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  • 特許-強度評価装置及び強度評価方法 図1
  • 特許-強度評価装置及び強度評価方法 図2
  • 特許-強度評価装置及び強度評価方法 図3
  • 特許-強度評価装置及び強度評価方法 図4
  • 特許-強度評価装置及び強度評価方法 図5A
  • 特許-強度評価装置及び強度評価方法 図5B
  • 特許-強度評価装置及び強度評価方法 図5C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】強度評価装置及び強度評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20221115BHJP
【FI】
G01N23/046
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021509651
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014142
(87)【国際公開番号】W WO2020196855
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2019061232
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】山羽 紗代
(72)【発明者】
【氏名】福丸 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄一
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/158864(WO,A1)
【文献】特開2015-68752(JP,A)
【文献】国際公開第2010/147231(WO,A1)
【文献】特開平4-306240(JP,A)
【文献】福重進也ら,繊維蛇行を有する複合材料の強度解析,第30回計算力学講演会講演論文集,日本機械学会,2017年09月,Vol.30th,171
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01N 27/72-G01N 27/9093
G01N 3/00-G01N 3/62
B32B 1/00-B32B 43/00
D04B 1/00-D04B 1/28
D04B 21/00-D04B 21/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維層が積層された複合材料の強度評価方法であって、
前記複数の繊維層における繊維の、繊維層に沿った方向における蛇行状態を測定する蛇行状態測定工程と、
前記複数の繊維層における繊維の蛇行が発生している部位の積層方向厚さである蛇行厚さを測定する蛇行厚さ測定工程と、
前記蛇行状態と前記蛇行厚さとに基づいて強度を評価する強度評価工程とを備え
前記蛇行状態測定工程においては、各繊維層における前記繊維の蛇行振幅を測定すると共に前記蛇行振幅の最大値を最大振幅とし、
前記強度評価工程においては、前記最大振幅と前記蛇行厚さとに基づいて強度を評価する強度評価方法。
【請求項2】
前記蛇行厚さ測定工程は、前記複合材料における蛇行した前記繊維の積層数を前記蛇行厚さとして測定する請求項1記載の強度評価方法。
【請求項3】
前記強度評価工程においては、前記最大振幅と前記蛇行厚さとの積算値の逆数を前記複合材料の強度に相関する評価パラメータとする請求項1記載の強度評価方法。
【請求項4】
複数の繊維層が積層された複合材料の強度評価装置であって、
前記複数の繊維層における繊維の、繊維層に沿った方向における蛇行状態を算出する蛇行状態算出部と、
前記複数の繊維層における繊維の蛇行が発生している部位の積層方向厚さである蛇行厚さを算出する蛇行厚さ算出部と、
前記蛇行状態と前記蛇行厚さとに基づいて強度を評価する強度評価部とを備え、
前記蛇行状態算出部は、各繊維層における前記繊維の蛇行振幅を算出すると共に前記蛇行振幅の最大値を最大振幅とし、
前記強度評価部は、前記最大振幅と前記蛇行厚さとに基づいて強度を評価する強度評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、強度評価装置及び強度評価方法に関する。
