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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】インダクタ部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/06 20060101AFI20221115BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20221115BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20221115BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20221115BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H01F17/06 A
H01F27/28 K
H01F27/29 S
H01F27/30
H01F41/04 B
H01F27/28 128
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020026342
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021132106
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 信
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 達哉
(72)【発明者】
【氏名】平井 真哉
(72)【発明者】
【氏名】杉山 郁乃
(72)【発明者】
【氏名】田村 俊光
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/141838(WO,A1)
【文献】特開2016-051765(JP,A)
【文献】特開2018-182227(JP,A)
【文献】特開2021-132107(JP,A)
【文献】特開2004-266081(JP,A)
【文献】特開2006-261468(JP,A)
【文献】特開2016-187031(JP,A)
【文献】特開2016-066686(JP,A)
【文献】特開平10-296481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00- 5/06
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26-27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
H01R 43/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のコアと、
複数のピン部材を含み、隣り合うピン部材が接続されて前記コアに巻回されたコイルと
を備え、
隣り合う第1のピン部材および第2のピン部材は、前記第1のピン部材の端部の端面と前記第2のピン部材の端部の周面とが互いに溶接された溶接部を有し、
前記第2のピン部材の端部の中心線に沿った方向からみて、前記第1のピン部材における前記溶接部を除く部分の幅は、前記第2のピン部材における前記溶接部を除く部分の幅よりも小さく、
前記第1のピン部材における前記溶接部を除く部分の断面積は、前記第2のピン部材における前記溶接部を除く部分の断面積と等しい、インダクタ部品。
【請求項2】
さらに、前記第1のピン部材を覆うコート部材を備える、請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記第1のピン部材の端部の中心線および前記第2のピン部材の端部の中心線を含む第1平面に直交する方向からみて、前記溶接部は、前記第2のピン部材の外側縁に設けられていない、請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記第2のピン部材の端部の中心線に沿った方向からみて、前記溶接部は、前記第2のピン部材の端部の中心線を含むと共に前記第1平面に直交する第2平面よりも内側に設けられている、請求項に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記第2のピン部材の端部の中心線に沿った方向からみて、前記溶接部は、幅の狭くなるくびれ部を有する、請求項1からの何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項6】
環状のコアと、
複数のピン部材を含み、隣り合うピン部材が接続されて前記コアに巻回されたコイルと
を備えるインダクタ部品を製造する方法であって、
溶接される部分となる端部を含む第1のピン部材と、溶接される部分となる端部を含む第2のピン部材であり、前記第1のピン部材における前記端部を除く部分の断面積と、前記第2のピン部材における前記端部を除く部分の断面積とが等しくなる、前記第1のピン部材および前記第2のピン部材を準備する工程と、
記第1のピン部材の前記端部の端面と前記第2のピン部材の前記端部の周面とを互いに接触させると共に、前記第2のピン部材の前記端部の中心線に沿った方向からみて、前記第1のピン部材の前記端部の幅が、前記第2のピン部材の前記端部の幅よりも小さい状態で、前記複数のピン部材を前記コアに配置する工程と、
前記第1のピン部材および前記第2のピン部材に熱を加えて、前記第1のピン部材の前記端部の端面と前記第2のピン部材の前記端部の周面とを互いに溶接して溶接部を形成する工程と
を備える、インダクタ部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品としては、実全昭50-20152号公報(特許文献1)に記載されたものがある。このインダクタ部品は、環状のコアと、コアに巻回されたコイルとを備える。コイルは、コ字状の第1ワイヤ部材と直線状の第2ワイヤ部材とを含み、第1ワイヤ部材の端部と第2ワイヤ部材の端部が接続されて、コイルの1ターンを構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実全昭50-20152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のインダクタ部品において、第1ワイヤ部材の端部と第2ワイヤ部材の端部とを溶接して溶接部を形成しようとするとき、本願発明者は、インダクタ部品を小型化していくに伴い、コイルの隣り合うターンの間の隙間が問題となることを見出した。具体的に述べると、第1、第2ワイヤ部材にレーザ溶接を行って溶接部を形成すると、溶接部がコイルの隣り合うターンの間の隙間に突出する問題がある。このため、コイルの隣り合うターンの間の隙間を狭くして、コイルのサイズを小さくすることが難しい。
