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特許7176677建物の床断熱構造及び床断熱構造建物の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】建物の床断熱構造及び床断熱構造建物の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/80 20060101AFI20221115BHJP
   E04B 1/348 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
E04B1/80 100F
E04B1/348 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019023654
(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公開番号】P2020133127
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】平岡 奈々
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216897(JP,A)
【文献】特開2015-140587(JP,A)
【文献】特開2016-166500(JP,A)
【文献】特開2018-150688(JP,A)
【文献】特開2011-190590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体フレームを構成する外柱の下端部間に架設され、ウェブ、上フランジ及び下フランジを含んで構成された床大梁のうち独立基礎の立上部の天端部の建物上方側に前記天端部の両方の縁部よりも内側にオフセットして配置された独立基礎上梁部と、
前記独立基礎の前記立上部の地盤上の側面を形成する立上側面部に設けられ前記立上側面部の全面を密着して覆う第1床断熱材と、
前記独立基礎上梁部の前記ウェブ及び前記上フランジの前記第1床断熱材側の表面を覆う第2床断熱材と、
前記第1床断熱材と前記第2床断熱材に上下に挟まれるように設けられ、前記下フランジと床下空間とを遮断する第3床断熱材と、
前記第3床断熱材と接触した状態で前記独立基礎上梁部の前記ウェブにおける前記第2床断熱材と反対側の表面を覆う第4床断熱材と、
を含んで構成された建物の床断熱構造。
【請求項2】
前記第1床断熱材は、発泡プラスチック系断熱材により構成された請求項1に記載の建物の床断熱構造。
【請求項3】
前記第3床断熱材は、前記天端部を覆うように配置された繊維系断熱材を含んで構成された請求項1又は請求項2に記載の建物の床断熱構造。
【請求項4】
前記独立基礎上梁部と前記独立基礎上梁部に対向する前記床大梁の間に架け渡された床小梁の表面に、繊維系断熱材又は発泡プラスチック系断熱材が配置された請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の建物の床断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床断熱構造及び床断熱構造建物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、建物基礎と建物基礎上に配置された床梁が、建物基礎の側面に取り付けられた断熱材を介して接続された建物の床断熱構造が開示されている。また、長辺床梁及び短辺床梁のうち一方の床梁の内部には、断熱材が設けられると共に当該床梁と対向して当該断熱材を覆う対向梁が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-068082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された建物によれば、建物基礎の側面の建物下方側は、断熱材が設けられていないため床下空間の外気と直接接触する。このため、建物基礎と床下空間との間に温度差が生じることによって熱伝達が発生する。また、建物基礎の天端部の建物上方側に設けられた床梁の下面と天端部との間には断熱材が設けられていないため、床梁と天端部との間に温度差が生じることによって熱伝達が発生する。これにより、床梁と床下空間との間に建物基礎を介して熱伝達が発生する場合がある。さらに、床梁が天端部の両方の縁部よりも内側にオフセットして配置される場合は、建物基礎の側面から建物上方側へ延在された断熱材を介して建物基礎と床梁とを接続することが難しい。