IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIBLAT identityの特許一覧

<>
  • 特許-希釈水素ガス供給装置 図1
  • 特許-希釈水素ガス供給装置 図2
  • 特許-希釈水素ガス供給装置 図3
  • 特許-希釈水素ガス供給装置 図4
  • 特許-希釈水素ガス供給装置 図5
  • 特許-希釈水素ガス供給装置 図6
  • 特許-希釈水素ガス供給装置 図7
  • 特許-希釈水素ガス供給装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】希釈水素ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20221115BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20221115BHJP
   C25B 9/13 20210101ALI20221115BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20221115BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B9/13
C25B9/19
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022013528
(22)【出願日】2022-01-31
【審査請求日】2022-02-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522243794
【氏名又は名称】株式会社LIBLAT identity
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】松坂 芳也
(72)【発明者】
【氏名】牧野 芳博
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-036482(JP,A)
【文献】特開2013-249531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極を備えている負極部と正極を備えている正極部とを電解液を透過し得る隔膜によって区分し、かつ負極部及び正極部の何れか一方又は双方が相互に電解液供給部を備えると共に、負極部及び正極部の上側にそれぞれ水素ガス及び酸素ガス排出口を有する電解槽において、負極部の上下の2か所の内壁から羽根車を備えたポンプ又はスクリューの作動によって、電解液が下側から上側に乱流を形成しながら流動する流動パイプを突設すると共に、流動パイプにおける上側の突設位置から電解液の上側から下側への逆流及び当該逆流に基づく乱流の形成を目的として、負極部の底部側に向かう排出口を設置しており、流動パイプにおける各位置のうち、電解液が負極から離れる方向であって、かつ前記ポンプ又はスクリューよりも下流側にて流動している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器を備えており、前記の各乱流の形成、及び噴出された希釈ガスの前記ポンプ又はスクリューとの衝突を原因として、希釈ガスの気泡の小型化を実現することを特徴とする希釈水素ガス供給装置。
【請求項2】
所定の間隔にて配置された負極並びに正極を備え、かつ電解液供給部を備えている電解槽において、負極に近い電解槽の上下2か所の内壁から羽根車を備えたポンプ又はスクリューの作動によって、電解液が下側から上側に乱流を形成しながら流動する流動パイプを突設すると共に、流動パイプにおける上側の突設位置から電解液の上側から下側への逆流及び当該逆流に基づく乱流の形成を目的として、正極よりも負極に近い側の底部側に向かう排出口を設置しており、流動パイプにおける各位置のうち、電解液が負極から離れる方向であって、かつ前記ポンプ又はスクリューよりも下流側にて流動している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器を備えており、前記の各乱流の形成、及び噴出された希釈ガスの前記ポンプ又はスクリューとの衝突を原因として、希釈ガスの気泡の小型化を実現することを特徴とする希釈水素ガス供給装置。
【請求項3】
ポンプの回転する羽根車又はスクリューにおける回転中心軸から最も遠距離である端部が、流動パイプの内壁に近接していることを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載の希釈水素ガス供給装置。