【0005】
そこで、本開示は、小型化を図ることができるインダクタ部品およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
環状のコアと、
複数のピン部材を含み、隣り合うピン部材が接続されて前記コアに巻回されたコイルと
を備え、
隣り合う第1のピン部材および第2のピン部材は、前記第1のピン部材の端部の端面と前記第2のピン部材の端部の周面とが互いに溶接された溶接部を有し、
前記第2のピン部材の端部の中心線に沿った方向からみて、前記第1のピン部材における前記溶接部を除く部分の幅は、前記第2のピン部材における前記溶接部を除く部分の幅よりも小さい。
【0007】
ここで、幅とは、第1のピン部材の端部の中心線および第2のピン部材の端部の中心線を含む第1平面に直交する方向の幅をいう。第1と第2のピン部材の端部とは、それぞれ、溶接部が設けられる部分をいう。
【0008】
前記態様によれば、第1のピン部材における溶接部を除く部分の幅は、第2のピン部材における溶接部を除く部分の幅よりも小さいので、溶接部の幅が大きくなりすぎることを防ぐことができる。これにより、同径の第1のピン部材および第2のピン部材同士による溶接部よりも幅の小さい溶接部を形成することができるため、コイルの隣り合うターン間の隙間を小さくすることができて、インダクタ部品の小型化を図ることができる。
【0009】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記第1のピン部材における前記溶接部を除く部分の断面積は、前記第2のピン部材における前記溶接部を除く部分の断面積と等しい。
【0010】
ここで、第1、第2ピン部材の断面積とは、それぞれ、第1、第2ピン部材の延在方向に直交する平面における平均の断面積をいう。
【0011】
前記実施形態によれば、第1のピン部材における溶接部を除く部分の断面積は、第2のピン部材における溶接部を除く部分の断面積と等しいので、第1のピン部材における溶接部を除く部分の幅を小さくしても、この部分の抵抗の増加を抑制できる。
【0012】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、さらに、前記第1のピン部材を覆うコート部材を備える。
【0013】
前記実施形態によれば、第1のピン部材の幅は小さいため、コート部材を第1のピン部材に塗布した際に発生する気泡が、コイルの隣り合うターンの第1のピン部材の隙間を通過しやすくなり、コート部材内に気泡が残ることを抑制できる。
【0014】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記第1のピン部材の端部の中心線および前記第2のピン部材の端部の中心線を含む第1平面に直交する方向からみて、前記溶接部は、前記第2のピン部材の外側縁に設けられていない。
【0015】
ここで、第2のピン部材の外側縁とは、第1平面に直交する方向からみて、第1のピン部材の端部(内側)と反対側の外側の縁をいう。
【0016】
前記実施形態によれば、溶接部は、第2のピン部材の外側縁に設けられていない。このため、溶接部は、熔解している状態において第2のピン部材の外側縁へ向かう表面張力を抑えることができ、外側縁を覆うような球状にならない。したがって、溶接部の大きさをより小さくでき、コイルの隣り合うターンの間の隙間をより小さくできて、インダクタ部品の小型化を図ることができる。また、溶接部が第2のピン部材の外側縁よりも外側へ張り出すことを低減でき、コイルの外形を小さくすることができる。
【0017】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記第2のピン部材の端部の中心線に沿った方向からみて、前記溶接部は、前記第2のピン部材の端部の中心線を含むと共に前記第1平面に直交する第2平面よりも内側に設けられている。
【0018】
ここで、第2平面よりも内側とは、第2のピン部材の端部の中心線に沿った方向からみて、第2平面よりも第1のピン部材の端部側をいう。
【0019】
前記実施形態によれば、溶接部は、第2平面よりも内側に設けられているので、溶接部の大きさをより小さくでき、コイルの隣り合うターンの間の隙間をより小さくできて、インダクタ部品の小型化を図ることができる。
【0020】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記第2のピン部材の端部の中心線に沿った方向からみて、前記溶接部は、幅の狭くなるくびれ部を有する。
【0021】
ここで、幅とは、第1平面に直交する方向の幅をいう。
【0022】
前記実施形態によれば、溶接部は、くびれ部を有するので、溶接部が、コイルの隣り合うターンの間の隙間に張り出すことを低減し、コイルの隣り合うターンの間の隙間をより小さくして、インダクタ部品の小型化を図ることができる。
【0023】
好ましくは、インダクタ部品の製造方法の一実施形態では、
環状のコアと、
複数のピン部材を含み、隣り合うピン部材が接続されて前記コアに巻回されたコイルと
を備えるインダクタ部品を製造する方法であって、
隣り合う第1のピン部材および第2のピン部材において、前記第1のピン部材の端部の端面と前記第2のピン部材の端部の周面とを互いに接触させると共に、前記第2のピン部材の端部の中心線に沿った方向からみて、前記第1のピン部材の端部の幅が、前記第2のピン部材の端部の幅よりも小さい状態で、前記複数のピン部材を前記コアに配置する工程と、
前記第1のピン部材および前記第2のピン部材に熱を加えて、前記第1のピン部材の端部の端面と前記第2のピン部材の端部の周面とを互いに溶接して溶接部を形成する工程と
を備える。
【0024】
前記実施形態によれば、第2のピン部材の端部の中心線に沿った方向からみて、第1のピン部材の端部の幅が、第2のピン部材の端部の幅よりも小さい状態で、複数のピン部材をコアに配置して、第1のピン部材の端部の端面と第2のピン部材の端部の周面とを互いに溶接して溶接部を形成するので、同径の第1のピン部材および第2のピン部材同士による溶接部よりも幅の小さい溶接部を形成することができる。これにより、コイルの隣り合うターン間の隙間を小さくすることができて、インダクタ部品の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示の一態様であるインダクタ部品およびその製造方法によれば、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態のインダクタ部品を示す上方斜視図である。
図2】インダクタ部品の下方斜視図である。
図3】インダクタ部品の内部を示す下方斜視図である。
図4】インダクタ部品の分解斜視図である。
図5】インダクタ部品の断面図である。
図6A図3のA部の拡大図である。
図6B図6Aの折曲ピン部材と第2直線ピン部材が実際に溶接されている状態を示すZ方向からみた底面図である。
図6C図6BのY方向からみた側面図である。
図7】ピン部材の第2実施形態を示す断面図である。
図8A】インダクタ部品の製造方法の第3実施形態を示し、溶接前の状態を示す底面図である。
図8B】インダクタ部品の製造方法の第3実施形態を示し、溶接後の状態を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0028】
(第1実施形態)
(インダクタ部品の構成)
図1は、本発明の一実施形態のインダクタ部品を示す上方斜視図である。図2は、インダクタ部品の下方斜視図である。図3は、インダクタ部品の内部を示す下方斜視図である。図4は、インダクタ部品の分解斜視図である。
【0029】
図1から図4に示すように、インダクタ部品1は、ケース2と、ケース2内に収納された環状のコア3と、コア3に巻回された第1コイル41および第2コイル42と、ケース2に取り付けられ、第1コイル41および第2コイル42に接続された第1~第4電極端子51~54とを有する。インダクタ部品1は、例えば、コモンモードチョークコイルなどである。
【0030】
ケース2は、底板部21と、底板部21を覆う箱状の蓋部22とを有する。ケース2は、強度と耐熱性を有する材料から構成され、好ましくは、難燃性を有する材料から構成される。ケース2は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、LCP(液晶ポリマー)、PPA(ポリフタルアミド)などの樹脂、または、セラミックスから構成される。底板部21には、コア3の中心軸が直交するように、コア3が設置されている。コア3の中心軸とは、コア3の内径孔部の中心軸をいう。ケース2(底板部21および蓋部22)の形状は、コア3の中心軸方向からみて、矩形である。この実施形態では、ケース2の形状は、長方形である。
【0031】
ここで、コア3の中心軸方向からみたケース2の短手方向をX方向とし、コア3の中心軸方向からみたケース2の長手方向をY方向とし、X方向およびY方向に垂直な方向であるケース2の高さ方向をZ方向とする。ケース2の底板部21と蓋部22とは、Z方向に向かい合って配置されており、底板部21は下側、蓋部22は上側にあり、上側をZ方向の順方向、下側をZ方向の逆方向とする。なお、ケース2の底板部21の形状が正方形である場合、ケース2のX方向の長さとケース2のY方向の長さは、同一となる。
【0032】
第1~第4電極端子51~54は、底板部21に取り付けられている。第1電極端子51と第2電極端子52は、底板部21のY方向に対向する2つの隅に位置し、第3電極端子53と第4電極端子54は、底板部21のY方向に対向する2つの隅に位置している。第1電極端子51と第3電極端子53は、X方向に対向し、第2電極端子52と第4電極端子54は、X方向に対向している。
【0033】
コア3の形状は、中心軸方向からみて、長円形(トラック形状)である。コア3は、中心軸方向からみて、長軸に沿って延在し短軸方向に対向する一対の長手部分31と、短軸に沿って延在し長軸方向に対向する一対の短手部分32とを含む。なお、コア3の形状は、中心軸方向からみて、長方形または楕円形であってもよい。
【0034】
コア3は、例えば、フェライトなどのセラミックコア、または、鉄系の粉体成型やナノ結晶箔で作られる磁性コアから構成される。コア3は、中心軸方向に対向する第1端面301および第2端面302と、内周面303および外周面304とを有する。第1端面301は、コア3の下側の端面であり、底板部21の内面と向かい合う。第2端面302は、コア3の上側の端面であり、蓋部22の内面と向かい合う。コア3は、コア3の長軸方向がY方向に一致するように、ケース2に収納される。
【0035】
コア3の周方向に直交する断面の形状は、矩形である。第1端面301および第2端面302は、コア3の中心軸方向に垂直に配置されている。内周面303および外周面304は、コア3の中心軸方向に平行に配置されている。この明細書で、「垂直」とは、完全に垂直となる状態に限らず、実質的に垂直である状態も含む。また、「平行」とは、完全に平行となる状態に限らず、実質的に平行である状態も含む。
【0036】
コア3の下側部分は、絶縁部材60に覆われている。絶縁部材60は、例えば、LCP、PPA、PPSなどのスーパーエンプラから構成され、これにより、絶縁部材60の耐熱性、絶縁性および加工性が向上する。
【0037】
絶縁部材60は、環状に形成され、コア3の下側部分を覆う環状凹部61を有する。このように、絶縁部材60の環状凹部61にコア3の下側部分を嵌め込むことで、コア3に絶縁部材60を装着することができる。
【0038】
コア3は、絶縁部材60を嵌め込む嵌込溝35を有する。嵌込溝35は、コア3の第1端面301、内周面303および外周面304に開口している。このように、絶縁部材60の外周面をコア3の嵌込溝35に嵌め込むことで、コア3の外表面からの絶縁部材60のはみ出しを低減できる。また、絶縁部材60の取り付けが容易になり、さらに、絶縁部材60の位置ずれを防止し得る。
【0039】
第1コイル41は、第1電極端子51と第2電極端子52との間で、コア3および絶縁部材60に巻回されている。第1コイル41の一端は、第1電極端子51に接続される。第1コイル41の他端は、第2電極端子52に接続される。
