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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】毛髪化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20221115BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20221115BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/19
A61K8/34
A61K8/41
A61K8/46
A61K8/49
A61K8/86
A61Q5/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017140408
(22)【出願日】2017-07-19
(65)【公開番号】P2019019097
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-05-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397021235
【氏名又は名称】株式会社サニープレイス
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】向井 信人
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-189745(JP,A)
【文献】特開2015-042624(JP,A)
【文献】特開2009-256277(JP,A)
【文献】特開2013-063948(JP,A)
【文献】特開2010-248152(JP,A)
【文献】特開2017-088502(JP,A)
【文献】特開2008-143829(JP,A)
【文献】特開2007-314498(JP,A)
【文献】特開2002-193761(JP,A)
【文献】特開2002-114653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 5/00-12
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤と、アミノ酸と、炭素数が12~22の高級アルコール類と、界面活性剤と、増粘剤とを含有する毛髪化粧料組成物(但し、染料を除く。)であって、前記毛髪化粧料組成物は、ヘアカラー処理前に毛髪に適用するためのものであり、前記アルカリ剤は、25%アンモニア水であり、前記アルカリ剤の量は、組成物の合計量に対して1~3質量%であり、前記アミノ酸は、L-システイン又はその塩類を含み、前記高級アルコール類は、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールから選択され、前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ラウリル硫酸ナトリウム、塩化セチルトリメチルアンモニウムから選択され、かつ、前記毛髪化粧料組成物のpH値は、8.5~11.5であることを特徴とする、毛髪化粧料組成物。
【請求項2】
前記L-システイン又はその塩類以外のアミノ酸は、L-アルギニン、L-リシン、L-ヒスチジン、又はそれらの塩類から選択される少なくとも1種である請求項1記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の毛髪化粧料組成物を含む毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料組成物及び当該毛髪化粧料組成物を含む毛髪化粧料に関し、特に、皮膚障害を低減可能であり、色もち及び浸透染着力(染着しにくいもみあげ部分までしっかり染着)に優れる毛髪化粧料組成物及び当該毛髪化粧料組成物を含む毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアカラーリングとして、主として、医薬部外品の永久染毛料であるヘアカラーと、化粧品の半永久染毛料であるヘアマニキュアやヘアカラートリートメント等がある。特に、永久染毛料のヘアカラーにはパラフェニレンジアミン(酸化染料)という物質が含まれるものが主流となっているが、黒色系の濃色の場合はジアミン系化合物の配合量が多くなるので更に注意が必要となっている。
【0003】
例えば、パラフェニレンジアミン(酸化染料)を含むヘアカラーリング組成物として、(a)水溶性過酸素ブリーチ;(b)有機ペルオキシ酸ブリーチ前駆体及び/又は予め形成された有機ペルオキシ酸から選択されたブリーチング助剤;並びに、(c)1以上のヘアカラーリング剤を含むことを特徴とするヘアカラーリング組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表平11-501947
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1も含め、従来技術においては、パラフェニレンジアミン(酸化染料)を含むものは、上述のように黒色系の濃色の場合はジアミン系化合物の配合量が多くなるので更に注意が必要となっている以外に、近年、パラフェニレンジアミン(酸化染料)という物質が原因で皮膚障害が報告されている。
【0006】
また、半永久染毛料のヘアマニキュアは1回の使用で色素(酸性染料)が髪の内部まで浸透し2~3週間の色持ちが特徴であるが、頭皮に付着し放置時間が長くなれば長くなるほど染まった色素が取れにくくなり、施術する側では生え際ギリギリまで塗布するのが難しく、施術者の技量の割にはヘアカラーに比べて染まりが悪いためサロンや美容室では敬遠されがちな染毛料となっている。
【0007】
一方で、上述のヘアカラーでは、コルテックス(毛皮質。毛髪の内部)までしっかり染めることができるが、ヘアカラートリートメントでは、キューティクル(毛小皮)及び毛髪表面近くのコルテックスを染めるもので、十分に色もちが良いヘアカラーを達成できない場合もあった。
【0008】
