(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】非侵襲性結腸運動モニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/053 20210101AFI20221115BHJP
A61B 5/389 20210101ALI20221115BHJP
【FI】
A61B5/053
A61B5/389
(21)【出願番号】P 2020508373
(86)(22)【出願日】2018-08-17
(86)【国際出願番号】 US2018046881
(87)【国際公開番号】W WO2019036596
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-07-29
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502416567
【氏名又は名称】ザ チルドレンズ マーシー ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、エム、ローゼン
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ、エム、バルガス-ルナ
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-519089(JP,A)
【文献】特開2004-000138(JP,A)
【文献】特表2019-522553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/053
A61B 5/389
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結腸直腸領域において対象の身体のインピーダンスを測定し、前記測定されたインピーダンスに応じて変化するインピーダンス信号を通信するように構成された生体電気インピーダンスユニットと、
前記結腸直腸領域において前記対象の身体の電圧を測定し、前記測定された電圧に応じて変化する電圧信号を通信するように構成された筋電図ユニットと、
メモリ素子と電子通信する処理素子を含む演算装置と
を備え、前記処理素子は、
前記インピーダンス信号を受信し、前記インピーダンス信号からインピーダンスデータを決定し、
前記電圧信号を受信し、前記電圧信号から電圧データを決定し、
前記インピーダンスデータからインピーダンスの導関数データを演算し、
前記インピーダンスデータ、前記電圧データ、および前記インピーダンスの導関数データのうちの任意の2つの間の相関を演算し、
前記相関に基づいて腸事象が発生しようとしている時期を判定し、
前記腸事象の表示を提供する、非侵襲性結腸運動モニタリングシステム。
【請求項2】
前記生体電気インピーダンスユニットは、
電流を注入するように構成された電流源と、
電圧を測定するように構成された電圧計と、
前記電流源に結合された複数の電流電極と、
前記電圧計に結合された複数の電圧電極と
を備え、
第1の電流電極および第2の電流電極は、互いに離間して配置されるように構成され、
第1の電圧電極および第2の電圧電極は、互いに離間して、かつ前記第1の電流電極と前記第2の電流電極との間に配置されるように構成される、請求項1に記載の非侵襲性結腸運動モニタリングシステム。
【請求項3】
前記電流電極は、複数の位置に電流を注入するのに利用され、前記電圧電極は、前記同じ位置の近辺の電圧を測定するのに利用され、前記インピーダンス信号は、前記電流電極および前記電圧電極の前記位置によって境界付けられた領域について測定されたインピーダンスの平均値に応じて変化する、請求項2に記載の非侵襲性結腸運動モニタリングシステム。
【請求項4】
前記生体電気インピーダンスユニットは、4つの電流電極および4つの電圧電極を備え、前記4つの電流電極は、第1の四辺形を形成するように配置されて構成され、前記4つの電圧電極は、第1の電流電極対が第1の電圧電極対と概ね整列し、かつ第2の電流電極対が第2の電圧電極対と概ね整列するように、前記第1の四辺形よりも一つの寸法がより小さく、前記第1の四辺形内に位置する第2の四辺形を形成するように配置されて構成されてなる、請求項2に記載の非侵襲性結腸運動モニタリングシステム。
【請求項5】
