(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】標的物質検出用核酸プローブ
(51)【国際特許分類】
C12N 15/115 20100101AFI20221115BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20221115BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C12N15/115 Z
C12Q1/6876 Z ZNA
C07K19/00
(21)【出願番号】P 2018568555
(86)(22)【出願日】2018-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2018005032
(87)【国際公開番号】W WO2018151138
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2020-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2017025432
(32)【優先日】2017-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 章
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/028223(WO,A1)
【文献】特開2005-304489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00-3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の標的物質検出用核酸プローブからなる核酸プローブ群であって、
前記核酸プローブは、1つの第一の一本鎖核酸分子と1つの第二の一本鎖核酸分子からなり、
前記第一の一本鎖核酸分子は、いずれも、標的物質と特異的に結合する標的結合領域、及び、標的結合領域のいずれか一方の末端に連結された
100塩基以上800塩基以下の一定の長さを有する第一の一本鎖核酸領域
を含み、
前記第二の一本鎖核酸分子は、いずれも、前記第一の一本鎖核酸領域の塩基配列に相補的な
100塩基以上800塩基以下の一定の長さを有する第二の一本鎖核酸領域
を含み、
前記核酸プローブにおいて、1つの第一の一本鎖核酸領域と
1つの第二の一本鎖核酸領域
とが塩基対合し、インターカレーターが挿入可能な検出領域を形成する、
核酸プローブ群。
【請求項2】
第一の一本鎖核酸分子と第二の一本鎖核酸分子が末端部で連結されている、請求項1に記載の
核酸プローブ群。
【請求項3】
標的認識領域と第一の一本鎖核酸領域がスペーサー配列を介して連結されている、請求項1
又は2に記載の
核酸プローブ群。
【請求項4】
標的認識領域がアプタマーである、請求項1~
3のいずれか一項に記載の
核酸プローブ群。
【請求項5】
標的物質が核酸結合ペプチドである、請求項1~
4のいずれか一項に記載の
核酸プローブ群。
【請求項6】
第一の一本鎖核酸分子及び第二の一本鎖核酸分子がRNAである、請求項1~
5のいずれか一項に記載の
核酸プローブ群。
【請求項7】
第一の一本鎖核酸分子が、二以上の標的結合領域を含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の
核酸プローブ群。
【請求項8】
インターカレーターが、エチジウムブロマイド、ソラレン、アクリジン、アクリジンオレンジ、プロフラビン、ヨウ化プロピジウム、7-アミノアクチノマイシンD 、アクチノマイシンD、DAPI、EvaGreen(登録商標)、DRAQ7
TM、SYTOX(登録商標)、Midori Green、SYBR(登録商標)Green I、SYBR(登録商標)Green II、及びSYBR(登録商標)Goldからなる群より選択される、請求項1~
7のいずれか一項に記載の
核酸プローブ群。
【請求項9】
a)サンプル
と請求項1~
8のいずれか一項に記載の
核酸プローブ群とを接触させる工程、
b)サンプルにインターカレーターを加えて核酸プローブに挿入させる工程、及び
c)インターカレーターに基づいて核酸プローブを検出する工程
、を含み、
前記工程a)の後に前記核酸プローブを伸長する工程を含まない、
標的物質の有無を検出する方法。
【請求項10】
検出工程が、ゲルシフトアッセイ又はフローサイトメトリーによる、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
d)サンプル
と請求項1~
8のいずれか一項に記載の
核酸プローブ群とを接触させる工程、
e)サンプルにインターカレーターを加えて核酸プローブに挿入させる工程、
f)インターカレーターに基づいて標的物質に結合した核酸プローブの量を測定する工程、及び
g)標的物質に結合した核酸プローブの量に基づいて標的物質の量を推定する工程
、を含み、
前記工程d)の後に前記核酸プローブを伸長する工程を含まない、
標的物質の量を測定する方法。
【請求項12】
測定工程が、ゲルシフトアッセイ又はフローサイトメトリーによる、請求項
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的物質検出用核酸プローブ、及び該プローブを用いて標的物質の有無を決定又は量を測定する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ウィルス及び原虫等による感染症、アレルギー、及び自己免疫疾患等の診断から、各種癌のバイオマーカーの検出に至るまで、抗体を用いた酵素免疫測定法ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)が幅広く利用されている。しかし、この手法を利用し、新たな診断又は検出系を構築するには、標的分子を特異的に認識する抗体の合成が必要となるだけでなく、それらの測定に適した操作条件の設定と検証に多大な時間とコストがかかる。
【0003】
一方、試験管内分子進化法が開発されたことをきっかけに、抗体に匹敵する標的結合性を付与した分子「アプタマー」の創出が可能となり、抗体に代わる次世代のバイオセンサー素子や医薬品候補として注目を集めている(非特許文献1)。アプタマーとは、任意の標的分子に対して高い親和性と特異性を発揮する1本鎖DNA、RNA、及びペプチド等の総称である。アプタマーの標的結合性は、アプタマーが形成する複雑かつ絶妙な立体構造に由来しており、これまでにタンパク質、ペプチド、低分子化合物、及び金属イオン等、様々な標的分子に結合できることが報告されている。
【0004】
しかしながら、アプタマーを実践的なバイオセンシング素子として開発した例は未だ少ない。その理由の一つは、アプタマーを検出するために用いられる標識子及び放射性同位体等のアプタマーへの導入が簡便でなく、またその検出感度及び/又は特異性等も必ずしも十分とは言えないことであった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Anton B. Iliuk et al., Anal. Chem., 2011, Jun 15: 83(12): 4440-4452.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡便に調製でき、且つ高感度で検出可能な核酸プローブを提供すること等を課題とする。また、本発明は、当該核酸プローブを用いて標的物質の有無を決定又は量を測定する方法を提供すること等を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、標的結合領域に、インターカレーターが挿入可能な二本鎖部分を付加することで、高感度で標的物質を検出可能なプローブを作製できることを見出し、本願発明を完成させた。
【0008】
したがって、本発明は以下の態様を包含する。
(1)標的物質と特異的に結合する標的結合領域、及び
標的結合領域のいずれか一方の末端に連結された2以上の塩基を含む第一の一本鎖核酸領域
を含む第一の一本鎖核酸分子、並びに
前記第一の一本鎖核酸領域の塩基配列に相補的な2以上の塩基を含む、第二の一本鎖核酸領域
を含む第二の一本鎖核酸分子、
を含み、第一の一本鎖核酸領域と第二の一本鎖核酸領域が塩基対合し、インターカレーターが挿入可能な検出領域を形成する、
標的物質検出用核酸プローブ。
(2)第一の一本鎖核酸分子と第二の一本鎖核酸分子が末端部で連結されている、(1)に記載の核酸プローブ。
(3)第一の一本鎖核酸領域及び第二の一本鎖核酸領域が、10以上のヌクレオチドを含む、(1)又は(2)に記載の核酸プローブ。
(4)第一の一本鎖核酸領域及び第二の一本鎖核酸領域が、50以上のヌクレオチドを含む、(1)又は(2)に記載の核酸プローブ。
(5)標的認識領域と第一の一本鎖核酸領域がスペーサー配列を介して連結されている、(1)~(4)のいずれかに記載の核酸プローブ。
(6)標的認識領域がアプタマーである、(1)~(5)のいずれかに記載の核酸プローブ。
(7)標的物質が核酸結合ペプチドである、(1)~(5)のいずれかに記載の核酸プローブ。
(8)第一の一本鎖核酸分子及び第二の一本鎖核酸分子がRNAである、(1)~(7)のいずれかに記載の核酸プローブ。
(9)第一の一本鎖核酸分子が、二以上の標的結合領域を含む、(1)~(8)のいずれかに記載の核酸プローブ。
(10)インターカレーターが、エチジウムブロマイド、ソラレン、アクリジン、アクリジンオレンジ、プロフラビン、ヨウ化プロピジウム、7-アミノアクチノマイシンD 、アクチノマイシンD、DAPI、EvaGreen(登録商標)、DRAQ7TM、SYTOX(登録商標)、Midori Green、SYBR(登録商標)Green I、SYBR(登録商標)Green II、及びSYBR(登録商標)Goldからなる群より選択される、(1)~(9)のいずれかに記載の核酸プローブ。
(11)サンプルに(1)~(10)のいずれかに記載の核酸プローブを接触させる工程、
サンプルにインターカレーターを加えて核酸プローブに挿入させる工程、及び
インターカレーターに基づいて核酸プローブを検出する工程
を含む、標的物質の有無を検出する方法。
