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特許7176714電磁波吸収粉末、電磁波吸収組成物、電磁波吸収体および塗料
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  • 特許-電磁波吸収粉末、電磁波吸収組成物、電磁波吸収体および塗料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】電磁波吸収粉末、電磁波吸収組成物、電磁波吸収体および塗料
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20221115BHJP
   C01F 17/20 20200101ALI20221115BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20221115BHJP
   C09D 5/32 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H05K9/00 M
C01F17/20
B22F1/00 W
C09D5/32
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017241539
(22)【出願日】2017-12-18
(65)【公開番号】P2019110181
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-10-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月18日に28th Rare Earth Research Conference概要集にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月18日~22日に開催された28th Rare Earth Research Conferenceにて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月23日に日本金属学会講演概要集にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月6日~8日に開催された日本金属学会2017年秋期講演大会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月26日に資源・素材&EARTH大会プログラム・要旨集にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月26日~28日に開催された資源・素材&EARTH2017にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】504193837
【氏名又は名称】国立大学法人室蘭工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】平井 伸治
(72)【発明者】
【氏名】中村 英次
(72)【発明者】
【氏名】久保田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】日高 貴志夫
【審査官】菊地 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-258322(JP,A)
【文献】特開2005-005286(JP,A)
【文献】国際公開第2004/085339(WO,A1)
【文献】特開2001-335367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
C01F 17/20
B22F 1/00
C09D 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素、硫黄元素および酸素元素を含有し、
X線回折スペクトルが希土類硫化物のピークを示し、
前記酸素元素の含有量が、0.10質量%以上0.61質量%以下である、電磁波吸収粉末。
【請求項2】
前記希土類元素が、軽希土類元素である、請求項1に記載の電磁波吸収粉末。
【請求項3】
前記希土類元素が、ランタン、セリウムおよびプラセオジムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の電磁波吸収粉末。
【請求項4】
少なくとも0.05~20GHzの周波数帯域において電磁波吸収特性を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の電磁波吸収粉末。
【請求項5】
平均粒径が、0.1~10μmである、請求項1~のいずれか1項に記載の電磁波吸収粉末。
【請求項6】
