(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】ネジ締付システムおよびネジ締付装置
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20221115BHJP
B23P 19/04 20060101ALI20221115BHJP
B25J 9/06 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
B23P19/06 J
B23P19/04 G
B25J9/06 D
(21)【出願番号】P 2021537577
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2020015789
(87)【国際公開番号】W WO2021024550
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2019142934
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500285923
【氏名又は名称】株式会社エスティック
(74)【代理人】
【識別番号】100125117
【氏名又は名称】坂田 泰弘
(74)【代理人】
【識別番号】100086933
【氏名又は名称】久保 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】土田 雄一
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0021900(US,A1)
【文献】特開平08-011027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/04-19/06
B25J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに設けられる第1アームおよび前記第1アームに直列に接続される先端側の第2アームを有するスカラロボットと、
前記第2アームに設けられ、前記第2アームにおける出力軸である昇降軸に沿って前記第2アームの駆動手段によって移動駆動される先端シャフトと、
前記昇降軸とは別の軸であって前記昇降軸と平行なネジ締め軸において前記第2アームの筐体に固定的に設けられるネジ締付装置と、
を有し、
前記ネジ締付装置は、
前記第2アームの筐体に固定的に設けられるネジ締付駆動手段と、
前記ネジ締付駆動手段により回転駆動されるドライブシャフトと、
前記ドライブシャフトと一体的に前記ネジ締め軸における周方向に回転しかつ前記ネジ締め軸における軸方向に移動可能なように連結され先端部に工具が設けられるエクステンションバーと、
前記先端シャフトに固定的に連結され、前記エクステンションバーを軸方向に一体的に移動するようかつ周方向に回転可能なように支持するスライド部材と、を有し、
前記先端シャフトの移動駆動によって前記エクステンションバーが前記ネジ締め軸において移動駆動されかつ前記工具に嵌合したワークのネジが前記ネジ締付駆動手段の回転駆動により回転されるように構成される、
ことを特徴とするネジ締付システム。
【請求項2】
ベースに設けられる第1アームおよび前記第1アームに直列に接続されかつ先端シャフトが設けられる先端側の第2アームを有し、前記第2アームにおける出力軸である昇降軸に沿って前記第
2アームの駆動手段によって前記先端シャフトが移動駆動されるスカラロボットの前記第2アームの筐体に固定的に取り付けられるネジ締付装置であって、
前記第2アームの筐体に固定的に設けられるネジ締付駆動手段と、
前記昇降軸と平行なネジ締め軸が前記ネジ締付駆動手段の回転軸となるように前記ネジ締付駆動手段を前記
第2アームに固定的に連結する連結部材と、
前記ネジ締付駆動手段により回転駆動されるドライブシャフトと、
前記ドライブシャフトに対し前記ネジ締め軸における周方向に一体的に回転しかつ前記ネジ締め軸における軸方向に移動可能に連結され先端部に工具が設けられるエクステンションバーと、
前記先端シャフトに固定的に連結され、前記エクステンションバーを軸方向に一体的に移動するようかつ周方向に回転可能なように支持するスライド部材と、を有し、
前記先端シャフトの移動駆動によって前記エクステンションバーが前記ネジ締め軸において移動駆動されかつ前記工具に嵌合したワークのネジが前記ネジ締付駆動手段の回転駆動により回転されるように構成される、
ことを特徴とするネジ締付装置。
【請求項3】
前記連結部材は、前記連結部材をボルトで前記筐体に異なる位置に取り付けるための複数の組の穴が設けられている、
請求項