(12)検出工程が、ゲルシフトアッセイ又はフローサイトメトリーによる、(11)に記載の方法。
(13)サンプルに(1)~(10)のいずれかに記載の核酸プローブを接触させる工程、
サンプルにインターカレーターを加えて核酸プローブに挿入させる工程、
インターカレーターに基づいて標的物質に結合した核酸プローブの量を測定する工程、及び
標的物質に結合した核酸プローブの量に基づいて標的物質の量を推定する工程
を含む、標的物質の量を測定する方法。
(14)測定工程が、ゲルシフトアッセイ又はフローサイトメトリーによる、(13)に記載の方法。
【0009】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2017-025432号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、高感度で標的物質を検出可能なプローブが提供され、該プローブを用いた簡便且つ高感度な標的物質の検出法及び/又は測定法が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の核酸プローブの一実施形態を示す概念図である。
図1Aにおいて、101は第一の一本鎖核酸分子を、102は第二の一本鎖核酸分子を示す。103及び106は、それぞれ第一及び第二の一本鎖核酸領域を示し、これらは塩基対合(実線で示す)により、インターカレーターが挿入可能な検出領域を形成する。104は任意に含まれ得るスペーサー配列を指し、105は標的物質と特異的に結合する標的結合領域を示す。
図1Bは、
図1Aに示す核酸プローブと5'→3'の方向のみが異なる核酸プローブを示す。
【
図2】
図2は、本発明の核酸プローブの一実施形態を示す概念図である。本実施形態では、第一の一本鎖核酸分子と第二の一本鎖核酸分子の末端が連結され、全体として一本鎖核酸プローブを形成している。
図2Aでは、第一の一本鎖核酸領域203の5'末端と第二の一本鎖核酸領域206の3'末端が、連結部207を介して連結されている。204は任意に含まれ得るスペーサー配列を示し、205は標的物質と特異的に結合する標的結合領域を示す。
図2Bは、
図2Aに示す核酸プローブと5'→3'の向きのみが異なる核酸プローブを示す。
図2Cでは、第二の一本鎖核酸領域206の5'末端と標的結合領域205の3'末端が、連結部208を介して連結されている。
図2Dは、
図2Cに示す核酸プローブと5'→3'の方向のみが異なる核酸プローブを示す。
【
図3】
図3は、本発明の核酸プローブの一実施形態を示す概念図である。本実施形態では、第一の一本鎖核酸領域303の末端と第二の一本鎖核酸領域306の末端が連結部307を介して連結され、かつ第二の一本鎖核酸領域306の末端と標的結合領域305の末端が連結部308を介して連結されることで、全体として環状の一本鎖核酸プローブを形成している。
【
図4】
図4は、実施例で調製した核酸分子S1mt-dsRNA(200)又はS1mt-dsRNA(400)と標的分子との結合をゲルシフトアッセイにより評価した結果を示す。
図4Aにおいて、レーン1はS1mt-ssRNA(200)(1.2 pmol)を、レーン2はその相補的配列を含むC-ssRNA(200)(1.2 pmol)を、レーン3はこれら2つの核酸分子をハイブリダイズさせたS1mt-dsRNA(200)(0.3 pmol)の電気泳動結果を示す。また、レーン4はS1mt-dsRNA(200)(0.3 pmol)とStreptavidin(3 pmol)を混合した溶液の結果を、レーン5はS1mt-dsRNA(200)(0.3 pmol)とhDFHR(3 pmol)を混合した溶液の結果を、レーン6~7は、A8-dsRNA(200)(0.3 pmol)単独又はこれとStreptavidin(3 pmol)を混合した溶液の結果を示す。また、
図4Bにおいて、レーン1はS1mt-ssRNA(400)(1.2 pmol)を、レーン2はその相補的配列を含むC-ssRNA(400)(1.2 pmol)を、レーン3はこれら2つの核酸分子をハイブリダイズさせたS1mt-dsRNA(400)(0.3 pmol)の電気泳動結果を示す。また、レーン4はS1mt-dsRNA(400)(0.3 pmol)とStreptavidin(3 pmol)を混合した溶液の結果を、レーン5はS1mt-dsRNA(400)(0.3 pmol)とhDFHR(3 pmol)を混合した溶液の結果を、レーン6~7は、A8-dsRNA(400)(0.3 pmol)単独又はこれとStreptavidin(3 pmol)を混合した溶液の結果を示す。
図4A及びBのレーン4において、矢頭は核酸分子と標的タンパク質であるストレプトアビジンが結合して生じたバンドを示す。Mは、マーカーを示す(以下、
図5~6も同様)。
【
図5】
図5は、実施例で調製した核酸分子b-dsRNA(200)又はbb-dsRNA(200)と標的分子との結合をゲルシフトアッセイにより評価した結果を示す。レーン1及び2は、それぞれコントロールであるA8-dsRNA(200)と翻訳液(1.4μl)又はBap-GS2-Halo-F(1.4μl)を混合した溶液の結果を示す。レーン3及び4は、それぞれb-dsRNA(200)と翻訳液(1.4μl)又はBap-GS2-Halo-F(1.4μl)を混合した溶液の結果を示す。レーン5及び6は、それぞれbb-dsRNA(200)と翻訳液(1.4μl)又はBap-GS2-Halo-F(1.4μl)を混合した溶液の結果を示す。レーン4及び6において、矢頭は核酸分子と標的タンパク質であるBap-GS2-Halo-Fが結合して生じたバンドを示す。
【
図6】
図6は、実施例で調製した核酸分子bb-dsRNA(400)と標的分子との結合をゲルシフトアッセイにより評価した結果を示す。レーン1及び2は、それぞれbb-dsRNA(400)と翻訳液(1.4 μl)又はBap-GS2-Bap-GS2-Halo-F(1.4 μl)を混合した溶液の結果を示す。レーン3及び4は、それぞれbb-dsRNA(400)と翻訳液(2.7 μl)又はBap-GS2-Bap-GS2-Halo-F(2.7 μl)を混合した溶液の結果を示す。レーン2及び4において、矢頭は核酸分子と標的タンパク質であるBap-GS2-Bap-GS2-Halo-Fが結合して生じたバンドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.標的物質検出用核酸プローブ
<構成>
一態様において、本発明は、第一の一本鎖核酸分子及び第二の一本鎖核酸分子を含む、標的物質検出用核酸プローブに関する。本発明の核酸プローブは、以下で詳細に記載する通り、第一の一本鎖核酸分子中に標的結合領域を含み、かつ第一の一本鎖核酸分子と第二の一本鎖核酸分子にそれぞれ含まれる一本鎖核酸領域が互いに塩基対合して検出領域(二本鎖部分)を形成するため、インターカレーターを利用して、標的物質の検出に用いることができる。
【0013】
本明細書において、「核酸」又は「核酸分子」とは、原則としてヌクレオチドを構成単位とし、それらがホスホジエステル結合によって連結した生体高分子をいい、「核酸プローブ」とは、標的分子を検出するための核酸分子を意味する。本発明の「核酸プローブ」は、DNAプローブ、RNAプローブ、及びDNA/RNA混合プローブのいずれであってもよいが、好ましくはRNAプローブである。
【0014】
第一の一本鎖核酸分子は、標的物質と特異的に結合する標的結合領域、及び標的結合領域のいずれか一方の末端に連結された2以上の塩基を含む第一の一本鎖核酸領域を含む。
【0015】
本明細書において、「標的結合領域」は、標的と特異的に結合する核酸である限り限定されない。好ましくは、アプタマー、例えばRNAからなるRNAアプタマー又はDNAからなるDNAアプタマーである。標的結合領域となり得るアプタマーは、標的物質との特異的結合性が知られる既存のアプタマーであってもよいし、標的物質と特異的に結合する新規なアプタマーであってもよい。新規なアプタマーは、公知の方法、例えばSELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)法等により作製することができる。SELEX法とは、ランダム配列領域とその両末端にプライマー結合領域を有する核酸分子で構成されるプールから標的分子に結合した核酸分子を選択し、回収後に増幅した後、次のラウンドの核酸プールにするという一連のサイクルを数~数十ラウンド繰り返して、標的分子に対してより結合力の強い核酸を選択する方法である(例えば、Tuerk C, Gold L (1990) Science 249(4968):505-510を参照されたい)。
【0016】
本明細書において、「標的物質」の種類は特に限定せず、タンパク質(例えば酵素、癌マーカー等の疾患マーカー、及び病原体毒素等)、ペプチド(例えば核酸結合ペプチド)、低分子化合物、脂質、鉱物、ホモ又はヘテロ複合体、金属材料及び金属イオン等のいずれであってもよい。
【0017】
「標的物質」が、核酸結合ペプチドである場合、「標的結合領域」は、当該核酸結合ペプチドに認識される核酸配列であってよい。そのような核酸結合ペプチドと該ペプチドに認識される核酸配列の組み合わせとしては、例えばBap(λboxB結合ペプチド)とboxB(λファージ由来RNAモチーフ)、及び転写因子とその結合領域(例えばプロモーター又はエンハンサー)等が挙げられる。
【0018】
標的結合領域の長さは限定されず、例えば150塩基以下、好ましくは100塩基以下、90塩基以下、80塩基以下、70塩基以下、60塩基以下又は50塩基以下である。
【0019】
第一の一本鎖核酸分子は、標的結合領域を1個だけ含んでもよいし、2個以上、例えば2~6個、2~5個、2~4個、2~3個、又は2個含んでもよい。第一の一本鎖核酸分子に2個以上の標的結合領域を含めることで、核酸プローブの検出感度及び/又は特異性を高め得る。また、異なる標的結合領域を組み合わせることで、2以上の物質を検出可能なプローブを作製し得る。標的結合領域が2個以上含まれる場合、各標的結合領域は直接連結されてもよいし、後述するスペーサー配列等を介して連結されてもよい。
【0020】
