(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】変速操作装置の組立方法及び変速操作装置
(51)【国際特許分類】
B60K 20/02 20060101AFI20221115BHJP
G05G 1/00 20080401ALI20221115BHJP
B60K 17/344 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
B60K20/02 A
G05G1/00 G
B60K17/344 B
(21)【出願番号】P 2019079030
(22)【出願日】2019-04-18
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 雅晃
(72)【発明者】
【氏名】岡留 泰樹
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭64-36225(JP,U)
【文献】実開昭64-6127(JP,U)
【文献】実開昭63-202527(JP,U)
【文献】特開2017-116062(JP,A)
【文献】特開2006-69261(JP,A)
【文献】実公昭48-43525(JP,Y1)
【文献】特開平11-165555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
G05G 1/00
B60K 17/344
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられる手動変速機の変速操作を行うための変速操作装置の組立方法であって、
上記変速操作装置は、
チェンジレバーを揺動可能に支持するコントロールケースと、
上記手動変速機に連結された前側端部から車両後側に延び、後側端部に上記コントロールケースが上面に固定される台座部が設けられ、該コントロールケースを該手動変速機と上記車両の車体に形成されたフロアトンネル部とに対して支持するチェンジアームと、
を有しており、
上記手動変速機を上記フロアトンネル部の下側に組み付ける際に、該手動変速機に連結された上記チェンジアームの台座部を、上記フロアトンネル部の上部に設けられた開口部から該フロアトンネル部の上側に露呈させる第1工程と、
上記開口部から上記フロアトンネル部の上側に露呈した上記台座部の後側端部、又は、該台座部に固定された上記コントロールケースの後側端部に、取付部材を取り付ける第2工程と、
上記台座部又は上記コントロールケースの後側端部に取り付けられた上記取付部材を、上記フロアトンネル部の上面に固定する第3工程と、
を備えることを特徴とする変速操作装置の組立方法。
【請求項2】
請求項1記載の変速操作装置の組立方法において、
上記取付部材は、ボルト部材であり、
上記第2工程は、上記ボルト部材を、上記台座部又は上記コントロールケースの後側端部にねじ込んで取り付ける工程であることを特徴とする変速操作装置の組立方法。
【請求項3】
請求項2記載の変速操作装置の組立方法において、
上記第3工程は、上記台座部又は上記コントロールケースの後側端部にねじ込まれた上記ボルト部材を、ブラケット及び締結部材を介して上記フロアトンネル部の上面に締結固定する工程であることを特徴とする変速操作装置の組立方法。
【請求項4】
車両に設けられる手動変速機の変速操作を行うための変速操作装置であって、
チェンジレバーを揺動可能に支持するコントロールケースと、
上記車両の車体に形成されたフロアトンネル部の下側において、上記手動変速機に連結された前側端部から車両後側に延び、後側端部に上記コントロールケースが上面に固定される台座部が設けられ、該コントロールケースを該手動変速機と該フロアトンネル部とに対して支持するチェンジアームとを備え、
上記チェンジアームの台座部及び上記コントロールケースが、上記フロアトンネル部の上部に設けられた開口部から該フロアトンネル部の上側に露呈しており、
上記開口部から上記フロアトンネル部の上側に露呈した上記台座部又は上記コントロールケースの後側端部に取り付けられ、該フロアトンネル部の上面に固定された取付部材を更に備え、
上記開口部の車両前後方向の長さは、上記台座部の車両前後方向の長さよりも長くかつ該台座部と該台座部に取り付けられた取付部材とのトータルの車両前後方向の長さよりも短いことを特徴とする変速操作装置。
【請求項5】
請求項4記載の変速操作装置において、
