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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】温冷刺激システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/00 20060101AFI20221115BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20221115BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
A61F7/00 310C
A47C7/74 B
A47C7/74 C
B60N2/56
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019219114
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2021087593
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】河内 泰司
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 勝
(72)【発明者】
【氏名】片岡 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松岡 孝
(72)【発明者】
【氏名】関 秀樹
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193057(JP,A)
【文献】特開2019-26247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/00
A47C 7/74
B60N 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温冷刺激システムであって、
対象者に対して温刺激と冷刺激とを供給する温冷刺激装置(20)と、
前記温刺激を供給する温刺激期間と前記冷刺激を供給する冷刺激期間との合計を一周期として、前記温刺激期間と前記冷刺激期間とが周期的に交互に繰り返されるように、前記温冷刺激装置の作動を制御する刺激制御部(S13、S24、S34)と、
前記一周期における前記温刺激期間と前記冷刺激期間との比率である温冷比率を決定する温冷比率決定部(S12、S23、S33)と、を備え、
前記刺激制御部は、前記温冷比率決定部が決定する前記温冷比率で、前記温刺激期間と前記冷刺激期間とが交互に繰り返されるように、前記温冷刺激装置を作動させ、
前記温冷比率決定部が決定する前記温冷比率には、互いに異なる第1比率と第2比率とが含まれ、
前記温冷比率決定部は、前記第1比率のときの前記一周期と、前記第2比率のときの前記一周期とが、実質的に同じ時間となるように、前記温冷比率を決定する、温冷刺激システム。
【請求項2】
前記温冷刺激システムは、直接的または間接的に、前記温冷比率に係る情報を入力する入力部(42)を備え、
前記温冷比率決定部(S12)は、前記入力部によって入力される前記情報に基づいて、前記温冷比率を決定する、請求項1に記載の温冷刺激システム。
【請求項3】
前記温冷刺激システムは、前記対象者の温冷感または温冷快適感を推定する推定部(S22)を備え、
前記温冷比率決定部(S23)は、前記推定部の推定結果に基づいて、前記温冷比率を決定する、請求項1に記載の温冷刺激システム。
【請求項4】
前記温冷比率決定部(S33)は、前記対象者が存在する空間の空気温度を調整する空調装置の設定温度と、前記対象者が存在する空間の実際の空気温度とに基づいて、前記温冷比率を決定する、請求項1に記載の温冷刺激システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温冷刺激システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、シートの着座者の背面側部位に対して温刺激と冷刺激とを交互に供給する温冷刺激システムが開示されている。以下では、温刺激と冷刺激とを交互に繰り返して供給することを、温冷刺激を供給するともいう。これによれば、着座者の背面側部位に対して温冷刺激を供給することで、着座者の血管の拡縮により、血流が促進される。これにより、着座者の疲労を軽減することができる。
【0003】
この温冷刺激システムでは、温刺激を供給する温刺激期間と、冷刺激を供給する冷刺激期間とを一周期として、温刺激期間と冷刺激期間とが周期的に交互に繰り返される。特許文献1には、温刺激期間と冷刺激期間との比率である温冷比率を調整することが開示されている。温冷比率を調整することで、着座者に与える温冷刺激の温冷感を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-193057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者の検討によると、温冷刺激の供給において、特定の温冷比率および特定の一周期とされた特定の設定に対して、温冷比率と一周期との両方を変更すると、変更前の設定と比較して、疲労軽減効果が大きく低下する場合があることが分かった。その一方で、上記の特定の設定に対して、一周期の時間を実質的に同じとして、温冷比率を変更した場合、変更前の設定と比較して、疲労軽減効果が低下しないか、疲労軽減効果が低下しても低下の割合が小さく、一定の疲労軽減効果が得られることが分かった。