少なくとも0.05~20GHzの周波数帯域において、複素誘電率の虚数部の比誘電率が3.0以上かつ誘電正接が0.4以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の電磁波吸収粉末。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の電磁波吸収粉末と、バインダ樹脂と、を含有する電磁波吸収組成物。
【請求項8】
更に、鉄粉を含有する、請求項に記載の電磁波吸収組成物。
【請求項9】
前記鉄粉の含有量が、前記電磁波吸収粉末100質量部に対して、10~80質量部である、請求項に記載の電磁波吸収組成物。
【請求項10】
請求項のいずれか1項に記載の電磁波吸収組成物を用いて形成された電磁波吸収体。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載の電磁波吸収粉末を含有する塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波吸収粉末、電磁波吸収組成物、電磁波吸収体および塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁波吸収特性を示す電磁波吸収粉末が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-84577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な電磁波吸収粉末を提供することを目的とする。
更に、本発明は、上記電磁波吸収粉末を用いた電磁波吸収組成物、電磁波吸収体および塗料を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を採用することにより、上記目的が達成されることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[12]を提供する。
[1]希土類元素、硫黄元素および酸素元素を含有し、X線回折スペクトルが希土類硫化物のピークを示す、電磁波吸収粉末。
[2]上記希土類元素が、軽希土類元素である、上記[1]に記載の電磁波吸収粉末。
[3]上記希土類元素が、ランタン、セリウムおよびプラセオジムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]または[2]に記載の電磁波吸収粉末。
[4]少なくとも0.05~20GHzの周波数帯域において電磁波吸収特性を有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の電磁波吸収粉末。
[5]上記酸素元素の含有量が、0.10~2.00質量%である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の電磁波吸収粉末。
[6]平均粒径が、0.1~10μmである、上記[1]~[5]のいずれかに記載の電磁波吸収粉末。
[7]少なくとも0.05~20GHzの周波数帯域において、複素誘電率の虚数部の比誘電率が3.0以上かつ誘電正接が0.4以上である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の電磁波吸収粉末。
[8]上記[1]~[7]のいずれかに記載の電磁波吸収粉末と、バインダ樹脂と、を含有する電磁波吸収組成物。
[9]更に、鉄粉を含有する、上記[8]に記載の電磁波吸収組成物。
[10]上記鉄粉の含有量が、上記電磁波吸収粉末100質量部に対して、10~80質量部である、上記[9]に記載の電磁波吸収組成物。
[11]上記[8]~[10]のいずれかに記載の電磁波吸収組成物を用いて形成された電磁波吸収体。
[12]上記[1]~[7]のいずれかに記載の電磁波吸収粉末を含有する塗料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新規な電磁波吸収粉末を提供することができる。
更に、本発明によれば、上記電磁波吸収粉末を用いた電磁波吸収組成物、電磁波吸収体および塗料を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】試験例IのXRDスペクトルである。
図2】試験例Iの電磁波吸収量(反射)を示すグラフである。
図3】試験例Iの電磁波吸収量(透過)を示すグラフである。
図4】試験例IIのXRDスペクトルである。
図5】試験例IIの電磁波吸収量(反射)を示すグラフである。
図6】試験例IIの電磁波吸収量(透過)を示すグラフである。
図7】希土類元素に含まれるランタノイドを立体的に示す周期表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[電磁波吸収粉末]
本発明の電磁波吸収粉末(以下、単に「本発明の粉末」ともいう)は、希土類元素、硫黄元素および酸素元素を含有し、かつ、X線回折(XRD)スペクトルが希土類硫化物のピークを示す(図1および図4を参照)。
このような本発明の粉末は、例えば、図2図3および図5図6に示すように、少なくとも0.05~20GHzの周波数帯域において電磁波吸収特性を有する。
