(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】誘電体バリアプラズマ処置のための電極機構
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20221115BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20221115BHJP
A61L 2/14 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H05H1/24
A61N1/04
A61L2/14
(21)【出願番号】P 2019560140
(86)(22)【出願日】2018-07-23
(86)【国際出願番号】 EP2018069929
(87)【国際公開番号】W WO2019020569
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】102017116800.1
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512158435
【氏名又は名称】シノギー・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CINOGY GmbH
【住所又は居所原語表記】Max-Naeder-Str. 15, 37115 Duderstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】バンドケ、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ハーンル、ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】トルトビグ、レオンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ストルク、カール-オット
(72)【発明者】
【氏名】リッケ、メラニー
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-505553(JP,A)
【文献】国際公開第2017/067535(WO,A1)
【文献】特表2013-515516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00-1/54
A61N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの柔軟な面状の電極(1)と、直接的な通電を妨げる層(3)によって前記電極(1)を処置されるべき表面から遮蔽する面状の柔軟な第1の材料からなる誘電体(2)とを有する、カウンター電極として利用される物体の表面の誘電体バリアプラズマ処置のための電極機構であって、
前記誘電体(2)は
複数の突起(7)を有する構造体(4)を介して処置されるべき表面の上に載置することができ、その際に前記突起(7)の間に、処置されるべき表面に向かって開いた側と、前記誘電体(2)の前記直接的な通電を妨げる層(3)によ
って遮蔽される底面側とを有する、プラズマの形成のための空気スペース(5)が形成される電極機構において、
前記構造体(4)が、前記第1の材料の柔軟性よりも柔軟性が低い第2の材料からなる多数のスペーサ部材(6)を有し、前記構造体(4)の前記突起(7)は部分的または全面的に前記スペーサ部材(6)によって形成されることを特徴とする電極機構。
【請求項2】
前記スペーサ部材(6)は前記スペーサ部材(6)よりも低い曲げ剛性および/または低いねじり剛性を有する接続区域(18)を介して相互に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の電極機構。
【請求項3】
前記スペーサ部材(6)は接続ウェブ(14)によって相互に接続され、このようにしてスペーサ格子を形成することを特徴とする、請求項1または2に記載の電極機構。
【請求項4】
前記スペーサ格子は一体的に構成されることを特徴とする、請求項3に記載の電極機構。
【請求項5】
前記スペーサ部材(6)は前記突起(7)を補強するために前記突起(7)の内部に埋設さ
れることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の電極機構。
【請求項6】
前記構造体(4)の前記突起(7)は前記スペーサ部材(6)と前記誘電体(2)で構成され、前記スペーサ部材(6)は前記スペーサ部材(6)を取り囲む前記誘電体(2)の中に埋設さ
れることを特徴とする、請求項5に記載の電極機構。
【請求項7】
前記スペーサ部材(6)を取り囲む前記誘電体(2)は前記誘電体(2)の前記直接的な通電を妨げる層(3)と一体的に構成されることを特徴とする、請求項6に記載の電極機構。
【請求項8】
前記構造体(4)の前記突起(7)は前記スペーサ部材(6)によって全面的に構成され、前記スペーサ部材(6)は前記電極(1)のほうを向く側で前記誘電体(2)の前記直接的な通電を妨げる層(3)と結合されるとともに、処置されるべき表面のほうを向く側で処置されるべき表面への当接面を形成することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の電極機構。
【請求項9】
前記構造体(4)は、前記空気スペース(5)を構成する多数のチャンバ(17)を区切る、互いに隣接して前記突起(7)を形成する壁部からなる格子構造体であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の電極機構。
【請求項10】
前記構造体(4)は、それぞれの中間スペースで前記空気スペース(5)を構成する、前記突起(7)を形成する突出する隆起からなることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の電極機構。
【請求項11】
前記スペーサ部材(6)は、それぞれの中間スペースで前記空気スペース(5)を構成する、突出する隆起の形態を有することを特徴とする、請求項8に記載の電極機構。
