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特許7176798インダゾールキナーゼ阻害剤及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】インダゾールキナーゼ阻害剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4439 20060101AFI20221115BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20221115BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20221115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221115BHJP
   C07D 417/04 20060101ALN20221115BHJP
   C07D 417/14 20060101ALN20221115BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61K31/444
A61K31/4545
A61K31/496
A61K31/506
A61P1/00
A61P35/00
A61P43/00 111
C07D417/04
C07D417/14
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021523586
(86)(22)【出願日】2018-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 CN2018115025
(87)【国際公開番号】W WO2020087565
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】201811299323.X
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519365388
【氏名又は名称】安徽中科拓苒▲薬▼物科学研究有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150212
【弁理士】
【氏名又は名称】上野山 温子
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 静
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 青松
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 学松
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲ベイ▼蕾
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 程
(72)【発明者】
【氏名】▲斉▼ 紫平
(72)【発明者】
【氏名】王 文超
(72)【発明者】
【氏名】王 俊杰
(72)【発明者】
【氏名】▲蒋▼ 宗儒
(72)【発明者】
【氏名】汪 文亮
(72)【発明者】
【氏名】▲其▼ 爽
(72)【発明者】
【氏名】王 黎
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-526542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C07D
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
Xは-(CH=CH)-であり、ここで、mは0又は1であり、
Yは-NH-又は-(CH-からなる群から選択され、ここでnは0~3の整数であり、
は、1個~3個の独立したR基で任意に置換されたフェニル、1個~3個の独立したR基で任意に置換されたピリジニル、1個~3個の独立したR基で任意に置換されたピラゾリル、及び1個~3個の独立したR基で任意に置換されたピリミジニルからなる群から選択され、
は、水素及びC1~6アルキルからなる群から選択され、
は、1個又は2個の独立したR基で任意に置換されたC1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、並びに1個~3個の独立したR基で任意に置換されたフェニル、1個~3個の独立したR基で任意に置換されたナフチル、1個~3個の独立したR基で任意に置換されたピリジニル、1~3個の独立したR基で任意に置換されたピペラジニル、及び1~3個の独立したR基で任意に置換されたピペリジルからなる群から選択され、
は、ハロゲン、アミノ、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6ヒドロキシアルキル、C1~6アルキルアミノ、C2~6アルキルアミド、(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル、モルホリノメチル、モルホリニル、4-メチルピペラジン-1-イル、4-ピペリジル、及び4-テトラヒドロピラニルからなる群から独立して選択され、
は、アミノ、ヒドロキシル、及びC1~6アルキルチオからなる群から独立して選択される)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を含む、cKIT、FLT3、PDGFRα、PDGFRβ、及び/又はVEGFR2のキナーゼ活性を阻害するためのキナーゼ阻害剤。
【請求項2】
Xは-(CH=CH)-である、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤。
【請求項3】
Yは直接結合又は-CH-である、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤。
【請求項4】
は、1個~3個の独立したR基で任意に置換されたフェニル基、ピリジニル基、ピラゾリル基、及びピリミジニル基からなる群から選択され、Rはハロゲン、アミノ、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6アルコキシ、及び(4-メチルピペラジン-1-イル)メチルからなる群から独立して選択される、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤。
【請求項5】
は、メチル、アミノ又はハロゲンで任意に置換されたフェニル基、2-ピリジニル基、3-ピリジニル基、4-ピラゾリル基、及び5-ピリミジニル基からなる群から選択される、請求項4に記載のキナーゼ阻害剤。
【請求項6】
は水素又はメチルである、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤。
【請求項7】
は、1個又は2個の独立したR基で任意に置換されたC1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、並びに1個~3個の独立したR基で任意に置換されたフェニル基、ナフチル基、ピリジニル基、ピペラジニル基及びピペリジル基からなる群から選択され、Rは、ハロゲン、アミノ、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6アルコキシ、及び(4-メチルピペラジン-1-イル)メチルからなる群から独立して選択され、Rは、アミノ、ヒドロキシル、及びメチルチオからなる群から独立して選択される、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤。
【請求項8】
は、アミノ、ヒドロキシ又はメチルチオで任意に置換されたC1~6アルキル;ジメチルアミノ;メチルで任意に置換されたN-ピペラジニル;ハロゲン、トリフルオロメチル又はメトキシで任意に置換されたフェニル;ナフチル;4-ピリジニル;3-ピペリジル;及びメチルで任意に置換された4-ピペリジルからなる群から選択される、請求項7に記載のキナーゼ阻害剤。
【請求項9】
Yが直接結合である場合、Rは、アミノ、ヒドロキシ又はメチルチオで任意に置換されたC1~6アルキル、及び4-ピリジニルからなる群から選択され、Yが-CH-である場合、Rは、メトキシで任意に置換されたフェニル、メチルで任意に置換されたN-ピペラジニル、及びメチルで任意に置換された4-ピペリジルからなる群から選択される、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤。
【請求項10】
前記化合物が以下の化合物からなる群から選択される、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤。
【表1】
【表2】

【表3】
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のキナーゼ阻害剤と、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と、任意に他の治療剤とを含む、cKIT、FLT3、PDGFRα、PDGFRβ、及び/又はVEGFR2の活性に関連する疾患、障害又は疾病の処置又は未然防止のための医薬組成物。
【請求項12】
cKIT、FLT3、PDGFRα、PDGFRβ、及び/又はVEGFR2のキナーゼ活性を阻害するための薬物の調製における、請求項1~10のいずれか一項に記載のキナーゼ阻害剤の使用。
【請求項13】
突然変異型cKIT/T670Iのキナーゼ活性を阻害するための薬物の調製における、請求項1~10のいずれか一項に記載のキナーゼ阻害剤の使用。
【請求項14】
cKIT、FLT3、PDGFRα、PDGFRβ、及び/又はVEGFR2の活性に関連する疾患、障害又は疾病の処置又は未然防止のための薬物の調製における、請求項1~10のいずれか一項に記載のキナーゼ阻害剤の使用。
【請求項15】
突然変異型cKIT/T670Iの活性に関連する疾患、障害又は疾病の処置又は未然防止のための薬物の調製における、請求項1~10のいずれか一項に記載のキナーゼ阻害剤の使用。
【請求項16】
前記疾患、障害又は疾病は、cKIT-T670I突然変異型消化管間質腫瘍である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
然変異型cKIT/T670Iのキナーゼ活性阻害するための、請求項1~10のいずれか一項に記載のキナーゼ阻害剤。
【請求項18】
cKIT、FLT3、PDGFRα、PDGFRβ、及び/又はVEGFR2の活性に関連する疾患、障害又は疾病の処置又は未然防止のための、請求項1~10のいずれか一項に記載のキナーゼ阻害剤。
【請求項19】
前記疾患、障害又は疾病はcKIT-T670I突然変異型消化管間質腫瘍である、請求項18に記載のPDGFRキナーゼ阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、キナーゼ阻害剤、並びにかかるキナーゼ阻害剤を使用してキナーゼ活性を阻害するための方法及び使用に関する。より具体的には、本発明は、cKIT(特に突然変異型cKIT/T670I)、FLT3(突然変異型FLT3-ITDを含む)、PDGFRα、PDGFRβ、及び/又はVEGFR2のキナーゼ活性を阻害することができる阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
消化管間質腫瘍(GIST:Gastrointestinal Stromal Tumors)は、消化管の最も一般的な間葉系腫瘍である。GISTの発生率は約1/100000~2/100000であり、全ての消化管腫瘍の1%~3%を占めている。この疾患は中高年に多く見られ、発症年齢の中央値は50歳~65歳であり、40歳より前にはまれではあるが、子供でも報告されている。現在、GISTは悪性挙動の可能性がある腫瘍であると考えられており、その生物学的挙動を予測することは困難である。GISTは消化管のどの部分でも発生する可能性があり、胃で最も多く(60%~70%)、次いで小腸(20%~30%)であり、食道、結腸、及び直腸での発生率は10%未満であり、また腹膜の網(omentum)及び腸間膜でも発生する可能性がある。
【0003】
