(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/117 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
A61B3/117
(21)【出願番号】P 2019515726
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2018017310
(87)【国際公開番号】W WO2018203538
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2017090979
(32)【優先日】2017-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017090980
(32)【優先日】2017-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】濱口 浩二
(72)【発明者】
【氏名】伴 光穂
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-104053(JP,A)
【文献】特開2004-357803(JP,A)
【文献】国際公開第2015/180923(WO,A1)
【文献】特開2016-059726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の隅角領域へ光を投光する投光光学系、および、前記隅角領域からの反射光を受光する受光素子を有する受光光学系、を持つ撮影光学系によって撮影された被検眼の隅角画像の画像データを取得する、画像データ取得手段と、
前記画像データに基づいて前記隅角画像をモニタへ表示させる制御手段であって、前記被検眼における上下左右と前記モニタ上の前記隅角画像における上下左右とが一致する正立像として表示する正立表示と、前記正立像に対する鏡像または倒立像により表示する反転表示と、
の2つの表示方法で各々の前記隅角画像を表示させることが可能であり、更に、前記正立表示と前記反転表示との間で
各々の前記隅角画像の表示方法を選択する、制御手段と、を有する眼科装置。
【請求項2】
前記撮影光学系は、隅角の全周における複数の撮影位置で前記隅角画像を撮影可能であって、
前記制御手段は、撮影位置が互いに異なる複数枚の隅角画像を、前記正立表示および反転表示のうち選択した一方の表示方法で、且つ、前記モニタ上に同時に表示させる請求項1記載の眼科装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記撮影位置毎に対応づけられた前記モニタ上の表示位置であって、前記モニタ上において円環状に並べられた表示位置へ、前記撮影位置が互いに異なる複数枚の前記隅角画像を、前記正立表示および反転表示のうち選択した一方の表示方法で表示させる、請求項2記載の眼科装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記隅角画像と共に、該隅角画像に関して選択されている表示方法を特定するための識別情報を前記モニタへ表示させる請求項1から3のいずれかに記載の眼科装置。
【請求項5】
前記被検眼に対する前記撮影光学系のアライメント調整のために、前記被検眼に対して前記撮影光学系を、上下方向および左右方向の少なくとも一方へ、操作部に対する検者の操作に基づいて移動させる移動機構を、更に備え、
前記制御手段は、前記撮影光学系による前記隅角画像の撮影動作を、更に制御し、前記アライメント調整を行わせるために、前記隅角画像を連続的に撮影すると共に、前記隅角画像を前記正立表示で随時表示させる、請求項1から4のいずれかに記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼の隅角画像の取得および表示を行う眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障診断において、被検眼の隅角(前房隅角)を観察することが有用である。隅角の観察は、従来、隅角鏡(ゴニオレンズ)を介して検者が目視で行っていた。隅角鏡の一種として、反射型の機器が知られている。反射型では、隅角が鏡像によって観察される。また、隅角鏡の一種として、屈折型の機器が知られている。屈折型では、隅角が正立像(または倒立像)によって観察される。
【0003】
隅角観察に関して、近年では、隅角を撮影する種々の装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
例えば、鏡像による隅角観察の場合、不慣れな検者は、観察像と、被検眼における実際の組織との対応関係を把握することが難しかった。
【0006】
また、例えば、隅角鏡には、隅角が反射像によって観察される反射型の機器と、正立像(または倒立像)によって観察される屈折型の機器と、が長らく存在している。故に、正立像、鏡像、或いは、倒立像のうち、いずれが好ましいと考えるかは、検者毎に異なっている。
【0007】
本開示は、従来技術の問題点の少なくとも1つを解決し、隅角画像を良好に表示することを目的とするものである。
【0008】
本開示の第1態様に係る眼科装置は、被検眼の隅角領域へ光を投光する投光光学系、および、前記隅角領域からの反射光を受光する受光素子を有する受光光学系、を持つ撮影光学系によって撮影された被検眼の隅角画像の画像データを取得する、画像データ取得手段と、前記画像データに基づいて前記隅角画像をモニタへ表示させる制御手段であって、前記被検眼における上下左右と前記モニタ上の前記隅角画像における上下左右とが一致する正立像として表示する正立表示と、前記正立像に対する鏡像または倒立像により表示する反転表示と、の2つの表示方法で各々の前記隅角画像を表示させることが可能であり、更に、前記正立表示と前記反転表示との間で各々の前記隅角画像の表示方法を選択する、制御手段と、を有する。
【0010】
本開示によれば、隅角画像を良好に表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例の眼科装置の概略構成を示した模式図である。
【
図4】実施例の眼科装置によって撮影される隅角画像を示した図である。
【
図5B】
図5Aに対する倒立像(180°反転)を模した図である。
【
図7】アライメント動作を示したフローチャートである。
【
図8】アライメント時に表示される画面を示した図である。
【
図9】第1のレイアウトによる撮影結果の一覧表示画面を示している。
【
図10】第2のレイアウトによる撮影結果の一覧表示画面であって、反転表示の場合を示している。
【
図11】第2のレイアウトによる撮影結果の一覧表示画面であって、正立表示の場合を示している。
【
図12】第3のレイアウトによる撮影結果の一覧表示画面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「概要」