【請求項4】
流動パイプが上下方向にて三角形の2辺を形成するか、又は矩形の3辺を形成することを特徴とする請求項1、2、3の何れか一項に記載の希釈水素ガス供給装置。
【請求項5】
流動パイプが上下方向にて順次屈曲形状を形成していることを特徴とする請求項1、2、3の何れか一項に記載の希釈水素ガス供給装置。
【請求項6】
流動パイプにおいて、1個又は複数個のメッシュ状のフィルターを備え、かつ当該メッシュの単位の面積が希釈ガス噴出器によって形成された気泡の最大断面積よりも小さいことを特徴とする請求項1、2、3、4、5の何れか一項に記載の希釈水素ガス供給装置。
【請求項7】
流動パイプにおける前記ポンプ又はスクリューの駆動源が、希釈ガス噴出器において作動している羽根車を備えたポンプ又はスクリューの駆動源を兼用していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6の何れか一項に記載の希釈水素ガス供給装置。
【請求項8】
流動パイプに電解液の流動によって回転する羽根車を設置し、当該羽根車の回転を希釈ガス噴出器において作動している羽根車を備えたポンプ又はスクリューに伝達していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6の何れか一項に記載の希釈水素ガス供給装置。
【請求項9】
上側の突設位置から負極に近い側に設置されている電解液の排出口を負極に近接した状態とし、しかも希釈ガスを含む電解液が負極に衝突していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8の何れか一項に記載の希釈水素ガス供給装置。
【請求項10】
上側の突設位置から負極に近い側に設置されている電解液の排出口を負極に近い電解槽の底部に近接した状態とし、しかも希釈ガスを含む電解液が当該底部に衝突していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8の何れか一項に記載の希釈水素ガス供給装置。
【請求項11】
流動パイプにおける電解液の負極部への入口の上端が電解液の上側水平面の位置と一致しているか又は当該位置に下側から近接している一方、流動パイプにおける電解液の負極部からの出口の下端が負極部の底部の位置と同一か又は当該位置に上側から近接していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の何れか一項に記載の希釈水素ガス供給装置。
【請求項12】
請求項1及び請求項2の流動パイプとは別に、負極よりも正極に近い側の上下2か所の内壁から羽根車を備えたポンプ又はスクリューの作動によって、電解液が下側から上側に乱流を形成しながら流動する流動パイプを突設し、流動パイプにおける各位置のうち、電解液が正極から離れる方向であって、かつ前記ポンプ又はスクリューよりも下流側にて流動している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器を備えており、前記乱流の形成、及び噴出された希釈ガスの前記ポンプ又はスクリューとの衝突を原因として、希釈ガスの気泡の小型化を実現することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11の何れか一項に記載の希釈水素ガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内への供給等を目的とする希釈水素ガス供給装置を対象としている。
【背景技術】
【0002】
生体内に供給する水素ガスは、通常0.1~18.0vol%の濃度による混合ガスが採用されている。
【0003】
このような希釈水素ガス供給装置として、例えば特許文献1においては、負極を備えた負極部(陰極室)と正極を備えた正極部(陽極室)を隔膜によって分割している電解槽において負極部及び正極部の双方に電解液を供給し、かつ負極部及び正極部の上側にそれぞれ水素ガス排出口及び酸素ガス排出口を設けると共に、負極部に希釈ガスを噴出(吐出)する希釈ガス供給器を備えるか、又は負極及び正極を所定の間隔によって配置し、前記隔膜によって分割せずに、水素ガス及び酸素ガスの共用排出部を設け、かつ正極よりも負極に近い側に前記希釈ガス供給器を備えることによる希釈ガス供給装置が提唱されている。
【0004】
前記希釈水素ガス供給装置の技術上のメリットとして、希釈ガスに含まれる塵埃等の異物が陰極室を電解中に分離されることによって、清浄な混合ガス、即ち希釈された水素ガスを生体内に供給することができることが説明されている(特許文献1の段落[0007]の発明の効果に関する項)。