【0006】
しかし、特許文献1には、温冷比率を変えることが開示されているが、一周期の時間の設定の仕方についてまでは、開示されていない。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、一定の疲労軽減効果を得つつ、温冷感を調整することができる温冷刺激システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明によれば、
温冷刺激システムは、
対象者に対して温刺激と冷刺激とを供給する温冷刺激装置(20)と、
温刺激を供給する温刺激期間と冷刺激を供給する冷刺激期間との合計を一周期として、温刺激期間と冷刺激期間とが周期的に交互に繰り返されるように、温冷刺激装置の作動を制御する刺激制御部(S13、S24、S34)と、
一周期における温刺激期間と冷刺激期間との比率である温冷比率を決定する温冷比率決定部(S12、S23、S33)と、を備え、
刺激制御部は、温冷比率決定部が決定する温冷比率で、温刺激期間と冷刺激期間とが交互に繰り返されるように、温冷刺激装置を作動させ、
温冷比率決定部が決定する温冷比率には、互いに異なる第1比率と第2比率とが含まれ、
温冷比率決定部は、第1比率のときの一周期と、第2比率のときの一周期とが、実質的に同じ時間となるように、温冷比率を決定する。
【0009】
これによれば、温冷比率を異ならせても、一周期の時間を実質的に同じとしているので、一定の疲労軽減効果が得られる。よって、一定の疲労軽減効果を得つつ、対象者に与える温冷感を調整することができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の温冷刺激システムの構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態の温冷刺激装置が設置されたシートの断面図である。
図3図2のシートの斜視図である。
図4】第1実施形態の温冷刺激装置の作動内容を示すタイムチャートである。
図5】温冷比率を設定するための複数の設定ボタンを示す図である。
図6】温冷比率の一例を示す図である。
図7】温冷比率の他の例を示す図である。
図8】温冷比率の他の例を示す図である。
図9】温冷比率の他の例を示す図である。
図10】温冷比率の他の例を示す図である。
図11図5に示す各設定ボタンによって設定される温冷比率の一例を示す図である。
図12】第1実施形態の制御装置が行う処理のフローチャートである。
図13】第3ボタンと第4ボタンとのそれぞれが押されたときの温冷刺激装置の作動内容を示すタイムチャートである。
図14】第2実施形態の温冷刺激システムの構成を示すブロック図である。
図15】第2実施形態の制御装置が行う処理のフローチャートである。
図16図15のステップS23で決定される温冷比率の一例を示す図である。
図17】第3実施形態の温冷刺激システムの構成を示すブロック図である。
図18】第3実施形態の制御装置が行う処理のフローチャートである。
図19図18のステップS33で決定される温冷比率の一例を示す図である。
図20】他の実施形態の温冷刺激装置が設置されたシートの断面図である。
図21】他の実施形態の温冷刺激装置が設置されたシートの断面図である。
図22】他の実施形態の温冷刺激装置が設置されたシートの断面図である。
図23】他の実施形態の温冷刺激装置が設置されたシートの断面図である。
図24】他の実施形態の温冷刺激装置が設置されたシートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
図1に示す本実施形態の温冷刺激システム10は、車両に搭載される。温冷刺激システム10は、温冷刺激装置20と、制御装置30と、作動スイッチ41と、設定スイッチ42とを備える。
【0014】
図2に示すように、温冷刺激装置20は、車両が備える運転席のシート101に設けられている。温冷刺激装置20は、シート101に着座する着座者の身体の背面側部位に対して、温刺激と冷刺激とを供給する。本実施形態では、着座者が、温冷刺激装置20が温刺激と冷刺激とを供給する対象者である。温刺激は、着座者の体温よりも高温の温熱による刺激である。冷刺激は、着座者の体温よりも低温の冷熱による刺激である。
【0015】
図2、3に示すように、シート101は、着座者の臀部および大腿部を支持する着座部102と、その着座者の背中を支持する背もたれ部103とを有する。背もたれ部103のうち着座者が接する側が前方側である。背もたれ部のうち着座者が接する側の反対側が後方側である。背もたれ部103は、弾性材で構成されたシートパッド104と、シートパッド104を覆う表皮材105とを有する。
【0016】
温冷刺激装置20は、送風機21、シートパッド104に設けられた空気通路22、シートパッド104の前方側部分に設けられた複数の孔部23、シートパッド104と表皮材105との間に設置されたヒータ24などを有している。送風機21およびヒータ24は、制御装置30の出力側に接続されている。なお、温冷刺激装置20が有する送風機21、空気通路22および複数の孔部23は、シートベンチレーションシステム(以下、SVSという)を構成している。
【0017】