【0040】
第2コイル42は、第3電極端子53と第4電極端子54との間で、コア3および絶縁部材60に巻回されている。第2コイル42の一端は、第3電極端子53に接続される。第2コイル42の他端は、第4電極端子54に接続される。
【0041】
第1コイル41および第2コイル42は、長軸方向に沿って巻回される。つまり、第1コイル41は、コア3の一方の長手部分31に巻回され、第2コイル42は、コア3の他方の長手部分31に巻回される。第1コイル41の巻回軸と第2コイル42の巻回軸は、並走する。第1コイル41および第2コイル42は、コア3の長軸に対して、対称となる。
【0042】
第1コイル41の巻数と第2コイル42の巻数とは、同じである。第1コイル41のコア3に対する巻回方向と第2コイル42のコア3に対する巻回方向とは、逆方向となる。つまり、第1コイル41の第1電極端子51から第2電極端子52に向かう巻回方向と、第2コイル42の第3電極端子53から第4電極端子54に向かう巻回方向とは、逆方向となる。
【0043】
そして、コモンモードの電流が、第1コイル41において第1電極端子51から第2電極端子52に向かって流れ、第2コイル42において第3電極端子53から第4電極端子54に向かって流れ、つまり、コモンモードの電流の流れる向きが同じになるように、第1から第4電極端子51~54が接続される。コモンモードの電流が第1コイル41に流れると、コア3内には、第1コイル41による第1磁束が発生する。コモンモードの電流が第2コイル42に流れると、コア3内には、第1磁束とコア3内で強め合う方向に第2磁束が発生する。このため、第1コイル41とコア3、および、第2コイル42とコア3は、インダクタンス成分として働き、コモンモードの電流に対してノイズが除去される。
【0044】
第1コイル41は、複数のピン部材が、例えばレーザ溶接やスポット溶接などの溶接により接続されてなる。なお、図3は、複数のピン部材が実際に溶接されている状態を表しているのでなく、複数のピン部材が組付けられている状態を表している。
複数のピン部材は、プリント配線や導線でなく、棒状部材である。ピン部材は、剛性を有し、電子部品モジュール間の接続に使用される導線よりも折り曲げにくい。
【0045】
複数のピン部材は、プリント配線や導線でなく、棒状部材である。ピン部材は、剛性を有し、電子部品モジュール間の接続に使用される導線よりも折り曲げにくい。具体的に述べると、ピン部材は、コア3の第1端面301、第2端面302、内周面303および外周面304を通過する周方向の一周分の長さよりも短く、また、剛性自体も高いため、折り曲げにくくなっている。
【0046】
複数のピン部材は、略U字状に折り曲げられた折曲ピン部材410と、略直線状(略I字状)に延在された直線ピン部材411,412とを含む。この実施形態では、折曲ピン部材410は、特許請求の範囲に記載の「第2のピン部材」に相当し、直線ピン部材411,412は、特許請求の範囲に記載の「第1のピン部材」に相当する。
【0047】
第1コイル41は、一端から他端に順に、一端側(一方)の第1直線ピン部材411と、複数組の折曲ピン部材410および第2直線ピン部材412と、他端側(他方)の第1直線ピン部材411とを含む。第1直線ピン部材411と第2直線ピン部材412の長さは、異なる。折曲ピン部材410のばね指数に関して説明すると、図5に示すように、折曲ピン部材410をコア3の第2端面302、内周面303および外周面304に巻回したときに、コア3の外周面304の角部に位置する折曲ピン部材410の曲率半径R1、および、コア3の内周面303の角部に位置する折曲ピン部材410の曲率半径R2において、折曲ピン部材410のばね指数Ksは、3.6よりも小さい。ばね指数Ksは、折曲ピン部材の曲率半径R1、R2/折曲ピン部材の線径rで表せる。このように、折曲ピン部材410は、剛性が高く、折り曲げにくいものである。
【0048】
折曲ピン部材410および第2直線ピン部材412は、例えばレーザ溶接やスポット溶接などの溶接により交互に接続される。折曲ピン部材410の一端に第2直線ピン部材412の一端を接続し、第2直線ピン部材412の他端を他の折曲ピン部材410の一端に接続する。これを繰り返すことにより、複数の折曲ピン部材410および第2直線ピン部材412は、接続され、接続された複数の折曲ピン部材410および第2直線ピン部材412は、コア3に螺旋状に巻回される。つまり、1組の折曲ピン部材410および第2直線ピン部材412によって、1ターンの単位要素が構成される。
【0049】
折曲ピン部材410は、コア3の第2端面302、内周面303および外周面304のそれぞれの面に沿って平行に配置されている。第2直線ピン部材412は、コア3の第1端面301に沿って平行に配置されている。第1直線ピン部材411は、コア3の第1端面301に沿って平行に配置されている。
【0050】
隣り合う折曲ピン部材410は、接着部材70により、固定されている。これにより、複数の折曲ピン部材410のコア3への取り付け状態を安定なものとできる。同様に、隣り合う第1直線ピン部材411と第2直線ピン部材412は、接着部材70により、固定され、隣り合う第2直線ピン部材412は、接着部材70により、固定されている。これにより、複数の第1直線ピン部材411および第2直線ピン部材412のコア3への取り付け状態を安定なものとできる。
【0051】
第1電極端子51は、一方の第1直線ピン部材411の一端に接続され、一方の第1直線ピン部材411の他端は、一方の第1直線ピン部材411に隣接する折曲ピン部材410の一端に接続される。一方の第1直線ピン部材411の一端は、取付片411cを有する。第1電極端子51は、ケース2内に入り込む取付部51aを有する。一方の第1直線ピン部材411の取付片411cは、第1電極端子51の取付部51aに接続される。
【0052】
第2電極端子52は、他方の第1直線ピン部材411の一端に接続され、他方の第1直線ピン部材411の他端は、他方の第1直線ピン部材411に隣接する第2直線ピン部材412の一端に接続される。他方の第1直線ピン部材411の一端の取付片411cは、第2電極端子52の取付部52aに接続される。
【0053】