本願は、2019年3月27日に日本に出願された特願2019-061232号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
繊維(繊維層)を積層して形成される複合材料においては、繊維層(プリプレグ)に沿って発生する繊維の蛇行が、複合材料の強度に影響を与えると考えられる。このような繊維の蛇行は、例えば製造段階における加圧成形時や、繊維の配置時等に発生すると考えられる。例えば、特許文献1には、繊維強化複合材料における繊維の蛇行状態を定量的に評価する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2018-159691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような繊維層に沿った繊維の蛇行は、積層方向に隣接する他の繊維層にも波及し、積層された繊維層の複数の位置において同様の繊維蛇行が発生する場合がある。しかしながら、現状においては、繊維層に沿った方向における蛇行状態のみが考慮されており、蛇行状態から複合材料の強度の適切な評価を行うことが難しい場合がある。
【0005】
本開示は、上述する問題点に鑑みてなされ、蛇行状態に基づいて複合材料の強度を評価することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、複数の繊維層が積層された複合材料の強度評価方法であって、前記複数の繊維層における繊維の、繊維層に沿った方向における蛇行状態を測定する蛇行状態測定工程と、前記複数の繊維層における繊維の蛇行が発生している部位の積層方向厚さである蛇行厚さを測定する蛇行厚さ測定工程と、前記蛇行状態と前記蛇行厚さとに基づいて強度を評価する強度評価工程とを備える。
【0007】
本開示の第2の態様は、前記第1の態様において、前記蛇行状態測定工程においては、各繊維層における前記繊維の蛇行振幅を測定すると共に前記蛇行振幅の最大値を最大振幅とし、前記強度評価工程においては、前記最大振幅と前記蛇行厚さとに基づいて強度を評価する。
【0008】
本開示の第3の態様は、前記第1または第2の態様において、前記蛇行厚さ測定工程は、前記複合材料における蛇行した前記繊維の積層数を前記蛇行厚さとして測定する。
【0009】
本開示の第4の態様は、前記第1~第3の態様のいずれか1つの態様において、前記強度評価工程においては、前記蛇行状態と前記蛇行厚さとの積算値の逆数を評価パラメータとする。
【0010】
本開示の第5の態様は、複数の繊維層が積層された複合材料の強度評価装置であって、前記複数の繊維層における繊維の、繊維層に沿った方向における蛇行状態を算出する蛇行状態算出部と、前記複数の繊維層における繊維の蛇行が発生している部位の積層方向厚さである蛇行厚さを算出する蛇行厚さ算出部と、前記蛇行状態と前記蛇行厚さとに基づいて強度を評価する強度評価部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、蛇行状態と蛇行厚さとに基づいて強度を評価することにより、繊維層に沿った方向における蛇行状態と積層方向における蛇行の波及状態とを考慮した上で蛇行の評価を行うことが可能である。したがって、本開示は、繊維層に沿った方向と積層方向との双方の蛇行状態について考慮した上で、適切に複合材料の強度の評価が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係る強度評価装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】複合材料と繊維の蛇行を示す模式図である。
図3】本開示の一実施形態に係る強度評価方法を示すフローチャートである。
図4】本開示の一実施形態における評価パラメータと引張強度との相関を示すグラフである。
図5A】蛇行角度と引張強度との関係性を示すグラフである。
図5B】蛇行振幅と引張強度との関係性を示すグラフである。
図5C】蛇行した繊維層数の全体層数に対する比と引張強度との関係性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本開示に係る強度評価方法及び強度評価装置の一実施形態について説明する。
【0014】
