の平均値が取得回数取得されたと判断した場合に、該電流値の平均値が予め定められた判断閾値以上であるか否かを判断する。
【0045】
診断実行部54は、該電流値が判断閾値以上であると判断した場合に異常フラグセットし正常フラグをリセットし、該電流値が判断閾値未満であると判断した場合に異常フラグリセットし正常フラグをセットする。診断実行部54は、これらのフラグをSRAM14に記憶する。
【0046】
このようにして、異常診断が行われ、その診断結果が正常フラグ及び異常フラグとして記憶される。つまり、異常診断が開始されてから完了するまでには、換言すれば診断結果がSRAM14に記憶されるまでには、時間を要する。以下でいう診断必要時間とは、診断実行部54による異常診断に必要とされる時間、すなわち異常診断が開始されてから完了するまでに要する時間をいう。
【0047】
なお、異常診断の手順は、これに限定されるものではない。診断実行部54は、種々の特定診断項目について種々の手順によって異常診断を実行し、診断結果を記憶するように構成され得る。また、診断実行部54は、複数の特定診断項目について異常診断を実行して診断結果を特定診断項目毎にSRAM14に記憶するように構成され得る。
【0048】
コード記憶部55は、診断実行部54による異常診断が完了すると、起動される。コード記憶部55は、異常診断が完了すると、診断実行部54による診断結果を取得し、診断結果に基づいて、発生した異常に対応する特定DTCを特定DTC記憶領域141に記憶する。コード記憶部55は、特定DTCを記憶する際は、特定DTCを、該特定DTCの特定診断項目及び該特定診断項目の診断結果と対応づけて、記憶する。ここでいう診断結果とは上述の異常フラグ及び正常フラグである。
【0049】
コード記憶部55は、例えば、診断実行部54において異常が生じていると判断された場合は、コード記憶部55が対象とする特定DTCを特定DTC記憶領域141に書き込む。異常が生じていると判断された場合とは、異常フラグがセットされた場合又は正常フラグがリセットされた場合をいう。
【0050】
コード記憶部55が対象とする特定DTCとは、すなわちコード記憶部55が特定DTC記憶領域141に書き込みを行うか否かの対象とする特定DTCとは、診断実行部54によって異常診断が実行された特定診断項目に対応する特定DTCをいう。なお、コード記憶部55は、診断実行部54による異常診断の結果、異常が生じていないと判断された場合は、コード記憶部55が対象とする特定DTCを特定DTC記憶領域141に書き込まない。
【0051】
付加情報記憶部56は、診断実行部54によって診断結果がSRAM14に記憶された後に、付加情報生成部が生成する付加情報を取得し、付加情報を特定DTCと対応付けて、SRAM14の付加情報記憶領域142に記憶する。付加情報記憶部56は、後述する付加情報記憶処理を実行することによって、これらの機能を実現する。
【0052】
付加情報とは、特定DTC記憶領域141における特定DTCの記憶内容(以下、特定DTCの記憶内容)が適正であるか否かを表すための情報である。
ここでいう特定DTCの記憶内容とは、特定DTC記憶領域141における特定DTC毎の記憶領域の記憶内容をいう。特定DTC記憶領域141は、特定DTCが記憶されている状態と、特定DTCが記憶されずに初期化されたままの状態と、のいずれかの状態であり得る。特定DTC記憶領域141に特定DTCが記憶されている場合は、該特定DTCそのものが特定DTCの記憶内容に相当する。特定DTC記憶領域141に特定DTCが記憶されていない場合は、特定DTCが記憶されていないこと、換言すれば該特定DTCに対応する異常が生じていないこと、が特定DTCの記憶内容に相当する。
【0053】
また、ここでいう適正とは、妥当であるという意味、換言すれば信頼し得るという意味である。例えば、次の(a)-(c)の場合に、特定DTCの記憶内容は適正であると考えられる。
【0054】
(a)<診断実行部54による異常診断が実行され、その診断結果が記憶されており、該診断結果に基づいて特定DTCの記憶内容が決定された場合>
つまり、診断実行部54による診断結果が記憶されていない場合の特定DTCの記憶内容は、適正ではないおそれがある。
【0055】
例えば、異常診断が実行されて特定DTCが記憶されたか否かは、診断結果がSRAM14記憶されていることを表す情報に基づいて判断可能である。診断結果がSRAM14に記憶されていれば、該診断結果に基づいて特定DTCの記憶内容が決定されたと考えられるからである。
【0056】
また例えば、異常診断が実行されて特定DTCが記憶されたか否かは、経過時間情報に基づいて判断可能である。経過時間情報が上述の診断必要時間よりも長い時間を表す場合、特定DTC記憶領域141の情報は適正であると考えられる。ECU10の初期化以降の経過時間が診断必要時間よりも長い場合、ECU10の初期化以降に診断実行部54による異常診断が実行され、その上で特定DTCが記憶されている、と考えられるからである。
【0057】
以下でいう診断実行情報とは、診断実行部54によって異常診断が実行された上で診断結果としての特定DTCが特定DTC記憶領域141に記憶されたか否かを表す情報、をいう。診断実行情報には、上述の経過時間情報と、後述するように診断実行部54による診断結果が含まれ得る。なお、経過時間情報には、初期化後経過時間と走行履歴とが含まれ得る。
【0058】
(b)<ECU10の状態が正常である場合>
