(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】支持体付き樹脂シート
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20221115BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20221115BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20221115BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20221115BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H05K3/46 T
H05K1/03 630D
H05K1/03 610L
H05K3/46 N
H05K3/46 B
B32B7/027
B32B27/20
C08L63/00
(21)【出願番号】P 2020191756
(22)【出願日】2020-11-18
(62)【分割の表示】P 2016037562の分割
【原出願日】2016-02-29
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 恒太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 ちひろ
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-150885(JP,A)
【文献】特開2013-129170(JP,A)
【文献】小寺喬之、荻原隆、中根幸治、小形信男,噴霧熱分解法による球状酸化物フィラーの合成とその性質,粉体工学会誌,Vol48 No.5,日本,粉体工学会,2006年,348-354頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/03
B32B 7/027
B32B 27/20
C08L 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、支持体上に設けられた樹脂シートと、を備える支持体付き樹脂シートであって、
樹脂シートは、支持体側に設けられた、第1の樹脂組成物により形成される第1の樹脂組成物層と、
支持体側とは反対側に設けられた、第2の樹脂組成物により形成される第2の樹脂組成物層と、を有し、
第1の樹脂組成物層の厚みが、3μm以上であり、
第1の樹脂組成物は、(a)無機充填材を含み、(a)成分の含有量が、第1の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、30質量%以下であり、
第2の樹脂組成物は、(a)無機充填材を含み、(a)成分の含有量が、第2の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、60質量%以上であり、
第1の樹脂組成物を100℃で30分間、さらに190℃で90分間熱硬化させて得られる第1の熱硬化物の熱伝導率と、第2の樹脂組成物を100℃で30分間、さらに190℃で90分間熱硬化させて得られる第2の熱硬化物の熱伝導率との差が0.4W/mK以下であることを特徴とする、支持体付き樹脂シート。
【請求項2】
樹脂シートの厚みが、40μm以下である、請求項1に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項3】
樹脂シートの厚みが、25μm以下である、請求項1又は2に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項4】
第1の樹脂組成物中の(a)成分の平均粒径をR1(μm)、第2の樹脂組成物中の(a)成分の平均粒径をR2(μm)としたとき、R1とR2との比(R2/R1)が、1~15である、請求項1~3のいずれか1項に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項5】
第1の樹脂組成物は、(b)エポキシ樹脂を含み、(b)成分が、メソゲン骨格を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項6】
(b)成分が、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂から選択される1種以上である、請求項5に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項7】
プリント配線板の絶縁層形成用である、請求項1~6のいずれか1項に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項8】
(I)内層基板上に、請求項1~7のいずれか1項に記載の支持体付き樹脂シートの第2の樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)支持体付き樹脂シートを熱硬化して絶縁層を形成する工程、及び
(III)絶縁層にビアホールを形成し、支持体を除去する工程、を含む、プリント配線板の製造方法。
【請求項9】
工程(III)において、レーザーにより絶縁層にビアホールを形成する、請求項8に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
ビアホールの開口径が40μm以下である、請求項8又は9に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の支持体付き樹脂シートにより形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項12】
請求項11に記載のプリント配線板を備える、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体付き樹脂シートに関する。さらには、プリント配線板の製造方法、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板(以下、「配線板」ともいう。)の製造方法としては、回路形成された導体層と絶縁層を交互に積み上げていくビルドアップ方式が広く用いられており、絶縁層は、導体層と接する側とめっき加工を施す側の2層からなる樹脂組成物層を硬化して形成されることが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、情報通信量が増大していることから、プリント配線板の製造においては、微細配線化が望まれている。
【0005】
微細配線化を達成するには、絶縁層表面を低粗度にし、また、2層の樹脂組成物層のうち、めっき加工を施す側(導体層と接する側)の樹脂組成物層は無機充填材の含有量を少なくすることが望ましい。一方で、熱膨張率を低くする観点から、他方(基板と接する側)の樹脂組成物層は無機充填材の含有量を多くすることが望ましい。
【0006】
本発明者らは、このような2層の樹脂組成物層を硬化して形成した絶縁層に対し、ビアホールを形成することを試みた。その結果、ビアホールの側壁における、硬化した各樹脂組成物層の界面の延在方向に括れ部が生じることを見出した(
図1参照)。このような抉れ部が生じるとめっき加工する際にボイドが発生してしまい、微細配線化の障害となり得る。
【0007】
本発明の課題は、硬化した各樹脂組成物層の界面の延在方向に生じる括れ部の発生を抑制した、支持体付き樹脂シート、プリント配線板の製造方法、プリント配線板、及び半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題につき鋭意検討した結果、第1及び第2の樹脂組成物層の熱硬化物の熱伝導率の差を小さくすることにより、硬化した各樹脂組成物層の界面の延在方向に生じる括れ部の長さを小さくすることができることを見出した。本発明者らはさらに鋭意検討した結果、めっき加工を行う側の第1の樹脂組成物層の無機充填材の含有量を、第2の樹脂組成物層の無機充填材の含有量よりも少なくすることにより、上記熱伝導率の差を小さくすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] 支持体と、支持体上に設けられた樹脂シートと、を備える支持体付き樹脂シートであって、
樹脂シートは、支持体側に設けられた、第1の樹脂組成物により形成される第1の樹脂組成物層と、
支持体側とは反対側に設けられた、第2の樹脂組成物により形成される第2の樹脂組成物層と、を有し、
第1の樹脂組成物は、(a)無機充填材を含み、(a)成分の含有量が、第1の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、30質量%以下であり、
第2の樹脂組成物は、(a)無機充填材を含み、(a)成分の含有量が、第2の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、60質量%以上であり、
第1の樹脂組成物を100℃で30分間、さらに190℃で90分間熱硬化させて得られる第1の熱硬化物の熱伝導率と、第2の樹脂組成物を100℃で30分間、さらに190℃で90分間熱硬化させて得られる第2の熱硬化物の熱伝導率との差が0.4W/mK以下であることを特徴とする、支持体付き樹脂シート。
[2] 樹脂シートの厚みが、40μm以下である、[1]に記載の支持体付き樹脂シート。
[3] 樹脂シートの厚みが、25μm以下である、[1]又は[2]に記載の支持体付き樹脂シート。
[4] 第1の樹脂組成物中の(a)成分の平均粒径をR1(μm)、第2の樹脂組成物中の(a)成分の平均粒径をR2(μm)としたとき、R1とR2との比(R2/R1)が、1~15である、[1]~[3]のいずれかに記載の支持体付き樹脂シート。
[5] 第1の樹脂組成物は、(b)エポキシ樹脂を含み、(b)成分が、メソゲン骨格を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の支持体付き樹脂シート。
[6] (b)成分が、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂から選択される1種以上である、[5]に記載の支持体付き樹脂シート。
[7] プリント配線板の絶縁層形成用である、[1]~[6]のいずれかに記載の支持体付き樹脂シート。