本実施形態に係る強度評価装置1は、繊維層が複数積層された状態で樹脂により接合された複合材料の強度を評価する装置である。このような複合材料においては、繊維層の積層後に、樹脂を含侵させた状態で加圧するため、各繊維層の繊維が繊維層に沿った方向において蛇行することがある。なお、「繊維層に沿った方向」とは、複数の繊維層の積層方向(厚さ方向)に直交する方向をいう。また、複合材料の繊維の繊維層に沿った方向における蛇行は、積層方向に隣接する複数の繊維層において並行に発生することが知られている。強度評価装置1は、このような複合材料の繊維の蛇行に基づいて、強度を評価する。このような強度評価装置1は、図1に示すように、撮像部2と、画像解析部3と、振幅算出部4(蛇行状態算出部)と、厚さ算出部5(蛇行厚さ算出部)と、強度評価部6とを備えている。なお、画像解析部3、振幅算出部4、厚さ算出部5及び強度評価部6は、コンピュータの一機能とされ、CPU(Central Processing Unit)、記憶媒体、モニタ等の出力装置が連携することにより機能する。
なお、画像解析部3、振幅算出部4、厚さ算出部5及び強度評価部6が複数のコンピュータから構成されてもよいし、それぞれ単一のコンピュータから構成されてもよい。このようなコンピュータは、CPU、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)といったメモリ、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)といった記憶装置、及び撮像部2やセンサ等の機器との信号のやり取りを行う入出力装置から構成されてもよい。
【0015】
撮像部2は、複合材料をX線CT(コンピュータ断層撮影法)により撮影する装置である。撮像部2は、X線により複合材料を走査し、複合材料の内部構造を非破壊的に撮像画像として取得する。撮像部2は、X線発生器及びX線検出器等を備える。
【0016】
画像解析部3は、撮像部2により撮像された複合材料の画像を複数取得し、画像から複合材料の3次元方向における輪郭及び繊維の輪郭を抽出する。そして、画像解析部3は、繊維の輪郭から、図2に示すような複合材料Cの繊維層Pにおける繊維F(F1,F2)の蛇行、すなわち、繊維Fが直線状ではなく湾曲して配置された状態を検出する。なお、図2は単一の繊維層Pの平面図(厚さ方向から見た図)を示しているが、複合材料Cは複数の繊維層Pが厚さ方向に積層されて構成されている。
【0017】
振幅算出部4は、画像解析部3により解析された繊維の輪郭と、検出された繊維の蛇行状態に基づいて、図2に示すように、蛇行した繊維の振幅(蛇行振幅)を算出する。なお、複合材料においては、繊維の蛇行が複数発生している場合がある。このとき、振幅算出部4は、複数の繊維層に発生している蛇行振幅の最大値(最大振幅)を抽出し、蛇行振幅が最大となった繊維の位置(座標)を記憶する。
【0018】
厚さ算出部5は、画像解析部3により解析された複合材料の輪郭に基づいて、検出された複合材料の繊維層を識別する。そして、厚さ算出部5は、画像解析部3により検出された繊維の蛇行のうち、振幅が最大とされた蛇行部位の影響を受けている繊維層の数、すなわち、並行して同様の蛇行が発生している繊維層数(積層方向厚さ)を算出する。なお、このような繊維層数を、「繊維の積層数」と称したり、「蛇行厚さ」と称したりする場合がある。
【0019】
強度評価部6は、振幅算出部4及び厚さ算出部5から、蛇行振幅(蛇行状態)と繊維層数(蛇行厚さ)を取得し、蛇行振幅と繊維層数との積算値の逆数を評価パラメータとして記憶する。また、強度評価部6は、予め実験等により算出された強度(例えば引張強度)と評価パラメータとの相関(図4参照)に基づくマップを記憶している。強度評価部6は、このようなマップを参照し、計測された評価パラメータから複合材料の強度を推定する。
【0020】
続いて、本実施形態に係る強度評価方法について、図3を参照して説明する。
本実施形態に係る強度評価装置1は、まず、撮像部2において、複合材料のX線CT撮影を行う(ステップS1)。このとき、複合材料は、撮像部2により、内部の構造を含めて3次元的に構造が取得される。そして、強度評価装置1は、画像解析部3において、CT画像から複合材料の外形の輪郭及び繊維の輪郭を抽出する(ステップS2)。画像解析部3は、撮像されたCT画像を例えば二値化し、所定の閾値を超える部位を複合材料の外形の輪郭及び繊維の輪郭として判定する。さらに、強度評価装置1は、画像解析部3において、繊維の輪郭から繊維の蛇行状態を検出する(ステップS3)。
