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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】薬液含浸シート
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20221115BHJP
   A61L 101/34 20060101ALN20221115BHJP
【FI】
A61L2/18
A61L101:34
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018199748
(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公開番号】P2020065676
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591236024
【氏名又は名称】リバテープ製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 宏一
(72)【発明者】
【氏名】力武 史朗
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-031144(JP,A)
【文献】特開2017-176559(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0017840(US,A1)
【文献】特表2005-507349(JP,A)
【文献】特開2004-224362(JP,A)
【文献】特開2018-076109(JP,A)
【文献】特開2004-359331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L2/00-2/28
A61L11/00-12/14
A61M25/00-99/00
B65D57/00-85/88
A47K7/00-7/08
A61F2/82-2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液を含浸させて、複数枚を重ねて包装材内に収容して密閉されたシートを備え、
前記シートは、少なくとも一部が他のいずれのシートとも重なり合っていない部分を有するように重ねられて前記包装材内に収容され、
前記包装材内において隣接する2枚の前記シートは、大きさが異なっているか又は少なくとも1つの辺同士が平行にずれるように重ねられ、
前記包装材は、重ね合わせた包装材シートの2つの面の外縁をシールした密閉平袋であり、易開封部を有し、外縁を挟んで前記2つの面の両方に跨がる部分を残りの部分から切り離すことで、収容された前記シートの側方側に開封部が形成される、薬液含浸シート。
【請求項2】
前記開封口は第1の方向に延び、
隣接する2枚の前記シートは、前記第1の方向と交差する方向に延びる辺を有し、
前記第1の方向と交差する方向に延びる辺同士は、平行にずれている、請求項1に記載の薬液含浸シート。
【請求項3】
前記包装材を開封した場合に、隣接する2枚の前記シートは、前記重なり合っていない部分を含む一部が前記開封口から突出している、請求項1又は2に記載の薬液含浸シート。
【請求項4】
前記包装材内において、隣接する2枚の前記シートは、1方向にのみ平行にずらして重ねられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬液含浸シート。
【請求項5】
前記包装材は手指で切断可能である、請求項1~4のいずれか1項に記載の薬液含浸シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬液含浸シート包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場においては頻繁に消毒の操作が行われる。消毒にはアルコール綿と呼ばれる脱脂綿等のシートに消毒用アルコールを含浸させたものが用いられる。アルコール綿は病院等において作成されていたが、近年では安全性や効率の観点から市販のアルコール綿の使用も進んでいる。
【0003】
穿刺を行う場合、アルコール綿を2枚用いる場合がある。例えば、透析の際に動脈側の穿刺部位と静脈側の穿刺部位のそれぞれを消毒するために2枚のアルコール綿を用いたり、1枚で動脈側、もう1枚で静脈側穿刺部位並びにその周囲を消毒したりする。
【0004】
このような2枚のアルコール綿を使用する用途のために、周縁が重なりあった状態の2枚のアルコール綿を1つの袋に収容したものがある。また、開封する際にアルコール綿を2つに分割できるようにすることも検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-359331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、2枚のアルコール綿を重ねて1つの包装材に収容した場合、1枚ずつ取り出すことが困難であるという問題がある。重ねられたアルコール綿は包装材中において密着しているため、1枚ずつ取り出すことはピンセット等を用いたとしても集中力を要し、手間が掛かる、煩雑な作業の1つである。
