(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6582 20110101AFI20221115BHJP
H01R 12/75 20110101ALI20221115BHJP
H01R 9/05 20060101ALN20221115BHJP
【FI】
H01R13/6582
H01R12/75
H01R9/05 Z
(21)【出願番号】P 2022149243
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2022074480の分割
【原出願日】2018-12-28
【審査請求日】2022-09-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舛永 貴司
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203135057(CN,U)
【文献】特開2017-33909(JP,A)
【文献】特開2016-103424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6581-13/6597
H01R 9/05
H01R 12/70 -12/81
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板の主面に取り付けられる相手コネクタと嵌合する電気コネクタであって、
前記相手コネクタは、
絶縁性を有する第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに配列される導電性の複数の第1コンタクトと、
前記主面に沿った方向であって前記複数の第1コンタクトの配列方向と直交する方向において前記複数の第1コンタクトを介して互いに対向する一対の導電性の壁部と、を備え、
前記一対の導電性の壁部のうちの一方の壁部には、
切欠き部と、
前記切欠き部から一部が突出する導電性の接触片と、が設けられ、
前記一方の壁部は、
前記主面に沿った方向であって前記配列方向と直交する方向において前記複数の第1コンタクトにおける前記配線基板の導電路に電気的に接続される端部よりも外方に位置し、
前記電気コネクタは、
絶縁性を有する第2ハウジングと、
第1方向を配列方向として前記第2ハウジングに配列され、前記複数の第1コンタクトと接続される導電性の複数の第2コンタクトと、
前記第1方向と直交する第2方向で前記複数の第2コンタクトと対向して前記複数の第2コンタクトを覆う第1カバー部と、前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向における前記第1カバー部の一端部から前記第2方向に延びる第2カバー部とを有する導電性の第1シェルと、
前記第3方向における前記第1カバー部の他端部寄りに配置された導電性の第2シェルと、を備え、
前記相手コネクタと前記電気コネクタとが嵌合された状態において、前記第1カバー部が前記第2方向で前記複数の第1コンタクトと対向して前記複数の第1コンタクトの全体を覆い、前記第2カバー部が前記接触片に接触した状態で前記切欠き部の一部または全部を覆い、前記第2シェルが前記一対の導電性の壁部のうちの他方の壁部に前記第3方向で対向して接触し、
前記一方の壁部における前記第1カバー部寄りの一部は、
前記一対の壁部のうち他方の壁部に向かう方向に凹んでいる凹部を有し、
前記電気コネクタは、
前記電気コネクタと前記相手コネクタとが嵌合された状態において、前記一方の壁部の前記第1カバー部寄りの前記一部を収容する収納空間を有する
ことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
配線基板の主面に取り付けられ、相手コネクタと嵌合する電気コネクタであって、
前記電気コネクタは、
絶縁性を有する第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに配列される導電性の複数の第1コンタクトと、
前記主面に沿った方向であって前記複数の第1コンタクトの配列方向と直交する方向において前記複数の第1コンタクトを介して互いに対向する一対の導電性の壁部と、を備え、
前記一対の導電性の壁部のうちの一方の壁部には、
切欠き部と、
前記切欠き部から一部が突出する導電性の接触片と、が設けられ、
前記一方の壁部は、
前記主面に沿った方向であって前記配列方向と直交する方向において前記複数の第1コンタクトにおける前記配線基板の導電路に電気的に接続される端部よりも外方に位置し、
前記相手コネクタは、
絶縁性を有する第2ハウジングと、
第1方向を配列方向として前記第2ハウジングに配列され、前記複数の第1コンタクトと接続される導電性の複数の第2コンタクトと、