つまり、ECU10の状態が正常でない場合、該ECU10によって生成された特定DTCの記憶内容は適正ではないおそれがある。ECU10の状態が正常であるか否かは、上述の状態情報に基づいて判断可能である。
【0059】
(c)<車両に一対一に対応したECU10が正しく搭載されている場合>
車両に一対一に対応したECU10が正しく搭載されていない場合とは、例えば次のような場合が考えられる。つまり、ECU10が搭載された車両(以下、自車両ともいう)が車検を未実施であり、車検が正常に終了した他の車両のECUが自車両のECU10として不適正に搭載されたような場合である。
【0060】
このような場合は、車検が正常に終了した他の車両のECUにて生成された特定DTCの記憶内容は、自車両にとっては適正ではない。車両に一対一に対応したECU10が正しく搭載されているか否かは、例えばVINコード等の固有識別情報を用いて暗号化された信号をECU10から検査ツール3に送信することで判断可能である。つまり、暗号化された信号を検査ツール3にて復号可能か否かに基づいて判断可能である。
【0061】
本実施形態では、付加情報として、上述の経過時間情報としての初期化後経過時間と、状態情報としてのメモリ異常情報と、を用いる。
以上の(a)-(c)の場合に、特定DTCの記憶内容は適正であると考えられる。
【0062】
例えば本実施形態では、付加情報記憶部56は、コード記憶部55によって特定DTCが特定DTC記憶領域141に記憶されると、このときの初期化後経過時間とメモリ異常情報とを付加情報として取得する。
【0063】
そして、付加情報記憶部56は、付加情報を、付加情報記憶領域142の所定の領域であって、特定DTC記憶領域141における上述の特定DTCの記憶領域と対応付けられた領域、に記憶する。上述の特定DTCとは、コード記憶部55によって記憶された特定DTCをいう。なお、本実施形態では、経過時間生成部52、監視部53が、上述の付加情報生成部に相当する。
【0064】
認識部は、ECU10及び検査ツール3のうち少なくとも一方に備えられる。本実施形態では、認識部は、ECU10及び検査ツール3の両方に備えられる。以下では、ECU10が備える認識部を車両側識部57といい、検査ツール3が備える認識部を要求側認識部76という。
【0065】
車両側認識部57は、検査ツール3から特定DTCを読み出す読み出し要求が出力されたときに、読み出し要求の対象とされる特定DTCの付加情報を取得する。そして、車両側認識部57は、付加情報に基づいて特定DTCの記憶内容が適正であるか否かを判断し、適正でないと判断した場合に、検査ツール3に特定DTCの記憶内容が適正でないことを認識させる。車両側認識部57は、上述の機能を実現するために、後述する車両側認識処理を実行する。
【0066】
車両側認識部57は、特定DTCの記憶内容が適正でないと判断した場合に、検査ツール3に対して無応答又は否定応答を行うことによって、検査ツール3に特定DTCの記憶内容が適正でないことを認識させる。本実施形態では、車両側認識部57は、検査ツール3に対して無応答を行うことによって、検査ツール3に特定DTCの記憶内容が適正でないことを認識させる。無応答とは、検査ツール3に対して何ら応答を行わないことをいう。なお、否定応答とは、読み出し要求を拒否する応答をいう。
【0067】
情報出力部58は、予め定められた出力条件が満たされる場合に、検査ツール3に、特定DTCの記憶内容と、特定DTCに対応付けられた付加情報とを出力する。本実施形態では、情報出力部58は、読み出し要求が出力されたことを出力条件として用いる。また、本実施形態では、情報出力部58は、特定DTCの記憶内容と付加情報とを、固有識別情報であるVINコードに基づいて暗号化して送付する。
【0068】
なお、後述するECU駆動中処理におけるS31が初期化後経過時間を生成する経過時間生成部52に相当し、S32が状態情報としてのメモリ異常情報を生成する監視部53に相当する。また、後述するエンジン駆動中処理におけるS41が走行履歴を生成する経過時間生成部52に相当する。また、後述する車両側認識処理のS110、S180が車両側認識部57に相当し、S150が情報出力部58に相当する。
【0069】
(2)検査ツール
検査ツール3は、
図1に示すように、作業員によって使用される装置であって、ECU10外の装置である。検査ツール3は、ケーブル40を介して車両における通信線16に接続されてECU10と互いに通信可能に構成されている。検査ツール3は、ECU10に、特定DTCを読み出す読み出し要求を出力する。
【0070】
検査ツール3は、ツール制御部31を備える。検査ツール3は、操作部32と、ディスプレイ33と、ツール通信部34と、を備えていてもよい。
操作部32は、作業員からの各種指示入力を受け付ける。ディスプレイ33は、各種情報を表示する。ツール通信部34は、上述のサーバ4と通信を行う。サーバ4との通信は、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。
【0071】
ツール制御部31は、マイコン61を備える。マイコン61は、CPU71と、メモリ72と、を備える。メモリ72には、車両が備えるECU10に応じたDTCと、該DTCのうちの特定DTCと、を対応付けるリストが記憶されている。
【0072】
ツール制御部31の各種機能は、CPU71がメモリ72に格納されたプログラムを実行することにより実現される。また、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。