前記第1の電流電極対および前記第1の電圧電極対は、垂直に配向される第1のインピーダンス測定群を形成し、前記第2の電流電極対および第2の電圧電極対は、垂直に配向される第2のインピーダンス測定群を形成し、
前記第1のインピーダンス測定群は、坐骨棘と尾骨との間の線に沿って前記対象の身体の左側に配置されるように構成され、前記第2のインピーダンス測定群は、前記坐骨棘と前記尾骨との間の線に沿って前記対象の身体の右側に配置されるように構成され、
前記第1の四辺形は、前記結腸直腸領域に概ね配置される、請求項4に記載の非侵襲性結腸運動モニタリングシステム。
【請求項6】
前記筋電図(EMG)ユニットは、電圧を測定するように構成された電圧計と、前記電圧計に結合された複数のEMG電極とを備え、前記第1および第2のEMG電極は、各EMG電極がいずれかのインピーダンス測定群の対向する端部に配置されるように、前記第1のインピーダンス測定群または前記第2のインピーダンス測定群のいずれかと概ね整列して配置されるように構成される、請求項5に記載の非侵襲性結腸運動モニタリングシステム。
【請求項7】
前記筋電図(EMG)ユニットは、前記第1のEMG電極または前記第2のEMG電極のいずれかの近傍に配置されるように構成された第3のEMG電極を備える、請求項6に記載の非侵襲性結腸運動モニタリングシステム。
【請求項8】
前記処理素子は、前記インピーダンスデータと前記電圧データとの間の相関を演算し、前記相関が閾値よりも大きいときに腸事象が発生しようとしていると判定するようにさらに構成またはプログラムされている、請求項1に記載の非侵襲性結腸運動モニタリングシステム。
【請求項9】
前記インピーダンス信号および前記電圧信号を前記演算装置に無線で通信するように構成された通信素子をさらに備える、請求項1に記載の非侵襲性結腸運動モニタリングシステム。
【請求項10】
前記生体電気インピーダンスユニットおよび前記筋電図ユニットを保持する衣料品をさらに含み、前記衣料品は、前記対象の前記結腸直腸領域を覆うように着用されるように構成される、請求項1に記載の非侵襲性結腸運動モニタリングシステム。
【請求項11】
前記衣料品は、前記演算装置をさらに保持し、前記非侵襲性結腸運動モニタリングシステムは、前記腸事象の指標を無線通信するように構成されたワイヤレストランシーバをさらに備える、請求項10に記載の非侵襲性結腸運動モニタリングシステム。
【請求項12】
前記生体電気インピーダンスユニットは、4つの電流電極および4つの電圧電極を備え、前記4つの電流電極は、第1の四辺形を形成するように配置されて前記衣料品内に構成され、前記4つの電圧電極は、第1の電流電極対が第1の電圧電極対と概ね整列し、かつ第2の電流電極対が第2の電圧電極対と概ね整列するように、前記第1の四辺形よりも一つの寸法がより小さく、前記第1の四辺形内に位置する第2の四辺形を形成するように配置されて前記衣料品内に構成されてなる、請求項10に記載の非侵襲性結腸運動モニタリングシステム。
【請求項13】
前記第1の電流電極対および前記第1の電圧電極対は、垂直に配向される第1のインピーダンス測定群を形成し、前記第2の電流電極対および第2の電圧電極対は、垂直に配向される第2のインピーダンス測定群を形成し、
前記第1のインピーダンス測定群は、坐骨棘と尾骨との間の線に沿って前記対象の身体の左側に配置されるように構成され、前記第2のインピーダンス測定群は、前記坐骨棘と前記尾骨との間の線に沿って前記対象の身体の右側に配置されるように構成され、
前記第1の四辺形は、前記衣料品が前記対象に着用される際に前記対象の前記結腸直腸領域に概ね配置される、請求項12に記載の非侵襲性結腸運動モニタリングシステム。
【請求項14】
前記筋電図(EMG)ユニットは、電圧を測定するように構成された電圧計と、前記電圧計に結合された複数のEMG電極とを備え、前記第1および第2のEMG電極は、各EMG電極が前記衣料品におけるいずれかのインピーダンス測定群の対向する端部に配置されるように、前記第1のインピーダンス測定群または前記第2のインピーダンス測定群のいずれかと概ね整列して配置されるように構成される、請求項13に記載の非侵襲性結腸運動モニタリングシステム。
【請求項15】
前記衣料品は、前記電流電極、前記電圧電極、および前記EMG電極を、前記衣料品の少なくとも一部を形成する布地内に保持する、請求項14に記載の非侵襲性結腸運動モニタリングシステム。