但し、希釈ガス中の塵埃は、電解液中の気泡内に含まれており、当該気泡と共に電解液中を浮遊するが、前記説明は、浮上の過程において塵埃の殆ど全てが電解液と接触することによって、電解液中に分離されることを前提としている。
【0005】
しかしながら、希釈ガスの気泡は、電解液の上端に至るまでに完全に消失する訳ではなく、気泡中に残存している場合には、必然的に当該気泡中に含まれる塵埃もまた水素ガスと共に排出口に至ることにならざるを得ない。
【0006】
更に立ち入って説明するに、特許文献2に示すように、気泡中の粉塵の捕塵効率を増強するためには、気泡の乱流を発生させ、気泡を小型化することによって、気泡中の粉塵を電解液(但し、特許文献2の場合には水)と接触する確率を向上させることを必要不可欠とする。
【0007】
然るに、特許文献1においては、気泡に乱流を発生させることによって気泡中の粉塵を電解液中に分離する効率を向上させることに関する技術的工夫は、全く行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6667873号公報
【文献】特開平4-200615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、水素ガスが発生する電解槽において、噴出した希釈ガスの気泡を小型化し得る希釈水素ガス供給装置の構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)負極を備えている負極部と正極を備えている正極部とを電解液を透過し得る隔膜によって区分し、かつ負極部及び正極部の何れか一方又は双方が相互に電解液供給部を備えると共に、負極部及び正極部の上側にそれぞれ水素ガス及び酸素ガス排出口を有する電解槽において、負極部の上下の2か所の内壁から羽根車を備えたポンプ又はスクリューの作動によって、電解液が下側から上側に乱流を形成しながら流動する流動パイプを突設すると共に、流動パイプにおける上側の突設位置から電解液の上側から下側への逆流及び当該逆流に基づく乱流の形成を目的として、負極部の底部側に向かう排出口を設置しており、流動パイプにおける各位置のうち、電解液が負極から離れる方向であって、かつ前記ポンプ又はスクリューよりも下流側にて流動している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器を備えており、前記の各乱流の形成、及び噴出された希釈ガスの前記ポンプ又はスクリューとの衝突を原因として、希釈ガスの気泡の小型化を実現することを特徴とする希釈水素ガス供給装置、
(2)所定の間隔にて配置された負極並びに正極を備え、かつ電解液供給部を備えている電解槽において、負極に近い電解槽の上下2か所の内壁から羽根車を備えたポンプ又はスクリューの作動によって、電解液が下側から上側に乱流を形成しながら流動する流動パイプを突設すると共に、流動パイプにおける上側の突設位置から電解液の上側から下側への逆流及び当該逆流に基づく乱流の形成を目的として、正極よりも負極に近い側の底部側に向かう排出口を設置しており、流動パイプにおける各位置のうち、電解液が負極から離れる方向であって、かつ前記ポンプ又はスクリューよりも下流側にて流動している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器を備えており、前記の各乱流の形成、及び噴出された希釈ガスの前記ポンプ又はスクリューとの衝突を原因として、希釈ガスの気泡の小型化を実現することを特徴とする希釈水素ガス供給装置、
(3)ポンプの回転する羽根車又はスクリューにおける回転中心軸から最も遠距離である端部が、流動パイプの内壁に近接していることを特徴とする前記(1)、(2)の何れかの希釈水素ガス供給装置、
からなる。
【発明の効果】
【0011】
基本構成(1)、(2)、(3)においては、流動パイプ中に噴出された希釈ガスの気泡が、流動パイプ中における羽根車を備えたポンプ又はスクリューの作動によって、流動パイプ中を下側から上側に流動することを前提としている。
【0012】
このような前提に立脚している基本構成(1)、(2)、(3)においては、希釈ガスの気泡が流動パイプ中を流動する場合には、当該気泡は、必然的に羽根車を備えているポンプ又はスクリューと衝突することを原因として、更には当該ポンプ又は当該スクリューによって形成された乱流を原因として、噴出された段階よりも明らかに小型化されている。