【0073】
ツール制御部31は、CPU71がプログラムを実行することで実現される機能の構成として、
図3に示すように、要求部75と、要求側認識部76と、を備える。
要求部75は、操作部32からの作業員の指示に従って、ECU10から特定DTCを読み出す読み出し要求をECU10へ出力する。
【0074】
要求側認識部76は、要求部75によって読み出し要求が出力された後に、読み出し要求の対象とされる特定DTCと特定DTCに対応付けられた付加情報とをECU10から取得する。そして、要求側認識部76は、付加情報に基づいて特定DTCの記憶内容が適正であるか否かを判断し、適正でないと判断した場合に、検査ツール3に特定DTCの記憶内容が適正でないことを認識させる。
【0075】
なお、後述する要求側認識処理のS230、S250、S260、S280が要求側認識部76に相当する。
[1-2.処理]
(1)ECUが実行する処理
(1-1)初期化処理
ECU10の初期化部51が実行する初期化処理について、
図4のフローチャートを用いて説明する。初期化処理は、初期化要求を受信したことをきっかけとして起動される処理である。
【0076】
なお、本実施形態では、初期化処理は、ECU10が車両から取り外される等によってバッテリ15によるECU10への電力供給が絶たれた場合にも起動される。
また、本実施形態では、初期化処理は、ECU10、他のECU、及び検査ツール3のうちのいずれかからクリアコマンドを受信したことをきっかけとして起動される。クリアコマンドは、特定DTC記憶領域141における特定DTCの記憶内容、付加情報記憶領域142における経過時間情報をリセットするための指示である。本実施形態では、経過時間情報には初期化後経過時間及び走行履歴としてのオンオフ回数が含まれる。
【0077】
S11では、ECU10は、特定DTC記憶領域141の記憶内容を消去する。これにより、特定DTCの記憶内容が初期化される。また、ECU10は、付加情報記憶領域142に記憶されている、診断実行部54による診断結果を消去する。これにより、診断実行部54により診断が実行されたことを表す履歴が消去される。
【0078】
S12及びS13では、ECU10は、経過時間情報をリセットする。本実施形態では、経過時間情報は、付加情報として用いられる情報である。具体的には、S12では、ECU10は、付加情報記憶領域142に記憶されている初期化後経過時間をリセットする。つまり、初期化後経過時間は初期値である0にセットされる。
【0079】
S13では、ECU10は、付加情報記憶領域142に記憶されている走行履歴をリセットする。つまり、走行履歴は初期値である0にセットされる。本実施形態では、走行履歴としてのオンオフ回数が初期値である0にセットされる。ECU10は、以上で初期化処理を終了する。
【0080】
(1-2)付加情報記憶処理
次に、ECU10の付加情報記憶部56が実行する付加情報記憶処理について、
図5のフローチャートを用いて説明する。付加情報記憶処理は、コード記憶部55が起動されたことをきっかけとして、起動される。
【0081】
S21では、ECU10は、時刻に関する情報であるタイムスタンプを取得する。なお、ECU10は、タイムスタンプを生成する機能を予め備えるように構成されている。本実施形態では、ECU10は、本付加情報記憶処理が起動されるきっかけとなった特定DTCと対応づけて、タイムスタンプを付加情報記憶領域142に記憶する。本付加情報記憶処理が起動されるきっかけとなった特定DTCとは、上述のコード記憶部55が記憶するか否かの対象とする特定DTCに相当する。
【0082】
S22では、ECU10は、経過時間生成部52が生成する初期化後経過時間を取得する。そして、ECU10は、本付加情報記憶処理が起動されるきっかけとなった特定DTCと対応づけて、該初期化後経過時間を付加情報記憶領域142に記憶する。
【0083】
S23では、ECU10は、経過時間生成部52が生成する走行履歴を取得する。本実施形態では、走行履歴はオンオフ情報である。そして、ECU10は、付加情報記憶処理が起動されるきっかけとなった特定DTCと対応づけて、該走行履歴を付加情報記憶領域142に記憶する。ECU10は、以上で付加情報記憶処理を終了する。
【0084】
(1-3)ECU駆動中処理
次に、ECU10が実行するECU駆動中処理について、
図6のフローチャートを用いて説明する。ECU駆動中処理は、バッテリ15によってECU10に電力が供給されている間かつECU10が起動している間、予め定められた周期(以下、第1の処理周期)で繰り返し実行される処理である。
【0085】
ECU10は、S31では、初期化後経過時間を更新する。具体的には、ECU10は、初期化後経過時間を取得し、該初期化後経過時間に第1の処理周期を加算した値を新たな初期化後経過時間として生成する。そして、ECU10は、新たな初期化後経過時間を、SRAM14における元の初期化後経過時間が記憶されていた領域に上書きする。
【0086】
ECU10は、S32では、状態情報を更新する。本実施形態では、状態情報として上述のメモリ異常情報が用いられる。ECU10は、状態情報を取得し、取得した状態情報を新たな状態情報として、新たな状態情報をSRAM14における元の状態情報が記憶されていた領域に上書きする。
【0087】
ECU10は、以上でECU駆動中処理を終了する。これにより、初期化後経過時間、及び状態情報の最新の値がSRAM14に記憶される。
(1-4)エンジン駆動中処理