前記第1方向と直交する第2方向で前記複数の第2コンタクトと対向して前記複数の第2コンタクトを覆う第1カバー部と、前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向における前記第1カバー部の一端部から前記第2方向に延びる第2カバー部とを有する導電性の第1シェルと、
前記第3方向における前記第1カバー部の他端部寄りに配置された導電性の第2シェルと、を備え、
前記電気コネクタと前記相手コネクタとが嵌合された状態において、前記第1カバー部が前記第2方向で前記複数の第1コンタクトと対向して前記複数の第1コンタクトの全体を覆い、前記第2カバー部が前記接触片に接触した状態で前記切欠き部の一部または全部を覆い、前記第2シェルが前記一対の導電性の壁部のうちの他方の壁部に前記第3方向で対向して接触し、
前記一方の壁部における前記第1カバー部寄りの一部は、
前記一対の壁部のうち他方の壁部に向かう方向に凹んでいる凹部を有し、
前記相手コネクタは、
前記電気コネクタと前記相手コネクタとが嵌合された状態において、前記一方の壁部の前記第1カバー部寄りの前記一部を収容する収納空間を有する
ことを特徴とする電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器において、同軸ケーブル、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)またはフレキシブル・フラットケーブル(FFC)などの信号伝送媒体を配線基板に電気的に接続するためのコネクタ装置が広く用いられている。かかるコネクタ装置は、信号伝送媒体の端部に接続される第1コネクタと、配線基板に接続される第2コネクタを含む。この種のコネクタ装置が用いられる電子機器では、電磁波の放射による電磁干渉などが問題になる場合があるため、コネクタ装置にシールド機能が設けられることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、第1コネクタに設けられる導電性のシェルと、第2コネクタに設けられる導電性のシェルとで、複数の信号コンタクトを配列したハウジングを覆うコネクタ装置が開示されている。かかるコネクタ装置では、第1コネクタにおける導電性のグランド部材を第2コネクタの導電性のシェルに接触させる構成を有しており、かかる構成によってシールド機能を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コネクタ装置が用いられる電子機器において送受信される信号の高周波化や動作頻度の増大などに伴って、コネクタ装置におけるシールド機能の更なる向上が求められている。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、シールド機能の更なる向上を図ることができる電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る電気コネクタは、配線基板の主面に取り付けられる相手コネクタと嵌合する。相手コネクタは、絶縁性を有する第1ハウジングと、第1ハウジングに配列される導電性の複数の第1コンタクトと、主面に沿った方向であって複数の第1コンタクトの配列方向と直交する方向において複数の第1コンタクトを介して互いに対向する一対の導電性の壁部と、を備える。一対の導電性の壁部のうちの一方の壁部には、切欠き部と、切欠き部から一部が突出する導電性の接触片と、が設けられる。一方の壁部は、主面に沿った方向であって配列方向と直交する方向において複数の第1コンタクトにおける配線基板の導電路に電気的に接続される端部よりも外方に位置する。電気コネクタは、絶縁性を有する第2ハウジングと、第1方向を配列方向として第2ハウジングに配列され、複数の第1コンタクトと接続される導電性の複数の第2コンタクトと、第1方向と直交する第2方向で複数の第2コンタクトと対向して複数の第2コンタクトを覆う第1カバー部と、第1方向と第2方向とに直交する第3方向における第1カバー部の一端部から第2方向に延びる第2カバー部とを有する導電性の第1シェルと、第3方向における第1カバー部の他端部寄りに配置された導電性の第2シェルと、を備える。相手コネクタと電気コネクタとが嵌合された状態において、第1カバー部が第2方向で複数の第1コンタクトと対向して複数の第1コンタクトの全体を覆い、第2カバー部が接触片に接触した状態で切欠き部の一部または全部を覆い、第2シェルが一対の導電性の壁部のうちの他方の壁部に第3方向で対向して接触する。一方の壁部における第1カバー部寄りの一部は、一対の壁部のうち他方の壁部に向かう方向に凹んでいる凹部を有している。