【請求項12】
前記隆起は円柱状、円錐状、または円錐台状に構成されることを特徴とする、請求項10または11に記載の電極機構。
【請求項13】
前記スペーサ部材(6)はそれぞれ周回する壁部で構成されることを特徴とする、請求項1から10または12に記載の電極機構。
【請求項14】
前記スペーサ部材(6)の前記周回する壁部はそれぞれ1つの前記空気スペース(5)を取り囲むことを特徴とする、請求項13に記載の電極機構。
【請求項15】
前記周回する壁部はそれぞれ四角形
、円形、楕円形、または多角
形の断面を有することを特徴とする、請求項13または14に記載の電極機構。
【請求項16】
前記スペーサ部材(6)および/または前記構造体(4)の前記突起(7)は統一的な高さを有することを特徴とする、請求項1から15のいずれか1項に記載の電極機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの柔軟な面状の電極と、直接的な通電を妨げる層によって電極を処置されるべき表面から遮蔽する面状の柔軟な第1の材料からなる誘電体とを有する、物体の表面の誘電体バリアプラズマ処置のための電極機構に関し、誘電体は突起を有する構造体を介して処置されるべき表面の上に載置することができ、その際にそれぞれの突起の間に、処置されるべき表面に向かって開いた側と、直接的な通電を妨げる誘電体の層による底面側の遮蔽部とを有するプラズマの形成のための空気スペースが形成される。
【背景技術】
【0002】
電極機構の少なくとも1つの電極は、好ましくは交流電圧として適用される、プラズマ生成のために必要な高圧と接続可能である。
【0003】
電極機構は、特に、処置されるべき物体の表面がカウンター電極として利用されるためにセットアップされていてよいのが好ましい。そのために物体は導電性の物体でなければならず、たとえば人間または動物の身体であり、その皮膚表面が処置されることが意図され、またはその他の導電性の物体である。
【0004】
この目的のために、たとえばただ1つの電極をプラズマの生起のために利用し、表面ないし物体をカウンター電極(アース)として利用することが可能である。それにより、物体の内部での大きい処置深さが実現されるという利点がある。
【0005】
さらに、たとえば少なくとも2つの電極を電極機構に設け、これらの電極が同一の高圧電位によって負荷されることが可能であり、それにより、電極機構が上に載置されている処置されるべき表面がプラズマ形成のためのカウンター電極として機能する。別案として、たとえば両方の電極に交流高圧を逆相で供給することが可能であり、処置されるべき表面がやはりカウンター電極として機能する。
【0006】
あるいは別案として、たとえば少なくとも2つの電極を電極およびカウンター電極として利用することも可能であり、それにより、プラズマがそれぞれの電極の間で発生し、表面プラズマとして物体内で有効となり得る。しかし、それによって通常のエネルギー注入ではわずかな処置深さしか物体領域で可能でない。
【0007】
「空気スペース」とは、本件出願の枠内では、空いたスペースであって通常は空気で満たされるが、特定の適用ケースについては、特別なプラズマを形成するために適当なガスで満たすことができるものを意味する。
【0008】
冒頭に述べた種類の電極機構にとって重要なのは、誘電体が連続する層を形成し、これによって電極が処置されるべき表面から遮蔽されることである。このような層は、電極と処置されるべき表面との間の直接的な通電またはガルバニ電流を妨げ、本件出願の意味における直接的な通電を妨げる層である。
【0009】
冒頭に述べた種類の電極機構が独国特許第102009060627B4号明細書によって公知である。その構造体は、プラズマ処置を実施するために、不規則に湾曲した表面の上でも電極機構を載置できるようにすることを可能にする。プラズマの形成のために必要な空気スペースを、処置されるべき表面と、直接的な通電を妨げる誘電体の層との間で形成できるようにするために、この場合、誘電体が、処置されるべき表面のほうを向く側に、突起を有する構造体を備えていることが意図される。この構造体は、たとえば通気性の中間スペースを形成する突出する隆起からなる。
【0010】
冒頭に述べた種類のさらに別の電極機構が独国特許出願公開第102015117715A1号明細書から公知である。この電極機構も、電極機構が表面の上に載置されたときにプラズマが発生できるようにするために、構造体を有するように構成される。この構造体は、空気スペースを形成する多数のチャンバを区切る、互いに隣接する壁部からなる格子構造体であり、これらのチャンバは、直接的な通電を妨げる誘電体の層による底面側の閉鎖部と、処置されるべき表面に向かって開いた側とを有している。これらのチャンバは、たとえば正方形、円形、楕円形、または多角形の断面を有することができる。
【0011】
公知の電極機構には実績があり、特に、人間または動物の身体の皮膚表面の処置のために適している。プラズマ処置によって治療上または美容上の作用物質をより良く吸収することができ、それにより、求められる治療上または美容上の効果をプラズマ処置が増強する。これに加えて、プラズマ処置は微生物を死滅させ、特に殺菌効果や殺黴効果を皮膚に及ぼすので、有効な減菌のために作用する。さらにプラズマ処理は、組織内の微小循環を高めることにつながる。
【0012】
このような種類の処置が不規則な三次元形状をもつ表面でも可能であるためには、電極と誘電体、および電極機構が処置されるべき表面の上に載置される構造体が、いずれも柔軟に構成されていなければならない。処置されるべき表面に合わせたできる限り良好な適合化を実現するために、電極機構の構成要素および特に電極機構の誘電体が、できる限り柔軟な材料からなることが望ましい。人間または動物の身体の処置の場合、このことは、電極機構を特別に快適に心地よく身体へ装着できるという利点をさらにもたらす。
【0013】