以下、実施形態に基づいて、本開示の眼科装置を説明する。実施形態に係る眼科装置(
図1~
図3参照)は、画像データ取得部と、制御部と、を少なくとも備えていてもよい。眼科装置は、撮影光学系によって撮影された被検眼の隅角画像の画像データを、画像データ取得部によって取得する。そして、眼科装置は、画像データに基づく隅角画像の表示制御を制御部によって行う。
【0013】
<隅角画像の画像データ取得>
隅角画像は、被検眼の隅角領域からの反射光に基づいて形成(撮影)された反射画像(
図4参照)であってもよい。隅角領域は、被検眼の隅角、および、その近傍を含む領域であってもよい。
【0014】
眼科装置は、撮影光学系を備えてもよい(
図2参照)。この場合、撮影光学系による撮影の結果として、隅角画像の画像データが取得されてもよい。例えば、眼科装置のプロセッサがアクセス可能なメモリに、画像データが記憶されることによって、画像データが「取得」される。なお、隅角画像の画像データは、静止画像の画像データであってもよいし、動画像の画像データであってもよい。
【0015】
撮影光学系を有する場合、眼科装置における撮影処理部によって、隅角画像の画像データが、受光信号に基づいて生成および取得されてもよい。撮影処理部としては、例えば、眼科装置の動作を司るプロセッサが利用されてもよいし、専用の処理装置が利用されてもよい。
【0016】
<撮影光学系>
撮影光学系(
図2参照)は、被検眼の隅角領域を撮影するために利用される。撮影光学系は、撮影光軸に沿って、隅角領域への光の投光、および、隅角領域からの戻り光の受光を行う。
【0017】
撮影光学系は、隅角の表面組織における撮影範囲の全体に対して光を照射し、撮影範囲からの戻り光を受光素子によって受光する構成であってもよい。以下の実施形態の説明では、主に、1枚の隅角画像の撮影範囲は、隅角全周の一部であるものとする。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、撮影範囲が、隅角全周に及んでいてもよい。また、撮影光学系は、撮影範囲の大きさを切換え可能であってもよく、撮影範囲の大きさが互いに異なる隅角画像を撮影可能であってもよい。例えば、1枚で隅角の全周を撮影した全周画像と、隅角全周のうち一部の隅角領域を撮影した部分画像と、を切換えて撮影可能であってもよい。なお、撮影範囲は、例えば、1回の撮影トリガの入力に基づいて撮影(画像化)される隅角の領域のことをいう。
【0018】
受光素子は、撮像素子等の二次元受光素子であってもよい。二次元受光素子は、受光面に結像される隅角の像を、隅角画像として撮影する。但し、撮影光学系は、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、撮影光学系は、ラインスキャン、または、二次元スキャンタイプの光学系であってもよい。この場合、撮影範囲に対して光をスキャン(ラインスキャンまたは二次元スキャン)することにより、スキャン毎の戻り光の受光信号に基づいて、隅角画像の画像データが生成されてもよい。隅角画像の画像データは、画像の上下左右と、画像内における被写体の上下左右とが一致する正立像であってもよいし、正立像に対する鏡像または倒立像であってもよい。つまり、正立像に対して反転された画像であってもよい。
【0019】
撮影光学系は、投光光学系と、受光光学系と、を少なくとも有する。投光光学系は、被検眼の隅角領域へ、光を投光する。投光光学系から投光される光は、可視光であってもよいし、不可視光(例えば、赤外光)であってもよい。また、単色光であってもよいし、多色の光であってもよい。受光光学系は、隅角領域からの反射光を受光する受光素子を、少なくとも有する。
【0020】
撮影光学系は、固視光軸に対して傾斜し、且つ、隅角領域へ向かう、撮影光軸を有してもよい。この撮影光軸を介して、隅角領域に対する光が投受光される。固視光軸は、例えば、被検眼に対する固視標の投影光軸である。固視標が投影される場合、眼科装置は、固視標を投影するための固視光学系を、更に有していてもよい。
【0021】
撮影光学系には、次のような対物光学系が設けられていてもよい。即ち、光源からの光を折り曲げることにより、撮影光軸を固視光軸に対して傾斜させて被検眼の隅角領域に導く、対物光学系が設けられていてもよい。撮影光学系における対物光学系は、反射系であってもよい。つまり、対物光学系には、ミラー、または、プリズム等の光を反射する部材が含まれていてもよい。対物光学系は、撮影光学系において、最も被検眼側に配置されてもよい。対物光学系によって、光源からの光であって装置の内部から外部に向かう光が、固視光軸に向けて折り曲げられる(例えば、反射される)。これによって、固視光軸に対して傾斜した撮影光軸が形成されてもよい。なお、対物光学系は、必ずしも反射系に限定されるものではなく、一部、または、全体が、屈折系(例えば、レンズ系)によって形成されていてもよい。
【0022】
<隅角画像の撮影位置の切換>
眼科装置が撮影光学系を有する場合、隅角の全周に対する撮影光学系における撮影位置を変位させる切換部(「撮影位置切換部」ともいう)を、更に有してもよい。切換部が設けられていることで、隅角の全周における複数の撮影位置において隅角画像を撮影できる。結果、眼科装置は、複数の撮影位置で撮影された隅角画像の画像データを取得できる。このとき、更に、撮影条件を示す撮影条件データの一種として、それぞれの隅角画像の撮影位置を示すデータ(「撮影位置データ」と称す)を、それぞれの隅角画像と対応づけて取得(例えば、メモリに記憶)してもよい。
【0023】
なお、眼科装置は、予め定められた複数の撮影位置の中から1つを選んで隅角画像を撮影する装置であってもよいし、隅角の全周から任意に撮影位置を設定して隅角画像を撮影する装置であってもよい。
【0024】
撮影光軸が固視光軸に対して傾斜している場合、切換部は、例えば、撮影光軸を、固視光軸周りに回転させるユニットであってもよい。切換部は、撮影光学系の一部、または、全体を、固視光軸の周りに回転させることで、撮影光軸を固視光軸周りに回転させてもよい。この場合、切換部は、モーターなどの駆動源を有していてもよい。また、この場合、撮影毎の回転位置を示すデータが、撮影位置を示す撮影位置データとして利用されてもよい。
【0025】
また、撮影光学系がスキャンタイプの光学系である場合、照明光を走査する光スキャナが、切換部として利用され得る。この場合、光スキャナの駆動位置(つまり、走査範囲)を示すデータが、撮影位置データとして利用されてもよい。
【0026】
なお、撮影位置データは、例えば、切換部の駆動位置の検出結果であってもよいし、駆動位置の指令データであってもよい。切換部の駆動位置の検出結果として、撮影位置データが取得される場合、駆動位置を検出するセンサ(例えば、上記の回転位置を検出するセンサ)を有していてもよく、センサからの検出信号に基づいて撮影位置データが取得されてもよい。
【0027】
