(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】浮桟橋又は船舶用錨装置
(51)【国際特許分類】
B63B 21/50 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
B63B21/50 B
(21)【出願番号】P 2020114043
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】520240225
【氏名又は名称】山陽造船企業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【氏名又は名称】清水 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-190075(JP,A)
【文献】特開平11-245879(JP,A)
【文献】特開2003-118678(JP,A)
【文献】特開2000-211575(JP,A)
【文献】特開平09-012276(JP,A)
【文献】特開昭57-130889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 21/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮桟橋又は船舶の甲板(3)に形成されて水面(2)に臨む開口(10)と、開口(10)付近の甲板(3)上に固定される台座(31)と、台座(31)に支持されかつ回転可能な枠滑車(20c)を有する架枠(20)と、開口(10)内に配置されかつ架枠(20)に固定される外管(11)と、収錨状態で架枠(20)に取外し可能に係止されて外管(11)内に配置される細長い錨(13)と、架枠(20)の枠滑車(20c)と錨(13)の錨滑車(13e)とに捲回されるワイヤ(21)と、ワイヤ(21)を牽引する巻上装置(25)とを備え、
架枠(20)との係止が解除される錨(13)は、非作動の空転状態の巻上装置(25)から引出されるワイヤ(21)と共に、収錨状態から自重により水底に向かって降下し、これにより、錨(13)の下端(13g)が水底に到達して、外管(11)から長さ方向に延伸する錨泊状態となり、
巻上装置(25)の駆動によりワイヤ(21)を牽引すると、錨(13)に固定される錨滑車(13e)は、枠滑車(20c)に接近し、錨(13)は、水底から外管(11)内の収錨状態に戻される浮桟橋又は船舶用錨装置において、
架枠(20)は、錨支持装置(30)を介して甲板(3)上の台座(31)に支持され、
錨支持装置(30)は、台座(31)に形成される逆截頭円錐状又は逆截頭角錐状の凹部(33)と、架枠(20)に設けられるブラケット(32)に固定される逆截頭円錐状又は逆截頭角錐状の突起(35)とにより構成されるテーパ継手を備え、
ブラケット(32)の突起(35)は、甲板(3)上の台座(31)の凹部(33)と相補形状を有しかつ凹部(33)と同軸上に配置され、
甲板(3)上の台座(31)の凹部(33)内に架枠(20)の突起(35)を篏合すると、凹部(33)と架枠(20)の突起(35)との接合面に、テーパ継手の楔作用による大きな摩擦力が生じて、架枠(20)は、台座(31)に強固にかつ着脱自在に支持されることを特徴とする浮桟橋又は船舶用錨装置。
【請求項2】
浮桟橋又は船舶の甲板(3)に形成されて水面(2)に臨む開口(10)と、開口(10)付近の甲板(3)上に固定される台座(31)と、台座(31)に支持されかつ回転可能な枠滑車(20c)を有する架枠(20)と、開口(10)内に配置されかつ架枠(20)に固定される外管(11)と、収錨状態で架枠(20)に取外し可能に係止されて外管(11)内に配置される細長い錨(13)と、架枠(20)の枠滑車(20c)と錨(13)の錨滑車(13e)とに捲回されるワイヤ(21)と、ワイヤ(21)を牽引する巻上装置(25)とを備え、
架枠(20)との係止が解除される錨(13)は、非作動の空転状態の巻上装置(25)から引出されるワイヤ(21)と共に、収錨状態から自重により水底に向かって降下し、これにより、錨(13)の下端(13g)が水底に到達して、外管(11)から長さ方向に延伸する錨泊状態となり、
巻上装置(25)の駆動によりワイヤ(21)を牽引すると、錨(13)に固定される錨滑車(13e)は、枠滑車(20c)に接近し、錨(13)は、水底から外管(11)内の収錨状態に戻される浮桟橋又は船舶用錨装置において、
錨(13)の上端(13a)に形成される横孔(13b)と、架枠(20)の吊枠(20a)に形成される貫通孔(20d)とを備え、
錨(13)の横孔(13b)と架枠(20)の貫通孔(20d)とに止軸(15)を装着すると、錨(13)は、架枠(20)への係止が保持されて、収錨状態に維持され、
錨(13)の横孔(13b)と吊枠(20a)の貫通孔(20d)から止軸(15)を外すと、錨(13)は、架枠(20)との係止が解除されることを特徴とする浮桟橋又は船舶用錨装置。
【請求項3】
