(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】工程管理システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20221115BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20221115BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2018206300
(22)【出願日】2018-11-01
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】592147147
【氏名又は名称】株式会社キャズ・インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】川崎 和彦
(72)【発明者】
【氏名】伊東 文武
(72)【発明者】
【氏名】劉 鋭
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-129933(JP,A)
【文献】特開2017-183390(JP,A)
【文献】特開2015-102921(JP,A)
【文献】特開2015-009630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場における工程の管理及び記録を行う工程管理システムであって、
前記工場にて受け入れる製品の画像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段が撮影した画像を受け取ったことを契機に、前記画像に紐づけて受け入れる前記製品の製品識別番号を発行し、当該製品識別番号に紐づけて、前記工場における各工程での情報を記録する情報管理手段と、
を備え
、
前記工場における前記製品の処理の進捗に合わせて各工程での情報を前記情報管理手段に記録する通常モードと、
前記製品識別番号の発行後、前記製品の出荷より前の工程において前記製品の処理の進捗に合わせて各工程での情報を前記情報管理手段に記録することを要求せず、出荷時に記録される情報をもとに、前記製品の出荷より前の工程での情報を前記情報管理手段に記録するライトモードと、
を備えることを特徴とする工程管理システム。
【請求項2】
コンピュータを請求項
1における前記工程管理システムにおける情報管理手段として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき工場等での工程管理に適した工程管理システムおよびこれを実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な工業製品について、製品の受け入れから加工、出荷まで、工場で行われた各種の処理等を個々の製品ごとに記録・管理することが求められるようになっている。そして、このような記録・管理を漏れなく行うための工程管理システムが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、小規模なめっき工場に代表されるような小ロットの製品を極めて短納期で処理することが求められるような現場では、受け入れた製品について、各工程での記録・管理すらも大きなタイムロスとなる場合がある。このような現場には、厳密な記録・管理を行うことを原則とする従来の工程管理システムがなじまないことがあった。
【0004】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、柔軟な運用が可能な工程管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく、本発明に係る工程管理システムは、工場における工程の管理及び記録を行う工程管理システムであって、工場にて受け入れる製品の画像を撮影する撮影手段と、撮影手段が撮影した画像を受け取ったことを契機に、画像に紐づけて受け入れる製品の製品識別番号を発行し、当該製品識別番号に紐づけて、工場における各工程での情報を記録する情報管理手段と、を備える。
【0006】
本発明では、工程管理システムは、工場における製品の処理の進捗に合わせて各工程での情報を情報管理手段に記録する通常モードと、製品識別番号の発行後、製品の出荷より前の工程において製品の処理の進捗に合わせて各工程での情報を情報管理手段に記録することを要求せず、出荷時に記録される情報をもとに、製品の出荷より前の工程での情報を情報管理手段に記録するライトモードと、を備えるとよい。
【0007】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを上記の工程管理システムにおける情報管理手段として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】工程管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】通常モードの手順を示すフローチャートである。
【
図3】ライトモードの手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔システムの構成〕
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る工程管理システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、工程管理システム1は、ネットワークNを介して接続されたサーバ2及び端末装置3を備える。工程管理システム1内に端末装置3は複数設けられてもよい。ネットワークNはVPN等によりセキュアな通信を可能とする。
【0010】
サーバ2は、オンプレミスのサーバ装置として設けられてもよいし、ネットワークを介して提供されるいわゆるクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。何れの形態として実現されたとしても、サーバ2は、端末装置3を介して入力される管理対象である個々の製品Pについて受注情報、作業情報、品質管理情報、納品情報等を一元的に記録・管理する。
【0011】
受注情報は、例えば、製品Pを受け入れるタイミングで撮影する製品Pの写真、受入番号、受注番号、注文番号、取引先、図番、数量、納期、受注単価等を含むとよい。作業情報は、例えば、処理内容、作業開始日時、作業終了日時、作業依頼書等を含むとよい。品質管理情報は、例えば、検査結果や不具合に関する情報を含むとよい。納品情報は、例えば、納品日時、納品書、請求書、その他の伝票類等を含むとよい。