電気コネクタは、電気コネクタと相手コネクタとが嵌合された状態において、一方の壁部の第1カバー部寄りの一部を収容する収納空間を有する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、シールド機能の更なる向上を図ることができる電気コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るコネクタ装置におけるプラグコネクタおよびレセプタクルコネクタの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るプラグコネクタとレセプタクルコネクタとが嵌合した状態を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るプラグコネクタの外観斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るプラグコネクタの外観斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るプラグコネクタの平面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示すVI-VI線に沿った断面図である。
【
図7】
図7は、
図5に示すVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るレセプタクルコネクタの外観斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るレセプタクルコネクタの外観斜視図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係るレセプタクルコネクタの平面図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係るプラグコネクタとレセプタクルコネクタとが嵌合した状態のコネクタ装置の平面図である。
【
図16】
図16は、実施形態に係るプラグコネクタとレセプタクルコネクタとが嵌合した状態のコネクタ装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する電気コネクタおよびコネクタ装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
<1.コネクタ装置の構成>
まず、
図1および
図2を参照して実施形態に係るプラグコネクタおよびレセプタクルコネクタを含むコネクタ装置を説明する。
【0012】
図1に示すように、実施形態に係るコネクタ装置1は、複数の同軸ケーブル2の端部が接続されるプラグコネクタ10と、配線基板3に取り付けられるレセプタクルコネクタ20とを備える。複数の同軸ケーブル2は、信号伝送媒体の一例である。なお、プラグコネクタ10は、複数の同軸ケーブル2に代えて、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)またはフレキシブル・フラットケーブル(FFC)などの信号伝送媒体の端部に接続される構成であってもよい。配線基板3は、例えば、印刷配線基板などの電気回路基板である。
【0013】
プラグコネクタ10は、相手コネクタおよび第1コネクタの一例であり、レセプタクルコネクタ20は、電気コネクタおよび第2コネクタの一例である。なお、図面において、同軸ケーブル2は、便宜上、一部のみを示しており、残りの部分との境界を切断面として示している。
【0014】
また、以下においては、説明の便宜上、レセプタクルコネクタ20に対してプラグコネクタ10を挿入する方向(Z軸負方向)を「下方向」とし、その逆方向である抜去方向(Z軸正方向)を「上方向」とする。また、プラグコネクタ10およびレセプタクルコネクタ20の長手方向(X軸正負方向)を「左右方向」とする。また、プラグコネクタ10およびレセプタクルコネクタ20の短手方向(Y軸正負方向)を「前後方向」とする。
【0015】
コネクタ装置1では、プラグコネクタ10とレセプタクルコネクタ20との嵌合によって、プラグコネクタ10における後述する導電性の複数のコンタクト12(
図4参照)がレセプタクルコネクタ20のハウジング21に配列された導電性の複数のコンタクト22に電気的に接続される。これにより、同軸ケーブル2の後述する中心導体2a(
図6参照)と配線基板3の主面Mに形成された不図示の信号導電路とがコンタクト12,22を介して電気的に接続される。
【0016】
プラグコネクタ10がレセプタクルコネクタ20に嵌合されると、プラグコネクタ10における導電性のシェル14と、レセプタクルコネクタ20における導電性のシェル23とによって、上述した複数のコンタクト12と複数のコンタクト22とが覆われる。シェル14,23は、グランドに接続されるグランド部材であり、かかるシェル14,23によって、シールド機能をコネクタ装置1に持たせることができる。
【0017】
また、レセプタクルコネクタ20のシェル23には、配線基板3の主面Mに沿った方向であって複数のコンタクト22の配列方向と直交する方向である前後方向において複数のコンタクト22を介して互いに対向する前壁部24と後壁部25とを有する。かかる前壁部24および後壁部25の各々は、プラグコネクタ10のグランド部材に接触する。
【0018】
具体的には、後壁部25は、プラグコネクタ10の導電部材13(