なお、切換部は必ずしもこれに限られるものでない。例えば、固視光軸に対して傾斜された撮影光軸を固視光軸周りに回転させるのではなく、切換部は、被検眼の視線の向きが大きく変位されるように、固視を誘導する構成であってもよいし、被検眼と装置との3次元的な位置関係を調整する構成であってもよいし、これらを組み合わせた構成であってもよい。
【0028】
<隅角画像の表示制御>
制御部(
図3参照)は、隅角画像の表示処理を少なくとも行う。制御部としては、例えば、眼科装置の動作を司るプロセッサが利用されてもよいし、専用の処理装置が利用されてもよい。
【0029】
本実施形態では、表示処理の結果として、モニタ上に、被検眼の隅角画像が、1枚ないしは複数枚表示される。複数枚の隅角画像がモニタ上に同時に表示される場合、各々の画像は、隅角全周における撮影位置が互いに異なるものであってもよい。
【0030】
また、複数枚の隅角画像を、モニタ上に同時に表示することは、少なくとも1枚の合成画像を表示することによって行われてもよい。合成画像は、複数枚の隅角画像がコラージュされた画像である。
【0031】
制御部は、撮影位置が隣接する複数枚の隅角画像がコラージュされることで、1枚の画像に対して広範囲な合成画像を形成し、合成画像をモニタへ表示させてもよい。このとき、例えば、隅角の全周分に相当する複数枚の隅角画像がコラージュされてもよい。隅角の全周分に相当するコラージュ画像は、直線状の画像として生成されてもよいし、円環状の画像として生成されてもよい。但し、コラージュ画像は、必ずしも全周分に相当するものである必要は無く、例えば、全周の一部に相当する複数枚の隅角画像がコラージュされてもよい。一具体例としては、隅角全周を、nasal,superior,temporal,inferiorの4つのパートに分けて、パート毎にコラージュ画像を生成してもよい。
【0032】
複数枚の隅角画像がモニタ上で同時に表示される場合、各画像の表示位置は、隅角の全周における撮影位置と予め対応付られていてもよい。このとき、撮影位置同士の位置関係に応じて、表示位置が設定されていてもよい。例えば、被検眼を正面視するときの位置関係で各隅角画像がモニタ上に配置されるように、各々の隅角画像の表示位置が設定されていてもよい。具体的には、
図5A,
図10に示すように、複数枚の隅角画像が、被検眼を正面視したときの位置関係にて、モニタ上に円環状に配置されてもよい。
【0033】
<表示方法の選択>
本実施形態において、制御部は、正立表示と反転表示との間で、隅角画像の表示方法を選択する。正立表示が選択された場合、隅角画像は、正立像としてモニタ上に表示されるようになる。反転表示が選択された場合、隅角画像は、正立像に対する鏡像または倒立像として、モニタ上に表示されるようになる。正立像では、モニタ上の隅角画像における上下左右が、被検眼における上下左右と一致する。また、鏡像は、正立像が一軸に関して鏡像反転されたものであり、倒立像は、正立像が180°回転されたものである。
【0034】
表示方法は、検者による操作入力に基づいて制御部が選択してもよい。この場合、検者が所望する表示方法で、隅角画像を観察することができる。つまり、従来の隅角鏡(ゴニオレンズ)を用いた目視による隅角検査に習熟した検者にとっては、反転像で観察することが好ましい場合が考えられ、一方で、隅角検査に不慣れな検者にとっては、正立像で観察することが好ましいと考えられる。検者による操作入力に基づいて表示方法が選択できる結果として、隅角画像による観察・診断が良好に行われやすくなる。
【0035】
また、隅角画像の表示方法は、装置の状態に応じて制御部が自動的に選択してもよい。例えば、制御部は、被検眼と装置とのアライメントが行われる場合に、アライメント用の観察画像として正立像による隅角画像を、モニタへ表示してもよい。モニタ上の隅角画像から把握されるアライメントズレの方向と、装置から見たアライメントズレの方向と、が一致するので、アライメントずれが何れの方向に生じているかを、検者がモニタ上の隅角画像から把握しやすくなる。
【0036】
複数枚の隅角画像が、各々の撮影位置と対応するモニタ上の表示位置に表示される場合において、各々の隅角画像におけるモニタ上の表示位置が、選択された表示方法に応じて切換えられてもよい。
【0037】
図5A~
図5Cを用いて、表示位置の切換の一例を示す。
図5Aにおけるドーナツ状領域Dは正立像による全周画像を模しており、
図5Bは、
図5Aに対する倒立像(180°反転)を模しており、
図5Cは、
図5Aに対する鏡像を模している。ここで、全周画像内の撮影位置を、「0」~「15」の数字で示している。なお、
図5Cにおいて各々の数に沿えた「#」は、各領域において正立像に対するミラー反転が行われていることを示している。
【0038】
図5Aに示すように、例えば、正立表示が表示方法として選択された場合は、モニタ上における各隅角画像の表示位置と、被検眼における各々の撮影位置との対応関係を、上下左右一致させる。
【0039】
一方、反転表示が表示方法として選択された場合は、
図5B、
図5Cに示すように、モニタ上における各隅角画像の表示位置と、被検眼における各々の撮影位置との対応関係を、正立表示の場合に対して反転させる。このとき、例えば、正立表示の場合に対し、隅角全周上での撮影位置が対角な関係(換言すれば、視軸に関して対象な関係)となる、少なくとも2枚の隅角画像の間で表示位置が入れ替わってもよい。
【0040】
例えば、正立表示と倒立表示との間で切換られる場合は、各隅角画像の表示位置を画像と共に画面上で180°回転させてもよい(
図5B参照)。
【0041】
また、例えば正立表示と鏡像表示との間で切換えられる場合は、各隅角画像の表示位置を画像と共に、一つの軸に関して鏡像反転させてもよい。
【0042】
ところで、従来の反射型の隅角鏡では、中心軸の周りに複数枚(3~6枚程度)の反射面を有しており、このような隅角鏡を介した観察では、隅角全周が反射面毎に分割されて行われる。すなわち、反射面の数に応じて分割された領域の鏡像が観察される。そこで、例えば、制御部は、正立表示と鏡像表示との間で表示位置が切換えられる場合は、隅角全周を複数のパートに分け(例えば、nasal,superior,temporal,inferiorの4つのパートに分け)、鏡像反転と表示位置の変更とがパート単位で行ってもよい(
図5C参照)。
【0043】
以上のように、各々の隅角画像におけるモニタ上の表示位置が、選択された表示方法に応じて切換わることで、正立表示と反転表示とのいずれが選択される場合においても、隅角全周における各位置と、隅角画像との対応関係を検者が良好に把握しやすくなる。
【0044】
<位置指標>
制御部は、隅角画像と共に、隅角領域上の位置を、隅角画像の全体または一部と対応付けて示す位置指標を、モニタへ出力してもよい。
【0045】
隅角画像において描写される隅角領域の向きを特定する情報が、位置指標として出力されてもよい。位置指標は、各撮影位置の絶対位置を示してもよいし、撮影位置同士の相対位置を示してもよい。また、位置指標は、隅角全周において予め定められた位置を示すものであって、予め定められた位置と対応する画像領域を示す情報であってもよい。