第一の一本鎖核酸分子において、第一の一本鎖核酸領域は、標的結合領域のいずれか一方の末端に直接連結されていてもよいし、スペーサー配列を介して連結されていてもよい。スペーサー配列を含むことによって、各領域の自由度が増し、第一の一本鎖核酸領域が標的結合領域の立体構造に与え得る影響を低減又は排除することができる。スペーサーの配列は限定されないが、例えば2~20、4~12、6~10、7~9又は8個のアデニンを含んでよい。
【0021】
第二の一本鎖核酸分子は、前記第一の一本鎖核酸領域の塩基配列に相補的な2以上の塩基を含み、第一の一本鎖核酸領域と第二の一本鎖核酸領域が塩基対合することによって、インターカレーターが挿入可能な検出領域(二本鎖部分)が形成される。
【0022】
本発明の核酸プローブに含まれる第一の一本鎖核酸分子の例として、限定するものではないが、S1mt-ssRNA(200)(配列番号:12)、S1mt-ssRNA(400)(配列番号:14)、b-ssRNA(200)(配列番号:18)、bb-ssRNA(200)(配列番号:19)、又はbb-ssRNA(400)(配列番号:20)の塩基配列を含む核酸分子が挙げられる。また、本発明の核酸プローブに含まれる第二の一本鎖核酸分子の例として、限定するものではないが、C-ssRNA(200)(配列番号:13)又はC-ssRNA(400)(配列番号:15)の塩基配列を含む核酸分子が挙げられる。
【0023】
第一及び第二の一本鎖核酸領域の塩基、並びにこれらの領域が塩基対合することによって生じる検出領域の塩基対の数はインターカレーターが挿入可能な2以上である限り特に限定しないが、検出感度を高めるうえでは長い方が好ましく、調製コストを低減する上では短い方が好ましいため、これらの要因を考慮して適宜定めることができる。第一及び第二の一本鎖核酸領域の塩基、又は検出領域の塩基対の数は、好ましくは、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、15以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、又は200以上であってよく、5000以下、4000以下、3000以下、2000以下、1000以下、900以下、800以下、700以下、600以下、500以下、450以下、又は400以下、例えば2~5000、10~4000、20~2000、50~1000、100~500、又は200~400である。また、検出領域は、インターカレーターが挿入可能な限り、ミスマッチ、バルジ、及びインターナルループ等の構造を、複数個、例えば1から10個、好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは数個、例えば1から4個又は1から3個、あるいは1個又は2個有していてもよい。
【0024】
本発明の核酸プローブは、標的結合領域及び検出領域の機能が妨げられない限り、1以上、例えば1~20、1~15、1~10、1~8、1~5、1~4、1~3、1~2、又は1個の修飾塩基及び/又は人工塩基を含んでもよい。修飾塩基及び/又は人工塩基は、標的結合領域に含まれることが好ましい。修飾塩基及び/又は人工塩基を含むことによって、核酸プローブの安定性及び/又は結合性が増加し得る。
【0025】
本明細書において、「修飾塩基」とは、人工的に化学修飾された塩基を意味する。修飾塩基として、例えば、修飾化ピリミジン(例えば、5-ヒドロキシシトシン、5-フルオロウラシル、4-チオウラシル、5-(3-インドール-2-エチル)ウラシル、5-(4-ヒドロキシフェニル-2-エチル)ウラシル)、修飾化プリン(例えば、6-メチルアデニン、6-チオグアノシン)及び他の複素環塩基等が挙げられる。
【0026】
本明細書において「人工塩基」又は「塩基類似体」とは、天然型ヌクレオチドを構成する天然型塩基に類似の性質を有する人工的に構築された化学物質であって、天然型塩基と同様に、人工塩基対を形成することのできる相手となる塩基類似体(本明細書では、以降「相補的人工塩基」とする)を有する化学物質を指す。本明細書において「人工塩基対合」とは、天然型塩基のアデニンとチミン、アデニンとウラシル、又はグアニンとシトシンのように、一対の相補的人工塩基が互いに形成する塩基対合をいう。人工塩基対合は、天然型塩基間の塩基対合に見られる水素結合を介した化学的結合、人工塩基間の分子構造に基づく嵌合を介した物理的結合、及び疎水性相互作用を介したスタッキング効果を含む。上記人工塩基の具体例として、Ds(7-(2-thienyl)-3H-imidazo[4,5-b]pyridine-3-yl)、Pn(2-nitropyrrole-1-yl)、Pa(2-formyl-1H-pyrrole-1-yl)、P(2-amino-imidazo[1,2-a]-1,3,5-triazin-4(8H)-one)、Z(6-amino-5-nitro-2(1H)-pyridone)、5SICS(6-methylisoquinoline-1(2H)-thione)、NaM(3-methoxynaphthalen-2-yl)、及びMMO2(2-methoxy-4-methylphenyl)等が挙げられる。
【0027】
本発明の核酸プローブは、他の物質、例えばポリエチレングリコール(PEG)(例えば、約20~約60kDaのPEG重合体)、アミノ酸、ペプチド、inverted dT、及び脂質等を付加することにより修飾されていてもよい。これらの物質は、必要に応じて公知のリンカーを介して連結してもよい。本明細書におけるリンカーの例として、ヌクレオチドリンカー及びペプチドリンカー等が挙げられる。PEGを連結することにより、一般にDNAアプタマーの半減期を伸ばすことができることが知られている。
【0028】
本明細書において、「インターカレーター」は、2本鎖核酸に結合しうる化合物であって、狭義には核酸塩基対のなす平面と平面の間に挿入する化合物を指す。本発明において用いることができるインターカレーターの例として、エチジウムブロマイド、ソラレン、アクリジン、アクリジンオレンジ、プロフラビン、ヨウ化プロピジウム、7-アミノアクチノマイシンD 、アクチノマイシンD、DAPI、EvaGreen(登録商標)、DRAQ7TM、SYTOX(登録商標)、Midori Green、SYBR(登録商標)Green I、SYBR(登録商標)Green II、及びSYBR(登録商標)Goldが挙げられる。インターカレーターは、細胞膜透過性及び細胞膜非透過性のいずれであってもよい。細胞膜透過性のインターカレーターを用いることによって、細胞内外の標的物質を検出することができ、一方細胞膜非透過性のインターカレーターを用いることによって、標的物質を細胞表面に発現した細胞のみを検出することができる。細胞膜非透過性のインターカレーターの例として、DAPI、ヨウ化プロピジウム、アクリジンオレンジ、EvaGreen(登録商標)、DRAQ7TM、SYTOX(登録商標)が挙げられる。
【0029】
第一の一本鎖核酸分子と第二の一本鎖核酸分子の5'→3'の方向は限定されず、例えば第一の一本鎖核酸分子は、
図1Aの様に5'から3'に向かって、第一の一本鎖核酸領域103、任意に含まれ得るスペーサー配列104、及び標的結合領域105を含んでもよいし、
図1Bの様に3'から5'に向かって、第一の一本鎖核酸領域103、任意に含まれ得るスペーサー配列104、及び標的結合領域105を含んでもよい。
【0030】
また、
図2で示す様に、第一の一本鎖核酸分子と第二の一本鎖核酸分子は、末端部で連結されていてもよい。例えば、
図2Aでは、第一の一本鎖核酸領域203の5'末端と第二の一本鎖核酸領域206の3'末端が、連結部207を介して連結されている。なお、
図2Aでは、便宜的に連結部207を図示しているが、第一の一本鎖核酸領域203の5'末端と第二の一本鎖核酸領域206の3'末端は塩基配列を介さずに直接連結されてもよい。ただし、各領域の自由度を増加させるため、連結部206が存在する実施形態がより好ましく、連結部206は、例えば2~20、4~12、6~10、7~9又は8個の塩基配列、例えば上記スペーサー配列を含む。
図2Bは、
図2Aとは5'→3'の方向のみが異なる核酸プローブである。同様に、
図2Cでは、第二の一本鎖核酸領域206の5'末端と標的結合領域205の3'末端が、連結部208を介して連結されている。なお、
図2Cでは、便宜的に連結部208を図示しているが、第二の一本鎖核酸領域206の5'末端と標的結合領域205の3'末端は塩基配列を介さずに直接連結されてもよい。ただし、各領域の自由度を増加させるため、連結部208が存在する実施形態がより好ましく、連結部208は、例えば2~20、4~12、6~10、7~9又は8個の塩基配列、例えば上記スペーサー配列を含む。
図2Dは、
図2Cに示す核酸プローブと5'→3'の方向のみが異なる核酸プローブを示す。
【0031】
また、
図3で示す様に、第一の一本鎖核酸分子の両末端が、第二の一本鎖核酸分子の両末端と連結され、環状の一本鎖核酸プローブを形成してもよい。この実施形態においても、各一本鎖核酸分子の5'→3'の方向は限定されない。
【0032】
<核酸プローブの調製>
本発明の核酸プローブは、化学合成等の本分野で公知の方法により調製することができる。化学合成法は、固相合成法に従って行うことができる。具体的には、例えば、Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry, Volume 1, Section 3、Verma S. and Eckstein F., 1998, Annul Rev. Biochem., 67, 99-134に記載された化学合成方法を利用すればよい。また、人工核酸や修飾核酸を含めた核酸の化学合成については、多くのライフサイエンス系メーカー(例えば、タカラバイオ社、ファスマック社、ライフテクノロジー社、ジーンデザイン社、シグマ アルドリッチ社等)が受託製造サービスを行っており、それらを利用することもできる。また、プラスミド等の鋳型DNAからの転写も、当業者に公知の方法により行うことができる。また、核酸プローブがRNAである場合には、プラスミド等の鋳型DNAからの転写により調製することもできる。例えば、プラスミド由来の二本鎖配列のそれぞれの一部を鋳型として利用し、二つの一本鎖核酸領域部分を調製することができる。この場合、検出領域を形成する一本鎖核酸領域の配列は、プラスミドの配列に由来する。
【0033】