上記取付部材は、ボルト部材であり、
上記ボルト部材は、上記台座部又は上記コントロールケースの後側端部にねじ込まれて取り付けられていることを特徴とする変速操作装置。
【請求項6】
請求項5記載の変速操作装置において、
上記ボルト部材は、ブラケット及び締結部材を介して上記フロアトンネル部の上面に締結固定されていることを特徴とする変速操作装置。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1つに記載の変速操作装置において、
上記車両は、四輪駆動車であり、
上記手動変速機の後側に、該手動変速機の出力トルクを、前輪と後輪とに分配するためのトランスファ装置が設けられており、
上記チェンジアームの台座部は、上記トランスファ装置の上側に位置していることを特徴とする変速操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられる手動変速機の変速操作を行うための変速操作装置の組立方法及び変速操作装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、手動変速機の変速操作装置は、例えば特許文献1に示されているように、チェンジレバーを揺動可能に支持するコントロールケース(特許文献1では、筒部)と、車両の車体(車体フロア)に形成されたフロアトンネル部の下側において、手動変速機に連結された前側端部から車両後側に延び、後側端部にコントロールケースが上面に固定される台座部(ホルダープレート)が設けられ、該コントロールケースを該手動変速機と該フロアトンネル部とに対して支持するチェンジアーム(サポートロッド)とを備えている。このチェンジアームの台座部及びコントロールケースは、上記フロアトンネル部の上部に設けられた開口部から該フロアトンネル部の上側に露呈している。
【0003】
特許文献1では、チェンジアーム(つまり、台座部に固定されたコントロールケース)を車体のフロアトンネル部に対して支持するために、台座部(ホルダープレート)の後側端部が、フロアトンネル部の下側に配置されたホルダラバー及びホルダブラケットを介して、フロアトンネル部の下面に取付固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように、台座部が、車体のフロアトンネル部の下側に配置されたブラケット等を介してフロアトンネル部の下面に固定される構成では、フロアトンネル部の下側に、台座部を固定するためのブラケット等のスペースが必要になる。フロアトンネル部は、局所的な凹凸がないなだらかな突形状に形成する観点から、台座部が固定される部分だけを上側(車室側)に突出させることはできず、フロアトンネル部全体を上側に突出させる必要がある。特に四輪駆動車の場合には、トランスファ装置の上側に台座部が位置することが多く、フロアトンネル部全体がより一層大きく車室側に突出するという問題がある。
【0006】
そこで、台座部の後側端部をフロアトンネル部の上側でブラケット等によりフロアトンネル部の上面に固定することが考えられる。しかし、この場合、フロアトンネル部の上部に設けられた開口部の開口面積を大きくする必要がある。すなわち、手動変速機をフロアトンネル部の下側に組み付ける際には、該手動変速機に連結されたチェンジアームの台座部を、フロアトンネル部の開口部から該フロアトンネル部の上側に露呈させる必要がある。このとき、台座部の後側端部には、台座部をフロアトンネル部の上面に固定するための部材が設けられているため、台座部及び該部材が開口部を通り抜けるようにする必要がある。この結果、開口部が、その部材の分だけ後側に大きくなる。このように開口部の開口面積が大きくなると、フロアトンネル部の強度及び剛性が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車室内空間を出来る限り大きくすることが可能でかつ車体のフロアトンネル部の強度及び剛性の低下を抑制可能な、変速操作装置の組立方法及び変速操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明では、車両に設けられる手動変速機の変速操作を行うための変速操作装置の組立方法を対象として、上記変速操作装置は、チェンジレバーを揺動可能に支持するコントロールケースと、上記手動変速機に連結された前側端部から車両後側に延び、後側端部に上記コントロールケースが上面に固定される台座部が設けられ、該コントロールケースを該手動変速機と上記車両の車体に形成されたフロアトンネル部とに対して支持するチェンジアームと、を有しており、上記手動変速機を上記フロアトンネル部の下側に組み付ける際に、該手動変速機に連結された上記チェンジアームの台座部を、上記フロアトンネル部の上部に設けられた開口部から該フロアトンネル部の上側に露呈させる第1工程と、上記開口部から上記フロアトンネル部の上側に露呈した上記台座部の後側端部、又は、該台座部に固定された上記コントロールケースの後側端部に、取付部材を取り付ける第2工程と、上記台座部又は上記コントロールケースの後側端部に取り付けられた上記取付部材を、上記フロアトンネル部の上面に固定する第3工程と、を備えるようにした。
【0009】
上記の組立方法により、チェンジアームの台座部を、車体のフロアトンネル部の開口部から該フロアトンネル部の上側に露呈させた後に、台座部又はコントロールケースの後側端部に取付部材を取り付け、その後に、該取付部材をフロアトンネル部の上面に固定するので、チェンジアームの台座部をフロアトンネル部の上側に露呈させる際には、取付部材がない状態で、台座部が開口部を通り抜ければよい。この結果、開口部の開口面積を大きくする必要はなくなる。また、取付部材がフロアトンネル部の上面に固定されるので、台座部をフロアトンネル部の下面に固定するための部材を介して台座部がフロアトンネル部の下面に固定される場合とは異なり、フロアトンネル部全体を車室側に大きく突出させる必要もない。よって、車室内空間を出来る限り大きくすることができるとともに、車体のフロアトンネル部の強度及び剛性の低下を抑制することができる。
【0010】
上記変速操作装置の組立方法において、上記取付部材は、ボルト部材であり、上記第2工程は、上記ボルト部材を、上記台座部又は上記コントロールケースの後側端部にねじ込んで取り付ける工程である、ことが好ましい。
【0011】
このことにより、取付部材(ボルト部材)を台座部又はコントロールケースの後側端部に容易に取り付けることができる。この結果、台座部をフロアトンネル部の開口部から該フロアトンネル部の上側に露呈させた後に、台座部又はコントロールケースの後側端部に取付部材を取り付けるようにしても、組立作業の負担を軽減することができる。
【0012】
上記のように上記取付部材がボルト部材である場合において、上記第3工程は、上記台座部又は上記コントロールケースの後側端部にねじ込まれた上記ボルト部材を、ブラケット及び締結部材を介して上記フロアトンネル部の上面に締結固定する工程である、ことが好ましい。
【0013】
このことで、ボルト部材を車体のフロアトンネル部の上面に容易にかつ確実に固定することができる。
【0014】
本発明の別の態様は、車両に設けられる手動変速機の変速操作を行うための変速操作装置の発明であり、この発明では、チェンジレバーを揺動可能に支持するコントロールケースと、上記車両の車体に形成されたフロアトンネル部の下側において、上記手動変速機に連結された前側端部から車両後側に延び、後側端部に上記コントロールケースが上面に固定される台座部が設けられ、該コントロールケースを該手動変速機と該フロアトンネル部とに対して支持するチェンジアームとを備え、上記チェンジアームの台座部及び上記コントロールケースが、上記フロアトンネル部の上部に設けられた開口部から該フロアトンネル部の上側に露呈しており、上記開口部から上記フロアトンネル部の上側に露呈した上記台座部又は上記コントロールケースの後側端部に取り付けられ、該フロアトンネル部の上面に固定された取付部材を更に備え、上記開口部の車両前後方向の長さは、上記台座部の車両前後方向の長さよりも長くかつ該台座部と該台座部に取り付けられた取付部材とのトータルの車両前後方向の長さよりも短いものとする。
【0015】
この構成により、フロアトンネル部の開口部の車両前後方向の長さが、台座部と取付部材とのトータルの車両前後方向の長さよりも短くても、台座部をフロアトンネル部の開口部から該フロアトンネル部の上側に露呈させた後に、台座部又はコントロールケースの後側端部に取付部材を取り付けるようにすれば、問題はない。したがって、変速操作装置の組立方法の発明と同様に、車室内空間を出来る限り大きくすることができるとともに、フロアトンネル部の強度及び剛性の低下を抑制することができる。
【0016】
上記変速操作装置において、上記取付部材は、ボルト部材であり、上記ボルト部材は、上記台座部又は上記コントロールケースの後側端部にねじ込まれて取り付けられている、ことが好ましい。