このため、建物基礎を介した熱橋を適切に遮断することができる建物の床断熱構造を構成することが望ましい。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、建物基礎を介した熱橋を適切に遮断することができる建物の床断熱構造及び床断熱構造建物の施工方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る建物の床断熱構造は、建物の躯体フレームを構成する外柱の下端部間に架設され、ウェブ、上フランジ及び下フランジを含んで構成された床大梁のうち独立基礎の立上部の天端部の建物上方側に前記天端部の両方の縁部よりも内側にオフセットして配置された独立基礎上梁部と、前記独立基礎の前記立上部の地盤上の側面を形成する立上側面部に設けられ前記立上側面部の全面を密着して覆う第1床断熱材と、前記独立基礎上梁部の前記ウェブ及び前記上フランジの前記第1床断熱材側の表面を覆う第2床断熱材と、前記第1床断熱材と前記第2床断熱材に上下に挟まれるように設けられ、前記下フランジと床下空間とを遮断する第3床断熱材と、を含んで構成されている。
【0007】
第1の態様に係る建物の床断熱構造によれば、建物の床断熱構造は、独立基礎の立上側面部の全面を覆う第1床断熱材と独立基礎上梁部のウェブ及び上フランジの第1床断熱材側の表面を覆う第2床断熱材を含んで構成されている。さらに、下フランジと床下空間との間を遮断する第3床断熱材が第1床断熱材と第2床断熱材に上下に挟まれるように設けられている。このため、独立基礎上梁部と床下空間との間に独立基礎を介した熱伝達が発生することを防止又は抑制することができる。これにより、建物基礎を介した熱橋を適切に遮断することができる。
【0008】
第2の態様に係る建物の床断熱構造は、第1の態様において、前記第1床断熱材は、発泡プラスチック系断熱材により構成されている。
【0009】
第2の態様に係る建物の床断熱構造によれば、第1床断熱材を構成する発泡プラスチック系断熱材は、安定した形状を維持することができるため、立上部の側面をより効果的に覆うことができる。このため、立上部の側面と外気との直接接触をより適切に防止することができる。これにより、建物基礎を介した熱橋をより適切に遮断することができる。
【0010】
第3の態様に係る建物の床断熱構造は、第1の態様又は第2の態様において、前記第3床断熱材は、前記天端部を覆うように配置された繊維系断熱材を含んで構成されている。
【0011】
第3の態様に係る建物の床断熱構造によれば、第1床断熱材と第2床断熱材に上下に挟まれるように設けられ、下フランジと床下空間とを遮断する第3床断熱材は、天端部を覆うように配置される。このため、床大梁の下フランジを介して独立基礎上梁部と床下空間との間に熱伝達が発生することを防止又は抑制できると共に天端部と独立基礎上梁部との間に熱伝達が発生することをより適切に防止又は抑制できる。これにより、建物基礎を介した熱橋をより適切に遮断することができる。
【0012】
第4の態様に係る建物の床断熱構造は、第1から第3の態様の何れか1の態様において、前記独立基礎上梁部と前記独立基礎上梁部に対向する前記床大梁の間に架け渡された床小梁の表面に、繊維系断熱材又は発泡プラスチック系断熱材が配置されている。
【0013】
第4の態様に係る建物の床断熱構造によれば、床小梁の表面には、繊維系断熱材又は発泡プラスチック系断熱材が配置されている。このため、独立基礎及び床梁と床梁の建物上方側に配設される床との間に熱伝達が発生することをより包括的に防止又は抑制することができる。これにより、建物基礎を介した熱橋をより適切に遮断することができる。
【0014】
第5の態様に係る床断熱構造建物の施工方法は、独立基礎の立上部の天端部に、建物の躯体フレームを構成する外柱の下端部間に架設され、ウェブ、上フランジ及び下フランジを含んで構成された床大梁を前記天端部の両方の縁部よりも内側にオフセットして配置可能に建物上下方向に沿ってボルト挿通孔を形成する第1工程と、繊維系断熱材を前記天端部の全面を覆うように配置する第2工程と、前記天端部に配置された前記繊維系断熱材に、前記ボルト挿通孔と建物上下方向に沿って重なる位置に孔を形成する第3工程と、前記下フランジと前記ボルト挿通孔に建物上下方向に沿ってアンカーボルトを挿通し、前記床大梁を前記独立基礎に緊結する第4工程と、を含んで構成されている。
【0015】
第5の態様に係る床断熱構造建物の施工方法によれば、第2工程において天端部の全面を覆うように配置された繊維系断熱材は、容易に加工することができる。このため、第3工程において繊維系断熱材に孔を容易に形成することができると共に第4工程においてアンカーボルトとボルト挿通孔との位置合わせを容易にすることができる。また、天端部の全面を覆うように配置された繊維系断熱材により、天端部と独立基礎上梁部との間に熱伝達が発生することをより適切に防止又は抑制できる。これにより、建物基礎を介した熱橋をより適切に遮断する建物の床断熱構造を簡易に構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、第1の態様に係る建物の床断熱構造は、建物基礎を介した熱橋を適切に遮断することができるという優れた効果を有する。
【0017】
第2の態様に係る建物の床断熱構造は、立上部の側面と外気との直接接触をより適切に防止することができるため、建物基礎を介した熱橋をより適切に遮断することができるという優れた効果を有する。
【0018】
第3の態様に係る建物の床断熱構造は、床大梁の下フランジを介して独立基礎上梁部と床下空間との間に熱伝達が発生することを防止又は抑制できると共に天端部と独立基礎上梁部との間に熱伝達が発生することをより適切に防止又は抑制できるという優れた効果を有する。
【0019】
第4の態様に係る建物の床断熱構造は、独立基礎及び床梁と床梁の建物上方側に配設される床との間に熱伝達が発生することをより包括的に防止又は抑制することができるため、建物基礎を介した熱橋をより適切に遮断することができるという優れた効果を有する。
【0020】
第5の態様に係る床断熱構造建物の施工方法は、アンカーボルトとボルト挿通孔との位置合わせを容易にすることができると共に天端部と独立基礎上梁部との間に熱伝達が発生することをより適切に防止又は抑制できる。このため、建物基礎を介した熱橋をより適切に遮断する建物の床断熱構造を簡易に構成することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る建物基礎を建物上方側から見た平面図である。
図2】本実施形態に係る躯体フレームを建物上方側から見た斜視図である。
図3】第1実施形態に係る建物の床断熱構造を図1の3-3線に沿って切断した状態を示す縦断面図である。
図4】第1実施形態に係る建物の床断熱構造を図1の4-4線に沿って切断した状態を示す縦断面図である。
図5A】本実施形態に係る床断熱構造建物の施工方法の第1工程を示した説明図である。
図5B】本実施形態に係る床断熱構造建物の施工方法の第2工程を示した説明図である。
図5C】本実施形態に係る床断熱構造建物の施工方法の第3工程を示した説明図である。
図5D】本実施形態に係る床断熱構造建物の施工方法の第4工程を示した説明図である。
図6】第1実施形態の第1変形例に係る建物の床断熱構造を示す縦断面図である。
図7】第1実施形態の第2変形例に係る建物の床断熱構造を示す縦断面図である。
図8】第1実施形態の第3変形例に係る建物の床断熱構造を示す縦断面図である。
図9】第2実施形態に係る建物の床断熱構造を示す縦断面図である。
図10】第3実施形態に係る建物の床断熱構造を示す縦断面図である。
図11】第3実施形態の第1変形例に係る建物の床断熱構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、図1図8を用いて、本発明に係る建物の床断熱構造及び床断熱構造建物の施工方法の第1実施形態について説明する。
【0023】
(建物の全体構成)
図1には示されるように、本実施形態に係る建物の床断熱構造10を備えた建物12の建物基礎50への配置の一例が示されている。建物12は、建物基礎50上へ配置された複数の建物ユニット14A、14B、14C、14Dが互いに連結されたユニット式建物として構成されている。建物12の内部には、土間、インナガレージ等を形成するための内部空間16が形成されている。このため、内部空間16と平面視で重なる部分には、建物基礎50は形成されていない。また、建物ユニット14の躯体フレーム20の内部空間16と平面視で重なる部分は切断されている。
【0024】
図2には、ユニット式建物を構成する建物ユニット14の躯体フレーム20が示されている。躯体フレーム20は、四隅に立設された4本の外柱22と、外柱22の上端部間に架設された天井大梁24により矩形枠状に形成された天井フレーム26と、外柱22の下端部間に架設された床大梁34により矩形枠状に形成された床フレーム36と、により箱型に構成されている。また、外柱22には、方形の鋼管柱が用いられている。
【0025】