図6参照)に接触し、前壁部24は、プラグコネクタ10のシェル14に接触する。これにより、コネクタ装置1におけるシールド機能をさらに向上させることができる。なお、シェル14および導電部材13は、グランド部材の一例である。シェル14と導電部材13とは別体であるが、シェル14と導電部材13とは一体に形成されていてもよい。
【0019】
<2.プラグコネクタ10の構成>
次に、
図3~
図7を参照して実施形態に係るプラグコネクタ10の構成について説明する。
図3に示すように、プラグコネクタ10は、複数の同軸ケーブル2の一端部に接続される。同軸ケーブル2は、
図6および
図7に示すように、中心導体(信号線)2a(第1信号導電路の一例)の外周側に、誘電体2b、外側導体(シールド線)2c(第1グランド導電路の一例)、および外周被覆材2dが順に積層されて形成される。
【0020】
同軸ケーブル2の一端部は、
図6および
図7に示すように、先端側から中心導体2a、誘電体2b、および外側導体2cが順次露出している。かかる露出部分のうち外側導体2cが導電性の薄板部材で構成された一対のグランドバー4に挟持されることで、複数の同軸ケーブル2がグランドバー4に取り付けられる。
【0021】
プラグコネクタ10は、
図4に示すように、絶縁性のハウジング11(第1ハウジングの一例)と、ハウジング11に配列される導電性の複数のコンタクト12(第1コンタクトの一例)と、一対のグランドバー4のうち下方のグランドバー4に接触する導電部材13と、複数のコンタクト12が配列されたハウジング11の外表面を覆い、一対のグランドバーのうち上方のグランドバー4に接触する導電性のシェル14とを備える。
【0022】
コンタクト12の間、コンタクト12と導電部材13との間、およびコンタクト12とシェル14との間の各々は、ハウジング11によって絶縁される。コンタクト12、導電部材13、およびシェル14は、例えば、一つの金属板に打抜き加工や折曲げ加工を施すことによって各々形成される。
【0023】
ハウジング11は、
図4に示すように、X軸正負方向(左右方向)を長手方向とする基部111と、基部111からX軸正方向に突出する突出部112と、基部111からX軸負方向に突出する突出部113と、基部111から下方に各々突出しX軸正負方向(左右方向)に延伸する断面略U字状の突出部114,115とを備える。突出部114,115は、
図6に示すように、前後方向に互いに間隔を空けて配置される。
【0024】
複数のコンタクト12は、
図4に示すように、左右方向に間隔を空けて配列され、例えば、インサート成形によってハウジング11に固定される。これら複数のコンタクト12は、
図6に示すように、ハウジング11の基部111から突出部114にかけて配置される。各コンタクト12は、基端部121がハウジング11における基部111の上面から露出しており、かかる基端部121が同軸ケーブル2の中心導体2aに半田付けなどによって接続される。また、各コンタクト12は、先端部122が突出部114から露出している。
【0025】
導電部材13は、
図4に示すように、突出部115の後方を覆うようにハウジング11に配置される。かかる導電部材13は、例えば、インサート成形によってハウジング11に固定される。導電部材13は、
図6に示すように、左右方向を長手方向としグランドバー4に接触する基部131と、基部131から下方へ延伸するJ字状の突出部132とを含む。かかる突出部132は、ハウジング11の突出部115に配置される。
【0026】
シェル14は、同軸ケーブル2の一端部がプラグコネクタ10に配置された状態のハウジング11の上方を覆うカバー上部141と、同軸ケーブル2の一端部がプラグコネクタ10に配置された状態のハウジング11の前方を覆うカバー前部142とを有する。カバー上部141には、
図3に示すように、複数の開口141aが形成されている。かかる複数の開口141aの縁には舌片が形成されており、舌片とグランドバー4とが半田15によって接続される。なお、
図3では、半田15を図示していない。
【0027】
また、シェル14は、
図3に示すように、カバー上部141のX軸正方向の端部から外方に突出する側方突出部143と、カバー上部141のX軸負方向の端部から外方に突出する側方突出部144とを有する。側方突出部143の先端部143aは、
図4に示すように、ハウジング11の突出部112に形成された係合凹部112aに係合されることでハウジング11に固定される。側方突出部144の先端部144aは、
図3に示すように、ハウジング11の突出部113に形成された係合凹部113aに係合されることでハウジング11に固定される。
【0028】
<3.レセプタクルコネクタ20の構成>
次に、
図8~
図12を参照して実施形態に係るレセプタクルコネクタ20の構成について説明する。