【0046】
位置指標は、文字、数字、および、記号等のテキスト情報であってもよいし、図形等のグラフィカルな情報であってもよい。勿論、位置指標は、その他の方法で撮影位置を示す情報であってもよい。
【0047】
位置指標の基となっている撮影位置は、例えば、隅角画像と対応し、且つ、隅角画像と共に予め取得された撮影条件データに基づいて特定される。制御部は、撮影条件データに基づいて特定される撮影位置を示す位置指標を、モニタへ出力する。隅角領域上の位置を、隅角画像の全体または一部と対応付けて示す位置指標によって、検者は、隅角画像と、被検眼において撮影された部位との対応付けを容易に行うことができる。
【0048】
複数枚の隅角画像がモニタ上に表示される場合に、全ての隅角画像に対して位置指標が表示されてもよいし、一部の隅角画像に対して位置指標が表示されてもよい。また、1枚の隅角画像含まれる画像領域毎に、位置指標が表示されてもよい。
【0049】
例えば、隅角全周を表す隅角画像である全周画像と、隅角全周の一部の領域を表す隅角画像である部分画像と、が、モニタ上において、同時に、または、切り替えて表示される場合において、制御部は、次のようにして位置指標を表示してもよい。例えば、部分画像と,全周画像において部分画像と対応する画像領域と,のそれぞれに、共通する位置指標を対応付けて表示してもよい。また、全周画像において部分画像と対応する画像領域を強調する指標を、部分画像における位置指標として表示してもよい。このような表示が行われることにより、部分画像と、全周画像において部分画像と対応する領域との対応関係を、容易に検者が把握できる。
【0050】
なお、全周画像は、撮影位置が互いに異なる複数枚の隅角画像をコラージュした合成画像であってもよい。合成画像の場合、部分画像における周辺部分の情報を、他の部分画像と合成された結果として、検者が把握し難くなる場合があり得る。これに対し、合成画像だけでなく、部分画像が表示されることによって、各々の部分画像の周辺部分についても、検者が良好に観察できる。
【0051】
また、正立表示と倒立表示との間での表示方法の切換によって、モニタ上に表示される複数枚の隅角画像の表示位置が変化すると、各々の隅角画像における撮影位置を、検者が把握し難くなることが考えられる。しかし、本実施形態では、撮影位置を示す位置指標が、隅角画像の全体または一部と対応付けられて表示される。このため、モニタ上における複数の隅角画像の表示位置が変化したとしても、各々の隅角画像における撮影位置を、検者が容易に把握できる。また、位置指標のモニタ上における表示位置は、選択した表示方法に応じて切換えられてもよい。
【0052】
<アライメント駆動部>
眼科装置は、更に、アライメント駆動部を有していてもよい。アライメント駆動部は、被検眼と撮影光学系との位置関係を変更する。この場合、被検眼と撮影光学系とを相対的に移動させることによって、アライメント調整を行う。アライメント駆動部は、前後方向、左右方向、および、上下方向のいずれの方向に関する位置関係を変更してもよい。
【0053】
例えば、アライメント駆動部は、撮影光学系を被検眼に対して移動させるユニットであってもよい。アライメント駆動部は、メカニカルな機構であってもよいし、電動アクチュエータにより撮影光学系を移動させる機構であってもよいし、両者を含む機構であってもよい。アライメント駆動部は、例えば、操作部(例えば、ジョイスティック等)の操作に応じて手動で駆動されてもよいし、例えば、隅角画像に基づいて自動的に駆動されてもよい。
【0054】
<アライメントに関する動作>
例えば、隅角における特徴部を利用して、被検眼と撮影光学系とのアライメント調整が行われてもよい。以下の「実施例」では、主に、線維柱帯を特徴部として説明する。但し、線維柱帯以外の組織が、特徴部として利用されてもよい。他の特徴部として、Schwalbe(シュワルベ)線、強膜岬、毛様体帯、虹彩、病変による特徴部等を利用し得る。
【0055】
本実施形態における特徴部を利用したアライメントでは、制御部によって隅角画像の撮影が実行され、その隅角画像に含まれる特徴部の位置に基づいて、被検眼と撮影光学系との位置関係が調整され、その結果として、特徴部が撮影範囲に良好に含まれるようになる。
【0056】
「実施例」
以下、図面を参照して、本開示に係る眼科装置の実施例を示す。実施例に係る眼科装置1は、隅角撮影装置である。眼科装置1は、被検眼の隅角の反射画像(
図4参照)を撮影する。
【0057】
<装置構成>
図1を参照して、眼科装置1における概略的な装置構成を説明する。なお、以下の説明では、
図1に示すX方向を左右方向、Y方向を上下方向、Z方向を前後方向として説明する。
【0058】
眼科装置1は、被検眼Eの視軸に対して、斜め方向に照明光を照射する。つまり、眼科装置1における撮影光軸は、固視光軸に対して傾斜し、且つ、隅角領域へ向かっている。眼科装置1は、撮影光軸に沿って、隅角領域からの反射光の受光を行い、これにより、被検眼の隅角領域における反射画像を、隅角画像として撮影する。
【0059】
図1に示すように、眼科装置1は、基台3、アライメント機構4,5a,5b、顔支持ユニット6、ジョイスティック7、モニタ8、および、光学ユニット10等、を有する。
【0060】
光学ユニット10は、隅角の反射像の撮影に利用される主要な光学系を有する。光学系の詳細は、
図3を参照して後述する。実施例において、光学ユニット10は、カバー10a内に収容される。但し、先端部11については、カバー10aの外に露出される。
【0061】
基台3は、アライメント機構4,5a,5b、および、顔支持ユニット6を、支持する。
【0062】
本実施例におけるアライメント機構4,5a,5bは、移動台4と、XYZ駆動部5a,5bとに大別される。このうち、移動台4は、メカニカルな機構によって作動され、XYZ駆動部5a,5bは、電動式のアクチュエータによって作動される。
【0063】
移動台4は、基台3の上に配置され、基台3との間に、メカニカルな移動機構を有する。この移動機構は、XZ方向に移動台4を移動させ、その結果、XZ方向に関する被検眼Eと光学ユニット10との位置関係を調整する。検者は、ジョイスティック7を操作することによって、移動台4を基台3に対して移動させる。
【0064】
本実施例におけるXYZ駆動部5a,5bは、移動台4の上に更に積載されている。XYZ駆動部5a,5bは、眼科装置1の制御部80(
図3参照)からの制御信号に基づいて、光学ユニット10をXYZの各方向に移動させる。結果、XYZの各方向に関して、被検眼Eと光学ユニット10との位置関係が調整される。
【0065】
モニタ8は、検者側の筐体側面に配置されている。モニタ8は、光学ユニット10を介して撮影された隅角画像を表示する表示部であってもよい。
【0066】
<光学系>
次に、
図2を参照して、光学ユニット10に設けられた光学系を説明する。光学ユニット10は、撮影光学系30を少なくとも有している。また、本実施例では、更に、固視光学系70を有している。