【0010】
図7に周期表を示す。希土類元素は、周期表の第3族に属する元素のうち、スカンジウム(Sc)およびイットリウム(Y)の2元素に、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)を加えた計17元素の総称である。
希土類元素は、+3価のイオンの最外殻電子配置がいずれもsの閉殻構造になっており、性質が互いに酷似している。ランタノイドは、各元素は性質がよく似ているため、図7に示すように、周期表上では、ひとまとまりにして扱われる。
【0011】
本発明の粉末が含有する希土類元素は、軽希土類元素が好ましい。軽希土類元素は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、および、ユウロピウム(Eu)である。これらのうち、ランタン(La)、セリウム(Ce)およびプラセオジム(Pr)からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ランタン(La)およびセリウム(Ce)からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0012】
本発明の粉末において、XRDスペクトルに示される希土類硫化物の相は、β相、γ相、または、β相とγ相との混合相が好ましい。
【0013】
本発明の粉末が、希土類元素および硫黄元素を含有することは、XRDスペクトルが希土類硫化物のピークを示すことにより、確認できる。
本発明の粉末が、酸素元素を含有することは、XRDスペクトルが希土類酸硫化物のピークを示すことにより、確認できる。
【0014】
X線回折(XRD)スペクトルの測定条件は、以下のとおりである。
・X線:CuKα
・管電圧:40kV
・管電流:20mA
【0015】
本発明の粉末における酸素元素の含有量は、0.10~2.00質量%が好ましく、0.15~1.80質量%がより好ましい。
酸素元素の含有量は、HORIBA社製の酸素・窒素・水素分析装置EMGA-930を用いて測定される。
本発明の粉末が酸素元素を含有することは、このような測定によっても、確認することができる。
【0016】
本発明の粉末の平均粒径は、0.1~10μmが好ましく、0.2~10μmがより好ましい。
平均粒径は、SHIMADZU社製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD-2300を用いて測定される。
【0017】
本発明の粉末において、本発明の粉末を構成する個々の粒子にフッ素系コーティングが施されていてもよい。
フッ素コーティングとしては、例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)コーティング、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コーティング、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)コーティングなどが挙げられる。
個々の粒子にフッ素系コーティングをする方法は、特に限定されず、従来公知の方法を、適宜採用できる。
【0018】
本発明の粉末は、少なくとも0.05~20GHzの周波数帯域において、複素誘電率の虚数部の比誘電率が3.0以上かつ誘電正接が0.4以上であることが好ましい。
【0019】
[電磁波吸収粉末の製造方法]
本発明の電磁波吸収粉末を製造する方法(以下、便宜的に「本発明の製造方法」ともいう)は、例えば、以下の方法1~3が好適に挙げられる。ただし、本発明の製造方法は、以下の方法に限定されない。
【0020】
〈方法1:パルスCVI法〉
パルスCVI(Chemical Vapor Infiltration)法を概略的に説明する。反応管内に、出発原料の粉末を設置して加熱しつつ、微量な酸素を不純物として含む反応ガス(例えば、アルゴン水素ガス)を導入する。反応管に設置された両極間に電圧を印加することにより、酸素にイオン化し、これを、出発原料の粉末中にドープする。出発原料としてγ-Ceを用いた場合、その少なくとも一部が、β-Ceに相変態する。
反応管内の減圧(真空引き)、反応管内へのガス導入、および、ガス導入後の保持を1パルスとし、これを繰り返すことにより、反応性の良い新しいガスを随時導入する。パルス数を変えることにより、生成物(粉末)のγ相、β相の相比を変更できる。
加熱温度は、例えば、1073~1473Kである。
両極間に印加する電圧は、例えば、2~8kVである。
1パルスごとの減圧時間は、例えば、1~10秒間である。
1パルスごと反応ガスの導入時間は、例えば、1~10秒間である。
1パルスごとの保持時間は、例えば、例えば、1~10秒間である。
【0021】
〈方法2:CSガス硫化法〉
CSガス硫化法は、出発原料として希土類酸化物(例えば、CeO、La、PrOなど)を用い、これを、CSを用いて硫化する方法である。これにより、酸素を含む希土類硫化物(例えば、β相)の粉末が生成する。