【0013】
特に、基本構成(3)のように、ポンプの回転する羽根車又はスクリューにおける回転中心軸から最も遠距離にある端部が流動パイプの内壁に近接している場合には、前記衝突及び前記気泡の乱流の形成の程度を助長し、上記気泡の小型化を一層促進することができる。
【0014】
しかも、基本構成(1)、(2)、(3)においては、流動パイプにおける上側の突設位置から正極よりも負極に近い電解槽の底部側に向かう電解液の排出口を設置することによって、電解液は、負極に近い側において局所的に上側から下側への逆流が生じており、その結果、希釈ガスの気泡の乱流が形成され、希釈ガスの気泡の小型化が十分促進されることに帰する。
【0015】
前記のような衝突及び逆流を原因とする前記気泡の小型化によって、特許文献1のように、単に噴出した気泡を上昇させる場合に比し、気泡中の粉塵の捕塵率、即ち電解液中にて分離する確率を充分向上させることができる。
【0016】
しかも、特許文献1の場合には、負極部(陰極室)の下側から希釈ガスを噴出(吐出)する際に、電解液の下側への流入を防止するために、逆止弁を必要不可欠とするが、基本構成(1)、(2)、(3)においては、希釈ガスを流動パイプのうち電解液が負極から離れる方向に流動している上側の位置に希釈ガス噴出器を備えていることから、逆止弁は不要である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1の構成を示す部分的側断面図であって、(a)は、流動パイプの入口の上端が電解液の上側水平面の位置と一致しており、しかも流動パイプの出口の下端が負極の底部の位置と一致している場合を示し、(b)は、前記上端が前記水平面の位置に下側から近接しており、かつ前記下端が負極の底部の位置に上側から近接している場合を示す。
図2】実施例2の構成を示す部分的側断面図であって、(a)は、基本構成(1)の場合を示し、(b)は、基本構成(2)の場合を示す。
図3】基本構成(1)、(2)を説明する側断面図であって、(a)は、基本構成(1)の流動パイプ及び希釈ガス噴出器において、羽根車を備えたポンプを採用した場合を示し、(b)は、基本構成(2)の流動パイプ及び希釈ガス噴出器において、スクリューを採用した場合を示す。
図4】流動パイプの実施形態を示す部分的側面図であって、(a)は、流動パイプが三角形の2辺を形成する実施形態を示しており、(b)は、流動パイプが矩形の3辺を形成する実施形態を示しており、(c)は、流動パイプが上側から下側に順次屈曲形状を形成する実施形態を示す。 尚、流動パイプの上側の位置に備えている希釈ガス噴出器及び電解液の流動を実現するポンプ又はスクリューの図示を省略している。
図5】流動パイプ用のポンプ又はスクリューの駆動源が希釈ガス噴出器におけるポンプの駆動源と兼用している実施形態を示す部分的側断面図である。
図6】流動パイプ中に電解液の流動によって回転する羽根車を設け、当該羽根車の回転が希釈ガス噴出器に設置しているスクリューに伝達している実施形態を示す部分的側断面図である。
図7】流動パイプを下側にて突設している内壁から、流動パイプを更に電解槽内に突設し、かつ電解液の排出口を負極に近接した状態とし、しかも希釈ガスを含む電解液が負極に衝突している実施形態を示す部分的側断面図である。 尚、電解槽内における下側方向及び上方向の矢印は、電解液が負極に衝突し、更に底部に衝突した後に飛散している状況を示す。 更には、流動パイプの上側の位置に備えている希釈ガス噴出器及び電解液の流動を実現するポンプ又はスクリューの図示を省略している。
図8】流動パイプを下側にて突設している内壁から、流動パイプを更に電解槽内に突設し、かつ電解液の排出口を負極に近い電解槽の底部に近接した状態とし、しかも希釈ガスを含む電解液が当該底部に衝突している実施形態を示す部分的側断面図である。 尚、電解槽内における左右両側方向の矢印は、電解液が電解槽の底部に衝突した後に飛散している状況を示す。 