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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   G05G 5/08 20060101AFI20221115BHJP
   B60K 20/02 20060101ALI20221115BHJP
   B60K 20/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
G05G5/08
B60K20/02 E
B60K20/00 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019226744
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2021096601
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2021-12-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】加茂田 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】金泰均
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-11229(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 5/08
B60K 20/02
B60K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作の動きを下方に伝達する操作伝達軸(51)を中心にして前後方向(C1,C2)に回動させるよう操作して前進走行と後進走行を切り替える前後進レバー(14)を備えた作業車両において、
前記前後進レバー(14)が前記操作伝達軸(51)の上端部に対して上下方向(D1,D2)に回動可能に取り付けられており、
前記前後進レバー(14)の下部に下方向(D2)に突出して設けられる突出部(81)と、前記前後進レバー(14)を下方向(D2)に回動させた状態のときに前記突出部(81)が切り替え位置から前記前後方向(C1,C2)の少なくとも一方に移動しようとするときの進行先に存在して当該移動を阻止する一方で、前記前後進レバー(14)を上方向(D1)に回動させた状態のときに前記突出部(81)が前記前後方向(C1,C2)に移動しようとするときの進行先に存在せずに当該移動を阻止しない形状からなる規制部材(82)とを有するロック機構(80)が設けられていることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記規制部材(82)は、前記前進走行に切り替える位置と前記後進走行に切り替える位置との間の中間位置に存在するよう配置される部分に、前記前後進レバー(14)を下方向(D2)に回動させた状態のときに前記突出部(81)が入り込んで前記前後方向(C1,C2)への移動が阻止される凹部(83)を有した形状からなる部材であることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記ロック機構(80)は、前記前後進レバー(14)を下方向(D2)に回動させるよう付勢する付勢部材(86)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記操作伝達軸(51)の上端部に、回動軸(62)を通す軸通し孔(53)を有する連結部(51a)が設けられており、
前記前後進レバー(14)の下部に、前記連結部(51a)に回動軸(62)を介して回動可能に取り付けられて連結される連結部材(61)を備えていることを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記操作伝達軸(51)の前記連結部(51a)より下方になる部分に、当該操作伝達軸(51)と直交する上面(56a)を有する固定部材(56)が取り付けられており、
前記連結部材(61)の下部に、前記前後進レバー(14)を上下方向(D1,D2)に回動させたときに前記固定部材(56)の上面(56a)にそれぞれ接触して当該回動の範囲を制限する第1接触部(66)および第2接触部(67)が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記固定部材(56)の前記操作伝達軸(51)を挟んで前記前後進レバー(14)とは反対側になる部分に、前記付勢部材(86)の下端部を取り付ける付勢部材取付け部(87)が設けられ、
前記連結部材(61)に、前記付勢部材取付け部(87)と間隔をあけて向き合うとともに前記付勢部材(86)の上端部を接触させる接触面(88a)を有する付勢部材保持部(88)が設けられ、
前記付勢部材(86)は、その下端部が前記付勢部材取付け部(87)に保持される一方で、その上端部が前記付勢部材保持部(88)の接触面(88a)に接触し得る状態で取り付けられ、前記前後進レバー(14)が少なくとも上方向(D1)に回動されるときに収縮するよう弾性変形することを特徴とする請求項5に記載の作業車両。
【請求項7】