次に、ECU10が実行するエンジン駆動中処理について、
図7のフローチャートを用いて説明する。エンジン駆動中処理は、車両の走行時、すなわちエンジンが駆動されている間、予め定められた周期(以下、第2の処理周期)で繰り返し実行される処理である。
【0088】
ECU10は、S41では、走行履歴を更新する。本実施形態では、走行履歴として上述のオンオフ回数が用いられる。ECU10は、走行履歴としてのオンオフ回数を取得し、該オンオフ回数に第2の処理周期の間にイグニションスイッチがオン及びオフされた回数を加算して新たなオンオフ回数を算出する。ECU10は、新たなオンオフ回数をSRAM14における元のオンオフ回数が記憶されていた領域に上書きする。
【0089】
ECU10は、以上でエンジン駆動中処理を終了する。これにより、走行履歴としてのオンオフ回数の最新の値がSRAM14に記憶される。
(1-5)車両側認識処理
次に、ECU10が実行する車両側認識処理について、
図8のフローチャートを用いて説明する。車両側認識処理は、検査ツール3から読み出し要求を受信したことをきっかけとして起動される。
【0090】
ECU10は、S110では、読み出し要求に対して適正な応答が可能であるか否かを判断する。本実施形態では、ECU10は、特定DTC記憶領域141における特定DTCの記憶内容が適正である場合に、読み出し要求に対して適正な応答が可能であると判断する。
【0091】
ECU10は、付加情報に基づいて特定DTCの記憶内容が適正であるか否かを判断する。本実施形態では、ECU10は、付加情報としての経過時間情報を取得し、経過時間情報が診断必要時間よりも長い時間を表す場合、特定DTC記憶領域141の情報は適正であると判断する。
【0092】
ECU10は、読み出し要求に対する適正応答が可能であると判断した場合に処理をS120へ移行させ、読み出し要求に対する適正応答が不可能であると判断した場合に処理をS160へ移行させる。
【0093】
ECU10は、S120では、特定DTC記憶領域141から、読み出し要求に対応する特定DTCの記憶内容を取得する。
ECU10は、S130では、付加情報記憶領域142から、読み出し要求に対応する特定DTCに対応付けられた付加情報のうちの経過時間情報を取得する。なお、本実施形態では、経過時間情報としの初期化後経過時間が取得される。
【0094】
ECU10は、S140では、付加情報記憶領域142から、読み出し要求に対応する特定DTCに対応付けられた付加情報のうちの状態情報を取得する。なお、本実施形態では、状態情報としのメモリ異常情報が取得される。
【0095】
ECU10は、S150では、読み出し要求に対応する特定DTCの記憶内容と、読み出し要求に対応する特定DTCに対応付けられた付加情報と、を検査ツール3に出力する。本実施形態では、ECU10は、特定DTCの記憶内容と付加情報とを、車両に固有の識別情報に基づいて暗号化して送付する。識別情報としては、VIN記憶エリア131に記憶されているVINコードが用いられる。ECU10は、検査ツール3に対して出力を終了させた後、車両側認識処理を終了する。
【0096】
ECU10は、特定DTCの記憶内容が適正でないと判断した場合に移行するS160では、検査ツール3に対して無応答を行うことによって、検査ツール3に特定DTCの記憶内容が適正でないことを認識させる。ECU10は、検査ツール3に対して無応答を行った後、車両側認識処理を終了する。
【0097】
(2)検査ツールが実行する処理
次に、ツール制御部61が実行する要求側認識処理について、
図9のフローチャートを用いて説明する。要求側認識処理は、検査ツール3がECU10に対して特定DTCの読み出し要求を送信したことをきっかけとして、起動される。
【0098】
ツール制御部61は、S210では、ECU10から読み出し要求に対する応答があったか否かを判断する。ツール制御部61は、ECU10から応答が無かった場合に処理をS220へ移行させ、ECU10から応答があった場合に処理をS230へ移行させる。
【0099】
ツール制御部61は、S220では、ECU10からの応答が無い時間(以下、応答待ち時間)が、予め定められた時間(以下、待ち時間閾値)未満であるか否かを判断する。ECU10は、応答待ち時間が待ち時間閾値未満である場合に処理をS210へ移行させ、応答待ち時間が待ち時間閾値以上である場合に処理をS280へ移行させる。
【0100】
ツール制御部61は、S230では、ECU10から送信された応答信号を取得する。つまり、ツール制御部61は、特定DTCの記憶内容と付加情報とを取得する。なお、ECU10から送信される際にこれらが暗号化されている場合は、ECU10は本ステップにて復号を行う。
【0101】
ツール制御部61は、続くS240では、ECU10において、特定DTCの記憶内容に基づいて、読み出し要求の対象である特定DTCに対応する異常が生じているか否か、を判断する。例えば、ECU10は、読み出し要求の対象である特定DTCの記憶内容として該特定DTCが記憶されている場合に、該特定DTCに対応する異常が生じていると判断する。換言すれば、読み出し要求の対象である特定DTCの記憶内容として該特定DTCが記憶されていない場合に、該特定DTCに対応する異常が生じていないと判断する。
【0102】
ツール制御部61は、ECU10において読み出し要求の対象である特定DTCに対応する異常が生じていると判断された場合に処理をS280へ移行させ、該異常が生じていないと判断された場合に処理をS250へ移行させる。
【0103】