臨床研究によると、消化管間質腫瘍の病因は、それらの遺伝的分子分類(genetic molecular classification)に基づいて、cKIT突然変異型(80%~85%)、PDGFRα突然変異型(5%~10%)、及びcKIT野生型(10%)のGISTという3つのカテゴリーに分けることができる。消化管間質腫瘍の病因は、cKITタンパク質(CD117)シグナル伝達経路の活性化に関連している。ネコ線維肉腫ウイルスから単離されたvKIT遺伝子のホモログである癌原遺伝子cKITは、ヒト第4染色体(4q12-13)に位置し、長さは約90kbであって、21個のエクソン及び20個のイントロンで構成されており、進化の過程で高度に保存されている。cKITタンパク質は、細胞膜に位置する受容体型チロシンキナーゼ(RTK)であって、相対分子量は145000であり、細胞表面の抗原決定基によってCD117と名付けられている。cKITタンパク質はRTKファミリーの3番目のタイプに属しており、これは、5つの免疫グロブリン様ドメイン(D1~D5)と、1つの膜貫通ドメインと、膜近傍ドメイン(near membrane domain)(JMD)及びチロシンキナーゼ(TK)ドメインを含む1つの細胞質領域とからなる。TKドメインは、アデノシン三リン酸(ATP)ドメイン(TK1)とホスホトランスフェラーゼドメイン(TK2)とに分けられる。リガンド幹細胞因子(SCF)は細胞外ドメインと合わさって二量体を形成し、細胞質領域のTKドメインでチロシンの自己リン酸化を引き起こすことにより、様々な下流エフェクターの自己リン酸化を更に誘導し、様々なシグナルの送達が完了する。主なシグナル伝達経路には、PI3Kシグナル伝達経路、JAK-STATシグナル伝達経路、Ras-Erkシグナル伝達経路、Srcファミリーキナーゼシグナル伝達経路、及びPLCシグナル伝達経路等があり、最終的に細胞の増殖、分裂、並びに組織の成長及び生存を促進する。
【0004】
現在、伝統的な外科的処置法として、消化管間質腫瘍の処置には依然として外科手術が最も重要な方法であり、近年の標的薬剤の出現により、GISTの処置に新たな段階が開かれている。これまでのところ、GISTの処置に臨床的に使用されているcKITキナーゼ阻害剤としては、主にNovartis製のイマチニブ(cKIT/BCR-ABL/PDGFR)及びPfizer製のスニチニブ(cKIT/BCR-ABL/PDGFR/VEGFR2/FLT3)が含まれる。イマチニブは、GISTの処置に使用された最初のII型キナーゼ阻害剤である。スニチニブは、2006年にFDAによって承認されたI型cKITキナーゼ阻害剤である。加えて、cKIT活性を有するII型キナーゼ阻害剤としては、レゴラフェニブ、ニロチニブ、マスチニブ、ソラフェニブ等が含まれる。これらの小分子阻害剤はマルチターゲット阻害剤であり、ニロチニブ及びマスチニブはT670I変異を克服できない。cKIT活性を持つ2つの小分子阻害剤である、Bayerが開発したレゴラフェニブ及びソラフェニブは、cKIT-T670I突然変異に対して一定の活性を有するが、どちらもcKITに加えてマルチターゲット阻害剤であり、FLT3/PDGFR/FGFR/VEGFR2/RET/RAF等の様々なキナーゼにも強い影響を及ぼす。アキシチニブはPfizerが開発したマルチターゲット小分子阻害剤であり、cKIT、BCR-ABL、VEGFR2及びその他のキナーゼに対する阻害活性も有している。加えて、ポナチニブもcKITキナーゼに対して強力な阻害活性を持ち、同時にcKIT-T670I突然変異によって引き起こされる薬剤耐性を克服することができるが、ABL/PDGFR/RET/CSF1R/FGFR/VEGFR/FGFR/RET等の様々なキナーゼのマルチターゲット阻害剤である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、主に、イマチニブの薬剤耐性突然変異cKIT-T670Iに対して強力な阻害効果を有する新規構造を持つ阻害剤を見出す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、式(I):
【化1】
(式中、
Xは-(CH=CH)-であり、ここで、mは0又は1であり、
Yは-NH-又は-(CH-からなる群から選択され、ここでnは0~3の整数であり、
は、1個~3個の独立したR基で任意に置換されたフェニル、1個~3個の独立したR基で任意に置換されたピリジニル、1個~3個の独立したR基で任意に置換されたピラゾリル、及び1個~3個の独立したR基で任意に置換されたピリミジニルからなる群から選択され、
は、水素及びC1~6アルキルからなる群から選択され、
は、1個又は2個の独立したR基で任意に置換されたC1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、並びに1個~3個の独立したR基で任意に置換されたフェニル、1個~3個の独立したR基で任意に置換されたナフチル、1個~3個の独立したR基で任意に置換されたピリジニル、1~3個の独立したR基で任意に置換されたピペラジニル、及び1~3個の独立したR基で任意に置換されたピペリジルからなる群から選択され、
は、ハロゲン、アミノ、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6ヒドロキシアルキル、C1~6アルキルアミノ、C2~6アルキルアミド、(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル、モルホリノメチル、モルホリニル、4-メチルピペラジン-1-イル、4-ピペリジル、及び4-テトラヒドロピラニルからなる群から独立して選択され、
は、アミノ、ヒドロキシル、及びC1~6アルキルチオからなる群から独立して選択される)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグを含む、選択的なキナーゼ阻害剤を提供する。
【0007】
好ましい実施の形態では、Xは-(CH=CH)-である。
【0008】
別の好ましい実施の形態では、Yは直接結合又は-CH-である。
【0009】
別の好ましい実施の形態では、Rは、1個~3個の独立したR基で任意に置換されたフェニル基、ピリジニル基、ピラゾリル基、及びピリミジニル基からなる群から選択され、Rはハロゲン、アミノ、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6アルコキシ、及び(4-メチルピペラジン-1-イル)メチルからなる群から独立して選択され、Rは、より好ましくは、メチル、アミノ又はハロゲンで任意に置換されたフェニル基、2-ピリジニル基、3-ピリジニル基、4-ピラゾリル基、及び5-ピリミジニル基であり、Rは、特に好ましくは、2-ピリジニルである。
【0010】
別の好ましい実施の形態では、Rは水素又はメチルである。
【0011】
別の好ましい実施の形態では、Rは、1個又は2個の独立したR基で任意に置換されたC1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、並びに1個~3個の独立したR基で任意に置換されたフェニル基、ナフチル基、ピリジニル基、ピペラジニル基、及びピペリジル基からなる群から選択され、ここで、Rは、ハロゲン、アミノ、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6アルコキシ、及び(4-メチルピペラジン-1-イル)メチルからなる群から独立して選択され、Rは、アミノ、ヒドロキシル、及びメチルチオからなる群から独立して選択され、Rは、より好ましくは、アミノ、ヒドロキシ又はメチルチオで任意に置換されたC1~6アルキル;ジメチルアミノ;メチルで任意に置換されたN-ピペラジニル;ハロゲン、トリフルオロメチル又はメトキシで任意に置換されたフェニル;ナフチル;4-ピリジニル;3-ピペリジル;及びメチルで任意に置換された4-ピペリジルであり、Rは、特に好ましくは、メチル、2-プロピル、1-アミノ-3-メチルチオ-プロピル、1-アミノ-3-メチル-ブチル、メチル置換N-ピペラジニル、メトキシ置換フェニル、4-ピリジニル、又は4-ピペリジルである。
【0012】
特に好ましい実施の形態では、Yが直接結合である場合、Rは、アミノ、ヒドロキシ又はメチルチオで任意に置換されたC1~6アルキル、及び4-ピリジニルからなる群から選択され、Yが-CH-である場合、Rは、メトキシで任意に置換されたフェニル、メチルで任意に置換されたN-ピペラジニル、及びメチルで任意に置換された4-ピペリジルからなる群から選択される。
【0013】
別の態様では、本発明はまた、本発明のキナーゼ阻害剤と、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と、任意に他の治療剤とを含む、医薬組成物に関する。
【0014】
他の態様では、本発明はまた、細胞又は被験体においてcKIT(特に突然変異型cKIT/T670I)、FLT3(突然変異型FLT3-ITDを含む)、PDGFRα、PDGFRβ、及び/又はVEGFR2のキナーゼ活性を低下又は阻害するための方法、及びそのためのキナーゼ阻害剤の使用、又はそのための該キナーゼ阻害剤を含む医薬組成物に関する。
【0015】
更に別の態様では、本発明はまた、被験体においてcKIT(特に突然変異型cKIT/T670I)、FLT3(突然変異型FLT3-ITDを含む)、PDGFRα、PDGFRβ、及び/又はVEGFR2の活性に関連する疾患を未然防止(preventing:予防)又は処置(treating:治療)するための方法、及びそのためのキナーゼ阻害剤の使用、又はそのための該キナーゼ阻害剤を含む医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1aは、tel-cKIT/T670I-BaF3細胞腫瘍移植マウスモデルにおける投与後のマウスの体重に対する化合物9及びスニチニブの効果を示す図であり、図1bは、tel-cKIT/T670I-BaF3細胞腫瘍移植マウスモデルにおける化合物9及びスニチニブの腫瘍抑制効果を示す図である。
図2図2aは、GIST-T1-T670I細胞腫瘍移植マウスモデルにおける投与後のマウスの体重に対する化合物9及びスニチニブの効果を示す図であり、図2bはGIST-T1-T670I細胞腫瘍移植マウスモデルにおける化合物9及びスニチニブの腫瘍抑制効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
用語
特段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、特許請求の範囲に記載の主題が属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0018】
特段の指示がない限り、本発明では、当業者の技能範囲内の質量分析、NMR、HPLC、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術及び薬理学の慣例的な方法が使用される。特段の規定が示されない限り、本明細書に記載される分析化学、合成有機化学並びに創薬化学及び医薬品化学に関連して使用される命名法、並びにそれらの実験手順及び技術は、当該技術分野で既知のものである。上述の技術及び手順は一般に、当該技術分野でよく知られ、本明細書全体にわたって引用及び議論される様々な一般的な参考文献及びより具体的な参考文献に記載される慣例的な方法で実施することができる。
【0019】
「アルキル」という用語は、分岐状アルキル又は直鎖状アルキルであってもよい脂肪族炭化水素基を指す。構造に応じて、アルキル基は、一価基又は二価基(すなわち、アルキレン基)であり得る。本発明では、アルキル基は、好ましくは1個~8個の炭素原子を有するアルキル、より好ましくは1個~6個の炭素原子を有する「低級アルキル」、更により好ましくは1個~4個の炭素原子を有するアルキルである。典型的なアルキル基には、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等が含まれる。本明細書で言及される「アルキル」は、アルキルの取り得るあらゆる立体配置及び立体配座を包含し、例えば本明細書で言及される「プロピル」は、n-プロピル及びイソプロピルを包含することを意図し、本明細書で言及される「ブチル」は、n-ブチル、イソブチル及び第三級ブチルを包含することを意図し、本明細書で言及される「ペンチル」は、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル及びペンタ-3-イル等を包含することを意図するものと理解されるべきである。
【0020】
「アルコキシ」という用語は、アルキルが本明細書で規定されるものである-O-アルキル基を指す。典型的なアルコキシ基には、限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が含まれる。
【0021】
「アルコキシアルキル」という用語は、本明細書で規定されるアルコキシで置換された、本明細書で規定されるアルキル基を指す。
【0022】
「シクロアルキル」という用語は、炭素及び水素のみを含む単環式基又は多環式基を指す。シクロアルキル基には、3個~12個の環原子を有する基が含まれる。構造に応じて、シクロアルキル基は、一価基又は二価基(例えば、シクロアルキレン基)であり得る。本発明では、シクロアルキル基は、好ましくは3個~8個の炭素原子を有するシクロアルキル、より好ましくは3個~6個の炭素原子を有する「低級シクロアルキル」である。シクロアルキルの例には、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、及びアダマンチルが含まれる。