前記前後進レバー(14)がステアリングホイール(12)の下方の位置において前記操作伝達軸(51)の上端部に対して回動可能に取り付けられおり、前記規制部材(82)が前記操作伝達軸(51)の上端部付近に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、操作レバーの誤操作を防止する技術としては、揺動可能に支持されたシフトレバーと、シフトレバーの突端側に形成された押圧操作可能なプッシュノブと、シフトレバー内に延設されてプッシュノブの押圧操作により下降するロッドロックピンと、シフトレバーの下端部の近傍に配置され、シフト位置や移動空間に対応する形状の開口部が形成された誤操作防止窓部と、誤操作防止窓部と係合可能であるとともにロッドロックピンが下降することにより当該係合が解除されてシフトレバーの揺動動作を許容するロック手段とを備え、そのロック手段が、シフトレバーの下端部において回動自在とされつつシフトレバーの揺動動作を規制する側に付勢されているとともに回動により誤操作防止窓部に係合又は係合解除され得る突起部を有した回動部材で構成されている車両用自動変速操作装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-119394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用自動変速操作装置は、作業車両に適用しようとした場合、その構成が複雑であって部品点数も多くコストを押し上げてしまうおそれがあり、採用することが難しいものであった。
【0005】
本発明は、誤操作を簡素な構成でかつ簡易な操作により防止することができる前後進レバーを備えた作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、以下の手段により解決される。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、
操作の動きを下方に伝達する操作伝達軸(51)を中心にして前後方向(C1,C2)に回動させるよう操作して前進走行と後進走行を切り替える前後進レバー(14)を備えた作業車両において、
前記前後進レバー(14)が前記操作伝達軸(51)の上端部に対して上下方向(D1,D2)に回動可能に取り付けられており、
前記前後進レバー(14)の下部に下方向(D2)に突出して設けられる突出部(81)と、前記前後進レバー(14)を下方向(D2)に回動させた状態のときに前記突出部(81)が切り替え位置から前記前後方向(C1,C2)の少なくとも一方に移動しようとするときの進行先に存在して当該移動を阻止する一方で、前記前後進レバー(14)を上方向(D1)に回動させた状態のときに前記突出部(81)が前記前後方向(C1,C2)に移動しようとするときの進行先に存在せずに当該移動を阻止しない形状からなる規制部材(82)とを有するロック機構(80)が設けられていることを特徴とする作業車両である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記規制部材(82)は、前記前進走行に切り替える位置と前記後進走行に切り替える位置との間の中間位置に存在するよう配置される部分に、前記前後進レバー(14)を下方向(D2)に回動させた状態のときに前記突出部(81)が入り込んで前記前後方向(C1,C2)への移動が阻止される凹部(83)を有した形状からなる部材であることを特徴とする請求項1に記載の作業車両である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記ロック機構(80)は、前記前後進レバー(14)を下方向(D2)に回動させるよう付勢する付勢部材(86)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記操作伝達軸(51)の上端部に、回動軸(62)を通す軸通し孔(53)を有する連結部(51a)が設けられており、前記前後進レバー(14)の下部に、前記連結部(51a)に回動軸(62)を介して回動可能に取り付けられて連結される連結部材(61)を備えていることを特徴とする請求項3に記載の作業車両である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記操作伝達軸(51)の前記連結部(51a)より下方になる部分に、当該操作伝達軸(51)と直交する上面(56a)を有する固定部材(56)が取り付けられており、前記連結部材(61)の下部に、前記前後進レバー(14)を上下方向(D1,D2)に回動させたときに前記固定部材(56)の上面(56a)にそれぞれ接触して当該回動の範囲を制限する第1接触部(66)および第2接触部(67)が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の作業車両である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記固定部材(56)の前記操作伝達軸(51)を挟んで前記前後進レバー(14)とは反対側になる部分に、前記付勢部材(86)の下端部を取り付ける付勢部材取付け部(87)が設けられ、前記連結部材(61)に、前記付勢部材取付け部(87)と間隔をあけて向き合うとともに前記付勢部材(86)の上端部を接触させる接触面(88a)を有する付勢部材保持部(88)が設けられ、
前記付勢部材(86)は、その下端部が前記付勢部材取付け部(87)に保持される一方で、その上端部が前記付勢部材保持部(88)の接触面(88a)に接触し得る状態で取り付けられ、前記前後進レバー(14)が少なくとも上方向(D1)に回動されるときに収縮するよう弾性変形することを特徴とする請求項5に記載の作業車両である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、前記前後進レバー(14)がステアリングホイール(12)の下方の位置において前記操作伝達軸(51)の上端部に対して回動可能に取り付けられおり、前記規制部材(82)が前記操作伝達軸(51)の上端部付近に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の作業車両である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明では、突出部(81)と規制部材(82)を有するロック機構(80)により、前後進レバー(14)を操作伝達軸(51)に対して下方向(D2)に回動させた状態にしたときに切り替え操作ができない状態にされる一方で、前後進レバー(14)を操作伝達軸(51)に対して上方向(D1)に回動させた状態にしたときに切り替え操作ができる状態になる。