ただしそれと同時に、この中間スペースでのプラズマの所望の形成およびこれに伴って効果的なプラズマ処置を保証するために、処置されるべき表面と、直接的な通電を妨げる誘電体の層との間で所定の間隔が遵守されることが保証されなければならない。したがって、従来技術から知られている電極機構では、構造体およびその突起によって形成される空気スペースが、処置中に所定のサイズおよび特に所定の高さを有することが保証されなければならない。
【0014】
このような要求事項によって、従来技術から知られている電極機構では、電極機構および特に電極機構の誘電体のための柔軟な材料の選択が物理的な制約を課している。そのために、高すぎる柔軟性を有する材料が選択されると、空気スペースの所定の高さを、およびこれに伴って処置されるべき表面と直接的な通電を妨げる誘電体の層との間の所定の間隔を、保証することができなくなる。このことは、空気スペースを形成する構造体の突起がこのケースでは所要の剛性を有しておらず、処置中に望ましくない程度に変形することに原因がある。そのためにプラズマ処置の効率性が低減し、あるいは有効なプラズマ処置が完全に妨げられることさえある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】独国特許第102009060627B4号明細書
【文献】独国特許出願公開第102015117715A1号明細書
【発明の概要】
【0016】
したがって本発明の根底には、実績のある公知の電極機構をその利点を維持しながら改良し、その形状に関して、処置されるべき表面に合わせていっそう良好に適合化されると同時に、有効なプラズマ処置が可能になるようにするという問題設定がある。
【0017】
この課題を解決するために、冒頭に述べた電極機構は本発明に基づき、構造体が、第1の材料の柔軟性よりも柔軟性が低い第2の材料からなる多数のスペーサ部材を有し、構造体の突起は部分的または全面的にスペーサ部材によって形成されることを特徴とする。
【0018】
このときスペーサ部材は、処置されるべき表面と、直接的な通電を妨げる誘電体の層との間の定義された間隔を保証するのが好ましい。この目的のためにスペーサ部材は、電極機構の誘電体が製作される第1の材料の柔軟性よりも柔軟性が低い第2の材料で製作される。このようにして本発明による電極機構は、処置されるべき表面と、直接的な通電を妨げる層との間の所要の間隔を維持したうえで、処置されるべき表面に合わせた電極機構の改善された適合化を実現するために、公知の電極機構では上に説明した理由から適用可能でない特別に柔軟な材料で、その誘電体を製作できることを可能にする。
【0019】
材料の低い柔軟性は、たとえば比較的高い硬度、特に比較的高いショア硬度を有する材料が使用されることによって実現することができる。材料の低い柔軟性は、比較的低い弾性を有する弾性材料が使用されることによっても実現することができる。このとき材料の弾性は、たとえばその弾性率および/または弾性テンソルによって定量化することができる。
【0020】
柔軟な誘電体を製作するのに好適な材料は、たとえば柔軟なシリコン、特にシリコンゴムである。
【0021】
本発明の電極機構により、たとえば電極機構の誘電体を、公知の電極機構の製作のために使用可能なシリコンの最小のショア硬度よりも低いショア硬度を有する柔軟なシリコンで製作することが可能である。たとえば、誘電体の製作のために10ショアから40ショアの間の、好ましくは15ショアから25ショアの間の、特に20ショアの硬度を有するシリコンを使用することが可能である。本件出願に記載しているショア硬度は、ショアAに基づくショア硬度である。
【0022】
本発明による電極機構のスペーサ部材により、構造体の突起の望ましくない変形を処置中に回避することができ、そのようにして、処置されるべき表面と、電極からの直接的な通電を妨げる誘電体の連続する層との間の所要の間隔の遵守を保証できるという利点がある。このときスペーサ部材の高さが、処置されるべき表面と直接的な通電を妨げる誘電体の層との間の間隔を、およびこれに伴ってプラズマの形成のための空気スペースの高さを、実質的に規定する。この目的のために、スペーサ部材の高さはたとえば0.05mmから3.0mmの間であり得るのが好ましい。
【0023】
たとえば、誘電体に使用される材料よりも低い柔軟性を有する安定的なプラスチックでスペーサ部材を製作することが可能であるのが好ましく、後者の材料はたとえば柔軟なシリコンであってよい。たとえば誘電体と、本発明による電極機構のスペーサ部材とをいずれも上に挙げた種類の柔軟なシリコンで製作することも可能であるのが好ましく、スペーサ部材には誘電体よりも高いショア硬度を有するシリコンが使用される。ただし、スペーサ部材に使用される材料は原則として任意であり、誘電体の材料よりも低い柔軟性を有するだけでよい。
【0024】
構造体の突起はスペーサ部材によって全面的に構成されていてよい。このケースでは、突起はスペーサ部材のみからなる。あるいは構造体の突起は、スペーサ部材によって部分的にのみ構成されていてもよい。このケースでは、スペーサ部材は突起の構成要素ではあるが、突起はスペーサ部材のほかに1つまたは複数の別の構成要素も有する。
【0025】
本発明の電極機構により、構造体が面において高さよりも明らかに高い柔軟性を有することを実現できるという利点がある。このとき特に構造体が、-およびこれに伴って電極機構が-、その形状を処置されるべき表面に合わせて良好に適合化できるようにするために、低い曲げ剛性および/または低いねじり剛性を有することを実現でき、それに対して同時に構造体が、処置されるべき表面に対して実質的に垂直に作用する力に対して高い伸長剛性すなわち高い安定性を有し、それにより空気スペースの維持を保証できるという利点がある。
【0026】
本発明の好ましい発展例では、スペーサ部材は、スペーサ部材よりも低い曲げ剛性および/または低いねじり剛性を有する接続区域を介して相互に接続される。
【0027】
このとき接続区域は、特に第1の材料からなる、または第2の材料の柔軟性よりも柔軟性が高い第3の材料からなる接続区域であり得るのが好ましい。スペース部材との比較における接続区域の低い剛性は、このケースでは、スペーサ部材の材料との比較における接続区域の材料の高い柔軟性によって実現される。