【0017】
これにより、取付部材(ボルト部材)を台座部又はコントロールケースの後側端部に容易に取り付けることができる。
【0018】
上記のように上記取付部材がボルト部材である場合において、上記ボルト部材は、ブラケット及び締結部材を介して上記フロアトンネル部の上面に締結固定されている、ことが好ましい。
【0019】
このことで、ボルト部材を車体のフロアトンネル部の上面に容易にかつ確実に固定することができる。
【0020】
上記変速操作装置の一実施形態では、上記車両は、四輪駆動車であり、上記手動変速機の後側に、該手動変速機の出力トルクを、前輪と後輪とに分配するためのトランスファ装置が設けられており、上記チェンジアームの台座部は、上記トランスファ装置の上側に位置している。
【0021】
すなわち、台座部がトランスファ装置の上側に位置していても、トランスファ装置と車体のフロアトンネル部との間に、台座部をフロアトンネル部の下面に固定するための部材を設ける必要がないので、フロアトンネル部全体を車室側に大きく突出させる必要がなく、車室内空間を出来る限り大きくすることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の変速操作装置の組立方法及び変速操作装置によると、車室内空間を出来る限り大きくすることができるとともに、車体のフロアトンネル部の開口部の開口面積が大きくなるのを抑制して、フロアトンネル部の強度及び剛性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る変速操作装置を、車両のフロアパネルのフロアトンネル部の下側に組み付けられた駆動アセンブリと共に示す側面図(フロアトンネル部の断面図)である。
【
図3】チェンジアームの台座部の周囲に設けられたインシュレータを示す斜視図である。
【
図4】駆動アセンブリをフロアトンネル部の下側に組み付ける際に、手動変速機の変速機ケースの後側ケースに連結されたチェンジアームの台座部及び該台座部の上面に固定されたコントロールケースを、フロアトンネル部の開口部からフロアトンネル部の上側に露呈させかつ治具の上面に乗せた状態を示す
図1相当図である。
【
図5】インシュレータを、上記治具の上面に乗せられた台座部の周囲に嵌めた状態を示す
図1相当図である。
【
図6】上記治具の上面に乗せられた台座部の後側端部における突出部の先端面に開口するネジ穴に、予めブラケットの筒状部に挿通したボルト部材をねじ込んだ状態を示す
図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る変速操作装置1を、車両のフロアパネル2(車体)のフロアトンネル部2aの下側(トンネル空間)に組み付けられた駆動アセンブリ10と共に示す。本実施形態では、上記車両は、FR車をベースとする四輪駆動車である。フロアトンネル部2aは、フロアパネル2の車幅方向中央部において上側(車室側)に突出するように形成されたものである。ここでは、駆動アセンブリ10は、手動変速機11、クラッチハウジング12、トランスファ装置13、リヤプロペラシャフト14,図示を省略するフロントプロペラシャフト等を含む。フロアパネル2の車両前側の端部は、車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネル3に接続される。尚、以下の説明では、上記車両の前、後、左、右、上及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上及び下という。
【0026】
手動変速機11は、縦置き式であって、上記車両のエンジンルームに配置された不図示のエンジンの後側に配置されている。手動変速機11の入力軸は、上記車両の乗員の踏み込み操作及び踏み戻し操作により切断及び接続されるクラッチ(図示省略)を介して、エンジンの出力軸(クランク軸)と連結される。上記クラッチは、エンジンと手動変速機11との間に介在されたクラッチハウジング12内に配置されている。
【0027】
手動変速機11の後側に、手動変速機11の出力トルクを、前輪と後輪とに分配するためのトランスファ装置13が設けられている。トランスファ装置13は、手動変速機11の出力トルクを前輪に出力するための前輪側出力軸(図示省略)と、後輪に出力するための後輪側出力軸13aとを有している。前輪側出力軸は、トランスファ装置13から手動変速機11の側方を通って前側に延びる上記フロントプロペラシャフトの後端部と連結される。後輪側出力軸13aは、トランスファ装置13の後側に配置されたリヤプロペラシャフト14の前端部と連結される。