2に記載のネジ締付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ締付装置をスカラロボットのようなロボットと組み合わせて使用するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場の生産ラインにおけるワークのネジ締めのためにネジ締付装置が用いられている。ネジ締付装置として、締付けトルクをネジに断続的に与えるインパクト式のネジ締付装置(特許文献1)、締付けトルクを連続的に与える連続式またはダイレクト式のネジ締付装置などが用いられる。
【0003】
また、生産ラインの省力化のために、スカラロボットなどの産業用ロボットがしばしば用いられる。
【0004】
スカラロボットは、基部に回転可能に支持される第1アーム、第1アームに回転可能に支持される第2アームを備え、第2アームは出力軸として回転と昇降移動が可能な運動軸を有する(特許文献2)。第2アームにさらに第3アームを設け、第3アームにおいて回転と並進とを行う動作軸にグリッパ部材などの動作ユニットを設けることも提案されている(特許文献3)。
【0005】
スカラロボットを用いてネジ締めを行うために、スカラロボットにネジ締付装置を取り付けたネジ締付システムが用いられる。
【0006】
図11は従来のネジ締付システム9の例を示す図である。
【0007】
図11において、スカラロボット90は、基台91、第1アーム92、第2アーム93を有し、さらに第3アーム94が取り付けられ、第3アーム94の先端部にネジ締付装置95が取り付けられる。第1軸92J、第2軸93J、および第3軸94Jのそれぞれを回転軸として、第1アーム92、第2アーム93、第3アーム94がそれぞれ回転駆動される。第3軸94Jは、回転駆動とともに昇降駆動も行い、これによって第3アーム94を昇降移動させる。ネジ締付装置95は、第4軸95Jを中心に回転する工具96を下端部に備える。
【0008】
ネジ締付システム9において、アーム92、93、94の回転駆動によって工具96のXY平面上の位置決めが行われ、第3アーム94の昇降移動によって工具96の高さ方向(Z方向)の位置決めが行われ、ネジ締付装置95による工具96の回転駆動によってネジ締めが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2011-73137号公報
【文献】特開2018-134701号公報
【文献】特開2017-30140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図11に示すネジ締付システム9は、例えば2つのアーム92,93を備える汎用的なスカラロボットの第3軸94Jに、第3アーム94およびネジ締付装置95を取り付けることによって実現することが可能である。
【0011】
しかし、従来のネジ締付システム9において、ネジ締付装置95は第3アーム94によって支持されるため、ネジ締付装置95による締付トルクの反力は、第3アーム94を介して第3軸94Jに伝わり、第3軸94Jを回転させるトルク(反力)を生じさせる。
【0012】
そのため、第3軸94Jを構成する昇降シャフトの剛性と、昇降シャフトを回転駆動するモータの許容トルクとによって、ネジ締付装置95の発生する締付トルクの最大値が制限されてしまい、制限以上にネジ締付装置95による締付トルクを大きくすることができない。そのため、ネジ締付装置95の締付け能力を十分に発揮できないことが生じる。
【0013】
締付トルクを大きくするには、第3軸94Jを構成する昇降シャフトの剛性を高めるとともに、反力に耐え得る保持トルクが必要であるため、保持力の大きいより大型のモータを用いる必要があり、または保持力の大きい大型のブレーキ付きモータを用いる必要がある。
【0014】
また、締付トルクの反力は、第2アーム93および第1アーム92にも伝わることとなるので、第2軸93Jおよび第1軸92Jにおいても保持トルクを大きくしておく必要がある。
【0015】
例えば、特許文献2のスカラロボットでは、第2アームの出力軸である運動軸L4に第3アームを取り付けることとなるので、運動軸L4におけるボールスプラインの剛性を高めるとともに、保持トルクの大きいモータを用いる必要がある。
【0016】
そのため、従来のネジ締付システム9では、使用するスカラロボットが大型化する傾向がある。つまり、許容可搬重量や可動範囲についての条件を小型のスカラロボットが十分に満たしている場合であっても、ネジ締付装置95による締付トルクの反力に耐えるために大型のスカラロボットを用いなければならないことが生じる。
【0017】