【0028】
その代替または補足として、接続区域の形状は、接続区域がスペーサ部材よりも低い剛性を有するように構成されていてよい。このとき各スペーサ部材の間の接続区域は、スペーサ部材との比較において特に薄く、または細く構成されていてよく、特に、スペーサ部材よりも少ない幅および/または少ない高さを有する。
【0029】
このとき各スペーサ部材の間の接続区域は、たとえば電極機構の誘電体によって、特に直接的な通電を妨げる誘電体の層によって構成することができる。スペーサ部材はこの目的のために、たとえば処置されるべき表面のほうを向いている誘電体の側と、特に、処置されるべき表面のほうを向いている直接的な通電を妨げる誘電体の層の側と、結合されていてよい。誘電体の第1の材料はスペーサ部材の第2の材料よりも高い柔軟性を有するので、このようにして、接続区域がスペーサ部材よりも低い剛性を有することを特別に容易に実現することができる。
【0030】
本発明の別の好ましい発展例では、スペーサ部材が接続ウェブによって相互に接続され、そのようにしてスペーサ格子を形成することが意図される。
【0031】
このとき接続ウェブの形状は、接続ウェブがスペーサ部材よりも低い剛性を有するように構成されるのが好ましい。この目的のために、各スペーサ部材の間の接続ウェブはスペーサ部材との比較において特に薄く、および/または細く構成されていてよい。そのために接続ウェブは、特に、スペーサ部材よりも少ない幅および/または少ない高さを有することができる。
【0032】
それにより、スペース格子が面において高さよりも明らかに高い柔軟性を有することを実現できるという利点がある。このとき特に、スペーサ格子が、その形状を処置されるべき表面に合わせて良好に適合化できるようにするために、低い曲げ剛性および/または低いねじり剛性を有することを実現でき、それに対して同時にスペーサ格子が、処置されるべき表面に対して実質的に垂直に作用する力に対して高い伸長剛性を有し、すなわちこのような力に対して比較的安定的であり、それにより空気スペースの維持を保証できるという利点がある。
【0033】
このときスペーサ格子の接続ウェブは、スペーサ部材自体と同一の材料すなわち第2の材料からなることができるのが好ましい。
【0034】
あるいはその代替として、接続ウェブが別の材料からなることもできる。このとき接続ウェブの材料は、特に、スペーサ部材の材料の柔軟性よりも柔軟性が高い材料であってよい。それにより、接続ウェブの剛性をいっそう低減できるという利点がある。
【0035】
スペーサ部材が接続ウェブによって相互に接続されることによってスペーサ格子を形成する本発明の電極機構の実施形態は、構造体およびその突起の安定性、およびこれに伴って各突起の間に形成される空気スペースの安定性を改善できるという本発明に基づく利点を提供する。
【0036】
本発明の別の好ましい発展例では、スペーサ格子が一体的に構成されることが意図される。このことは、たとえば注型法や3D印刷法で、スペーサ格子を特別に簡易かつ低コストに製作できるという利点を提供する。
【0037】
本発明の別の好ましい発展例では、スペーサ部材は、突起を補強するために突起の内部に埋設され、特に突起の内部に全面的に埋設される。すなわちこのケースでは、構造体の突起は部分的にのみスペーサ部材によって形成される。このときスペーサ部材は突起の補強として作用し、特に突起の剛性を高める。スペーサ部材は特に全面的に埋設されていてよく、すなわち全面で取り囲まれていてよい。
【0038】
このような実施形態は、処置されるべき表面の上への電極機構の載置面が、必ずしもスペーサ部材によって形成されるのでないという利点を提供する。このとき構造体は、特別に高い柔軟性、特に特別に低い硬度を有する材料で製作されていてよく、その中に、これよりも低い柔軟性、特にこれよりも高い硬度の材料から製作されたスペーサ部材が埋設される。処置されるべき表面への載置面は、このようにして構造体の柔軟なほうの材料によって構成される。それにより一方では、処置されるべき表面の上での電極機構のしっかりした保持、ならびに処置されるべき表面に合わせた電極機構の形状の特別に良好な適合化を実現できるという利点がある。他方では、それによって人間または動物の身体の表面で電極機構が特別に快適に感じられることを実現できるという利点がある。
【0039】
本発明の別の好ましい発展例では、構造体の突起はスペーサ部材と誘電体とで構成されことが意図され、スペーサ部材は、スペーサ部材を取り囲む誘電体の中に埋設され、特に全面的に埋設される。
【0040】
すなわちこの実施形態では、スペーサ部材が少なくとも部分的に、好ましくは全面的に誘電体の中に埋設され、誘電体がスペーサ部材を少なくとも部分的に、好ましくは全面的に包囲する。誘電体の材料は、本発明に基づき、スペーサ部材の材料よりも高い柔軟性を有しているので、この実施形態により、上に説明した好ましい発展例との関連で挙げた利点を特別に簡易な仕方で具体化することができる。
【0041】
このときスペーサ部材を取り囲む構造体の部分は、特にスペーサ部材を取り囲む誘電体の部分は、生体の皮膚の上への載置のために構成されていてよいのが好ましい。
【0042】
本発明の別の好ましい発展例では、スペーサ部材を取り囲む誘電体が、直接的な通電を妨げる誘電体の層と一体的に構成されることが意図される。
【0043】
すなわち、スペーサ部材を取り囲む誘電体と、直接的な通電を妨げる誘電体の層とが一体的に製作されることが提案される。特に、スペーサ部分を取り囲む誘電体の部分を含めた誘電体全体が一体的に構成され、すなわち一体的に製作されていてよいのが好ましい。
【0044】
本発明による電極機構のこのような実施形態は、電極機構を特別に簡易かつ低コストに注型法で製造可能であるという利点を提供する。このときスペーサ部材を、単に誘電体の中に鋳込むことができる。あるいは同様に、3D印刷法でのプロトタイプのような形式での迅速な製作も可能であるという利点がある。
【0045】