第一の一本鎖核酸分子と第二の一本鎖核酸分子を連結する場合、連結がなされた一本鎖分子として調製してもよいし、各分子を調製した後、リガーゼ等により連結してもよい。
【0034】
調製後の一本鎖核酸分子は、使用前に当該分野で公知の方法によって精製することが好ましい。例えば、精製方法としては、ゲル精製法、アフィニティーカラム精製法、HPLC法等が挙げられる。
【0035】
調製した一本鎖核酸分子は、ハイブリダイゼーション工程により検出領域(二本鎖部分)を形成させる。ハイブリダイゼーションは公知の方法により行うことができ、例えば、第一及び第二の一本鎖核酸分子をMOPS buffer等のbuffer中において、90~95℃等の高温で数分間インキュベーションした後、室温で30分以上放置し、ゆっくりと冷ますことで、行うことができる。
【0036】
<効果>
本発明の核酸プローブは、インターカレーターが挿入可能な検出領域を形成するため、インターカレーターのシグナル、例えば蛍光を利用して、簡便に標的物質を検出することができる。また、本発明によれば、偽陽性が低減できるため、高精度な検出が可能となる。また、必要に応じて検出領域を長くすることで、さらに検出感度及び/又は特異性を高めることができる。
【0037】
さらに詳細には、本発明のプローブ、特にRNAプローブは、以下の(1)~(3)の利点の一以上を有し得る:(1)検出領域に含まれる二本鎖部分は、自由度が高い一本鎖部分とは異なり、蛍光分子が結合して留まる安定な空間を有するため、インターカレーションによる再現性及び感度の高い検出が可能となる、(2)二本鎖部分は、均一な構造を安定に維持していることから、標的結合領域との立体障害が起こりにくい、(3)均一な構造を有する二本鎖部分を含むプローブは、ゲルやキャピラリー等を用いた電気泳動において特定の位置に再現性良く分離することができるため、特異的かつ簡便に検出・定量することが可能となる。
【0038】
2.標的物質の有無又は量を測定する方法
一態様において、本発明は、「1.標的物質検出用核酸プローブ」に記載の核酸プローブを用いて、標的物質の有無を検出する方法に関する。
【0039】
本方法は、サンプルに上記核酸プローブを接触させる工程(接触工程)、サンプルにインターカレーターを加えて核酸プローブに挿入させる工程(挿入工程)、及びインターカレーターに基づいて核酸プローブを検出する工程(検出工程)を含む。
【0040】
接触工程は、核酸プローブとサンプル中の標的物質が特異的に結合できる限り限定しない。核酸プローブとサンプルを単に混合してもよいし、水及びバッファー等の媒体中で混合してもよい。サンプルの種類は限定しないが、例えば、生体から単離した体液、細胞又は組織であってもよいし、精製及び/又は単離された標的物質であってもよい。体液の例として、血液、汗、唾液、乳、尿、及び精液等が挙げられ、細胞の例として、例えば末梢血細胞、細胞を含むリンパ液及び組織液、毛母細胞、口腔細胞、鼻腔細胞、腸管細胞、膣内細胞、粘膜細胞、喀痰(肺胞細胞又は気肝細胞等を含み得る)が挙げられる。組織の例として、病変部位、例えば、リンパ節、骨髄、脾臓、胸腺、及び肝臓等が挙げられ、例えばこれらの組織の生検サンプルを用いることができる。
【0041】
挿入工程では、インターカレーターを核酸プローブに挿入可能である限り限定されず、インターカレーターとサンプルを単に混合してもよいし、水及びバッファー等の媒体中で混合してもよい。また、ゲルシフトアッセイ等のように、標的物質がゲル上に存在する場合には、インターカレーターを含む溶液をゲル中に浸透させてもよい。インターカレーターの詳細については「1.標的物質検出用核酸プローブ」において記載した通りであるから記載を省略する。
【0042】
検出工程では、インターカレーターの蛍光等のシグナルに基づいて、核酸プローブを検出する。本工程で、標的物質に結合した核酸プローブが検出されれば、サンプル中に標的物質が存在したと推定することができる。
【0043】
一実施形態において、検出工程は、ゲルシフトアッセイ又はフローサイトメトリーによる。ゲルシフトアッセイ(EMSA:Electrophoresis Mobility Shift Assay、電気泳動度移動度アッセイとも呼ばれる)とは、タンパク質に結合した核酸分子が、核酸分子のみの場合よりも総体として分子量が大きくなり、移動度が異なることを利用してタンパク質に結合した核酸分子を分離及び可視化する手法である。フローサイトメトリーとは、液体中に懸濁させた細胞及び粒子等の数、個々の物理的・化学的・生物学的性状を計測する手法を指す。フローサイトメトリーは、好ましくは細胞を解析するFACS(fluorescence activated cell sorting、蛍光活性細胞分別)である。
【0044】
本方法は、接触工程の後挿入工程の前、又は挿入工程の後検出工程の前に、標的物質に結合した核酸プローブと、標的物質に結合していない核酸プローブを分離する工程(分離工程)を任意に含む。分離工程は、公知の方法、例えばゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、HPLC等のクロマトグラフィー、硫安分画、限外ろ過、及び免疫吸着法のいずれか一つ、又はこれらを二以上組み合わせて用いることによって行うことができる。また、分離工程は、サンプル又は核酸プローブのいずれかを固体支持体に固定しておき、結合が生じなかったもの又は非特異的結合が生じたものを水及びバッファー等の溶液により洗浄することにより行うこともできる。
【0045】
一態様において、本発明は「1.標的物質検出用核酸プローブ」に記載の核酸プローブを用いて、標的物質の量を測定する方法に関する。本方法は、接触工程、挿入工程、及び任意の分離工程に加えて、インターカレーターに基づいて標的物質に結合した核酸プローブの量を測定する工程(測定工程)、及び標的物質に結合した核酸プローブの量に基づいて標的物質の量を推定する工程(推定工程)を含む。接触工程、挿入工程、及び任意の分離工程については、上記標的物質の有無を検出する方法において記載したのと同様であるからここでは記載を省略する。
【0046】
測定工程は、上記検出工程と同様に行うことができる。すなわち、インターカレーターの蛍光等のシグナルに基づいて、核酸プローブの量を測定することができる。本工程において、核酸プローブの量は、インターカレーターのシグナル強度として表される。一実施形態において、測定工程は、ゲルシフトアッセイ又はフローサイトメトリーによる。
【0047】
推定工程では、核酸プローブの量(インターカレーターのシグナル強度)に基づいて、サンプル中に含まれる標的物質の量を推定する。例えば、予め既知の量の標的物質(参照)とシグナル強度の相関関係を明らかにし、検量線等を作成しておき、これに基づいてシグナル強度から標的物質の量を推定することができる。
【0048】
一実施形態において、本発明は、ELISAのサンドイッチ法を利用して、二次抗体の代わりに本発明の核酸プローブを用いて、標的物質の有無を検出又は量を測定する。具体的には、一次抗体を用いて標的物質又はサンプルを支持体に固定し、ここに核酸プローブを加え、標的物質又はサンプルに結合しなかった核酸プローブを除去し、インターカレーターに基づいて標的物質に結合した核酸プローブの有無を検出又は量を測定することができる。
【0049】
また、本発明の標的物質の有無を検出する方法及び標的物質の量を測定する方法は、一つの標的物質又はサンプルに対して行ってもよいし、複数の標的物質又はサンプルに対して行ってもよい。複数の標的物質又はサンプルを対象とする場合、例えばタンパク質又は化学物質を配置したプロテインアレイ又はケミカルアレイに対し、本発明の方法を適用することができる。
【実施例】
【0050】
<実施例1:RNAアプタマーを含む核酸センシングプローブの合成と標的タンパク質に対する結合性の評価>
[材料と方法]
(プラスミドの構築)
ストレプトアビジンに特異的に結合するRNAアプタマーS1mtをコードするプラスミド pET28b-T7-S1mtを構築した。まず、pET28b (Novagen)を出発点とし、制限酵素SalI、BglIIにより消化した直鎖状プラスミドDNAを得るため、pET28b (146 ng/μl、27.4 μl)、SalI (2 μl)、BglII (2 μl)、10 x H buffer (10 μl)を混合し、滅菌水で100 μlにメスアップし、37 ℃で一晩インキュベートションした。そして、制限酵素で消化した直鎖状プラスミドをゲル精製するため、直鎖状プラスミドDNAを滅菌水で180 μlにメスアップし、10 x loading dyeを20 μl加えて、アガロースゲル (0.75 % Sea Plaque Agarose)にローディングした。電気泳動は、室温 (定電圧 100 V, 30 分)で行った後、ゲルを染色するため、EtBr水溶液(1/10,000)に30分以上浸した。その染色の後、ハンディ型UVランプ (Handy UV Lamp SLUV-6、AS ONE)でUV (362 nm)を照射し、必要なバンドを含むゲルを切り出した。また、この切り出したゲルからの直鎖状プラスミドDNAの抽出は、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN)を利用した。
【0051】
続いて、RNAアプタマーS1mt (GGCCGCCGACCAGAAUCAUGCAAGUGCGUAAGAUAGUCGCGGGUCGGCGGCC(配列番号:1))をコードしたDNAフラグメントを合成した。ここでは、ssDNA SalI-T7-S1mt-BglII (TCGACTTAATACGACTCACTATAGGCCGCCGACCAGAATCATGCAAGTGCGTAAGATAGTCGCGGGTCGGCGGCCAAAAAAAA(配列番号:2))とその相補鎖のssDNAのリン酸化を行うため、100 mM ssDNA (1.0 μl)、10 mM ATP (2.5 μl)、10 x T4 PNK buffer (2.5 μl)、滅菌水 (17.5 μl)を混合した後、T4 Polynucleotide Kinase (1.5 μl)を加え、37 ℃で45分間インキュベーションした。次に、リン酸化したssDNAと相補鎖ssDNAを混合し、95 ℃で2.5分間インキュベーションした後、室温で30分以上放置し、ゆっくりと冷ますことで、ハイブリダイゼーションを行った。