温冷刺激装置20は、SVSを用いて着座者に冷刺激を供給することが可能である。具体的には、温冷刺激装置20が着座者に冷刺激を供給する場合、送風機21が作動する。これにより、図2の矢印C1に示すように、車室内の空気は、表皮材105を介して複数の孔部23から空気通路22に吸い込まれる。一般に、車両走行中の車室内の温度は、空調装置の作動により、または、車室外空気の温度の影響により、着座者の体温より低温である。そのため、背もたれ部103の前方側の表面の温度は、着座者の体温より低温に維持される。着座者が背もたれ部103の前方側の表面に触れていることで、着座者の身体の背面側部位に、冷刺激が供給される。なお、複数の孔部23から空気通路22に吸い込まれた空気は、図2の矢印C2に示すように、空気通路22および送風機21を経由し、背もたれ部103の後方側の下部に設けられた後方側孔部25から吹き出される。
【0018】
また、温冷刺激装置20は、ヒータ24を用いて着座者に温刺激を供給することが可能である。具体的には、温冷刺激装置20が着座者に温刺激を供給する場合、ヒータ24が作動する。これにより、ヒータ24が発熱し、その熱がシートパッド104および表皮材105に伝熱することで、背もたれ部103の前方側の表面の温度は、着座者の体温より高温に維持される。着座者が背もたれ部103の前方側の表面に触れていることで、着座者の身体の背面側部位に、温刺激が供給される。
【0019】
制御装置30は、温冷刺激装置20の作動を制御する。制御装置30は、図示しないインストルメントパネルの内側の空間に設けられている。制御装置30は、プロセッサ、メモリを含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。メモリは、非遷移的実体的記憶媒体で構成される。プロセッサが、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、制御装置30は、各種演算、処理を実現する。これにより、制御装置30は、送風機21と、ヒータ24とのそれぞれの作動を制御する。
【0020】
具体的には、図4に示すように、作動スイッチ41がOFFからONにされた場合、温刺激期間t1と冷刺激期間t2との合計を一周期t3として、温刺激期間t1と冷刺激期間t2とが周期的に交互に繰り返されるように、制御装置30は、温冷刺激装置20の作動を制御する。温刺激期間t1は、温冷刺激装置20が温刺激を供給する期間である。冷刺激期間は、温冷刺激装置20が冷刺激を供給する期間である。温刺激期間t1では、ヒータ24がONの状態にされ、送風機21がOFFの状態にされる。これにより、背もたれ部103の前方側の表面の温度が高くなる。冷刺激期間t2では、ヒータ24がOFFの状態にされ、送風機21がONの状態にされる。これにより、背もたれ部103の前方側の表面の温度が低くなる。
【0021】
作動スイッチ41は、温冷刺激装置20の作動と停止とを、着座者の操作によって切り替えるスイッチである。作動スイッチ41は、制御装置30の入力側に接続されている。作動スイッチ41は、図示しないインストルメントパネルに設けられている。
【0022】
設定スイッチ42は、一周期t3における温刺激期間t1と冷刺激期間t2との比率である温冷比率を、着座者の操作によって切り替えるスイッチである。設定スイッチ42は、制御装置30の入力側に接続されている。設定スイッチ42は、図示しないインストルメントパネルに設けられている。
【0023】
図5に示すように、設定スイッチ42は、複数の設定ボタンで構成されている。複数の設定ボタンは、第1ボタン43、第2ボタン44、第3ボタン45、第4ボタン46および第5ボタン47を含む。各ボタン43~47に対応する温冷比率および一周期が、制御装置30のメモリに予め記憶されている。
【0024】
第1ボタン43が押されたときの温刺激期間t1と冷刺激期間t2とのそれぞれは、図6に示すように、t11とt21である。このときの温冷比率は、t11:t21=1:3である。このときの一周期t3は、6分30秒である。
【0025】
第2ボタン44が押されたときの温刺激期間t1と冷刺激期間t2とのそれぞれは、図7に示すように、t12とt22である。このときの温冷比率は、t12:t22=1:2である。このときの一周期t3は、6分30秒である。
【0026】
第3ボタン45が押されたときの温刺激期間t1と冷刺激期間t2とのそれぞれは、図8に示すように、t13とt23である。このときの温冷比率は、t13:t23=1:1である。このときの一周期t3は、6分30秒である。
【0027】
第4ボタン46が押されたときの温刺激期間t1と冷刺激期間t2とのそれぞれは、図9に示すように、t14とt24である。このときの温冷比率は、t14:t24=2:1である。このときの一周期t3は、6分30秒である。
【0028】
第5ボタン47が押されたときの温刺激期間t1と冷刺激期間t2とのそれぞれは、図10に示すように、t15とt25である。このときの温冷比率は、t15:t25=3:1である。このときの一周期t3は、6分30秒である。
【0029】
このように、第1ボタン43、第2ボタン44、第3ボタン45、第4ボタン46、第5ボタン47の順に、温刺激期間t1が長くなり、冷刺激期間t2が短くなる。各ボタン43~47が押されたときの一周期t3の時間は、同じである。
【0030】
図11に示すように、一周期を同じ時間として、温刺激期間と冷刺激期間との比率を種々の大きさに変更する。図11中の破線は、一周期の時間が同じであることを示している。この場合、第1ボタン43、第2ボタン44を選択したときのように、冷刺激期間の比率が大きいと、温冷刺激を受けている全期間において、着座者は、冷たく感じる。冷刺激期間の比率が大きいほど、着座者が温冷刺激を受けたときに感じる温度が低くなる。