あるいは別案として、スペーサ部材を取り囲む構造体の部分が、特にスペーサ部材を取り囲む誘電体の部分が別個の部分として製作され、その後に、直接的な通電を妨げる誘電体の層へ接合されることも考えられる。このとき固定的な結合の製作は通常の仕方で、すなわちハウジング構造で機械式に、形状接合式および/または物質接合式に、特に接着または溶着によって行うことができる。この場合にも、スペーサ部材を構造体の中に鋳込むことが可能である。
【0046】
別個に製作される構造体のこのような形態は、特に傷口を洗浄する場合に、傷口と接触する電極機構の部分の容易な交換可能性を可能にできるという利点を提供する。この目的のために、別個の構造体をスペーサ部材も含めて取外し可能な使い捨て部品として利用することができ、あるいは、その容積が小さいことから容易に殺菌することができる。
【0047】
スペーサ部材そのものも、同じく相応の仕方で注型法または3D印刷法により製作することができる。
【0048】
本発明の別の好ましい発展例では、構造体の突起が全面的にスペーサ部材によって構成されることが意図される。このときスペーサ部材は電極のほうを向く側で、直接的な通電を妨げる層と結合されるとともに、処置されるべき表面のほうを向く側で、処置されるべき表面への当接面を形成する。
【0049】
すなわちこの実施形態では、構造体の突起はスペーサ部材のみによって構成される。それに応じてスペーサ部材は突起に埋設されるのではなくそれ自体として突起を構成し、この目的のために、処置されるべき表面と反対を向くほうの側で、直接的な通電を妨げる層に接合され、すなわちたとえばこれと結合される。このとき、スペーサ部材と誘電体の層との間の固定的な結合の製作はやはり通常の仕方で、すなわちハウジング構造で機械式に、形状接合式および/または物質接合式に、特に接着または溶着によって行うことができる。電極と反対を向くほうの側で、すなわち処置されるべき表面のほうを向くスペーサ部材の側で、スペーサ部材は処置されるべき表面への当接面を構成する。このようにこの実施形態では、スペーサ部材が処置中に処置されるべき表面の上に載置される。
【0050】
このような実施形態は、電極機構を特別に容易に製造できるという利点を提供する。スペーサ部材をその製作後に、たとえば注型法や3D印刷法で誘電体に接合するだけでよいからである。
【0051】
このときスペーサ部材と、直接的な通電を妨げる誘電体の層との間の結合は、特に取外し可能な結合であってよいのが好ましい。このことは、特に傷口を洗浄する場合に、傷口と接触するスペーサ部材の容易な交換可能性を可能にできるという利点を提供し、これをやはり取外し可能な使い捨て部品として利用することができ、またはその容積が小さいことから容易に殺菌することができる。
【0052】
このときスペーサ部材は、生体の皮膚の上へ載置するために構成されていてよいのが好ましい。
【0053】
本発明の別の好ましい発展例では、格子構造体の構造体は互いに隣接する、突起を形成する壁部であり、これらが空気スペースを形成する多数のチャンバを区切ることが意図される。このとき格子構造体は、特に、直接的な通電を妨げる誘電体の層と一体的に構成されていてよいのが好ましい。あるいは別案として、格子構造体が別個の部品として製作されて、直接的な通電を妨げる誘電体の層に接合されていてもよい。
【0054】
このときスペーサ部材は格子構造体の壁部に埋設されていてよく、特に格子構造体の壁部に全面的に埋設されていてよいのが好ましい。
【0055】
独国特許出願公開第102015117715A1号明細書から公知のこのような格子構造体は、本発明による電極機構のスペーサ部材との組み合わせで、特別に柔軟かつ軽量に構成することができ、同時に本発明によるスペーサ部材によって、処置されるべき表面と、直接的な通電を妨げる層との間の間隔の遵守-およびこれに伴って効率的なプラズマの形成-を確実に保証するという利点を提供する。
【0056】
本発明の別の好ましい発展例では、構造体は、それぞれの中間スペースで空気スペースを構成する、突起を形成する突出する隆起からなることが意図される。このときスペーサ部材は隆起に埋設されるのが好ましく、特に全面的に隆起に埋設されていてよい。
【0057】
このとき隆起は円柱状、円錐状、または円錐台状に構成されていてよい。
【0058】
構造体が突出する隆起からなるこのような種類の実施形態は、簡単かつ低コストに製作することができ、十分に柔軟な材料が使用されれば、処置されるべき表面に合わせて良好に適合化することができるという利点を提供し、プラズマ形成のために必要な空気スペースの十分な構成を本発明によるスペーサ部材によって保証することができる。
【0059】
本発明の別の好ましい発展例では、構造体の突起は上に説明した仕方で全面的にスペーサ部材によって構成され、スペーサ部材は、それぞれの中間スペースで空気スペースを構成する、突出する隆起の形態を有することが意図される。このとき隆起はやはり円柱状、円錐状、または円錐台状に構成されていてよいのが好ましい。
【0060】
このように、本発明による電極機構のこの発展例は上に説明した発展例に類似するが、スペーサ部材そのものが突出する隆起の形態を有する。それに応じて隆起は第2の材料で製作され、その柔軟性は、電極機構の誘電体が製作される第1の材料の柔軟性よりも低い。
【0061】
スペーサ部材が突出する隆起の形態を有するこのような実施形態は、特別に容易かつ低コストに製造することができるという利点を提供する。そのために、突起を形成する突出する隆起の形態のスペーサ部材を有する構造体が特に一体的に構成されていてよく、それにより、たとえば注型法や3D印刷法で特別に容易かつ低コストな製作が可能である。
【0062】
本発明の別の好ましい発展例では、スペーサ部材がそれぞれ周回する壁部で構成されることが意図される。
【0063】
このとき壁部は、処置されるべき表面のほうを向くスペーサ部材の側ではなく、かつ、直接的な通電を妨げる層のほうを向くスペーサ部材の側ではないスペーサ部材の側でスペーサ部材を周回する。このようにして周回する壁部は、これによって取り囲まれる内部空間の側方の区切りを構成する。このとき、それぞれのスペーサ部材が形成される周回する壁部は、ただ1つの周回する壁部または互いに隣接する複数の壁部からなることができる。このときスペーサ部材の高さは、周回する壁部の高さによって規定される。