【0028】
手動変速機11は、変速機ケース21と、エンジンからの動力をトランスファ装置13に伝達する動力伝達機構(図示省略)と、手動変速機11の変速操作を行うための変速操作装置1とを有している。上記動力伝達機構、及び変速操作装置1の一部は、変速機ケース21内に収容されている。本実施形態では、変速機ケース21は、前側ケース21aと後側ケース21bとに前後に2分割されている。
【0029】
変速操作装置1は、チェンジレバー32と、変速段に応じて動力伝達状態とされる複数のギヤ列のうちの1つを動力伝達状態にする複数の同期装置(図示省略)と、該複数の同期装置のうちの1つを作動させるためのコントロールロッド22(
図2参照)と、チェンジレバーとコントロールロッドとを連結するチェンジロッド23とを含む変速操作機構と、後述のコントロールケース33(延いてはチェンジレバー32)を支持するための支持装置31とを含む。
【0030】
コントロールロッド22は、前側ケース21a内に前後方向に延びるように配置されており、コントロールロッド22の後側部分が、前側ケース21aの後側端面の上端部から後側に突出している(
図2参照)。このコントロールロッド22の後側端部が、筒状連結部材24を介して、後側ケース21bの上側で前後方向に延びるチェンジロッド23の前側端部と連結されている。
【0031】
変速操作装置1の支持装置31は、チェンジレバー32を揺動可能に支持するコントロールケース33を備える。チェンジレバー32は、上下方向に延びるチェンジレバー本体32aを有する。チェンジレバー本体の上端部にチェンジノブ32bが取り付けられている。チェンジレバー本体32aの長手方向(上下方向)の中間部に略球状のピボット部32cが設けられている。コントロールケース33内には、このピボット部32cを収容しかつ回転自在に支持する支持部(図示省略)が設けられている。こうしてチェンジレバー32は、ピボット部32cを介してコントロールケース33に揺動自在に支持されることになる。チェンジレバー32は、この揺動により、予め決められたシフトパターンに沿って操作(シフト操作及びセレクト操作)が可能に構成されている。
【0032】
チェンジレバー本体32aの下端部は、チェンジロッド23の後側端部と連結されている。この連結によって、チェンジレバー32の操作がチェンジロッド23を介してコントロールロッド22に伝達される。すなわち、コントロールロッド22は、チェンジレバー32のシフト操作に連動してコントロールロッド22の軸方向(前後方向)に移動しかつセレクト操作に連動してコントロールロッド22の軸心回りに回動するように構成されている。
【0033】
図示は省略するが、チェンジレバー32のセレクト操作によるコントロールロッド22の軸心回りの回動によって、コントロールロッド22に設けられたフィンガ部が、複数のシフトエンドのいずれか1つと選択的に係合する。そして、チェンジレバー32のシフト操作によるコントロールロッド22の軸方向の移動により、上記フィンガ部と係合したシフトエンド部材が、コントロールロッド22と共にコントロールロッド22の軸方向に移動することで、そのシフトエンド部材によりシフトフォーク部材を介して作動する同期装置が作動して所望の変速段が達成される。
【0034】
変速操作装置1の支持装置31は、コントロールケース33を手動変速機11とフロアトンネル部2aとに対して支持しかつ前後方向に延びるチェンジアーム35を更に備える。このチェンジアーム35の前側端部が、変速機ケース21の後側ケース21bの上部における前側端の近傍に連結されている。本実施形態では、チェンジアーム35の前側端部を左右両側から挟むようにボルト37により後側ケース21bの上部に固定された2つの支持部材36に対して、チェンジアーム35の前側端部が回動自在に連結されている。すなわち、2つの支持部材36には、チェンジアーム35の側に突出した不図示のピン部材の回りに回転可能にローラ36aがそれぞれ設けられており、これらローラ36aが、チェンジアーム35の前側端部の左右両側側面に設けられた嵌合穴内にそれぞれ嵌合している。
【0035】