浮桟橋又は船舶の甲板(3)に形成されて水面(2)に臨む開口(10)と、開口(10)付近の甲板(3)上に固定される台座(31)と、台座(31)に支持されかつ回転可能な枠滑車(20c)を有する架枠(20)と、開口(10)内に配置されかつ架枠(20)に固定される外管(11)と、収錨状態で架枠(20)に取外し可能に係止されて外管(11)内に配置される細長い錨(13)と、架枠(20)の枠滑車(20c)と錨(13)の錨滑車(13e)とに捲回されるワイヤ(21)と、ワイヤ(21)を牽引する巻上装置(25)とを備え、
架枠(20)との係止が解除される錨(13)は、非作動の空転状態の巻上装置(25)から引出されるワイヤ(21)と共に、収錨状態から自重により水底に向かって降下し、これにより、錨(13)の下端(13g)が水底に到達して、外管(11)から長さ方向に延伸する錨泊状態となり、
巻上装置(25)の駆動によりワイヤ(21)を牽引すると、錨(13)に固定される錨滑車(13e)は、枠滑車(20c)に接近し、錨(13)は、水底から外管(11)内の収錨状態に戻される浮桟橋又は船舶用錨装置において、
矩形断面の外管(11)は、架枠(20)のブラケット(32)を有する2つの一方の外面(4)と、2つの一方の外面(4)とは角度90度分離して形成される2つの他方の外面(5)とを有し、
2つの一方の外面(4)に設けられるブラケット(32)の錨支持装置(30)を構成する各突起(35)は、甲板(3)上の台座(31)の対応する凹部(33)に篏合され、
2つの他方の外面(5)に設けられるブラケット(32)の錨支持装置(30)を構成する各突起(35)は、2つの一方の外面(4)の各突起(35)より垂直方向に低い位置で、開口(10)の側面に固定される台座(31)の対応する凹部(33)内に嵌合されることを特徴とする浮桟橋又は船舶用錨装置。
【請求項4】
巻上装置(25)が非作動の空転状態のとき、枠滑車(20c)と巻上装置(25)との間に接続されるワイヤ(21)に一定の緊張力を付与する緊張装置(23)を備え、
錨(13)は、緊張装置(23)がワイヤ(21)に付与する緊張力を克服して、収縮状態から自重により水底に向かって降下する請求項1~3の何れか1項に記載の浮桟橋又は船舶用錨装置。
【請求項5】
架枠(20)から外される錨(13)は、外管(11)内の収錨状態から延伸状態に自重で下降し、
錨(13)の下降時に、錨(13)の上外側面に設けられる外上突起(13f)は、外管(11)の内面に設けられる制止片(14)又は外管(11)の下部(11b)の下内突起(11c)に接触して、錨(13)の下降が停止する請求項1~4の何れか1項に記載の浮桟橋又は船舶用錨装置。
【請求項6】
浮桟橋又は船舶の浮く水位が変化すると、錨(13)は、架枠(20)に固定される外管(11)に対し伸縮運動を行う請求項1~5の何れか1項に記載の浮桟橋又は船舶用錨装置。
【請求項7】
外管(11)の下内突起(11c)に固定される耐摩耗性樹脂(24)は、外管(11)内で移動する錨(13)の外面に接触しかつ/又は錨(13)の外上突起(13f)に固定される耐摩耗性樹脂(24)は、錨(13)が、外管(11)内で移動するとき、外管(11)の内面に接触して摺動する請求項1~6の何れか1項に記載の浮桟橋又は船舶用錨装置。
【請求項8】
耐摩耗性樹脂(24)は、ポリアミド(PA)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂の少なくとも1種から選択される請求項7に記載の浮桟橋又は船舶用錨装置。
【請求項9】
外管(11)と錨(13)との間に同心上に配置されて、錨(13)の下部外面に設けられる外下突起(13c)により支持される細長い中管(12)を更に備え、
錨(13)の架枠(20)との係止が解除されると、錨(13)と中管(12)は、非作動の空転状態の巻上装置(25)から引出されるワイヤ(21)と共に、自重により水底に向かって自動的に降下し、
中管(12)の上外側面に設けられる外上突起(12f)が、外管(11)の内面に設けられる制止片(14)又は外管(11)の下内突起(11c)に接触すると、中管(12)の下降が停止して、その後、中管(12)内で錨(13)が自重で降下し、
錨(13)の下端(13g)が水底に到達し又は錨(13)の外上突起(13f)が、中管(12)の内面に設けられる制止片(14)又は内下突起(12a)に接触すると、錨(13)は、下降を停止して中管(12)からの延伸状態となり、
巻上装置(25)の駆動によりワイヤ(21)を牽引すると、最初に錨(13)が上昇し、中管(12)が錨(13)の外下突起(13c)に接触すると、中管(12)と錨(13)は、収錨状態に戻される請求項1~4の何れか1項に記載の浮桟橋又は船舶用錨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航行時の収錨状態と停泊時の錨泊状態との間で伸縮自在に全長を変更できる浮桟橋又は船舶用錨装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示されるように、浮桟橋は、港湾の水上に矩形の浮体を浮かべて、渡り橋で陸域に連結して錨で漂流を防止する係留施設である。浮桟橋は、潮位の干満により上下する水面上の一定の高さに保持され、潮位差の大きい水域や軟弱地盤の場所や大水深の場所でも容易に設置できる利点がある。