[8] (I)内層基板上に、[1]~[7]のいずれかに記載の支持体付き樹脂シートの第2の樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)支持体付き樹脂シートを熱硬化して絶縁層を形成する工程、及び
(III)絶縁層にビアホールを形成し、支持体を除去する工程、を含む、プリント配線板の製造方法。
[9] 工程(III)において、レーザーにより絶縁層にビアホールを形成する、[8]に記載のプリント配線板の製造方法。
[10] ビアホールの開口径が40μm以下である、[8]又は[9]に記載のプリント配線板の製造方法。
[11] [1]~[7]のいずれかに記載の支持体付き樹脂シートにより形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
[12] [11]に記載のプリント配線板を備える、半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬化した各樹脂組成物層の界面の延在方向に生じる括れ部の発生を抑制した、支持体付き樹脂シート、プリント配線板の製造方法、プリント配線板、及び半導体装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、抉れ部を有する絶縁層の断面写真である。
【
図2】
図2は、本発明の支持体付き樹脂シートの一態様を示す模式図である。
【
図3】
図3は、抉れ部の長さを説明するための断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の支持体付き樹脂シート、プリント配線板の製造方法、プリント配線板、及び半導体装置について詳細に説明する。
【0013】
本発明の支持体付き樹脂シートについて詳細に説明する前に、本発明の支持体付き樹脂シートにおいて、樹脂シートに含まれる第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層を形成する際に使用する、第1の樹脂組成物及び第2の樹脂組成物について説明する。
【0014】
(第1の樹脂組成物)
第1の樹脂組成物層を形成する第1の樹脂組成物は、(a)無機充填材を含み、(a)成分の含有量が、第1の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、30質量%以下であれば特に限定されず、その硬化物が十分なめっきピール性と絶縁性を有するものであればよい。第1の樹脂組成物としては、例えば、無機充填材の他に硬化性樹脂とその硬化剤を含む組成物が挙げられる。硬化性樹脂としては、プリント配線板の絶縁層を形成する際に使用される従来公知の硬化性樹脂を用いることができ、中でもエポキシ樹脂が好ましい。したがって一実施形態において、第1の樹脂組成物は、(b)エポキシ樹脂、及び(c)硬化剤を含む。第1の樹脂組成物は、必要に応じて、さらに、熱可塑性樹脂、硬化促進剤、難燃剤及び有機充填剤を含んでいてもよい。
【0015】
以下、第1の樹脂組成物の材料として使用し得る各成分について詳細に説明する。
【0016】
-(a)無機充填材-
無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。これらの中でも炭化ケイ素、シリカが好適であり、シリカが特に好適である。またシリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
無機充填材の平均粒径は特に限定されないが、表面粗さの小さい絶縁層を得る観点や微細配線形成性向上の観点から、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。該平均粒径の下限は、特に限定されないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上である。このような平均粒径を有する無機充填材の市販品としては、例えば、電気化学工業(株)製「UFP-30」、新日鉄住金マテリアルズ(株)製「SPH516-05」、信濃電気製錬(株)製「SER-A06」等が挙げられる。
【0018】
無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波によりメチルエチルケトン中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、(株)島津製作所製「SALD-2200」等を使用することができる。
【0019】
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、及びオルガノシラザン化合物の少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。これらは、オリゴマーであってもよい。表面処理剤の例としては、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業(株)製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)等が挙げられる。表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
【0021】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、(株)堀場製作所製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0022】
第1の樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、めっきピール性を向上させる観点から、第1の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、30質量%以下であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。第1の樹脂組成物中の(c)成分の含有量の下限は特に限定されず、0質量%であってもよいが、通常、5質量%以上、10質量%以上などとし得る。
【0023】
-(b)エポキシ樹脂-
エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱伝導率を高めるという点で、(b)成分は、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂であることが好ましく、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂から選択される1種以上であることがより好ましい。メソゲン骨格とは、棒状又は板状であり、液晶性を発現するような剛直な基(芳香族環)を含む基の総称である。
【0024】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)とを含むことが好ましい。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用することで、優れた可撓性を有する樹脂組成物が得られる。また、樹脂組成物の硬化物の破断強度も向上する。
【0025】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「828US」、「jER828EL」、「825」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、ナガセケムテックス(株)製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、(株)ダイセル製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、新日鐵化学(株)製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン)、三菱化学(株)製の「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル(株)製の「PG-100」、「CG-500」、三菱化学(株)製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、0:0.1~1:15の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)樹脂シートの形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)樹脂シートの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる等の効果が得られる。上記i)~iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、0:0.3~1:10の範囲がより好ましく、0:0.6~1:8の範囲がさらに好ましい。
【0028】
第1の樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0029】
なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0030】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50~5000、より好ましくは50~3000、さらに好ましくは80~2000、さらにより好ましくは110~1000である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0031】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0032】
-(c)硬化剤-
硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されず、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤などが挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。(c)成分は、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤から選択される1種以上であることが好ましい。
【0033】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び導体層との密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック硬化剤が好ましい。