【0021】
そして、強度評価装置1は、振幅算出部4において、繊維の輪郭に基づいて、図2に示すように、検出された蛇行した繊維の振幅(蛇行振幅)を算出する(ステップS4)。さらに、強度評価装置1は、振幅算出部4において、算出された蛇行振幅の最大値(最大振幅)を抽出する(ステップS5)。また、このとき、振幅算出部4は、蛇行振幅が最大となった繊維の座標(3次元位置座標)を記憶する。なお、ステップS4及びS5は、本開示における蛇行状態測定工程に相当する。
なお、蛇行振幅を算出する方法は複数考えられるが、例えば図2に示すように、一の繊維F1の、撮像部2の撮像領域における両端F1a,F1bを繋ぐ仮想直線L1から、蛇行した繊維F1のうち最も離れた部位までの距離D1(繊維層Pに沿い且つ直線L1に直交する方向の距離)を、蛇行振幅としてもよい。また、局所的な繊維の蛇行は複合材料Cの強度評価に重要であるが、例えば複合材料Cの形状に基づく繊維の湾曲は通常起こりうる湾曲として強度評価から除外できる場合があるため、撮像部2の撮像領域内の一の繊維の軌跡を最もよく近似し且つ単一の半径で表される円弧を導出し、この円弧から、蛇行した繊維のうち最も離れた部位までの距離を、蛇行振幅としてもよい。
さらに、図2に示すように、複数の繊維F1,F2において蛇行が生じている場合は、蛇行振幅を示す距離D1,D2をそれぞれ算出し、このうち最も大きな距離を最大振幅としてもよい。
【0022】
次に、強度評価装置1は、厚さ算出部5において、蛇行が波及している繊維層数(蛇行厚さ)を算出する(ステップS6)。このとき、厚さ算出部5は、蛇行振幅が最大となった繊維の部位において、各繊維層における同位置(繊維層に沿う二次元方向での同位置)に蛇行が検出されているか否かを抽出する。そして、それぞれ互いに隣接する複数の繊維層の同位置において蛇行が検出されている場合には、繊維の蛇行が積層方向において波及しているとみなし、蛇行の波及が抽出された繊維層の数を算出する。なお、ステップS6は、本開示における蛇行厚さ測定工程に相当する。
【0023】
そして、強度評価装置1は、強度評価部6において、評価パラメータを算出する(ステップS7)。このとき、強度評価部6は、振幅算出部4により算出された蛇行振幅の最大値と、厚さ算出部5により算出された繊維層の数とを取得し、上記最大値と繊維層の数との積の逆数を評価パラメータとして算出する。
【0024】
さらに、強度評価装置1は、強度評価部6において、複合材料の強度を評価する(ステップS8)。このとき、強度評価部6は、引張強度と評価パラメータとの相関に基づくマップを記憶しており、ステップS7で算出された評価パラメータから、上記マップに基づいて引張強度を導出する。なお、ステップS7及びS8は、本開示における強度評価工程に相当する。
【0025】
このような本実施形態における評価パラメータと引張強度との相関性について説明する。図5Aは蛇行角度と引張強度との関係性を示すグラフであり、図5Bは蛇行振幅と引張強度との関係性を示すグラフであり、図5Cは蛇行した繊維層数の全体層数に対する比と引張強度との関係性を示すグラフである。
なお、蛇行角度とは、例えば図2において、仮想直線L1と、繊維F1の蛇行している箇所との間の最大角度α1をいう。
【0026】
図5Aのグラフを見ると、引張強度と、蛇行角度(蛇行した繊維と、蛇行していない繊維とのなす角)との間には、相関性が見られないことが分かる。同様に、図5Bのグラフを見ると、引張強度と蛇行振幅との間には、相関性が見られない。また、図5Cのグラフを見ると、引張強度と繊維層数比との間にも、相関性が見られない。
すなわち、繊維層に沿った方向の蛇行状態のみについて着目したパラメータである蛇行角度及び蛇行振幅から引張強度を評価することは難しい。同様に、積層方向の蛇行状態のみについて着目したパラメータである層数比から引張強度を評価することは難しい。
【0027】
これに対して、図4に示すように、本実施形態における評価パラメータは、引張強度との間に強い相関性を有しており、評価パラメータを算出することにより引張強度を評価することが可能である。すなわち、本実施形態における評価パラメータは、繊維層に沿った方向と積層方向との双方の蛇行状態について着目しており、適切に引張強度の評価が可能である。
【0028】
また、本実施形態における評価パラメータは、蛇行振幅のうち、最大値の振幅を用いて算出されている。したがって、全繊維層において最も大きな影響を与える繊維蛇行について評価を行うことが可能である。
