(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20221115BHJP
F02M 26/70 20160101ALI20221115BHJP
【FI】
B29C45/14
F02M26/70 311
(21)【出願番号】P 2019194242
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守谷 勇一朗
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-180423(JP,A)
【文献】実開平04-022210(JP,U)
【文献】特開平09-244446(JP,A)
【文献】特開2000-170926(JP,A)
【文献】特開2000-164411(JP,A)
【文献】特開2006-002623(JP,A)
【文献】特開2005-307909(JP,A)
【文献】特開2013-103470(JP,A)
【文献】特表2005-537432(JP,A)
【文献】国際公開第01/024986(WO,A1)
【文献】国際公開第94/021440(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/65 - 26/74
F16K 1/00 - 31/00
B29C 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形体であって、
筒状のシャフト(24)と、
樹脂により構成され、成形加工により前記シャフトと一体に形成された樹脂部材(21、22)と、
前記シャフトが圧入される穴部(261)が形成された板状のプレート(26)と、を備え、
前記シャフトは、該シャフトの軸線(CL)方向と直交する断面が、第1の曲率半径である2つの第1領域(223)と、前記第1の曲率半径よりも大きな第2の曲率半径である第2領域(222)と、を有し、
前記第2領域は、2つの前記第1領域の間に形成され、
前記第2領域の径方向外側の前記樹脂部材に前記成形加工により発生するウェルド部(25)が形成されて
おり、
前記シャフトは、前記プレートが圧入される方向に進むにつれて拡径する圧入ガイド(244)を有し、
前記プレートおよび前記圧入ガイドは、前記樹脂部材の内部に埋設されている、樹脂成形体。
【請求項2】
前記第1領域は、面取りされた形状となっている請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項3】
前記第2領域には、前記シャフトの軸線側に凹む凹部(222a)が形成されている請求項1または2に記載の樹脂成形体。
【請求項4】
前記シャフトは、該シャフトの前記軸線方向と直交する断面が、第3の曲率半径である2つの第3領域(225)と、前記第3の曲率半径よりも大きな第4の曲率半径である第4領域(224)と、を有し、
前記第4領域は、2つの前記第3領域の間に形成され、
前記第2領域および前記第4領域には、前記プレートを受け止め支持するストッパ(245)が形成されている請求項
1ないし3のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、EGRガス等の流体が流れる流路を開閉する弁装置として特許文献1に記載されたものがある。この装置は、回転する弁部材と、弁部材を収容する収容空間とともに流体が流れる弁開口を形成する弁ハウジングと、流体が流れる流路を形成する弁部材と、を備え、弁部材が回転することにより弁部材が筒体に接触して弁開口を開閉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された装置は、樹脂製の弁部材に金属製のシャフトをインサート成形することで強度を確保している。このような樹脂成形体においては、インサート成形時に、シャフトに対して樹脂を注入するゲートとは反対側の部位にシャフトを回り込んだ樹脂が合流することによりウェルドと呼ばれる部位が形成される。このウェルドが生じた部位は強度が弱くなるため冷熱割れが生じる可能性が高い。そして、この冷熱割れが発生すると、弁部材の位置がずれてEGRガス等の流体の流量が狙いの流量からずれてしまい、例えば、エンジンが失火してしまうといった問題がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑みたもので、樹脂成形体の冷熱割れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、樹脂成形体であって、筒状のシャフト(24)と、樹脂により構成され、成形加工によりシャフトと一体に形成された樹脂部材(21、22)と、シャフトが圧入される穴部(261)が形成された板状のプレート(26)と、を備えている。また、シャフトは、該シャフトの軸線(CL)方向と直交する断面が、第1の曲率半径である2つの第1領域(223)と、第1の曲率半径よりも大きな第2の曲率半径である第2領域(222)と、を有している。そして、第2領域は、2つの第1領域の間に形成され、第2領域の径方向外側の樹脂部材に成形加工により発生するウェルド部(25)が形成されている。シャフトは、プレートが圧入される方向に進むにつれて拡径する圧入ガイド(244)を有している。プレートおよび圧入ガイドは、樹脂部材の内部に埋設されている。