したがって、この発明によれば、前後進レバー(14)の誤操作を簡素な構成でかつ簡易な操作により防止することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、ロック機構(80)における規制部材(82)が突出部(81)の前後方向(C1,C2)への移動を阻止する凹部(83)を有した簡素な形状からなる部材として構成されているので、前後進レバー(14)の誤操作をより簡素な構成で防止することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、ロック機構(80)が付勢部材(86)により前後進レバー(14)を下方向(D2)に回動させるよう付勢するよう構成されているので、前後進レバー(14)による切り替え操作ができない状態が安定して保たれやすくなり、前後進レバー(14)の誤操作をより確実に防止することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、前後進レバー(14)が操作伝達軸(51)に対して連結部材(61)と回動軸(62)を介した簡易な構造で上下方向(D1,D2)に回動可能に連結されているので、前後進レバー(14)の誤操作をより簡素な構成で防止することができる。
請求項5に記載の発明によれば、前後進レバー(14)を上下方向(D1,D2)に回動させたときに連結部材(61)における第1接触部(66)および第2接触部(67)が固定部材(56)の上面(56a)にそれぞれ接触して当該回動の範囲が制限されるので、切り替え操作が制限された状態下で行われることになり、前後進レバー(14)の誤操作を無駄な動きがなく簡易な操作により防止することができる。
請求項6に記載の発明によれば、付勢部材(86)が、前後進レバー(14)が少なくとも上方向(D1)に回動されるときに収縮するよう弾性変形するよう付勢部材取付け部(87)と付勢部材保持部(88)との間に挟まれた状態で取り付けられているので、前後進レバー(14)の誤操作をより簡素な構成で防止することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、運転の際に運転者が手を置いて握るステアリングホイール(12)の下方にある前後進レバー(14)をその手(指)でつかんで上方向(D1)に回動させて切り替え操作を可能にさせることやその手を離して下方向(D2)に回動させて切り替え操作を不可にさせることが容易にでき、前後進レバー(14)の誤操作をより簡易な操作により防止することができる。また、ロック機構(80)の規制部材(82)が操作伝達軸(51)の上端部近傍に配置されているので、前後進レバー(14)の誤操作をより簡素な構成で防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るトラクタの左側面図である。
図2】操縦席の前方の構成を示す斜視図である。
図3】前後進レバーに関係する構成を示す斜視図である。
図4図3の前後進レバーに関係する構成を一部の部品を取り外した状態で示す斜視図である。
図5図4の前後進レバーに関係する構成を別の部品を取り外した状態で示す別角度の斜視図である。
図6】前後進レバーに関係する構成を示す分解斜視図である。
図7】(A)は前後進レバーの配置される部分を示す斜視図、(B)は(A)の一部を取り出して示す斜視図である。
図8】前後進レバーと操作伝達軸の連結部分とロック機構の構成を一部透視および断面で示す説明図である。
図9】前後進レバーの構成を示す側面図である。
図10】(A)は前後進レバーが下方向に回動しているときの突出部と規制部材との一状態を示す説明図、(B)は前後進レバーが上方向に回動しているときの突出部と規制部材との一状態を説明図である。
図11】前後進レバーの3つの切り替え位置に移動しているときの状態を重ねて示す上面図である。
図12】(A)はロック機構における突出部と規制部材との構成を上方から見た状態で示す概念図、(B)は(A)のQ-Q線にほぼ沿う概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1および図2には、本発明の実施形態に係る作業車両の一例であるトラクタ1が示されている。
このトラクタ1は、左右一対の前輪5および後輪6を有する車体2に、エンジン3、動力伝達装置4、操縦席7等の機器が搭載又は設けられている。このうちエンジン3は、開閉可能に設けられたボンネットカバー11で覆われている。動力伝達装置4は、ミッションケース40内に配置される図示しないクラッチ機構、主変速装置、副変速装置、前後進切替機構、デフ装置等により構成されている。
【0022】
また、トラクタ1は、エンジン3の回転動力が動力伝達装置4等を経由して左右の前輪5と左右の後輪6に伝達されて駆動する四輪駆動(4WD)と左右の後輪6に伝達されて駆動する二輪駆動(2WD)との駆動方式が切り替え可能であり、そのいずれかの駆動方式で走行する。
さらに、トラクタ1は、車体2の後部に、ロワリンク29等の取付け部分を介してロータリ耕うん機等の図示しない作業機を装着することにより所望の作業を行うことが可能である。車体2の後部(ミッションケース40の後部)には、装着した作業機にエンジン3の回転動力を出力するためのPTO軸49が設けられている。