【0007】
2枚のアルコール綿を、重ねずに1つの包装材に収容したり、開封時に分割できるようにしたりした場合には、取り出しやすさは向上するが、袋が大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
このような問題はアルコール綿に限らず、アルコール以外の消毒液を含浸させた消毒用シートや、消毒液以外の薬液を含浸させた薬液含浸シートにおいても生じ得る。また、1つの袋に2枚のシートが収容されている場合だけでなく、3枚以上のシートが収容されている場合にも生じ得る。
【0009】
本開示の課題は、包装材内に重ねて収容された薬液含浸シートを1枚ずつ取り出すことが容易な薬液含浸シート包装体を実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の薬液含浸シート包装体の一態様は、重ねられた、薬液を含浸させた複数枚の薬液含浸シートと、薬液含浸シートを収容する包装材とを備え、包装材内において、重ねられて互いに接する薬液含浸シートは、端部同士が重なり合わないように配置されている。薬液含浸シート包装体の一態様によれば、薬液含浸シートの端部同士が重なり合っていないため、薬液含浸シートを容易に1枚ずつ取り出すことができる。
【0011】
薬液含浸シート包装体の一態様において、包装材内において、重ねられて互いに接する薬液含浸シートは、1方向にのみ平行にずらして重ねられているようにすることができる。このような構成とすることにより、包装体を大きくすることなく、取り出しやすさを向上することができる。
【0012】
この場合において、包装材は、一の辺に沿った方向に切断して開封可能であり、重ねられて互いに接する薬液含浸シートは、ずれて配置されている辺が、包装材の一の辺と交差するように包装材内に収容されていてもよい。このような構成とすることにより、包装体の開口部において1枚の薬液含浸シートをつまむことが容易となる。
【0013】
薬液含浸シート包装体の一態様において、包装材は手指で切断可能な密閉平袋状である。このような構成とすることにより、袋の上から重ねられた薬液含浸シートを指で押さえることができ、開口部から薬液含浸シートを1枚ずつ取り出すことが容易となる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の薬液含浸シート包装体によれば、薬液含浸シートを1枚ずつ取り出すことが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る薬液含浸シート包装体を示す平面図である。
図2】一実施形態に係る薬液含浸シート包装体を開封した状態示す斜視図である。
図3】薬液含浸シートの包装材内における配置の変形例を示す斜視図である。
図4】薬液含浸シートの包装材内における配置の変形例を示す斜視図である。
図5】薬液含浸シートの包装材内における配置の変形例を示す斜視図である。
図6】薬液含浸シートの包装材内における配置の変形例を示す斜視図である。
図7】薬液含浸シートの包装材内における配置の変形例を示す斜視図である。
図8】薬液含浸シート包装体の第1変形例を示す平面図である。
図9】薬液含浸シート包装体の第2変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施形態の薬液含浸シート包装体100は、包装材101内に、2枚の薬液含浸シート102(102A及び102B)が収容されている。薬液含浸シート102は、例えば消毒用アルコールを含浸させた不織布シートとすることができる。包装材101は、例えば、長方形の2枚のシートそれぞれの四辺どうしが固定された平袋状とすることができ、例えば紙製や樹脂製の密閉された袋とすることができる。
【0017】
包装材101内において、2枚の薬液含浸シート102は、端部が重なり合わないようにずらして配置されている。2枚の薬液含浸シート102の端部が重なり合っていないため、2枚の薬液含浸シート102の一方のみをつまんで包装材101から取り出すことが容易となる。
【0018】
図1及び図2において、薬液含浸シート102Aと薬液含浸シート102Bとは、1方向にのみ平行にずらして重ねられている。このため、薬液含浸シート102Aと薬液含浸シート102Bとは、それぞれの4つの辺のうちの、対向する2つの辺が互いに重なり合わず、平行にずれた位置となり、残りの2つの辺は重なりあっている。このように2つの辺がずれた位置となり、2つの辺が重なり合うように配置すれば、4つの辺の位置がずれている場合と比べて収容面積を抑えつつ、取り出しを容易にすることができる。また、複数枚のシートを平行にずらした状態で重ねあわせ、カットすることにより製造可能であり、製造工程の複雑化を防ぎ、効率良く生産することも可能となる。