【0064】
本発明の別の好ましい発展例では、スペーサ部材の周回する壁部がそれぞれ1つの空気スペースを取り囲むことが意図される。
【0065】
それに応じてスペーサ部材は、プラズマの形成のための空気スペースが、それぞれのスペーサ部材の周回する壁部によって区切られる内部空間を構成するように、電極機構に配置することができる。
【0066】
スペーサ部材の周回する壁部は、四角形の、特に長方形または正方形の断面をそれぞれ有することができるのが好ましい。あるいはスペーサ部材の周回する壁部は、円形または楕円形の断面を有することができるのも好ましい。あるいはスペーサ部材の周回する壁部は、多角形の、特にハニカム状の断面を有することができるのが好ましい。
【0067】
壁部の材料厚みは、壁部によって取り囲まれるスペースの最大幅の20%未満、特に10%未満であるのが好ましい。このとき壁部の材料厚みは、たとえば0.1mmから1.0mmの間であるのが好ましい。
【0068】
それぞれ周回する壁部によって構成されるスペーサ部材を有する、本発明による電極機構のこのような実施形態は、スペーサ部材がその形状に基づいて特別に高い安定性を有するという本発明に基づく利点を提供する。それにより、スペーサ部材を少ない材料コストで製作することができる。さらに、このスペーサ部材は特別に小さな断面積を有する。それによってひいては、構造体の突起が処置されるべき表面の上で小さな面しか占めることがなく、処置されるべき表面の大部分が空気スペースの形成のため、およびこれに伴ってプラズマの形成のために利用されることが実現されるという利点がある。それにより、特別に効果的なプラズマ処置が可能であるという利点がある。
【0069】
本発明の別の好ましい発展例では、構造体のスペーサ部材および/または突起が統一的な高さを有することが意図される。
【0070】
それにより、プラズマの特別に均等な形成を実現できるという利点がある。これに加えて、このようにして電極機構が処置されるべき表面の上に載置されたとき、側方で閉じられて閉鎖された空気スペースを形成するチャンバが各突起の間で形成されることが可能である。実験が示すところでは、このような種類の閉鎖されたチャンバの中でも、好適なプラズマを形成することができる。
【0071】
次に、添付の図面に模式的に示されている実施例を参照しながら、本発明について詳しく説明する。図面は次のものを示す:
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1a)】電極機構の第1の実施形態の上面を示す図である。
【
図1b)】
図1a)のA-A線に沿った垂直断面図である。
【
図2a)】電極機構の第1の実施形態の載置側を示す図である。
【
図2b)】
図2a)のB-B線に沿った垂直断面図である。
【
図3a)】
図1b)のC-C線に沿った水平断面図である。
【
図3b)】
図1b)のD-D線に沿った水平断面図である。
【
図4a)】電極機構の第2の実施形態の上面を示す図である。
【
図4b)】
図4a)のA-A線に沿った垂直断面図である。
【
図5a)】電極機構の第2の実施形態の載置面を示す図である。
【
図5b)】
図5a)のB-B線に沿った垂直断面図である。
【
図6a)】
図4b)のC-C線に沿った水平断面図である。
【
図6b)】
図4b)のD-D線に沿った水平断面図である。
【
図7a)】電極機構の第3の実施形態の上面を示す図である。
【
図7b)】
図7a)のA-A線に沿った垂直断面図である。
【
図8a)】電極機構の第3の実施形態の載置面を示す図である。
【
図8b)】
図8a)のB-B線に沿った垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1a)に示す実施例は、物体の表面の誘電体バリアプラズマ処置のための電極機構の第1の実施例の上面8、すなわち処置されるべき表面と反対を向く側を示している。実質的に正方形の横断面を有する誘電体2の上面8を見ることができる。この面の上で、電極機構がウェブ状の付加部10の中へと延びている。誘電体2は、たとえば処置されるべき表面からの流体の、特に液体の排出を可能にする多数の貫通孔11を有している。これに加えて電極機構は、生体の皮膚の上への、場合により傷口の周りへの電極の取付を可能にするために、小さい厚みをもって特別に柔軟に、かつその下面で粘着性に構成された複数の翼状の区域12を有している。
【0074】
誘電体2は、20ショアの硬度しか有さない特別に柔軟なシリコンで製作されている。それにより誘電体2は非常に低い剛性しか有さず、ただしその形状に関して、処置されるべき表面に合わせて非常に良好に適合化することができる。
【0075】
図1b)は、
図1a)のA-A線に沿った電極機構の垂直断面図を示している。詳細は、
図1c)の部分Aの詳細図に見て取ることができる。誘電体で全面を取り囲まれた柔軟な面状の電極1を見ることができる。誘電体2は、特に、電極1の面全体に沿って延び、そのようにして処置されるべき表面から電極を全面的に遮蔽する、直接的な通電またはガルバニ電流を妨げる層3を形成する。それにより、電極1から処置されるべき表面への直接的な通電またはガルバニ電流が妨げられる。
【0076】
誘電体2は、突起7を有する構造体4を介して、処置されるべき表面の上に載置され、その際に、それぞれの突起7の間で空気スペース5がプラズマの形成のために構成される。空気スペース5は、直接的な通電を妨げる誘電体2の層3による底面側の閉鎖部と、処置されるべき表面に向かって開いた側とを有しており、すなわち電極機構の載置面9では開いている。
【0077】
さらに、誘電体2だけが貫通孔11を有するのでなく、電極1も貫通孔13を有する様子を見ることができる。このとき誘電体の貫通孔11は、電極の貫通孔13および構造体4の突起7の間の空気スペース5と一直線上に並び、それにより、処置されるべき表面から貫通孔11、13を通して流体の、特に液体の排出が可能である。
【0078】
さらに