【0067】
<固視光学系>
便宜上、まず、固視光学系70を説明する。固視光学系70は、少なくとも、固視光源(固視標)71を、有する。また、
図2において、固視光学系70は、更に、アパーチャ72、レンズ73、および、ミラー74、を有する。光源71から出射された光(固視光束)は、アパーチャ72を介して、レンズ73を通過することで、所定の光束径でコリメートされる。コリメートされた光が、ミラー74によって折り曲げられる。そして、固視光束は、レンズ49,および,対物反射部50(本実施例では、プリズム)の中心部を通過して被検眼Eに対して投影される。ここで、ミラー74は、撮影光学系30において隅角へ投受光される照明光を、遮らない位置に配置される。例えば、レンズ49の中央部に配置される。
【0068】
図2では、固視光学系70の光軸(より詳細には、固視光学系70の光軸のうち、ミラー74から被検眼Eまでの範囲)を、L1の符号で表す。また、L1を、固視光軸と称する。
図2に示す撮影光学系30の各部材は、固視光軸L1を基準として配置されている。
【0069】
<撮影光学系>
撮影光学系30は、投光光学系40と、受光光学系60と、を有する。また、撮影光学系30は、撮影光軸L2を有する。撮影光軸L2は、固視光軸L1に対して傾斜配置され、且つ、被検眼Eの隅角へ向かう。
【0070】
投光光学系40は、対物反射部50と、光偏心部48と、を、少なくとも有する。また、実施例において、投光光学系40は、光源41、レンズ42、アパーチャ43、レンズ44、ミラー45、リングアパーチャ46、穴開きミラー47、レンズ49、を、有している。
【0071】
光源41は、隅角に照射される照明光の光源である。本実施例において、光源41は、可視光を出射する。以下の説明では、隅角画像をカラー画像として得るために、波長域が異なる複数色の光(例えば、白色光)を、少なくとも出射可能であるものとする。
【0072】
光源41からの光(照明光)は、レンズ42、アパーチャ43、レンズ44、ミラー45、リングアパーチャ46、および、穴開きミラー47、を経由して、光偏心部48に入射される。
【0073】
ここで、リングアパーチャ46は、撮影光学系30の内部での反射による迷光を抑制するために設けられている。例えば、レンズ48c,レンズ49等の光源41側の表面による反射が、リングアパーチャ46によって抑制される。
【0074】
また、穴開きミラー47は、投光光学系40と、受光光学系60との光路を分岐させる光路分岐部の一例である。穴開きミラー47に代えて、ハーフミラー等の他のビームスプリッタが適用されてもよい。本実施例では、光源41からの光は、穴開きミラー47の鏡面によって、光偏心部48に向かうように反射される。
【0075】
なお、本実施例では、穴開きミラー47で反射された照明光の光路中心が、固視光軸L1と同軸となっている。
【0076】
光偏心部48は、照明光の光路を、固視光軸L1に対して偏心させる。本実施例では、平行に配置された2枚のミラー48a,48bを用いて照明光の光路中心を、固視光軸L1に対して所定間隔だけ、シフトする。シフトされた照明光は、レンズ48cを通過して、光偏心部48から外に照射される。
【0077】
レンズ49、および、対物反射部50は、それぞれの光軸が、光偏心部48によって偏心された照明光の光路中心から離れた位置に配置されている。本実施例において、レンズ49、および、対物反射部50における、それぞれの光軸は、固視光軸L1と同軸に配置されている。
【0078】
照明光は、レンズ49の周辺部(光軸から離れた領域)を通過して、対物反射部50へ導かれる。本実施例において、レンズ49は、マイナスパワーを持つレンズであり、光偏心部49から、固視光軸L1と略平行に出射される照明光を、固視光軸L1から離れる向きに折り曲げて、対物反射部50に入射させる。
【0079】
対物反射部50は、照明光を、固視光軸L1側に折り曲げる反射面を持つ。反射面によって反射された照明光の光軸を、固視光軸L1に対して大きく傾斜するように折り曲げて、装置外部に導く。このとき、装置外部へ導かれる光軸が、本実施例における撮影光軸L2として利用される。装置からの照明光は、撮影光軸L2に沿って、被検眼Eの隅角領域へ照射される。
【0080】
本実施例において、対物反射部50には、複数枚の反射面が、光軸周りに並べられて配置されている。対物反射部50の具体例として、本実施例では、例えば、正多角形を底面に持つ、錐台形状のプリズムが利用されるものとする。より詳細には、底面は、正16角形であり、16枚の側面を有するプリズムが利用される。本実施形態では、被検眼Eからみて、0°、22.5°、45°、67.5°、90°・・・(中略)…337.5°の各方向に、固視光軸L1に向けられた反射面が配置されている。なお、各々の角度は、固視光軸L1を基準とした角度である。また、説明の便宜上、0°は、水平面上(より詳細には、眼科装置1から見て、水平面上の右側)とする。
【0081】
但し、反射面は、複数枚に分かれている必要は、必ずしもなく、一連の曲面で形成されていてもよい。また、対物反射部50は、必ずしもプリズムである必要はなく、例えば、反射鏡であってもよい。反射鏡の場合、光軸側に反射面を持つ、筒状の多面鏡または曲面鏡であってもよい。
【0082】
ここで、本実施例の眼科装置1は、光偏心部48を、固視光軸L1の周りに回転させる駆動部48d(
図3参照)を有する。光偏心部48の回転に応じて、レンズ49および対物反射部50に対する照明光の入射位置が、固視光軸L1の周りに回転される。その結果、撮影光軸L2が固視光軸L1の周りに回転され、結果として、隅角の全周における照明光の照射位置が、変位される。
【0083】
本実施例では、対物反射部50(プリズム)と、角膜と、の間に、ジェルGが介在される。ジェルGは、照明光の角膜反射を抑制し、且つ、対物反射部50の先端界面における屈折を緩和するために、角膜へ塗布等される。なお、ジェルGは、図示なき保持容器に充填された状態で、角膜および対物反射部50の先端の両方に、接していてもよい(詳細は、本出願人による「特開2002-17680号公報」等を参照)。
【0084】
投光光学系40が照射した照明光は、隅角領域で反射され、撮影光軸L2を辿って装置内部の受光光学系60へ導かれる。
【0085】
本実施例において、受光光学系60は、撮像素子(受光素子の一例)62を、少なくとも有する。また、受光光学系60は、対物反射部50、および、穴開きミラー(ビームスプリッタ)47を、投光光学系40と少なくとも共用する。更に、光偏心部48、レンズ49、等を、を投光光学系40と共用していてもよい。また、受光光学系60は、フォーカスレンズ61を有する。フォーカスレンズ61は、本実施例の撮影光学系30におけるフォーカス変更部の一部である。フォーカスレンズ61を光軸に沿って移動させる駆動部61aが、眼科装置1には設けられている。駆動部61aは、例えば直動アクチュエータを含んでいてもよい。
【0086】