【0023】
「アルキル(シクロアルキル)」又は「シクロアルキルアルキル」という用語は、本明細書で規定されるシクロアルキルで置換された、本明細書で規定されるアルキル基を指す。シクロアルキルアルキルの非限定的な例としては、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル等が含まれる。
【0024】
「芳香族」という用語は、4n+2個(ここで、nは整数である)のπ電子を含む非局在化π電子系を有する平面環を指す。芳香族環は5個、6個、7個、8個、9個又は10個以上の原子によって形成され得る。芳香族炭化水素は任意に置換されていてもよい。「芳香族」という用語には、炭素環式アリール(例えば、フェニル)基及びヘテロ環式アリール(又は「ヘテロアリール」又は「ヘテロ芳香族」)基(例えば、ピリジン)の両方が含まれる。その用語には、単環式基又は縮合環型多環式基(すなわち、隣接した炭素原子の対を共有する環)が含まれる。
【0025】
本明細書で使用される場合に、「アリール」という用語は、環を形成する原子の各々が炭素原子である芳香族環を指す。アリール環は5個、6個、7個、8個、9個又は10個以上の炭素原子によって形成され得る。アリール基は任意に置換されていてもよい。アリール基の例には、限定されるものではないが、フェニル、ナフタレニル、フェナントレニル、アントラセニル、フルオレニル及びインデニルが含まれる。構造に応じて、アリール基は、一価基又は二価基(すなわち、アリーレン基)であり得る。
【0026】
「アリールオキシ」という用語は、アリールが本明細書で規定されるものである-O-アリールを指す。
【0027】
「ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素及び硫黄から選択される1個以上の環ヘテロ原子を含むアリール基を指す。N含有「ヘテロアリール」部分は、環の骨格原子の少なくとも1つが窒素原子である芳香族基を指す。構造に応じて、ヘテロアリール基は、一価基又は二価基(すなわち、ヘテロアリーレン基)であり得る。ヘテロアリール基の例には、限定されるものではないが、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフリル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、キナゾリニル、ナフチリジニル、フロピリジニル等が含まれる。
【0028】
「アルキル(アリール)」又は「アラルキル」という用語は、本明細書で規定されるアリールで置換された、本明細書で規定されるアルキル基を指す。非限定的なアルキル(アリール)基には、ベンジル、フェネチル等が含まれる。
【0029】
「アルキル(ヘテロアリール)」又は「ヘテロアリールアルキル」という用語は、本明細書で規定されるヘテロアリールで置換された、本明細書で規定されるアルキル基を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合に、「ヘテロアルキル」という用語は、1個以上の骨格鎖原子がヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン又はそれらの組合せである、本明細書で規定されるアルキル基を指す。ヘテロアルキル基の任意の内部位置に又はヘテロアルキル基が分子の残部に結合されている位置に、1個以上のヘテロ原子が配置されていてもよい。
【0031】
本明細書で使用される場合に、「ヘテロシクロアルキル」又は「ヘテロシクリル」という用語は、環を形成する1個以上の原子が窒素、酸素及び硫黄から選択されるヘテロ原子である非芳香族環を指す。ヘテロシクロアルキル環は3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個以上の原子によって形成され得る。ヘテロシクロアルキル環は、任意に置換されていてもよい。ヘテロシクロアルキルの例には、限定されるものではないが、ラクタム、ラクトン、環状イミド、環状チオイミド、環状カルバメート、テトラヒドロチオピラン、4H-ピラン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、1,3-ジオキシン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキシン、1,4-ジオキサン、ピペラジン、1,3-オキサチアン、1,4-オキサチイン、1,4-オキサチアン、テトラヒドロ-1,4-チアジン、2H-1,2-オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、モルホリン、トリオキサン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピロリドン、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、1,3-ジオキソール、1,3-ジオキソラン、1,3-ジチオール、1,3-ジチオラン、イソオキサゾリン、イソオキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノン、チアゾリン、チアゾリジン、及び1,3-オキサチオランが含まれる。構造に応じて、ヘテロシクロアルキル基は、一価基又は二価基(すなわち、ヘテロシクロアルキレン基)であり得る。
【0032】
「アルキル(ヘテロシクロアルキル)」又は「ヘテロシクロアルキルアルキル」という用語は、本明細書で規定されるヘテロシクロアルキルで置換された、本明細書で規定されるアルキル基を指す。
【0033】
「アルコキシ(ヘテロシクロアルキル)」又は「ヘテロシクロアルキルアルコキシ」という用語は、本明細書で規定されるヘテロシクロアルキルで置換された、本明細書で規定されるアルコキシ基を指す。
【0034】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを指す。
【0035】
「ハロアルキル」、「ハロアルコキシ」及び「ハロへテロアルキル」という用語には、少なくとも1個の水素がハロゲン原子で置き換えられているアルキル構造、アルコキシ構造及びヘテロアルキル構造が含まれる。2個以上の水素原子がハロゲン原子と置き換えられている或る特定の実施形態では、それらのハロゲン原子は互いに同じ又は異なっている。
【0036】
「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合に、「シアノ」という用語は、-CN基を指す。
【0038】
「エステル」という用語は、式-COORの化学部分を指し、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合)及び複素環(環炭素を介して結合)の中から選択される。
【0039】
「アミノ」という用語は、-NH基を指す。
【0040】
「アミノアシル」という用語は、-CO-NH基を指す。
【0041】
「アミド」(amide)又は「アミド」(amido)という用語は、-NR-CO-R’(ここで、R及びR’は、それぞれ独立して水素又はアルキルである)を指す。
【0042】
「アルキルアミノ」という用語は、1つ又は2つのアルキル基で更に置換されたアミノ置換基、特に基-NRR’(ここで、R及びR’は、それぞれ独立して水素又は低級アルキルからなる群から選択されるが、但し、-NRR’は-NHではない)を指す。「アルキルアミノ」には、-NHの窒素が少なくとも1個のアルキル基に結合されている化合物の基が含まれる。アルキルアミノ基の例には、限定されるものではないが、メチルアミノ、エチルアミノ等が含まれる。「ジアルキルアミノ」には、-NHの窒素が少なくとも2つの追加のアルキル基に結合されている基が含まれる。ジアルキルアミノ基の例には、限定されるものではないが、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ等が含まれる。
【0043】
「アリールアミノ」及び「ジアリールアミノ」という用語は、1つ又は2つのアリール基で更に置換されたアミノ置換基、特に基-NRR’(ここで、R及びR’は、それぞれ独立して水素、低級アルキル又はアリールから選択され、かつNは、それぞれ少なくとも1つ又は2つのアリール基に結合される)を指す。
【0044】
「シクロアルキルアミノ」という用語は、本明細書で規定される1つ又は2つのシクロアルキル基で更に置換されたアミノ置換基を指す。
【0045】
「ヘテロアルキルアミノ」という用語は、本明細書で規定される1つ又は2つのヘテロアルキル基で更に置換されたアミノ置換基を指す。
【0046】
本明細書の「アラルキルアミノ」という用語は、基-NRR’(ここで、Rは低級アラルキルであり、かつR’は水素、低級アルキル、アリール又は低級アラルキルである)を指す。
【0047】
「ヘテロアリールアミノ」という用語は、本明細書で規定される1つ又は2つのヘテロアリール基で更に置換されたアミノ置換基を指す。
【0048】
「ヘテロシクロアルキルアミノ」という用語は、本明細書で規定されるヘテロシクロアルキルで置換された、本明細書で規定されるアミノ基を指す。
【0049】
「アルキルアミノアルキル」という用語は、本明細書で規定されるアルキルアミノで置換された、本明細書で規定されるアルキル基を指す。
【0050】
「アミノアルキル」という用語は、1つ以上のアミノ基で更に置換されたアルキル置換基を指す。
【0051】
「アミノアルコキシ」という用語は、1つ以上のアミノ基で更に置換されたアルコキシ置換基を指す。
【0052】
「ヒドロキシアルキル」(hydroxyalkyl)又は「ヒドロキシルアルキル」(hydroxyl alkyl)という用語は、1つ以上のヒドロキシ基で更に置換されたアルキル置換基を指す。
【0053】
「シアノアルキル」という用語は、1つ以上のシアノ基で更に置換されたアルキル置換基を指す。
【0054】
「アシル」という用語は、有機又は無機の酸素酸からヒドロキシル基を除去した後に残る一価の原子基を指し、一般式はR-M(O)-(ここで、Mは通常Cである)である。
【0055】
「カルボニル」という用語は、二重結合を介して炭素原子及び酸素原子によって形成される有機官能基(C=O)である。
【0056】
「アルカノイル」又は「アルキルカルボニル」という用語は、アルキル基で更に置換されたカルボニル基を指す。典型的なアルカノイル基には、限定されるものではないが、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、ヘキサノイル等が含まれる。
【0057】
「アリールカルボニル」という用語は、本明細書で規定されるアリールで置換された、本明細書で規定されるカルボニル基を指す。
【0058】
「アルコキシカルボニル」という用語は、アルコキシ基で更に置換されたカルボニル基を指す。
【0059】
「ヘテロシクロアルキルカルボニル」という用語は、ヘテロシクロアルキル基で更に置換されたカルボニル基を指す。
【0060】
「アルキルアミノカルボニル」、「シクロアルキルアミノカルボニル」、「アリールアミノカルボニル」、「アラルキルアミノカルボニル」及び「ヘテロアリールアミノカルボニル」という用語はそれぞれ、本明細書で規定されるアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、アリールアミノ、アラルキルアミノ又はヘテロアリールアミノでそれぞれ置換された、本明細書で規定されるカルボニル基を指す。
【0061】
「アルキルカルボニルアルキル」又は「アルカノイルアルキル」という用語は、アルキルカルボニル基で更に置換されたアルキル基を指す。
【0062】
「アルキルカルボニルアルコキシ」又は「アルカノイルアルコキシ」という用語は、アルキルカルボニル基で更に置換されたアルコキシを指す。
【0063】
「ヘテロシクロアルキルカルボニルアルキル」という用語は、ヘテロシクロアルキルカルボニル基で更に置換されたアルキル基を指す。
【0064】
「スルフヒドリル」という用語は、-SH基を指す。「アルキルチオ」という用語は、本明細書で規定されるアルキルで置換された、本明細書で規定されるスルフヒドリル基を指す。
【0065】
「スルホン」又は「スルホニル」という用語は、ヒドロキシルを失った後のスルホン酸の官能基を指し、具体的には、-S(=O)-基を指す。
【0066】
「スルホキシド」又は「スルフィニル」という用語は、-S(=O)-を指す。
【0067】
「アミノスルホン」又は「アミノスルホニル」という用語は、-S(=O)-NH基を指す。
【0068】
「アルキルスルホキシド」又は「アルキルスルフィニル」という用語は、-S(=O)-R(ここで、Rはアルキルである)を指す。
【0069】
「アルキルスルホン」又は「アルキルスルホニル」という用語は、-S(=O)-R(ここで、Rはアルキルである)を指す。
【0070】