これにより、スカラロボット90が大型となって、設置面積の増大および設置コストの上昇を招くこととなる。また、スカラロボット90の大型化に伴ってネジ締付装置95やワークなどの搬送時間が長くなり、生産効率が落ちることもある。
【0018】
本発明は、このような問題点に鑑み、スカラロボットのようなロボットの大型化を招くことなく、ネジ締付装置をロボットと容易に組み合わせて使用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一形態に係るネジ締付システムは、ベースに設けられる第1アームおよび前記第1アームに直列に接続される先端側の第2アームを有するスカラロボットと、前記第2アームに設けられ、前記第2アームにおける出力軸である昇降軸に沿って前記第2アームの駆動手段によって移動駆動される先端シャフトと、前記昇降軸とは別の軸であって前記昇降軸と平行なネジ締め軸において前記第2アームの筐体に固定的に設けられるネジ締付装置と、を有し、前記ネジ締付装置は、前記第2アームの筐体に固定的に設けられるネジ締付駆動手段と、前記ネジ締付駆動手段により回転駆動されるドライブシャフトと、前記ドライブシャフトと一体的に前記ネジ締め軸における周方向に回転しかつ前記ネジ締め軸における軸方向に移動可能なように連結され先端部に工具が設けられるエクステンションバーと、前記先端シャフトに固定的に連結され、前記エクステンションバーを軸方向に一体的に移動するようかつ周方向に回転可能なように支持するスライド部材と、を有し、前記先端シャフトの移動駆動によって前記エクステンションバーが前記ネジ締め軸において移動駆動されかつ前記工具に嵌合したワークのネジが前記ネジ締付駆動手段の回転駆動により回転されるように構成される。
【0025】
本発明の一形態に係るネジ締付装置は、ベースに設けられる第1アームおよび前記第1アームに直列に接続されかつ先端シャフトが設けられる先端側の第2アームを有し、前記第2アームにおける出力軸である昇降軸に沿って前記第2アームの駆動手段によって前記先端シャフトが移動駆動されるスカラロボットの前記第2アームの筐体に固定的に取り付けられるネジ締付装置であって、前記第2アームの筐体に固定的に設けられるネジ締付駆動手段と、前記昇降軸と平行なネジ締め軸が前記ネジ締付駆動手段の回転軸となるように前記ネジ締付駆動手段を前記第2アームに固定的に連結する連結部材と、前記ネジ締付駆動手段により回転駆動されるドライブシャフトと、前記ドライブシャフトに対し前記ネジ締め軸における周方向に一体的に回転しかつ前記ネジ締め軸における軸方向に移動可能に連結され先端部に工具が設けられるエクステンションバーと、前記先端シャフトに固定的に連結され、前記エクステンションバーを軸方向に一体的に移動するようかつ周方向に回転可能なように支持するスライド部材と、を有し、前記先端シャフトの移動駆動によって前記エクステンションバーが前記ネジ締め軸において移動駆動されかつ前記工具に嵌合したワークのネジが前記ネジ締付駆動手段の回転駆動により回転されるように構成される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、スカラロボットのようなロボットの大型化を招くことなく、ネジ締付装置をロボットと容易に組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】ネジ締付システムの全体的な構成の例を示す正面図である。
【
図2】ネジ締付システムの状態の一例を示す平面図である。
【
図3】ベース、第1アーム、および第2アームそれぞれの駆動系の例を示す図であ る。
【
図4】ネジ締付装置、アタッチメントユニット、および伸縮支援ユニットそれぞれ の構成の例を示す図である。
【
図7】ドライブシャフトおよび軸受箱それぞれの構成要素の例を説明するための図 である。
【
図8】筒状部およびハウジングケースそれぞれの構成要素の例を説明するための図 である。
【
図9】ネジ締付装置の昇降動作の例を示す図である。
【
図10】エクステンションバーの他の実施形態を示す断面図である。
【
図11】従来のネジ締付システムの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1はネジ締付システム1の全体的な構成の例を示す図、
図2はネジ締付システム1の状態の一例を示す平面図、
図3はベース2、第1アーム3、および第2アーム4それぞれの駆動系の例を示す図、
図4はネジ締付装置本体5、アタッチメントユニット6、およびスライド部材7それぞれの構成の例を示す図、
図5は駆動装置50の構成の例を示す図、
図6は
図4のA-A矢視断面図、
図7はドライブシャフト54および軸受箱それぞれの構成要素の例を説明するための図、
図8は筒状部55aおよびハウジングケース70それぞれの構成要素の例を説明するための図である。