躯体フレーム20の建物上方側を構成する天井フレーム26は、長辺側に配置された一対の桁側の天井大梁24Aと、短辺側に配置された一対の妻側の天井大梁24Bと、一対の桁側の天井大梁24A間に架け渡された複数本の天井小梁28と、を含んで構成されている。なお、桁側の天井大梁24A、床側天井大梁24Bはいずれも溝形鋼とされている。また、天井小梁28は、溝形鋼(C形鋼)とされている。天井小梁28の下面側には、図示しない矩形平板状の天井面材が取り付けられている。
【0026】
躯体フレーム20の建物下方側を構成する床フレーム36は、長辺側に配置された一対の桁側の床大梁34Aと短辺側に配置された一対の妻側の床大梁34Bにより外形が構成されている。桁側の床大梁34A及び妻側の床大梁34Bは、建物上方側の上フランジ46、建物上下方向に沿って形成されたウェブ45及び建物下方側の下フランジ42を備えた溝形鋼とされている。なお、桁側の床大梁34Aと妻側の床大梁34Bの両者を区別する必要がない場合は「床大梁34」と総称する。床大梁34は、長手方向に沿って外柱22の下端部間に架設されている。桁側の床大梁34A間には、角形鋼管により一体に形成され、端部を桁側の床大梁34Aの溝部の内側に溶接されたブラケット40に接合された床小梁38が、架け渡されている。床フレーム36は、桁側の床大梁34Aと、妻側の床大梁34Bと、床小梁38と、を含んで構成されている。また、床大梁34の建物下方側の下フランジ42には、アンカーボルト48(図3参照)を挿入するためのフランジ部挿通孔44(図3参照)が形成されている。
【0027】
図1に示されるように、建物基礎50は、建物12の外周に沿って連続して形成された外周基礎52と外周基礎52により囲まれた内側空間(床下空間54)に形成された独立基礎56とを含んで構成されている。建物基礎50上へ建物ユニット14A、14B、14C、14Dが配置されることにより建物12が構成されている。
【0028】
外周基礎52と独立基礎56とは、どちらも筋金により補強された鉄筋コンクリート造のいわゆる布基礎とされている。図3に示されるように、独立基礎56は、地盤としての床下地盤Gの内部に埋設されたベース部56A(フーチング)(図8参照)と、ベース部56Aから建物上方に立ち上がる立上部56Bと、を含んで構成されている。独立基礎56の立上部56Bの上面を形成する天端部56Cには、躯体フレーム20を独立基礎56に固定するためのアンカーボルト48を挿通するためのボルト挿通孔58が形成されている。また、外周基礎52と独立基礎56は、立上部56Bが低く形成され、床大梁34に沿って延在された図示しない繋ぎ基礎を介して繋がっている。
【0029】
独立基礎56の内部空間16に対向する側には、切断された桁側の床大梁34Aに沿って内部空間16へ向けて延在された独立基礎延在部56Eが形成されている。切断された桁側の床大梁34Aは、独立基礎延在部56Eの内部空間16側の端部において、アンカーボルト48を介して独立基礎56に緊結されている。
【0030】
図4に示されるように、建物ユニット14A、14B、14C、14Dは、外柱22の下端部に外柱22と一体に形成されたベースプレート22Aの下面が当接するように立上部56Bの天端部56Cに設置される。図3に示されるように、床大梁34のうち、天端部56Cの建物上方側に配置されている部分は、独立基礎上梁部66とされている。独立基礎上梁部66は、天端部56Cの建物上方側に天端部56Cの両方の縁部56C1よりも内側にオフセットして配置されている。言い換えれば、独立基礎56は、独立基礎上梁部66が天端部56Cの両方の縁部56C1よりも内側に配置可能に、その立上部56Bが形成されている。床大梁34は、ベースプレート22Aよりも建物上方側で外柱22間に架け渡されているため(図4参照)、独立基礎上梁部66の下フランジ42の下面と天端部56Cとの間には、隙間空間部62が形成されている。隙間空間部62は、天端部56Cの縁部56C1側から床下空間54に対して開放されている。
【0031】
図4に示されるように、独立基礎56の天端部56Cに設置された建物ユニット14C、14Dの外柱22に接合された妻側の床大梁34Bの下フランジ42と独立基礎56の天端部56Cとの間にも、隙間空間部62が形成されている。隙間空間部62は、天端部56Cの縁部56C1側から床下空間54に対して開放されている。
【0032】
図1に示されるように、床下空間54の建物下方側の地面SEは、全面に亘って土間コンクリート68が敷設されている。また、床下空間54は、外周基礎52に形成された図示しない換気孔によって建物外部と連通されている。
【0033】
(床部の構成)