変速機ケース21においてチェンジアーム35の前側端部が連結される前後方向の位置は、チェンジレバー32が設けられる前後方向の位置よりも前側であればどこでもよい。特に、変速機ケース21の前後方向中央よりも前側の位置に、チェンジアーム35の前側端部が連結されることが好ましい。本実施形態のように変速機ケース21が前後に2分割されている場合、チェンジアーム35の前側端部は、前側ケース21aに連結されてもよく、後側ケース21bに連結されてもよい。
【0036】
チェンジアーム35は、フロアトンネル部2aの下側でかつ変速機ケース21(後側ケース21b)の上側において、後側ケース21bに連結された前側端部から後側に延びている。チェンジアーム35の後側端部には、コントロールケース33がボルト34により上面に固定される台座部35aが設けられている。台座部35aは、上から見て、コントロールケース33と略同じ形状(前後方向に長い略矩形状)をなしている。台座部35aは、トランスファ装置13の上側に位置している。チェンジアーム35の台座部35a及びコントロールケース33は、フロアトンネル部2aの最上部に設けられた開口部2bから該フロアトンネル部2aの上側(車室側)に露呈している。開口部2bも、上から見て、前後方向に長い略矩形状をなしている。
【0037】
開口部2bからフロアトンネル部2aの上側に露呈した台座部35aの周囲には、
図3に示すように、インシュレータ40が設けられている。尚、
図1では、インシュレータ40の記載を省略しており、
図2では、インシュレータ40の、略矩形状をなす外形を二点鎖線で示す。
【0038】
インシュレータ40は、開口部2bを覆うように、4つの角部において、それぞれ締結部材41によってフロアトンネル部2aの上面に締結固定されている。各締結部材41は、フロアトンネル部2aに上向きに固定されたスタッドボルト41aと、該スタッドボルト41aに螺合されるナット41bとからなる。インシュレータ40は、ゴム部材で構成されており、その一部(特にスタッドボルト41aが挿通される角部及びその近傍)に金属部材が内包されている。
【0039】
開口部2bからフロアトンネル部2aの上側に露呈した台座部35aの後側端部には、僅かに後側に突出した突出部35b(
図3参照)が形成され、この突出部35bの先端面に、前後方向に延びるネジ穴35cが開口している。尚、インシュレータ40における突出部35bに対応する部分には、突出部35bが貫通する貫通孔40aが形成されており、これにより、突出部35bの先端面(及びネジ穴35c)は、インシュレータ40により覆われてはいない。
【0040】
変速操作装置1の支持装置31は、ネジ穴35cにねじ込まれて前後方向に延びる、取付部材としてのボルト部材45を更に備える。ボルト部材45は、台座部35aの後側端部にねじ込まれて取り付けられていることになる。
【0041】
ボルト部材45は、フロアトンネル部2aの上面(詳細には、フロアトンネル部2aの最上部における開口部2bの後側部分の上面)に固定されている。具体的に、本実施形態では、ボルト部材45は、ブラケット46及び2つの締結部材47を介してフロアトンネル部2aの上面に締結固定されている。本実施形態では、各締結部材47は、フロアトンネル部2aに上向きに固定されたスタッドボルト47aと、該スタッドボルト47aに螺合されるナット47bとからなる。
【0042】
ブラケット46は、中心をボルト部材45が貫通する断面円形の筒状部46aと、筒状部46aの外周面に溶接固定された板状部46bとで構成されている。ボルト部材45が貫通した筒状部46aと該ボルト部材45との間には、ゴムブッシュ(図示省略)が介在されている。
【0043】
板状部46bは、車幅方向に延びていて、その車幅方向の中央部が筒状部46aの外周面に沿うように上側に円弧状に曲げられている。板状部46bの車幅方向の両端部が、筒状部46aに対して車幅方向の両側にそれぞれ位置して、フロアトンネル部2aの上面に締結固定されている。尚、ボルト部材45、ブラケット46及び締結部材47の全体は、不図示のカバー部材によって覆われる。
【0044】
上記のように、チェンジアーム35の前側端部が手動変速機11における変速機ケース21の後側ケース21bに連結され、台座部35aの後側端部にねじ込まれたボルト部材45がフロアトンネル部2aの上面に締結固定されていることで、チェンジアーム35は、台座部35aの上面に固定されたコントロールケース33を、手動変速機11及びフロアトンネル部2aに対して支持することになる。
【0045】