硫化温度は、例えば、923~1373Kである。
硫化時間は、例えば、3.6~28.8ksである。
【0022】
〈方法3:ロータリー炉を用いる方法〉
出発原料を、ロータリー炉を用いて、不純物として微量な酸素を含むArガス中で加熱することにより、出発原料を酸化する。出発原料としては、例えば、γ-Ceを用いる。この場合、酸化によって、β-Ceに相変態する加熱条件によって、生成物(粉末)のγ相、β相の相比を変更できる。
【0023】
本発明の製造法に関連して、Ce、LaおよびPrについて、以下のように付言しておく。
【0024】
Ceは、常温から高温にかけて、斜方晶のα-Ceから正方晶のβ-Ceに相変態し、更に、Th型立方晶のγ-Ceに相変態する。これらの相変態は可逆変態である。β-Ceからγ-Ceへの相変態は、変態温度が1573±100Kであるが、TiやCaなど酸素を奪う元素を添加すると変態温度が上がり、反対に酸素を与えると変態温度が下がる。このことから、γ-Ceをβ-Ceが安定に存在する温度に保持し、酸素を与えると、β-Ceに相変態する可能性が示唆される。
【0025】
Laは、923±50Kにて斜方晶のα-Laから正方晶β-Laに相変態し、更に、1573±100Kで立方晶Th型γ-Laに相変態する。β-Laからγ-Laへの相変態温度は、酸素濃度により高温側に移動する。
【0026】
Prは、1198±75Kにて斜方晶のα-Prから正方晶β-Prに相変態し、更に、1573±200Kで立方晶Th型γ-Prに相変態する。β-Prからγ-Prへの相変態温度は、酸素濃度により高温側に移動する。
【0027】
[電磁波吸収組成物]
本発明の電磁波吸収組成物(以下、単に「本発明の組成物」ともいう)は、上述した本発明の粉末と、バインダ樹脂と、を含有する。
【0028】
バインダ樹脂としては、特に限定されず、例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、エポキシ樹脂などが挙げられる。硬化前のエポキシ樹脂も、バインダ樹脂に含まれるものとする。
本発明の組成物におけるバインダ樹脂の含有量は、本発明の粉末100質量部に対して、20~150質量部が好ましく、30~120質量部がより好ましい。
【0029】
本発明の組成物は、電磁波吸収特性がより優れるという理由から、更に、鉄粉を含有することが好ましい。本発明の組成物における鉄粉の含有量は、本発明の粉末100質量部に対して、10~80質量部が好ましく、20~60質量部がより好ましい。
【0030】
[電磁波吸収体]
本発明の電磁波吸収体は、上述した本発明の組成物を用いて形成された電磁波吸収体である。
本発明の電磁波吸収体を製造する方法は、特に限定されず、本発明の組成物に含まれるバインダ樹脂などに応じて、適宜選択される。
バインダ樹脂としてPMMAを用いる場合、例えば、本発明の組成物を混合し、得られた混合物を、ホットプレスを用いて加圧圧縮することにより、本発明の電磁波吸収体を得る方法が挙げられる。
バインダ樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、粉末および硬化前のエポキシ樹脂を含有する本発明の組成物を混合し、得られた混合物を加熱し硬化させることにより、本発明の電磁波吸収体を得る方法が挙げられる。
【0031】
[塗料]
本発明の塗料は、上述した本発明の粉末を含有する。これにより、本発明の塗料(および、その塗膜)は、電磁波吸収特性を示す。
本発明の塗料は、更に、バインダ樹脂を含有していていもよい。バインダ樹脂としては、特に限定されず、本発明の組成物が含有するバインダ樹脂と同様のバインダ樹脂を使用できる。
本発明の塗料は、水溶性または油性の塗料であることが好ましい。このとき、本発明の塗料に含まれる本発明の粉末を構成する個々の粒子の表面は、両親媒性であることが好ましい。粒子の表面を両親媒性にする方法は、特に限定されず、従来公知の方法を適宜採用することができる。
【実施例
【0032】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0033】
[試験例I:パルスCVI法(Ce)]
〈電磁波吸収粉末の作製〉
出発原料として市販のγ-Ce粉末(平均粒径:7μm)を用いて、パルスCVI法により、電磁波吸収粉末(以下、単に「粉末」ともいう)を作製した。
より詳細には、反応管内の両端にステンレス鋼製の陰極および陽極を設け、陰極の手前にγ-Ce粉末を入れた多孔質アルミナ製の籠を置き、まず、両極間に電圧(4.5kV)を印加しながら反応管を1473Kに加熱した。次いで、反応管内の減圧(10秒間)、Oを不純物として含むAr-7%Hガスの導入(2秒間)、および、その後の保持(10秒間)を1パルスとして、この操作を下記表1に示す回数(パルス数)だけ行ない、粉末を得た。
【0034】
〈XRDスペクトル〉
得られた粉末について、XRDスペクトルを測定した。測定結果を図1に示す。XRDスペクトルに示される相も下記表1に記載した。