図3に示されるように、床大梁34の建物上方側の上フランジ46の上面には、上フランジ46に沿って床根太72が配置されている。床根太72の上面には床板74が配置されている。これにより、建物12の居室部内の床部70が形成されている。床板74は、例えば、合板又はパーティクルボード等により構成されており、図示しない締結具によって床大梁34及び床小梁38に締結されている。
【0034】
床板74の裏面側となる床下空間54側の面には、床裏断熱材76が配置されている。床裏断熱材76は、例えば、ウレタンフォームにより板状に形成されている。床裏断熱材76は、床板74の裏面側の床根太72に当接されている部分を除く前面に貼り付けられている。ウレタンフォームのような発泡プラスチック系断熱材は形状を安定させることができるため、床裏断熱材76を床板74の裏面側を覆うように貼り付けることができる。なお、ここでは、床裏断熱材76には、ウレタンフォームが用いられているとして説明したが、これに限らず、フェノールフォーム、高発泡ポリエチレン、押出し発泡ポリスチレン、ビーズ法ポリスチレン等の発泡プラスチック系断熱材が用いられてもよい。
【0035】
(第1床断熱材)
独立基礎56の立上部56Bの側面を形成する立上側面部56B1の地盤G(図8参照)上の全面には、第1床断熱材84が立上側面部56B1に密着して配置されている。第1床断熱材84には、例えば、ウレタンフォームが用いられている。ウレタンフォームのような発泡プラスチック系断熱材は形状を安定させることができるため、第1床断熱材84により独立基礎56の立上部56Bの立上側面部56B1を安定して覆うことができる。なお、ここでは、第1床断熱材84は、ウレタンフォームが用いられているとして説明したが、これに限らず、フェノールフォーム、高発泡ポリエチレン、押出し発泡ポリスチレン、ビーズ法ポリスチレン等の発泡プラスチック系断熱材が用いられてもよい。
【0036】
(第2床断熱材)
溝形鋼により構成された床大梁34の溝部には、溝部の内側となる上フランジ46及びウェブ45の第1床断熱材84側の面と溝部に溶接されたブラケット40の全面を覆うように第2床断熱材としての床大梁断熱材86が配置されている。床大梁断熱材86には、例えば、グラスウールが用いられている。グラスウールのような繊維系断熱材は容易に変形させることができるため、床大梁断熱材86を溝部とブラケット40に密着するように取り付けることができる。なお、ここでは、床大梁断熱材86には、グラスウールが用いられているとして説明したが、これに限らず、ロックウール、セルロースファイバ、インシュレーションボード等のグラスウール以外の繊維系断熱材が用いられてもよい。また、床大梁断熱材86には、繊維系断熱材に限らず、発泡プラスチック系断熱材が用いられてもよい。
【0037】
(第3床断熱材)
独立基礎上梁部66の下フランジ42と天端部56Cとの間に形成された隙間空間部62には、第3床断熱材82が下フランジ42と天端部56Cとに密着して隙間空間部62を塞ぐように配置されている。天端部56Cの縁部56C1では、第3床断熱材82は、第1床断熱材84と床大梁断熱材86に上下に挟まれて配置されている。これにより、独立基礎上梁部66の下フランジ42と床下空間54とが遮断されている。第3床断熱材82には、例えば、グラスウールが用いられている。グラスウールのような繊維系断熱材は容易に変形させることができるため、下フランジ42と天端部56Cに密着させた状態で隙間空間部62に配置させることができる。なお、ここでは、第3床断熱材82には、グラスウールが用いられているとして説明したが、これに限らず、ロックウール、セルロースファイバ、インシュレーションボード等のグラスウール以外の繊維系断熱材が用いられてもよい。
【0038】
桁側の床大梁34A間に架け渡された床小梁38には、その溝部を含む全面を覆うように床小梁断熱材88が配置されている。床小梁断熱材88には、例えば、グラスウールが用いられている。なお、ここでは、床小梁断熱材88には、グラスウールが用いられているとして説明したが、これに限らず、ロックウール、セルロースファイバ、インシュレーションボード等のグラスウール以外の繊維系断熱材が用いられてもよい。また、床小梁断熱材88には、繊維系断熱材に限らず、発泡プラスチック系断熱材が用いられてもよい。
【0039】
図3に示されるように、隣り合う建物ユニット14A、14Bの独立基礎上梁部66を形成する床大梁34Aの間には、床大梁34Aの間を塞ぐように梁間断熱材90が配置されている。梁間断熱材90には、例えば、グラスウールが用いられている。グラスウールのような繊維系断熱材は容易に変形させることができるため、隣り合う床大梁34Aに梁間断熱材90を密着するように取り付けることができる。なお、ここでは、梁間断熱材90には、グラスウールが用いられているとして説明したが、これに限らず、ロックウール、セルロースファイバ、インシュレーションボード等のグラスウール以外の繊維系断熱材が用いられてもよい。また、梁間断熱材90には、繊維系断熱材に限らず、発泡プラスチック系断熱材が用いられてもよい。