しかしながら、固定された浮桟橋は、設置場所に強固に係留されて一旦港湾に設置されると、他所に移動して使用することは通常できない。錨を鎖で接続する浮桟橋は、水面で水平方向に浮動するため、浮桟橋を所定の設置位置に保持する多くの接続具を使用する難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、収錨状態と錨泊状態との間で伸縮自在に全長を変更できる浮桟橋又は船舶用錨装置を提供することを目的とする。また、本発明は、錨泊する水域の水深に適合して、錨泊長さを選択できる浮桟橋又は船舶用錨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の錨装置(1)は、浮桟橋又は船舶の甲板(3)に形成されて水面(2)に臨む開口(10)と、開口(10)付近の甲板上に固定される台座(31)と、台座(31)に支持されかつ回転可能な枠滑車(20c)を有する架枠(20)と、開口(10)内に配置されかつ架枠(20)に固定される外管(11)と、取外し可能にかつ収錨状態で架枠(20)に係止されて外管(11)内に配置される細長い錨(13)と、架枠(20)の枠滑車(20c)と錨(13)の錨滑車(13e)とに捲回されるワイヤ(21)と、ワイヤ(21)を牽引する巻上装置(25)とを備える。架枠(20)との係止が解除される錨(13)は、非作動の空転状態の巻上装置(25)から引き出されるワイヤ(21)と共に、収錨状態から自重により水底に向かって降下し、これにより、錨装置(1)は、外管(11)から長さ方向に延び出す錨泊状態となる。巻上装置(25)の駆動によりワイヤ(21)を牽引すると、錨(13)に固定される錨滑車(13e)は、錨(13)と共に枠滑車(20c)に接近して、錨(13)は、水底から外管(11)内に戻されて、錨装置(1)は、収錨状態になる。
【発明の効果】
【0006】
航行時に外管(11)内に錨(13)を収容する収錨状態と、停泊時に水底に向かって外管(11)内から錨(13)を延伸する錨泊状態とに全長を伸縮できる変更形態に本発明の錨装置(1)の特徴がある。収錨時の錨装置(1)の占有容積は、小さく、甲板(3)の上方に突出する錨装置(1)の高さと水面(2)下方の水中に突出する錨装置(1)の喫水距離は、浮桟橋又は船舶の高さと、その喫水距離とほぼ同一である。例えば、錨装置(1)の全長又は使用する中管(12)の数にもよるが、浮桟橋又は船舶の甲板(3)から上方に、3m以上突出せずかつその船底から水中に3m以上突出しない。従って、収錨状態の錨装置(1)を艤装する浮桟橋又は船舶の航行時に、引船若しくはタグボート又は船舶と共に、水上で錨装置(1)を容易に運搬できる。例えば、水面から比較的低い橋の下を通過しかつ比較的水深の浅い水上で、収錨状態に格納される錨装置(1)を備える浮桟橋又は船舶を容易に移動することができる。
【0007】
伸縮可能な入れ子管構造又は抜差管構造を備える本発明の錨装置(1)は、係留時には、外管(11)内から錨(13)を自重で自動的に延伸させて、錨(13)を水底に容易に投錨できるため、所望の係留位置で、従来の長い係留用索具を用いずに浮桟橋又は船舶を錨泊できる。潮汐又は水量の増減により水面が昇降しても、浮桟橋又は船舶は、錨装置(1)の伸縮運動により停泊する所定の水上位置にほぼ保持される。航行時には、巻上装置(25)を駆動してワイヤ(21)を牽引すると、錨装置(1)を外管(11)内の収錨状態に戻るので、容易にかつ短時間で本発明の錨装置の投錨操作と抜錨操作を行うことができる。使用する中管(12)の数を選択すると、停泊する水深に合わせて錨装置(1)の延伸長を選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】1本の中管を付加した本発明の錨装置の断面図
【
図3】2本の中管を付加した本発明の錨装置の断面図
【
図4】3本の中管を付加した本発明の錨装置の断面図
【
図5】浮桟橋から除去した
図4に示す錨装置の斜視図
【
図6】耐摩耗性樹脂を取付けた中管の下部を示す部分断面図
【
図12】錨装置を収縮状態に牽引するワイヤの緊張装置の側面図
【
図13】非作動の空転状態に切り替えた巻上装置とワイヤの側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
錨装置(1)の基本構造
内海、湖沼又は河川等の比較的波の穏やかな港湾の水上に停泊して、船舶での乗降者の移動と貨物の昇降が可能な浮桟橋又は船舶に適用する本発明の錨装置(1)の実施の形態を
図1~
図13について説明する。
図1~
図4に示す中心線O-Oの右断面は、
図5のO-X断面として、
図12と
図13に示す左右対称の架枠(20)の支柱(20a)の支持断面を示す。中心線O-Oの左断面の内容とは異なり、中心線O-Oの右断面に示す支柱(20a)は、左右同一の支持構造を有するが、
図1~
図4の中心線O-Oの左断面は、
図5のO-Y断面を示す点で注意を要する。
【0010】
図1~
図4は、本発明の錨装置(1)の4例の異なる実施の形態の断面図を示す。
図1~
図4の中心線O-Oの右断面は、外管(11)の一方の外面(4)を含む
図5の各O-X断面を示し、
図1~
図4の中心線O-Oの左断面は、一方の外面(4)から角度90度離れた他方の断面(5)を含む