【0023】
操縦席7は、屋根、窓、開閉扉、枠フレーム等からなる操縦室であるキャビン20の内部に設けられている。
操縦席7の前方には、前輪5を操舵するステアリングホイール12が設けられている。ステアリングホイール12は、図2から図4等に示されるように、ダッシュボード21の上端部におけるコラムカバー22内に配置されたオービットロール(登録商標)等の油圧式操舵補助機器25(図4)にコラム軸を介して支持されている。
ステアリングホイール12の前方の斜め下方には、運転者に対して操縦に関する情報(走行速度、動作状態など)を表示するメータパネル13が設けられている。メータパネル13は、例えば速度計13a、液晶表示部13b等が配置されている。
【0024】
ステアリングホイール12の下方のコラムカバー22の左側面部には、前進走行と後進走行の切り替えを行うよう操作する前後進レバー14が設けられている。
またステアリングホイール12の下方のコラムカバー22の右側面部には、エンジン3の回転数を変更するスロットルレバー15、ウインカーレバー16等が設けられている。
【0025】
キャビン20の床面側20bには、図2等に示されるように、アクセルペダル25、左右のブレーキペダル26L,26R、PTO変速レバー17、クラッチペダル27等が設けられている。
キャビン20内で操縦席7の周囲には、主変速レバー18、図示しない副変速レバー、ポジションレバー等が設けられている。
【0026】
このトラクタ1では、前後進レバー14として、以下の構成からなるものを採用している。
【0027】
まず、前後進レバー14は、図2から図4等に示されるように、操作伝達軸51を中心にしてトラクタ1の前進方向に対する前後方向C1,C2に回動させるよう操作することにより、前進走行と後進走行の切り替えを行うようになっている。
【0028】
本実施形態における前後進レバー14は、前後方向C1,C2への回動により、図12(A)に示されるように、前進位置、中立位置、後進位置の3つの切り替え位置のいずれかの位置に移動させて留めるよう構成されている。
前進位置は前進走行に切り替えるときに選択して移動させる位置であり、後進位置は後進走行に切り替えるときに選択して移動させる位置である。中立位置は、前進走行および後進走行のいずれもしないときに選択して移動させる位置である。また、前進位置、中立位置および後進位置は、この順番で前進方向の前から後にむけて所要の間隔をあけてほぼ一列に並ぶよう配置されている。この前進位置、中立位置および後進位置は、厳密には、動力伝達装置4における図示しない前後進切替機構で切り替えることになる前進位置、中立位置および後進位置に対応する位置として設定される。
【0029】
操作伝達軸51は、前後進レバー14の前後方向C1,C2に回動させる操作をしたときの動き(回転運動)を、前後進レバー14の下方に配置される動力伝達装置4における図示しない前後進切替機構の入力作動軸45まで直接又は間接的に伝達させる円柱状の軸である。
【0030】
本実施形態における操作伝達軸51は、図3図4に示されるように、前後進切替機構の入力作動軸45との間に中継伝達軸52を加えて、上記操作の動きを間接的に伝達させるよう構成されている。このときの操作伝達軸51と中継伝達軸52との間は、第1ユニバーサルジョイント55Aにより回転伝達可能に連結されている。また中継伝達軸52と入力作動軸45の間についても、第2ユニバーサルジョイント55Bにより回転伝達可能に連結されている。
【0031】
これにより、本実施形態では、図3図4図11等に示されるように、前後進レバー14が前方向C1又は後方向C2にそれぞれ回動されて操作されると、その各動きが操作伝達軸51と中継伝達軸52を介して入力作動軸45にそれぞれ伝達されて入力作動軸45が矢印E1又はE2で示す方向にそれぞれ回動する。そして最後に、その入力作動軸45が回動するときの各位置に応じて前後進切替機構における切り替え動作が行われる。
【0032】
また、操作伝達軸51は、ステアリングホイール12を下方から支持する支持ブラケット24の左右の片側部分(本例では左の側板部24b)に取り付けられた保持パイプ71に回動可能に支持されている。
【0033】
支持ブラケット24は、例えば傾斜板部24a、左右の側板部24b,24c、上端取付け板部24e等を組み合わせて構成されており、エンジンルームとキャビン20とを隔てるパネルダッシュ(隔壁板)23に取り付けられている。ちなみに支持ブラケット24の上端取付け板部24eには、上記油圧式操舵補助機器25が取り付けられている(図4)。
【0034】
保持パイプ71は、支持ブラケット24における左の側板部24bに取付け板72を介して溶接等により固定されているとともに、その上端部が上端取付け板部24eの左端部に形成された切り欠き部にはめ込まれて支持されている。
【0035】
次に、前後進レバー14は、図3図4図8等に示されるように、操作伝達軸51の上端部51aに対して上下方向D1,D2に回動可能に取り付けられている。
このときの上下方向D1,D2は、重力の方向に沿う上下の方向に限定されるものでなく、本実施形態では、操作伝達軸51の軸方向に沿って前後進レバー14を持ち上げて移動させるときの方向を上方向C1とし、その持ち上げをやめたときに前後進レバー14が操作伝達軸51の軸方向に沿って下降するよう移動するときの方向を下方向C2としている。
【0036】
上下方向D1,D2に回動可能な取り付けのために操作伝達軸51は、図6に示されるように、その上端部が、板状の形状に形成されるとともにその一部に回動軸(ヘッダーピン)62を通す貫通した軸通し孔53が形成された連結部51aとして構成されている。