更には、流動パイプの上側の位置に備えている希釈ガス噴出器及び電解液の流動を実現するポンプ又はスクリューの図示を省略している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の基本構成(1)は、図3(a)に示すように、負極11を備えている負極部と正極12を備えている正極部とを電解液Wを透過し得る隔膜13によって区分し、かつ負極部及び正極部の何れか一方又は双方が相互に電解液供給部10を備えると共に、負極部及び正極部の上側にそれぞれ水素ガス及び酸素ガス排出口20を有する電解槽1において、負極部の上下の2か所の内壁から羽根車を備えたポンプ21又はスクリュー21の作動によって、電解液Wが下側から上側に乱流を形成しながら流動する流動パイプ2を突設すると共に、流動パイプ2における上側の突設位置から電解液Wの上側から下側への逆流及び当該逆流に基づく乱流の形成を目的として、負極部の底部側に向かう排出口20を設置しており、流動パイプ2における各位置のうち、電解液Wが負極11から離れる方向であって、かつ前記ポンプ21又はスクリュー21よりも下流側にて流動している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器3を備えており、前記の各乱流の形成、及び噴出された希釈ガスの前記ポンプ21又はスクリュー21との衝突を原因として、希釈ガスの気泡の小型化を実現することを特徴とする希釈水素ガス供給装置である。
尚、図3(a)においては、負極部及び正極部の双方に電解液供給部10を備えた場合を示すが、隔膜13が電解液Wの透過が可能である以上、負極部又は正極部の何れか一方に電解液供給部10を備える構成も採用することができる。
【0019】
本発明の基本構成(2)は、図3(b)に示すように、所定の間隔にて配置された負極11並びに正極12を備え、かつ電解液供給部10を備えている電解槽1において、負極11に近い電解槽1の上下2か所の内壁から羽根車を備えたポンプ21又はスクリュー21の作動によって、電解液Wが下側から上側に乱流を形成しながら流動する流動パイプ2を突設すると共に、流動パイプ2における上側の突設位置から電解液Wの上側から下側への逆流及び当該逆流に基づく乱流の形成を目的として、正極12よりも負極11に近い側の底部側に向かう排出口20を設置しており、流動パイプ2における各位置のうち、電解液Wが負極11から離れる方向であって、かつ前記ポンプ21又はスクリュー21よりも下流側にて流動している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器3を備えており、前記の各乱流の形成、及び噴出された希釈ガスの前記ポンプ21又はスクリュー21との衝突を原因として、希釈ガスの気泡の小型化を実現することを特徴とする希釈水素ガス供給装置である。
尚、基本構成(2)の場合には、電解槽1が正極部と負極部に分離されていない以上、電解液供給部10は本来1個である。
【0020】
基本構成(1)、(2)、(3)においては、流動パイプ2の付近における上側の突設位置から負極11に近い側の底部に向かう排出口20を設置することによって、電解槽1内にて局所的に形成された逆流によって、希釈ガスの気泡の乱流を形成し、当該気泡の小型化、更には電解液Wにおける良好な分離を更に促進することができることについては、発明の効果の項において説明した通りである。
【0021】
前記衝突及び乱流の形成を考慮した場合、基本構成(3)においては、図3(a)、(b)に示すように、ポンプ21の回転する羽根車又はスクリュー21における回転中心軸からの最大距離を形成する端部が流動パイプ2の内壁に近接している場合には、前記衝突及び乱流の形成の程度を大きく設定し、ひいては前記気泡の小型化を促進することができ、かつこの点についても、効果の項において説明した通りである。
【0022】
通常、希釈ガスとしては空気が採用されているが、正極12及び負極11を流動する電流値の設定によって、電気分解によって生成する水素ガスの量を調整する一方、流動パイプ2に噴出する希釈ガスの量を調整することによって、生体用希釈水素ガスの濃度を0.1~18vol%に設定することは、十分可能である。
【0023】
他方、希釈ガスとして、電気分解によって生成された酸素又は当該酸素と空気の混合ガスを採用した上で、水素ガスの濃度を調整することも当然可能である。
【0024】
基本構成(1)、(2)、(3)の流動パイプ2については、上下方向に沿って様々な形状を採用することができる。
【0025】
具体的には、流動パイプ2が上下方向にて、図4(a)に示すように三角形の2辺を形成することを特徴とする実施形態、又は図4(b)に示すように、矩形の3辺を形成することを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0026】
これらの実施形態においては、三角形の角部及び矩形の角部を形成する領域において、希釈ガスの気泡が流動パイプ2の内壁と衝突することによって、気泡の乱流を形成し、気泡の小型化によって、良好な粉塵の捕塵率、即ち電解液Wにおける良好な分離を十分促進することができる。
【0027】