図5のO-Y断面を示す。
図1は、外管(11)内に伸縮自在に収錨される錨(13)を示し、
図2は、外管(11)内に伸縮自在に配置される錨(13)と1本の中管(12)とを示し、
図3は、外管(11)内に伸縮自在に配置される錨(13)と2本の中管(12)を示し、
図4は、外管(11)内に伸縮自在に配置される錨(13)と3本の中管(12)とを示す。図示の実施の形態では、同一の部分には、同一の符号を付して、重複する部位の説明を省略する。
【0011】
図1~
図4の中心線O-Oの右断面に示す錨装置(1)は、例えば、浮桟橋の甲板(3)に形成されて水面(2)に臨む開口(10)と、開口(10)付近の甲板(3)上に互いに対向して固定される右断面に示す一対の台座(31)と、各台座(31)に支持されかつ回転可能な枠滑車(20c)と一対の支柱(20a)を有する門形の架枠(20)と、一対の支柱(20a)の下部の各ブラケット(32)に上部(11a)が固定されかつ開口(10)内に配置される外管(11)と、架枠(20)の一対の支柱(20a)を接続する横枠(20b)と、収縮状態で横枠(20b)に取外し可能に係止される上端(13a)を有しかつ外管(11)内に配置される角筒状又は角柱状の錨(13)と、架枠(20)の枠滑車(20c)と錨(13)の錨滑車(13e)とに捲回されるワイヤ(21)とを備える。外管(11)と錨(13)は、金属製、例えば、表面に塗装等の防食処理を施した鉄製の角筒材又は円筒材により形成され、錨(13)は、角柱又は円柱に形成されるが、架枠(20)に固定される外管(11)を、軽量な耐食性樹脂又は表面に耐食性処理を施した樹脂で形成してもよい。
【0012】
架枠(20)の横枠(20b)には、一対の枠滑車(20c)が回転可能に取り付けられる。錨(13)の上端(13a)には、横孔(13b)が形成され、横孔(13b)の下方には錨滑車(13e)が回転可能に取付けられる。枠滑車(20c)と錨滑車(13e)には、ワイヤ(21)が捲回され、ワイヤ(21)の牽引端は、
図11及び
図12に示す巻上装置(25)の図示しない回転式巻取胴に接続される。巻上装置(25)を作動して、ワイヤ(21)を牽引すると、錨(13)が僅かに上昇位置に保持されるため、錨(13)の横孔(13b)と架枠(20)の貫通孔(20d)から止軸(15)を引き抜くと、錨(13)は、吊枠(20b)の係止状態から解放される。このように、止軸(15)の着脱により、柱状の錨(13)の上端(13a)は、架枠(20)の吊枠(20b)に取外し可能に係止される。
【0013】
錨支持装置(30)
図1に示す架枠(20)の各支柱(20a)の台座(31)とブラケット(32)との間に錨支持装置(30)が配置される。錨支持装置(30)は、台座(31)に形成される逆截頭円錐状の凹部(33)と、架枠(20)に設けられるブラケット(32)に固定される逆截頭円錐状の突起(35)とにより構成されるテーパ継手を備える。ブラケット(32)の突起(35)は、凹部(33)と相補形状を有しかつ台座(31)の凹部(33)と同軸上に配置され、台座(31)の凹部(33)内に架枠(20)の突起(35)を篏合すると、テーパ継手の楔作用により凹部(33)と架枠(20)の突起(35)との接合面に大きな摩擦力が生じて、架枠(20)は、台座(31)に強固に支持される。逆截頭円錐状の突起(35)と凹部(33)の代わりに、逆截頭角錐状に突起(35)と凹部(33)を形成してもよい。
【0014】
図1~
図4の左断面は、一方の外面(4)から角度90度離れた他方の外面(5)を含む外管(11)の断面を示す。一方の外面(4)のブラケット(32)より低い位置で、他方の外面(5)にブラケット(32)が固定され、外面(5)のブラケット(32)にも同様に、逆截頭円錐状又は逆截頭角錐状の突起(35)が固定される。外面(5)の突起(35)に対向して、凹部(33)を有する台座(31)が開口(10)の側面に固定され、外面(5)の突起(35)は、開口(10)の側面の凹部(33)と相補形状を有しかつ台座(31)の凹部(33)と同軸上に配置され、開口(10)の台座(31)の凹部(33)内に外面(5)の突起(35)を篏合すると、凹部(33)と架枠(20)の突起(35)との接合面には、テーパ継手の楔作用により大きな摩擦力が生じて、外管(11)の外面(5)は、開口(10)の台座(31)に強固に支持される。
【0015】
このように、外管(11)の一方の外面(4)の2つの突起(35)は、甲板(3)上に固定される2つの台座(31)の各凹部(33)内に嵌合される。また、2つの一方の外面(4)とは角度90度分離しかつより垂直方向に低い位置に設けられる外管(11)の他方の外面(5)の2つの突起(35)は、開口(10)の側面に固定される台座(31)の対応する各凹部(33)内に嵌合される。このため、矩形断面の外管(11)は、4つの外面(4,5)の各突起(35)が対応する4つの凹部(33)に嵌合され、確実に支持される。また、テーパ継手を構成する4か所の錨支持装置(30)の突起(35)と台座(31)は、その両側に固定される