【0034】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成(株)製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-7851H」、日本化薬(株)製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金(株)製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN375」、「SN395」、DIC(株)製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」等が挙げられる。
【0035】
導体層との密着性に優れる絶縁層を得る観点から、活性エステル系硬化剤も好ましい。活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0036】
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0037】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱化学(株)製)、「YLH1030」(三菱化学(株)製)、「YLH1048」(三菱化学(株)製)等が挙げられる。
【0038】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子(株)製の「HFB2006M」、四国化成工業(株)製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。
【0039】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン(株)製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0040】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル(株)製の「V-03」、「V-07」等が挙げられる。
【0041】
エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:2の範囲が好ましく、1:0.015~1:1.5がより好ましく、1:0.02~1:1がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
【0042】
一実施形態において、第1の樹脂組成物は、先述の(b)エポキシ樹脂及び(c)硬化剤を含む。樹脂組成物は、(b)エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との混合物(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂の質量比は好ましくは0:0.1~1:15、より好ましくは0:0.3~1:12、さらに好ましくは0:0.6~1:10)を、(c)硬化剤としてフェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上を、それぞれ含むことが好ましい。
【0043】
第1の樹脂組成物中の硬化剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは45質量%以下、より好ましくは43質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。また、下限は特に制限はないが好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。
【0044】
-(d)熱可塑性樹脂-
第1の樹脂組成物は、(a)~(c)成分の他に(d)熱可塑性樹脂を含有していてもよい。
【0045】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられ、フェノキシ樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8,000~70,000の範囲が好ましく、10,000~60,000の範囲がより好ましく、20,000~60,000の範囲がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0047】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、新日鉄住金化学(株)製の「FX280」及び「FX293」、三菱化学(株)製の「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7891BH30」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0048】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業(株)製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0049】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0050】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0051】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0052】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0053】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学(株)製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St1200」等が挙げられる。
【0054】
中でも、熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。したがって好適な一実施形態において、熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される1種以上を含む。
【0055】
第1の樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含有する場合、熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは0.5質量%~15質量%、より好ましくは0.6質量%~12質量%、さらに好ましくは0.7質量%~10質量%である。
【0056】
-(e)硬化促進剤-
第1の樹脂組成物は、(a)~(c)成分の他に(e)硬化促進剤を含有していてもよい。
【0057】
硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられ、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0059】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0060】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0061】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱化学(株)製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0062】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0063】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0064】
第1の樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は特に限定されないが、エポキシ樹脂と硬化剤の不揮発成分を100質量%としたとき、0.01質量%~3質量%が好ましい。
【0065】
-(f)難燃剤-
第1の樹脂組成物は、(f)難燃剤を含んでもよい。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0066】
難燃剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三光(株)製の「HCA-HQ」、大八化学工業(株)製の「PX-200」等が挙げられる。
【0067】
第1の樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、難燃剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.5質量%~20質量%、より好ましくは0.5質量%~15質量%、さらに好ましくは0.5質量%~10質量%がさらに好ましい。
【0068】
-(g)有機充填材-
樹脂組成物は、伸びを向上させる観点から、(g)有機充填材を含んでもよい。有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。
【0069】
ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル日本(株)製の「EXL2655」、ガンツ化成(株)製の「AC3816N」等が挙げられる。
【0070】
第1の樹脂組成物が有機充填材を含有する場合、有機充填材の含有量は、好ましくは0.1質量%~20質量%、より好ましくは0.2質量%~10質量%、さらに好ましくは0.3質量%~5質量%、又は0.5質量%~3質量%である。
【0071】
-(h)任意の添加剤-
第1の樹脂組成物は、さらに必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよく、斯かる他の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0072】
(第2の樹脂組成物)