【0031】
その一方で、第4ボタン46、第5ボタン47を選択したときのように、温刺激期間の比率が大きいと、温冷刺激を受けている全期間において、着座者は、温かく感じる。温刺激期間の比率が大きいほど、着座者が温冷刺激を受けたときに感じる温度が高くなる。
【0032】
そこで、複数の設定ボタン43~47には、温冷比率に係る情報として、着座者が温冷刺激を受けたときに感じる温度が示されている。第1ボタン43には、「低」の文字が示されている。これは、着座者が温冷刺激を受けたときに感じる温度が低いことを意味する。
第5ボタン47には、「高」の文字が示されている。これは、着座者が温冷刺激を受けたときに感じる温度が高いことを意味する。第3ボタン45には、「中」の文字が示されている。これは、着座者が温冷刺激を受けたときに感じる温度が、「低」のときの温度と「高」のときの温度との中間の温度であることを意味する。第2ボタン44には、「・」が示されている。これは、着座者が温冷刺激を受けたときに感じる温度が、「低」のときの温度と「中」のときの温度との間の温度であることを示している。第4ボタン46には、「・」が示されている。これは、着座者が温冷刺激を受けたときに感じる温度が、「中」のときの温度と「高」のときの温度との間の温度を示している。
【0033】
第1ボタン43、第2ボタン44、第3ボタン45、第4ボタン46、第5ボタン47の順に、着座者が温冷刺激を受けたときに感じる温度が高くなる。複数のボタン43~47のいずれか1つを着座者が選択して押すことにより、温冷刺激を受けるときに感じる温度を、着座者が変更することができる。
【0034】
このように、各ボタン43~47には、温冷比率に係る情報として、着座者が温冷刺激を受けたときに感じる温度が示されている。このため、着座者がこれらのボタン43~47のいずれかを選択して押すことで、温冷比率に係る情報が間接的に入力される。よって、本実施形態の設定スイッチ42が、着座者による操作によって、温冷比率に係る情報を間接的に入力する入力部に相当する。
【0035】
制御装置30は、複数のボタン43~47のいずれか1つが押された場合に、押されたボタンに対応する温冷比率で、温刺激期間と冷刺激期間とが交互に繰り返されるように、温冷刺激装置20を作動させる。これを実現するために、制御装置30は、図12に示す処理を実行する。なお、図12中に示したステップは、各種機能を実現する機能部に対応するものである。このことは、他のフローチャートにおいても同様である。
【0036】
図12に示す処理は、作動スイッチ41がOFFからONに切り替えられたときに開始される。図12に示す処理は、作動スイッチ41がONからOFFに切り替えられるまで、繰り返される。なお、図12に示す処理は、作動スイッチ41がOFFからONに切り替えられてから所定時間が経過するまで、繰り返されてもよい。
【0037】
ステップS11では、制御装置30は、設定スイッチ42のスイッチ信号を読み込む。
【0038】
続いて、ステップS12では、制御装置30は、ステップS11で読み込んだスイッチ信号に基づいて、温冷比率を決定する。複数のボタン43~47のいずれか1つが着座者に押された場合、制御装置30は、押されたボタンに対応する温冷比率をメモリから読み出す。これにより、今回の温冷比率が決定される。また、作動スイッチ41がOFFからONに切り替えられてから、複数のボタン43~47のいずれも着座者に押されていない場合、標準設定としての第3ボタン45に対応する温冷比率が、今回の温冷比率として決定される。なお、前回の作動時における作動スイッチ41がOFFにされる直前の温冷比率が記憶されている場合、その温冷比率が、今回の温冷比率として決定されてもよい。
【0039】
続いて、ステップS13では、制御装置30は、ステップS12で決定された温冷比率で、温冷刺激装置20が温冷刺激を供給するように、制御信号を出力する。これにより、温冷刺激装置20は、ステップS12で決定された温冷比率で、温刺激期間t1と冷刺激期間t2とを交互に繰り返すように、作動する。
【0040】
図12に示す処理が繰り返し実行されることで、複数のボタン43~47のいずれか1つが押される毎に、温冷比率が変更される。例えば、図13に示すように、第3ボタン45が押されたとき、第3ボタン45に対応する温冷比率および一周期で、温冷刺激装置20が作動する。このときの温刺激期間t1はt13である。このときの冷刺激期間t2はt23である。その後、第4ボタン46が押されたとき、第4ボタン46に対応する温冷比率および一周期で、温冷刺激装置20が作動する。このときの温刺激期間t1は、t13よりも長いt14である。このときの冷刺激期間t2は、t23よりも短いt24である。第4ボタン46に対応する温冷比率のときの一周期t3は、第3ボタン45に対応する温冷比率のときの一周期t3と同じ時間である。
【0041】
このように、制御装置30は、ステップS12で、温冷比率を、図11に示される互いに異なる温冷比率のいずれか1つに決定する。制御装置30は、ステップS13で、ステップS12で決定された温冷比率で、温刺激期間と冷刺激期間とが交互に繰り返されるように、温冷刺激装置20の作動を制御する。本実施形態では、ステップS12が、温冷比率を決定する温冷比率決定部に対応する。ステップS13が、温冷刺激装置の作動を制御する刺激制御部に対応する。