図8に示すように、レセプタクルコネクタ20は、絶縁性のハウジング21(第2ハウジングの一例)と、導電性の複数のコンタクト22(第2コンタクトの一例)と、ハウジング21に取り付けられた導電性のシェル23とを備える。コンタクト22およびシェル23は、例えば、一つの金属板に打抜き加工や折曲げ加工を施すことによって各々形成される。
【0029】
ハウジング21は、
図8および
図12に示すように、基部211と、前壁部212と、後壁部213と、中央壁部214と、側壁部215,216とを備える。前壁部212、後壁部213、中央壁部214、側壁部215、および側壁部216は、基部211から上方に突出する。
【0030】
前壁部212、後壁部213、および中央壁部214は、左右方向に各々延伸しており、前後方向に互いに間隔を空けて配置される。中央壁部214には、
図8に示すように、複数のコンタクト22が左右方向に間隔を空けて配列される。複数のコンタクト22は、
図11に示すように、圧入により中央壁部214に配置される。
【0031】
前壁部212と中央壁部214との間には、
図11および
図12に示すように、プラグコネクタ10の突出部114(
図6参照)が収容される収容凹部28が形成される。また、中央壁部214と後壁部213との間には、プラグコネクタ10の突出部115(
図6参照)が収容される収容凹部29が形成される。
【0032】
コンタクト22は、
図11に示すように、ハウジング21の前壁部212に中途部222が支持され、自由端である一端部221が弾性変形可能である。コンタクト22の一端部221は、中央壁部214に配置され、かかる一端部221には、プラグコネクタ10のコンタクト12と接触する接触部221aが形成される。接触部221aは、
図11に示す状態では、中央壁部214から前方に突出し、収容凹部28に配置される。また、コンタクト22の他端部223は、前壁部212の下方に配置され、配線基板3(
図1参照)に形成される不図示の信号導電路(第2信号導電路の一例)に半田付けなどによって電気的に接続される。
【0033】
シェル23は、
図8,
図9および
図11に示すように、ハウジング21における前壁部212の前方に前壁部212と間隔を空けて配置される前壁部24と、ハウジング21の後壁部213に取り付けられ、後壁部213を覆う後壁部25とを備える。また、シェル23は、ハウジング21の側壁部215に取り付けられ、側壁部215を覆う側壁部26と、ハウジング21の側壁部216に取り付けられ、側壁部216を覆う側壁部27とを備える。
【0034】
シェル23の前壁部24は、
図9および
図11に示すように、第1側板31と、複数の連結部32と、第2側板33とを有する。第1側板31は、一端が配線基板3における不図示のグランド導電路に取り付けられ且つ一端から他端に向けて配線基板3から離れる方向(上方)に延伸する。複数の連結部32は、一端が第1側板31の他端に連結され、他端が第2側板33の一端に連結される。第2側板33は、一端から他端に向けて配線基板3に近づく方向(下方)に延伸し、他端が自由端である。
【0035】
第1側板31は、
図8に示すように、配線基板3における不図示のグランド導電路(第2グランド導電路の一例)に取り付けられるグランド接続部311と、グランド接続部311に連続し配線基板3から離れる方向(上方)に延伸する延伸部312と、連結部32の一端寄りの位置であって後壁部25へ向かう方向である後方へ凹んだ凹部313と、切欠き部314とを有する。
【0036】
第2側板33は、
図9および
図11に示すように、一端が連結部32の他端に連結され且つ一端から他端に向けて配線基板3に近づく方向(下方)に延伸し、他端が自由端である延伸部331を有する。
図11に示す例では、延伸部331は、後方斜め下方に延伸している。なお、延伸部331の一端は、第2側板33の上述した一端であり、延伸部331の他端は、第2側板33の上述した他端でもある。
【0037】
また、第2側板33は、
図8および
図12に示すように、延伸部331の他端寄りの位置で基端が延伸部331に連結され、延伸部331に片持ち支持される複数の接触片332を有する。各接触片332は、略L字状に形成されており、
図8に示すように、切欠き部314を介して先端部分が前方へ突出している。また、複数の接触片332は、
図9に示すように、間隔を空けて第2側板33に複数形成される。
【0038】
接触片332は、
図12に示すように、一端が延伸部331のうち延伸部331の他端寄りの位置に連結される接触片延伸部332aと、接触片延伸部332aの他端に連結され、プラグコネクタ10のシェル14に接触する接触部332bとを有する。接触片延伸部332aは、一端から他端に向けて配線基板3から離れる方向(上方)に延伸する。
図12に示す例では、接触片延伸部332aは、他端寄りの位置に接触部332bを形成するための屈曲部を有しており、延伸部331の他端寄り位置から前方斜め上方に延伸した後、前方斜め下方に延伸している。
【0039】
接触部332bは、
図11に示すように、配線基板3の主面M(