【0052】
得られたDNAフラグメント (75 fmol)と上記でゲル精製した直鎖状プラスミドDNA (3.125 fmol)を混合し、その混合溶液と同量のLigation Mix (TaKaRa)を加えて、16 ℃で3時間インキュベーションすることで、ライゲーションを行った。
【0053】
次に、トランスフォーメーションを行うため、氷浴上で溶かしたE.coli DH5α competent cell (TaKaRa、5 μl)と上記で構築したプラスミドDNA (pET28b-T7-S1mt)を氷浴上で混合し、42 ℃のウォーターバスで1分間温めた後、すぐに氷浴に戻して急冷した。そして、クリーンベンチ内でSOC培地 (TaKaRa、200 μl)を加え、Kanamycinを含有したLBプレート培地にセルスクレーパーを用いて均一にまき、37 ℃で一晩インキュベーションした。そして、翌日、トランスフォーメーションしたプレートにコロニーが増えていることを確認し、4点のシングルコロニーを選定し、オートクレーブした爪楊枝で採取した。さらに、Kanamycinを含有したLBプレート培地(マスタープレート)に添加すると共に、Kanamycin含有LB培地 (5 ml)を入れた試験管内に爪楊枝を投入した。そして、その試験管を37 ℃、150 rpmで一晩ほど振とう、培養し、マスタープレートは37 ℃で一晩ほどインキュベーションした。
【0054】
続いて、QIA prep Spin Miniprep Kit (QIAGEN)を使ってミニプレップを行った。まず試験内で培養した大腸菌をLB培地ごと3本の1.5 mlサンプルチューブに分注し、8,000 rpmで2分間遠心した。次に沈殿した大腸菌ペレットに触れないように、上澄みを除き、P1 buffer (250 μl)を加え、懸濁して集菌した。そして、P2 buffer (250 μl)を加え、転倒混和することで溶菌させた後、N3 buffer (350 μl)を加えて直ちに転倒混和し、完全に混和させることで、不用なタンパク質等とpET28b-T7-S1mtを分離した。そして、13,000 rpmで10分間遠心し、夾雑物を沈殿させた。さらに、そのペレットに触れないように上清を取り、カラムに移し、13,000 rpmで1分間遠心し、ろ液は廃棄した。続いて、PE buffer (600 μl)をカラムに添加し、13,000 rpmで1分間遠心して洗浄した。また、再度ろ液を廃棄して、13,000 rpmで1分間遠心し、残留しているPE bufferを除いた。最後にカラムを新しい1.5 mlサンプルチューブにセットし、滅菌水 (53 μl)をカラムに添加し、1分間静置した後、10,000 rpmで1分間遠心し、プラスミドDNAとしてのpET28b-T7-S1mtを溶出・回収した。
【0055】
また、上記のプラスミドpET28b-T7-S1mtを構築した手順に従い、アデニンが8個連結した配列をコードするプラスミドpET28b-T7-A8を構築した。このプラスミドの制限酵素サイトSalIとBglIIの間には、ssDNA SalI-T7-A8-BglII (TCGACTTAATACGACTCACTATAGGCAAAAAAAA(配列番号:3))の配列が挿入されている。
【0056】
(核酸プローブの合成)
上記で得られたプラスミドDNAを鋳型としてS1mt-ssRNA(single stranded RNA:一本鎖RNA、以下単にssRNAとする)(200)(配列番号:12)を試験管内で合成するため、鋳型DNAのPCRによる合成を行った。まず、滅菌水 (392 μl)、5 x GXL buffer (140 μl)、2.5 mM dNTP (56 μl)、10 μM Forward Primer (14 μl)、10 μM Reverse Primer (14 μl)、1 ng/μl プラスミドDNA (70 μl)を混合した後、Prime STAR GXL (14 μl)を加えて、PCRチューブに25 μlずつ分注し、PCRを実行した。PCR条件としては、二本鎖DNAの熱変性、アニーリング、伸長反応の温度と時間を[98℃, 10 sec. → 52℃, 15 sec. → 68℃, 10 sec]と設定し、これを1サイクルとして22サイクル実施した。
【0057】
次に、合成した鋳型DNAを滅菌水で135 μlにメスアップし、10 x loading dyeを15 μl加えて、アガロースゲル (2% Sea Plaque Agarose)に150 μlローディングした。電気泳動は、室温 (定電圧 100 V, 40分)で行った後、ゲルを染色するため、EtBr水溶液 (1/10,000)に30分以上浸した。そして、ハンディ型UVランプ (Handy UV Lamp SLUV-6、AS ONE)でUV (362 nm)を照射し、必要なバンドを含むゲルを切り出した。また、この切り出したゲルからのDNA抽出操作は、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN)を利用した。
【0058】
続いて、鋳型DNAを用いた試験管内転写によりS1mt-ssRNA(200)を合成するため、鋳型DNA (1.8 μg)を滅菌水 (25 μl)、5 x T7 Trans buffer (10 μl)、rNTP (rATP、rCTP、rGTP、rUTP) (100 mM each、10 μl)、T7 Enz. Mix RNA Polymerase (5 μl)に混合し、37 ℃で2.5時間インキュベーションした。その後、RQ1 RNase free DNase (5 μl)を加え、さらに37 ℃で1時間インキュベーションを行った。そして、合成したRNAを精製するため、上記の溶液にBuffer RLT (QIAGEN、175 μl)、β-メルカプトエタノール(1.75 μl)、エタノール (125 μl)を順に加え、その都度、よくピペッティングして混合した。また、その混合液をRNase Spin Column (QIAGEN、以下カラム)に添加し、10,000 rpmで1分間、遠心を行い、ろ液は廃棄した。次に、Buffer RPE (QIAGEN、500 μl)をカラムに添加し、10,000 rpmで 1分間、遠心する操作を二回繰り返した後、ろ液を廃棄し、10,000 rpmで1分間、再度遠心した。さらに、カラムをRNase freeのサンプルチューブにセットし、滅菌水 (55 μl)を加え、2.5時間静置した後、10,000 rpmで2分間、遠心し、精製した RNAを溶出・回収した。上記の合成に使用したプラスミドDNA及びプライマーペアを以下に示す。
プラスミド pET28b-T7-S1mt
Forward Primer fp-T7-pET28b (CTTAATACGACTCACTATAGG(配列番号:4))
Reverse Primer rp-pET28b-200 (GTGCATGCAAGGAGATG(配列番号:5))
【0059】
上記と同様の手順で、S1mt-ssRNA(200)の相補鎖となる一本鎖C-ssRNA(200)(配列番号:13)の合成を行うため、鋳型DNAの合成を行った。まず、滅菌水 (168 μl)、5 x GXL buffer (60 μl)、2.5 mM dNTP (24 μl)、10 μM Forward Primer (6 μl)、10 μM Reverse Primer (6 μl)、1 ng/μl プラスミドDNA (30 μl)を混合した後、Prime STAR GXL (6 μl)を加えて、PCRチューブに25 μlずつ分注し、PCRを実行した。PCR条件としては、二本鎖DNAの熱変性、アニーリング、伸長反応の温度と時間を[98℃, 10 sec. → 55℃, 15 sec. → 68℃, 15 sec]と設定し、これを1サイクルとして19サイクル実施した。
【0060】
次に、鋳型DNAを用いた試験管内転写によりC-ssRNA(200)を合成するため、鋳型DNA (2 μg)を滅菌水 (25 μl)、5 x T7 Trans buffer (10 μl)、 rNTP (rATP、rCTP、rGTP、rUTP) (100 mM each、10 μl)、T7 Enz. Mix RNA Polymerase (5 μl)を混合し、37 ℃で2.5時間インキュベーションした。その後、RQ1 RNase free DNase (5 μl)を加え、さらに37 ℃で1時間インキュベーションを行った。
【0061】
続いて、合成したRNAを精製するため、上記の溶液にBuffer RLT (QIAGEN、175 μl)、β-メルカプトエタノール(1.75 μl)、エタノール (125 μl)を順に加え、その都度、よくピペッティングして混合した。そして、その混合液を RNase Spin Column (QIAGEN、以下カラム)に添加し、10,000 rpmで1分間、遠心を行い、ろ液は廃棄した。次に、Buffer RPE (QIAGEN、500 μl)をカラムに添加し、10,000 rpmで1分間、遠心する操作を二回繰り返した後、ろ液を廃棄し、10,000 rpmで1分間、再度遠心した。そして、カラムをRNase free のサンプルチューブにセットし、滅菌水 (55 μl)を加え、2.5時間静置し、10,000 rpm で 2分間、遠心することで、精製したRNAを溶出・回収した。上記の合成に使用したプラスミドDNA及びプライマーペアを以下に記す。
プラスミド pET28b-T7-S1mt
Forward Primer fp-after-RNA (GATCTCGATCCTCTACG(配列番号:6))
Reverse Primer T7-rp-pET28b-200 (TTAATACGACTCACTATAGGTGCATGCAAGGAGATG(配列番号:7))
【0062】
上記で精製したS1mt-ssRNA(200)とC-ssRNA(200)をハイブリダイゼーションさせることで、S1mt-dsRNA(double stranded RNA:二本鎖RNA、以下単にdsRNAとする)(200)の合成を行った。ここでは、S1mt-ssRNA(200) (19.45 μM、1.03 μl)、C-ssRNA(200) (28.9 μM、0.69 μl)、MOPS buffer (18.3 μl)を混合し、95 ℃で2.5 分間インキュベーションし、その後、室温に30分以上放置し、ゆっくりと冷ますことで、ハイブリダイゼーションをさせた。また、電気泳動によりS1mt-dsRNA(200)の生成確認を行った。