【0042】
上述の通り、ステップS12で決定される温冷比率には、第3ボタン45に対応する温冷比率と、第4ボタン46に対応する温冷比率とが含まれる。制御装置30は、ステップS12で、第3ボタン45に対応する温冷比率のときの一周期t3と、第4ボタン46に対応する温冷比率のときの一周期t3とが、同じ時間となるように、温冷比率を決定する。なお、このことは、第3ボタン45と第4ボタン46とに限られず、複数のボタン43~47のうち任意の2つのボタンにおいて、言えることである。複数のボタン43~47のそれぞれに対応する温冷比率のうちの2つの温冷比率が、第1比率、第2比率に対応する。
【0043】
ここで、本発明者の検討によると、温冷刺激の供給において、特定の温冷比率および特定の一周期とされた特定の設定に対して、温冷比率と一周期との両方を変更すると、変更前の設定と比較して、疲労軽減効果が大きく低下する場合があることが分かった。その一方で、上記の特定の設定に対して、一周期の時間を実質的に同じとして、温冷比率を変更した場合、変更前の設定と比較して、疲労軽減効果が低下しないか、疲労軽減効果が低下しても低下の割合が小さく、一定の疲労軽減効果が得られることが分かった。
【0044】
このため、本実施形態によれば、温冷比率を異ならせても、一周期の時間を同じとしているので、一定の疲労軽減効果が得られる。よって、一定の疲労軽減効果を得つつ、着座者に与える温冷感を調整することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、制御装置30は、ステップS12で、第3ボタン45に対応する温冷比率のときの一周期t3と、第4ボタン46に対応する温冷比率のときの一周期t3とが、「同じ時間」となるように、温冷比率を決定する。しかしながら、それぞれの一周期t3の時間は、実質的に同じであればよい。この「実質的に同じ」とは、それぞれの一周期t3の差が、それぞれの一周期の平均値の5%以内であることを意味する。
【0046】
また、本実施形態では、温冷刺激システム10は、設定スイッチ42、すなわち、複数の設定ボタン43~47を備えている。制御装置30は、ステップS20で、複数の設定ボタン43~47によって入力される情報に基づいて、温冷比率を決定する。これによれば、着座者に与える温冷刺激の温冷感を、着座者の好みの温冷感に調整することができる。
【0047】
(第2実施形態)
図14に示すように、本実施形態の温冷刺激システム10では、第1実施形態の設定スイッチ42の替わりに、着座者の温冷感を推定するためのセンサ類48が制御装置30の入力側に接続されている。また、第1実施形態と異なり、制御装置30は、図15に示す処理を行う。温冷刺激システム10の他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0048】
センサ類48は、着座者の温冷感に関する物理量を検出する。温冷感は、暑い、寒い等の熱的な感覚である。センサ類48には、着座者の表面温度を検出するセンサ、シート101の表面温度を検出するセンサ、着座者の吸熱時または放熱時の熱流を検出するセンサ、シート101の吸熱時または放熱時の熱流を検出するセンサ、車室内の空気温度を検出するセンサ等が含まれる。
【0049】
図15に示すように、ステップS21で、制御装置30は、センサ類48から入力されるセンサ信号を読み込む。
【0050】
続いて、ステップS22で、制御装置30は、センサ信号に基づいて、着座者の温冷感を推定する。例えば、制御装置30は、現時点の着座者の温冷感が、「暑い」、「やや暑い」、「中立」、「やや寒い」、「寒い」のいずれに該当するか判定する。
【0051】
続いて、ステップS23で、制御装置30は、ステップS22の推定結果に基づいて、温冷比率を決定する。
【0052】
具体的には、図16に示すように、ステップS22での推定結果が「暑い」のときの温冷比率を、冷刺激期間の比率が大きい比率に決定する。例えば、このときの温冷比率および一周期は、第1実施形態の第1ボタン43のときの温冷比率および一周期と同じである。これにより、着座者に冷たく感じさせることができる。
【0053】
また、ステップS22での推定結果が「やや暑い」のときの温冷比率を、冷刺激期間の比率がやや大きい比率に決定する。例えば、このときの温冷比率および一周期は、第1実施形態の第2ボタン44のときの温冷比率および一周期と同じである。これにより、着座者にやや冷たく感じさせることができる。
【0054】
また、ステップS22での推定結果が「中立」のときの温冷比率を、冷刺激期間と温刺激期間とが同じ長さの比率に決定する。例えば、このときの温冷比率および一周期は、第1実施形態の第3ボタン45のときの温冷比率および一周期と同じである。
【0055】
また、ステップS22での推定結果が「やや寒い」のときの温冷比率を、温刺激期間の比率がやや大きい比率に決定する。例えば、このときの温冷比率は、第1実施形態の第4ボタン46のときの温冷比率と同じである。これにより、着座者にやや温かく感じさせることができる。
【0056】
また、ステップS22での推定結果が「寒い」のときの温冷比率を、温刺激期間の比率が大きい比率に決定する。例えば、このときの温冷比率は、第1実施形態の第5ボタン47のときの温冷比率と同じである。これにより、着座者に温かく感じさせることができる。
【0057】