隅角領域からの反射光は、対物反射部50、レンズ49、および、光偏心部48を介して、穴開きミラー47へ照射される。その後、反射光は、穴開きミラー47の開口、および、フォーカスレンズ61、をそれぞれ通過して、撮像素子62において結像される。結果、隅角の全周において照明光が照射された部位を撮影位置とする、隅角画像が、撮像素子62からの受光信号に基づいて得られる。いわゆる生画像として得られる隅角画像は、正立像であってもよいし、反転像であってもよい。
【0087】
また、光偏心部48を回転させ、撮影光軸L2を固視光軸L1の周りに回転させることにより、隅角の全周における撮影位置を切換えることができる。前述したように、本実施例では、対物反射部50が、16枚の反射面を有するので、隅角の全周を16分割してその各々を、選択的に撮影できる。
【0088】
<制御系>
次に、
図3を参照して、眼科装置1の制御系を説明する。眼科装置1は、制御部(プロセッサ)80を備える。制御部80によって、装置全体の制御処理および各種演算処理が実行される。
【0089】
制御部80は、CPU、ROM、RAM等を含んでいてもよい。RAMには、例えば、撮影および測定に用いる一時データが格納される。
【0090】
制御部80は、例えば、バス等を介して、アライメント機構5a,5b、モニタ8、光源41、駆動部48d、駆動部61a、受光素子62、光源71、記憶装置81、操作部85、等と接続される。
【0091】
記憶装置81は、書き換え可能な不揮発性の記憶装置である。記憶装置81としては、ハードディスク、フラッシュメモリ、USBメモリ等の種々の記憶装置が適用可能である。また、記憶装置81には、例えば、眼科装置1に撮影動作等の各種動作を実行させるためのプログラムが、少なくとも格納されていてもよい。
【0092】
眼科装置1によって撮影される隅角画像は、記憶装置81に保存されてもよい。また、モニタ8において表示されてもよい。
【0093】
操作部85は、眼科装置1における入力インターフェイスである。操作部85が検者によって操作されることによって、操作に応じた指示が、制御部80に入力される。操作部85としては、例えば、マウス、および、タッチパネル等のポインティングデバイスであってもよいし、キーボードであってもよい。また、眼科装置1において、アライメントのために操作されるジョイスティック7が、操作部85の1つとして利用されてもよい。
【0094】
<動作説明>
次に、
図6~
図12を参照して、眼科装置1の動作を説明する。便宜上、以下の説明では、隅角画像の撮影動作と、事前に撮影された隅角画像の表示・閲覧と、が一連の流れで実行されるものとして説明する。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、撮影動作と表示・閲覧とは、一連に実行される必要はなく、各々独立に実行されてもよい。
【0095】
<撮影動作>
まず、制御部80は、光源71を点灯し、固視標の投影を開始する(S1)。これにより、被検眼Eの視線を誘導可能となる。
【0096】
次に、被検眼Eに対する撮影光学系30のアライメントが行われる(S2)。眼科装置1におけるアライメントは、被検眼と撮影光学系30との位置関係を、眼科装置1によって撮影される隅角画像における特徴部の位置であって、固視光軸L1を中心とする半径方向に関する位置に応じて、手動または自動で調整することによって行われる。
【0097】
一例として、ここでは、アライメントが手動で行われる。
図7,
図8を参照して、眼科装置1における手動でのアライメント動作を、詳細に説明する。
【0098】
まず、検者は、ジョイスティック7等を操作して、対物反射部50の先端が、被検眼Eの角膜から数ミリ程度の距離となるように、目視で、撮影光学系30を被検眼Eへと接近させる。その際、併せて、被検眼Eと対物反射部50との間に、ジェルGを介在させる。
【0099】
例えば、対物反射部50の先端を被検眼Eの角膜に接近させた後、操作部85が操作されることで、制御部80は、観察画像の取得および表示動作を開始する(S11,S12)。時系列に撮影された隅角画像が、観察画像として利用される。本実施例では、一定時間ごとに得られる時系列の静止画像が、観察画像として利用される。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、観察画像は動画像であってもよい。
【0100】
本実施例において、制御部80は、複数の撮影位置の間で撮影位置を周期的に切換え、各撮影位置で隅角画像を、随時撮影する。
図8に示すように、制御部80は、各撮影位置の隅角画像を、同時にモニタ8上に表示させる。このとき、それぞれの隅角画像は、時系列に切換えられて表示される。
【0101】
観察画像として利用される隅角画像の撮影位置は、予め定められていてもよい。例えば、X方向およびY方向のうち1方向のアライメントには、撮影位置の位置関係がその1方向に沿って隅角全周において対角な関係にある(換言すれば、固視光軸L1に対して対称な関係にある)2枚の隅角画像が利用される。本実施例では、X方向およびY方向の両方に関するアライメントを隅角画像に基づいて行うので、眼科装置1は、隅角の全周における0°、90°、180°、270°の4つの撮影位置で隅角画像を取得し、観察画像として表示する。
【0102】
なお、制御部80は、光偏心部48を、0°の位置から、1/4周分ずつ(つまり、90°ずつ)回転させ、1/4周分の回転毎に、回転を一時停止させる。そして、停止した際に、制御部80は、投光光学系40から照明光を照射させ、隅角画像の撮影を行う。このように、隅角画像の撮影は、回転が停止している間に行われてもよい。アライメントの間、制御部80は、光偏心部48を繰り返し回転させると共に、隅角画像の撮影を繰り返す。
【0103】
そして、0°、90°、180°、270°の4つの撮影位置で得られた隅角画像が、観察画像として、モニタ8上に表示される。このとき、制御部80は、正立表示と、反転表示とのうち、正立表示を選択し、隅角画像を表示させる(S12)。また、撮影光学系30から見た各撮影位置の位置関係と、モニタ8上における各隅角画像の位置関係とが、上下左右一致するように、4つの隅角画像の表示位置が設定される。
【0104】
このような観察画像に基づいて、被検眼Eに対する撮影光学系30のアライメント状態が、検者によって把握される。正立表示の場合、被検眼Eにおける上下左右とモニタ8上の隅角画像における上下左右とが一致する。また、モニタ8上における各隅角画像の位置関係も、撮影光学系30から見た各撮影位置の位置関係と一致する。このため、XY方向に関するアライメントズレの方向(および、アライメントズレを解消させるうえで撮影光学系30を移動させるべき方向)が、モニタ8上の隅角画像から直感的に把握しやすくなる。結果、手動でのアライメント調整がスムーズに行われやすくなる。
【0105】
このように、観察画像が表示される場合において、各々の観察画像と対応付けて、位置指標が表示されてもよい。位置指標が表示されることで、検者は、アライメントズレの方向を、より良好に把握できる。