図1b)および1c)からわかるとおり、構造体4は、本実施例では安定したプラスチックで製作される多数のスペーサ部材6を有している。この安定したプラスチックの柔軟性は、誘電体2が製作されているシリコンの柔軟性よりも低い。
【0079】
スペーサ部材6は、本実施例では、それぞれ1つの空気スペース5を取り囲む、周回する壁部でそれぞれ構成されている。スペーサ部材6の周回する壁部は、ここでは長方形の断面を有している。
【0080】
図1b)および1c)からさらにわかるとおり、構造体4の突起7は部分的にスペーサ部材6によって構成され、すなわちスペーサ部材6と誘電体2とで構成されている。ここではスペーサ部材6は、これを取り囲む誘電体2の中へ全面的に埋設されており、そのようにして突起7の補強部を形成する。スペーサ部材6を取り囲む誘電体2は、直接的な通電を妨げる誘電体2の層3と一体的に構成されている。このことは、注型法での特別に容易で低コストな誘電体の製作を可能にし、その際にスペーサ部材6が誘電体2に鋳込まれる。
【0081】
スペーサ部材6は、スペーサ部材6よりも低い曲げ剛性と低いねじり剛性とを有する接続区域18を介して、相互に接続されている。それぞれのスペーサ部材6の間の接続区域18は、ここでは誘電体2によって、すなわち直接的な通電を妨げる誘電体2の層3によって形成される。誘電体2の特別に柔軟なシリコンは、スペーサ部材6の安定したプラスチックよりも高い柔軟性を有しているので、このようにして、接続区域18がスペーサ部材6よりも低い曲げ剛性とねじり剛性を有することを、特別に容易に実現することができる。それにより、構造体4は面において高さによりも明らかに高い柔軟性を有している。
【0082】
電極機構は処置中に、非常に軟質で柔軟な誘電体2とともに、処置されるべき皮膚表面の上に載置される。
【0083】
構造体4のスペーサ部材6と突起7はいずれも本実施例では統一的な高さを有している。
【0084】
さらに、電極1がウェブ状の付加部10の中へ入るように延びていることが明らかとなる。誘電体2はウェブ状の付加部10の領域に切欠き15を有していて、これを介して、好ましくは交流電圧として利用されるプラズマ生成のために必要な高圧を供給するために、電極1の接触を行うことができる。
【0085】
図2a)は、第1の実施例の電極機構の載置面9を示している。特に、互いに隣接する、突起7を形成する壁部からなる格子構造体として構造体4が構成されている様子を見ることができ、これらの壁部は、空気スペース5を形成する多数のチャンバ17を区切っている。格子構造体の壁部は、処置されるべき表面のほうを向く側で、処置されるべき表面への載置面を形成する。
【0086】
ウェブ状の付加部10は、電極機構のそれぞれ1つの電極1の接触のための2つの切欠き15を有している。この電極機構が、以下においてさらに明らかになるとおり、全部で2つの電極1を有しているからである。
【0087】
図2b)は、
図2a)のB-B線に沿った電極機構の垂直断面図を示している。ここでは、誘電体2によって全面で取り囲まれる2つの電極1を電極機構が有している様子を見ることができる。したがって誘電体2は、電極1が中に延びていない中央の領域16を有している。
【0088】
スペーサ部材6は、突起7を形成する、誘電体2で形成された壁部の中に埋設されている。
【0089】
その他の点では、
図2a)および2b)に関して、
図1a)から1c)についての上記の説明を参酌することができる。
【0090】
図3a)は、
図1b)のC-C線に沿った第1の実施例の電極機構の水平断面図を示している。ここでは、誘電体2とともに突起7を形成する多数のスペーサ部材6を構造体4が有する様子を見ることができる。スペーサ部材6はそれぞれ周回する壁部で形成されるとともに、格子構造体4の壁部によって区切られるチャンバ17に構成される、それぞれ1つの空気スペース5を取り囲む。それに応じてスペーサ部材6の壁部は、ここでは格子構造体4の壁部によって形成されるチャンバ17を取り囲む。
【0091】
各々のスペーサ部材6がそれぞれ四角形の断面を有している様子を明らかに見ることができる。
【0092】
図3b)は、
図1b)のD-D線に沿った第1の実施例の電極機構の水平断面図を示している。ここでは、電極機構が2つの電極1と、電極1が延びていない誘電体2の中央領域16とを有している様子を見ることができる。電極1は、その接触を可能にするために、ウェブ状の付加部10の中に延びている。
【0093】
誘電体2の貫通孔11が、電極1の貫通孔13よりも小さい直径を有している様子も見ることができる。それにより誘電体2が電極1を全面で包囲し、そのようにして、処置されるべき表面から電極1を全面的に遮蔽することを保証することができる。誘電体2がその側方の縁部で電極1の面から出るように延びていることも、これと同じ目的のために役立っており、それにより、電極機構の側方の縁部でも電極1が誘電体2によって全面的に取り囲まれる。
【0094】
その他の点では、
図3a)および3b)に関して、
図1および2についての上記の説明を参酌することができる。
【0095】
図4、5および6は、
図1、2ないし3と一致する図面形態で、本発明による電極機構の第2の実施例を示している。
【0096】
本発明による電極機構のこの第2の実施例は、特に
図4b)、4c)、5b)および6a)に見られるとおり、スペーサ部材6が接続ウェブ14によって相互に接続されることによって、第1の実施例と相違している。このようにして、スペーサ部材6はスペーサ格子を形成する。それにより、処置されるべき表面と、直接的な通電を妨げる層3との間の所要の間隔が処置中に遵守されることを特別に高い信頼度で保証する、スペーサ部材6の特別に高い安定性を実現することができる。
【0097】
接続ウェブ14によってスペーサ部材6から形成されるスペーサ格子は、本実施例では一体的に構成されており、したがって特別に容易に注型法で製作することができる。
【0098】
その他の点では、
図4から6に示す第2の実施例に関して、第1の実施例ついての上記の説明を参酌することができる。
【0099】
図7および8は、
図1ないし2ならびに