図1参照)と直交する方向である上下方向において接触片332のうち連結部32の一端寄り(上端寄り)に配置される。また、接触部332bは、配線基板3の主面Mに沿った方向であってコンタクト22の配列方向と直交する方向である前後方向において第2側板33のうち第1側板31寄り(外方寄り)の位置に配置される。
【0040】
シェル23の後壁部25は、
図11に示すように、第1側板41と、連結部42と、第2側板43と、接触片44とを有する。第1側板41は、一端が配線基板3における不図示のグランド導電路に取り付けられ、一端から他端に向けて配線基板3から離れる方向(上方)に延伸する。連結部42は、一端が第1側板41の他端に連結され、他端が第2側板43の一端に連結される。第2側板43は、一端から他端に向けて配線基板3に近づく方向(下方)に延伸する。
【0041】
接触片44は、
図12に示すように、一端が連結部42の他端に連結され、一端から他端に向けて配線基板3に近づく方向(下方)に延伸する。
図12に示す例では、接触片44は、前方斜め下方に延伸している。かかる接触片44は、連結部42に片持ち支持されており、他端が自由端になっている。接触片44は、
図12に示すように、接触片44の他端に、導電部材13の突出部132(
図6参照)に接触する接触部44aが配置される。接触片44は、
図11に示す状態では、後壁部213から前方に突出し、収容凹部29に配置される。
【0042】
<4.プラグコネクタ10とレセプタクルコネクタ20との嵌合状態>
次に、プラグコネクタ10とレセプタクルコネクタ20との嵌合状態について、
図6および
図12~
図15を参照して具体的に説明する。
【0043】
プラグコネクタ10をレセプタクルコネクタ20に挿入することによって、プラグコネクタ10とレセプタクルコネクタ20とが嵌合状態になる。プラグコネクタ10のレセプタクルコネクタ20への挿入は、プラグコネクタ10の突出部114(
図6参照)をレセプタクルコネクタ20の収容凹部28(
図12参照)に挿入し、かつプラグコネクタ10の突出部115(
図6参照)をレセプタクルコネクタ20の収容凹部29(
図12参照)に挿入することによって行われる。
【0044】
プラグコネクタ10とレセプタクルコネクタ20とが嵌合状態である場合、プラグコネクタ10における導電性の複数のコンタクト12がレセプタクルコネクタ20における導電性の複数のコンタクト22に電気的に接続される。具体的には、コンタクト12の先端部122がコンタクト22の接触部221aに接触することで、コンタクト12とコンタクト22とが電気的に接続される。
【0045】
コンタクト12の基端部121には、同軸ケーブル2の中心導体2aが半田付けなどによって接続されており、コンタクト22の他端部223は、配線基板3に形成された不図示の信号導体路に接続される。そのため、プラグコネクタ10とレセプタクルコネクタ20とが嵌合状態である場合、同軸ケーブル2の中心導体2aと配線基板3の信号導電路とが電気的に接続される。
【0046】
また、プラグコネクタ10とレセプタクルコネクタ20とが嵌合状態である場合、
図15に示すように、プラグコネクタ10における導電部材13の突出部132がシェル23における後壁部25の接触片44に接触する。導電部材13の基部131は、グランドバー4を介して同軸ケーブル2の外側導体2cに接続され、後壁部25の第1側板41の一端は、配線基板3に形成された不図示のグランド導電路に半田付けなどによって接続される。
【0047】
そのため、同軸ケーブル2の外側導体2cがグランドバー4および導電部材13を介して配線基板3に形成された不図示のグランド導電路に電気的に接続される。また、同軸ケーブル2の外側導体2cは、グランドバー4および不図示の半田を介してプラグコネクタ10のシェル14に電気的に接続される。
【0048】
このように、シェル14とシェル23とが電気的に接続される。コンタクト12,22は、電気的に接続されたシェル14,23および導電部材13によって囲まれており、これにより、コネクタ装置1におけるシールド機能が実現される。
【0049】
さらに、プラグコネクタ10とレセプタクルコネクタ20とが嵌合状態である場合、
図15に示すように、第2側板33における接触片332の接触部332bがシェル14のカバー前部142に接触する。第2側板33は、
図14に示すように連結部32を介して第1側板31に連結されており、第1側板31の一端部は、配線基板3に形成された不図示のグランド導電路に半田付けなどによって接続される。
【0050】
そのため、シェル14のカバー前部142がシェル23の前壁部24を介して配線基板3に形成された不図示のグランド導電路に電気的に接続される。これにより、シェル14は、配線基板3に形成された不図示のグランド導電路への導電路として、導電部材13および後壁部25を通る経路に加え、シェル14および前壁部24を通る経路が加わる。そのため、コネクタ装置1は、シェル14のシールド機能を高めることができ、前壁部24がない場合や前壁部24がシェル14と接触しない場合に比べて、シールド機能の更なる向上を図ることができる。