【0007】
このような構成によれば、2つの第1領域の間に形成された第2領域の径方向外側の樹脂部材にウェルド部が形成されている。これにより、2つの第1領域の径方向外側の樹脂部材に応力が集中するため、ウェルド部への応力が緩和され、樹脂成形体の冷熱割れが抑制される。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るバルブ装置を適用するエンジンシステムの模式図である。
【
図3】
図2中のIII-III断面図であって、弁部材が弁座流路を開放しているときの断面図である。
【
図4】
図2中のIII-III断面図であって、弁部材が弁座流路を閉塞しているときの断面図である。
【
図5】第1実施形態のバルブ装置の弁部材の外観図である。
【
図6】プレートが圧入されたシャフトを表した図である。
【
図9】シャフトの軸線方向の一端側の端部の形状について説明するための図である。
【
図10】第2実施形態のバルブ装置を表した図であって、
図5中のX矢視図である。
【
図11】第3実施形態のバルブ装置を表した図であって、
図5中のX矢視図である。
【
図12】第4実施形態のバルブ装置を表した図であって、
図5中のX矢視図である。
【
図13】第4実施形態のバルブ装置のシャフトの外観図である。
【
図14】第4実施形態のバルブ装置のプレートが圧入されたシャフトを表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る樹脂成形体について
図1~
図9を用いて説明する。本樹脂成形体は、
図1に示すエンジンシステム90の一部を構成するバルブ装置1を構成している。具体的には、
図2に示すバルブ装置1の弁部材20を構成している。
[エンジンシステムの構成]
最初に、エンジンシステム90について
図1を用いて説明する。エンジンシステム90は、エンジン91、吸気系92、排気系93、過給器94、排気還流系95などを備えている。エンジン91は、シリンダ911内にピストン912を収容して燃焼室910を形成する。
【0012】
吸気系92は、外気からエンジン91に空気を供給する。吸気系92は、吸気管921、吸気マニホールド922、エアクリーナ923、インタークーラ924、およびスロットル925などを有する。以下、エンジン91に供給される空気を吸入空気と呼ぶ。
【0013】
吸気管921は、燃焼室910に吸入空気を導くための配管であり、吸気通路920を形成する。吸気管921の一端は、外気に開放され、他端は、吸気マニホールド922に接続されている。吸気マニホールド922は、吸気管921の他端とエンジン91とに接続されている。吸気マニホールド922は、シリンダ911の数と同数の通路に分岐する構造を有する。エアクリーナ923は、大気から取り込んだ空気から異物を除去する。インタークーラ924は、過給器94のコンプレッサ941により圧縮されて昇温した吸入空気を冷却する。スロットル925は、エンジン91の吸気量を調整する。スロットル925は、ECU96と電気的に接続されている。
【0014】
排気系93は、エンジン91が排出する排気を外気へ放出する。排気系93は、排気管931、排気マニホールド932、および排気浄化ユニット933を有する。排気管931は、エンジン91の排気を大気に導くための配管であり、排気通路930を形成する。排気マニホールド932は、排気管931の一端とエンジン91とに接続している。排気マニホールド932は、シリンダ911の数と同数の通路が合流する構造を有する。排気浄化ユニット933は、排気管931に設けられている。排気浄化ユニット933は、排気に含まれる炭化水素を分解したり、微粒子状物質を捕捉したりする。
【0015】
過給器94は、排気のエネルギーを利用して吸気管921内で吸入空気を圧縮し、燃焼室910に加圧した吸入空気を過給する。過給器94は、コンプレッサ941、タービン942、およびシャフト943を有する。コンプレッサ941は、吸気通路920においてエアクリーナ923とインタークーラ924との間に配置されている。コンプレッサ941は、吸入空気を圧縮可能である。タービン942は、排気通路930においてエンジン91と排気浄化ユニット933との間に配置されている。タービン942は、排気のエネルギーにより回転駆動される。シャフト943は、コンプレッサ941とタービン942とを連結している。コンプレッサ941とタービン942とは、シャフト943により同期して回転する。