【0035】
〈酸素含有量および平均粒径〉
得られた粉末について、酸素元素の含有量(酸素含有量)および平均粒径を測定した。測定結果を下記表1に示す。測定しなかった場合には下記表1に「-」を記載した(以下、同様)。
【0036】
〈電磁波吸収特性〉
まず、得られた粉末およびバインダ樹脂を用いて、内径3mmおよび外径7mmのドーナツ状の試料(電磁波吸収体)を作製した。
バインダ樹脂としては、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)またはエポキシ樹脂を用いた。
PMMAとしては、ALDRICH社製のPoly(methyl methacrylate)型番4457461-500G(平均粒径:7μm)を用いた(以下、同様)。
エポキシ樹脂としては、TAAB EPON 812 キット(TAAB EPON 812、DDSA、MNA、DMP-30)を用いた(以下、同様)。
【0037】
PMMAを用いた場合、まず、PMMAおよび粉末を、PMMA:粉末=3:7の質量比で混合した。次いで、得られた混合物を、ホットプレスを用いて加熱圧縮(温度:443K、圧力:3MPa、保持時間:600s)することにより成形した。得られた成形品を加工することにより、試料を作製した。一部の例では、更に鉄粉を混合した。その場合、質量比をPMMA:粉末:鉄粉=3:5:2とした以外は、上記と同様にして、試料を作製した。
【0038】
エポキシ樹脂を用いた場合、まず、硬化前のエポキシ樹脂中に、粉末を、エポキシ樹脂:粉末=5:5の質量比で混合した。得られた混合物を、電気炉内で加熱(温度:338K、保持時間:43.2ks)することにより硬化させた。得られた硬化物を加工することにより、試料を作製した。
【0039】
作製した試料を用いて、0.05~20GHzの周波数帯域における電磁波吸収量(単位:dB)を、同軸管法にて測定した。結果を図2図3に示す。
同軸管法では、同軸管の中心導体に高周波信号を加えると、内部空間に電界および磁界が発生する。同軸管の中心部に試料を入れたときの電界および磁界の変化により、反射量および透過量が測定される。入射量と反射量との差が電波吸収量(反射)を表し、反射量と透過量との差が電波吸収量(透過)を表す。
【0040】
【表1】
【0041】
例1に鉄粉を加えたものが例18である。したがって、例18の粉末は、例1の粉末と同じである。
【0042】
図1図3および上記表1に示す結果から、試験例Iの粉末は、希土類元素、硫黄元素および酸素元素を含有し、X線回折スペクトルが希土類硫化物のピークを示し、かつ、少なくとも0.05~20GHzの周波数帯域において電磁波吸収特性を有することが分かった。
パルス数が増えるに従い、酸素含有量が増加する傾向が見られた。
【0043】
[試験例II:CSガス硫化法(La)]
〈電磁波吸収粉末の作製〉
出発原料として市販のLa粉末(平均粒径:1μm)を用いて、CSガス硫化法により、電磁波吸収粉末(粉末)を作製した。
より詳細には、あらかじめ、La粉末を、結晶水を除去するために、大気中で、673Kおよび3.6ksの条件で加熱した。その後、La粉末を、石英ボートに乗せて電気炉内に挿入し、CS溶液中から気化させたCSガスをArキャリアガスを用いて導入しながら、下記表2に示す条件(硫化温度および硫化時間)で硫化することにより粉末を得た。
【0044】
〈XRDスペクトル〉
得られた粉末について、XRDスペクトルを測定した。測定結果を図4に示す。XRDスペクトルに示される相も下記表2に記載した。
【0045】
〈酸素含有量および平均粒径〉
得られた粉末について、酸素元素の含有量(酸素含有量)および平均粒径を測定した。測定結果を下記表2に示す。
【0046】
〈電磁波吸収特性〉
得られた粉末を用いて、試験例Iと同様にして、試料を作製し、0.05~20GHzの周波数帯域における電磁波吸収量を測定した。結果を図5図6に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
図4図6および上記表2に示す結果から、試験例IIの粉末は、希土類元素、硫黄元素および酸素元素を含有し、X線回折スペクトルが希土類硫化物のピークを示し、かつ、少なくとも0.05~20GHzの周波数帯域において電磁波吸収特性を有することが分かった。
硫化温度が低くなるに従い、および、硫化時間が短くなるに従い、酸素含有量が増える傾向が見られた。
【0049】
[試験例III(塗料)]
試験例I~IIで作製した電磁波吸収粉末(粉末)を用いて、塗料を調製した。
具体的には、粉末を、硬化前のエポキシ樹脂中に、粉末:エポキシ樹脂=1:4の質量比で混合することにより、塗料を得た。
得られた塗料を、ヘラを用いてSUS430の板上に塗布し、電気炉内で加熱(温度:338K)することにより、塗膜を形成した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7