また上下方向D1,D2に回動可能な取り付けのために前後進レバー14は、図6等に示されるように、その下部に、操作伝達軸51の上端部でもある連結部51aに回動軸62を介して回動可能に取り付けられて連結される連結部材61を備えている。
【0037】
前後進レバー14は、上端部141aと下端部141bが内側に曲がる形状の本体部141と、本体部141の曲げ上端部141aから延設された把持用芯部142と、その把持用芯部142を被覆する被覆部材143とで構成されている。この前後進レバー14は、本体部141の曲げ下端部141bが操作伝達軸51の軸方向と平行した状態になり、しかもその曲げ上端部141aが前進方向の左側外方に向く状態にして使用される。
【0038】
連結部材61は、操作伝達軸51の板状の形状に形成された連結部51aを回動可能に嵌め入れて挟持する嵌め入れ空間61eを有する形状(フォーク形状)からなる部材であり、その嵌め入れ空間61eを形成する対向部分に回動軸62を通す貫通した軸通し孔63が設けられた部材である。この連結部材61は、前後進レバー14の本体部141の曲げ下端部141bに溶接、取付け治具等の手段により固定して取り付けられている。
【0039】
前後進レバー14は、図6図8等に示されるように、連結部材61の嵌め入れ空間61e内に操作伝達軸51の連結部51aを嵌め入れた後に、回動軸62を図6の一点鎖線で示すように連結部材61における軸通し孔63と連結部51aにおける軸通し孔53に貫通させるよう取り付ける。
これにより、前後進レバー14は、連結部材61が回動軸62を中心にして回動することで操作伝達軸51の連結部51aに対して上下方向D1,D2に回動可能に取り付けられる。
【0040】
次に、前後進レバー14は、図3から図8等に示されるように、前後進レバー14の下部に設ける突出部81と、その突出部81の後述する移動を阻止するとともにその阻止を解除する形状からなる規制部材82と、前後進レバー14を下方向D2に回動させるよう付勢する付勢部材86とを有するロック機構80を備えている。
【0041】
ロック機構80における突出部81は、図6図8図9等に示されるように、前後進レバー14の曲げ下端部141bの下端面において曲げ下端部141bの外径よりも小径の突起した形状からなる部分である。
この突出部81は、規制部材82の後述する凹部83に少なくとも入り込んで収容される形状および寸法のものであればよい。また突出部81は、例えば、曲げ下端部141bの下方に延びる基材部分を円柱および円錐台状に絞るよう切削加工して得るか、又はその小径からなる部材を曲げ下端部141bの下端面に固定させることで得られる。
【0042】
ロック機構80における規制部材82は、図4図7図8図10図12等に示されるように、前後進レバー14を下方向D2に回動させた状態のときに突出部81が切り替え位置から前後方向C1,C2の少なくとも一方に移動しようとするときの進行先に存在して当該移動を阻止する一方で、前後進レバー14を上方向D1に回動させた状態のときに突出部81が前後方向C1,C2に移動しようとするときの進行先に存在せずに当該移動を阻止しない形状からなる部材である。
【0043】
上記の突出部81が切り替え位置から前後方向C1,C2の少なくとも一方に移動とは、本実施形態では以下のことを意味している。
すなわち、前後方向C1,C2の一方に移動するとは、前後進レバー14が複数ある切り替え位置のうち両端に配置される切り替え位置(本実施形態における前進位置と後進位置)にある場合、その切り替え位置の前進位置から後方向C2に移動することと、その切り替え位置の後進位置から前方向C1に移動することが該当する。また、前後方向C1,C2の双方に移動するとは、前後進レバー14が両端以外の内側に配置される切り替え位置(本実施形態における中立位置)にある場合、その切り替え位置の中立位置から前方向C1又は後方向C2にそれぞれ移動することが該当する。
【0044】
本実施形態における規制部材82としては、図12に示されるように、前進位置と後進位置との間になる中間の位置に存在するよう配置される本体部分82aに、前後進レバー14を下方向D2に回動させた状態のときに突出部81が入り込んで前後方向C1,C2への移動が阻止される凹部83を有した形状からなる部材が適用される。
【0045】
詳しくは、規制部材82は、図7図8等に示されるように、上記中間の位置に存在するよう配置させる本体部分82aを有する細長い形状からなる平板状の板材で構成されている。
【0046】
また、この板材からなる規制部材82は、その本体部分82aの前後方向における中間の位置に、貫通した穴からなる凹部83を設けている。
凹部83は、前後進レバー14の下部にある突出部81が入り込んで収容されることが可能な深さを有するとともに、その突出部81が前後進レバー14と一体に前後方向C1,C2に移動しようとしたときにその移動を接触により阻止することができる前後の内壁83a,83bを有している。さらに、凹部83は、図7等に示されるように、上下方向D1,D2に回動するときの前後進レバー14における突出部81が出入りしやすいようにすることを考慮して、左右方向に長い長穴形状で形成されている。なお、凹部83については、貫通しない窪み(溝)からなるものとしてもよい。
【0047】
さらに、板材からなる規制部材82は、その本体部分82aの凹部83を挟んだ前後の位置に、切り替え位置としての前進位置にあるときの前後進レバー14の突出部81が後方向C2に移動することを阻止する第1阻止部84と、切り替え位置としての後進位置にあるときの前後進レバー14の突出部81が前方向C1に移動することを阻止する第2阻止部85とを設けている。