「アルキルアミノスルホン」という用語は、本明細書で規定されるアルキルアミノで置換された、本明細書で規定されるスルホン基を指す。
【0071】
「アルキルスルホンアミノ」又は「シクロアルキルスルホンアミノ」という用語は、本明細書で規定されるアルキルスルホン又はシクロアルキルスルホンで置換された、本明細書で規定されるアミノ基を指す。
【0072】
「シクロアルキルスルホン」及び「シクロアルキルスルホニル」という用語は、-S(=O)-R(ここで、Rはシクロアルキルである)を指す。
【0073】
「アルキルスルホンアミド」及び「シクロアルキルスルホンアミド」という用語は、-NH-S(=O)-R(ここで、Rは、それぞれアルキル及びシクロアルキルである)を指す。
【0074】
「第四級アンモニウム基」という用語は、-NRR’R’’(ここで、R、R’及びR’’は、それぞれ独立して1個~8個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)を指す。
【0075】
「任意に」という用語は、続いて記載される1つ以上の事象が起こっても又は起こらなくてもよいことを意味し、起こる1つ以上の事象と起こらない事象の両方を含む。「任意に置換された」又は「置換された」という用語は、言及される基が、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、ハロ、アミド、ニトロ、ハロアルキル、アミノ、メチルスルホニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、アミノアシル、アミノ保護基等からなる群から個々に独立して選択される1つ以上の更なる基で置換され得ることを意味する。これらのうち、アミノ保護基は、ピバロイル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、9-フルオレニルメトキシカルボニル、ベンジル、p-メトキシベンジル、アリルオキシカルボニル、及びトリフルオロアセチル等からなる群から選択されることが好ましい。
【0076】
本明細書で使用される「チロシンプロテインキナーゼ(TPK)」という用語は、アデノシン三リン酸(ATP)からタンパク質上のチロシン残基へのγ-リン酸の転移を触媒し、様々なタンパク質基質のチロシン残基のリン酸化を触媒し得ることで細胞の成長、増殖、及び分化に重要な影響を及ぼすキナーゼの一種である。
【0077】
本明細書で使用される、キナーゼを「阻害する」、キナーゼを「阻害している」又はキナーゼの「阻害剤」という用語は、ホスホトランスフェラーゼ活性の阻害について言及している。
【0078】
本明細書に開示される化合物の「代謝物」は、化合物が代謝されるときに形成されるその化合物の誘導体である。「活性代謝物」という用語は、化合物が代謝されるときに形成される化合物の生物学的に活性な誘導体を指す。本明細書で使用される「代謝される」という用語は、生物が特定の物質を変化させる過程(限定されるものではないが、加水分解反応及び酵素によって触媒される反応、例えば酸化反応を含む)を合わせたものを指す。したがって、酵素は化合物に特定の構造変化をもたらし得る。例えば、シトクロムP450は、様々な酸化的反応及び還元的反応を触媒するのに対して、ウリジン二リン酸グルクロニルトランスフェラーゼは、活性化グルクロン酸分子を芳香族アルコール基、脂肪族アルコール基、カルボン酸基、アミン基及び遊離スルフヒドリル基に転移することを触媒する。代謝についての更なる情報は、The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th Edition, McGraw-Hill (1996)から入手することができる。本明細書に開示される化合物の代謝物は、宿主への化合物の投与及び宿主からの組織試料の分析、又はin vitroでの肝細胞と一緒の化合物のインキュベート及び得られた化合物の分析のいずれかによって同定することができる。両方の方法は当該技術分野でよく知られている。幾つかの実施形態では、化合物の代謝物は酸化的過程によって形成され、対応するヒドロキシ含有化合物に相当する。幾つかの実施形態では、化合物は薬理学的に活性な代謝物に代謝される。本明細書で使用される「調節する」という用語は、標的と直接的又は間接的のいずれかで相互作用させて、標的の活性を高めること、標的の活性を阻害すること、標的の活性を限定すること、又は標的の活性を延長することを例としてのみ含む、標的の活性を変化させることを意味する。
【0079】
本明細書で使用される場合に、「標的タンパク質」という用語は、選択的結合化合物によって結合することができるタンパク質分子又はタンパク質の一部を指す。或る特定の実施形態では、標的タンパク質は、チロシンキナーゼKIT(野生型若しくは様々な突然変異型、又はそれらの組合せ)、ABL(野生型若しくは様々な突然変異型、又はそれらの組合せ)、EGFR(野生型若しくは様々な突然変異型、又はそれらの組合せ)、FLT3(野生型若しくは様々な突然変異型、又はそれらの組合せ)、VEGFR2(野生型若しくは様々な突然変異型、又はそれらの組合せ)、RET(野生型若しくは様々な突然変異型、又はそれらの組合せ)、PDGFRα(野生型若しくは様々な突然変異型、又はそれらの組合せ)、PDGFRβ(野生型若しくは様々な突然変異型、又はそれらの組合せ)、BCR/ABL(野生型若しくは様々な突然変異型、又はそれらの組合せ)、FGFR1(野生型若しくは様々な突然変異型、又はそれらの組合せ)、FGFR2(野生型若しくは様々な突然変異型、又はそれらの組合せ)、FGFR3(野生型若しくは様々な突然変異型、又はそれらの組合せ)、FGFR4(野生型若しくは様々な突然変異型、又はそれらの組合せ)である。
【0080】
本明細書で使用される場合に、IC50は、阻害の応答を測定するアッセイにおいて、最大応答の50%阻害を達成する特定の試験化合物の量、濃度又は投与量を指す。
【0081】
本明細書で使用される場合に、EC50は、特定の試験化合物によって誘導、誘発又は増強される特定の応答の最大発現の50%で用量依存性応答を惹起する試験化合物の投与量、濃度又は量を指す。
【0082】
本明細書で使用される場合に、GI50は50%の細胞の成長阻害に必要な薬剤濃度、すなわち、50%の細胞(癌細胞等)の成長を薬剤によって阻害又は制御することができる薬剤濃度を指す。
【0083】
本発明の新規キナーゼ阻害剤
本発明は、式(I):
【化2】
(式中、
Xは-(CH=CH)-であり、ここで、mは0又は1であり、mが0の場合、Xは直接結合を表し、
Yは、-NH-又は-(CH-からなる群から選択され、ここで、nは0~3の整数であり、nが0の場合、Yは直接結合を表し、
は、1個~3個の独立したR基で任意に置換されたアリール基及びヘテロアリール基からなる群から選択され、
は、水素及びC1~6アルキルからなる群から選択され、
は、1個~2個の独立したR基で任意に置換されたC1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、並びに1個~3個の独立したR基で任意に置換されたアリール基、ヘテロアリール基及びヘテロシクリル基からなる群から選択され、
は、ハロゲン、アミノ、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6ヒドロキシアルキル、C1~6アルキルアミノ、C2~6アルキルアミド、(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル、モルホリノメチル、モルホリニル、4-メチルピペラジン-1-イル、4-ピペリジル、及び4-テトラヒドロピラニルからなる群から独立して選択され、
は、アミノ、ヒドロキシル、及びC1~6アルキルチオからなる群から独立して選択される)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグを含む新規キナーゼ阻害剤を提供する。
【0084】
好ましい実施形態では、Xは-(CH=CH)-である。
【0085】
別の好ましい実施形態では、Yは直接結合又は-CH-である。
【0086】
別の好ましい実施形態では、Rは、1個~3個の独立したR基で任意に置換されたフェニル基、ピリジニル基、ピラゾリル基、及びピリミジニル基からなる群から選択され、Rはハロゲン、アミノ、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6アルコキシ、及び(4-メチルピペラジン-1-イル)メチルからなる群から独立して選択され、Rは、より好ましくは、メチル、アミノ又はハロゲンで任意に置換されたフェニル基、2-ピリジニル基、3-ピリジニル基、4-ピラゾリル基、及び5-ピリミジニル基であり、Rは、特に好ましくは、2-ピリジニルである。
【0087】
別の好ましい実施形態では、Rは水素又はメチルである。
【0088】
別の好ましい実施形態では、Rは、1個又は2個の独立したR基で任意に置換されたC1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、並びに1個~3個の独立したR基で任意に置換されたフェニル基、ナフチル基、ピリジニル基、ピペラジニル基、及びピペリジル基からなる群から選択され、ここで、Rは、ハロゲン、アミノ、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6アルコキシ、及び(4-メチルピペラジン-1-イル)メチルからなる群から独立して選択され、Rは、アミノ、ヒドロキシル、及びメチルチオからなる群から独立して選択され、Rは、より好ましくは、アミノ、ヒドロキシ又はメチルチオで任意に置換されたC1~6アルキル;ジメチルアミノ;メチルで任意に置換されたN-ピペラジニル;ハロゲン、トリフルオロメチル又はメトキシで任意に置換されたフェニル;ナフチル;4-ピリジニル;3-ピペリジル;及びメチルで任意に置換された4-ピペリジルであり、Rは、特に好ましくは、メチル、2-プロピル、1-アミノ-3-メチルチオ-プロピル、1-アミノ-3-メチル-ブチル、メチル置換N-ピペラジニル、メトキシ置換フェニル、4-ピリジニル、又は4-ピペリジルである。
【0089】
特に好ましい実施形態では、Yが直接結合である場合、Rは、アミノ、ヒドロキシ又はメチルチオで任意に置換されたC1~6アルキル、及び4-ピリジニルからなる群から選択され、Yが-CH-である場合、Rは、メトキシで任意に置換されたフェニル、メチルで任意に置換されたN-ピペラジニル、及びメチルで任意に置換された4-ピペリジルからなる群から選択される。
【0090】
本明細書では、様々な可変部について上記の基のあらゆる組合せが考慮される。当業者であれば、化学的に安定であり、当該技術分野で知られる技術だけでなく本明細書に示される技術によっても合成することができる化合物を得るために、本明細書に示される化合物における置換基及び置換パターンを選択することができると理解される。
【0091】
好ましい実施形態では、本発明の阻害剤は、下記表1の化合物、又はそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグを含む。
【0092】
【表1-1】
【表1-2】
【0093】
本明細書には、新規のキナーゼ阻害剤が記載される。これらの化合物の薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、薬学的に活性な代謝物及びプロドラッグも本明細書に記載される。
【0094】
追加の実施形態又は更なる実施形態では、本明細書に記載される化合物は、それを必要とする生物に投与することで、代謝されて代謝物を生じ、その後に代謝物が使用されて、所望の治療効果を含む所望の効果がもたらされる。
【0095】
本明細書に記載される化合物は、薬学的に許容可能な塩として形成され得る及び/又は使用され得る。薬学的に許容可能な塩の種類には、限定されるものではないが、(1)化合物の遊離塩基形態を、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタリン酸等の薬学的に許容可能な無機酸、又は酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、フマル酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、4-メチルビシクロ-[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、2-ナフタレンスルホン酸、酢酸tert-ブチル、グルコヘプトン酸、4,4’-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、サリチル酸、ヒドロキシナフトエ酸、ステアリン酸、ムコン酸等の有機酸と反応することにより生成される酸付加塩;(2)親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えばアルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えば、マグネシウムイオン又はカルシウムイオン)、若しくはアルミニウムイオンに置き換わるか、又は有機塩基若しくは無機塩基と配位結合する場合に生成される塩基付加塩が含まれる。許容可能な有機塩基には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、N-メチルグルカミン等が含まれる。許容可能な無機塩基には、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等が含まれる。