【0016】
排気還流系95は、タービン942を通過した後の排気を吸気通路920に還流し、エアクリーナ923を経由した空気とともに燃焼室910に供給する。排気還流系95は、EGR管951、EGRクーラ952、およびバルブ装置1を備える。
【0017】
EGR管951は、排気管931の排気浄化ユニット933の下流側と、吸気管921のコンプレッサ941の上流側とを接続する。EGR管951は、タービン942を通過した後の排気をコンプレッサ941による圧縮前の空気に還流するEGR通路950を形成する。EGRクーラ952は、EGR管951に設けられている。EGRクーラ952は、EGR通路950を通る気体を冷却する。
【0018】
バルブ装置1は、EGR管951と吸気管921とが接続されている箇所に設けられている。バルブ装置1は、EGR通路950を通じて吸気通路920に流入する排気の流量を増減する。バルブ装置1は、ECU96と電気的に接続されている。
【0019】
ECU96は、演算部としてのCPU、ならびに、記憶部としてのRAM、ROM等を有するマイクロコンピュータ等から構成されている。ECU96は、エンジンシステム90を搭載する車両や装置の駆動状況、当該車両や装置を操作する操作者の操作内容に応じて、スロットル925やバルブ装置1の駆動を制御する。
[バルブ装置の構成]
次に、バルブ装置1の構成について
図2~
図9を用いて説明する。バルブ装置1は、後述する弁部材20が回転駆動することによって流体の通路の開度が増減可能なロータリー式の弁である。バルブ装置1は、EGR通路950の吸気通路920に対する開度を増減可能である。
【0020】
図2、
図3、
図4に示すように、バルブ装置1は、ハウジング10、弁部材20、弁座部材30を備える。
図4では、バルブ装置1の
図3と同じ断面が示されている。
図4の弁部材20の位置は、
図3の弁部材20の位置と異なる。
【0021】
ハウジング10は、吸気通路920とEGR通路950との合流部を形成する。ハウジング10は、弁部材20を収容可能に形成されている。ハウジング10は、金属材料のみで構成されている。金属材料としては、アルミニウム合金が挙げられる。なお、ハウジング10は、主として金属材料で構成されていればよい。すなわち、ハウジング10は、金属材料と他の材料とによって構成されていてもよい。
【0022】
図3、
図4に示すように、ハウジング10は、弁室11を形成する弁室内壁101と、エアクリーナ923からの吸入空気が流れる上流側流路12を形成する第一流路内壁102と、を有する。さらに、インタークーラ924に吸入空気を流す下流側流路13を形成する第二流路内壁103と、収容空間14を形成する収容空間内壁104とを有する。内壁は、内側の壁面である。
【0023】
弁室11は、弁部材20を回転可能に収容するように形成されている。上流側流路12は、弁室11に連通するとともにエアクリーナ923と連通するよう形成されている。下流側流路13は、上流側流路12とは別に弁室11に連通するとともにインタークーラ924に連通するよう形成されている。下流側流路13は、上流側流路12と同軸上に形成されている。収容空間14は、上流側流路12および下流側流路13とは別に弁室11に連通するよう形成されている。収容空間14は、弁座部材30を収容可能に形成されている。収容空間14は、EGR通路950に連通する。
【0024】
弁部材20は、弁室11に収容されている。弁部材20は、弁座部材30の弁座流路31を開閉する。弁部材20は、ハウジング10に対して相対回転可能に設けられている。弁部材20は、図示しない電動モータによって駆動される。ここで、弁部材20の回転方向について、便宜的に、
図3の状態から
図4の状態に回転する方向を「EGR通路遮断方向」という。
図4の状態から
図3の状態に回転する方向を「EGR通路開放方向」という。
【0025】
弁座部材30は、ハウジング10の収容空間14が形成された部位に配置されている。弁座部材30は、ハウジング10とは別体の部材である。弁座部材30は、弁部材20によって開閉される弁座流路31を形成する部材である。収容空間14がEGR通路950に連通することから、弁座流路31は、EGR通路950に連通する。
【0026】
図5に示すように、弁部材20は、弁部材本体部21と、アーム22と、シャフト24とを有する。なお、弁部材20は、樹脂成型体に相当し、弁部材本体部21およびアーム22は樹脂部材に相当する。