図11に示すボルト(36)と図示しないナットにより強固に固定される。このため、水面の波動により、架枠(20)と外管(11)が前後、左右又は垂直に揺動しても、錨装置(1)は、錨支持装置(30)と台座(31)を介して開口(10)内に確実に保持されることは理解されよう。
【0016】
錨装置(1)の着脱
錨支持装置(30)は、突起(35)の中心軸と突起(35)を嵌合する凹部(33)の中心軸とが製造誤差等により厳密に整合しなくても、突起(35)を凹部(33)に嵌合して、外管(11)を甲板(3)上の所定の位置に保持できる特徴がある。また、図示しない起重機等の吊上装置により架枠(20)を上方に持ち上げると、突起(35)を凹部(33)から分離するので、錨装置(1)を台座(31)に着脱自在に保持できるから、錨装置(1)の取外し又は交換が容易となる。
【0017】
錨装置(1)の作用
巻上装置(25)(
図12)の巻取胴を駆動して、ワイヤ(21)を緊張させて、ワイヤ(21)と錨滑車(13e)とにより錨(13)を支持する状態に保持して、
図1に示す錨装置(1)の止軸(15)を架枠(20)の貫通孔(20d)から除去すると、錨(13)の架枠(20)との係止が解除され、この状態で、巻上装置(25)の巻取胴を非作動の空転状態に切り替えると、錨滑車(13e)及び巻上装置(25)から繰り出されるワイヤ(21)と共に、錨(13)は、収縮状態から自重により水底に向かって降下し、これにより、錨(13)の下端(13g)が水底に到達して、水底に接触し又は突き刺さって、錨(13)は、延伸状態となり錨泊できる。しかし、錨(13)の下端(13g)が水底に到達する前に、錨(13)の外上突起(13f)が、外管(11)の内面に設けられる制止片(14)又は外管(11)の下内突起(11c)に接触すると、錨(13)は、下降を停止して延伸状態となる。その後、巻上装置(25)の駆動によりワイヤ(21)を牽引すると、錨(13)に固定される錨滑車(13e)は、枠滑車(20c)に接近して、錨(13)の外下突起(13c)が外管(11)の下内突起(11c)に接触して、それ以上の錨(13)の上昇が阻止され、錨(13)は、水底から収縮状態に戻される。錨(13)の横孔(13b)と架枠(20)の貫通孔(20d)に止軸(15)を装着すると、錨(13)は、収錨状態に保持される。
【0018】
耐摩耗性樹脂(24)
錨(13)の下部(13d)の外面には、溝型断面の外下突起(13c)が固定され、外管(11)の下部(11b)の内壁には、溝型断面の下内突起(11c)が固定され、下内突起(11c)内には、錨(13)の外面に接触する耐摩耗性樹脂(自己潤滑性緩衝材)(24)が固定される。
図6に示すように、外管(11)の下内突起(11c)と耐摩耗性樹脂(24)とは、ボルト(22)とナット(23)、熱溶接又は熱溶着等により固定される。錨(13)の上部には、溝型断面の外上突起(13f)が固定され、外上突起(13f)には、外管(11)の内面に接触する耐摩耗性樹脂(24)が固定される。錨(13)の外上突起(13f)に接触して、錨(13)の不要な下降を阻止する制止片(14)を外管(11)の内面に固定することができる。錨(13)の外上突起(13f)を外管(11)の下内突起(11c)に接触させて、錨(13)の下降を阻止すれば、外管(11)に固定する制止片(14)を省略できる。
【0019】
耐摩耗性樹脂(24)は、潤滑剤を要せず摩擦係数が極めて小さくかつ衝撃を吸収できる材料であり、モノマーキャスト(MC)ナイロン等のポリアミド(PA)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂等の強度と耐久性の高い樹脂を少なくとも1種から選択できる。矩形断面の外管(11)の各4面の異なる垂直浮遊位置に、耐摩耗性樹脂(24)を設けて、外管(11)と錨(13)との間の各摺動部に潤滑性、耐摩耗性及び衝撃緩和性を付与し、水面の波動又は水位の変化により、浮桟橋又は船舶が前後運動、左右運動又は垂直運動の発生時に、錨(13)と中管(12)との間及び中管(12)と錨(13)との間に生ずる外力、荷重又は衝撃を、錨装置(1)の伸縮運動と耐摩耗性樹脂(24)の衝撃緩衝性とにより、立体的に吸収し又は緩和することができる。
【0020】
緊張装置(23)
図12は、枠滑車(20c)と巻上装置(25)との間に接続されるワイヤ(21)に常時緊張力を付与するワイヤ(21)の緊張装置(23)を示し、
図13は、巻上装置(25)を非作動の空転状態に切り替えた状態のワイヤ(21)を示す。緊張装置(23)は、甲板(3)に固定される支持台(6)と、支持台(6)の軸(7)に回転可能に取り付けられるレバー(8)と、レバー(8)の一端に回転可能に取り付けられて枠滑車(20c)と緊張装置(23)との間でワイヤ(21)が捲回される滑車(9)と、レバー(8)の他端に固定される錘(17)とを備える。収錨(収縮)状態から自重により水底に向かって錨(13)が降下するとき、巻上装置(25)は、非作動の空転状態に切り替えられて、ワイヤ(21)に張力が付与されない弛緩状態となるため、緊張装置(23)は、
図11に示す錘(17)の重量により、軸(7)周りに右回転して、ワイヤ(21)に最小限の張力を付与する。従って、緊張装置(23)がワイヤ(21)に付与する緊張力は、収縮状態から自重により水底に向かって降下する錨(13)の重量より小さいが、巻上装置(25)の駆動によりワイヤ(21)が牽引されると、緊張装置(23)は、