図4ないし5に一致する図面形態で、本発明による電極機構の第3の実施例を示している。
【0100】
本発明による電極機構のこの第3の実施例は、
図7b)、7c)、8a)および8b)に見られるとおり、構造体4の突起7がスペーサ部材6のみによって構成されることによって、第1および第2の実施例と相違する。ここではスペーサ部材6は、電極1のほうを向く側で、直接的な通電を妨げる誘電体2の層3と結合されている。処置されるべき表面のほうを向く、スペーサ部材6のこれと反対の側で、スペーサ部材6は処置されるべき表面への当接面を構成する。このときスペーサ部材6は統一的な高さを有しており、生体の皮膚の上に当接するために構成されており、処置中に皮膚の上に載る。
【0101】
このようにスペーサ部材6は、第1および第2の実施例とは異なり、
図7および8に示す第3の実施例では突起7の中に埋設されるのではなく、スペーサ部材6がそれ自体で完全な突起7を構成する。この目的のために、スペーサ部材6と、直接的な通電を妨げる誘電体2の層3とが接着によって互いに接合されており、すなわち、物質接合式の結合によって互いに固定的に結合されている。
【0102】
スペーサ部材6は、実質的に正方形の断面を有していて空気スペース5を取り囲む、周回する壁部によってそれぞれ形成される。これに加えて、第1および第2の実施例とは異なり、この第3の実施例ではそれぞれ異なるスペーサ部材6の間の中間スペースにも空気スペース5があり、それらの中でプラズマを形成することができる。
【0103】
第2の実施例と同様に、スペーサ部材6は第3の実施例でも接続ウェブ14によって相互に接続されている。このようにしてスペーサ部材6は、特別に容易に注型法で製作することができる、一体的に施工されたスペーサ格子を形成する。
【0104】
その他の点では、
図7および8に示す第3の実施例に関して、第1および第2の実施例ついての上記の説明を参酌することができる。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 少なくとも1つの柔軟な面状の電極(1)と、直接的な通電を妨げる層(3)によって前記電極(1)を処置されるべき表面から遮蔽する面状の柔軟な第1の材料からなる誘電体(2)とを有する、物体の表面の誘電体バリアプラズマ処置のための電極機構であって、前記誘電体(2)は突起(7)を有する構造体(4)を介して処置されるべき表面の上に載置することができ、その際にそれぞれの前記突起(7)の間に、処置されるべき表面に向かって開いた側と、前記誘電体(2)の前記直接的な通電を妨げる層(3)による底面側の遮蔽部とを有する、プラズマの形成のための空気スペース(5)が形成される、電極機構において、
前記構造体(4)が、前記第1の材料の柔軟性よりも柔軟性が低い第2の材料からなる多数のスペーサ部材(6)を有し、前記構造体(4)の前記突起(7)は部分的または全面的に前記スペーサ部材(6)によって形成されることを特徴とする電極機構。
[2] 前記スペーサ部材(6)は前記スペーサ部材(6)よりも低い曲げ剛性および/または低いねじり剛性を有する接続区域(18)を介して相互に接続されることを特徴とする、[1]に記載の電極機構。
[3] 前記スペーサ部材(6)は接続ウェブ(14)によって相互に接続され、このようにしてスペーサ格子を形成することを特徴とする、[1]または[2]に記載の電極機構。
[4] 前記スペーサ格子は一体的に構成されることを特徴とする、[3]に記載の電極機構。
[5] 前記スペーサ部材(6)は前記突起(7)を補強するために前記突起(7)の内部に埋設され、特に前記突起(7)の内部に全面的に埋設されることを特徴とする、[1]から[4]のいずれか1項に記載の電極機構。
[6] 前記構造体(4)の前記突起(7)は前記スペーサ部材(6)と前記誘電体(2)で構成され、前記スペーサ部材(6)は前記スペーサ部材(6)を取り囲む前記誘電体(2)の中に埋設され、特に全面的に埋設されることを特徴とする、[5]に記載の電極機構。
[7] 前記スペーサ部材(6)を取り囲む前記誘電体(2)は前記誘電体(2)の前記直接的な通電を妨げる層(3)と一体的に構成されることを特徴とする、[6]に記載の電極機構。
[8] 前記構造体(4)の前記突起(7)は前記スペーサ部材(6)によって全面的に構成され、前記スペーサ部材(6)は前記電極(1)のほうを向く側で前記誘電体(2)の前記直接的な通電を妨げる層(3)と結合されるとともに、処置されるべき表面のほうを向く側で処置されるべき表面への当接面を形成することを特徴とする、[1]から[4]のいずれか1項に記載の電極機構。
[9] 前記構造体(4)は、前記空気スペース(5)を構成する多数のチャンバ(17)を区切る、互いに隣接して前記突起(7)を形成する壁部からなる格子構造体であることを特徴とする、[1]から[8]のいずれか1項に記載の電極機構。
[10] 前記構造体(4)は、それぞれの中間スペースで前記空気スペース(5)を構成する、前記突起(7)を形成する突出する隆起からなることを特徴とする、[1]から[7]のいずれか1項に記載の電極機構。
[11] 前記スペーサ部材(6)は、それぞれの中間スペースで前記空気スペース(5)を構成する、突出する隆起の形態を有することを特徴とする、[8]に記載の電極機構。
[12] 前記隆起は円柱状、円錐状、または円錐台状に構成されることを特徴とする、[10]または[11]に記載の電極機構。
[13] 前記スペーサ部材(6)はそれぞれ周回する壁部で構成されることを特徴とする、[1]から[10]または[12]に記載の電極機構。
[14] 前記スペーサ部材(6)の前記周回する壁部はそれぞれ1つの前記空気スペース(5)を取り囲むことを特徴とする、[13]に記載の電極機構。
[15] 前記周回する壁部はそれぞれ四角形、特に長方形または正方形、円形、楕円形、または多角形、特にハニカム状の断面を有することを特徴とする、[13]または[14]に記載の電極機構。
[16] 前記スペーサ部材(6)および/または前記構造体(4)の前記突起(7)は統一的な高さを有することを特徴とする、[1]から[15]のいずれか1項に記載の電極機構。