そこで、本発明は、毛髪染料を行う上で、より色もちが良い毛髪化粧料組成物及び毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者らは、ヘアカラートリートメントの前後の処理について鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。
【0010】
すなわち、本発明の毛髪化粧料組成物は、アルカリ剤と、アミノ酸と、炭素数が12~22の高級アルコール類と、界面活性剤と、増粘剤とを含有する毛髪化粧料組成物(但し、染料を除く。)であって、前記毛髪化粧料組成物は、ヘアカラー処理前に毛髪に適用するためのものであり、前記アルカリ剤は、25%アンモニア水であり、前記アルカリ剤の量は、組成物の合計量に対して1~3質量%であり、前記アミノ酸は、L-システイン又はその塩類を含み、前記高級アルコール類は、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールから選択され、前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ラウリル硫酸ナトリウム、塩化セチルトリメチルアンモニウムから選択され、かつ、前記毛髪化粧料組成物のpH値は、8.5~11.5であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記L-システイン又はその塩類以外のアミノ酸は、L-アルギニン、L-リシン、L-ヒスチジン、又はそれらの塩類から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の毛髪化粧料は、本発明の毛髪化粧料組成物を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の毛髪化粧料組成物によれば、パラフェニレンジアミンを含まず、かぶれで困っている方や接触性皮膚炎を心配される方などに適し、かつ高齢化でヘアカラーの使用期間が長くなる可能性を秘めているため安心して使える色持ちの良く、また施術する側でも安心して頭皮への付着を気にせず新生部まで塗布出来るヘアカラー製品を提供することが可能であるという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の毛髪化粧料組成物は、アルカリ剤と、アミノ酸と、炭素数が12~22の高級アルコール類と、界面活性剤と、増粘剤とを含有することを特徴とする。本発明の毛髪化粧料組成物(塩基性キューティクル膨潤剤)において、当該毛髪化粧料中に含まれるアルカリ剤がキューティクルを開くことが可能である。すなわち、ヘアカラートリートメント等では、キューティクル(毛小皮)及び毛髪表面近くのコルテックスを染めるもので、十分に色もちが良いヘアカラーを達成できない場合もあったが、本発明の毛髪化粧料組成物を適用すると、キューティクルを開くことが可能であり、ひいては、色もちが良いヘアカラーを達成し得るという有利な効果を奏するものである。
【0018】
すなわち、本来であれば塩基性染料やHC染料はキューティクル及び表面近くのコルテックスを染めるが、本発明の毛髪化粧料組成物(膨潤剤)を使うことによって、毛髪のより深い部分まで塩基性染料及びHC染料で染めることが可能となることが本発明者らにより判明したものである。
【0019】
アルカリ剤の量としては、特に限定されないが、キューティクルを効率よく開き、膨潤効果を良好に発揮し得るという観点から、本発明の毛髪化粧料組成物のpH値としては、好ましくは、7.0~11.5、より好ましくは、pH8.5~11.5、さらに好ましくは、pH9.0~9.7に調整することができる。アルカリ剤の量としては、特に限定されないが、キューティクルを効率よく開き、膨潤効果を良好に発揮し得るという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、1~3質量%とすることができる。
【0020】
また、アミノ酸の量としては、特に限定されないが、毛髪の保湿及び柔軟性を保つという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.01~0.5質量%、より好ましくは、0.01~0.3質量%、さらに好ましくは0.02~0.2質量%とすることができる。
【0021】
本発明の毛髪化粧料組成物において、炭素数が12~22の高級アルコール類としては特に限定されないが、毛髪に滑らかさを付与、乳化安定性の向上及び粘度調整という観点から、例えば、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等を挙げることができる。
【0022】
また、炭素数が12~22の高級アルコール類の量としては、特に限定されないが、毛髪に滑らかさを付与、乳化安定性の向上及び粘度調整という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.1~5.0質量%、より好ましくは、0.1~3.0質量%、さらに好ましくは0.2~2.0質量%とすることができる。
【0023】
本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記アルカリ剤は、特に限定されないが、例えば、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、エタノールアミン類、炭酸水素アンモニウム、アルギニンから選択される少なくとも1種を挙げることができる。また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記エタノールアミン類は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及び/又はトリエタノールアミンであることを特徴とする。モノエタノールアミン等のエタノールアミン類は不揮発性のため臭いは少ないが、毛髪への残留が高く毛髪を痛める虞がある。また、アルギニンは毛髪との親和性が高いがアルカリ剤としての作用としては弱く反応が穏やかである。アンモニア水は揮発性のため刺激臭はあるが、毛髪への残留が少なく反応が早い点特徴である。かかる観点から、アルカリ剤としては、好ましくは、アンモニア水を挙げることができる。