【0029】
図1に示すネジ締付システム1は、スカラロボット10およびネジ締付装置11を有する。つまりネジ締付システム1は、スカラロボット10にネジ締付装置11を組み合わせて構成された産業用ロボットである。
【0030】
スカラロボット10は、ネジ締付装置11を所定の空間内の任意の位置に移動させ、ネジ締付装置11はその下方にあるワークのネジを締め付ける。なお、本明細書において、ネジ締めにはネジを緩めることも含まれる。
【0031】
スカラロボット10は、一般に「スカラ型ロボット」または「水平多関節ロボット」と呼ばれるロボットであって、ベース2、第1アーム3、および第2アーム4などによって構成される。第1アーム3および第2アーム4は、それぞれ、第1軸P1および第2軸P2を中心に正方向または逆方向に回転する。なお、第1軸P1、第2軸P2、後述する昇降軸L1およびネジ締め軸L2は、互いに平行である。本実施形態では、これら4本の軸がいずれも鉛直方向に沿った場合を例に説明する。
【0032】
図1~
図3に示すように、ベース2は、第1アーム3を支持し、制御装置81による制御に基づいて第1アーム3を回転させる。ベース2は、
図3(A)に示すように、ベース筐体20、モータ21、減速部22、および出力軸23などによって構成される。
【0033】
ベース筐体20は、鉄、アルミニウム合金その他の軽合金、または強化プラスチックスなどによって形成される。後述するアーム筐体30および40も同様である。ベース筐体20が床面FLまたは機体の水平面FLなどに固定された状態で、ネジ締付システム1が使用される。
【0034】
図3において、モータ21は、制御装置81による制御に基づいて、減速部22を介して出力軸23を回転駆動する回転駆動源である。モータ21として、DCブラシレスモータ、ステッピングモータ、またはACサーボモータなどが用いられる。後述するモータ31、41、および51についても同様である。
【0035】
減速部22は、モータ21の回転を減速して出力軸23に回転力を伝える。減速部22として、例えば各種のギア装置および伝動装置などが用いられる。後述する減速部32も同様である。
【0036】
出力軸23は、第1アーム3に連結されている。出力軸23の回転に連動して、第1アーム3が第1軸P1を中心に回転する。
【0037】
第1アーム3は、第2アーム4を支持し、制御装置81による制御に基づいて第2アーム4を回転させる。第1アーム3は、
図3(B)に示すように、アーム筐体30、モータ31、減速部32、および出力軸33などによって構成される。
【0038】
モータ31は、制御装置81による制御に基づいて減速部32を介し出力軸33を回転駆動する。減速部32は、モータ31の回転を減速して出力軸33に回転力を伝える。
【0039】
出力軸33は、第2アーム4に連結されている。出力軸33の回転に連動して、第2アーム4が第2軸P2を中心に回転する。
【0040】
第2アーム4には、ネジ締付装置11が取り付けられている。第2アーム4は、
図3(C)に示すように、アーム筐体40、モータ41、ボールネジ42、および先端シャフト43などによって構成される。
【0041】
モータ41は、制御装置81による制御に基づいて回転し、ボールネジ42のネジ軸またはボールナットを回転させる回転駆動源である。ボールネジ42は、モータ41からの回転運動を直線運動に変換する。
【0042】
先端シャフト43は、アーム筐体40を貫通するように設けられたロッドであり、ボールネジ42と連結されていて、ボールネジ42の直線運動に伴って昇降軸L1に沿って上下に移動する。昇降軸L1は、スカラロボット10における第3軸(P3)ともいうべき軸である。
【0043】
モータ41の回転によって先端シャフト43が上下方向(軸方向)に移動する。先端シャフト43は、モータ41の回転速度に応じた速度で上下移動し、モータ41の回転量に応じた位置(高さ位置)に位置決めされる。先端シャフト43の高さ位置の位置決めにおいて、高さ位置の保持は、モータ41の停止時の保持力、または別途設けたブレーキ装置の保持力による。
【0044】
なお、スカラロボット10において、例えば特許文献2に記載されるスカラロボットのように、昇降軸L1を回転軸として先端シャフト43を回転させる仕組みが第2アーム4に備わっていることがあるが、本実施形態において先端シャフト43を回転させる機能は用いない。
【0045】
したがって、先端シャフト43を回転させる駆動用モータおよび伝動機構などは必要なく、省略するか、既設の場合にはそれらを取り外せばよい。また、回転させる機能を制御によって無効としてもよい。
【0046】