第2の樹脂組成物層を形成する第2の樹脂組成物は、(a)無機充填材を含み、(a)成分の含有量が、第2の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、60質量%以上であれば、即ち第1の樹脂組成物と組成が相違すれば特に限定されないが、第2の樹脂組成物としては、無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含むものが好ましい。
【0073】
第2の樹脂組成物中の無機充填材としては(第1の樹脂組成物)欄において説明した無機充填材と同様のものが挙げられる。
【0074】
第2の樹脂組成物中の無機充填材の平均粒径は特に限定されないが、ビアの側壁形状均一性の観点から、好ましくは2.5μm以下、より好ましくは2.0μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下である。該平均粒径の下限は、特に限定されないが、好ましくは0.8μm以上、より好ましくは0.9μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上である。このような平均粒径を有する無機充填材の市販品としては、例えば、新日鉄住金マテリアルズ(株)製「SP60-05」、「SP507-05」、(株)アドマテックス製「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、電気化学工業(株)製「UFP-30」、(株)トクヤマ製「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」、(株)アドマテックス製「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」等が挙げられる。
【0075】
第1の樹脂組成物中の無機充填材の平均粒径をR1(μm)、第2の樹脂組成物中の無機充填材の平均粒径をR2(μm)としたとき、R1≦R2の関係を満たすことが好ましい。また、R1とR2との比(R2/R1)は、好ましくは1以上、より好ましくは1.1以上、さらに好ましくは1.5以上、又は2以上である。R2/R1の上限は特に限定されないが、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。なお、例えば第1の樹脂組成物に複数の無機充填材が含有する場合、複数の無機充填材の各平均粒径の平均値をR1とする(第2の樹脂組成物についても同様である。)。
【0076】
第2の樹脂組成物としては、反りを抑制させる観点から、第2の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の無機充填材の含有量が60質量%以上であり、65質量%以上であるのが好ましく、67質量%以上であるのがより好ましい。第2の樹脂組成物中の無機充填材の含有量の上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0077】
第1の樹脂組成物中の無機充填材の含有量をA1(質量%)、第2の樹脂組成物中の無機充填材の含有量をA2(質量%)としたとき、A1<A2の関係を満たすことが好ましい。また、A1及びA2の差(A2-A1)は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。差(A2-A1)の上限は特に限定されないが、通常、90質量%以下、80質量%以下等とし得る。
【0078】
一実施形態において、第2の樹脂組成物は、無機充填材とともに、エポキシ樹脂及び硬化剤を含む。第2の樹脂組成物は、必要に応じて、さらに、熱可塑性樹脂、硬化促進剤、難燃剤及び有機充填材等の添加剤を含んでいてもよい。
【0079】
第2の樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂、硬化剤及び添加剤としては<第1の樹脂組成物>欄において説明した(b)エポキシ樹脂、(c)硬化剤、及び添加剤と同様のものが挙げられる。
【0080】
第2の樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは22質量%以下である。したがって第2の樹脂組成物中の(b)エポキシ樹脂の含有量は、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは5~25質量%、さらに好ましくは8~22質量%である。
【0081】
第1の樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量をB1(質量%)、第2の樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量をB2(質量%)としたとき、B1>B2の関係を満たすことが好ましい。また、B1及びB2の差(B1-B2)は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。差(B1-B2)の上限は特に限定されないが、通常、60質量%以下、50質量%以下等とし得る。
【0082】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、0:0.1~1:15の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)樹脂シートの形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)樹脂シートの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる等の効果が得られる。上記i)~iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、0:0.3~1:10の範囲がより好ましく、0:0.6~1:8の範囲がさらに好ましい。
【0083】
なお、第2の樹脂組成物中の、エポキシ樹脂のエポキシ当量及びエポキシ樹脂の重量平均分子量の好適な範囲は、第1の樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂と同様である。
【0084】
第2の樹脂組成物中の硬化剤の含有量は特に限定されないが、低誘電正接の絶縁層を得る観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。硬化剤の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。したがって第2の樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは1~15質量%、さらに好ましくは5~12質量%である。
【0085】
第2の樹脂組成物中の、エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.2~1:2の範囲が好ましく、1:0.3~1:1.5がより好ましく、1:0.4~1:1がさらに好ましい。エポキシ樹脂と硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、第2の樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
【0086】
第2の樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0質量%~10質量%、より好ましくは0.2質量%~8質量%、さらに好ましくは0.5質量%~5質量%である。
【0087】
第2の樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は特に限定されないが、0.001質量%~3質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0088】
第2の樹脂組成物中の難燃剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.2質量%~20質量%、より好ましくは0.5質量%~15質量%、さらに好ましくは0.8質量%~10質量%がさらに好ましい。
【0089】
第2の樹脂組成物中の有機充填材の含有量は、好ましくは0.1質量%~20質量%、より好ましくは0.2質量%~10質量%である。
【0090】
第2の樹脂組成物は、第1の樹脂組成物と同様に、必要に応じ、任意の添加剤、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに有機フィラー、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等を含んでいてもよい。
【0091】
[支持体付き樹脂シート]
本発明の支持体付き樹脂シートは、支持体と、支持体上に設けられた樹脂シートと、を備える支持体付き樹脂シートであって、樹脂シートは、支持体側に設けられた、第1の樹脂組成物により形成される第1の樹脂組成物層と、支持体側とは反対側に設けられた、第2の樹脂組成物より形成される第2の樹脂組成物層と、を有し、第1の樹脂組成物は、(a)無機充填材を含み、(a)成分の含有量が、第1の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、30質量%以下であり、第2の樹脂組成物は、(a)無機充填材を含み、(a)成分の含有量が、第2の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、60質量%以上であり、第1の樹脂組成物を100℃で30分間、さらに190℃で90分間熱硬化させて得られる第1の熱硬化物の熱伝導率と、第2の樹脂組成物を100℃で30分間、さらに190℃で90分間熱硬化させて得られる第2の熱硬化物の熱伝導率との差が0.4W/mK以下である。
【0092】
本発明の支持体付き樹脂シートの一例を
図2に示す。
図2において、支持体付き樹脂シート10は、支持体11と、支持体11の上に設けられた樹脂シート12と、を備える。
図2において、樹脂シート12は、支持体側に設けられた第1の樹脂組成物層13と、支持体とは反対側に設けられた第2の樹脂組成物層14とからなる。
【0093】
以下、本発明の支持体付き樹脂シートの支持体及び樹脂シートについて詳細に説明する。
【0094】
<支持体>
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0095】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0096】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0097】