【0040】
次に、本実施形態に係る床断熱構造建物としての床断熱構造10を有する建物12の施工方法の説明を通じて作用並びに効果について説明する。
【0041】
建物の床断熱構造10は、4つの行程により施工される。躯体フレーム20は、アンカーボルト48を用いて独立基礎56に固定される。このため、図5Aに示されるように、第1工程では、独立基礎56の天端部56Cに建物上下方向に沿ってアンカーボルト48を挿通するためのボルト挿通孔58が形成される。ここで、ボルト挿通孔58は、独立基礎上梁部66を独立基礎56に固定した際に、天端部56Cの両方の縁部56C1よりも内側にオフセットして配置されるように形成される。
【0042】
第2工程では、図5Bに示されるように、ボルト挿通孔58が形成された天端部56Cに、繊維系断熱材の第3床断熱材82が天端部56Cの全面を覆うように配置される。ここで、第3床断熱材82は、第1床断熱材84の上端部と確実かつ適切な幅をもって連続させるために、天端部56Cの建物水平方向外側端部よりも所定の長さ(所定の量)だけはみ出して配置されている。
【0043】
第3工程では、図5Cに示されるように、ボルト挿通孔58と建物上下方向に沿って重なる位置に孔としての孔部92が形成される。具体的には、天端部56Cに配置された第3床断熱材82の建物上方側のボルト挿通孔58と建物上下方向に沿って重なる位置から、例えば、キリ等の先端が鋭利に形成された工具94を用いて第3床断熱材82を突くことによって、孔部92が形成される。ここで、繊維系断熱材の第3床断熱材82は容易に変形させることができるため、孔部92は、建物上方側からアンカーボルト48の挿通する位置が確認できる程度にボルト挿通孔58よりも小さな孔が形成されている。
【0044】
第4工程では、図5Dに示されるように、予め下フランジ42にアンカーボルト48が締結された躯体フレーム20が、独立基礎56に据付けられる。具体的には、第3床断熱材82に形成された孔部92を基準にして下フランジ42にアンカーボルト48が締結された独立基礎上梁部66が建物上方側から独立基礎56に緊結される。これにより、躯体フレーム20を独立基礎56に固定することができる。さらに、独立基礎56に設置された躯体フレーム20に、床大梁断熱材86、床小梁断熱材88及び梁間断熱材90が配置されると共に立上側面部56B1に、第1床断熱材84が配置されること(いずれも図示省略)により、建物の床断熱構造10が構成される。
【0045】
なお、図4で示されるように外柱22に接合された妻側の床大梁34A、34Bの下フランジ42と独立基礎56の天端部56Cとの間に形成された隙間空間部62には、外柱22が独立基礎56に設置されてから、隙間空間部62に第3床断熱材82が配置される。
【0046】
本実施形態に係る建物の床断熱構造10によれば、建物の床断熱構造10は、独立基礎上梁部66の下フランジ42と床下空間54との間を遮断する第3床断熱材82と立上側面部56B1の全面を覆う第1床断熱材84を含んで構成されている。このため、独立基礎上梁部66と床下空間54との間に独立基礎56を介した熱伝達が発生することを防止又は抑制することができる。さらに、溝部の内側となる上フランジ46及びウェブ45の第1床断熱材84側の表面を覆うように第2床断熱材86が設けられている。このため、独立基礎56及び独立基礎上梁部66と独立基礎上梁部66の建物上方側に配設される床部70との間に熱伝達が発生することを包括的に防止又は抑制することができる。これにより、独立基礎56を介した熱橋を適切に遮断することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る建物の床断熱構造10によれば、第3床断熱材82を構成する繊維系断熱材は容易に変形させることができるため、下フランジ42と天端部56Cに密着させた状態で隙間空間部62に第3床断熱材82を配置させることができる。このため、床大梁34と床下空間54との間及び独立基礎56の天端部56Cと床大梁34との間をより効果的に断熱することができる。さらに、第1床断熱材84を構成する発泡プラスチック系断熱材は形状を安定させることができるため、独立基礎56の立上部56Bの立上側面部56B1を第1床断熱材84により安定して覆うことができる。このため、立上部56Bの側面と床下空間54との間をより効果的に断熱することができる。これにより、独立基礎56を介した熱橋をより適切に遮断することができる。