先端シャフト43を回転させる機構が必要ないのでそれだけ軽くなり、スカラロボット10の先端重量が低減されて慣性モーメントが小さくなり、スカラロボット10による位置決め速度が向上し、これによってサイクルタイムを短くして生産効率を高めることができる。
【0047】
次に、ネジ締付装置11は、ネジ締付装置本体5、アタッチメントユニット6、およびスライド部材7を備える。
【0048】
ネジ締付装置本体5は、ナットまたはボルトなどのネジを締め付ける。主に自動でネジを締付けるために用いられるものは、一般に「ナットランナ」または「自動締結機」と呼ばれることがある。ネジ締付装置本体5として、インパクト式のネジ締付装置または連続式のネジ締付装置など様々なネジ締付装置を用いることができる。本実施形態では、特開2002-1676号公報または特開2011-73137号公報に記載されるようなインパクト式のネジ締付装置を用いた場合を例に説明する。したがって、詳しい構造および機能についてはこれら公報を参照することができる。
【0049】
図4に示すように、ネジ締付装置本体5は、駆動装置50、ドライブシャフト54、エクステンションバー55、および工具56などによって構成される。
【0050】
図5に示すように、駆動装置50は、モータ51、減速ギヤ52、および出力軸53などによって構成される。
【0051】
モータ51は、制御装置81による制御に基づいて減速ギヤ52を介して出力軸53を回転駆動する回転駆動源である。減速ギヤ52は、モータ51の回転を減速して出力軸53に回転力を伝える。減速ギヤ52として遊星ギヤ装置を用いたときに、遊星ギヤ装置はインパクト発生装置を兼ねることができる。出力軸53は、先端部の断面形状が正方形であり、先端部との係合によってドライブシャフト54が回転駆動される。
【0052】
図4に戻って、ドライブシャフト54は、基部であるコネクタ部54a、およびコネクタ部54aに連接して延びるシャフトバー54bを有する。コネクタ部54aとシャフトバー54bとは、機械加工などによって一体に形成される。
【0053】
図7に示すように、コネクタ部54aは、頭部54a1、胸部54a2、腰部54a3、および脚部54a4の4つの部位を有する。これらの部位が一体に形成される。頭部54a1、胸部54a2、腰部54a3、および脚部54a4は、いずれも円柱形状であるが、それぞれの断面の直径が相違する。
【0054】
また、コネクタ部54aの上側の端面には、出力軸53の先端部が嵌まり込む凹部54a5が設けられており、出力軸53の先端部と凹部54a5との係合によって、ドライブシャフト54が出力軸53により一体的に回転駆動される。
【0055】
図6および
図8も参照して、シャフトバー54bは、コネクタ部54aの下端面から下方へ延びる断面が正方形状のロッドである。シャフトバー54bの角部には45度またはアール状の面取りが設けられる。
【0056】
図4に戻って、エクステンションバー55は、ネジ締付装置本体5の出力軸をネジ締め軸L2に沿って下方へ延長しかつ伸縮移動するための部材である。エクステンションバー55は、筒状部55aおよびコネクト部55bを有する。
【0057】
図6および
図8も参照して、筒状部55aは、上部55a11、中央部55a12、および下部55a13の3つの部位を有する。上部55a11、中央部55a12、および下部55a13は、いずれも外形が円周面となっているが、それぞれの外径(直径)が相違する。
【0058】
筒状部55aには、シャフトバー54bが挿入できるように、シャフトバー54bの最大外径よりも大きい内径を有した円柱状の穴5Sが設けられている。
【0059】
また、穴5Sの上端の開口部には、穴5Sよりも径の大きい穴5S1が設けられ、穴5S1には円周面の外形を有する軸受ブシュ551が嵌入している。軸受ブシュ551には摺動性の良好な部材が用いられ、その中央にはシャフトバー54bが貫通して摺動するための断面正方形状の内周面を有した穴552が設けられている。
【0060】
なお、軸受ブシュ551は、その外周面が筒状部55aの穴5S1に締まり嵌めによって嵌合し、かつ、キー、ネジ、溶接、接着剤などによって廻り止めが図られている。
【0061】
なお、筒状部55aに断面正方形状の穴を設ける手段として、他の手段、例えば断面正方形状の穴を設けた部材を筒状部55aの上端面に溶接などにより連結することでもよい。
【0062】
なお、シャフトバー54bと穴552の断面形状として、正方形状以外に、長方形状、六角形状、楕円形状、スプライン形状などとしてもよい。また、円柱形状としてキーとキー溝とにより回転力を伝達してもよい。回転トルク伝達が可能でありかつストローク運動(軸方向移動)が可能な形状であればよいので、使用実態に合わせて設計すればよい。