支持体は、第1の樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。
【0098】
また、支持体としては、第1の樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック(株)製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」などが挙げられる。
【0099】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0100】
<樹脂シート>
樹脂シートは、支持体側に設けられた第1の樹脂組成物層と、支持体とは反対側に設けられ、第1の樹脂組成物層を形成する第1の樹脂組成物とは相違する組成の第2の樹脂組成物により形成される第2の樹脂組成物層と、を有する。
【0101】
本発明の支持体付き樹脂シートにおいて、樹脂シートの厚みは、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上である。樹脂シートの厚みの上限は、導体上樹脂層の厚み設定の観点から、好ましくは40μm以下、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下、又は25μm以下である。
【0102】
第1の樹脂組成物からなる第1の樹脂組成物層の厚みは、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。第1の樹脂組成物層の厚みの下限は、特に限定されないが、粗化処理後に導体層に対し優れた剥離強度を呈する絶縁層を得る観点、支持体付き樹脂シートの製造容易性の観点から、通常、0.05μm以上、0.1μm以上などとし得る。第1の樹脂組成物層が存在することにより、めっきピール性を向上させることができる。
【0103】
第2の樹脂組成物からなる第2の樹脂組成物層の厚みは、好ましくは2.5μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは7μm以上、8μm以上、9μm以上又は10μm以上である。第2の樹脂組成物層の厚みの上限は、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。第2の樹脂組成物層が存在することにより、反りを抑制することができる。
【0104】
本発明の支持体付き樹脂シート10は、樹脂シート12の支持体11と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に、保護フィルムをさらに含んでもよい。保護フィルムは、樹脂シート12の表面へのゴミ等の付着やキズの防止に寄与する。保護フィルムの材料としては、支持体11について説明した材料と同じものを用いてよい。保護フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。支持体付き樹脂シート10は、プリント配線板を製造する際には、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0105】
第1の樹脂組成物を100℃で30分間、さらに190℃で90分間熱硬化させて得られる第1の熱硬化物の熱伝導率は、好ましくは1W/mK以下、より好ましくは0.7W/mK以下、さらに好ましくは0.5W/mK以下である。下限については特に限定されないが、0.01W/mK以上とし得る。熱伝導率は、後述する〔硬化物の熱伝導率の測定〕の手順に従って測定することができる。
【0106】
第2の樹脂組成物を100℃で30分間、さらに190℃で90分間熱硬化させて得られる第2の熱硬化物の熱伝導率は、好ましくは1.5W/mK以下、より好ましくは1.0W/mK以下、さらに好ましくは0.7W/mK以下である。下限については特に限定されないが、0.01W/mK以上とし得る。熱伝導率は、後述する〔硬化物の熱伝導率の測定〕の手順に従って測定することができる。
【0107】
本発明では、第1及び第2の熱硬化物の熱伝導率の差が0.4W/mK以下である。上述したが、第1及び第2の熱硬化物の熱伝導率の差を0.4W/mK以下とすることで、硬化した各熱硬化物の界面の延在方向に生じる括れ部の長さを小さくすることができる。このメカニズムは、第1及び第2の熱硬化物の熱伝導率の差が小さいことで、レーザーによる第1及び第2の熱硬化物の熱分解性が均一化することによるものと考えられる。
【0108】
本発明では、第1及び第2の熱硬化物の熱伝導率の差が0.4W/mK以下であり、好ましくは0.35W/mK以下であり、より好ましくは0.3W/mK以下である。下限については特に限定されないが、0.01W/mK以上とし得る。
【0109】
界面延在方向の抉れ部の長さは以下のように定義される。ビアホールの垂直断面を観察した場合、ビアホールの側壁に外挿した直線を引き、該直線から第1の樹脂組成物層と第2の樹脂組成物層との界面までの距離を抉れ部の長さdとした。具体的には、抉れ部の長さは、
図3に一例を示したような直線を引き、第1の樹脂組成物層と第2の樹脂組成物層との界面から直線までの距離dのことをいう。
【0110】
抉れ部の長さは、めっき加工する際のボイドの発生を抑制する観点から、2.0μm以下が好ましく、1.8μm以下がより好ましく、1.5μm以下、又は1.4μm以下がさらに好ましい。下限については特に限定されないが、0.01μm以上である。抉れ部の長さは、後述する「ビアホールの形状の確認(抉れ部の長さとレーザー加工性の評価)」の手順に従って測定することができる。
【0111】
本発明の支持体付き樹脂シートは、硬化した各樹脂組成物層の界面の延在方向に生じる括れ部の長さを小さくすることができるので、開口径(トップ径)が40μm以下であってもレーザー加工性に優れるという特性を示す。これによりプリント配線板の微細配線化が可能となる。
【0112】
[支持体付き樹脂シートの製造方法]
以下、本発明の支持体付き樹脂シートの製造方法の例を説明する。
【0113】
まず、支持体上に、第1の樹脂組成物からなる第1の樹脂組成物層と、第2の樹脂組成物からなる第2の樹脂組成物層とを形成する。
【0114】
第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層を形成する方法としては、例えば、第1の樹脂組成物層と第2の樹脂組成物層とを互いに接合するように積層する方法が挙げられる。第1の樹脂組成物層と第2の樹脂組成物層とを互いに接合するように積層する方法としては、例えば、支持体に第1の樹脂組成物を塗布して塗布膜を乾燥して第1の樹脂組成物層を形成した後、第1の樹脂組成物層上に第2の樹脂組成物を塗布し、塗布膜を乾燥して第2の樹脂組成物層を設ける方法が挙げられる。
【0115】
この方法において、第1の樹脂組成物層は、有機溶剤に第1の樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて支持体上に塗布し、樹脂ワニスを乾燥させることによって作製することができる。
【0116】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0117】
樹脂ワニスの乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の乾燥方法により実施してよい。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で1分間~10分間乾燥させることにより、支持体上に第1の樹脂組成物層を形成することができる。
【0118】
上記方法において、第2の樹脂組成物層は、有機溶剤に第2の樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて支持体上に形成した第1の樹脂組成物層上に塗布し、樹脂ワニスを乾燥させることによって作製することができる。
【0119】
第2の樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスの調製に用いる有機溶剤としては第1の樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスの調製に用いたものと同様のものを用いることができ、第2の樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスは、第1の樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスの乾燥方法と同様の方法により乾燥することができる。
【0120】
なお、樹脂シートは、上記の塗工法以外に、1つの塗工ライン上で2種類の樹脂ワニスを順次塗工するタンデム塗工法により形成してもよい。また、樹脂シートは、第2の樹脂組成物層上に第1の樹脂組成物を塗布し、塗布膜を乾燥して第1の樹脂組成物層を設ける方法、ならびに、別個に用意した第1の樹脂組成物層と第2の樹脂組成物層とを互いに接合するように積層する方法等により形成することもできる。
【0121】
さらに、本発明においては、例えば、保護フィルム上に第2の樹脂組成物層及び第1の樹脂組成物層を順に形成した後に、第1の樹脂組成物層上に支持体を積層して支持体付き樹脂シートを作製してもよい。
【0122】
[プリント配線板及びプリント配線板の製造方法]
本発明のプリント配線板は、本発明の支持体付き樹脂シートにおける樹脂シートの硬化物により形成された絶縁層を含む。また、本発明のプリント配線板の製造方法は、
(I)内層基板上に、本発明の支持体付き樹脂シートの第2の樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)支持体付き樹脂シートを熱硬化して絶縁層を形成する工程、及び
(III)絶縁層にビアホールを形成し、支持体を除去する工程、を含む。
【0123】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板、又は該基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された回路基板をいう。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用すればよい(導体層は配線層ともいう)。
【0124】