【0027】
アーム22は、扇状を成し、シャフト24と弁部材本体部21を連結している。
【0028】
弁部材本体部21は、湾曲した板状を成し、アーム22のうちシャフト24とは反対側の縁部からシャフト24の軸線CL方向に延びるよう形成されている。弁部材本体部21は、シャフト24の軸線CLの垂直な断面が略円弧状に形成されている。
【0029】
弁部材本体部21およびアーム22は、インサート成形によりシャフト24と一体に形成されている。そのため、弁部材本体部21、アーム22およびシャフト24は一体で回転駆動する。
【0030】
なお、弁部材本体部21およびアーム22は、合成樹脂材料により構成され一体化されている。合成樹脂材料としては、高い耐熱性を有する材料、例えば、ポリフェニレンスルフィドが挙げられる。なお、弁部材本体部21およびアーム22は、主として合成樹脂材料で構成されていればよい。すなわち、弁部材本体部21、アーム22は、合成樹脂材料と他の材料とによって構成されていてもよい。
【0031】
シャフト24は、弁部材20の回転軸である。シャフト24は、ステンレス等の金属材料で構成されている略棒状の部材である。シャフト24は、アーム22から弁部材本体部21に対して離れる方向に延びている。シャフト24は、ハウジング10に設けられた図示しない軸受に、回転可能に支持されている。
【0032】
図6に示すように、弁部材20は、アーム22にインサートされる部位に、シャフト24の軸線CLから径方向に延びる形状のプレート26を有している。プレート26は、板状を成している。また、プレート26には、シャフト24が圧入される穴部261が形成されている。
【0033】
プレート26は、シャフト24のうちアーム22にインサートされる部位に相対回転しないように固定されるとともに、アーム22にモールドされている。プレート26は、シャフト24とアーム22の結合強度を高めるための部材である。プレート26は、例えば、金属により形成されている。
【0034】
図7に示すように、シャフト24は、プレート26が圧入される部位に、圧入ガイド244と、ストッパ245と、を有している。
【0035】
プレート26は、シャフト24の軸線CL方向の一端側の端部241側からシャフト24に圧入される。
【0036】
圧入ガイド244は、プレート26が圧入される方向に進むにつれて拡径している。すなわち、圧入ガイド244は、シャフト24の軸線CL方向の他方側に進むにつれて拡径している。
【0037】
ストッパ245は、プレート26を受け止め支持するものであり、シャフト24の軸線CL方向と直交する面を有している。
【0038】
プレート26がシャフト24に圧入される際にプレート26により圧入ガイド244が圧縮されプレート26とシャフト24とが一体化する。また、プレート26は、ストッパ245のシャフト24の軸線CL方向と直交する面によって受け止め支持される。
【0039】
図7に示すように、シャフト24の軸線CL方向の一端側の端部241は、周方向の一部が円に対して径方向内側に凹むように形成されている。すなわち、シャフト24の端部241は、該端部241の周方向の一部が直線状に切り取られたいわゆるDカット形状とされている。
【0040】
具体的には、シャフト24は、該シャフト24の軸線CL方向と直交する断面が、曲率半径r1である領域221と、曲率半径r3である2つの領域223と、曲率半径r3よりも大きな曲率半径r2である領域222と、を有している。また、各曲率半径の大きさは、r2>r1>r3となっている。なお、領域223は第1領域に相当し、領域222は第2領域に相当する。
【0041】
なお、本実施形態では、曲率半径r2は無限大となっており、領域222は直線形状となっている。
【0042】
また、本実施形態の2つの領域223は、角張った角状を成しているが、曲率半径が非常に小さくなっているものとみなすことができる。
【0043】
本実施形態の弁部材20は、インサート成形時に、
図5中に示すゲートAから樹脂を注入する。この際、シャフト24に対してゲートA側とは反対側の部位にウェルド部25と呼ばれる脆弱部位が形成される。このウェルド部25は、シャフト24を回り込んだ樹脂同士が合流する際に形成される。
【0044】
本実施形態の弁部材20では、領域222の径方向外側の樹脂部材であるアーム22に、インサート成形により発生するウェルド部25が形成されている。すなわち、曲率半径の小さな2つの領域223の間に形成された領域222の径方向外側の樹脂部材を構成しているアーム22にウェルド部25が形成されている。
【0045】
これにより、曲率半径の小さな2つの領域223の径方向外側の樹脂部材に応力が集中するため、例えば、冷熱耐久試験により樹脂部材が収縮した際に、ウェルド部25への応力が緩和される。したがって、樹脂成形体の冷熱割れが抑制される。