【0063】
シャフトバー54bは、エクステンションバー55の筒状部55aの穴5Sに挿入される。シャフトバー54bの外周面は、軸受ブシュ551の穴552の内周面と回転方向に係合するので、ドライブシャフト54とエクステンションバー55とは一体的に周方向に回転し、かつ軸方向に移動可能なように連結されることとなる。
【0064】
つまり、
図4に示す状態でドライブシャフト54が回転すると、これと同時にエクステンションバー55が回転する。エクステンションバー55が軸方向に移動すると、シャフトバー54bと軸受ブシュ551とが係合する軸方向位置は変わるが、それらが係合する限りにおいて、ドライブシャフト54の回転がエクステンションバー55に伝達され、これらは一体に回転する。
【0065】
なお、シャフトバー54bは、筒状部55aの穴5Sに挿入されたときに、穴5Sの内周面とは接触することはなく、また底面とも接触しない。
【0066】
コネクト部55bは、筒状部55aの下端部に一体に設けられる。コネクト部55bには、出力軸53の先端部と同じ形状の先端部55b2が設けられる。つまり、先端部55b2は断面形状が正方形であり、ここに工具56の凹部56aが嵌まり込み、工具56がエクステンションバー55によって一体的に回転駆動される。
【0067】
工具56として、ソケット、ビット、その他の工具が用いられる。なお、図示は省略したが、工具56がコネクト部55bから脱落するのを防止するための機構が、工具56およびコネクト部55bに設けられている。
【0068】
図4に戻って、アタッチメントユニット6は、連結部材61、軸受箱62、および2つのボールベアリング63a、63bなどによって構成され、ネジ締付装置本体5を第2アーム4のアーム筐体40に連結して一体的に固定する。
【0069】
連結部材61は、アーム筐体40の下面にボルトによって固定されている。連結部材61には、昇降軸L1およびネジ締め軸L2を中心位置として貫通する円柱状の孔61aおよび孔61bが設けられている。
【0070】
連結部材61の孔61aは、連結部材61が第2アーム4に設けられた先端シャフト43およびガイド部材43bと干渉しない程度の大きさである。孔61bとして、駆動装置50の端面に設けられた位置決め用の鍔部が嵌まり込むための径小孔と、軸受箱62に設けられた位置決め用の鍔部62a(
図7参照)が嵌まり込むための径大孔とが、連続して形成される。これによって、駆動装置50と軸受箱62およびドライブシャフト54などとの芯合わせが行われる。
【0071】
軸受箱62は、連結部材61の下面にボルトによって固定される。また、軸受箱62は、
図7に示すように、ネジ締め軸L2に沿って貫通する穴6Sを有し、ここをネジ締付装置本体5のドライブシャフト54のコネクタ部54aが貫通する。
【0072】
軸受箱62の穴6Sは、第1の穴6S1、第2の穴6S2、および第3の穴6S3を有する。これらはネジ締め軸L2を中心とした円柱状の同芯上の穴である。第2の穴6S2は、ドライブシャフト54のコネクタ部54aの外径よりも大きく、これらは互いに干渉しない。
【0073】
例えば、軸受箱62を連結部材61に取り付ける前に、ドライブシャフト54のコネクタ部54aが穴6Sに挿入された状態で、第1の穴6S1と頭部54a1との間にボールベアリング63aが嵌め込まれ、第3の穴6S3と腰部54a3との間にボールベアリング63bが嵌め込まれる。ボールベアリング63a,63bは、それぞれ止め輪64a、64b(
図4参照)によって抜け止めがなされる。これにより、ドライブシャフト54は軸受箱62によって回転自在に支持される。
【0074】
図4に戻って、スライド部材7は、ハウジング70、連結板71、および2つのボールベアリング72a、72bなどによって構成される。
【0075】
ハウジング70は、
図8に示すように、ネジ締め軸L2に沿って貫通する穴7Sを有し、ここをネジ締付装置本体5のドライブシャフト54のシャフトバー54bが貫通する。
【0076】
ハウジング70の穴7Sは、第1の穴7S1、第2の穴7S2、および第3の穴7S3を有する。これらはネジ締め軸L2を中心とした円柱状の同芯上の穴である。第2の穴7S2は、エクステンションバー55の中央部55a12の外径よりも大きく、これらは互いに干渉しない。
【0077】
例えば、ハウジング70を連結板71に取り付ける前に、エクステンションバー55の筒状部55aが穴7Sに挿入された状態で、第1の穴7S1と上部55a11との間にボールベアリング72aが嵌め込まれ、第3の穴7S3と下部55a13との間にボールベアリング72bが嵌め込まれる。ボールベアリング72a,72bは、それぞれ止め輪73a、73b(