第2コイル42は、第1コイル41と同様に、複数のピン部材から構成される。つまり、第2コイル42は、一端から他端に順に、一端側(一方)の第1直線ピン部材421と、複数組の折曲ピン部材420および第2直線ピン部材422と、他端側(他方)の第1直線ピン部材421とを含む。コア3には、折曲ピン部材420および第2直線ピン部材422が交互に接続されて巻回されている。つまり、複数の折曲ピン部材420および第2直線ピン部材422は、接続され、接続された複数の折曲ピン部材420および第2直線ピン部材422は、コア3に螺旋状に巻回される。
【0054】
第3電極端子53は、一方の第1直線ピン部材421の一端に接続され、一方の第1直線ピン部材421の他端は、一方の第1直線ピン部材421に隣接する折曲ピン部材420の一端に接続される。一方の第1直線ピン部材421の一端の取付片421cは、第3電極端子53の取付部53aに接続される。
【0055】
第4電極端子54は、他方の第1直線ピン部材421の一端に接続され、他方の第1直線ピン部材421の他端は、他方の第1直線ピン部材421に隣接する第2直線ピン部材412の一端に接続される。他方の第1直線ピン部材421の一端の取付片421cは、第4電極端子54の取付部54aに接続される。
【0056】
図3に示すように、第1コイル41および第2コイル42(ピン部材410~412,420~422)は、それぞれ、導体部と導体部を覆う被膜とを含む。導体部は、例えば、銅線であり、被膜は、例えば、ポリアミドイミド樹脂である。被膜の厚みは、例えば、0.02~0.04mmである。
【0057】
第1直線ピン部材411,421は、被膜のない導体部411a,421aから構成される。第2直線ピン部材412,422は、被膜のない導体部412a,422aから構成される。折曲ピン部材410,420は、導体部410a,420aと被膜410b,420bから構成される。
【0058】
折曲ピン部材410,420の一端および他端において、導体部410a,420aは、被膜410b,420bから露出している。つまり、第1直線ピン部材411,421、第2直線ピン部材412,422および折曲ピン部材410,420は、互いに、露出している導体部411a,421a,412a,422a,410a,420aにおいて溶接されている。
【0059】
図6Aは、図3のA部の拡大図であり、Z方向の下側からみた底面図である。図6Aは、折曲ピン部材410と第2直線ピン部材412が実際に溶接されている状態を表しているのでなく、折曲ピン部材410と第2直線ピン部材412が組付けられている状態を表している。図6Aに示すように、第2直線ピン部材412の端部412eの端面412fと折曲ピン部材410の端部410eの周面410fとは、互いに接触している。
【0060】
折曲ピン部材410および第2直線ピン部材412の形状は、それぞれ円柱である。つまり、折曲ピン部材410および第2直線ピン部材412の断面形状は、それぞれ円形である。折曲ピン部材410の断面とは、折曲ピン部材410の延在する方向に直交する平面における断面であり、第2直線ピン部材412の断面とは、第2直線ピン部材412の延在する方向に直交する平面における断面である。
【0061】
折曲ピン部材410の端部410eと第2直線ピン部材412の端部412eとは、互いに溶接される部分である。第2直線ピン部材412の端部412eの端面412fは、凹曲面であり、折曲ピン部材410の端部410eの周面410fに対応した形状である。
【0062】
折曲ピン部材410の端部410eの中心線410cに沿った方向(以下、Z方向という。)からみて、第2直線ピン部材412の幅412hは、折曲ピン部材410の幅410hよりも小さい。ここで、幅とは、第2直線ピン部材412の端部412eの中心線412cおよび折曲ピン部材410の端部410eの中心線410cを含む第1平面S1に直交する方向の幅をいう。この実施形態では、第2直線ピン部材412の直径は、折曲ピン部材410の直径よりも小さい。
【0063】
折曲ピン部材410の端部410eの中心線410cとは、折曲ピン部材410における端部410eを含む部分の中心線410cをいう。つまり、折曲ピン部材410は、略U字状であり、折曲ピン部材410の中心線は、場所によって異なる方向に延在するため、折曲ピン部材410の端部410eの中心線410cとしている。同様に、第2直線ピン部材412の端部412eの中心線412cとは、第2直線ピン部材412における端部412eを含む部分の中心線412cをいう。
【0064】
図6Bは、図6Aの折曲ピン部材410と第2直線ピン部材412が実際に溶接されている状態を表している。図6Bに示すように、隣り合う第2直線ピン部材412および折曲ピン部材410は、第2直線ピン部材412の端部412eと折曲ピン部材410の端部410eとが互いに溶接された溶接部80を有する。具体的に述べると、溶接部80は、第2直線ピン部材412の端部412eの端面412fと折曲ピン部材410の端部410eの周面410fとが互いに溶接されて構成される。溶接部80は、便宜上、ハッチングで表す。溶接部80が形成されることで、第2直線ピン部材412の端面412fと折曲ピン部材410の周面410fとは、それぞれの境界面を有さずに一体に形成される。溶接前の端面412fおよび周面410fを、便宜上、仮想線で示す。
【0065】
溶接部80は、金属が一度液体になって固まったものであるので、液体の金属の混ざり合いによって、溶接部80の金属結晶には方向性がない。一方、ピン部材410,412の溶接部80以外の部分では、金属が溶けていないため、この部分の金属結晶には方向性がある。このため、溶接部80と、ピン部材410,412の溶接部80以外の部分とでは、目視または断面研磨によって、その違いを確認することができる。
【0066】
折曲ピン部材410の端部410eは、幅の狭くなるくびれ部81を有する。具体的に述べると、溶接部80は、Z方向からみて、幅の狭くなるくびれ部81を有する。くびれ部81は、Z方向からみて、第2直線ピン部材412の端面412fと折曲ピン部材410の周面410fとが交差する位置に設けられている。具体的に述べると、くびれ部81は、溶接部80のX方向の中央位置で、かつ、溶接部80のY方向の両側の位置に設けられている。
【0067】