続いて、ステップS24で、制御装置30は、ステップS23で決定された温冷比率で、温冷刺激装置20を作動させるための制御信号を出力する。これにより、温冷刺激装置20は、ステップS12で決定された温冷比率で、温刺激期間と冷刺激期間とが交互に繰り返されるように、作動する。
【0058】
以上の説明の通り、制御装置30は、ステップS23で、温冷比率を、図16に示される互いに異なる温冷比率のいずれか1つに決定する。制御装置30は、ステップS24で、ステップS23で決定された温冷比率で、温刺激期間と冷刺激期間とが交互に繰り返されるように、温冷刺激装置20の作動を制御する。本実施形態では、ステップS23が、温冷比率を決定する温冷比率決定部に対応する。ステップS24が、温冷刺激装置の作動を制御する刺激制御部に対応する。制御装置30は、ステップS23で、温冷比率を種々の比率に決定するとき、いずれの比率のときにおいても、一周期の時間が同じとなるように、温冷比率を決定する。このため、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0059】
また、本実施形態では、ステップS22で、制御装置30は、着座者の温冷感を推定する。そして、ステップS23で、制御装置30は、ステップS22の推定結果に基づいて、温冷比率を決定する。これにより、着座者に与える温冷刺激の温冷感を着座者の好みの温冷感に調整することができる。例えば、着座者が暑いと感じているときに、冷たく感じる温冷比率に調整することができる。着座者が寒いと感じているときに、温かく感じる温冷比率に調整することができる。なお、本実施形態では、ステップS22が、温冷刺激システムが備える推定部に対応する。
【0060】
また、本実施形態では、ステップS22で、制御装置30は、着座者の温冷感を推定する。しかしながら、ステップS22で、制御装置30は、着座者の温冷快適感を推定してもよい。温冷快適感は、温冷感と「快適」、「不快」の快適感とを合わせたものである。この場合、センサ類48は、温冷快適感を推定するための物理量を検出する。
【0061】
(第3実施形態)
図17に示すように、本実施形態の温冷刺激システム10では、第1実施形態の設定スイッチ42の替わりに、空調用制御装置49および車室内空間の実際の空気温度を測定するセンサ50が制御装置30の入力側に接続されている。また、第1実施形態と異なり、制御装置30は、図18に示す処理を行う。温冷刺激システム10の他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0062】
空調用制御装置49は、図示しない空調装置を制御する。空調装置は、着座者が存在する車室内空間の空気温度を調整する。空調用制御装置49は、図示しない温度設定部から空調装置の設定温度が入力される。温度設定部は、着座者の操作によって、空調装置の設定温度を入力する入力部である。
【0063】
図18に示すように、ステップS31で、制御装置30は、空調用制御装置49との間の通信によって設定温度を取得するとともに、センサ50から入力されるセンサ信号を読み込む。
【0064】
続いて、ステップS32で、制御装置30は、設定温度およびセンサ信号に基づいて、設定温度と、実際に測定された車室内空気の実測温度との温度差を算出する。
【0065】
続いて、ステップS33で、制御装置30は、ステップS32で算出された温度差に基づいて、温冷比率を決定する。
【0066】
具体的には、図19に示すように、ステップS32での算出結果が「実測温度の方が高く、差が大きい」ときの温冷比率を、冷刺激期間の比率が大きい比率に決定する。例えば、このときの温冷比率および一周期は、第1実施形態の第1ボタン43のときの温冷比率および一周期と同じである。これにより、着座者に冷たく感じさせることができる。
【0067】
また、ステップS32での推定結果が「実測温度の方が高く、差がやや大きい」ときの温冷比率を、冷刺激期間の比率がやや大きい比率に決定する。例えば、このときの温冷比率および一周期は、第1実施形態の第2ボタン44のときの温冷比率および一周期と同じである。これにより、着座者にやや冷たく感じさせることができる。
【0068】
また、ステップS32での推定結果が「差が小さい」ときの温冷比率を、冷刺激期間と温刺激期間とが同じ長さの比率に決定する。例えば、このときの温冷比率および一周期は、第1実施形態の第3ボタン45のときの温冷比率および一周期と同じである。
【0069】
また、ステップS32での推定結果が「実測温度の方が低く、差がやや大きい」ときの温冷比率を、温刺激期間の比率がやや大きい比率に決定する。例えば、このときの温冷比率は、第1実施形態の第4ボタン46のときの温冷比率と同じである。これにより、着座者にやや温かく感じさせることができる。
【0070】
また、ステップS32での推定結果が「実測温度の方が低く、差が大きい」ときの温冷比率を、温刺激期間の比率が大きい比率に決定する。例えば、このときの温冷比率は、第1実施形態の第5ボタン47のときの温冷比率と同じである。これにより、着座者に温かく感じさせることができる。
【0071】
続いて、ステップS34で、制御装置30は、ステップS33で決定された温冷比率で、温冷刺激装置20を作動させるための制御信号を出力する。これにより、温冷刺激装置20は、ステップS33で決定された温冷比率で、温刺激期間と冷刺激期間とが交互に繰り返されるように、作動する。
【0072】