図4参照)によって抜け止めがなされる。これにより、エクステンションバー55はハウジング70によって回転自在に支持される。
【0078】
したがって、エクステンションバー55が回転したときに、その回転トルクはハウジング70に伝達されることはない。
【0079】
図4に戻って、連結板71は、先端シャフト43とハウジング70とを連結するための長方形の板状の部材であって、エクステンションバー55が干渉することなく貫通するための円柱状の孔71aが設けられている。
【0080】
連結板71の一方の端部にハウジング70のフランジ部70aがボルトで取り付けられ、連結板71の他方の端部が先端シャフト43のフランジ部43aにボルトで固定される。このとき、ドライブシャフト54およびエクステンションバー55の中心軸がネジ締め軸L2と一致するように、またエクステンションバー55がネジ締め軸L2に沿って円滑に昇降移動するように、取り付けられる。
【0081】
なお、フランジ部43aおよびフランジ部70aの平面視の形状は、円形または四角などとしてよい。また、連結板71の端部の形状を、それらフランジ部43aおよびフランジ部70aの形状に沿うようにしてもよい。
【0082】
また、連結板71と先端シャフト43との連結方法として、ベアリングやブシュなどを用いて相対回転可能にかつ軸方向には一体的に移動するように連結してもよい。例えば、ドライブシャフト54のコネクタ部54aと軸受箱62との連結構造に類似した構造によって連結してもよい。このようにした場合は、連結板71と先端シャフト43との相対的な自由度が増し、芯合わせや位置調整が容易となり、先端シャフト43には軸方向の負荷のみが加わることとなるので、設計、加工、および組み立ての自由度が増す。
【0083】
図1に示す制御装置81は、スカラロボット10およびネジ締付装置11を制御してネジ締付システムの全体を制御する。制御装置81は、例えば、モータ21、31、41、51などの制御回路、各種センサーからの信号を処理する回路、操作制御回路、ティーチング回路、その他の信号処理回路、演算処理回路、制御や表示のためのコンピュータなどから構成される。
【0084】
次に、ネジ締付システム1の動作について説明する。
【0085】
図9はネジ締付装置本体5の昇降動作の例を示す図である。
【0086】
図9(A)に示すように、第1アーム3および第2アーム4が回転して水平方向に移動することにより、ネジ締付装置本体5がワークWのナット87の真上に位置決めされる。この状態では、ナット82のセンターとネジ締め軸L2とが一致する。
【0087】
図9(A)に示す状態から、先端シャフト43が下降移動するに伴って、スライド部材7、エクステンションバー55、および工具56が下降移動し、
図9(B)に示すように工具56がナット82に嵌合する。その後、ネジ締付装置本体5によるナット82のネジ締めが行われる。
【0088】
ネジ締めによる反力は、駆動装置50に加わる。駆動装置50は連結部材61を介してアーム筐体40と一体化し、これらは1つの剛体となっているため、駆動装置50に加わった反力は、第2アーム4の全体の剛性で受けることとなる。
【0089】
ところで、
図2に示すように、第2アーム4は、第2軸P2において第1アーム3と連結され、第1アーム3は第1軸P1においてベース2つまり床面FLに固定されているから、第2アーム4、第1アーム3、および床面FLにおける第1軸P1とネジ締め軸L2とを結ぶリンクラインTによって、三角形が構成される。
【0090】
したがって、ネジ締めによる反力が第2アーム4に作用し、これにより第2アーム4を回転させるトルクが生じるが、このトルクによって第2軸P2自体を回転させる力が生じることは理論的にない。第2アーム4、第1アーム3、およびリンクラインTによって三角形が構成され、三角形は変形されることがないからである。
【0091】
なお、実際には、スライド部材7におけるガタツキや撓みなどによって第2軸P2を回転させる力が生じることがあるが、この場合においても、ネジ締め軸L2と第2軸P2との距離が大きいので、第2軸P2を回転させる力は小さく、第2軸P2の機構において十分許容できる範囲内である。
【0092】
また、ネジ締めによる反力が第2アーム4を介して第2軸P2にせん断力として加わるが、第2アーム4の長さはナット82の直径などと比べて十分に大きいので、加わる力は小さく、これによって第2軸P2が変形したり過度に磨耗することはない。第1軸P1についても同様に、加わる力は小さい。
【0093】
また、ネジ締めによってドライブシャフト54およびエクステンションバー55に回転トルクが発生するが、それらを回転自在に支持するスライド部材7にその回転トルクが伝達されることはない。つまり、先端シャフト43にはネジ締めによるトルクおよび反力は伝達されることはない。先端シャフト43は、スライド部材7のみを昇降駆動すればよいので、負荷が極めて軽く、小型のもので十分に耐えられる。