なお、隣り合う第1直線ピン部材411および折曲ピン部材410に形成される溶接部ついても上記説明と同様である。さらに、第2コイル42についても上記説明と同様であり、つまり、隣り合う第1直線ピン部材421および折曲ピン部材420に形成される溶接部、および、隣り合う第2直線ピン部材422および折曲ピン部材420に形成される溶接部ついても上記説明と同様である。以下の説明においても同様である。
【0068】
図6Cは、図6BのY方向からみた図である。図6B図6Cに示すように、溶接部80は、第1平面S1に直交する方向(以下、Y方向という。)からみて、折曲ピン部材410の外側縁410iに設けられていない。
【0069】
ここで、折曲ピン部材410の外側縁410iとは、Y方向からみて、第2直線ピン部材412の端部412e(内側)と反対側の外側の縁をいう。折曲ピン部材410が円柱であるため、折曲ピン部材410の外側縁410iは、線に相当する。なお、折曲ピン部材410が角柱である場合、折曲ピン部材410の外側縁410iは、面に相当する。
【0070】
これによれば、溶接部80は、折曲ピン部材410の外側縁410iに設けられていなため、溶接部80は、折曲ピン部材410の外側縁410iへ向かう表面張力を抑えることができ、外側縁410iを覆うような球状にならない。したがって、溶接部80の大きさをより小さくでき、第1コイル41の隣り合うターンの間の隙間をより小さくできて、インダクタ部品1の小型化を図ることができる。また、溶接部80が折曲ピン部材410の外側縁410iよりも外側へ張り出すことを低減でき、第1コイル41の外形を小さくすることができる。
【0071】
溶接部80は、Z方向からみて、折曲ピン部材410の端部410eの中心線410cを含むと共に第1平面S1に直交する第2平面S2よりも内側に設けられている。ここで、第2平面S2よりも内側とは、Z方向からみて、第2平面S2よりも第2直線ピン部材412の端部412e側をいう。
【0072】
これによれば、溶接部80は、第2平面S2よりも内側に設けられているので、溶接部80の大きさをより小さくでき、第1コイル41の隣り合うターンの間の隙間をより小さくできて、インダクタ部品1の小型化を図ることができる。
【0073】
Z方向からみて、第2直線ピン部材412における溶接部80を除く部分の幅412hは、折曲ピン部材410における溶接部80を除く部分の幅410hよりも小さい。溶接部80は、第2直線ピン部材412の端部412eおよび折曲ピン部材410の端部410eが溶融して形成されるものであるため、溶接部80の最大幅は、第2直線ピン部材412の溶接部80を除く部分の幅412hや、折曲ピン部材410の溶接部80を除く部分の幅410hよりも大きくなることがある。
【0074】
これによれば、第2直線ピン部材412の溶接部80を除く部分の幅412hは、折曲ピン部材410の溶接部80を除く部分の幅410hよりも小さいので、溶接部80の幅が大きくなりすぎることを防ぐことができる。このように、同径の第2直線ピン部材412および折曲ピン部材410同士による溶接部80よりも幅の小さい溶接部80を形成することができるため、第1コイル41の隣り合うターン間の隙間を小さくすることができて、インダクタ部品1の小型化を図ることができる。特に、コア3は、長円形(トラック形状)であるため、隣り合うターンの溶接部80を長軸(Y方向)に沿って並べても、第1コイル41の隣り合うターンの溶接部80の間の距離を確保することができる。
【0075】
また、溶接部80は、くびれ部81を有するので、溶接部80の幅が大きくなりすぎることを防ぐことができる。なお、第1実施形態に示すように、幅の狭い第2直線ピン部材412と通常の幅(径)の折曲ピン部材410とを溶接した場合、折曲ピン部材410の径よりも溶接部80の幅が大きくならなければ、溶接部80にくびれ部81がなくても、隣り合うターンの第2直線ピン部材412、412の間の距離を近づけることができる。
【0076】
図6Cに示すように、溶接部80は、Y方向からみて、三角形に形成されている。ここで、三角形とは、完全な三角形に限らず、角や辺が曲線である実質的な三角形も含む。具体的に述べると、Y方向からみて、三角形の一辺は、逆Z方向に位置し、三角形の一角は、順Z方向に位置する。好ましくは、溶接部80は、円錐形状である。
【0077】
これによれば、溶接部80は、三角形に形成されているので、溶接部80は、球状とならず、溶接部80の大きさをより小さくでき、第1コイル41の隣り合うターンの間の隙間をより小さくして、インダクタ部品1の小型化を図ることができる。
【0078】
Y方向からみて、第2直線ピン部材412の端部412eにおける溶接部80の領域(以下、第1領域80aという。)は、折曲ピン部材410の端部410eにおける溶接部80の領域(以下、第2領域80bという。)よりも大きい。第1領域80aと第2領域80bの境界は、仮想線で示す溶接前の端面412fおよび周面410fの境界である。
【0079】
これによれば、第1領域80aは第2領域80bよりも大きいので、折曲ピン部材410の端部410eに設けられる溶接部80の量を低減できる。したがって、溶接部80が折曲ピン部材410の外側縁410i側に設けられることを低減できるため、溶接部80の大きさをより小さくでき、第1コイル41の隣り合うターンの間の隙間をより小さくして、インダクタ部品1の小型化を図ることができる。また、幅の小さい第2直線ピン部材412側において溶接部80を大きくできるので、幅の大きい折曲ピン部材410側において溶接部80が大きくなることを防止できる。
【0080】
溶接部80は、第2直線ピン部材412の端部412eの周面の一周に渡って設けられている。したがって、第2直線ピン部材412の端部412eと折曲ピン部材410の端部410eを強固に接続できる。
【0081】
好ましくは、図4に示すように、インダクタ部品1は、さらに、第1コイル41および第2コイル42の一部を覆う(仮想線で示す)コート部材90を有する。具体的に述べると、コート部材90は、第1コイル41における被膜410bから露出する導体部411a,412a,410aと、第2コイル42における被膜420bから露出する導体部421a,422a,420aとを覆う。つまり、コート部材90は、第1、第2直線ピン部材411,412,421,422(第1のピン部材に相当)を覆い、さらに、溶接部80をも覆う。コート部材90の材料としては、例えば、熱硬化性のエポキシ系の樹脂を用いることができる。
【0082】