図12に示すように、軸(7)周りに左に回転してワイヤ(21)に張力を付与する緊張状態となる。
【0021】
中管(12)の追加
深い水域での停泊のため、延伸長を変更する
図2~
図4に示す深水用錨装置(1)を使用することができる。
図2は、外管(11)と錨(13)との間に細長い中管(12)を同心上に配置する第2の実施の形態を示す。図示のように、収錨状態では、錨(13)の下部外面に設けられる外下突起(13c)に中管(12)の溝型断面の内下突起(12a)が係止して、中管(12)は、錨(13)の外側の収縮状態に支持される。中管(12)の内下突起(12a)には、錨(13)の外面に接触する耐摩耗性樹脂(自己潤滑性緩衝材)(24)が固定され、中管(12)の外下突起(12c)は、外管(11)の下内側面に設けられる内下突起(11c)に接触して、中管(12)の上方移動を阻止する。中管(12)の外上側面には、外上突起(12f)と、外上突起(12f)より保持されて外管(11)の内面に接触する耐摩耗性樹脂(24)が固定される。
【0022】
中管(12)を有する錨装置(1)の作用
錨(13)の横孔(13b)と架枠(20)の貫通孔(20d)から止軸(15)が除去されて、錨(13)の架枠(20)との係止が解除されると、錨(13)と中管(12)は、非作動の空転状態の巻上装置(25)から引出されるワイヤ(21)と共に、自重により水底に向かって自動的に降下する。中管(12)の外上側面に設けられる外上突起(12f)が、外管(11)の内面に設けられる制止片(14)又は外管(11)の下内突起(11c)に接触すると、中管(12)の下降が停止して、その後、中管(12)内で錨(13)が自重で降下する。錨(13)の下端(13g)が水底に到達し又は錨(13)の外上突起(13f)が、中管(12)の内面に設けられる制止片(14)又は内下突起(12a)に接触すると、錨(13)は、下降を停止して中管(12)からの延伸状態となる。巻上装置(25)の駆動によりワイヤ(21)を牽引すると、最初に錨(13)が上昇し、中管(12)の内下突起(12a)が錨(13)の外下突起(13c)に接触すると、中管(12)と錨(13)は、一体に収錨状態に戻される。
【0023】
中管(12
1
、12
2
)の追加
図3の第3の実施の形態に示すように、中管(12)は、錨(13)の下部外面に設けられる下外突起(13c)に接触する内下突起(12a)が下部内面に設けられて収縮状態に保持される第1の中管(12
1)と、第1の中管(12
1)の外下突起(12c)に内下突起(12a)が下部内面に設けられて収縮状態に保持される第2の中管(12
2)とを備え、第2の中管(12
2)の外下突起(12c)は、外管(11)の下内突起(11c)に接触して、第2の中管(12
2)の上昇移動が阻止される。第1の中管(12
1)の上部外面には、外上突起(12f)と、外上突起(12f)より保持されて第2の中管(12
2)の内面に接触する耐摩耗性樹脂(24)が固定される。第2の中管(12
2)の上部外面には、外上突起(12f)と、外上突起(12f)より保持されて外管(11)の内面に接触する耐摩耗性樹脂(24)が固定される。
【0024】
中管(12
1
、12
2
)を有する錨装置(1)の作用
錨(13)の横孔(13b)と架枠(20)の貫通孔(20d)から止軸(15)が除去されて、錨(13)の架枠(20)との係止が解除されると、錨(13)、第1の中管(121)及び第2の中管(122)は、非作動の空転状態の巻上装置(25)から引出されるワイヤ(21)と共に、自重により水底に向かって自動的に降下する。第2の中管(122)の外上側面に設けられる外上突起(12f)が、外管(11)の内面に設けられる制止片(14)又は外管(11)の下内突起(11c)に接触すると、第2の中管(122)の下降が停止して、その後、第2の中管(122)内で第1の中管(121)と錨(13)が自重で一体に降下する。第1の中管(121)の外上側面に設けられる外上突起(12f)が、第2の中管(122)の内面に設けられる制止片(14)又は内下突起(12a)に接触すると、第1の中管(121)の下降が停止して、その後、第1の中管(121)内で錨(13)が自重で一体に降下する。
【0025】
錨(13)の下端(13g)が水底に到達し又は錨(13)の外上突起(13f)が、第1の中管(121)の内面に設けられる制止片(14)又は内下突起(12a)に接触すると、錨(13)は、下降を停止して中管(12)からの錨泊状態となる。巻上装置(25)の駆動によりワイヤ(21)を牽引すると、最初に錨(13)が上昇し、第1の中管(121)の内下突起(12a)が錨(13)の外下突起(13c)に接触すると、第1の中管(121)と錨(13)は、一体に上昇する。その後、第2の中管(122)の内下突起(12a)が第1の中管(121)の外下突起(12c)に接触すると、第2の中管(122)、第1の中管(121)及び錨(13)は、一体に上昇して、外管(11)内の収錨(収縮)状態に戻される。
【0026】
中管(12
1
、12
2
、12
3
)の追加