【0012】
端末装置3は、通信インタフェース、入出力装置、ディスプレイ、記憶媒体、CPU等を備えるコンピュータ端末であり、デスクトップ型、ノート型、タブレット型等のパーソナルコンピュータ、携帯情報端末などが用いられる。端末装置3は、工場における受入から出荷までの各工程に配置される。製品Pの画像を撮影する受入工程には、カメラを搭載したタブレット型の端末装置3を配置するとよい。端末装置3は、必要に応じてバーコードやQRコード(登録商標)を読み取るスキャナを備えるとよい。端末装置3は、記録・管理する情報に応じた入力画面を提供し、各入力画面に対し入力された内容を、ネットワークNを介してサーバ2に送信して記録させる。
【0013】
続いて、上記のように構成される工程管理システム1の動作について説明する。工程管理システム1は、通常モードとライトモード(簡易モード)とを備える。
【0014】
通常モードは、受入から出荷まで、工場内での製品の流れに沿って、個々の製品移管する各種の情報をサーバ2に記録していくモードである。この通常モードでは、製品がどの工程まで進んでいるかをリアルタイムで把握することができる。また、各工程でチェックをしながら正確な記録を残すことができる。
【0015】
一方、ライトモードは、工程中でのチェックを省くことで作業を簡略化し、出荷伝票を作成する時に入力される納品情報を作業情報、受注情報へフィードバックするモードである。ライトモードでは、納品情報を入力する時点で完全な履歴を持った個々の製品についての情報が記録されることになる。
【0016】
記録・管理を通常モードで行うかライトモードで行うかは、個々の製品ごとに選択することができる。例えば、極めて短納期の製品についてはライトモードを選択して記録・管理よりも出荷までの時間短縮を優先し、その他の製品については通常モードで正確でタイムリーな記録・管理を優先する、といった運用が可能となる。
【0017】
〔通常モード〕
図2に示すフローチャートを参照して、通常モードでの受入から出荷までの一連の流れの一例を説明する。
【0018】
通常モードでは、受入から出荷まで、工場内での製品の流れに沿って、個々の製品に関する各種の情報をサーバ2に記録する。初めに製品Pを受け入れる段階で、受入工程の端末装置3が搭載するカメラで製品Pを撮影し、その画像をサーバ2に登録する(ステップS100)。この段階で、画像に写る製品Pに対する製品IDが自動的に発行される。続いて、当該製品Pについての記録を通常モードで行うことを設定(選択)する(ステップS110)。
【0019】
続いて、受注受付窓口の端末装置3(受入工程の端末装置3と兼用でもよい)の受注情報を入力する画面にて、各種の受注情報(例えば、受注番号、納期、加工内容、数量、価格等)を入力する(ステップS120)。続いて、端末装置3から、作業依頼を発行する(ステップS130)。
【0020】
加工工程では、ステップS130で発行された作業依頼に基づいて、作業が行われる。その際、作業の開始時に端末装置3から製品Pに対する作業開始を記録し(ステップS140)、作業の終了時に端末装置3から製品Pに対する作業終了を記録する(ステップS150)。複数の加工工程を経る場合には、各工程で作業の開始と終了を記録する。このようにして記録した作業の開始や終了の情報を参照することで、製品Pに対する処理の進捗をリアルタイムで確認することができる。なお、ステップS140及びS150で開始・終了を記録する作業は、加工だけでなく検査等を含めてもよい。また、ステップS150においては、作業の終了だけでなく、作業時の各種の記録(例えば、検査結果、不具合情報等)を併せて記録してもよい。加工工程での作業が終了すると出荷窓口にて出荷・納品情報を入力し(ステップS160)、各種の伝票を発行する(ステップS170)。
【0021】
このように、通常モードでは、各工程で記録を行いながら製品Pの処理が行われるので、サーバ2に記録されている情報を参照することで製品Pに対する処理の進捗をリアルタイムで確認することができる。
【0022】
〔ライトモード〕
図3に示すフローチャートを参照して、ライトモードでの受入から出荷までの一連の流れの一例を説明する。
【0023】
ライトモードでは、工程中での逐次の記録が省かれる。初めに製品Pを受け入れる段階で、受入工程の端末装置3が搭載するカメラで製品Pを撮影し、その画像をサーバ2に登録する(ステップS200)。この段階で、画像に写る製品Pに対する製品IDが自動的に発行される。続いて、当該製品Pについての記録をライトモードで行うことを設定(選択)する(ステップS210)。
【0024】
続いて、受注情報の入力等を省いて、製品Pに対する加工工程での作業が行われる(ステップS220)。その際、作業の開始や終了についても端末装置3への入力が省かれる。加工工程での作業が終了すると、出荷窓口にて端末装置3により、出荷・納品情報が入力され(ステップS230)。このとき、入力される出荷・納品情報が、作業情報や受注情報へフィードバックされ、未入力であった作業情報や受注情報が、出荷・納品情報と整合する形で入力された状態となる(ステップS240)。出荷・納品情報の入力後、各種の伝票を発行する(ステップS250)。
【0025】
このように、ライトモードでは、受注や加工工程の段階での情報の記録を省略することで、製品Pを受け入れてから出荷するまでの時間を短縮することができる。また、各種の情報は出荷・納品情報を入力する際に自動的にフィードバックされて記録されるため、整合性のとれた記録を手間をかけずに残すことができる。
【0026】
以上のように構成される工程管理システム1では、製品Pの画像に対して自動的に製品IDが生成されるので、漏れやミスが生じることを防ぐことができる。また、製品IDに基づき加工情況の把握や過去の履歴を正確かつ迅速に確認することができる。特に通常モードで記録・管理されている製品Pについては、加工の進捗状況をリアルタイムで照会することが可能となる。また、ライドモードでは、短納期の製品に対しフレキシブルな記録・管理を提供できる。また、ライトモードでは、システム導入時のトレーニングをほとんどしなくとも使い始めることが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
1 工程管理システム
2 サーバ
3 端末装置
P 製品