更には、図4(c)に示すように、流動パイプ2が上下方向にて順次屈曲形状を形成していることを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0028】
前記実施形態においては、希釈ガスの気泡が屈曲状の流動パイプ2を流動する際に、屈曲壁部と衝突することによって、図4(a)、(b)に示す実施形態の場合よりも更に気泡の小型化を促進し、ひいては電解液Wにおける良好な分離を一層促進することができる。
【0029】
基本構成(1)、(2)、(3)においては、図3(a)、(b)に示すように、流動パイプ2において、1個又は複数個のメッシュ状のフィルター5を備え、かつ当該メッシュの単位の面積が希釈ガス噴出器3によって形成された気泡の最大断面積よりも小さいことを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0030】
流動パイプ2中にメッシュ状のフィルター5を備えることによって、メッシュの単位に衝突した希釈ガスの気泡は更に小型化し、良好な粉塵の捕塵率、即ち電解液Wにおける良好な分離を促進することができる。
尚、メッシュ単位の形状としては、通常のメッシュの場合と同様に、正六角形形状又は正方形を採用する場合が多い。
但し、メッシュ単位の面積については、粉塵の平均粒径よりも大きい一方、噴出段階における気泡の最大断面積よりも小さいことを必要とすることから、0.1mm~1.0mmの幅による網目を採用する場合が多い。
【0031】
基本構成(1)、(2)、(3)の流動パイプ2中にて作動するポンプ21又はスクリュー21は、当然駆動源210を必要不可欠とする。
【0032】
このような場合、図5に示すように、流動パイプ2におけるポンプ21又はスクリュー21の駆動源210が、希釈ガス噴出器3において作動している羽根車を備えたポンプ31又はスクリュー31の駆動源を兼用していることを特徴とする実施形態を採用した場合には、1個の駆動源210にて流動パイプ2用のポンプ21又はスクリュー21、及び希釈ガス噴出器3における羽根車を備えたポンプ31又はスクリュー31を同時に作動させることができる。
尚、図5においては、希釈ガス噴出器3において羽根車を備えたポンプ31を採用している場合を示す。
【0033】
更には、図6に示すように、流動パイプ2に電解液Wの流動によって回転する羽根車4を設置し、当該羽根車4の回転を希釈ガス噴出器3において作動している羽根車を備えたポンプ31又はスクリュー31に伝達していることを特徴とする実施形態を採用した場合には、希釈ガス噴出用のポンプ31又はスクリュー31については、駆動源310を必要とせずに流動する電解液Wの運動エネルギーによって、希釈ガス噴出用のポンプ31又はスクリュー31を作動することができる。
尚、図6は、希釈ガス噴出器3においてスクリュー31を採用している場合を示す。
【0034】
図3(a)、(b)においては、板状の負極11及び正極12を採用しているが、基本構成(1)、(2)、(3)の電極としては、板状の電極に限定される訳ではない。
【0035】
例えば、円筒状の電解槽1内において外側に円筒状の負極11を設置し、かつ電解槽1の外側に流動パイプ2を突設し、電解槽1の内側に円筒状の正極12を同心円上に設置し、基本構成(1)の場合には、双方間に円筒状の隔膜13を同心円上に設置する実施形態(但し、各電極及び隔膜の形状が自明であることから図示しない。)、及び基本構成(2)の場合には、当該隔膜を設置しない実施形態(同様に、各電極の形状が自明であることから図示しない。)を採用することができる。
【0036】
基本構成(1)、(2)、(3)においては、図6に示すように、上側の突設位置から負極11に近い側に設置されている電解液Wの排出口20を負極11に近接した状態とし、しかも希釈ガスを含む電解液Wが負極11に衝突していることを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0037】
このような実施形態の場合には、希釈ガスの気泡が負極11と衝突することによって、気泡の小型化を促進し、ひいては電解液Wにおける良好な分離を促進することができる。
【0038】
しかも、上記実施形態の場合には、負極11表面から発生した水素ガスと希釈ガスとが電解液W中に混合した状態と化した希釈水素ガスを確保することができる。
【0039】
基本構成(1)、(2)、(3)においては、図7に示すように、上側の突設位置から負極11に近い側に設置されている電解液Wの排出口20を負極11に近い底部に近接した状態とし、しかも希釈ガスを含む電解液Wが当該底部に衝突していることを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0040】