【0096】
薬学的に許容可能な塩の対応する対イオンは、限定されるものではないが、イオン交換クロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動、誘導結合プラズマ、原子吸光分析、質量分析又はそれらの任意の組合せを含む様々な方法を使用して分析及び特定され得る。
【0097】
塩は、以下の技術:濾過、非溶媒による沈殿後の濾過、溶媒の蒸発又は水溶液の場合は凍結乾燥の少なくとも1つを使用することによって回収される。
【0098】
薬学的に許容可能な塩、多形体及び/又は溶媒和物のスクリーニング及び特性決定は、限定されるものではないが、熱分析、X線回折、分光法、顕微鏡法及び元素分析を含む様々な技術を使用して行うことができる。使用される様々な分光技術には、限定されるものではないが、ラマン、FTIR、UVIS及びNMR(液体状態及び固体状態)が含まれる。様々な顕微鏡法技術には、限定されるものではないが、IR顕微鏡法及びラマン顕微鏡法が含まれる。
【0099】
本発明の医薬組成物
本発明はまた、少なくとも1つの式(I)の化合物、又は該化合物の薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、薬学的に活性な代謝物若しくはプロドラッグと、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と、任意に他の治療剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0100】
処置の過程で、上記化合物は、単独で、又は1つ以上の他の治療剤と組み合わせて使用され得る。本発明の化合物を含む薬物は、注射、経口、吸入、直腸及び経皮投与のうち少なくとも1つを介して患者に投与され得る。他の治療剤は、免疫抑制剤(例えば、タクロリムス、シクロスポリン、ラパマイシン、メトトレキサート、シクロホスファミド、アザチオプリン、メルカプトプリン、ミコフェノール酸、又はFTY720)、グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、アルドステロン)、非ステロイド性抗炎症剤(例えば、サリチル酸塩、アリールアルカン酸、2-アリールプロピオン酸、N-アリールアントラニル酸、オキシカム、コキシブ、又はスルホンアニリド)、アレルギーワクチン、抗ヒスタミン剤、抗ロイコトリエン剤、β-アゴニスト、テオフィリン、抗コリン作動薬、又は他の選択的キナーゼ阻害剤(例えば、mTOR阻害剤、c-Met阻害剤)又はher2抗体から選択され得る。また、他の治療剤はまたラパマイシン、クリゾチニブ、タモキシフェン、ラロキシフェン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ハーセプチン(商標)(トラスツズマブ)、グリベック(商標)(イマチニブ)、タキソール(商標)(パクリタキセル)、シクロホスファミド、ロバスタチン、ミノシン(Minosine)、シタラビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、メトトレキサート(MTX)、タキソテール(商標)(ドセタキセル)、ゾラデックス(商標)(ゴセレリン)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、テニポシド、エトポシド、ジェムザール(商標)(ゲムシタビン)、エポチロン、ナベルビン、カンプトテシン、ダウノニビシン(Daunonibicin)、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン又はイダルビシンであってもよい。或いは、他の治療剤は、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)等のサイトカインであってもよい。或いは、他の治療剤は、例えば、限定されるものではないが、CMF(シクロホスファミド、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル)、CAF(シクロホスファミド、アドリアマイシン及び5-フルオロウラシル)、AC(アドリアマイシン及びシクロホスファミド)、FEC(5-フルオロウラシル、エピルビシン及びシクロホスファミド)、ACT若しくはATC(アドリアマイシン、シクロホスファミド及びパクリタキセル)、又はCMFP(シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル及びプレドニゾン)であってもよい。
【0101】
本発明の実施形態では、患者が本発明に従って処置される場合、所与の作用物質の量は、特定の投与計画、疾患又は疾病の種類及びその重症度、処置を必要とする被験体又は宿主の個性(例えば、体重)等の要因に応じて変動することとなるが、例えば、投与される特定の作用物質、投与経路、処置される疾病、及び処置される被験体又は宿主を含む、症例を取り巻く特定の状況に従って、当該技術分野で既知の方式で定型的に決定することができる。一般に、成人の処置に採用される用量は、典型的には、1日当たり0.02mg~5000mgの範囲、例えば1日当たり約1mg~1500mgである。所望の用量は、単回用量で、又は同時に(又は短期間にわたって)若しくは適切な間隔で、例えば1日当たり2回、3回、4回又はそれ以上の部分用量(sub-doses)として投与される分割用量として適宜表記され得る。上記の投与量範囲が示されているものの、当業者には、具体的な有効量は患者の疾病及び医師の判断に応じて適切に調節され得ることが理解されるであろう。
【0102】
本発明の医薬品の使用
本発明のキナーゼ阻害剤は、細胞若しくは被験体においてcKIT(特に突然変異型cKIT/T670I)、FLT3(突然変異型FLT3-ITDを含む)、PDGFRα、PDGFRβ、及び/又はVEGFR2のキナーゼ活性を低下若しくは阻害するために使用される、及び/又は被験体においてcKIT(特に突然変異型cKIT/T670I)、FLT3(突然変異型FLT3-ITDを含む)、PDGFRα、PDGFRβ、及び/又はVEGFR2の活性に関連する障害を未然防止若しくは処置するために使用される、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグ、又は医薬組成物を含む。
【0103】
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグ、又は医薬組成物は、固形腫瘍(良性又は特に悪性のタイプを含む)、特に肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、結腸直腸癌、急性骨髄芽球性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、腫瘍(neoplasia)、甲状腺癌、全身性肥満細胞症、好酸球増多症候群、線維症、エリテマトーデス、移植片対宿主病、神経線維腫症、肺高血圧症、アルツハイマー病、精上皮腫、未分化胚細胞腫、肥満細胞腫瘍、肺癌、気管支癌、精巣上皮内腫瘍、黒色腫、乳癌、神経芽細胞腫、甲状腺乳頭癌/甲状腺濾胞癌、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性内分泌腫瘍症2型、褐色細胞腫、甲状腺癌、副甲状腺過形成/副甲状腺腫、結腸癌、結腸直腸腺腫、卵巣癌、前立腺癌、神経膠芽細胞腫、脳腫瘍、悪性神経膠腫、膵臓癌、悪性胸膜内皮腫、血管芽細胞腫、血管腫、腎臓癌、肝臓癌、副腎癌、膀胱癌、胃癌、直腸癌、膣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、頭頸部腫瘍、並びに他の増殖性の疾病等、又はそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の疾患の処置、未然防止又は改善のために使用され得る。消化管間質腫瘍(GIST)、結腸直腸癌、急性骨髄芽球性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、甲状腺癌等、又はそれらの組合せの処置に特に好ましい。最も好ましくは、本発明の阻害剤又はその医薬組成物は、消化管間質腫瘍、特にcKIT-T670I突然変異型消化管間質腫瘍の処置又は未然防止に使用することができる。
【0104】
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグ、又は医薬組成物は、関節炎、リウマチ性関節症、骨関節炎、狼瘡、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、骨関節炎、スティル病、若年性関節炎、糖尿病、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、オード甲状腺炎(Ord's hyroiditis)、グレーブス病、シェーグレン症候群、多発性硬化症、ギランバレー症候群、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、眼球クローヌス・ミオクローヌス運動失調、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、グッドパスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、視神経炎、強皮症、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、乾癬、汎発性脱毛症、ベーチェット病、慢性疲労、家族性自律神経失調症、子宮内膜症、間質性膀胱炎、神経筋緊張症、強皮症又は外陰部痛からなる群から選択される自己免疫疾患の処置、未然防止又は改善のために使用され得る。
【0105】
化合物の調製
式(I)の化合物を、当業者に既知の標準的な合成技術を使用して、又は当該技術分野で既知の方法を本明細書に記載される方法と組み合わせて使用して合成することができる。また、本明細書に提示される溶媒、温度、及び他の反応条件は、当業者に応じて変化し得る。更なるガイドとして、以下の合成方法も利用することができる。
【0106】
反応を、本明細書に記載の化合物を提供するために直線的な順序で用いることができ、又はそれらを使用して、本明細書に記載の及び/又は当該技術分野で既知の方法によってその後結合される断片を合成することができる。
【0107】
或る特定の実施形態では、本明細書に記載されるキナーゼ阻害剤化合物の作製方法及び使用方法が本明細書で提供される。或る特定の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、以下の合成スキームを使用して合成することができる。適切な代替の出発材料を使用することにより、以下に記載されるのと類似の方法論を使用して化合物を合成することができる。
【0108】
本明細書に記載される化合物の合成に使用される出発材料は、合成されても又は商業的供給源から入手されてもよい。本明細書に記載される化合物及び種々の置換基を有する他の関連化合物は、当業者に知られる技術及び材料を使用して合成することができる。本明細書に開示される化合物の通常の調製方法は、当該分野で既知の反応から導き出すことができ、その反応は、本明細書に示される分子に様々な部分を導入するために当業者によって認識されるであろう適切な試薬及び条件を使用することによって変更され得る。
【0109】
所望であれば、限定されるものではないが、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィー等を含む慣例的な技術を使用して反応生成物を単離及び精製することができる。このような生成物は、物理定数及びスペクトルデータを含む慣例的な手段を使用して特性決定され得る。
【0110】
式(I)の化合物の調製に向けた合成アプローチの非限定的な例は、以下の合成経路に示されている。
【実施例
【0111】
実施例1:(E)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)ベンズアミド
【化3】
【0112】