【0063】
次に、二本鎖部位を伸長したS1mt-dsRNA(400)の合成を行った。まず、上記で得られたプラスミドDNAを鋳型としてS1mt-ssRNA(400)(配列番号:14)を試験管内で合成するため、鋳型DNAのPCRによる合成を行った。ここでは、滅菌水 (336 μl)、5 x GXL buffer (120 μl)、2.5 mM dNTP (48 μl)、10 μM Forward Primer (12 μl)、10 μM Reverse Primer (12 μl)、1 ng/μl プラスミドDNA (60 μl)を混合した後、Prime STAR GXL (12 μl) を加えて、PCRチューブに25 μl ずつ分注し、PCRを実行した。PCR条件としては、二本鎖DNAの熱変性、アニーリング、伸長反応の温度と時間を[98℃, 10 sec. → 52℃, 15 sec. → 68℃, 25 sec]と設定し、これを1サイクルとして20 サイクル実施した。
【0064】
続いて、合成した鋳型DNA を滅菌水で135 μl にメスアップし、10 x loading dye を15 μl加えて、アガロースゲル(2% Sea Plaque Agarose) に 150 μl ローディングした。電気泳動は、室温 (定電圧 100 V, 40分)で行った後、ゲルを染色するため、EtBr水溶液(1/10,000)に30分以上浸した。そして、ハンディ型UVランプ(Handy UV Lamp SLUV-6、AS ONE)でUV(362 nm)を照射し、必要なバンドを含むゲルを切り出した。また、この切り出したゲルからのDNA抽出操作は、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN)を利用した。
【0065】
さらに、鋳型DNAを用いた試験管内転写によりS1mt-ssRNA(400)を合成するため、鋳型DNA (1.3 μg)を滅菌水 (12.5 μl)、5 x T7 Trans buffer (5 μl)、rNTP (rATP、rCTP、rGTP、rUTP) (100 mM each、5 μl)、T7 Enz. Mix RNA Polymerase (2.5 μl)を混合し、37 ℃で3時間インキュベーションした。その後、滅菌水 (15 μl)、5 x T7 Trans buffer (5 μl)、rNTP (rATP、rCTP、rGTP、rUTP) (100 mM each、5 μl)を混合し、RQ1 RNase free DNase (5 μl)を加え、さらに、37 ℃で1時間インキュベーションを行った。そして、合成したRNAを精製するため、上記の溶液にBuffer RLT (QIAGEN、175 μl)、β-メルカプトエタノール(1.75 μl)、エタノール (125 μl)を順に加え、その都度、よくピペッティングして混合した。また、その混合液をRNase Spin Column (QIAGEN、以下カラム)に添加し、10,000 rpmで1分間、遠心を行い、ろ液は廃棄した。次に、Buffer RPE (QIAGEN、500 μl)をカラムに添加し、10,000 rpmで 1分間、遠心する操作を二回繰り返した後、ろ液は廃棄し、10,000 rpmで 1分間、再度遠心した。さらに、カラムをRNase freeのサンプルチューブにセットし、滅菌水 (55 μl)を加え、2.5時間静置した後、10,000 rpmで 2分間、遠心することで、精製したRNAを溶出・回収した。上記の合成に使用したプラスミドDNA及びプライマーペアを以下に示す。
プラスミド pET28b-T7-S1mt
Forward Primer fp-T7-pET28b(配列番号:4)
Reverse Primer rp-pET28b-400(GCGACATCGTATAACGTTAC(配列番号:8))
【0066】
上記と同様の手順により、S1mt-ssRNA(400)の相補鎖となる一本鎖C-ssRNA(400)(配列番号:15)を試験管内で合成するため、鋳型DNAの合成を行った。まず、滅菌水 (336 μl)、5 x GXL buffer (120 μl)、2.5 mM dNTP (48 μl)、10 μM Forward Primer (12 μl)、10 μM Reverse Primer (12 μl)、1 ng/μl プラスミドDNA (60 μl)を混合した後、Prime STAR GXL (12 μl)を加えて、PCRチューブに25 μlずつ分注し、PCRを実行した。PCR条件としては、二本鎖DNAの熱変性、アニーリング、伸長反応の温度と時間を[98℃, 10 sec. → 55℃, 15 sec. → 68℃, 25 sec]と設定し、これを1サイクルとして19サイクル実施した。
【0067】
続いて、合成した鋳型DNA を滅菌水で135 μlにメスアップし、10 x loading dye を15 μl加えて、アガロースゲル (2% Sea Plaque Agarose)に150 μlローディングした。電気泳動は、室温 (定電圧 100 V, 40分)で行った後、ゲルを染色するため、EtBr水溶液(1/10,000)に30分以上浸した。そして、ハンディ型UVランプ (Handy UV Lamp SLUV-6、AS ONE)でUV (362 nm)を照射し、必要なバンドを含むゲルを切り出した。また、切り出したゲルからのDNA抽出操作は、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN)を利用した。
【0068】
次に、鋳型DNAを用いた試験管内転写によりC-ssRNA(400)を合成するため、鋳型DNA (2.3 μg)を滅菌水 (25 μl)、5 x T7 Trans buffer (10 μl)、rNTP (rATP、rCTP、rGTP、rUTP) (100 mM each、10 μl)、T7 Enz. Mix RNA Polymerase (5 μl)を混合し、37 ℃で3時間インキュベーションした。その後、RQ1 RNase free DNase (5 μl)を加え、さらに、37 ℃で1時間インキュベーションを行った。続いて、合成したRNAを精製するため、上記の溶液にBuffer RLT (QIAGEN、175 μl)、β-メルカプトエタノール(1.75 μl)、エタノール (125 μl)を順に加え、その都度、よくピペッティングして混合した。そして、その混合液をRNase Spin Column (QIAGEN、以下カラム)に添加し、10,000 rpmで1分間、遠心を行い、ろ液は廃棄した。次に、Buffer RPE (QIAGEN、500 μl)をカラムに添加し、10,000 rpmで1分間、遠心する操作を二回繰り返した後、ろ液を廃棄し、10,000 rpmで1分間、再度遠心した。そして、カラムをRNase freeのサンプルチューブにセットし、滅菌水 (55 μl)を加え、2.5時間静置した後、10,000 rpmで2分間、遠心することで、精製したRNAを溶出・回収した。上記の合成に使用したプラスミドDNA及びプライマーペアを以下に示す。
プラスミド pET28b-T7-S1mt
Forward Primer fp-after-RNA(配列番号:6)
Reverse Primer T7-rp-pET28b-400(TTAATACGACTCACTATAGGCGACATCGTATAACGTTAC(配列番号:9))
【0069】
上記で精製したS1mt-ssRNA(400)とC-ssRNA(400)をハイブリダイゼーションさせることで、S1mt-dsRNA(400)の合成を行った。ここでは、S1mt-ssRNA(400) (16.27 μM、1.23 μl)、C-ssRNA(400) (21.76 μM、0.83 μl)、Tris-HCl buffer (20 mM Tris-HCl、150 mM NaCl、5 mM MgCl2、17.9 μl)を混合し、95 ℃で2.5分間インキュベーションした後、室温に30分以上放置し、ゆっくりと冷ますことで、ハイブリダイゼーションをさせた。また、電気泳動によりS1mt-dsRNA(bb-ds)の生成確認を行った。
【0070】
(対照核酸分子であるA8-dsRNA(200)及びA8-dsRNA(400)の調製)
まず、A8-ssRNA(200)(配列番号:16)を試験管内で合成するため、鋳型DNAの合成を行った。滅菌水 (168 μl)、5 x GXL buffer (60 μl)、2.5 mM dNTP (24 μl)、10 μM Forward Primer (6 μl)、10 μM Revers Primer (6 μl)、1 ng/μl プラスミドDNA (30 μl)を混合した後、Prime STAR GXL (6 μl)を加えて、PCRチューブに25 μlずつ分注し、PCRを実行した。PCR条件としては、二本鎖DNAの熱変性、アニーリング、伸長反応の温度と時間を[98℃, 10 sec. → 55℃, 15 sec. → 68℃, 15 sec.]と設定し、これを1サイクルとして20サイクル実施した。
【0071】
次に、鋳型DNAを用いた試験管内転写によりA8-ssRNA(200)を合成するため、鋳型DNA (1 μg)を滅菌水 (12.5 μl)、5 x T7 Trans buffer (5 μl)、rNTP (rATP、rCTP、rGTP、rUTP) (100 mM each、5 μl)、T7 Enz. Mix RNA Polymerase (2.5 μl)を混合し、37 ℃で 2.5時間インキュベーションした。その後、RQ1 RNase free DNase (2.5 μl)を加え、さらに、37 ℃で1時間インキュベーションを行った。
【0072】