第1阻止部84と第2阻止部85は、本体部分82aの凹部83を挟んだ前後における端面部分にて構成されている。第1阻止部84は、左から右に斜め前方に傾斜して直線状に延びる端面部分で形成されている。また第2阻止部85は、左右の方向にほぼ沿って直線状に延びる端面部分で形成されている。
【0048】
この規制部材82は、図7(B)、図8等に示されるように、その本体部分82aから延びる取付部分82bが、ステアリングホイール12を支持する支持ブラケット24における上端取付け板部24eの上面のうち操作伝達軸51の上端部(本例では連結部51aを除く上部)の付近に隣接した状態で配置されるよう溶接等の固定手段により固定して取り付けられている。また、操作伝達軸51の上端部の付近は、本実施形態では実際のところ、操作伝達軸51を保持している保持パイプ71のうち上端取付け板部24eから突出している部分の横になる。
また、この規制部材82は、図7(A)等に示されるように、その本体部分82aがコラムカバー22の左側面部に設けた開口部22aから外側に露出した状態になるよう配置される。ちなみに、この開口部22aが設けられたコラムカバー22は、本実施形態における前後進レバー14に関する構成(ロック機構80)を有していないコラムカバーと兼用することができる。
【0049】
ロック機構80における付勢部材86は、図6図8に示されるように、操作伝達軸51を挟んで前後進レバー14とは反対側の位置に配置されている。付勢部材86としては、コイルスプリングを適用している。
【0050】
まず、本実施形態では、図6図8図10等に示されるように、操作伝達軸51の連結部51aよりも下方になる部分に、操作伝達軸51と直交する上面56aを有する固定部材56が取り付けられている。
固定部材56は、操作伝達軸51の外周を取り囲むような形状からなる平板で構成されている。この固定部材56は、その下面が、操作伝達軸51を保持パイプ71に挿通させて保持させるときに保持パイプ71の上端部71aと摺動可能に接触して、操作伝達軸51の位置決めをするとともに回動可能に保持するようになっている。
【0051】
この固定部材56は、付勢部材86の下端部86bを取り付ける付勢部材取付け部87が設けられている。
付勢部材取付け部87は、固定部材56のうち操作伝達軸51を挟んで前後進レバー14とは反対側になる部分に存在するよう配置されている。また、付勢部材取付け部87は、上部に付勢部材86の下端部86bを収容して保持する保持孔87aを設けた円筒状の構造部として形成されている。本実施形態における付勢部材取付け部87は、固定部材56の上面56aから上方に立ち上げて前後進レバー14とは反対側になる方向に延びる台座部分89の上面に設けられている。
【0052】
一方、前後進レバー14の連結部材61には、付勢部材86の上端部86aを接触させた状態で保持する付勢部材保持部88が設けられている。
付勢部材保持部88は、付勢部材取付け部87と間隔をあけて向き合うとともに付勢部材86の上端部86aが接触し得る接触面88aを有する構造部分である。本実施形態における付勢部材保持部88は、連結部材61のうち軸通し孔63を挟んで前後進レバー14とは反対側になる上部に付勢部材取付け部87と向き合うよう延設された平板状の構造部として形成されている。
【0053】
付勢部材86は、図6図8に示されるように、その下端部86bが付勢部材取付け部87の保持孔87a内に収容されて保持される一方で、その上端部86aが付勢部材保持部88の接触面88aに接触し得る状態にされることにより取り付けられている。
【0054】
この際、付勢部材86は、図8に示されるように、前後進レバー14が下方向D2に回動して停止しているときにも所要の量だけ収縮した状態に保たれるように取り付けられている。このため、前後進レバー14が下方向D2に回動して停止しているときにも、付勢部材86は、そのときの前後進レバー14を下方向D2に回動させるよう付勢するようになっている。
【0055】
また、この付勢部材86は、前後進レバー14が回動軸62を中心にして上方向D1に回動されるときに、前後進レバー14と一体で動く付勢部材保持部88の接触面88aによって矢印H1で示す方向に押されることで収縮するよう弾性変形する。これにより、このときの付勢部材86には、その収縮により矢印H2で示す方向にむかう復元力(ばね力)が前後進レバー14を下方向D2に回動させるよう付勢力として発生する。
【0056】
また、前後進レバー14は、図8から図10等に示されるように、連結部材61の下部61bに、前後進レバー14を上下方向D1,D2に回動させたときに固定部材56の上面56aにそれぞれ接触して当該回動の範囲を制限する第1接触部66および第2接触部67を設けている。
【0057】
第1接触部66は、前後進レバー14を上方向D1に回動させたときに固定部材56の上面56aに接触して、前後進レバー14のそれ以上の上方向D1への回動を制限するストッパとして機能する。また、第1接触部66は、切り替えのために前後進レバー14を前後方向(C1,C2)に回動させるときにも上方向D1への回動を制限しつつ固定部材56の上面56aに沿って案内するガイドとしても機能する。この第1接触部66は、例えば、前後進レバー14の下部における突出部81が規制部材82の凹部83から完全に抜け出た状態(図10(B))になる位置で回動を制限するように設定されている。
【0058】
一方、第2接触部67は、前後進レバー14を下方向D2に回動させたときに固定部材56の上面56aに接触して、前後進レバー14のそれ以上の下方向D2への回動を制限するストッパとして機能する。この第2接触部67は、例えば、前後進レバー14の下部における突出部81が規制部材82の凹部83に入り込んで凹部83の内壁83a,83bに接触して移動が阻止され得る状態(図10(A)、図12(B))になる位置で回動を制限するように設定されている。
【0059】