図2に示すように、開口部2bの車幅方向の長さ(開口部2bの幅)W1は、台座部35aの車幅方向の長さ(台座部35aの幅)W2よりも長い。また、開口部2bの前後方向の長さL1は、台座部35a(突出部35bを含む)の前後方向の長さL2よりも長くかつ台座部35aと台座部35aに取り付けられたボルト部材45とのトータルの前後方向の長さL3よりも短くされている。
【0046】
ここで、手動変速機11は、予めクラッチハウジング12、トランスファ装置13、リヤプロペラシャフト14、フロントプロペラシャフト等と共に駆動アセンブリ10として組み立てられた状態で、フロアトンネル部2aの下側に組み付けられる。その際、手動変速機11に連結されたチェンジアーム35の台座部35aを、フロアトンネル部2aの開口部2bからフロアトンネル部2aの上側に露呈させる。このとき、長さL1が長さL3よりも短いことから、台座部35aにボルト部材45が取り付けられていたのでは、台座部35aが開口部2bを下側から上側に通り抜けることはできない。
【0047】
台座部35aが開口部2bを通り抜けできるように、長さL1を長さL3よりも長くした(開口部2bの開口面積を大きくした)場合には、フロアパネル2のフロアトンネル部2aの強度及び剛性が低下するという問題がある。そこで、本実施形態では、後に詳細に説明するように、台座部35aをフロアトンネル部2aの上側に露呈させた後に、台座部35aにボルト部材45を取り付けるようにする。
【0048】
以下、変速操作装置1の支持装置31の組立方法について説明する。
【0049】
最初に、駆動アセンブリ10における手動変速機11の変速機ケース21の後側ケース21bに、チェンジアーム35の前側端部を取り付ける。このチェンジアーム35の台座部35aの上面には、予め、チェンジレバー32のチェンジレバー本体32aを支持したコントロールケース33をボルト34により固定しておく。また、チェンジロッド23によって、コントロールロッド22(詳細には、筒状連結部材24)とチェンジレバー本体32aの下端部とを連結しておく。
【0050】
本実施形態では、台座部35a及びコントロールケース33を開口部2bからフロアトンネル部2aの上側に露呈させる前においては、チェンジノブ32bがチェンジレバー本体32aに取り付けられていない。但し、チェンジレバー本体32aへのチェンジノブ32bの取り付けは、台座部35aの上面にコントロールケース33を固定した後であれば、いつでもよく、上記露呈前に行ってもよい。
【0051】
また、台座部35aに対するコントロールケース33の固定は、台座部35aを開口部2bからフロアトンネル部2aの上側に露呈させた後であってもよい。この場合、チェンジロッド23によりコントロールロッド22と連結されたチェンジレバー本体32aは、台座部35aにより仮支持するようにする。そして、台座部35aの上面にコントロールケース33を固定した後に、チェンジレバー本体32aにチェンジノブ32bを取り付ける。
【0052】
続いて、
図4に示すように、手動変速機11を含む駆動アセンブリ10をフロアトンネル部2aの下側に組み付ける際に、手動変速機11における変速機ケース21の後側ケース21bに連結されたチェンジアーム35の台座部35a及び台座部35aの上面に固定されたコントロールケース33(チェンジレバー32を含む)を、開口部2bからフロアトンネル部2aの上側に露呈させる。このとき、チェンジアーム35の前側端部が後側ケース21bに回動自在に連結されているので、台座部35a及びコントロールケース33を持ち上げてチェンジアーム35をその前側端部(ローラ36a)を中心に回動させることで、台座部35a及びコントロールケース33をフロアトンネル部2aの上側に露呈させるとともに、台座部35a及びコントロールケース33が開口部2bを通ってフロアトンネル部2aの下側に落下しないように、開口部2bの後側部分を覆う治具51(
図4~
図6では、簡略化して記載している)をフロアトンネル部2aの上面に設置して、この治具51の上面に台座部35aを乗せる。
【0053】
次いで、
図5に示すように、インシュレータ40を、コントロールケース33の上側から、治具51の上面に乗せられた台座部35aの周囲に嵌める。
【0054】
続いて、
図6に示すように、治具51の上面に乗せられた台座部35aの後側端部における突出部35bの先端面に開口するネジ穴35cに、予めブラケット46の筒状部46aに挿通したボルト部材45をねじ込む。このようにボルト部材45を台座部35aの後側端部(ネジ穴35c)にねじ込んで取り付けるので、その作業は容易であり、台座部35aをフロアトンネル部2aの上側に露呈させた後に、台座部35aにボルト部材45を取り付けるようにしても、組立作業の負担を軽減することができる。