図8に示すように、右眼の場合、0°の撮影位置の画像(つまり、鼻側の撮影位置の画像)に対して「N」、90°の撮影位置の画像(つまり、上側の撮影位置の画像)に対して「S」、180°の撮影位置(つまり、こめかみ側の撮影位置の画像の画像に対して「T」、270°の撮影位置の画像(つまり、下側の撮影位置の画像に対して「I」の文字による位置指標が、それぞれ示される。これにより、XY方向に関するアライメントズレの方向が、より確実に把握される。なお、「N」「S」「T」「I」は、それぞれ、nasal,superior,temporal,inferiorの頭文字である。
【0106】
また、本実施例では、左眼の場合に、0°の撮影位置の画像に対して示される位置指標と、180°の撮影位置の画像に対して示される位置指標とが、右目の場合に対して入れ替わる。制御部80は、各隅角画像と対応付けて、被検眼が右眼と左眼とのうちいずれであるかを示す左右眼識別情報を、予め取得していてもよい。そして、上記した左右眼識別情報に基づいて、少なくとも一部の位置指標を切換えて表示してもよい。左右眼識別情報は、例えば、操作部85への操作入力に基づいて取得されてもよい。また、隅角画像の撮影時における基台3に対する移動台4の位置を検出することで、左右の眼のうちいずれが撮影されるか特定できる場合は、上述の移動台4の位置検出信号に基づいて、左右眼識別情報が取得されてもよい。
【0107】
以上のようにして観察画像が表示される場合において、検者は、以下のように、ジョイスティック7等を操作し、被検眼Eと撮影光学系30との位置関係を調整することができる。
【0108】
隅角全周において対角な関係にある(換言すれば、固視光軸L1に対して対称な関係にある)2つの撮影位置にて2枚の隅角画像が撮影・表示される場合、その2枚の隅角画像における特徴部が、半径方向に関して同じ位置に生じるように、検者は、ジョイスティック等の操作を行う。
【0109】
例えば、0°、90°、180°、270°の位置を撮影位置とする4枚の隅角画像のうち、0°の位置と、180°の位置と、の2枚の隅角画像に基づいて、X方向(水平方向)のアライメントが行われる。より詳細には、0°の位置と、180°の位置と、の2枚の隅角画像の間で、線維柱帯(特徴部の一例)の半径方向(この場合、水平方向)に関する位置が略同じとなるように、検者が操作部85等を操作し、アライメント調整が行われる。これにより、被検眼Eと撮影光学系30とのX方向(水平方向)に関する位置関係が調整される。
【0110】
また、制御部80は、4枚のうち、90°の位置と、270°の位置と、の2枚の隅角画像に基づいて、Y方向(上下方向)のアライメントを行が行われる。より詳細には、90°の位置と、270°の位置と、の2枚の隅角画像の間で、線維柱帯(特徴部の一例)の半径方向(この場合、垂直方向)に関する位置が略同じとなるように、検者が操作部85等を操作し、アライメント調整が行われる。これにより、被検眼Eと撮影光学系30とのY方向(垂直方向)に関する位置関係が調整される。
【0111】
次に、Z方向のアライメントについて説明する。例えば、作動距離(被検眼Eと対物反射部50との距離)が近いほど、線維柱帯(特徴部の一例)は隅角画像において固視光軸L1に対する遠位側に生じる。一方、作動距離が遠いほど、線維柱帯は、隅角画像において固視光軸L1側に生じる。
【0112】
そこで、例えば、固視光軸L1に対して撮影位置が対称な2枚の隅角画像において、線維柱帯が、隅角画像において予め定められた目標位置に配置されているか否かを、検者は確認する。この場合、目標位置は、隅角画像の中ほどに設定されていることが好ましい。アライメント調整の間、モニタ上の隅角画像(観察画像)に対して、目標位置を示すグラフィック(レチクル)が電子的に又は光学的に重畳されてもよい。例えば、
図8では、レチクルとして、線維柱帯の目標位置を示す矩形状のグラフィックが、各観察画像上に重畳されている。
【0113】
確認の結果、線維柱帯が目標位置よりも固視光軸L1側にある場合は、被検眼Eへ撮影光学系30が近付く方向に、アライメント調整を行う。一方、線維柱帯が目標位置よりも固視光軸L1に対する遠位側にある場合は、被検眼Eから撮影光学系30が遠ざかる方向に、アライメント調整を行う。ここで、隅角が楕円状に形成されていることによって、X方向と、Y方向との両方において、目標位置を満たす調整が難しい場合が考えられる。この場合、X方向に関する特徴部の位置と、Y方向に関する特徴部との位置と、の両者の位置の中間(例えば、平均の位置)が、前述の目標位置に配置されるように、作動距離方向に関する位置関係が調整されてもよい。
【0114】
本実施例において、制御部80は、手動アライメントが行われる間、各々の隅角画像における線維柱帯(特徴部の一例)を検出し、検出された特徴部の位置に基づいて、案内情報201を出力する。案内情報201は、手動アライメントにおける操作部の操作を案内する情報である。案内情報は、光学ユニット10の適正アライメント位置への移動方向を案内する。
図8における案内情報201は、矢印のグラフィックであったが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、「上」「下」等の文字によるテキスト情報であってもよいし、音声情報であってもよいし、他の情報であってもよい。
【0115】
以上のような、XY方向のアライメント調整、Z方向のアライメント調整は、交互に、複数回繰り返し行われてもよい。本実施例では、所定のアライメント完了条件を満たしたと、隅角画像に基づいて判定される場合、或いは、操作部85に対する操作によってアライメント完了信号が入力された場合に、アライメントに関する処理を終了させる(S13:Yes)。所定のアライメント完了条件を満たさなければ、観察画像の取得および表示が継続される(S13:No)。
【0116】
以上のようなアライメント動作の結果として、被検眼の隅角全周に対する中心と、対物反射部50の光軸と、が略合致される。また、更に、光偏心部48を回転させて、隅角の全周における各撮影位置で隅角画像を撮影した際に、各々の隅角画像において、特徴部である線維柱帯が、良好に含まれるようになる。
【0117】
図6に戻って、説明を続ける。アライメントが完了した後は、撮影動作が実行される(S3)。
【0118】
本実施例では、撮影動作の結果として、線維柱帯に対して合焦された隅角画像を、撮影画像として取得する。例えば、本実施例では、隅角の全周を16分割した16箇所の撮影位置にて隅角画像が続けて撮影される。制御部80は、偏光部48を制御し、16箇所の1つに撮影位置を設定したあと、フォーカシングレンズ61を移動させつつ、互いに異なるフォーカス状態で複数枚の隅角画像を撮影する。フォーカシングレンズ61は、予め定められた範囲で移動される。このような撮影動作が、撮影位置を切換えて、繰り返し実行される。
【0119】