内層基板と支持体付き樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から支持体付き樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。支持体付き樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を支持体付き樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に支持体付き樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0125】
内層基板と支持体付き樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0126】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ(株)製のバキュームアップリケーター等が挙げられる。
【0127】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0128】
工程(II)において、支持体付き樹脂シートの樹脂シートを熱硬化して絶縁層を形成する。
【0129】
樹脂シート(第1及び第2の樹脂組成物層)の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0130】
例えば、樹脂シートの熱硬化条件は、第1及び第2の樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は120℃~240℃の範囲(好ましくは150℃~220℃の範囲、より好ましくは170℃~200℃の範囲)、硬化時間は5分間~120分間の範囲(好ましくは10分間~100分間、より好ましくは15分間~90分間)とすることができる。
【0131】
樹脂シートを熱硬化させる前に、樹脂シートを硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂シートを熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂シートを5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)予備加熱してもよい。
【0132】
工程(III)において、絶縁層にビアホールを形成し、支持体を除去する。ビアホールの形成は特に限定されないが、レーザー照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられるが、レーザー照射によって行われることが好ましい。支持体は、抉れ部の発生をより抑制する観点から、絶縁層にビアホールを形成した後に剥離することが好ましく、詳細は、レーザーにより絶縁層にビアホールを形成した後に支持体を剥離することが好ましい。
【0133】
このレーザー照射は、光源として炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等を用いる任意好適なレーザー加工機を用いて行うことができる。用いられ得るレーザー加工機としては、例えば、ビアメカニクス(株)製CO2レーザー加工機「LC-2k212/2C」、三菱電機(株)製の605GTWIII(-P)、松下溶接システム(株)製のレーザー加工機が挙げられる。
【0134】
レーザー照射の条件は特に限定されず、レーザー照射は選択された手段に応じた常法に従う任意好適な工程により実施することができる。
【0135】
ビアホールの形状、すなわち延在方向でみたときの開口の輪郭の形状は特に限定されないが、一般的には円形(略円形)とされる。以下、ビアホールの「径」という場合には、延在方向でみたときの開口の輪郭の径(直径)をいう。本明細書において、開口径(トップ径)とはビアホールの絶縁層(第1の樹脂組成物層の硬化物)側の輪郭の径をいい、底部径r2とはビアホールの配線層側の輪郭の径をいう。
【0136】
ビアホールの開口径r1としては、好ましくは40μm以下、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下、又は25μm以下となるようにビアホールを形成することが好ましい。
【0137】
開口径r1が底部径r2よりも大きくなるようにビアホールを形成してもよく、ビアホールの開口径r1がビアホールの底部径r2と同一となるようにビアホールを形成してもよい。このようにすれば、ビアホールの埋め込み性が良好となりボイドの発生を抑制することができる。
【0138】
プリント配線板を製造するに際しては、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(IV)~(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
【0139】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に硬化体を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。酸化剤(粗化液)としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「コンセントレート・コンパクトP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0140】
工程(V)は、導体層を形成する工程である。
【0141】
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0142】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0143】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0144】
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0145】
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0146】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
【0147】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0148】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0149】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例】
【0150】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0151】
[支持体付き樹脂シートの作製]
以下の手順により調製した樹脂ワニス(樹脂組成物)を用いて、実施例及び比較例の支持体付き樹脂シートを作製した。
【0152】
(樹脂ワニス1の調製)
ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量288)25部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)20部を、ソルベントナフサ5部及びシクロヘキサノン5部の混合溶媒に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(水酸基当量125、DIC(株)製「LA-7054」、固形分60%のMEK溶液)10部、ビフェニルノボラック系硬化剤(水酸基当量218、明和化成(株)製「MEH-7851H」、固形分60%のMEK溶液)15部、ポリビニルブチラール樹脂(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS-1」の固形分15%のエタノールとトルエンの1:1の混合溶液)10部、アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)1部、イミダゾール系硬化促進剤(三菱化学(株)製「P200-H50」、固形分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)2部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ(新日鉄住金マテリアルズ(株)製「SPH516-05」、平均粒径0.2μm、単位表面積当たりのカーボン量0.43mg/m2)22部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO製「SHP020」)で濾過して、樹脂ワニス1を調製した。
【0153】
(樹脂ワニス2の調製)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「1750」、エポキシ当量約159)5部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量288)20部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP-4710」、エポキシ当量約170)3部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)5部を、ソルベントナフサ20部及びシクロヘキサノン5部の混合溶媒に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(水酸基当量125、DIC(株)製「LA-7054」、固形分60%のMEK溶液)5部、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(水酸基当量151、DIC(株)製「LA-3018-50P」、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)10部、ナフトール系硬化剤(新日鉄住金化学(株)製「SN485」、水酸基当量215、固形分60%のMEK溶液)10部、アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)1部、難燃剤(三光(株)製「HCA-HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド、平均粒径1.5μm)3部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ(新日鉄住金マテリアルズ(株)製「SP60-05」、平均粒径1.3μm、単位表面積当たりのカーボン量0.30mg/m2)190部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO製「SHP050」)で濾過して、樹脂ワニス2を調製した。