【0048】
さらに、本実施形態に係る建物の床断熱構造10によれば、床大梁34の表面には、グラスウールにより構成された床大梁断熱材86が配置されている。グラスウールのような繊維系断熱材は容易に変形させることができるため、床大梁断熱材86を床大梁34に密着するように取り付けることができる。また、床小梁38の表面には、グラスウールにより構成された床小梁断熱材88が配置されており、床小梁断熱材88を床小梁38に密着するように取り付けることができる。さらに、床大梁34Aの間には、梁間断熱材90が配置されている。このため、独立基礎56及び独立基礎上梁部66と独立基礎上梁部66の建物上方側に配設される床部70との間に熱伝達が発生することをより包括的に防止又は抑制することができる。これにより、独立基礎56を介した熱橋をより適切に遮断することができる。
【0049】
本実施形態に係る床断熱構造10を有する建物12の施工方法によれば、第2工程により天端部56Cの全面を覆うように配置された繊維系断熱材は、容易に加工することができる。このため、第3工程において繊維系断熱材に孔92を容易に形成することができると共に第4工程においてアンカーボルト48とボルト挿通孔58との位置合わせを容易にすることができる。また、天端部56Cの全面を覆うように配置された繊維系断熱材により、天端部56Cと独立基礎上梁部66との間に熱伝達が発生することをより適切に防止又は抑制できる。これにより、独立基礎56を介した熱橋をより適切に遮断する建物の床断熱構造10を簡易に構成することができる。
【0050】
以上を総括すると、本実施形態に係る建物の床断熱構造10及び床断熱構造10を有する建物12の施工方法により独立基礎56を介した熱橋を適切に遮断することができる。
【0051】
(第1実施形態の第1変形例)
次に、図6を用いて、本実施形態の第1変形例について説明する。なお、前述した本実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0052】
本変形例に係る建物の床断熱構造110は、独立基礎延在部56Eの建物上方側に配置された建物ユニット14A、14Bの桁側の床大梁34Aのうち、一方の桁側の床大梁34Aだけがアンカーボルト48により固定されている。
【0053】
本変形例によれば、第3床断熱材82を構成する繊維系断熱材は容易に変形させることができるため、アンカーボルト48の有無に関係なく下フランジ42と天端部56Cに密着させた状態で隙間空間部62に第3床断熱材82を配置させることができる。このため、第3床断熱材82により隙間空間部62を介して独立基礎上梁部66の下フランジ42と床下空間54との間に熱伝達が発生することを防止又は抑制できる。また、第1床断熱材84により独立基礎56の立上部56Bの立上側面部56B1と床下空間54との直接接触が防止されるため、独立基礎56と床下空間54との熱伝達が発生することを防止又は抑制できる。これにより、独立基礎56を介した熱橋をより適切に遮断することができる。
【0054】
(第1実施形態の第2変形例)
次に、図7を用いて、本実施形態の第2変形例について説明する。なお、前述した本実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0055】
本変形例に係る建物の床断熱構造120は、一方の天端部56Cの縁部56C1側(図中右側)には、第1床断熱材84と第2床断熱材86に上下に挟まれるように繊維系断熱材の第3床断熱材82が配置されている、これにより、下フランジ42と床下空間54との間が遮断されている。また、他方の天端部56Cの縁部56C1側(図中左側)には、第1床断熱材84を構成する発泡プラスチック系断熱材が第2床断熱材86の下端まで延在されて第3床断熱材82が形成されている。これにより、下フランジ42と床下空間54との間が遮断されている。
【0056】
本変形例によれば、第1床断熱材84を構成する発泡プラスチック系断熱材は形状を安定させることができるため、第1床断熱材84は、隙間空間部62と床下空間54との間を安定して遮断することができる。このため、隙間空間部62を介して独立基礎上梁部66と床下空間54との間に熱伝達が発生することを防止又は抑制できる。これにより、独立基礎56を介した熱橋をより適切に遮断することができる。
【0057】
(第1実施形態の第3変形例)