【0046】
また、本実施形態の弁部材20は、シャフト24の一端に圧入される穴部261が形成された板状のプレート26を有している。また、シャフト24は、プレート26が圧入される方向に進むにつれて拡径する圧入ガイド244を有している。そして、プレート26および圧入ガイド244は、樹脂部材を構成しているアーム22の内部に埋設されている。
[バルブ装置の作動]
次に、バルブ装置1の作動について説明する。
図3、4に示すように、弁部材20は、回転によって弁部材本体部21の外壁面211が上流側流路12の弁室11側の開口120と収容空間14の弁室11側の開口140との間を往来する。
【0047】
具体的には、弁部材20がEGR通路開放方向に回転すると、
図3に示すように、弁部材20は、上流側流路12の開口120に位置し、弁座流路31を開放する。すなわち、弁部材20は、弁室11に対して収容空間14に連通するEGR通路950を最大限に開放しつつ、弁室11に対して上流側流路12を最小限に絞る。
【0048】
また、弁部材20がEGR通路遮断方向に回転すると、
図4に示すように、弁部材20は、収容空間14の開口140に位置し、弁座流路31を閉塞する。すなわち、弁部材20は、弁室11に対してEGR通路950を全閉しつつ、弁室11に対して上流側流路12を最大限に開放する。
【0049】
以上、説明したように、本実施形態の樹脂成形体は、筒状のシャフト24と、樹脂により構成され、成形加工によりシャフト24と一体に形成された樹脂部材と、を備えている。また、シャフト24は、該シャフト24の軸線CL方向と直交する断面が、第1の曲率半径である2つの第1領域223と、第1の曲率半径よりも大きな第2の曲率半径である第2領域222と、を有している。そして、第2領域222は、2つの第1領域223の間に形成され、第2領域222の径方向外側の樹脂部材に成形加工により発生するウェルド部25が形成されている。
【0050】
このような構成によれば、2つの第1領域223の間に形成された第2領域222の径方向外側の樹脂部材にウェルド部25が形成されている。これにより、2つの第1領域223の径方向外側の樹脂部材に応力が集中するため、ウェルド部25への応力が緩和され、 樹脂成形体の冷熱割れを抑制することができる。
【0051】
また、樹脂成形体は、シャフト24の一端に圧入される穴部261が形成された板状のプレート26を有している。また、シャフト24は、プレート26が圧入される方向に進むにつれて拡径する圧入ガイド244を有している。そして、プレート26および圧入ガイド244は、樹脂部材の内部に埋設されている。
【0052】
例えば、シャフト24の軸線CL方向の一端側の端部241の周縁に圧入ガイド244を設けた場合、圧入ガイド244を覆う樹脂部材の肉厚が薄くなり圧入ガイド244を覆っている部位の樹脂部材の強度が低下してしまう。しかし、本実施形態の樹脂成形体は、プレート26および圧入ガイド244が樹脂部材の内部に埋設されているので、樹脂部材の強度低下を防止することができる。
【0053】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る樹脂成形体について
図10を用いて説明する。上記第1実施形態の樹脂成形体に形成された2つの領域223は、角張った角状を成している。これに対し、本実施形態の樹脂成形体は、2つの領域223がそれぞれ面取りされた形状となっている。このように、2つの領域223が丸みを帯びるように形成することもできる。
【0054】
本実施形態では、上記第1実施形態と共通の構成から奏される同様の効果を上記第1実施形態と同様に得ることができる。
【0055】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る樹脂成形体について
図11を用いて説明する。本実施形態の樹脂成形体は、2つの領域223がそれぞれ面取りされた形状となっており、さらに、領域222に、シャフト24の軸線CL側に凹む凹部222aが形成されている。
【0056】
そして、凹部222aの径方向外側の樹脂部材にインサート成形により発生するウェルド部25が形成されている。
【0057】
このような構成によれば、領域222に形成された凹部222aにより互いのウェルド部25が離れる方向に引っ張られにくくなる。したがって、さらに、樹脂成形体の冷熱割れを抑制することができる。
【0058】
本実施形態では、上記第1実施形態と共通の構成から奏される同様の効果を上記第1実施形態と同様に得ることができる。
【0059】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る樹脂成形体について