【0154】
(樹脂ワニス3の調製)
ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量144、DIC(株)製「HP4032SS」)5部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3100」、エポキシ当量258)5部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC(株)製「EXA-7311」、エポキシ当量277)20部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)6部を、ソルベントナフサ5部及びシクロヘキサノン5部の混合溶媒に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC-8000-65T」、重量平均分子量が約2700、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)5部、カルボジイミド樹脂(日清紡ケミカル(株)製「V-03」、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)5部、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量約232、不揮発分75質量%のMEK溶液)30部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)1部、イミダゾール系硬化促進剤(三菱化学(株)製「P200-H50」、固形分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)0.1部、硬化促進剤(東京化成(株)製、コバルト(III)アセチルアセトナート[Co(III)Ac、固形分1質量%のMEK溶液]3部、ゴム粒子(ダウ・ケミカル日本(株)製、PARALOID EXL2655)2部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球状シリカ(新日鉄住金マテリアルズ(株)製「SPH516-05」、平均粒径0.2μm、単位表面積当たりのカーボン量0.43mg/m2)12部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO製「SHP020」)で濾過して、樹脂ワニス3を調製した。
【0155】
(樹脂ワニス4の調製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「825」、エポキシ当量約176)10部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC(株)製「EXA-7311」、エポキシ当量277)20部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)12部を、ソルベントナフサ12部及びシクロヘキサノン5部の混合溶媒に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC-8000-65T」、重量平均分子量が約2700、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)30部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン、固形分5質量%のMEK溶液)2部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業(株)製「1B2PZ」1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、固形分5%のMEK溶液)0.5部、難燃剤(三光(株)製「HCA-HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド、平均粒径2μm)3部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ(新日鉄住金マテリアルズ(株)製「SP507-05」、平均粒径1.0μm、単位表面積当たりのカーボン量0.35mg/m2)120部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO製「SHP050」)で濾過して、樹脂ワニス4を調製した。
【0156】
(樹脂ワニス5の調製)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「1750」、エポキシ当量約159)5部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量288)20部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3100」、エポキシ当量258)3部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)12部を、ソルベントナフサ5部及びシクロヘキサノン5部の混合溶媒に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(水酸基当量151、DIC(株)製「LA-3018-50P」、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)5部、活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC-8000-65T」、重量平均分子量が約2700、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)15部、アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)2部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業(株)製「1B2PZ」1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、固形分5%のMEK溶液)2部、エポキシシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM403」)0.1部、微粉炭化ケイ素(信濃電気製錬(株)製「SER-A06」、平均粒径0.6μm)5部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO製「SHP030」)で濾過して、樹脂ワニス5を調製した。
【0157】
(樹脂ワニス6の調製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「825」、エポキシ当量約176)10部、キシレン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7700」、エポキシ当量270)25部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)20部を、ソルベントナフサ5部及びシクロヘキサノン5部の混合溶媒に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(水酸基当量125、DIC(株)製「LA-7054」、固形分60%のMEK溶液)10部、ナフトール系硬化剤(新日鉄住金化学(株)製「SN485」、水酸基当量215、固形分60%のMEK溶液)15部、ポリビニルブチラール樹脂(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS-1」)の固形分15%のエタノールとトルエンの1:1の混合溶液)10部、アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)1部、イミダゾール系硬化促進剤(三菱化学(株)製「P200-H50」、固形分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)2部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ((株)アドマテックス製「SO-C1」、平均粒径0.4μm、単位表面積当たりのカーボン量0.35mg/m2)22部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO製「SHP030」)で濾過して、樹脂ワニス6を調製した。
【0158】
(樹脂ワニス7の調製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「825」、エポキシ当量約176)5部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量288)20部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP-4710」、エポキシ当量約170)3部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)5部を、ソルベントナフサ10部及びシクロヘキサノン5部の混合溶媒に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(水酸基当量125、DIC(株)製「LA-7054」、固形分60%のMEK溶液)5部、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(水酸基当量151、DIC(株)製「LA3018-50P」、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)10部、ナフトール系硬化剤(新日鉄住金化学(株)製「SN485」、水酸基当量215、固形分60%のMEK溶液)10部、アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)1部、難燃剤(三光(株)製「HCA-HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド、平均粒径1.5μm)3部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された破砕シリカ((株)龍森製「IMSIL A-8」、平均粒径2μm、単位表面積当たりのカーボン量0.21mg/m2)120部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO製「SHP050」)で濾過して、樹脂ワニス7を調製した。