以上の説明の通り、制御装置30は、ステップS33で、温冷比率を、図19に示される互いに異なる温冷比率のいずれか1つに決定する。制御装置30は、ステップS34で、ステップS33で決定された温冷比率で、温刺激期間と冷刺激期間とが交互に繰り返されるように、温冷刺激装置20の作動を制御する。本実施形態では、ステップS33が、温冷比率を決定する温冷比率決定部に対応する。ステップS34が、温冷刺激装置の作動を制御する刺激制御部に対応する。制御装置30は、ステップS33で、温冷比率を種々の比率に決定するとき、いずれの比率のときにおいても、一周期の時間が同じとなるように、温冷比率を決定する。このため、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0073】
また、本実施形態では、ステップS33で、制御装置30は、空調装置の設定温度と車室内空気の実測温度との温度差に基づいて、温冷比率を決定する。これにより、着座者に与える温冷刺激の温冷感を着座者の好みの温冷感に調整することができる。例えば、実測温度の方が設定温度よりも高いときに、冷たく感じる温冷比率に調整することができる。実測温度の方が設定温度よりも低いときに、温かく感じる温冷比率に調整することができる。
【0074】
なお、本実施形態では、制御装置30は、設定温度と実測温度との算出結果に基づいて、温冷比率を決定する。すなわち、制御装置30は、設定温度と実測温度とに基づいて温冷比率を決定する。しかしながら、制御装置30は、設定温度と実測温度との温度差を算出せずに、設定温度と実測温度とに基づいて、温冷比率を決定してもよい。
【0075】
また、本実施形態では、制御装置30は、空調用制御装置49から設定温度を取得する。しかしながら、制御装置30が空調用制御装置を兼ねる場合、温度設定部からの設定信号に基づいて設定温度を取得してもよい。
【0076】
(他の実施形態)
(1)第1実施形態では、設定スイッチ42は、温冷刺激の温冷感を示す複数の設定ボタン43~47で構成されている。しかしながら、設定スイッチ42は、温冷刺激の温冷感の上昇を示す「+」が表示された設定ボタンと、温冷刺激の温冷感の下降を示す「-」が表示された設定ボタンとで構成されてもよい。この場合、着座者が「+」表示のボタンを押すことで、温刺激期間の比率が大きくなる。着座者が「-」表示のボタンを押すことで、冷刺激期間の比率が大きくなる。このように、着座者がこの2つの設定ボタンの一方を選択して押すことで、温冷比率に係る情報が間接的に入力される。よって、この2つの設定ボタンも、着座者による操作によって、温冷比率に係る情報を間接的に入力する入力部に相当する。
【0077】
また、設定スイッチ42は、複数の温冷比率が表示された複数の設定ボタンで構成されてもよい。この場合、着座者がこれらの設定ボタンのいずれか1つを押すことで、温冷比率に係る情報が直接的に入力される。よって、これらの設定ボタンは、着座者による操作によって、温冷比率に係る情報を直接的に入力する入力部に相当する。
【0078】
(2)第1実施形態では、温冷比率に係る情報を入力する入力部として、着座者の手によって操作される設定スイッチ42が用いられている。しかしながら、入力部として、着座者の音声が入力されるマイクが用いられてもよい。すなわち、着座者の音声による操作によって、温冷比率に係る情報が入力されるように構成されていてもよい。
【0079】
(3)第1~第3実施形態の温冷刺激装置20では、ヒータ24が背もたれ部103に内蔵されている。しかしながら、ヒータ24は、背もたれ部103の外部に設けられてもよい。この場合、ヒータ24は、着座者のうち着座者が疲労を感じる部位に対して温刺激を供給するようになっていればよい。
【0080】
(4)第1実施形態の温冷刺激装置20では、送風機21は、空気通路22に複数の孔部23から後方側孔部25に向かう空気流れを形成する。第1実施形態の温冷刺激装置20は、車室内空気を吸い込むことで、着座者に対して冷刺激を供給するように構成されている。
【0081】
しかしながら、図20の矢印C3に示すように、温冷刺激装置20は、車室内空気を吹き出すことで、冷刺激を供給するように構成されてもよい。図20に示す温冷刺激装置20では、送風機21は、後方側孔部25から複数の孔部23に向かう空気流れを空気通路22に形成する。これにより、図20の矢印C4に示すように、後方側孔部25から車室内の空気が吸込まれる。吸い込まれた空気は、空気通路22を流れた後、図20の矢印C3に示すように、複数の孔部23から吹き出される。
【0082】
また、図21の矢印C5に示すように、温冷刺激装置20は、冷却装置51で冷却された空気(すなわち、冷風)を吹き出すことで、冷刺激を供給するように構成されてもよい。図21に示す温冷刺激装置20では、冷却装置51で冷却された空気が後方側孔部25に供給される。送風機21は、後方側孔部25から複数の孔部23に向かう空気流れを空気通路22に形成する。これにより、図21の矢印C6に示すように、後方側孔部25から冷風が吸込まれる。吸い込まれた冷風は、空気通路22を流れた後、図21の矢印C5に示すように、複数の孔部23から吹き出される。
【0083】
また、第1実施形態の温冷刺激装置20は、ヒータ24の発熱によって、着座者に対して温刺激を供給する。しかしながら、図22の矢印B1に示すように、温冷刺激装置20は、加熱装置65で加熱された空気(すなわち、温風)を吹き出すことで、温刺激を供給するように構成されてもよい。
【0084】