【0094】
この点、
図11に示す従来のネジ締付システム9では、第3軸94Jを構成する昇降シャフトによってネジ締付装置95の全体を昇降駆動するので、昇降シャフトの剛性を高くしかつ昇降駆動に大型のモータを用いる必要があった。
【0095】
したがって、小型のスカラロボット10であっても、ネジ締付装置11によるネジ締め時の反力を容易に受けることができ、大型のモータを用いたりブレーキを新たに追加する必要がない。また、小型のスカラロボット10でよいので、大型化した場合のように搬送時間が長くなったり生産効率が落ちたりすることがない。また、先端重量が低減されることから慣性モーメントが小さくなり、スカラロボット10の位置決め速度が向上し、サイクルタイムを短くして生産効率を高めることができる。
【0096】
このように、本実施形態によると、スカラロボット10などのロボットの大型化を招くことなく、ネジ締付装置11をロボットと容易に組み合わせて使用し、高トルクで安定したネジ締めを行うことができる。
【0097】
本実施形態において、連結部材61をアーム筐体40に取り付けるためのボルトの穴として、種類やサイズの異なるスカラロボットに応じた多数の組みの穴を設けておくことにより、ネジ締付装置11をそれら種類やサイズの異なるスカラロボット10に容易に取り付けて組み合わせることができる。なお、アーム筐体40としては、外装パネルおよびこれを支持する構造部材を含む。
【0098】
本実施形態では、ドライブシャフト54およびエクステンションバー55を回転可能に支持するためにボールベアリングを用いたが、ボールベアリング以外のベアリング、または摺動軸受や流体軸受を用いてもよい。
【0099】
上に述べた実施形態において、
図10に示す構造のエクステンションバー55Bとしてもよい。
【0100】
すなわち、
図10は他の実施形態のエクステンションバー55Bを示し、
図10(A)はその平面図、
図10(B)はその正面断面図である。
【0101】
図10(A)(B)において、エクステンションバー55Bは、筒状部55Baおよびコネクト部55Bbを有する。筒状部55Baとコネクト部55Bbとは、別体で製作された後に溶接によって一体に連結される。
【0102】
筒状部55Baには、円柱状の穴5BS、および、穴5BSの上端の開口部に設けられた断面正方形状の内周面を有した穴552Bが設けられる。
【0103】
コネクト部55Bbには、出力軸53の先端部と同じ形状の先端部55Bb2が設けられる。コネクト部55Bbは、筒状部55Baの下端部において軸芯が一致するように溶接される。
【0104】
また、これらの実施形態以外に、エクステンションバーの全体を一体に形成することでもよい。例えば、エクステンションバーの軸方向の移動距離が小さく、穴5Sが浅い場合には、内径加工用バイトを用いて穴5Sを加工することが可能である。
【0105】
上に述べた実施形態では、ベース2を床面FLに設置したが、建築物の壁または天井に設置してもよい。
【0106】
上に述べた実施形態では、第1アーム3および第2アーム4の2つのアームを有するスカラロボット10を用い、第2アーム4を本発明における「先端アーム」とし、第2アーム4において昇降軸L1に沿って移動可能な先端シャフト43を本発明における「先端シャフト」とした。しかし、これに限ることなく、3つ以上のアームを有するスカラロボットを用い、その際の第2アームまたは第3アームなどを「先端アーム」としてもよい。また、スカラロボットではない多関節ロボット、その他の種々のロボットに適用することが可能である。
【0107】
その他、ベース2、第1アーム3、第2アーム4、ネジ締付装置本体5、アタッチメントユニット6、スライド部材7、スカラロボット10、ネジ締付装置11、およびネジ締付システム1の全体または各部の構成、寸法、形状、材質、個数、取り付け方法、制御の内容などは、コストや納期などを考慮するなど、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 ネジ締付システム
10 スカラロボット(ロボット)
11 ネジ締付装置
2 ベース
3 第1アーム(アーム)
4 第2アーム(先端アーム)
40 アーム筐体(筐体)
41 モータ(駆動手段)
43 先端シャフト
50 駆動装置(ネジ締付駆動手段)
54 ドライブシャフト
55,55B エクステンションバー
56 工具
6 アタッチメントユニット(連結部材)
61 連結部材
7 スライド部材
L1 昇降軸(第1軸)
L2 ネジ締め軸(第2軸)