このように、コート部材90を設けることにより、第1コイル41および第2コイル42の位置ずれを防止し得る。また、コート部材90は、直線ピン部材411,412,421,422を覆うので、直線ピン部材411,412,421,422を絶縁することができる。また、直線ピン部材411,412,421,422の幅は小さいため、コート部材90を直線ピン部材411,412,421,422に塗布した際に発生する気泡が、隣り合うターンの直線ピン部材411,412,421,422の隙間を通過しやすくなり、コート部材90内に気泡が残ることを抑制できる。
【0083】
(インダクタ部品の製造方法)
次に、インダクタ部品1の製造方法について説明する。
【0084】
図3に示すように、絶縁部材60を嵌め込んだコア3に、互いの巻回軸が並走するように第1コイル41および第2コイル42を巻回する。具体的に述べると、第1コイル41の露出する導体部411a,412a,410aと第2コイル42の露出する導体部421a,422a,420aを、コア3の第1端面301側に配置する。そして、コア3の第1端面301を上向きのまま、第1コイル41のそれぞれのピン部材を溶接し、第2コイル42のそれぞれのピン部材を溶接する。
【0085】
その後、図4に示すように、底板部21にコア3およびコイル41,42を取り付け、その後、蓋部22を被せてケース2内に収納して、インダクタ部品1を製造する。
【0086】
このような製造方法を用いることにより、インダクタ部品1の製造の工程数を低減することができ、インダクタ部品1をより容易に製造できる。
【0087】
次に、コア3に第1コイル41および第2コイル42を巻回する方法について、さらに詳しく説明する。
【0088】
図6Aに示すように、隣り合う第2直線ピン部材412および折曲ピン部材410において、第2直線ピン部材412の端部412eの端面412fと折曲ピン部材410の端部410eの周面410fとを互いに接触させる。このとき、Z方向からみて、第2直線ピン部材412の端部412eの幅412hが、折曲ピン部材410の端部410eの幅410hよりも小さい状態で、第2直線ピン部材412および折曲ピン部材410をコア3に配置する。
【0089】
図6B図6Cに示すように、第2直線ピン部材412および折曲ピン部材410に熱を加えて、第2直線ピン部材412の端部412eの端面412fと折曲ピン部材410の端部410eの周面410fとを互いに溶接して溶接部80を形成する。溶接には、レーザ溶接を用いるが、電子ビーム溶接、TIG溶接、摩擦溶接などを用いてもよい。
【0090】
溶接にファイバーレーザを使用する場合、例えば、ピン部材の線径が1.5mmであるとき、レーザのスポット径を0.1mmとし、レーザの基本波を1064nmとし、レーザ出力を800W×100ms=80Jとする。
【0091】
これによれば、Z方向からみて、第2直線ピン部材412の端部412eの幅412hが、折曲ピン部材410の端部410eの幅410hよりも小さい状態で、第2直線ピン部材412および折曲ピン部材410をコア3に配置し、第2直線ピン部材412の端部412eと折曲ピン部材410の端部410eを溶接して溶接部80を形成するので、Z方向からみて、溶接部80は、幅の狭くなるくびれ部81を有する。したがって、溶接部80が第1コイル41の隣り合うターンの間の隙間に張り出すことを低減でき、第1コイル41の隣り合うターンの間の隙間を小さくできて、インダクタ部品1の小型化を図ることができる。
【0092】
好ましくは、溶接する際、折曲ピン部材410の端部410eよりも、第2直線ピン部材の端部412eにかかる熱量を大きくする。こうすることで、Y方向からみて、溶接部80を折曲ピン部材410の外側縁410iに設けないようにすることができる。これにより、溶接部80は、熔解している状態において折曲ピン部材410の外側縁410iへ向かう表面張力を抑えることができ、外側縁410iを覆うような球状にならない。したがって、溶接部80の大きさをより小さくでき、第1コイル41の隣り合うターンの間の隙間をより小さくできて、インダクタ部品1の小型化を図ることができる。また、溶接部80が折曲ピン部材410の外側縁410iよりも外側へ張り出すことを低減でき、第1コイル41の外形を小さくすることができる。
【0093】
具体的に述べると、折曲ピン部材410において、溶解した金属は、未溶解の金属の面に対して垂直方向に玉を形成しようと表面張力が働く。このため、外側縁410iが溶解していない状態では、表面張力によって、溶解された面に垂直方向に溶解した金属がまとまり、外側縁410iよりも内側方向へ溶解した金属が移動する。この結果、溶接部80は、折曲ピン部材410の外側縁410iに設けられない。
これに対して、外側縁410iが溶解してしまうと、溶解した金属は外側縁410iよりも外側へ張り出した状態でまとまる。この結果、溶接部は、折曲ピン部材410の外側縁410iに設けられる。
【0094】
Y方向からみて、折曲ピン部材410の外側縁410iは、折曲ピン部材410の端部410eの端面側に、最端部410jを有する。最端部410jは、外側縁410iが端部410eの端面に交差する部分である。好ましくは、溶接部80は、折曲ピン部材410の外側縁410iの最端部410jに設けられていない。
これによれば、溶接部80は、熔解している状態において折曲ピン部材410の外側縁410iの最端部410jへ向かう表面張力を抑えることができ、外側縁410iを覆うような球状にならない。具体的に述べると、折曲ピン部材410の端部410eの端面に熱を加えて金属を熔解する場合、外側縁410iの最端部410jが溶解しなければ、金属の溶解は外側縁410iまで広がらない。
【0095】
(第2実施形態)
図7は、ピン部材の第2実施形態を示す断面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、ピン部材の端部の形状が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0096】