さらに、合成したRNAを精製するため、上記の溶液にBuffer RLT (QIAGEN、87.5 μl)、β-メルカプトエタノール (0.875 μl)、エタノール (62.5 μl)を順に加え、その都度、よくピペッティングして混合した。そして、その混合液をRNase Spin Column (QIAGEN、以下カラム)に添加し、10,000 rpmで 1分間、遠心を行い、ろ液は廃棄した。次に、Buffer RPE (QIAGEN、500 μl)をカラムに添加し、10,000 rpmで1分間、遠心する操作を二回繰り返した後、ろ液を廃棄し、10,000 rpmで1分間、再度遠心した。そして、カラムをRNase freeのサンプルチューブにセットし、滅菌水 (55 μl)を加え、2.5 時間静置し、10,000 rpmで2分間、遠心し、精製したRNAを溶出・回収した。上記の合成に使用したプラスミドDNA及びプライマーペアを以下に記す。
プラスミド pET28b-T7-A8
Forward Primer fp-T7-pET28b(配列番号:4)
Revers Primer rp-pET28b-200(配列番号:8)
【0073】
最後に、A8-ssRNA(200) (25.2 μM、0.79 μl)、上記C-ssRNA(200) (25.7 μM、0.78 μl)、MOPS buffer (18 μl)、滅菌水 (0.43 μl)を混合し、95 ℃で2.5分間インキュベーションした。そして、室温に30分以上放置し、ゆっくりと冷ますことで、ハイブリダイゼーションを進行させることで、A8-dsRNA(200)を合成した。
【0074】
A8-dsRNA(400)の合成は、A8-dsRNA(200)の合成法に従い、A8-ssRNA(400)(配列番号:17)と実施例1で合成したC-ssRNA(400)をハイブリダイゼーションさせることで実施した(但し、A8-ssRNA(400)の合成に必要な鋳型DNAは、プラスミドpET28b-T7-A8、Forward Primer fp-T7-pET28b、Reverse Primer rp-pET28b-400を使用したPCRにより合成した)。
【0075】
(EMSAによるS1mt-dsRNA(n)の標的結合性の評価)
上記の通り合成したS1mt-dsRNA(200)及びS1mt-dsRNA(400)の標的分子ストレプトアビジンに対する特異的な結合性をEMSAにより評価した。
【0076】
ストレプトアビジン(1 μM、3 μl)に対して、S1mt-dsRNA(200)又はS1mt-dsRNA(400) (0.2 μM、1.5 μl)、Tris-HCl buffer (4.5 μl)を混合し、室温で15分以上インキュベーションした。また、ネガティブコントロールとしてストレプトアビジンの代わりにhDHFR(ATGEN)を用いたもの、及びS1mt-dsRNA(200)又はS1mt-dsRNA(400)の代わりにA8-dsRNA(200)又はA8-dsRNA(400)を用いたものも準備した。その後、グリセロール (1 μl)を加え、4 % ポリアクリルアミドゲルにこれらを10 μlずつローディングした。電気泳動は、氷冷下 (定電圧 130 V, 73分)で行った後、ゲルの染色のため、EtBr水溶液 (1/10,000)に15分以上浸した。また、核酸センシングプローブのバンドパターンをバイオイメージャー(BioDoc-IT Imaging system、UVP)により評価した。
【0077】
[結果]
(S1mt-dsRNA(n)の合成 (n= 200, 400))
S1-ssRNA(200)、C-ssRNA(200)、そして、それらssRNAのハイブリダイゼーションにより合成したS1mt-dsRNA(200)を電気泳動により評価した。その結果、いずれも一本のバンドとして確認することができた(
図4A、レーン1~3)。これにより、S1mt-dsRNA(200)が単一に合成できていることが明らかとなった。同様に、S1-ssRNA(400)、C-ssRNA(400)、そして、それらssRNAのハイブリダイゼーションにより合成したS1mt-dsRNA(400)を電気泳動により評価した。その結果、S1mt-ssRNA(400)及びS1mt-dsRNA(400)においては、一本のバンドを観測し、C-ssRNA(400)では2本のバンドを観測した(
図4B、レーン1~3)。C-ssRNA(400)は、C-ssRNA(200)に比べ、ssRNA鎖が長いため、室温条件下では2種類の構造を有することが考えられる。しかし、S1mt-dsRNA(400)の電気泳動では一本のバンドを観測したことから、ハイブリダイゼーションすることで単一のS1mt-dsRNA(400)が生成したと考えられる。
【0078】
(S1mt-dsRNA(n)のゲルシフトアッセイによる結合性の評価)
ストレプトアビジンとS1mt-dsRNA(200)もしくはS1mt-dsRNA(400)を混合した溶液において、完全にシフトした新たなバンドをいずれも観測した(
図4A及びB、レーン4)。一方、hDHFRと混合したレーンでは、S1mt-dsRNA(200)及びS1mt-dsRNA(400)のどちらにおいてもバンドシフトは観測されなかった(
図4A及びB、レーン5)。同様に、A8-dsRNAとストレプトアビジンを混合した場合にもバンドシフトは観測されなかった(
図4A及びB、レーン7)。つまり、新たなバンドの出現とシフトは、RNAアプタマーS1mtを有する核酸センシングプローブが標的タンパク質であるストレプトアビジンに結合したことを示している。
【0079】
<実施例2:RNAモチーフを含む核酸センシングプローブb-dsRNA(n)及びbb-dsRNA(n)の合成と標的タンパク質に対する結合性の評価>
[材料と方法]
(プラスミドの構築)
上記のプラスミドpET28b-T7-S1mtを構築した手順に従い、RNAモチーフ「boxB」の配列(GGCCCTGAAAAAGGGCC)をコードするプラスミドpET28b-T7-boxBを構築した。このプラスミドの制限酵素サイトSalIとBglIIの間には、ssDNA SalI-T7-boxB-BglII (TCGACTTAATACGACTCACTATAGGCCCTGAAAAAGGGCCAAAAAAAA(配列番号:10))の配列が挿入されている。
【0080】
上記のプラスミドpET28b-T7-S1mtを構築した手順に従い、アデニンが8個連結した配列を介してboxBの配列が二つ連結した配列をコードするプラスミドpET28b-T7-boxB-A8-boxBを構築した。このプラスミドの制限酵素サイトSalIとBglIIの間には、ssDNA SalI-T7-boxB-A8-boxB-BglII (TCGACTTAATACGACTCACTATAGGCCCTGAAAAAGGGCCAAAAAAAAGGCCCTGAAAAAGGGCCAAAAAAAA(配列番号:11))の配列が挿入されている。
【0081】
(一本鎖RNAの合成)
boxBのRNAモチーフを一つ有するb-ssRNA(200)(配列番号:18)及び二つ有するbb-ssRNA(200)(配列番号:19)の合成を行った。
【0082】
まず、boxB配列を有するRNAモチーフをコードするプラスミドDNAを鋳型としてb-ssRNA(200)を試験管内で合成するため、滅菌水 (168 μl)、5 x GXL buffer (60 μl)、2.5 mM dNTP (24 μl)、10 μM Forward Primer (6 μl)、10 μM Reverse Primer (6 μl)、1 ng/μl プラスミドDNA (30 μl)を混合した後、Prime STAR GXL (6 μl)を加えて、PCRチューブに25 μlずつ分注し、PCRを実行した。PCR条件としては、二本鎖DNAの熱変性、アニーリング、伸長反応の温度と時間を[98℃, 10 sec. → 55℃, 15 sec. → 68℃, 15 sec]と設定し、これを1サイクルとして20サイクル実施した。
【0083】
次に、鋳型DNAを用いた試験管内転写によりb-ssRNA(200)を合成するため、鋳型DNA (1 μg)を滅菌水 (12.5 μl)、5 x T7 Trans buffer (5 μl)、 rNTP (rATP、rCTP、rGTP、rUTP) (100 mM each、5 μl)、T7 Enz. Mix RNA Polymerase (2.5 μl)を混合し、37℃で 2.5時間インキュベーションした。その後、RQ1 RNase free DNase (5 μl)を加え、さらに37℃で1時間インキュベーションを行った。
【0084】
続いて、合成したRNAを精製するため、上記の溶液にBuffer RLT (QIAGEN、87.5 μl)、β-メルカプトエタノール (0.875 μl)、エタノール (62.5 μl)を順に加え、その都度、よくピペッティングして混合した。そして、その混合液をRNase Spin Column (QIAGEN、以下カラム)に添加し、10,000 rpmで1分間、遠心を行い、ろ液は廃棄した。次に、Buffer RPE (QIAGEN、500 μl)をカラムに添加し、10,000 rpm で1分間、遠心する操作を二回繰り返した後、ろ液を廃棄し、10,000 rpmで1分間、再度遠心した。そして、カラムをRNase freeのサンプルチューブにセットし、滅菌水 (55 μl)を加え、2.5時間静置した後、10,000 rpmで2分間、遠心することで、精製したRNAを溶出・回収した。上記のb-ssRNA(200)の合成に使用したプラスミドDNA及びプライマーペアを以下に示す。
プラスミド pET28b-T7-boxB
Forward Primer fp-T7-pET28b (配列番号:4)
Reverse Primer rp-pET28b-200 (配列番号:5)
【0085】
上記と同様の手順で、boxB配列のRNAモチーフを二つ有するbb-ssRNA(200)を試験管内で合成するため、鋳型DNAのPCRによる合成を行った。まず、滅菌水 (168 μl)、5 x GXL buffer (60 μl)、2.5 mM dNTP (24 μl)、10 μM Forward Primer (6 μl)、10 μM Reverse Primer (6 μl)、1 ng/μl プラスミドDNA (30 μl)を混合した後、Prime STAR GXL (6 μl)を加えて、PCRチューブに25 μlずつ分注し、PCRを実行した。PCR条件としては、二本鎖DNAの熱変性、アニーリング、伸長反応の温度と時間を[98℃, 10 sec. → 55℃, 15 sec. → 68℃, 15 sec]と設定し、これを1サイクルとして22サイクル実施した。