ツール制御部61は、S250及びS260では、ECU10から送信された付加情報に基づいて、ECU10から送信された特定DTCの記憶内容が適正であるか否かを判断する。
【0104】
ツール制御部61は、S250では、ECU10から送信された付加情報に基づいて、特定DTCの記憶内容が診断実行部54による異常診断の診断結果に基づいていると判断される場合に、ECU10から送信された特定DTCの記憶内容が適正であると判断する。
【0105】
具体的には、本実施形態では、ツール制御部61は、付加情報のうちの経過時間情報に基づいて判断を行う。ツール制御部61は、本実施形態では、経過時間情報としての初期化後経過時間に基づいて、初期化後経過時間が診断必要時間以上である場合に、適正であると判断する。ツール制御部61は、適正であると判断した場合は処理をS260へ移行させ、適正でないと判断した場合は処理をS280へ移行させる。
【0106】
なお、判断に必要とされる閾値である診断必要時間は、予めメモリ72に記憶されていてもよいし、ECU10から付加情報と共に送信されてもよい。
ツール制御部61は、S260では、ECU10から送信された付加情報に基づいて、ECU10が正常であると判断される場合に、ECU10から送信された特定DTCの記憶内容が適正であると判断する。
【0107】
具体的には、本実施形態では、ツール制御部61は、付加情報のうちの状態情報に基づいて判断を行う。ツール制御部61は、適正であると判断した場合は処理をS270へ移行させ、適正でないと判断した場合は処理をS280へ移行させる。
【0108】
ツール制御部61は、S270では、ECU10から送信された特定DTCの記憶内容が適正であると判断する。そして、ツール制御部61は、該判断結果をメモリ72に記憶し、以上で要求側認識処理を終了する。これにより、ツール制御部61は、例えば該判断結果に基づいて、検査ツール3に、ECU10から送信された特定DTCの記憶内容が適正であることを認識させる。
【0109】
なお、ツール制御部61は、本ステップにおいて、特定DTCの記憶内容が適正であることを表す情報をディスプレイ33に表示するように構成されてもよい。
ツール制御部61は、S280では、ECU10から送信された特定DTCの記憶内容が適正でないと判断する。そして、ツール制御部61は、該判断結果をメモリ72に記憶し、以上で要求側認識処理を終了する。これにより、ツール制御部61は、例えば該判断結果に基づいて、検査ツール3に、ECU10から送信された特定DTCの記憶内容が適正でないことを認識させる。
【0110】
なお、ツール制御部61は、本ステップにおいて、特定DTCの記憶内容が適正でないことを表す情報をディスプレイ33に表示するように構成されてもよい。
[1-3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0111】
(1a)故障検出システム1は、ECU10において車両側認識部57を備える。ECU10は、車両側認識部57では、読み出し要求の対象とされる特定DTCに対応付けられた付加情報を取得し、付加情報に基づいて特定DTCの記憶内容が適正であるか否かを判断する。ECU10は、付加情報に基づいて特定DTCの記憶内容が適正でないと判断した場合に、検査ツール3に特定DTCの記憶内容が適正でないことを認識させる。
【0112】
この結果、検査ツール3に、読み出し要求の対象とされる特定DTCの記憶内容が適正でないことを認識させることができる。そして、例えば、特定DTCの記憶内容が適正でない場合には車検を実施しないように検査ツール3を構成することによって、誤って車検を通過することを抑制することができる。
【0113】
(1b)故障検出システム1は、検査ツール3において要求側認識部76を備える。ツール制御部61は、要求側認識部76では、ECU10から、読み出し要求の対象とされる特定DTCの記憶内容と読み出し要求の対象とされる特定DTCに対応付けられた付加情報とを取得し、付加情報に基づいて特定DTCの記憶内容が適正であるか否かを判断する。ツール制御部61は、適正でないと判断した場合に、当該検査ツール3に特定DTCの記憶内容が適正でないことを認識させる。
【0114】
この結果、検査ツール3は、例えば、特定DTCが適正でないことが認識された場合に車検を通過させないことによって、誤って車検を通過することを抑制することができる。
(1c)故障検出システム1は、ECU10の車両側認識部57及び検査ツール3の要求側認識部76の両方を備える。すなわち、車両側認識部57及び要求部75の両方において、付加情報に基づいて特定DTCの記憶内容が適正であるか否かが判断される。
【0115】
この結果、ECU10と検査ツール3との通信路の途中で仮に特定DTCの記憶内容が書き換えられるような異常が生じたとしても、検査ツール3において、書き換えられた特定DTCの記憶内容が適正であるか否かを判断することができる。したがって、書き換えられた特定DTCの記憶内容に基づいて誤って車検を通過することを抑制することができる。
【0116】
(1d)付加情報記憶部56は、診断実行情報を付加情報として取得して記憶するように構成されてもよい。車両側認識部57及び要求側認識部76の少なくとも一方は、特定DTCの記憶内容が適正であるか否かの判断に、診断実行情報を用いるように構成されてもよい。この結果、特定DTCの記憶内容が適正であるか否かを、診断実行部54による異常診断が実行されたか否かに基づいて適切に判断することができる。
【0117】