以下、前後進レバー14の切り替え動作について説明する。
【0060】
はじめに、前進走行および後進走行のいずれもしない場合、つまり停止した状態にしておく場合は、図3図11に示されるように、前後進レバー14が中立位置となる切り替え位置に移動した状態におかれる。
【0061】
この際、中立位置にあるときの前後進レバー14(N)は、図8図10(A),図12等に示されるように、回動軸62を中心にして下方向D2に回動して、ロック機構80における突出部81が規制部材82の凹部83内に落ち込むよう入り込んで収容された状態になる。
また、このとき前後進レバー14(N)は、図10(A)に示されるように、連結部材61の第2接触部67が固定部材56の上面56aに接触することで、下方向D2へのそれ以上の回動が制限されて停止した状態に保たれる。
【0062】
そして、このときの前後進レバー14(N)に運転者等が誤って触れてしまい、その前後進レバー14(N)が前方向C1に回動して移動するよう操作させられるか、あるいは後方向C2に回動して移動するよう操作されたと仮定する。この場合、その前後進レバー14(N)における突出部81も前後方向C1,C2に一体になって移動しようとする。
【0063】
しかし、この場合は、前後進レバー14(N)が連結部材61における付勢部材保持部88を介して付勢部材86の付勢力F1(図8)により下方向D2に回動するよう付勢されているので、その突出部81が規制部材82の凹部83内に収容された状態で保持されているとともに上方向D1に移動しにくい状態になっている。
またこの場合は、その突出部81が前後方向C1,C2に移動しようとしても、その各進行先に存在する規制部材82の凹部83における前方側の内壁面83a又は後方側の内壁面83bにそれぞれ接触して、その移動が阻止される。これにより、前後進レバー14(N)が前後方向C1,C2に移動してしまうことがない。
【0064】
したがって、トラクタ1においては、中立位置にあるときの前後進レバー14(N)が誤操作により、前進位置又は後進位置の切り替え位置に移動して切り替えられてしまうことが防止される。
【0065】
次に、前進走行をする場合は、前後進レバー14が中立位置となる切り替え位置から前進位置となる切り替え位置に移動させられる。
【0066】
この場合、まず、中立位置にある前後進レバー14(N)は、図10(B)や図11に示されるように、回動軸62を中心にして上方向D1に回動させられるよう、運転者の手に把持されて一旦持ち上げられる。
【0067】
これにより、その前後進レバー14(N)における突出部81は、図10(B)や図12(B)に示されるように、前後進レバー14(N)の回動に合わせて上方向D1に移動してロック機構80における規制部材82の凹部83内から抜け出した状態(凹部83による移動の阻止が解除された状態)になる。また、このときの突出部81は、前方向C1に移動するときの進行先にその移動を阻止するものがないので、前方向C1へ自由な移動が可能な状態にもなる。
【0068】
この持ち上げられたときの前後進レバー14(N)は、図10(B)に示されるように、連結部材61の第1接触部66が固定部材56の上面56aに接触することで、上方向D1へのそれ以上の回動が制限された状態に保たれる。また、このときの前後進レバー14(N)は、上方向D1への回動に伴い付勢部材86がさらに収縮した状態になるので、その追加で収縮した分だけ強く下方向D2に回動させる付勢力を受けることになる。
【0069】
続いて、一旦持ち上げられた状態の前後進レバー14(N)は、運転者の手に把持されたままで操作伝達軸51を中心にして前方向C1に回動させられて中立位置よりも前方にある前進位置の切り替え位置まで移動させられ、その前進位置の切り替え位置に達したところで運転者の手から離される。
【0070】
上記手離されたときの前後進レバー14は、前進位置の切り替え位置において、付勢部材86の付勢力を受けつつ回動軸62を中心にして下方向D2に回動するよう移動する。またこのときの前後進レバー14は、連結部材61の第2接触部67が固定部材56の上面56aに接触することで下方向D2へのそれ以上の回動が制限されて停止した状態に保たれる。
この前方向(C1)に回動させるときの前後進レバー14は、第2接触部67を固定部材56の上面56aに接触させた状態で回動させると、上面56aに沿って安定した状態で回動および移動するようになる。
【0071】
また、このときの前後進レバー14の前方向C1への回動の動き(前方向C1にむけた円弧運動)は、操作伝達軸51と中継伝達軸52を介して前後進切替機構における入力作動軸45に伝達され、入力作動軸45を矢印E1で示す方向に回動させる(図11)。これにより、前後進切替機構は前進位置に切り替えられた状態になる。
以上の操作をした前後進レバー14は、図11に示されるように前進位置の切り替え位置に移動した前後進レバー14(F)になる。
【0072】
また、前進位置の切り替え位置に移動した前後進レバー14(F)における突出部81は、図12に示されるように、ロック機構80における規制部材82の第1阻止部84よりも前方の位置に移動して停止した状態になる。
【0073】
そして、このときの前後進レバー14(F)に運転者等が誤って触れてしまい、その前後進レバー14(F)が後方向C2に回動して移動するよう操作されたと仮定する。この場合、その前後進レバー14(F)における突出部81も後方向C2に一体になって移動しようとする。
【0074】
しかし、この場合は、前後進レバー14(F)が連結部材61における付勢部材保持部88を介して付勢部材86の付勢力F1(図8)により下方向D2に回動するよう付勢されているので、その突出部81が規制部材82の第1阻止部84よりも前方の位置で停止した状態で保持されやすくなっているとともに、上方向D1に移動しにくい状態になっている。