【0159】
各樹脂ワニスの作製に用いた材料とその配合量(不揮発分の質量部)を表1に示した。
【0160】
【0161】
<実施例1:支持体付き樹脂シートの作製>
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック(株)製「AL-5」)で離型処理したPETフィルム(東レ(株)製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃、「離型PET」)を用意した。
【0162】
樹脂ワニス1を離型PET上に、乾燥後の第1の樹脂組成物層の厚みが5μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、80℃から160℃で5分間乾燥することにより、離型PET上に第1の樹脂組成物層を得た。次いで、第1の樹脂組成物層の上に樹脂ワニス2を、乾燥後に第1の樹脂組成物層と合わせた厚みが20μmとなるように塗布し、70℃~110℃(平均90℃)にて3分間乾燥させ、2層の樹脂組成物層(樹脂シート)を形成した。次いで、樹脂シートの支持体と接合していない面(すなわち第2の樹脂組成物層の第1の樹脂組成物層と接合していない面)に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス(株)製「アルファンMA-411」、厚み15μm)の粗面を、第2の樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、支持体、第1の樹脂組成物層(樹脂ワニス1由来)、第2の樹脂組成物層(樹脂ワニス2由来)、及び保護フィルムの順からなる支持体付き樹脂シート1を得た。
【0163】
<実施例2:支持体付き樹脂シート2の作製>
実施例1において、1)樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス3とし、乾燥後の第1の樹脂組成物層の厚みが3μmになるよう塗布し、2)樹脂ワニス2に代えて樹脂ワニス4を使用した以外は、実施例1と同様にして支持体付き樹脂シート2を得た。
【0164】
<実施例3:支持体付き樹脂シート3の作製>
実施例1において、1)樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス5とし、乾燥後の第1の樹脂組成物層の厚みが4μmになるよう塗布し、2)樹脂ワニス2に代えて樹脂ワニス4を使用した以外は、実施例1と同様にして支持体付き樹脂シート3を得た。
【0165】
<比較例1:支持体付き樹脂シート4の作製>
実施例1において、樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス6とし、乾燥後の第1の樹脂組成物層の厚みが4μmになるよう塗布した以外は、実施例1と同様にして支持体付き樹脂シート4を得た。
【0166】
<比較例2:支持体付き樹脂シート5の作製>
実施例1において、樹脂ワニス2に代えて樹脂ワニス7を使用した以外は、実施例1と同様にして支持体付き樹脂シート5を得た。
【0167】
(各樹脂組成物の硬化物の作製)
各樹脂ワニス1~7を実施例、比較例と同じ離型PETフィルム上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが50μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、70℃から120℃で5分間乾燥することにより、離型PETフィルム上に樹脂組成物層が形成された樹脂フィルムを得た。
【0168】
離型PETフィルム(リンテック(株)製「501010」、厚さ38μm、240mm角)の未処理面がガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(松下電工(株)製「R5715ES」、厚さ0.7mm、255mm角)に接するように、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板上に設置し、該離型フィルムの四辺をポリイミド接着テープ(幅10mm)で固定した。
【0169】
樹脂組成物層の厚みが50μmの各樹脂フィルム(167×107mm角)を、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ(株)製 2ステージビルドアップラミネーター CVP700)を用いて、樹脂組成物層が離型PETフィルムの離型面と接するように、中央にラミネート処理した。ラミネート処理は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。
【0170】
次いで、支持体を剥離し樹脂組成物層の上から、同樹脂フィルムの樹脂組成物層をさらに同じ条件でラミネートし、50μm×2=100μm厚の樹脂組成物層とし、その後支持体を剥離した状態で、100℃で30分間、さらに190℃で90分間の硬化条件で樹脂組成物層を熱硬化させた。
【0171】
熱硬化後、ポリイミド接着テープを剥がし、樹脂組成物層をガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板から取り外した。更に樹脂組成物層から離型PETフィルムを剥離して、約100μm厚のシート状硬化物を得た。シート状硬化物を評価用硬化物と称する。
【0172】
〔硬化物の熱伝導率の測定〕
(1)熱拡散率αの測定
評価用硬化物の厚さ方向の熱拡散率α(m2/s)を、ai-Phase社製「ai-Phase Mobile 1u」を用いて温度波分析法により測定した。同一試料について3回測定を行い、平均値を算出した。
(2)比熱容量Cpの測定
示差走査熱量計(SIIナノテクノロジー(株)製「DSC7020」)を用いて、-40℃から80℃まで10℃/分で昇温し、測定することにより、硬化物試料の20℃での比熱容量Cp(J/kg・K)を算出した。
(3)密度ρの測定
評価用硬化物の密度(kg/m3)を、メトラー・トレド(株)製分析天秤XP105(比重測定キット使用)を用いて測定した。
(4)熱伝導率λの算出
上記(1)乃至(3)で得られた熱拡散率α(m2/s)、比熱容量Cp(J/kg・K)、及び密度ρ(kg/m3)を下記式(I)に代入して、熱伝導率λ(W/m・K)を算出した。結果を下記表に示した。
λ=α×Cp×ρ (I)
【0173】
<抉れ部の長さ及びレーザー加工性の評価>
(サンプルの作製)
(1)配線基板の下地処理
直径150μmの円形の導体パターン(配線パターン)が両面に形成されたガラス布基材エポキシ樹脂積層板(銅箔の厚さ12μm、基板の厚さ0.3mm、サイズ510mm×340mm、パナソニック(株)製「R-1515A」を用いて導体パターン(残銅率約70%)を形成した配線基板)の両面に対し、処理(i)メック(株)製「CZ8101」にて厚さにして約0.8μmエッチングして除去し導体パターンの表面の粗化処理を行った。
【0174】
(2)樹脂シートの積層工程
実施例及び比較例で作製した2層の樹脂組成物を有する各支持体付き樹脂シート(サイズ504mm×334mm)の保護フィルムを剥離し、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ(株)製、2ステージビルドアップラミネーター、CVP700)を用いて、第2の樹脂組成物層が前記(1)で処理された配線基板と接するように、配線基板の両面に積層した。この積層工程は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、温度120℃、圧力0.74MPaの条件にて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、温度110℃、圧力0.5MPaの条件にて60秒間熱プレス工程を行った。
【0175】
(3)樹脂組成物層の硬化
支持体付き樹脂シートが積層された配線基板を、100℃で30分間、次いで175℃で30分間の硬化条件で樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層(導体上約15μm厚)を形成した。
【0176】
(4)ビアホールの形成
支持体側の上方からレーザーを照射して、内側にある直径150μmの円形の導体パターンの直上の絶縁層に小径のビアホールを形成し評価基板を得た。
【0177】
ビアホールの形成工程は、下記に示したとおり条件で行った。
三菱電機(株)製CO2レーザー加工機「605GTWIII(-P)」を使用して、支持体側の上方からレーザーを照射して、絶縁層にトップ径(直径)30μmのビアホールを形成した。レーザーの照射条件は、マスク径が1mmであり、パルス幅が16μsであり、エネルギーが0.20mJ/ショットであり、ショット数が2であり、バーストモード(10kHz)で行った。
【0178】
(評価)
(5)ビアホールの形状の確認(抉れ部の長さとレーザー加工性の評価)
上記(4)で得られた評価基板について、支持体を剥離し、適当な大きさに切断して、ビアホールを含む試料を冷間埋込樹脂に包埋し、試料研磨装置(Struers社製 RotoPol-22)にてビア中央部断面を作成し、走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製 S4800)にて観察した。得られた画像から第1の樹脂組成物層と第2の樹脂組成物層の界面に発生した界面の延在方向に生じる抉れ部の長さ(μm)を測定した。具体的には、ビアホールの側壁に外挿した直線を引き、該直線から第1の樹脂組成物層と第2の樹脂組成物層との界面までの距離dを測定した。4個のビアホールについて測定し、平均値をそれぞれ求め、以下の基準で評価した。
○:抉れ部の長さが3μm以下
×:抉れ部の長さが3μmを超える
【0179】
【符号の説明】
【0180】
10 支持体付き樹脂シート
11 支持体
12 樹脂シート
13 第1の樹脂組成物層
14 第2の樹脂組成物層