【0051】
また、接触片332は、
図12に示すように、第2側板33に形成されるため、例えば、連結部32から外方に突出させる場合に比べ、ばね長を確保しやすい。そのため、コネクタ装置1の小型化および低背化を図ることができる。また、接触片332の一端は、第2側板33の他端寄り(下端寄り)の位置に基端が連結されるため、接触片332のばね長がより確保しやすくなる。
【0052】
また、第2側板33は、
図12に示すように、第1側板31とハウジング21の前壁部212との間に配置される。そのため、第2側板33が第1側板31よりも前方に位置する場合に比べ、コネクタ装置1における前後方向の長さを抑えることができ、コネクタ装置1の小型化を図ることができる。
【0053】
また、接触片332は、
図15に示すように、前後方向において第1側板31寄りの位置でプラグコネクタ10のシェル14に接触する接触部332bを有する。これによっても接触片332のばね長がより確保しやすくなる。
【0054】
接触部332bは、上下方向において接触片332のうち連結部32の一端寄り(上端寄り)に配置される。これにより、接触部332bを連結部32の他端寄り(下端寄り)に配置し、連結部32の他端寄りの位置で接触部332bをシェル14に接触させる場合に比べ、接触片332のばね長がより確保しやすくなる。さらに、上下方向において、接触部332bを連結部32の一端寄り(上端寄り)に配置することで、プラグコネクタ10とレセプタクルコネクタ20とが嵌合する際、接触部332bとシェル14(カバー前部142)が摺動しながら嵌合する距離(所謂、有効嵌合長)も長くすることができる。
【0055】
また、第1側板31は、
図14に示すように、上下方向における連結部32の一端寄りの位置であってプラグコネクタ10におけるシェル14のカバー前部142と対向する位置に凹部313を有する。かかる凹部313は、後壁部25に向かう方向である後方に凹んでいる。
【0056】
そのため、
図14に示すように、前後方向においてカバー前部142の位置を前壁部24の延伸部312の位置とほぼ同等の位置にすることができる。これにより、コネクタ装置1における前後方向の長さを抑えることができ、コネクタ装置1の小型化を図ることができる。
【0057】
ところで、従来のように、第1側板31を切欠いて接触片を設ける場合、かかる接触片のばね長を確保しようとすると、第1側板31の一端寄りの位置から他端にかけて第1側板31を長く切欠く必要がある。この場合、第1側板31の上下方向の長さが長くなり、シェル23の上下方向の長さが長くなる。また、第1側板31における切欠き部分が上下方向に長くなるため、かかる切欠き部分から電磁波が漏れ、シェル23によるシールド機能が低下してしまう。
【0058】
本実施形態に係るコネクタ装置1における接触片332は、第1側板31に連結部32を介して連結される第2側板33に形成される。これにより、第1側板31の切欠き部314は、上下方向における連結部32の一端寄りの位置にある接触部332bが接触しない大きさでよい。
【0059】
そのため、従来のように、第1側板31に接触片を設ける場合に比べて、
図16に示すように、第1側板31の切欠き部314の上下方向の長さを短くすることができ、切欠き部314のうちシェル14のカバー前部142に覆われていない部分を小さくすることができる。なお、切欠き部314のうちシェル14のカバー前部142に覆われていない部分の大きさは、コンタクト12,22によって伝送される信号の周波数と同一周波数を有する電磁波を通過させない大きさであり、これにより、シールド機能の低下を抑制することができる。
【0060】
なお、
図8に示す例では、切欠き部314は、上下方向において、延伸部312に対応する位置から連結部32に対応する位置まで形成されているが、上下方向において、凹部313に対応する位置から連結部32に対応する位置まで形成される構成であってもよい。これにより、切欠き部314をシェル14のカバー前部142で覆うことができる。
【0061】
また、
図15に示すように、プラグコネクタ10とレセプタクルコネクタ20とが嵌合状態である場合、導電部材13における突出部132は、後壁部25の前方に位置し、シェル14におけるカバー前部142は、前壁部24における接触片332の前方に位置する。このときの接触片332は十分なばね長を持ってカバー前部142に接触している。そのため、プラグコネクタ10をレセプタクルコネクタ20から抜去する過程で、レセプタクルコネクタ20に対してプラグコネクタ10が傾いた状態になった場合においても、接触片332が塑性変形することを防止することができる。
【0062】