【0029】
以上、図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態には限定されない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0030】
例えば、上記実施形態においては、厚さ算出部5において、蛇行した繊維層の厚さを算出しているが、本開示はこれに限定されない。厚さ算出部5は、蛇行した繊維層の厚さを繊維層全体の厚さで割った繊維層比を算出し、この繊維層比を本開示の「蛇行厚さ」としてもよい。そして、強度評価部6は、繊維層比と最大振幅とから評価パラメータを算出する。この場合、繊維層全体の厚さが大きく異なる様々な複合材料を評価する場合でも、繊維層の厚さに影響を受けることなく、1つのマップを用いて強度の評価が可能である。
【0031】
また、上記実施形態においては、振幅算出部4において蛇行振幅を算出するものとしたが、本開示はこれに限定されない。例えば、強度評価装置1は、振幅算出部4を備えず、蛇行角度算出部を備えてもよい。蛇行角度算出部は、繊維層における蛇行角度を算出する。このとき、強度評価部6は、蛇行角度と繊維層における蛇行繊維層の数とに基づいて評価パラメータを算出する。この場合においても、同様に、繊維層に沿った方向と積層方向との両方に着目した上で強度の評価が可能である。
また、上記蛇行角度算出部が複数の蛇行角度のうち最大の角度を最大蛇行角度とし、強度評価部6が、この最大蛇行角度と蛇行厚さ(上記繊維層数や上記繊維層比)とに基づいて複合材料の強度を評価してもよい。さらに、最大蛇行角度と蛇行厚さとの積算値の逆数を評価パラメータとしてもよい。
【0032】
また、上記実施形態においては、厚さ算出部5は、繊維層の層数を算出するものとしたが、本開示はこれに限定されない。例えば、厚さ算出部5は、繊維層の厚さをmmまたはμm単位で算出してもよい。
【0033】
また、上記実施形態においては、強度評価装置1により、強度評価方法を実行するものとしたが、本開示はこれに限定されない。本開示に係る強度評価方法は、作業者が、手作業で測定した蛇行振幅または蛇行角度と蛇行厚さとに基づいて評価パラメータを算出し、さらに評価パラメータから強度を評価するものとしてもよい。なお、この際には、強度評価にあたってマップを用いず、予め実験を行うことにより作成された強度と評価パラメータとのグラフより導出される近似式を用いて強度を評価してもよい。
【0034】
また、上記実施形態においては、強度評価装置1は、撮像部2を備えるものとしたが、本開示はこれに限定されない。例えば、強度評価装置1は、撮像部2を備えず、外部において撮像された複合材料のCT画像を取得し、画像を解析してもよい。
【0035】
また、上記実施形態においては、引張強度を評価するものとしたが、本開示はこれに限定されない。例えば、曲げ強度について同様にマップまたは近似式を導出し、曲げ強度について評価するものとしてもよい。
【0036】
また、本開示は以下の態様を備えてもよい。
本開示の第6の態様は、複数の繊維が積層された複合材料の強度評価方法であって、前記繊維の繊維層に沿った方向における蛇行状態を測定する蛇行状態測定工程と、前記繊維における蛇行が発生している部位の積層方向厚さである蛇行厚さを測定する蛇行厚さ測定工程と、前記蛇行状態と前記蛇行厚さとに基づいて強度を評価する強度評価工程とを備える。
本開示の第7の態様は、複数の繊維が積層された複合材料の強度評価装置(1)であって、前記繊維の繊維層に沿った方向における蛇行状態を算出する蛇行状態算出部(4)と、前記繊維における蛇行が発生している部位の積層方向厚さである蛇行厚さを算出する蛇行厚さ算出部(5)と、前記蛇行状態と前記蛇行厚さとに基づいて強度を評価する強度評価部(6)とを備える。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本開示は、複合材料の強度を評価する強度評価装置及び強度評価方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 強度評価装置
2 撮像部
3 画像解析部
4 振幅算出部(蛇行状態算出部)
5 厚さ算出部(蛇行厚さ算出部)
6 強度評価部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C