図4の第4の実施の形態に示すように、中管(12)は、錨(13)の下部外面に設けられる下外突起(13c)に接触する内下突起(12a)が下部内面に設けられて収錨状態に保持される第1の中管(12
1)と、第1の中管(12
1)の外下突起(12c)に内下突起(12a)が下部内面に設けられて第1の中管(12
1)を包囲して収錨状態に保持される第2の中管(12
2)と、第2中管(12
2)の外下突起(12c)に内下突起(12a)が下部内面に設けられて第2の中管(12
2)を包囲して収錨態に保持される第3の中管(12
3)とを備える。第3の中管(12
3)の外下突起(12c)は、外管(11)の下内突起(11c)に接触して、第3の中管(12
3)の上昇移動が阻止される。第2の中管(12
2)の上部外面には、外上突起(12f)と、外上突起(12f)より保持されて第3の中管(12
3)の内面に接触する耐摩耗性樹脂(24)が固定される。第3の中管(12
3)の上部外面には、外上突起(12f)と、外上突起(12f)より保持されて外管(11)の内面に接触する耐摩耗性樹脂(24)が固定される。図示の実施の形態では、第1、第2及び第3の中管(12
1、12
2、12
3)の3中管(12)を外管(11)の内側に配置する例を示すが、4つ以上の数の中管(12)を備える錨装置(1)を本発明に適用できることは理解できよう。
【0027】
中管(12
1
)の構造
錨(13)を包囲して配置される第1の中管(12
1)は、
図6に示すように、第1の中管(12
1)の下端内面に固定される溝型断面の内下突起(12a)と、内下突起(12a)内に固定される耐摩耗性樹脂(24)と、第1の中管(12
1)の下端外面に固定される山型断面の外下突起(12b)と、これらを貫通するボルト(22)と、外側からボルト(22)に取り付けられるナット(23)とを有する。第1の中管(12
1)の内下突起(12a)の耐摩耗性樹脂(24)は、錨(13)の外面に接触する。収錨位置では、第1の中管(12
1)の内下突起(12a)は、錨(13)の外下突起(13f)に接触するため、第1の中管(12
1)の降下が阻止され、第1の中管(12
1)は、
図2の収縮状態に保持される。錨(13)の上部には、外上突起(13f)が固定され、外上突起(13f)に固定される耐摩耗性樹脂(24)は、第1の中管(12
1)の内面に接触する。錨(13)の外上突起(13f)に接触して、錨(13)の更なる下降を阻止する制止片(14)を第1の中管(12
1)の内面に固定できる。錨(13)の外上突起(13f)を第1の中管(12
1)の内下突起(12a)に接触させて、錨(13)の下降を阻止すれば、第1の中管(12
1)に固定する制止片(14)を省略できる。
【0028】
中管(12
2
)の構造
第1の中管(12
1)を包囲して配置される第2の中管(12
2)は、
図6に示すように、第2の中管(12
2)の下端内面に固定される溝型断面の内下突起(12a)と、内下突起(12a)内に固定される耐摩耗性樹脂(24)と、第2の中管(12
2)の下端外面に固定される山型断面の外下突起(12b)と、これらを貫通するボルト(22)と、外側からボルト(22)に取り付けられるナット(23)とを有する。第2の中管(12
2)の内下突起(12a)の耐摩耗性樹脂(24)は、第1の中管(12
1)の外面に接触する。収納位置では、第2の中管(12
2)の内下突起(12a)は、第1の中管(12
1)の外下突起(12b)に接触するため、第2の中管(12
2)の降下が阻止され、第2の中管(12
2)は、収縮状態に保持される。第1の中管(12
1)の上部には、外上突起(12f)が固定され、外上突起(12f)に固定される耐摩耗性樹脂(24)は、第2の中管(12
2)の内面に接触する。第1の中管(12
1)の外上突起(12f)に接触して、第1の中管(12
1)の更なる下降を阻止する制止片(14)を第2の中管(12
2)の内面に固定することができる。第1の中管(12
1)の外上突起(12f)を第2の中管(12
2)の内下突起(12a)に接触させて、第1の中管(12
1)の下降を阻止すれば、第2の中管(12
2)に固定する制止片(14)を省略できる。
【0029】
中管(12
3
)の構造
第2の中管(12
2)を包囲して配置される第3の中管(12
3)は、
図6に示すように、第3の中管(12
3)の下端内面に固定される溝型断面の内下突起(12a)と、内下突起(12a)内に固定される耐摩耗性樹脂(24)と、第3の中管(12
3)の下端外面に固定される山型断面の外下突起(12b)と、これらを貫通するボルト(22)と、外側からボルト(22)に取り付けられるナット(23)とを有する。第3の中管(12
3)の内下突起(12a)の耐摩耗性樹脂(24)は、第2の中管(12
2)の外面に接触する。収納位置では、第3の中管(12
3)の内下突起(12a)は、第2の中管(12
2)の外下突起(12b)に接触するため、第3の中管(12
3)の降下が阻止され、第3の中管(12
3)は、収縮状態に保持される。第2の中管(12
2)の上部には、外上突起(12f)が固定され、外上突起(12f)に固定される耐摩耗性樹脂(24)は、第3の中管(12
3)の内面に接触する。第2の中管(12
2)の外上突起(12f)に接触して、第2の中管(12