図12を用いて説明する。上記第1実施形態の樹脂成形体は、2つの第1領域223と、第2領域222を有している。これに対し、本実施形態の樹脂成形体は、2つの第1領域223と、第2領域222に加え、2つの第3領域225と、第4領域224と、を有している。
【0060】
具体的には、シャフト24は、該シャフト24の軸線CL方向と直交する断面が、第3の曲率半径である2つの第3領域225と、第3の曲率半径よりも大きな第4の曲率半径である第4領域224と、を有している。また、第4領域224は、2つの第3領域225の間に形成され、第2領域222および第4領域224には、プレート26を受け止め支持するストッパ245が形成されている。
【0061】
このような構成によれば、第2領域222および第4領域224に、プレート26を受け止め支持するストッパ245が形成され、これらのストッパ245によりプレート26が受け止め支持される。したがって、シャフト24の軸線CL方向に対するプレート26の取り付け角度を安定化させることができる。
【0062】
本実施形態では、上記第1実施形態と共通の構成から奏される同様の効果を上記第1実施形態と同様に得ることができる。
【0063】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、本樹脂成形体についてバルブ装置1の弁部材20を例に説明したが、本樹脂成形体は、バルブ装置1の弁部材20に用いられるものに限定されるものではない。
【0064】
(2)上記各実施形態では、2つの第1領域223の曲率半径を曲率半径r3として説明したが、2つの第1領域223の曲率半径を異ならせてもよい。この場合、第2領域222の曲率半径r2を、2つの第1領域223の曲率半径の大きい方よりも更に大きくすることで、2つの第1領域223の径方向外側の樹脂部材に応力を集中させ、ウェルド部25への応力を緩和することができる。
【0065】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0066】
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、樹脂成形体であって、筒状のシャフトと、樹脂により構成され、成形加工によりシャフトと一体に形成された樹脂部材と、を備えている。また、シャフトは、該シャフトの軸線方向と直交する断面が、第1の曲率半径である2つの第1領域と、第1の曲率半径よりも大きな第2の曲率半径である第2領域と、を有している。そして、第2領域は、2つの第1領域の間に形成され、第2領域の径方向外側の樹脂部材に成形加工により発生するウェルド部が形成されている。
【0067】
また、第2の観点によれば、第1領域は、面取りされた形状となっている。このよに、第1領域は、面取りされた形状とすることができる。
【0068】
また、第3の観点によれば、第2領域には、シャフトの軸線側に凹む凹部が形成されている。
【0069】
したがって、凹部により互いのウェルド部が離れる方向に引っ張られにくくなる。したがって、さらに、樹脂成形体の冷熱割れを抑制することができる。
【0070】
また、第4の観点によれば、樹脂成形体は、シャフトが圧入される穴部が形成された板状のプレートを有している。また、シャフトは、プレートが圧入される方向に進むにつれて拡径する圧入ガイドを有している。そして、プレートおよび圧入ガイドは、樹脂部材の内部に埋設されている。
【0071】
例えば、シャフトの一端に圧入ガイドを設けた場合、圧入ガイドを覆う樹脂部材の肉厚が薄くなり圧入ガイドを覆っている部位の樹脂部材の強度が低下してしまう。しかし、プレートおよび圧入ガイドが樹脂部材の内部に埋設されているので、樹脂部材の強度低下を防止することができる。
【0072】
また、第5の観点によれば、シャフトは、該シャフトの軸線方向と直交する断面が、第3の曲率半径である2つの第3領域と、第3の曲率半径よりも大きな第4の曲率半径である第4領域と、を有している。また、第4領域は、2つの第3領域の間に形成され、第2領域および第4領域には、プレートを受け止め支持するストッパが形成されている。
【0073】
このような構成によれば、第2領域および第4領域に、プレートを受け止め支持するストッパが形成され、これらのストッパによりプレートが受け止め支持される。したがって、シャフトの軸線方向に対するプレートの取り付け角度を安定化させることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 バルブ装置
10 ハウジング
20 弁部材
21 弁部材本体部
22 アーム
24 シャフト
25 ウェルド部
26 プレート
223 第1領域
222 第2領域
225 第3領域
224 第4領域