N-(4-メチルチアゾール-2-イル)アセトアミド:4-メチルチアゾール-2-アミン(2g)を100mL容の丸底フラスコに添加し、次いで、無水ジクロロメタン(50mL)、トリエチルアミン(3.9mL)を添加し、塩化アセチル(1.5mL)をゆっくりと滴下して加えた。反応系を、気体アルゴン保護下、室温で4時間反応させた。反応後、系内の溶媒を減圧下での蒸留により乾燥させ、得られたものを飽和重炭酸ナトリウムでpH10超に中和し、次いで酢酸エチルで抽出した。有機相を水及び飽和食塩水でそれぞれ洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機相を濾過して減圧下での蒸留によって乾燥させ、粗生成物を得た。粗生成物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な生成物を得た。MS(ESI)m/z(M+1)+:157.05。
【0113】
(E)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)アセトアミド:N-(4-メチルチアゾール-2-イル)アセトアミド(1.0g)を丸底フラスコに添加し、次いでジメチルスルホキシド(20mL)、(E)-6-ヨード-3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-インダゾール(3.1g)、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(0.37g)及び炭酸セシウム(6.2グラム)を添加した。反応系を130℃に加熱し、気体アルゴン保護下で14時間反応させた。反応後、系内の溶媒を減圧下での蒸留により乾燥させ、得られたものを水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機相を水及び飽和食塩水でそれぞれ洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機相を濾過し、減圧下での蒸留により乾燥させて、粗生成物を得た。粗生成物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な生成物を得た。MS(ESI)m/z(M+1)+:460.18。
【0114】
(E)-4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-アミン:(E)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)アセトアミド(2.0g)、エタノール(20mL)及び6mol/リットル塩酸(15mL)を100mL容の丸底フラスコに添加した。反応系を90℃に加熱し、気体アルゴン保護下で14時間反応させた。反応後、系内の溶媒を減圧下での蒸留により乾燥させ、得られたものを飽和重炭酸ナトリウムでpH10超に中和すると固体が沈殿し、それを濾過して粗生成物を得た。粗生成物を酢酸エチルで洗浄して、純粋な生成物を得た。MS(ESI)m/z(M+1)+:334.11。
【0115】
tert-ブチル(E)-6-(2-アミノ-4-メチルチアゾール-5-イル)-3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-1-カルボキサミド:(E)-4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-アミン(1g)を50mL容の丸底フラスコに添加し、次いで無水N,N-ジメチルホルムアミド(10mL)、トリエチルアミン(0.9mL)、及び二炭酸ジ-tert-ブチル(1.0g)を添加した。反応系を、気体アルゴン保護下、室温で4時間反応させた。反応後、系内の溶媒を減圧下での蒸留により乾燥させ、得られたものを飽和重炭酸ナトリウムでpH10超に中和し、次いで水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を水及び飽和食塩水でそれぞれ洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機相を濾過し、減圧下での蒸留により乾燥させて、粗生成物を得た。粗生成物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な生成物を得た。MS(ESI)m/z(M+1)+:434.17。
【0116】
(E)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)ベンズアミド(1):tert-ブチル(E)-6-(2-アミノ-4-メチルチアゾール-5-イル)-3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-1-カルボキサミド(0.05g)を丸底フラスコに添加し、次いでN,N-ジメチルホルムアミド(5mL)、4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)安息香酸(0.03g)、2-(7-ベンゾトリアゾールオキシド)-N,N,N’,N’-テトラメチルウレアヘキサフルオロホスフェート(0.07g)及びトリエチルアミン(0.03mL)を添加した。反応系を、気体アルゴン保護下、室温で14時間撹拌した。反応後、系内の溶媒を減圧下での蒸留により乾燥させ、得られたものを水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機相を水及び飽和食塩水でそれぞれ洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機相を濾過し、減圧下での蒸留により乾燥させて、粗生成物を得た。
【0117】
粗生成物を無水ジクロロメタン(2mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(1mL)を添加した。反応系を、気体アルゴン保護下、室温で14時間撹拌した。反応後、系内の溶媒を減圧下での蒸留により乾燥させ、得られたものを水で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液でpH10超に中和した。水相を酢酸エチルで抽出し、有機相を水及び飽和食塩水でそれぞれ洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機相を濾過し、減圧下での蒸留により乾燥させて、粗生成物を得た。粗生成物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物1を得た。MS(ESI)m/z(M+1)+:550.24。
【0118】
実施例2:(E)-4-クロロ-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-3-(トリフルオロメチル)ベンズアミド
【化4】
【0119】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例2の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:540.09。
【0120】
実施例3:(E)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-2-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化5】
【0121】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例3の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:520.14。
【0122】
実施例4:(E)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)イソニコチンアミド
【化6】
【0123】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例4の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:439.14。
【0124】
実施例5:(E)-N-(5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)アセトアミド
【化7】
【0125】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例5の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:361.11。
【0126】
実施例6:(E)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-3-(トリフルオロメチル)ベンズアミド
【化8】
【0127】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例6の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:506.13。
【0128】
実施例7:(E)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-2-(ナフタレン-1-イル)アセトアミド
【化9】
【0129】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例7の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:502.17。
【0130】
実施例8:(E)-2-(3,4-メトキシフェニル)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)アセトアミド
【化10】
【0131】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例8の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:512.18。
【0132】
実施例9:(E)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド
【化11】
【0133】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例9の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:474.21。
【0134】
実施例10:(E)-2-(3-クロロフェニル)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)アセトアミド
【化12】
【0135】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例10の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:486.12。
【0136】
実施例11:(E)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-2-(ピペリジン-4-イル)アセトアミド
【化13】
【0137】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例11の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:459.20。
【0138】
実施例12:(E)-2-(ジメチルアミノ)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)アセトアミド
【化14】
【0139】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例12の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:419.17。
【0140】
実施例13:(E)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-2-(ピペリジン-3-イル)アセトアミド
【化15】
【0141】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例13の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:459.20。
【0142】
実施例14:(E)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)ピペリジン-4-カルボキサミド
【化16】
【0143】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例14の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:445.18。