【0019】
薬液含浸シート102Aと薬液含浸シート102Bとのずらし幅tは、指又はピンセットによりつまみ易くするという観点からは好ましくは1mm、製造のし易さの観点からは好ましくは2mm以上、より好ましくは2.5mm以上であり、収容面積を小さく抑える観点から好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下である。
【0020】
図2に示すように、包装材101は、一の辺111に沿って切断し、一の辺111を含む部分を一の辺111を含まない部分112から切り離す等して開封することができる。この場合、薬液含浸シート102Aと薬液含浸シート102Bとの重なり合っておらず、ずれて配置されている辺が、包装材101の切り離す辺111と交差するように包装材101内に収容することができる。このようにすれば、包装材101を開封した際に、薬液含浸シート102Aと薬液含浸シート102Bとのずれて配置されている辺が両側に位置する。
【0021】
このため、図2の例においては、一方の側端において薬液含浸シート102Aを包装材101の上からつまみ、他方の側端において薬液含浸シート102Bのみをつまむことにより、薬液含浸シート102Bのみを容易に取り出すことができる。
【0022】
但し、包装材101内における薬液含浸シート102の向きは自由に選択することができる。例えば、薬液含浸シート102Aと薬液含浸シート102Bとのずれて配置されている辺の一方のみが、開封した包装材101の開口部から露出するように収容することもできる。この場合にも、薬液含浸シート102Aと薬液含浸シート102Bとが重なり合っていない部分が開口部に現れるため、一方の薬液含浸シート102のみを比較的容易に取り出すことができる。
【0023】
薬液含浸シート102は、折り畳まれた状態で包装材101内に収容することもできる。例えば、図3に示すように、薬液含浸シート102Aと薬液含浸シート102Bとをそれぞれ2つ折りにして重ねることができる。薬液含浸シート102を折り畳むことにより、薬液含浸シート102を大きくしても、包装材101を小さく保つことができる。
【0024】
薬液含浸シート102を折り畳む場合、図3に示すように、折られている辺の位置を重なり合わないようにずらして重ねることが好ましい。但し、折られている辺の位置を揃え、折られている辺と交差する辺の方をずらして重ねることもできる。また、図4に示すように、薬液含浸シート102Aで薬液含浸シート102Bを挟むように配置することもできる。さらに、図5に示すように、薬液含浸シート102Aと薬液含浸シート102Bとが互いに相手を挟むように互い違いに配置することもできる。
【0025】
図3及び図4においては、薬液含浸シート102が2つ折りになっている例を示したが、折り畳みの回数は薬液含浸シート102の大きさと、包装材101の大きさに応じて適宜設定することができる。なお、一方の薬液含浸シート102だけを折り畳んだり、折り畳みの回数が異なる薬液含浸シート102を重ねたりすることもできる。
【0026】
本実施形態においては、2枚の薬液含浸シート102を1方向にだけ平行にずらして重ねている例を示した。しかし、図6に示すように、2枚の薬液含浸シートを2方向に平行にずらして重ねることもできる。この場合、薬液含浸シート102Aと薬液含浸シート102Bとは、4つの辺の位置がずれて重ねられる。また、平行にずらすのではなく角度を付けてずらすこともできる。なお、折り畳まれた薬液含浸シート102を用いる場合にも、2方向に平行にずらしたり、角度を付けてずらしたりすることができる。特に、図5に示すような配置の場合には、2方向に平行にずらすことにより、取り出しがさらに容易となる。
【0027】
図1図6には、同じ大きさの薬液含浸シート102をずらして重ねる例を示したが、大きさが異なる薬液含浸シート102を重ねることもできる。例えば、図7に示すように、薬液含浸シート102Aと、一方向の辺の長さが薬液含浸シート102Aよりも短い薬液含浸シート102Bとを重ねて配置することにより、辺がずれている部分を生じさせることができる。なお、2方向の辺の長さが異なる薬液含浸シート102を重ねることもできる。また、薬液含浸シート102を折り畳む場合にも、大きさを異ならせることができる。
【0028】
本実施形態においては、好適な例として、2枚の薬液含浸シート102を1つの包装材101内に収容する例を示したが、同様にして3枚以上の薬液含浸シート102を1つの包装材101内に収容することもできる。3枚以上の薬液含浸シート102を1つの包装材101内に収容する場合、重ねられて互いに接している2枚の薬液含浸シート102について端部の位置がずれていればよく、接していない薬液含浸シート102同士は端部の位置が重なり合っていてもよい。