図7に示すように、第2直線ピン部材412Aにおける溶接部80を除く部分の断面積は、折曲ピン部材410における溶接部80を除く部分の断面積と等しい。折曲ピン部材410の断面積とは、折曲ピン部材410の延在する方向(中心線410c)に直交する平面における断面積であり、第2直線ピン部材412Aの断面積とは、第2直線ピン部材412Aの延在する方向(中心線412c)に直交する平面における平均の断面積である。第2直線ピン部材412Aにおける溶接部80を除く部分の幅412hは、折曲ピン部材410における溶接部80を除く部分の幅410hよりも小さく、第2直線ピン部材412Aの断面は、Z方向に縦長の長円形となる。第2直線ピン部材412Aは、例えば、断面円形のピン部材を両側から押圧することにより、断面長円形の形状に形成することができる。
【0097】
これによれば、第2直線ピン部材412Aの断面積は、折曲ピン部材410の断面積と等しいので、第2直線ピン部材412Aにおける溶接部80を除く部分の幅412hを小さくしても、この部分の抵抗の増加を抑制できる。
なお、ピン部材を溶接する前において、第2直線ピン部材412Aの全体を断面長円形の形状に形成してもよく、または、第2直線ピン部材412Aの端部のみを断面長円形の形状に形成してもよい。
【0098】
なお、第1直線ピン部材411についても上記説明と同様であり、さらに、第2コイル42(ピン部材420,421,422)についても上記説明と同様である。
【0099】
(第3実施形態)
図8Aは、インダクタ部品の製造方法の第3実施形態を示す底面図である。第3実施形態は、第1実施形態とは、ピン部材の形状が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0100】
図8Aに示すように、隣り合う第2直線ピン部材412Bおよび折曲ピン部材410において、第2直線ピン部材412Bの端部412eの端面412fと折曲ピン部材410の端部410eの周面410fとを互いに接触させる。このとき、Z方向からみて、第2直線ピン部材412Bの端部412eの幅が、端面412fに向かって小さい状態で、第2直線ピン部材412Bおよび折曲ピン部材410をコア3に配置する。具体的に述べると、第2直線ピン部材412Bの端部412eは、Y方向の両側に、テーパ面412jを有する。このとき、Z方向からみて、第2直線ピン部材412Bのテーパ面412jを除く部分の幅412hは、折曲ピン部材410の端部410eの幅410hよりも小さい。
【0101】
このとき、第2直線ピン部材412Bの端部412eのテーパ面412jは、例えば、断面円形のピン部材を両側から押圧することにより、断面長円形の形状に形成することができる。これによれば、第2直線ピン部材412Bの端部412eの断面積は、第2直線ピン部材412Bの端部412e以外の断面積と等しいので、第2直線ピン部材412Bの端部412eの抵抗の増加を抑制できる。
【0102】
その後、図8Bに示すように、第2直線ピン部材412Bおよび折曲ピン部材410に熱を加えて、第2直線ピン部材412Bの端部412eの端面412fと折曲ピン部材410の端部410eの周面410fとを互いに溶接して溶接部80を形成する。
【0103】
このようにして溶接部80を形成するので、溶接部80が第1コイル41の隣り合うターンの間の隙間に張り出すことをより低減でき、第1コイル41の隣り合うターンの間の隙間をより小さくできて、インダクタ部品1の小型化を図ることができる。
【0104】
なお、第1直線ピン部材411と折曲ピン部材410についても上記説明と同様であり、さらに、第2コイル42(ピン部材420,421,422)についても上記説明と同様である。
【0105】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第3実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0106】
第1から第3実施形態では、溶接部は、Y方向からみて、折曲ピン部材の外側縁に設けられていないが、溶接部は、Y方向からみて、折曲ピン部材の外側縁に設けられていてもよい。
【0107】
第1から第3実施形態では、溶接部は、Z方向からみて、第2平面よりも内側に設けられているが、溶接部は、Z方向からみて、第2平面よりも外側に設けられていてもよい。
【0108】
第1から第3実施形態では、溶接部は、Z方向からみて、くびれ部を有するが、くびれ部を有さないでもよい。
【0109】
第1から第3実施形態では、溶接部は、くびれ部を有しているが、くびれ部は、折曲ピン部材の端部における溶接部を除く部分に設けられていてもよい。これによれば、コイルの隣り合うターンの間の隙間を小さくして、コイルのサイズを小さくすることができて、インダクタ部品の小型化を図ることができる。
【0110】
第1から第3実施形態では、第1のピン部材として直線ピン部材を用い、第2のピン部材として折曲ピン部材を用いて、第1のピン部材および第2のピン部材が一体となってコイルの1ターンを構成しているが、第1のピン部材および第2のピン部材のそれぞれが、コイルの1ターンを構成してもよい。また、複数の第1のピン部材および第2のピン部材が一体となってコイルの1ターンを構成してもよい。このように、第1のピン部材および第2のピン部材の形状は、I字状、U字状に限らず、1ターンを構成する形状や、1ターンを複数に分割した形状であってもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 インダクタ部品
2 ケース
21 底板部
22 蓋部
3 コア
301 第1端面
302 第2端面
303 内周面
304 外周面
41 第1コイル
410 折曲ピン部材(第2のピン部材)
410a 導体部
410b 被膜
410c 中心線
410e 端部
410f 周面
410h 幅
410i 外側縁
410j 最端部
411 第1直線ピン部材(第1のピン部材)
412、412A、412B 第2直線ピン部材(第1のピン部材)
411a、412a 導体部
411c 取付片
412c 中心線
412e 端部
412f 端面
412h 幅
412j テーパ面
42 第2コイル
420 折曲ピン部材(第2のピン部材)
420a 導体部
420b 被膜
421 第1直線ピン部材(第1のピン部材)
422 第2直線ピン部材(第1のピン部材)
421a、422a 導体部
421c 取付片
51~54 第1~第4電極端子
51a~54a 取付部
60 絶縁部材
70 接着部材
80 溶接部
80a 第1領域
80b 第2領域
81 くびれ部
S1 第1平面
S2 第2平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B