図22に示す温冷刺激装置20では、送風機21、空気通路22、複数の孔部23、後方側孔部25は、それぞれ、第1送風機21、第1空気通路22、複数の第1孔部23、第1後方側孔部25である。図22に示す温冷刺激装置20は、さらに、第2送風機61、シートパッド104に設けられた第2空気通路62、シートパッド104の前方側部分に設けられた複数の第2孔部63、シートパッド104の後方側の下部に設けられた第2後方側孔部64を備える。第2空気通路62は、第1空気通路22に対して独立した空気通路である。図22に示す温冷刺激装置20は、さらに、空気を加熱する加熱装置65を備える。
【0085】
図22に示す温冷刺激装置20では、矢印B2に示すように、加熱装置65で加熱された空気が、第2後方側孔部64に供給される。第2送風機61は、第2後方側孔部64から複数の第2孔部63に向かう空気流れを第2空気通路62に形成する。これにより、矢印B1に示すように、温風が複数の第2孔部63から吹き出される。
【0086】
また、図23に示すように、温冷刺激装置20は、矢印C3に示すように、車室内空気を吹き出すことで、冷刺激を供給するように構成されるとともに、矢印B1に示すように、温風を吹き出すことで、温刺激を供給するように構成されてもよい。
【0087】
また、図24に示すように、温冷刺激装置20は、矢印C5に示すように、冷風を吹き出すことで、冷刺激を供給するように構成されるとともに、矢印B1に示すように、温風を吹き出すことで、温刺激を供給するように構成されてもよい。
【0088】
また、着座者に対して車室内空気、冷風または温風が供給される場合、温冷刺激として十分な強さの風量、風速が得られれば、シートの外部に設けられた送風機によってこれらが供給されるように、温冷刺激装置20が構成されてもよい。
【0089】
(5)上記した各実施形態では、温冷刺激装置20は、シート101の背もたれ部103に設けられている。しかしながら、温冷刺激装置20は、シート101の着座部102に設けられてもよい。
【0090】
(6)上記した各実施形態では、温冷刺激装置20は、運転席のシート101に設けられている。しかしながら、温冷刺激装置20は、運転席以外の席のシートに設けられてもよい。
【0091】
(7)温冷刺激装置20として、上記した各実施形態とは別の構成のものが用いられてもよい。例えば、着座者に温熱または冷熱を供給するための熱媒体を循環させる装置が用いられてもよい。また、着座者に温熱または冷熱を供給するための熱電変換素子または熱交換器が用いられてもよい。
【0092】
(8)また、上記した各実施形態では、温冷刺激装置20が、車両のシートに設置されている。しかしながら、温冷刺激装置20は、車両以外の移動体のシートに設置されてもよい。また、温冷刺激装置20は、移動体以外のシートに設置されてもよい。また、温冷刺激装置20は、シート以外の場所に設置されてもよい。すなわち、温冷刺激装置20が温刺激と冷刺激とを供給する対象者は、着座者以外であってもよい。また、温冷刺激装置20は、特定の場所に設置されるものでなく、小型で携帯できるハンディタイプであってもよい。また、温冷刺激装置20は、対象者に装着されてもよい。例えば、温冷刺激装置20は、対象者の肩、腰、腕に装着されてもよい。
【0093】
(9)本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0094】
(10)本開示に記載の制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0095】
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、温冷刺激システムは、対象者に対して温刺激と冷刺激とを供給する温冷刺激装置と、温刺激を供給する温刺激期間と冷刺激を供給する冷刺激期間との合計を一周期として、温刺激期間と冷刺激期間とが周期的に交互に繰り返されるように、温冷刺激装置の作動を制御する刺激制御部と、一周期における温刺激期間と冷刺激期間との比率である温冷比率を決定する温冷比率決定部と、を備える。刺激制御部は、温冷比率決定部が決定する温冷比率で、温刺激期間と冷刺激期間とが交互に繰り返されるように、温冷刺激装置を作動させる。温冷比率決定部が決定する温冷比率には、互いに異なる第1比率と第2比率とが含まれる。温冷比率決定部は、第1比率のときの一周期と、第2比率のときの一周期とが、実質的に同じ時間となるように、温冷比率を決定する。
【0096】
また、第2の観点によれば、温冷刺激システムは、直接的または間接的に、温冷比率に係る情報を入力する入力部を備える。温冷比率決定部は、入力部によって入力される情報に基づいて、温冷比率を決定する。これによれば、対象者に与える温冷刺激の温冷感を対象者の好みの温冷感に調整することができる。
【0097】
また、第3の観点によれば、温冷刺激システムは、対象者の温冷感または温冷快適感を推定する推定部を備える。温冷比率決定部は、推定部の推定結果に基づいて、温冷比率を決定する。これによれば、対象者に与える温冷刺激の温冷感を対象者の好みの温冷感に調整することができる。
【0098】
また、第4の観点によれば、温冷比率決定部は、対象者が存在する空間の空気温度を調整する空調装置の設定温度と、対象者が存在する空間の実際の空気温度とに基づいて、温冷比率を決定する。これによれば、対象者に与える温冷刺激の温冷感を対象者の好みの温冷感に調整することができる。
【符号の説明】
【0099】
10 温冷刺激システム
20 温冷刺激装置
30 制御装置
42 設定スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図24