【0024】
また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記アミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、及び/又はヒスチジンから選択される少なくとも1種を挙げることができる。加齢に伴い毛髪内部のアルギニンやヒスチジンが低下することが報告されているが、本発明においては、本発明の毛髪化粧料組成物(膨潤剤)に配合されているアルギニンやヒスチジン塩酸塩、リシン塩酸塩が毛髪に浸透して毛髪補修効果を発揮することが可能である。
【0025】
本発明の毛髪化粧料組成物においては、界面活性剤と、増粘剤とを含有することができる。これら界面活性剤と、増粘剤について、本発明の効果を逸脱しない限り、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0026】
また、本発明の毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記毛髪化粧料組成物は、ヘアカラー処理前に毛髪に適用するためのものであることを特徴とする。すなわち、本発明の毛髪化粧料組成物(塩基性キューティクル膨潤剤)において、当該毛髪化粧料組成物中に含まれるアルカリ剤がキューティクルを開くことが可能である。すなわち、ヘアカラートリートメント等では、キューティクル(毛小皮)及び毛髪表面近くのコルテックスを染めるもので、十分に色もちが良いヘアカラーを達成できない場合もあったが、本発明の毛髪化粧料組成物を適用すると、キューティクルを開くことが可能であり、ひいては、色もちが良いヘアカラーを達成し得るという有利な効果を奏するものである。この効果は、ヘアカラー処理前に本発明の毛髪処理剤を適用することにより、より発揮させることができる。
【0027】
なお、本発明の毛髪化粧料組成物を適用して、ヘアカラー処理を行った後、キューティクルを引き締めるために、例えば、臭素酸ナトリウムを含むキューティ引き締め剤を適用することも可能である。
【0028】
また、本発明の毛髪化粧料は、上述の本発明の毛髪化粧料組成物を含むことを特徴とする。
【実施例
【0029】
以下では本発明の一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0030】
実施例1~3
アルカリ剤に関しては、アンモニア水・炭酸アンモニウム・炭酸ナトリウム・モノやジ、トリエタノールアミンといったエタノールアミン類・炭酸水素アンモニウム・アルギニン等が考えられる。しかしながらモノエタノールアミン等のエタノールアミン類は不揮発性のため臭いは少ないが、毛髪への残留が高く毛髪を痛める虞がある。また、アルギニンは毛髪との親和性が高いがアルカリ剤としての作用としては弱く反応が穏やかである。アンモニア水は揮発性のため刺激臭はあるが、毛髪への残留が少なく反応が早い性質を有する。そこで、本実施例においては、アルカリ剤として、アンモニア水を一例として、濃度を変えて試験を行った。
【0031】
また、人の毛髪の約80%はアミノ酸由来のケラチンタンパク質により構成され、L-システインはその毛髪にも多く含まれるアミノ酸であり、L-システインおよびその塩類は毛髪の保湿および柔軟性を保たせる目的で配合を試みた。代表的な塩基性アミノ酸としてL-アルギニン,L-リシン,L-ヒスチジンがあるが、これらは損傷すると流出することが知られており、塩基性アミノ酸およびその塩類を0.01~0.5質量%が好ましいことが判明した。
【0032】
表1は本発明の一実施態様における一例の毛髪化粧料組成物の成分を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
表2は、本発明の一実施態様における一例の毛髪化粧料組成物の調整方法を示す。調整方法は以下の通りである。
【0036】
調整方法:
1.表2のA相の精製水にアミノ酸群を溶解確認後、アルカリ剤を均一に混合する。2.次いで、表2のA相を撹拌しながら表2のB相を加えて均一に混合する。3.適度に撹拌しながら表2のC相を加え、均一になるまで撹拌する。
【0037】
なお、pH測定には以下の機種および電極を用いた。
pHメーターの機種:F-52((株)堀場製作所)
pHメーターの電極:形式9611((株)堀場製作所)
【0038】
また、表3は、用いた各成分の詳細を示す。
【0039】
【表3】
【0040】
以上の結果から、高級アルコールは炭素数が12~22のものが好ましく、毛髪に滑らかさの付与、乳化安定性の向上、および粘度調整のために含有することができる。また、25%アンモニア水は1~3質量%のものが好ましいが、使用感および反応の速さ、また手に対する刺激、頭皮への負担を考えると25%アンモニア水の2.0質量%配合が最適であることが判明した。
【0041】
また、実際に、本発明の毛髪化粧料組成物を用いて前処理を行った。すなわち、ヘアカラー処理前に、本発明の毛髪化粧料組成物を含む毛髪化粧料(塩基性キューティクル膨潤剤)を塗布して放置すると、膨潤剤内のアルカリ剤がキューティクルを開き、かつ、膨潤剤に配合されているアルギニンやヒスチジン塩酸塩、リシン塩酸塩が浸透して毛髪補修効果を発揮することが判明した。
【0042】
このように、本発明においては、毛髪染料を行う上で、従来のヘアカラー及びヘアマニキュアと比較し、1)染色を繰り返すことで毛髪が傷んでいる方は毛髪強度が低下し、弾力が無くなり、毛髪が細化する(ヘアカラー)、2)頭皮のかぶれが発生しているとかぶれ部分が染色してかなり取れにくい(ヘアマニキュア)といった上記1)及び2)の問題が無く、より色持ちと浸透染着力が良い毛髪化粧料を提供することが判明した。すなわち、本発明においては、色持ち以外にヘアカラーと併用すれと、安全性も備わっていることも判明した。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によると、色もちがよくなかったヘアカラー処理に対して、色もちを改善することが可能であり、広範囲において、産業上利用価値が高い。