(1e)経過時間情報が診断実行情報として用いられてもよい。このとき、ECU10は、初期化部51と、経過時間生成部52と、を備えていても良い。車両側認識部57及び要求側認識部76の少なくとも一方は、経過時間情報が予め定められた経過時間閾値よりも短い時間を表す場合に、特定故障コードの記憶内容が適正でないと判断するように構成されてもよい。
【0118】
なお、上述の経過時間閾値は、診断必要時間よりも長い時間に設定されていてもよい。又、上述の経過時間閾値は、診断必要時間に設定されていてもよい。
この結果、特定DTCの記憶内容が適正であるか否かを、診断実行部54による異常診断が実行されたか否かに基づいて適切に判断することができる。
【0119】
(1f)付加情報記憶部56は、状態情報を付加情報として記憶するように構成されてもよい。車両側認識部57及び要求側認識部76の少なくとも一方は、状態情報がECU10の状態が異常であることを表す場合に、特定DTCの記憶内容が適正でないと判断するように構成されていてもよい。この結果、特定DTCの記憶内容が適正であるか否かを、ECU10の状態に応じて適切に判断することができる。
【0120】
(1g)情報出力部58は、予め定められた出力条件が満たされる場合に、検査ツール3に特定DTCの記憶内容と付加情報とを出力する。この結果、出力条件が満たされる場合には、検査ツール3においても、付加情報に基づいて特定DTCの記憶内容が適正であるか否かを判断することが可能となる。
【0121】
(1h)情報出力部58は、特定DTCの記憶内容と付加情報とを、車両に固有の識別情報であるVINコードに基づいて暗号化して出力するように構成されてもよい。検査ツール3は、ECU10から出力された特定DTCの記憶内容と付加情報とを、VINコードに基づいて復号するように構成されていてもよい。VINコードは、車両に固有の識別情報であり、換言すれば、車両に搭載されるECU10に固有の識別情報である。
【0122】
仮に、車検を未実施の車両に、車検を未実施の車両に搭載されていたECUに替えて、特定DTCが検出されず既に車検を合格している車両のECUが不適正に搭載された場合、車検を未実施の車両が誤って車検を通過するおそれがある。
【0123】
本実施形態では、このように車両にECUが不適正に搭載された場合、不適正に搭載されたECUで認識するVINコードと検査ツール3で認識するVINコードとが異なるので、検査ツール3は、不適正に搭載されたECUによって暗号化された特定DTCの記憶内容と付加情報とを復号することができない。この結果、車両に不適正にECUが搭載された場合、誤った特定DTCの記憶内容に基づいて誤って車検を通過することを抑制することができる。
【0124】
(1i)情報出力部58は、特定DTCの記憶内容が適正であると判断されたことを上述の出力条件として、特定DTCの記憶内容が適正であると判断された場合に、検査ツール3に特定DTCの記憶内容と付加情報とを出力するように構成されてもよい。この結果、ECU10からは、適正である特定DTCの記憶内容を検査ツール3へ送信することができる。例えば、第1実施形態と検査ツール3から要求側認識部76を省略することが可能となり、検査ツール3の構成を簡易にすることが可能となる。
【0125】
(1j)車両側認識部57は、特定DTCの記憶内容が適正でないと判断した場合に、検査ツール3に対して無応答又は否定応答を行うことによって、検査ツール3に特定DTCの記憶内容が適正でないことを認識させるように構成されてもよい。検査ツール3は、 読み出し要求を出力した後に、ECU10による無応答又は否定応答が有る場合に、読み出し要求の対象とされる特定DTCの記憶内容が適正でないことを認識するように構成されてもよい。
【0126】
この結果、適正でない特定DTCの記憶内容に基づいて誤って車検を通過することを抑制することができる。
[2.第2実施形態]
本実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0127】
上述した第1実施形態では、故障検出システム1において、ECU10が車両側認識部57を備え、検査ツール3が要求側認識部76を備えていた。これに対し、第2実施形態では、検査ツール3が要求側認識部76を備えない点で、第1実施形態と相違する。
【0128】
ECU10は、第1実施形態と同様に初期化部51-診断実行部54、コード記憶部55、付加情報記憶部56、車両側認識部57、情報出力部58を備える。なお、情報出力部58も、第1実施形態と同様に、特定DTCの記憶内容が適正であると判断されたことを上述の出力条件として、特定DTCの記憶内容が適正であると判断された場合に、検査ツール3に特定DTCの記憶内容と付加情報とを出力するように構成される。
【0129】
本実施形態では、ツール制御部61は、認識判断部76を備えない。例えば、ツール制御部61が実行する要求側認識処理では、
図9に示すフローチャートのS250及びS260が省略されてよい。つまり、ツール制御部61は、ECU10から応答があった場合は、送信されたDTCの記憶内容が適正であると判断して、送信されたDTCの記憶内容をそのまま用いて車検を行うように構成されてよい。
【0130】
この結果、上記(1a)と同様の効果が得られるとともに、検査ツール3から要求側認識部76を省略することが可能となり、検査ツール3の構成を簡易にすることが可能となる。このように、故障検出システム1では、ECU10及び検査ツール3の少なくとも一方が、認識部すなわち本実施形態における車両側認識部57、を備えていればよい。