またこの場合は、その突出部81が後方向C2に移動しようとしても、その進行先に存在する規制部材82の第1阻止部84に接触して、その移動が阻止される。これにより、前後進レバー14(F)が後方向C2に移動してしまうことがない。
【0075】
したがって、トラクタ1においては、前進位置にあるときの前後進レバー14(F)が誤操作により、前進位置よりも後方側にある中立位置又は後進位置の切り替え位置に移動して切り替えられてしまうことが防止される。
【0076】
次に、後進走行をする場合は、前後進レバー14が中立位置となる切り替え位置から後進位置となる切り替え位置に移動させられる。
【0077】
この場合も、前進位置の切り替え位置に切り替える場合と同様に、まず中立位置にある前後進レバー14(N)は、図10(B)や図11に示されるように、回動軸62を中心にして上方向D1に回動させられるよう、運転者の手に把持されて一旦持ち上げられる。
【0078】
続いて、一旦持ち上げられた状態の前後進レバー14(N)は、運転者の手に把持されたままで操作伝達軸51を中心にして後方向C2に回動させられて中立位置よりも後方にある後進位置の切り替え位置まで移動させられ、その後進位置の切り替え位置に達したところで運転者の手から離される。
【0079】
このときの前後進レバー14の後方向C2への回動の動き(後方向C2にむけた円弧運動)は、操作伝達軸51と中継伝達軸52を介して前後進切替機構における入力作動軸45に伝達され、入力作動軸45を矢印E2で示す方向に回動させる(図11)。これにより、前後進切替機構は後進位置に切り替えられた状態になる。
以上の操作をした前後進レバー14は、図11に示されるように後進位置の切り替え位置に移動した前後進レバー14(R)になる。
【0080】
また、後進位置の切り替え位置に移動した前後進レバー14(R)における突出部81は、図12に示されるように、ロック機構80における規制部材82の第2阻止部85よりも後方の位置に移動して停止した状態になる。
【0081】
そして、このときの前後進レバー14(R)に運転者等が誤って触れてしまい、その前後進レバー14(R)が前方向C1に回動して移動するよう操作されたと仮定する。この場合、その前後進レバー14(R)における突出部81も前方向C1に一体になって移動しようとする。
【0082】
しかし、この場合は、前後進レバー14(R)が連結部材61における付勢部材保持部88を介して付勢部材86の付勢力F1(図8)により下方向D2に回動するよう付勢されているので、その突出部81が規制部材82の第2阻止部85よりも後方の位置で停止した状態で保持されやすくなっているとともに、上方向D1に移動しにくい状態になっている。
またこの場合は、その突出部81が前方向C1に移動しようとしても、その進行先に存在する規制部材82の第2阻止部85に接触して、その移動が阻止される。これにより、前後進レバー14(R)が前方向C1に移動してしまうことがない。
【0083】
したがって、トラクタ1においては、後進位置にあるときの前後進レバー14(R)が誤操作により、後進位置よりも前方側にある中立位置又は前進位置の切り替え位置に移動して切り替えられてしまうことが防止される。
【0084】
以上説明したように、このトラクタ1における前後進レバー14は、上記ロック機構80を備えていることにより、その切り替え作業が2段モーションで行われる。
つまり、前後進レバー14は、図12(B)に矢付き二点鎖線で例示されるように、現在ある切り替え位置から異なる切り替え位置に移動させる際には、最初に前後進レバー14を上方向D1に手で持ち上げて回動させる動作(1段目モーション)を行い、続いて、目的の切り替え位置である前方向C1又は後方向C2に回動させて移動させた後に把持する手を離して下方向D2に回動させる動作(2段目モーション)を行うようになる。
【0085】
<変形例>
なお、上記実施の形態では、付勢部材86については、前後進レバー14が回動軸62を中心にして上方向D1に回動されるときに、初めて付勢部材保持部88の接触面88aにより押されて収縮するよう弾性変形する状態で取り付けてもよい。
このように取り付けた付勢部材86では、前後進レバー14が上方向D1に回動されるときに初めて収縮するよう弾性変形して前後進レバー14を下方向D2に回動させる付勢力Fを発生するようになる。
【0086】
付勢部材86としては、付勢部材取付け部87と付勢部材保持部88の間に挟んだ状態で使用されるコイルスプリングに限定される他の形式の弾性部材を適用しても構わない。他の付勢部材86としては、例えば、回動軸62に巻き部が取り付けられるトーションばねを適用できる。
【0087】
規制部材82としては、中立位置に対応する凹部83に加えて、中立位置以外の切り替え位置(例えば前進位置や後進位置)に対応する凹部83が設けられた部材を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、トラクタなどの農作業用の車両に限られず、それ以外の各種作業用の車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 …トラクタ(作業車両)
14…前後進レバー
51…操作伝達軸
51a…連結部
53…軸通し孔
56…固定部材
56a…上面
61…連結部材
62…回動軸
66…第1接触部
67…第2接触部
80…ロック機構
81…突出部
82…規制部材
83…凹部
86…付勢部材
87…付勢部材取付け部
88…付勢部材保持部
88a…接触面
C1,C2…前後方向
D1,D2…上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12