制御部80は、線維柱帯に対して最も好適に合焦されている画像を撮影画像として、撮影位置毎に選択する。選択された撮影画像は、メモリ82に記憶されてもよい。なお、このとき、各隅角画像における線維柱帯の近傍の画像領域におけるコントラストを比較することによって、撮影画像が選択されてもよい。
【0120】
全ての撮影位置について撮影画像が得られたら、撮影動作は終了される。各撮影位置に対し、上記撮影動作が行われた結果として、各撮影位置における線維柱帯に対して合焦された複数(ここでは、16枚)の隅角画像を(撮影画像として)得ることができる。
【0121】
このようにして撮影された隅角画像を、制御部80は、モニタ8へ表示させてもよい(S4)。
【0122】
本実施例において、眼科装置1は、撮影位置が互いに異なる複数枚の隅角画像を、
図9~
図12の各図において示す、第1~第3の3種類のレイアウトで表示させることができる。
【0123】
本実施例では、第1~第3の各レイアウトで隅角画像が表示される場合において、正立表示と反転表示とのうち一方を選択するための表示方法選択ボタン221が、モニタ8上に設けられていてもよい。「正立表示」の選択操作が、ボタン221を介して入力された場合に、制御部80は、正立表示にて、各々の隅角画像を表示させる。また、「反転表示」の選択操作が、ボタン221を介して入力された場合に、制御部80は、反転表示にて、各々の隅角画像を表示させる。本実施例では、初期状態において、正立表示が選択される。但し、必ずしもこれに限らず、初期状態において、正立表示とするか反転表示とするかの設定データを、設定操作に基づいて設定・保存可能であってもよく、隅角画像が表示される際に、その設定データに基づいて、制御部80が表示方法を選択してもよい。
【0124】
第1のレイアウトでは、各々の隅角画像が、そのまま(コラージュされることなく、そのまま)モニタ8上に表示される。撮影位置が互いに異なる隅角画像が、縦横に並べられてモニタ8上に表示される。具体例として、
図9では、8枚の隅角画像が、2枚ずつ横並びに配置されている(つまり、縦2列に並べられている)。
【0125】
そして、横並びに配置された2枚の隅角画像の更に隣には、撮影位置グラフィック211がそれぞれ配置されている。撮影位置グラフィック211は、撮影位置指標の一種である。撮影位置グラフィック211は、各々の隅角画像における隅角全周に対する撮影位置を示している。
【0126】
撮影位置グラフィック211では、リング状の図形によって隅角の全周を模している。リング状の図形において撮影位置と対応する位置に、指標(
図9では、ドット)が付加され、これによって、撮影位置が示される。
図9の実施例では、1つの撮影位置グラフィック211によって、隅角画像2枚分の撮影位置が示されている。このような表示態様であっても、各々の隅角画像における組織の傾斜状態から、2枚の隅角画像と、撮影位置との対応関係を、検者は容易に把握できる。
【0127】
撮影位置グラフィック211では、リング状の図形における向き(より詳しくは、上下左右の向き)が、[T],[I],[N],[S]の文字によって示される。また、本実施例では、この文字(主には、[T]と[N])の位置関係によって、モニタ上に表示される隅角画像が、左右眼の画像のうちいずれであるかが、特定可能である。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、モニタ8上に表示される隅角画像が、左右眼のいずれの画像であるかを示す情報が、撮影位置指標とは独立な情報として表示されてもよい。例えば、
図9には、OD(右眼)/OS(左眼)のいずれかが、選択的にモニタ8上に表示されることによって、モニタ8上の隅角画像が左右の眼のうちいずれであるかが示されてもよい。
【0128】
第2のレイアウトでは、複数枚の隅角画像による円環状合成画像が表示される。
図10,
図11に示す円環状合成画像は、前述の16箇所の撮影位置で撮影された16枚の隅角画像が、コラージュされている。これにより、隅角の全周の状態を、検者に容易に確認させることができる。
【0129】
図10,
図11には、撮影位置指標の一種として、 [T],[I],[N],[S]の文字
が、円環状合成画像における上下左右の各位置と対応づけて表示される。これにより、円環状合成画像の向きを、容易に検者が把握できる。
【0130】
また、更に、円環状合成画像が正立表示される場合と、反転表示される場合と、のうち、一方の場合のみに、グラフィック231(
図11参照)が表示される。グラフィック231は、モニタ8上の隅角画像に関して選択されている表示方法を特定する、識別情報の一種である。グラフィック231は、×印であって、円環状合成画像における瞳孔部分に重畳される。例えば、×印は、正立表示される場合と、反転表示される場合と、のうち、正立表示が選択された場合に表示される。
【0131】
また、第2のレイアウトでは、円環状合成画像と同時に、円環状合成画像へ合成された一部の隅角画像が、モニタ8上に表示される。円環状合成画像には、一部の隅角画像と対応する領域を示す指標(ここでは、矩形上の枠線)が、一部の隅角画像の位置指標として、対応付けて表示される。これにより、検者は、一部の隅角画像と、円環状合成画像との対応関係を、良好に把握できる。
【0132】
第3のレイアウトでは、複数枚の隅角画像を直線的にコラージュした直線状合成画像が表示される。
図12においては、隅角全周分の直線状合成画像が、2段に分かれて示されている。但し必ずしもこれに限られるものではなく、1段で、隅角全集分の直線状合成画像が表示されてもよい。
図12には、撮影位置指標の一種として、 [T],[I],[N],[S],[TS],[NI],[NS],[NS]等の文字が、直線状合成画像の各領域と対応づけて表示される。これにより、直線状合成画像の各領域と、隅角全周における各位置との対応関係を、検者は良好に把握できる。
【0133】
勿論、各撮影位置の隅角画像が同時に表示される必要はなく、何れかの撮影位置の画像が、選択的にモニタに表示されてもよい。
【0134】
以上、実施形態に基づいて本開示を説明したが、本開示は、上記形態に限定されるものではなく、種々の変容が可能である。
【0135】
<表示方法の選択ウィンドウ>
眼科装置1は、隅角画像の表示方法を、正立表示と反転表示との間で少なくとも選択可能である。表示方法は、検者による操作部の操作に基づいて、予め動作場面毎に設定可能であってもよい。これにより、制御部は、それぞれの動作場面において、予め設定された表示方法を選択し、その表示方法によって隅角画像を表示させる。
【0136】
但し、それぞれの動作場面において所定の操作が行われることによって、予め設定された表示方法から、別の表示方法へ随時変更可能であってもよい。
【0137】
<アライメント中の表示方法選択>
また、上記実施例では、アライメントは、正立表示が選択されるものとして説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、自動または手動によるアライメント時においても、検者の操作に基づいて正立表示と反転表示とが選択可能であってもよい。