【0131】
[3.第3実施形態]
上述した第1実施形態では、故障検出システム1において、ECU10が車両側認識部57を備え、検査ツール3が要求側認識部76を備えていた。これに対し、第3実施形態では、ECU10が車両側認識部57を備えない点で、第1実施形態と相違する。
【0132】
本実施形態では、ECU10は、車両側認識部57を備えない。例えば、ECU10が実行する車両側認識処理では、
図8に示すフローチャートのS110及びS160が省略されてよい。つまり、ECU10において、情報出力部58は、読み出し要求が出力されたことを上述の出力条件として用い、読み出し要求が出力された場合に、常に、特定DTCの記憶内容と付加情報とを検査ツール3に出力するように構成されてもよい。
【0133】
検査ツール3は、第1実施形態と同様に構成される。つまり、検査ツール3において、要求側認識部76は、ECU10から出力された付加情報に基づいて特定DTCの記憶内容が適正であるか否かを判断し、適正でないと判断した場合に、検査ツール3に特定DTCの記憶内容が適正でないことを認識させるように構成されていてもよい。ツール制御部61は、
図9に示す第1実施形態の要求側認識処理と同様の処理を実行するように構成されていてよい。
【0134】
また、検査ツール3において、ツール制御部61は、特定DTCの記憶内容が適正でないと判断された場合、特定DTCの記憶内容を用いて車検を行わないように構成されてもよい。
【0135】
この結果、上記(1b)と同様の効果が得られるとともに、ECU10から車両側認識部57を省略することが可能となり、ECU10処理負荷を低減することが可能となる。このように、故障検出システム1では、ECU10及び検査ツール3の少なくとも一方が、認識部すなわち本実施形態における認識判断部76、を備えていればよい。
【0136】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0137】
(4a)上記実施形態では、付加情報として、診断実行情報である経過時間情報、具体的には初期化後経過時間が用いられていた。但し、本開示はこれに限定されるものではない。
【0138】
例えば、診断実行情報は、初期化後経過時間以外の経過時間情報であってもよい。例えば、経過時間情報は、時刻を表すタイムスタンプであってもよいし、各種走行履歴であってもよい。
【0139】
また例えば、診断実行情報は、診断実行部54による診断結果を表す情報、つまり、正常フラグ、異常フラグ、そのものであってもよい。正常フラグ、異常フラグが記憶されているということから、異常診断が実行されたということが明らかであるためである。上述のように、異常診断が完了して診断結果が記憶されると、コード記憶部55が起動される。つまり、診断結果を表す情報が記憶されているということからは、異常診断が実行された上で特定DTCが記憶されていること、又は異常診断が実行された上で特定DTCが記憶されていないこと、が明らかであるためである。
【0140】
この場合、異常フラグ及び正常フラグの両方が診断実行情報として用いられ、コード記憶部55によってこれらのフラグが診断実行情報すなわち付加情報として特定DTC記憶領域141に記憶されてもよい。車両側認識部57及び要求側認識部76の少なくとも一方は、診断実行情報としてのこれらのフラグが特定DTC記憶領域141に記憶されていない場合に、特定DTCの記憶内容が適正でないと判断するように構成されていてもよい。そして、初期化部51は、少なくとも特定DTC記憶領域141が消去されるように構成されてもよい。
【0141】
なお、付加情報記憶部56は、各種の診断実行情報を付加情報として取得して記憶するように構成されてもよい。
(4b)上記実施形態ではオンオフ回数が走行履歴として用いられていた。但し、走行履歴は、オンオフ回数に限定されるものではない。
【0142】
例えば、走行履歴は、ECU10が初期化された以降にECU10がオンされている時間を表す累計稼動時間であり得る。また例えば、走行履歴は、ECU10が初期化された以降にエンジンの制御を行うエンジンECUがオンされている時間を表すエンジン稼動時間であり得る。また例えば、走行履歴は、ECU10が初期化された以降にエンジンECUがオンされてから次にオンされるまでを1トリップとして計測したときのトリップ回数であり得る。また例えば、走行履歴は、車両の走行距離であってもよい。
【0143】
なお、経過時間生成部52は、これらの経過時間情報を生成するように構成され得る。
(4c)上記実施形態では、メモリ異常情報が状態情報として用いられていた。但し、状態情報は、メモリ異常情報に限定されるものではない。
【0144】
例えば、状態情報は、ECU10が車両から取り外されたことを表す情報であり得る。ECU10が車両から取り外されたことがある場合、該ECU10には異常が生じているおそれがあるからである。具体的には、ECU10が車両において通信線16を介してCANに従って通信を行っている場合、ECU10が通信線16から取り外されることによってCANに従った通信において異常が検出される。なお、CANは、Controller Area Networkの略であり、登録商標である。監視部53は、このような異常を検出し、該異常が検出された場合にECU10に異常が生じていることを表す状態情報を生成するように構成されてもよい。
【0145】