次に、図8を用いて、本実施形態の第3変形例について説明する。なお、前述した本実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0058】
本変形例に係る建物の床断熱構造130は、独立基礎56の立上部56Bの立上側面部56B1に配置された第1床断熱材84が、土間コンクリート68かつ地面SEの建物下方側の立上部56Bの下端部56B2まで延在されている。
【0059】
本変形例によれば、立上部56Bの立上側面部56B1の全面が第1床断熱材84により覆われるため、立上部56Bの立上側面部56B1の断熱効果をより向上させることができる。このため、独立基礎56と床下空間54との間をより効果的に断熱することができる。これにより、独立基礎56を介した熱橋をより適切に遮断することができる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、図9を用いて、第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0061】
本実施形態に係る建物の床断熱構造210によれば、天端部56Cに沿って配置された第3床断熱材82を構成する繊維系断熱材は、独立基礎56の立上部56Bの立上側面部56B1に沿って土間コンクリート68(図示省略)まで延在されている。このため、延在された繊維系断熱材により、第1床断熱材84が形成されている。これにより、独立基礎56の天端部56C及び立上部56Bの立上側面部56B1の地盤G上の部分は第1床断熱材84及び第3床断熱材82を構成する繊維系断熱材により一体的に覆われている。
【0062】
本実施形態によれば、建物の床断熱構造210は、第3床断熱材82と第1床断熱材84を一体で形成する繊維系断熱材により独立基礎56が全体的に覆われることにより、独立基礎56及び隙間空間部62を介して独立基礎上梁部66と床下空間54との間に熱伝達が発生することを防止又は抑制できる。これにより、独立基礎56を介した熱橋をより適切に遮断することができる。
【0063】
(第3実施形態)
次に、図10を用いて、第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0064】
本実施形態に係る建物の床断熱構造310によれば、天端部56Cの縁部56C1側には、第1床断熱材84を構成する発泡プラスチック系断熱材が第2床断熱材86の下端まで延在されて第3床断熱材82が形成されている。これにより、下フランジ42と床下空間54との間が遮断されている。
【0065】
本実施形態によれば、第1床断熱材84を構成する発泡プラスチック系断熱材は形状を安定させることができるため、第1床断熱材84は、隙間空間部62と床下空間54との間を安定して遮断することができる。このため、独立基礎56及び隙間空間部62を介して独立基礎上梁部66と床下空間54との間に熱伝達が発生することを防止又は抑制できる。これにより、独立基礎56を介した熱橋をより適切に遮断することができる。
【0066】
(第3実施形態の第1変形例)
次に、図11を用いて、本実施形態の第1変形例について説明する。なお、前述した本実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0067】
本変形例に係る建物の床断熱構造320は、独立基礎延在部56Eの建物上方側に配置された建物ユニット14A、14Bの桁側の独立基礎上梁部66は、天端部56Cに配置されたプレート部96の上面に設置されている。
【0068】
本変形例によれば、アンカーボルト48の有無に関係なく、第1床断熱材84は、隙間空間部62と床下空間54との間を安定して遮断することができる。このため、独立基礎56及び隙間空間部62を介して独立基礎上梁部66と床下空間54との間に熱伝達が発生することを防止又は抑制できる。これにより、独立基礎56を介した熱橋をより適切に遮断することができる。
【符号の説明】
【0069】
10 建物の床断熱構造
12 建物
20 躯体フレーム
22 外柱
34 床大梁
36 床フレーム
38 床小梁
42 下フランジ
45 ウェブ
46 上フランジ
48 アンカーボルト
54 床下空間
56 独立基礎
56B 立上部
56B1 立上側面部
56C 天端部
56C1 縁部
58 ボルト挿通孔
62 隙間空間部
66 独立基礎上梁部
82 第3床断熱材
84 第1床断熱材
86 床大梁断熱材(第2床断熱材)
92 孔部(孔)
G 床下地盤(地盤)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10
図11