2)の更なる下降を阻止する制止片(14)を第3の中管(12
3)の内面に固定することができる。第2の中管(12
2)の外上突起(12f)を第3の中管(12
3)の内下突起(12a)に接触させて、第2の中管(12
2)の下降を阻止すれば、第3の中管(12
3)に固定する制止片(14)を省略できる。第3の中管(12
3)の上部には、外上突起(12f)が固定され、外上突起(12f)に固定される耐摩耗性樹脂(24)は、外管(11)の内面に接触する。本発明の錨装置(1)を製造するとき、予め必要な穿孔、ねじ切り加工又は溶接を行った後に、外径の異なる必要な中管と錨とを外管内に配置して、溝型断面の内下突起、内下突起内に固定される耐摩耗性樹脂、中管の下端外面に固定される山型断面の外下突起をボルトとナット又は溶接で固定することが好ましい。外管(11)、中管(12)及び錨(13)は、矩形断面に形成され、錨(13)の下端(13g)は、四角錐状を有する。
【0030】
多中管の追加
要するに、本発明の錨装置(1)の中管(12)は、第1の中管(121)から第nの中管(12n)までのn個の中管(121~12n)を備えることができる。第1の中管(121)から第nの中管(12n)までの中管(12)の断面は、徐々に増加して伸縮可能な抜差し管構造で全て同心上に順次外側に配置され、第1の中管(121)は、錨(13)を包囲して錨(13)と同心上に配置されかつ錨(13)の下部外面に設けられる外下突起(13c)により支持され、第nの中管(12n)は、外管(11)内に配置されかつ第n-1の中管(12n-1)を包囲しかつ第n-1の中管(12n-1)の外下突起(12c)により支持される。
【0031】
係留時に吊枠(20a)から錨(13)が外されると、錨(13)と共に全ての中管(12)は、外管(11)内で自重で下降し、第nの中管(12n)の外上突起(12f)が外管(11)の下内突起(11c)に接触したとき、第nの中管(12n)の下降が停止する。その後、第n-1の中管(12n-1)から第1の中管(121)及び錨(13)が順次下降し、第n-1の中管(12n-1)の各外上突起(12f)が第nの中管(12n)の外内下突起(12a)に順次接触したとき、第n-1の中管(12n-1)の下降が停止し、最終的に錨(13)の下端が水底に到達したとき又は錨(13)の外上突起(10e)が第1の中管(121)の下内突起(12d)に接触したとき、錨(13)の下降が停止する。
【0032】
金属、特に鉄製材料で第1の中管(121)、第2の中管(122)及び第3の中管(123)を形成できるが、軽量化のため、モノマーキャスト(MC)ナイロン等のポリアミド(PA)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂等の強度と耐久性の高い樹脂の少なくとも1種から選択される耐食性樹脂又は表面処理樹脂で中管を形成できる。鉄等の金属と樹脂とを組合わせたハイブリッド構造としてもよい。前記の樹脂の比重は、海水より大きい例えば、1.03、1.2又は2.0が好ましい。しかし、海水と同程度又は海水より小さい比重の樹脂を使用しても、先に水底に向かって降下する金属製の錨(13)の外上突起(13f)が、第1の中管(121)、第2の中管(122)及び第3の中管(123)に設けた各制止片(14)又は各内下突起(12a)に係止して、各中管は、錨(13)と共に、水底に向かって降下する。本発明の前記実施の形態は、更に変更が可能である。前記実施の形態では、本発明の錨装置を浮桟橋に適用する例を示したが、船舶にも適用できることは容易に理解されよう。また、外管(11)、中管(12)、第1の中管(121)、第2の中管(122)、第3の中管(123)及び錨(13)を角筒形状の例を示したが、円筒形状で形成してもよく、錨(13)を円柱又は円筒で形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の錨装置は、浮桟橋、船舶の係留に生簀の保持に使用できる。
【符号の説明】
【0034】
(1)・・錨装置、 (2)・・水面、 (3)・・甲板、 (4)・・一方の外面、 (5)・・他方の外面、 (6)・・支持台、 (7)・・軸、 (8)・・レバー、 (10)・・開口、 (11)・・外管、 (11a)・・上部、 (11b)・・下部、 (11c)・・下内突起、 (12)・・中管、 (121)・・第1の中管、 (122)・・第2の中管、 (123)・・第3の中管、 (12a)・・内下突起、 (12c)・・外下突起、 (12f)・・外上突起、 (13)・・錨、 (13a)・・上端、 (13b)・・横孔、 (13c)・・外下突起、 (13d)・・下部、 (13e)・・錨滑車、 (13f)・・外上突起、 (13g)・・下端、 (14)・・制止片、 (15)・・止軸、 (17)・・錘、 (20)・・架枠、 (20a)・・吊枠、 (20b)・・貫通孔、 (20c)・・枠滑車、 (21)・・ワイヤ、 (22)・・ボルト、 (23)・・緊張装置、 (24)・・耐摩耗性樹脂、(25)・・巻上装置、 (30)・・錨支持装置、 (31)・・台座、 (32)・・ブラケット、 (33)・・凹部、 (34)・・テーパ面、 (35)・・突起、