【0086】
次に、鋳型DNAを用いた試験管内転写によりb-ssRNA(200)を合成するため、鋳型DNA (1 μg)を滅菌水 (12.5 μl)、5 x T7 Trans buffer (5 μl)、 rNTP (rATP、rCTP、rGTP、rUTP) (100 mM each、5 μl)、T7 Enz. Mix RNA Polymerase (2.5 μl)を混合し、37℃で 2.5時間インキュベーションした。その後、RQ1 RNase free DNase (5 μl)を加え、さらに37℃で1時間インキュベーションを行った。
【0087】
続いて、合成したRNAを精製するため、上記の溶液にBuffer RLT (QIAGEN、87.5 μl)、β-メルカプトエタノール (0.875 μl)、エタノール (62.5 μl)を順に加え、その都度、よくピペッティングして混合した。そして、その混合液をRNase Spin Column (QIAGEN、以下カラム)に添加し、10,000 rpmで1分間、遠心を行い、ろ液は廃棄した。次に、Buffer RPE (QIAGEN、500 μl)をカラムに添加し、10,000 rpmで1分間、遠心する操作を二回繰り返した後、ろ液を廃棄し、10,000 rpmで1分間、再度遠心した。そして、カラムをRNase freeのサンプルチューブにセットし、滅菌水 (55 μl)を加え、2.5 時間静置した後、10,000 rpmで2分間、遠心し、精製したRNAを溶出・回収した。上記のbb-ssRNA(200)の合成に使用したプラスミドDNA及びプライマーペアを以下に示す。
プラスミド pET28b-T7-boxB-A8-boxB
Forward Primer fp-T7-pET28b (配列番号:4)
Reverse Primer rp-pET28b-200 (配列番号:5)
【0088】
(二本鎖dsRNAの合成)
上記で精製したb-ssRNA(200)及びbb-ssRNA(200)は、実施例1で合成したC-ssRNA(200)とそれぞれハイブリダイゼーションさせることで、b-dsRNA(200)及びbb-dsRNA(200)を合成した。まず、b-ssRNA(200) (23.6 μM、0.85 μl)、C-ssRNA(200) (28.9 μM、0.69 μl)、MOPS buffer (18.46 μl)を混合し、95 ℃で2.5分間インキュベーションした後、室温で30分以上放置し、ゆっくりと冷ますことで、ハイブリダイゼーションを行った。同様に、bb-ssRNA(200) (22.8 μM、0.9 μl)、C-ssRNA(200) (28.9. μM、0.69 μl)、MOPS buffer (18.43 μl)を混合し、95 ℃で2.5分間インキュベーションした後、室温で30分以上放置し、ゆっくりと冷ますことで、ハイブリダイゼーションを行った。
【0089】
(標的タンパク質及び翻訳液の調製)
上記のプラスミドpET28b-T7-S1mtを構築した方法をもとに、C末端にFLAGタグを有し、N末端にboxB(λファージ由来RNAモチーフ)に結合するBap(λboxB結合ペプチド)を1もしくは2つ有する標的タンパク質Halo(Bap-GS2-Halo-F、及びBap-GS2-Bap-GS2-Halo-F)をコードする各種プラスミド(pET32c-Bap-GS2-Halo-F、及びpET32c-Bap-GS2-Bap-GS2-Halo-F)を構築した。ここでは使用した基礎となるプラスミドは、pET32c (Novagen)であり、pET32c-Bap-GS2-Halo-Fの制限酵素サイトNdeIとHindIIIの間には、標的タンパク質をコードする配列が挿入されている(配列番号:21)。一方、pET32c-Bap-GS2-Bap-GS2-Halo-Fの制限酵素サイトNdeIとHindIIIの間には、標的タンパク質をコードする配列が挿入されている(配列番号:22)。
【0090】
次に、標的タンパク質Bap-GS2-Halo-FをコードするmRNAを合成するため、鋳型DNAをPCRにより合成した。ここでのPCRは、上記のS1mt-ssRNAを得るために利用した鋳型DNAの合成手順をもとに実施した。但し、テンプレートとしてのプラスミドpET32c-Bap-GS2-Halo-F、Forward Primer (TAATACGACTCACTATAGGG、配列番号:23)、Reverse Primer (TCATTACTTGTCGTCATCGTC、配列番号:24)を使用している。同様に、標的タンパク質Bap-GS2-Bap-GS2-Halo-FをコードするmRNAを合成するため、鋳型DNAをPCRにより合成した。ここでのPCRは、テンプレートとしてのプラスミドpET32c-Bap-GS2-Bap-GS2-Halo-F、Forward Primer (同上)、Reverse Primer (同上)を使用して実施した。
【0091】
続いて、上記で得られた鋳型DNAの試験管内転写により、Bap-GS2-Halo-F、及びBap-GS2-Bap-GS2-Halo-FをコードするmRNAを合成した。ここでの転写は、S1mt-ssRNAを合成した手順をもとに実施した。
【0092】
そして、Bap-GS2-Halo-F、及びBap-GS2-Bap-GS2-Halo-Fの試験管内合成は、無細胞タンパク質合成キットPUREfrex 1.0 (ジーンフロンティア)を用いて、各種mRNA (12 pmol)を含有する溶液(5 μl)、Solution I (6.25 μl)、Solution II (0.625 μl)、Solution III (0.625 μl)を混合した後、37 ℃で2.5時間インキュベーションすることで実施した。
【0093】
(EMSAによる標的結合性の評価)
上記で得られたb-dsRNA(200)及びbb-dsRNA(200)と標的タンパク質である Bap-GS2-Halo-F (Rhodococcus rhodochrous由来のhaloalkane dehalogenaseの遺伝子改変産物:Promega)の特異的な結合を検出するためのゲルシフトアッセイを行った。
【0094】
ウェスタンブロットの結果より得られた比率に基づき、Bap-GS2-Halo-F (1.4 μl)の翻訳液に対して、b-dsRNA (0.2 μM、1.5 μl)又はA8-dsRNA (0.2 μM、1.5 μl)、MOPS buffer (20 mM MOPS, 100 mM NaCl)を混合した。そして、室温で15分以上インキュベーションを行った。その後、グリセロール(1 μl)を加え、4 %ポリアクリルアミドゲルに10 μl ずつローディングした。電気泳動は、室温 (定電圧 130 V, 45 分)で行った後、ゲルの染色として、EtBr水溶液 (1/10,000)に15分以上浸した。また、核酸センシングプローブのバンドパターンをバイオイメージャー (BioDoc-IT Imaging system、UVP)により評価した。さらに、bb-dsRNA(200)を使用した場合も上記と同様の手順でゲルシフトアッセイを実施した。
【0095】
(bb-dsRNA(400)の合成とEMSAによる標的結合性の評価)
二本鎖RNA部位を伸長したbb-dsRNA(400)を合成し、同様のEMSAを実施した。bb-dsRNA(400)の合成は、bb-dsRNA(200)の合成法に従い、bb-ssRNA(400)(配列番号:20)と実施例1で合成したC-ssRNA(400)をハイブリダイゼーションさせることで実施した(但し、bb-ssRNA(400)の合成に必要な鋳型DNAは、プラスミドpET28b-T7-boxB-A8-boxB、Forward Primer fp-T7-pET28b、Reverse Primer rp-pET28b-400を使用したPCRにより合成した)。また、ここで、bb-dsRNA(400)と混合するBap-GS2-Bap-GS2-Halo-Fの翻訳液の量は、2.7 μlと1.4 μlとし、上記と同様の手順でゲルシフトアッセイを行った。
【0096】
[結果]
Bap-GS2-Halo-Fとb-dsRNA(200)、そして、Bap-GS2-Halo-Fとbb-dsRNA(200)のペアにおいて、新たなバンドをそれぞれに観測した(
図5、レーン4及び6)。一方、boxBを有していないA8-dsRNA(200)を用いたレーン、標的タンパク質を含まないレーンでは、単一バンドのみを観測した(
図5、レーン1~2、3、及び5)。つまり、新たなバンドの出現は、RNAモチーフboxBを有する核酸センシングプローブとペプチドBapを含む融合タンパク質との結合に由来するものと考えられる。
【0097】
bb-dsRNA(400)について試験を行ったところ、Bap-GS2-Bap-GS2-Halo-Fの添加量が1.4 μl、2.7 μlのいずれであってもbb-dsRNA(400)とBap-GS2-Bap-GS2-Halo-Fの複合体に由来する新たなバンドを確認した(
図6、レーン2及び4)。この結果は、二本鎖RNAを伸長させた場合であっても「蛍光分子-核酸-標的タンパク質複合体」を安定に形成できることを示している。
【0098】
また、今回使用した無細胞タンパク質合成キットPUREfrex 1.0は、20種のアミノ酸、20種のアミノアシルtRNA合成酵素と共に、リボソーム等の翻訳因子等が多数含まれている。そのため、多成分が混在する溶液中であってもRNAモチーフを提示した核酸センシングプローブとペプチドとの特異的な相互作用により、標的タンパク質だけを簡便かつ迅速に検出することが可能であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明により、高感度に標的物質を検出可能なプローブが提供され、該プローブを用いた簡便且つ高感度な標的物質の検出法及び/又は測定法が提供され得る。該プローブの検出部分は、例えば特定の物質に結合可能なアプタマーとして設計することができ、特定の物質を高感度に検出可能なプローブが提供されるため、本発明の産業に与える影響は大きい。
【0100】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
【配列表】