例えば、プラグコネクタ10に接続された同軸ケーブル2が把持されて上方に持ち上げられた場合、プラグコネクタ10は、カバー前部142の周辺を支点として突出部115寄りの後方が高くなるように傾く。この場合、プラグコネクタ10におけるシェル14のカバー前部142は、接触片332の接触部332bから離れる方向に移動する。そのため、カバー前部142が接触片332の後方に位置する場合に比べ、接触片332に大きな力が働くことを防止することができる。
【0063】
また、プラグコネクタ10は、プラグコネクタ10をレセプタクルコネクタ20から抜去する過程で、プラグコネクタ10の前方が持ち上げられた場合、突出部115の周辺を支点としてカバー前部142寄りの前方が高くなるように傾く。この場合、プラグコネクタ10におけるシェル14のカバー前部142は、接触片332の接触部332bから離れる方向に移動する。そのため、カバー前部142が接触片332の後方に位置する場合に比べ、接触片332に大きな力が働くことを防止することができる。
【0064】
また、接触片332は、
図8に示すように、切欠き部314から前方に突出するように配置される。そのため、シェル14のカバー前部142が後方へ移動した場合であっても、カバー前部142は、凹部313へ当接することになり、それ以上の移動を規制することができる。そのため、これによっても、接触片332に大きな力が働くことを防止することができる。
【0065】
以上のように、実施形態に係るレセプタクルコネクタ20は、配線基板3に取り付けられ、複数の同軸ケーブル2の端部に接続されるプラグコネクタ10と嵌合する電気コネクタである。複数の同軸ケーブル2は、信号伝送媒体の一例であり、プラグコネクタ10は相手コネクタの一例である。レセプタクルコネクタ20は、絶縁性を有するハウジング21と、ハウジング21に配列される導電性の複数のコンタクト22と、導電性のシェル23とを備える。シェル23は、配線基板3の主面Mに沿った方向であって複数のコンタクト22の配列方向と直交する方向において複数のコンタクト22を介して互いに対向し且つプラグコネクタ10における導電性の導電部材13およびシェル14に接触する前壁部24および後壁部25を有する。前壁部24および後壁部25は、一対の壁部の一例である。前壁部24は、一方の壁部の一例である。導電部材13およびシェル14は、グランド部材の一例である。前壁部24は、一端が配線基板3のグランド導電路に取り付けられ且つ一端から他端に向けて配線基板3から離れる方向に延伸する第1側板31と、一端が第1側板31の他端に連結される連結部32と、一端が連結部32の他端に連結され且つ一端から他端に向けて配線基板3に近づく方向に延伸し、他端が自由端である第2側板33とを備える。そして、第2側板33は、配線基板3から離れる方向に延伸し、プラグコネクタ10のシェル14に弾性接触する接触片332を有する。これにより、実施形態に係るレセプタクルコネクタ20は、シールド機能の更なる向上を図ることができる。
【0066】
また、第2側板33は、一端が連結部32の他端に連結され且つ一端から他端に向けて配線基板3に近づく方向に延伸し、他端が自由端である延伸部331を有する。接触片332は、一端が延伸部331のうち延伸部331の他端寄りの位置に連結され且つ一端から他端に向けて配線基板3から離れる方向に延伸する。これにより、例えば、連結部32から突出させる場合に比べ、ばね長を確保しやすくなる。
【0067】
また、第2側板33は、第1側板31とハウジング21との間に配置される。第2側板33が第1側板31よりも前方に位置する場合に比べ、コネクタ装置1における前後方向の長さを抑えることができ、コネクタ装置1の小型化を図ることができる。
【0068】
また、接触片332は、配線基板3の主面Mに沿った方向且つコンタクト22の配列方向と直交する方向において第1側板31寄りの位置でプラグコネクタ10のシェル14に接触する接触部332bを有する。これにより、接触片332のばね長がより確保しやすくなる。
【0069】
また、接触部332bは、配線基板3の主面Mと直交する方向において接触片332のうち連結部32の一端寄りに配置される。これにより、接触片332のばね長がより確保しやすくなる。
【0070】
また、第1側板31は、配線基板3の主面Mと直交する方向における連結部32の一端寄りの位置であってプラグコネクタ10のシェル14のカバー前部142と対向する位置に凹部313を有し、かかる凹部313は、後壁部25に向かう方向に凹んでいる。これにより、コネクタ装置1の小型化を図ることができる。後壁部25は、他方の壁部の一例である。
【0071】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 コネクタ装置
2 同軸ケーブル
3 配線基板
10 プラグコネクタ
13 導電部材(グランド部材)
14 シェル(グランド部材)
20 レセプタクルコネクタ
21 ハウジング
22 コンタクト
23 シェル
24 前壁部
25 後壁部
31 第1側板
32 連結部
33 第2側板
142 カバー前部
313 凹部
331 延伸部
332 接触片
332b 接触部
M 主面