【0055】
次に、治具51をフロアトンネル部2aの上面から取り外して、チェンジアーム35をその前側端部(ローラ36a)を中心にして、
図6で時計回りに回動させながら、台座部35aの後側端部に取り付けられたボルト部材45を、フロアトンネル部2aの上面に固定する。すなわち、ブラケット46の板状部46bに設けられた2つの挿通孔に、2つのスタッドボルト47aをそれぞれ挿通して、各スタッドボルト47aにナット47bを螺合して締め付ける。これにより、台座部35a(つまりコントロールケース33)が手動変速機11及びフロアトンネル部2aに対して支持されることになる。
【0056】
また、インシュレータ40の4つの角部にそれぞれ設けられた4つの挿通孔に、4つのスタッドボルト41aをそれぞれ挿通して、各スタッドボルト41aにナット41bを螺合して締め付ける。これにより、インシュレータ40がフロアトンネル部2aの上面に固定される。
【0057】
次いで、チェンジレバー本体32aの上端部にチェンジノブ32bを取り付ける。こうして変速操作装置1の支持装置31の組み立てが完成する(
図1参照)。
【0058】
したがって、本実施形態では、チェンジアーム35の台座部35a(及びコントロールケース33)を、フロアパネル2のフロアトンネル部2aの開口部2bからフロアトンネル部2aの上側に露呈させた後に、台座部35aの後側端部にボルト部材45を取り付け、その後に、該ボルト部材45を、ブラケット46及び締結部材47を介してフロアトンネル部2aの上面に締結固定するようにしたので、開口部2bの前後方向の長さL1が、台座部35aと台座部35aに取り付けられたボルト部材45とのトータルの前後方向の長さL3よりも短くても、台座部35aが開口部2bを通り抜けることができて、開口部2bの開口面積を大きくする必要はない。また、ボルト部材45がフロアトンネル部2aの上面に固定されるので、台座部35aをフロアトンネル部2aの下面に固定するための部材を介して台座部35aがフロアトンネル部2aの下面に固定される場合とは異なり、フロアトンネル部2a全体を車室側に大きく突出させる必要もない。
【0059】
特に本実施形態では、台座部35aトランスファ装置13の上側に位置しているため、トランスファ装置13とフロアトンネル部2aとの間に、台座部35aをフロアトンネル部2aの下面に固定するための部材を設けたのでは、フロアトンネル部2a全体が車室側に大きく突出する可能性がある。しかし、本実施形態では、台座部35aトランスファ装置13の上側に位置していても、そのような部材を設ける必要がないので、フロアトンネル部2a全体を車室側に大きく突出させる必要がなく、車室内空間を出来る限り大きくすることができる。
【0060】
よって、車室内空間を出来る限り大きくすることができるとともに、フロアパネル2のフロアトンネル部2aの強度及び剛性の低下を抑制することができる。
【0061】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0062】
例えば、上記実施形態では、台座部35aの後側端部にボルト部材45をねじ込んで取り付けたが、これに代えて、コントロールケース33の後側端部にボルト部材45をねじ込んで取り付けるようにしてもよい。また、台座部35a又はコントロールケース33の後側端部に取り付ける取付部材としては、ボルト部材45には限られず、台座部35a又はコントロールケース33に容易に取り付けることができれば、どのような部材であってもよい。
【0063】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、車両に設けられる手動変速機の変速操作を行うための変速操作装置の組立方法及び変速操作装置に有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 変速操作装置
2 フロアパネル(車体)
2a フロアトンネル部
2b 開口部
11 手動変速機
13 トランスファ装置
21 変速機ケース
31 支持装置
32 チェンジレバー
33 コントロールケース
35 チェンジアーム
35a 台座部
45 ボルト部材(取付部材)
46 ブラケット
47 締結部材