【0029】
薬液含浸シート102の基材は、薬液を含浸させることができれば、どのようなものであってもよく、ガーゼ、脱脂綿及び不織布等とすることができる。中でも不織布が好ましい。薬液含浸シート102に含浸させる薬液は、特に限定されないが、エタノール又はイソプロパノール等のアルコール、アクリノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、ペルオキソ一硫酸水素カリウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ポピドンヨード、及びヨードチンキ等を有効成分とする消毒剤とすることができる。中でも、エタノール等の消毒用アルコールが好ましい。また、消毒剤以外の薬液とすることもできる。
【0030】
薬液含浸シート102の大きさは、特に限定されず、消毒用途において使いやすい大きさとすることができるが、2cm角~6cm角程度の大きさとすることができる。なお、本実施形態において薬液含浸シート102が正方形状である例を示したが、長方形状とすることもできる。また、薬液含浸シート102を折り畳んで包装材101に収容する場合は、折り畳んだ際にこの程度の大きさになるようにすることができる。
【0031】
包装材101は、薬液含浸シート102を収容することができればどのようなものであってもよいが、樹脂製の袋とすることができる。中でも、複数の樹脂材料が積層された樹脂ラミネートシートや、アルミニウム等からなる金属蒸着膜や金属薄膜等を含む複合ラミネートシート等により形成された袋は、薬液含浸シート102に含浸させた薬液が透過しにくく好ましい。
【0032】
包装材101は、特に限定されないが、密閉平袋状とすることができ、例えば、2つ折りにしたシートの3辺をシールする三方シール形式の袋や、2枚のシートの4辺をシールする四方シール形式の袋とすれば、形成が容易であり好ましい。意匠性を考慮し、平面視非矩形状としてもよい。
【0033】
密閉平袋状等の包装材101は手指で切断可能であることが好ましく、包装材101に易開封加工を施すことができる。例えば、図8に示す第1変形例のように、一の辺に沿って切断して開封しやすいように、一の辺と交差する辺の少なくとも一方をギザギザに加工することができる。易開封加工は、ギザギザに加工するだけでなく、ノッチ等を設けたり、表面に引き裂き用の弱化部等を設けたり、樹脂の配向を揃えたりする等の加工もできる。また、他の辺にも易開封加工を行うことができる。易開封加工を行う場合、包装材101が切断されることにより形成される開口部から、薬液含浸シート102の重なり合わない部分が露出するように易開封加工を行うことが好ましい。このようにすれば、開口部において1枚の薬液含浸シート102のみを容易につまむことができる。なお、本実施形態において薬液含浸シートを周縁の一部が重なり合わないようにできればよく、薬液含浸シート102の重なり合わない部分が開口部側に位置することが好ましい。形成但し、薬液含浸シート102の重なり合わない部分は露出しなくてもよい。
【0034】
包装材101には切断の方向を示す表示部113を設けることもできる。図1及び図2において、表示部113が矢印の印刷である例を示しているが、切断の方向を示すことができれば、どのような表示であってもよく、例えばOPEN等の文字を表示することもできる。表示部113は、切断の方向だけでなく、切断の位置も示すようにすることができる。但し、表示部113は設けなくてもよい。なお、図2には包装材101の開口部から薬液含浸シート102Bが開封された包装材101の外側に突出する位置で包装材101が切断されている例を示した。しかし、薬液含浸シート102Bが開封された包装材101内に収容される位置で包装材101が切断されるようにすることができる。このようにすれば、包装材101を切断する際に、薬液含浸シート102Bを誤って破るようなことを発生しにくくすることができる。
【0035】
包装材101は、第2変形例として、図9に示すような収容用の凹部が設けられたトレー101Aとシールフィルム101Bとからなるブリスターパックとすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本開示の薬液含浸シート包装体は、包装材内に重ねて収容された薬液含浸シートを1枚ずつ取り出すことが容易であり、消毒用のシート等として有用である。
【符号の説明】
【0037】
100 薬液含浸シート包装体
101 包装材
101A トレー
101B シールフィルム
102 薬液含浸シート
102A 薬液含浸シート
102B 薬液含浸シート
111 包装材の一の辺
112 一の辺を含まない部分
113 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9