上記実施形態の場合には、電解槽1の底部に希釈ガスの気泡が衝突することによって気泡の小型化を促進し、ひいては良好な電解液Wにおける分離を促進することが可能となる。
【0041】
本願発明の電解水としては、通常の電気分解に使用する水溶液、即ち精製水、ナトリウムイオン水、カリウムイオン水、カルシウムイオン水、マグネシウムイオン水等の陽イオン水、及び硫酸イオン、塩酸イオン等の陰イオン水を採用することができる。
【0042】
電解液Wを透過し得る基本構成(1)の隔膜13としては、例えば不織布、多孔質膜、立体形状メッシュ等を採用することができる。
【0043】
以下、実施例に従って説明する。
【実施例1】
【0044】
実施例1は、基本構成(1)、(2)、(3)において、図1(a)、(b)に示すように、流動パイプ2における電解液Wの負極部への入口の上端が電解液Wの上側水平面の位置と一致しているか又は当該位置に下側から近接している一方、流動パイプ2における電解液Wの負極部からの出口の下端が負極部の底部の位置と同一か又は当該位置に上側から近接していることを特徴としている。
【0045】
上記特徴点によって、実施例1の場合には、流動パイプ2の上下方向の距離及び電解槽1中において気泡が上昇する距離を大きく設定することによって、希釈ガスの気泡が電解液Wと接触する時間が増加し、その結果、良好な粉塵の捕塵効率、即ち電解液Wにおける良好な分離を向上させることができる。
【実施例2】
【0046】
実施例2は、図2(a)、(b)に示すように、基本構成(1)、(2)の流動パイプ2とは別に、負極11よりも正極12に近い側の上下2か所の内壁から羽根車を備えたポンプ21又はスクリュー21の作動によって、電解液Wが下側から上側に乱流を形成しながら流動する流動パイプ2を突設し、流動パイプ2における各位置のうち、電解液Wが正極12から離れる方向であって、かつ前記ポンプ21又はスクリュー21よりも下流側にて流動しており、前記乱流の形成、及び噴出された希釈ガスの前記ポンプ21又はスクリュー21との衝突を原因として、希釈ガスの気泡の小型化を実現する領域の上側の位置に希釈ガス噴出器3を備えていることを特徴としている。
【0047】
このような特徴によって、実施例2においては、希釈した酸素ガスを確保すると共に、希釈した水素ガスと希釈した酸素ガスとを混合することによって、酸素及び空気によって希釈された水素ガスを確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
基本構成(1)、(2)、(3)に立脚している本願発明は、負極に近い側の流動パイプを流動する希釈ガスの気泡の乱流を形成することによって、希釈ガスの気泡が小型化し、ひいては電解液の良好な分離を促進することができ、極めて清廉な希釈水素ガスを確保できる点において画期的であり、その利用範囲は広範である。
【符号の説明】
【0049】
1 電解槽
10 電解液供給部
11 負極
12 正極
13 隔膜
2 流動パイプ
20 排出口
21 流動パイプの羽根車を備えたポンプ又はスクリュー
210 前記ポンプ又はスクリューの駆動源
3 希釈ガス噴出器
31 希釈ガス噴出器のポンプ又はスクリュー
310 前記ポンプの駆動源
4 希釈ガス噴出器における羽根車を備えたポンプ又はスクリューに回転を伝達している流動パイプ中の羽根車
5 フィルター
W 電解液
【要約】
【課題】水素ガスが発生する電解槽において、噴出した希釈ガスの気泡を小型化し得る希釈水素ガス供給装置の構成の提供。
【解決手段】隔膜13によって区分されている負極11及び正極12を備えるか、隔膜13を介さずに、所定の間隔の下に配置された負極11及び正極12を備え、かつ電解液供給部10を備えている電解槽1において、負極11に近い電解槽1の上下2か所の内壁からポンプ21又はスクリュー21の作動によって、電解液Wを下側から上側に流動する流動パイプ2を突設すると共に、流動パイプ2における上側の突設位置から更に負極11に近い底部に向かう排出口20を設置し、流動パイプ2における各位置のうち、電解液Wが負極11から離れる方向であって、かつ前記ポンプ21又はスクリュー21よりも上流側にて流動している領域の上側の位置に希釈ガス噴出器3を備えることによって、前記課題を達成し得る希釈水素ガス供給装置。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8