【0144】
実施例15:(E)-2-アミノ-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-4-(メチルチオ)ブタンアミド
【化17】
【0145】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例15の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:465.16。
【0146】
実施例16:(E)-1-メチル-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)ピペリジン-4-カルボキサミド
【化18】
【0147】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例16の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:458.20。
【0148】
実施例17:(E)-2-アミノ-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)プロピオンアミド
【化19】
【0149】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例17の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:405.15。
【0150】
実施例18:(E)-2-アミノ-4-メチル-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)ペンタンアミド
【化20】
【0151】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例18の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:447.20。
【0152】
実施例19:(E)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)イソブタンアミド
【化21】
【0153】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例19の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:404.16。
【0154】
実施例20:(E)-2-アミノ-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-3-フェニルプロピオンアミド
【化22】
【0155】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例20の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:481.18。
【0156】
実施例21:N-(4-メチル-5-(3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド
【化23】
【0157】
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-N-(4-メチルチアゾール-2-イル)アセトアミド(21a):4-メチルチアゾール-2-アミン(1.0g)を丸底フラスコに添加し、次いでN,N-ジメチルホルムアミド(20mL)、2-(4-メチルピペラジン-1-イル)酢酸(1.5g)、2-(7-ベンゾトリアゾールオキシド)-N,N,N’,N’-テトラメチルウレアヘキサフルオロホスフェート(5.0g)及びトリエチルアミン(2.5mL)を添加した。反応系を、気体アルゴン保護下、室温で14時間撹拌した。反応後、系内の溶媒を減圧下での蒸留により乾燥させ、得られたものを水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機相を水及び飽和食塩水でそれぞれ洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機相を濾過して減圧下での蒸留によって乾燥させ、粗生成物を得た。粗生成物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な生成物を得た。MS(ESI)m/z(M+1)+:255.13。
【0158】
N-(4-メチル-5-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド(21b):2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-N-(4-メチルチアゾール-2-イル)アセトアミド(1.0g)を丸底フラスコに添加し、次いでジメチルスルホキシド(10mL)、6-ヨード-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-インダゾール(1.3g)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.45g)及び炭酸セシウム(3.8g)を添加した。反応系を130℃に加熱し、気体アルゴン保護下で14時間反応させた。反応後、系内の溶媒を減圧下での蒸留により乾燥させ、得られたものを水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機相を水及び飽和食塩水でそれぞれ洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機相を濾過し、減圧下での蒸留により乾燥させて、粗生成物を得た。粗生成物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な生成物を得た。MS(ESI)m/z(M+1)+:455.23。
【0159】
N-(5-(1H-インダゾール-6-イル)-4-メチルチアゾール-2-イル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド(21c):N-(4-メチル-5-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド(1.0g)、エタノール(10mL)、及び6mol/リットル塩酸(5mL)を50mL容の丸底フラスコに添加した。反応系を90℃に加熱し、気体アルゴン保護下で14時間反応させた。反応後、系内の溶媒を減圧下での蒸留により乾燥させ、得られたものを飽和重炭酸ナトリウムでpH10超に中和すると固体が沈殿し、それを濾過して粗生成物を得た。粗生成物を酢酸エチルで洗浄して、純粋な生成物を得た。MS(ESI)m/z(M+1)+:371.17。
【0160】
N-(5-(3-ヨード-1H-インダゾール-6-イル)-4-メチルチアゾール-2-イル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド(21d):
N-(5-(1H-インダゾール-6-イル)-4-メチルチアゾール-2-イル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド(0.6g)を50mL容の丸底フラスコに添加し、次いで、N,N-ジメチルホルムアミド(10mL)、ヨウ素(0.8g)及び水酸化カリウム(0.4g)を添加した。反応系を、気体アルゴン保護下、室温で8時間撹拌した。反応後、系内の溶媒を減圧下での蒸留により乾燥させ、得られたものを水で希釈し、水相を酢酸エチルで抽出し、有機相を水及び飽和食塩水でそれぞれ洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機相を濾過し、減圧下での蒸留により乾燥させて、粗生成物を得た。粗生成物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な生成物を得た。MS(ESI)m/z(M+1)+:497.06。
【0161】
N-(5-(1-アセチル-3-ヨード-1H-インダゾール-6-イル)-4-メチルチアゾール-2-イル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド(21e):N-(5-(3-ヨード-1H-インダゾール-6-イル)-4-メチルチアゾール-2-イル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド(0.5g)を50mL容の丸底フラスコに添加し、次いで無水ジクロロメタン(10mL)、トリエチルアミン(0.3mL)、及び塩化アセチル(0.1g)を添加した。反応系を、アルゴン保護下、室温で4時間反応させた。反応後、系内の溶媒を減圧下での蒸留により乾燥させ、得られたものを飽和重炭酸ナトリウムでpH10超に中和し、次いで酢酸エチルで抽出した。有機相を水及び飽和食塩水でそれぞれ洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機相を濾過し、減圧下での蒸留により乾燥させて、粗生成物を得た。粗生成物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な生成物を得た。MS(ESI)m/z(M+1)+:538.07。
【0162】
N-(4-メチル-5-(3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド(21):N-(5-(1-アセチル-3-ヨード-1H-インダゾール-6-イル)-4-メチルチアゾール-2-イル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド(0.1g)を丸底フラスコに添加し、次いで1,4-ジオキサン(10mL)、水(2mL)、(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ホウ酸(0.03g)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.02g)及び炭酸カリウム(0.07g)を添加した。反応系を80℃に加熱し、気体アルゴン保護下で14時間反応させた。反応後、系内の溶媒を減圧下での蒸留により乾燥させ、得られたものを水で希釈し、次いで酢酸エチルで抽出した。有機相を水及び飽和食塩水でそれぞれ洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機相を濾過し、減圧下での蒸留により乾燥させて、粗生成物を得た。粗生成物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物21を得た。MS(ESI)m/z(M+1)+:451.21。
【0163】
実施例22:(E)-2-ヒドロキシル-4-メチル-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)ペンタンアミド
【化24】
【0164】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例22の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:448.18。
【0165】
実施例23:N-(5-(3-(2-アミノピリミジン-5-イル)-1H-インダゾール-6-イル)-4-メチルチアゾール-2-イル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド
【化25】
【0166】
実施例21に記載されたものと同様の工程を使用して実施例23の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:464.20。
【0167】
実施例24:N-(4-メチル-5-(3-(ピリジン-3-イル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド
【化26】
【0168】
実施例21に記載されたものと同様の工程を使用して実施例24の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:448.19。
【0169】
実施例25:N-(5-(3-(5-フルオロピリジン-3-イル)-1H-インダゾール-6-イル)-4-メチルチアゾール-2-イル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド
【化27】
【0170】
実施例21に記載されたものと同様の工程を使用して実施例25の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:466.18。
【0171】
実施例26:N-(5-(3-(3-フルオロフェニル)-1H-インダゾール-6-イル)-4-メチルチアゾール-2-イル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド
【化28】
【0172】
実施例21に記載されたものと同様の工程を使用して実施例26の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:465.19。
【0173】
実施例27:(E)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-2-(1-メチルピペリジン-4-イル)アセトアミド
【化29】
【0174】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例27の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:473.21。
【0175】
実施例28:N-(4-メチル-5-(3-(ピリジン-3-イル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-2-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化30】
【0176】
実施例21に記載されたものと同様の工程を使用して実施例28の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:494.13。
【0177】
実施例29:(E)-1-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-3-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)ウレア
【化31】
【0178】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例29の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:521.14。
【0179】
実施例30:(E)-N-(4-メチル-5-(3-(2-(ピリジン-2-イル)ビニル)-1H-インダゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)アセトアミド
【化32】
【0180】
実施例1に記載されたものと同様の工程を使用して実施例30の合成を行った。MS(ESI)m/z(M+1)+:376.13。
【0181】
実施例31:癌細胞増殖に対する効果
癌細胞の成長に対する本発明の化合物の効果を試験することにより(表2)、癌細胞の増殖に対する本明細書中の化合物の阻害効果及び癌細胞の増殖を阻害する際のそれらの選択性を更に評価した。
【0182】
本実施例では、ヒト消化管間質腫瘍細胞株GIST-T1(野生型C-KIT遺伝子を発現する)(コスモ・バイオ株式会社(日本)から購入)、ヒト消化管間質腫瘍細胞株GIST-T1-T670I(C-KIT-T670I突然変異遺伝子を発現する)(CRISPR技術を用いて本発明者らの研究室で構築)、マウス初代B細胞BaF3(ATCCから購入)を使用した。加えて、本実施例では、マウスTel-cKit-BaF3(C-KIT野生型キナーゼを安定して発現する)、マウスTel-cKit/T670I-BaF3(cKIT T670I突然変異型キナーゼを安定して発現する)、マウスTel-PDGFRα-BaF3(PDGFRαキナーゼを安定して発現する)、マウスTel-PDGFRβ-BaF3(PDGFRβキナーゼを安定して発現する)、マウスTel-VEGFR2-BaF3(VEGFR2キナーゼを安定して発現する)、マウスTel-FLT3-BaF3(FLT3キナーゼを安定して発現する)も使用した。上記の細胞株はいずれも本発明者らの研究室で構築した。構築方法は次の通りであった:ヒトC-KIT、C-KIT T670I、PDGFRα、PDGFRβ、VEGFR2、FLT3キナーゼ領域配列をそれぞれPCRにより増幅し、N末端TEL断片及び/又はNPM断片及び/又はTPR断片をそれぞれ有するMSCV-Puroベクター(Clontechから購入)に挿入して、レトロウイルス法によりマウスBaF3細胞に安定的に移入し、そしてIL-3成長因子を除去し、最終的にC-KIT、C-KIT/T670I、PDGFRα、PDGFRβ、VEGFR2、FLT3に応じてタンパク質が移入された細胞株を得た。GIST-T1-T670I(C-KIT-T670I突然変異遺伝子を発現する)細胞株を本発明者らの研究室で構築した。構築方法は次の通りであった:KIT遺伝子のT670部位付近を標的とするsgRNAを、マサチューセッツ工科大学のZhang Feng研究所のCRISPR設計ツール(URL:crispr.mit.edu)によって設計し、pSpCas9(BB)-2A-Puroベクター(米国のAddgene)にクローニングし、得られたベクター及びT670部位付近にT670I突然変異を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを細胞にコトランスフェクトし、抗生物質で選択した後希釈し、96ウェルプレートにおいて単一細胞で培養して、細胞のT670部位を、サンガーシーケンシング法によって配列決定して検証した。
【0183】
本実施例では、様々な濃度(DMSO中、0.000508μM、0.00152μM、0.00457μM、0.0137μM、0.0411μM、0.123μM、0.370μM、1.11μM、3.33μM、10μM)の本発明の化合物及び対照化合物であるアキシチニブ(中国のMedChem Expressから購入)を上述の細胞に添加し、これを72時間インキュベートし、インキュベートした細胞をCCK-8細胞生存率検出キット(中国上海のBeibo Biological Companyから購入)で検出し(CCK-8は生細胞内の脱水素酵素によって水溶性の高い黄色のホルマザン生成物に還元され得て、生成されるホルマザンの量は生細胞の数に比例する)、生細胞の数をマイクロプレートリーダーによって定量した。そして、各化合物及び対照化合物のGI50を計算した(結果を表2及び表3に示した)。
【0184】
表2に示される実験結果は、本発明の化合物が、突然変異型cKIT-T670I、VEGFR2、PDGFRα、PDGFRβ、及びFLT3に対して一定の阻害効果を有しており、特にcKIT野生型と比較した場合、突然変異型cKIT-T670Iに対してより強い阻害効果を有することを示した。アキシチニブと比較すると、本発明の好ましい化合物は、突然変異型cKIT-T670Iに対して同等又はより強い阻害活性を有していたが、野生型cKITに対しては比較的弱い阻害活性を有していた。cKIT野生型は、正常な造血幹細胞の初期発生において非常に重要な役割を果たした。したがって、不要な場合、cKITキナーゼの阻害は機構的(mechanistic)毒性を引き起こし、FLT3とcKITの同時阻害は骨髄抑制毒性を引き起こすことが文献で報告されていた。また、アキシチニブは雌性の親BaF3細胞に対して一定の抑制効果があり、野生型cKITと突然変異型cKIT-T670Iとの間に選択性はなく、本発明の化合物は、突然変異型cKIT-T670Iと野生型cKITと雌性の親BaF3細胞との間で明らかな選択的阻害を示し、これは、本発明の好ましい化合物が、野生型cKIT及びFLT3の阻害による骨髄抑制毒性の問題を引き起こすことなく突然変異型cKIT-T670Iを阻害したことを示した。
【0185】
【表2】
【0186】
表3に示すように、消化管間質腫瘍細胞株GIST-T1及び本発明者らの研究室で構築したイマチニブに耐性の突然変異型GIST-T1-T670I細胞株に対する、本発明の化合物7及び化合物9と対照化合物イマチニブ(中国のMedChem Expressから購入)の効果を試験すると、本発明の化合物は、イマチニブ感受性消化管間質腫瘍に対して強力な阻害効果を有するだけでなく、イマチニブ耐性GIST-T1-T670Iに対しても強力な阻害効果を有することがわかった。これは、本発明の化合物が、T670I突然変異を伴う消化管間質腫瘍を処置するために使用することができることを示した。
【0187】
【表3】
【0188】
実施例32:動物実験
本実施例では、TEL-cKIT/T670I-BaF3及びGIST-T1-T670Iのマウスモデルにおける化合物9の実験結果をそれぞれ試験した。
【0189】
実験工程は次のとおりである。
(1)4週齢~6週齢のBalb/c雌性マウスをBeijing Weitong Lihua Experimental Animal Co., Ltd.から購入し、SPFレベルの実験室で飼育した。飲料水及び寝わらをオートクレーブ滅菌した。マウスに対する全ての操作を無菌条件下で行った。
(2)0日目に、約5×10のTEL-cKIT/T670I-BaF3細胞又は5×10のGIST-T1-T670I細胞を、それぞれ、全てのマウスの左背部に皮下注射した。
(3)TEL-cKIT/T670I-BaF3のマウスモデルでは、6日目から開始して、対応するマウスにメチルセルロース(HKI)ビヒクル(マウス5匹);マウスの体重で10mg/kg、20mg/kg、40mg/kg、100mg/kgの用量の化合物9(各5匹のマウス);マウスの体重で40mg/kgの用量のスニチニブ(中国のMedChemExpressから購入)(マウス5匹)を毎日経口投与した。GIST-T1-T670Iのマウスモデルでは、15日目から開始して、対応するマウスにメチルセルロース(HKI)ビヒクル(マウス5匹);マウスの体重で20mg/kg、30mg/kg、40mg/kgの用量の化合物9(各5匹のマウス);マウスの体重で40mg/kgの用量のスニチニブ(マウス5匹)を毎日経口投与した。
(4)6日目(TEL-cKIT/T670I-BaF3のマウスモデル)及び15日目(GIST-T1-T670Iのマウスモデル)から開始して、皮下腫瘍の長さ/幅をノギスで毎日測定し、マウスの体重を毎日記録して、マウスの体重に対する化合物9の効果をそれぞれ判定した。
(5)腫瘍体積の計算方法:長さ×幅×幅/2mmを用いて、内皮下腫瘍の成長傾向を計算した。
【0190】
実験結果を図1a及び図1b並びに図2a及び図2bに示した。化合物9は、TEL-cKIT/T670I-BaF3及びGIST-T1-T670Iのマウス腫瘍モデルにおいて40mg/kgの用量でマウス腫瘍に対して一定の阻害効果を示し、処置日数の増加に伴い、マウス腫瘍に対する化合物9の阻害効果はますます顕著になり、腫瘍阻害率は80%と高かった。100mg/kgの化合物9を使用した場合、腫瘍阻害率は、TEL-cKIT/T670I-BaF3マウスモデルにおいて投与後11日目に100%に達した。40mg/kgの化合物9を使用した場合、GIST-T1-T670Iマウスモデルでの投与後28日目の腫瘍阻害率は84.3%であった。化合物9は、マウスにおいて腫瘍成長を効果的に阻害しただけでなく、マウスの体重にも影響を及ぼさず、化合物9が動物投与に適していることを示している。これはまた、本発明のCKIT/T670I阻害剤化合物が、T670I突然変異を伴う消化管間質腫瘍を処置するために使用され得ることを証明した。
【0191】
本発明は、細胞若しくは被験体におけるcKIT(特に突然変異型cKIT/T670I)、FLT3(突然変異型FLT3-ITDを含む)、PDGFRα、PDGFRβ、及び/又はVEGFR2のキナーゼ活性の低下若しくは阻害において使用することができる、及び/又は被験体におけるcKIT(特に突然変異型cKIT/T670I)、FLT3(突然変異型FLT3-ITDを含む)、PDGFRα、PDGFRβ、及び/又はVEGFR2の活性に関連する障害の未然防止若しくは処置において使用することができる新規キナーゼ阻害剤化合物を提供する。したがって、該新規キナーゼ阻害剤化合物を対応する薬物として調製することができ、産業上の利用可能性がある。
【0192】
産業上の利用可能性
本発明は、細胞若しくは被験体におけるcKIT(特に突然変異型cKIT/T670I)、FLT3(突然変異型FLT3-ITDを含む)、PDGFRα、PDGFRβ、及び/又はVEGFR2のキナーゼ活性の低下若しくは阻害において使用することができる、及び/又は被験体におけるcKIT(特に突然変異型cKIT/T670I)、FLT3(突然変異型FLT3-ITDを含む)、PDGFRα、PDGFRβ、及び/又はVEGFR2の活性に関連する障害の未然防止若しくは処置において使用することができる新規キナーゼ阻害剤化合物を提供する。したがって、該新規キナーゼ阻害剤化合物を対応する薬物として調製することができ、産業上の利用可能性がある。
【0193】
本発明を本明細書で詳細に説明してきたが、本発明はそれに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の原理に基づいて変更を加えることができ、したがって、本発明の原理に従うあらゆる変更は、本発明の保護範囲内であると理解されるべきである。
図1
図2