また例えば、状態情報は、車両が不正なキーによって起動されたことを表す情報であり得る。車両が不正なキーによって起動された場合、車両に搭載されたECU10には異常が生じているおそれがあるからである。具体的には、車両にイモビライザーが搭載されている場合、車両が不正なキーによって起動されることによって、イモビライザーにおいて異常が検出される。監視部53は、このような異常を検出し、該異常が検出された場合にECU10に異常が生じていることを表す状態情報を生成するように構成されてもよい。
【0146】
また例えば、状態情報は、ECU10によるSRAM14に対する書き込み機能又は読み出し機能に異常が生じていることを表す情報であってもよい。具体的には、特定DTCがSRAM14において複数個所に記憶されており、ECU10が複数個所に記憶されている特定DTCが一致するか否かを検出する機能(以下、ミラーチェック機能)を有する場合、複数個所に記憶されている特定DTCが一致しないときに、異常が検出される。監視部53は、このような異常を検出し、該異常が検出された場合にECU10に異常が生じていることを表す状態情報を生成するように構成されてもよい。
【0147】
また例えば、状態情報は、ECU10のマイコン11に備えられた保護領域に対して不正なアクセスがあったことを表す情報であってもよい。マイコン11は、マイコン11の保護領域に対して不正なアクセスがあったことを検出するように構成されている。マイコン11の保護領域に対して不正なアクセスがあった場合には、ECU10に異常が生じているおそれがあるからである。なお、ECU10は、マイコン11に備えられた保護領域に、特定DTCを記憶するように構成されていてもよい。
【0148】
監視部53は、このような異常を検出し、該異常が検出された場合にECU10に異常が生じていることを表す状態情報を生成するように構成されてもよい。
(4d)車両側認識部57は、検査ツール3に対して無応答を行うことによって、検査ツール3に特定DTCの記憶内容が適正でないことを認識させるように構成されていたが、これに限定されるものではない。車両側認識部57は、検査ツール3に対して否定応答を行うことによって、検査ツール3に特定DTCの記憶内容が適正でないことを認識させるように構成されていてもよい。
【0149】
この場合、例えば、検査ツール3は、否定応答を受信した場合に、ECU10における特定DTCの記憶内容が適正でないと判断し、特定DTCによる車検を中止するように構成されてもよい。
【0150】
(4e)付加情報は、車両に1対1に対応したECU10、すなわち車両に対応した該車両に固有のECU10、が搭載されているか否かを表す情報であってもよい。上記実施形態では、ECU10から送信される特定DTCの記憶内容及び付加情報を固有識別情報であるVINコードによって暗号化することにより、ECU10から送信された特定DTCの記憶内容が車両に固有のECU10によるものであることを表していた。但し、固有識別情報はこれに限定されるものではない。車両に固有の情報であってVINコード以外の任意の情報が固有識別情報として用いられてもよい。
【0151】
(4f)上記実施形態では、車両制御装置2は、1つのECU10を備えていたが、これに限定されるものではない。車両制御装置2は、複数のECU10を備えていてもよい。この場合、複数のECU10のそれぞれは、通信線16に接続され、CAN等といった通信プロトコルに従って互いに通信可能であってもよい。複数のECU10は、ECU毎に予め定められた車両制御を実行するものであってよい。
【0152】
(4g)上記実施形態では、ECU10と検査ツール3とは、ケーブル40によって接続され通信可能に構成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、ECU10と検査ツール3とは、無線によって通信可能に構成されていてもよい。
【0153】
(4h)上記実施形態では、検査ツール3が車検の合否を判断するように構成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、サーバ4が、車検の合否を判断するように構成されてもよい。この場合、サーバ4は、検査ツール3によってECU10から読み出された特定DTCを取得し、該特定DTCを用いて特定DTC情報に基づいて車検の合否を判断するように構成されてもよい。また、サーバ4は、判断結果を検査ツール3に出力するように構成されてもよい。
【0154】
(4i)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0155】
(4j)上述した故障検出システム1、車両制御装置2、ECU10、検査ツール3、ツール制御部61の他、ECU10を機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、ツール制御部61を機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、故障検出方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【0156】
なお、上記実施形態において、ECU10が車両電子制御装置に相当し、検査ツール3が要求装置に相当し、車両側認識部57、要求側認識部76が認識部に相当する。また、特定DTCが特定故障コードに相当する。
【符号の説明】
【0157】
1 故障検出システム、3 検査ツール、10 ECU、14 SRAM、54 診断実行部、55 コード記憶部、56 付加情報記憶部、57 車両側認識部、76 要求側認識部。