【請求項16】
前記処理素子は、前記インピーダンスデータと前記電圧データとの間の相関を演算し、前記相関が閾値よりも大きいときに腸事象が発生しようとしていると判定するようにさらに構成またはプログラムされている、請求項10に記載の非侵襲性結腸運動モニタリングシステム。
【請求項17】
生体電気インピーダンスユニットの電流源に電気的に接続されるように構成され、第1の四辺形を形成するように配置された4つの電流電極と、
前記生体電気インピーダンスユニットの電圧計に電気的に接続するように構成された4つの電圧電極であって、前記4つの電圧電極は、第1の電流電極対が第1の電圧電極対と概ね整列して第1のインピーダンス測定群を形成し、かつ第2の電流電極対が第2の電圧電極対と概ね整列して第2のインピーダンス測定群を形成するように、前記第1の四辺形よりも一つの寸法がより小さく、前記第1の四辺形内に位置する第2の四辺形を形成すべく配置されてなる4つの電圧電極と、
筋電図(EMG)ユニットの電圧計に電気的に接続されるように構成された3つのEMG電極であって、第1および第2のEMG電極は、各EMG電極がいずれかのインピーダンス測定群の対向する端部に配置されるように、前記第1のインピーダンス測定群または前記第2のインピーダンス測定群のいずれかと概ね整列して配置され、第3のEMG電極は、前記第1のEMG電極または前記第2のEMG電極のいずれかの近傍に配置されてなる3つのEMG電極とを備える、
結腸運動モニタリング電極のアレイ。
【請求項18】
前記電流電極、前記電圧電極、および前記EMG電極は、対象の身体の結腸直腸領域を覆いながら着用される衣料品の少なくとも一部を形成する布地内に保持される、請求項17に記載の結腸運動モニタリング電極のアレイ。
【請求項19】
対象の身体の結腸直腸領域のインピーダンスを測定し、
前記インピーダンスの測定からインピーダンスデータを決定し、
前記対象の身体の前記結腸直腸領域の筋電図(EMG)電圧を測定し、
前記EMG電圧の測定からEMG電圧データを決定し、
前記インピーダンスデータを前記EMG電圧データと比較し、
前記インピーダンスデータを前記EMG電圧データと比較することに基づいて結腸活動を判定すること
を含んでなる、非侵襲性結腸活動のモニタリング方法
であって、
さらに前記インピーダンスデータからインピーダンスの導関数データを演算し、
前記インピーダンスデータ、前記EMG電圧データ、および前記インピーダンスの導関数データのうちの任意の2つの間の相関を演算し、
前記相関に基づいて腸事象が発生しようとしている時期を判定し、
前記腸事象の指標を提供する、前記方法。
【請求項20】
さらに前記腸事象について介護者に警告する、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記警告は、視覚的または聴覚的通知である、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記対象は子供であり、前記介護者は親であり、前記警告は、前記腸事象を前記親に通知することであり、前記方法が前記子供のトイレトレーニングを補助するのに有用である、請求項
20に記載の方法。
【請求項23】
前記対象は、介護ホーム居住者である、請求項
20に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が術後患者であり、前記介護者が医師である、請求項
20に記載の方法。
【請求項25】
前記インピーダンスを測定することは、前記対象の皮膚上に離間して配置された一組の電流電極を配置することを含み、前記電流電極の位置は、電界の周囲を画定する、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記インピーダンスを測定することは、さらに、前記対象の皮膚上に一組の電圧電極を離間して配置することを含み、前記電圧電極の位置は、各電圧電極がそれぞれの電流電極に近接するように、前記電界の周囲内にある、請求項
20に記載の方法。
【請求項27】
前記一組の電流電極は、第1の四辺形を形成するように配置された4つの電極を含み、前記一組の電圧電極は、前記第1の四辺形よりも一つの寸法がより小さく、前記第1の四辺形内に位置する第2の四辺形を形成すべく配置されてなる4つの電極を含む、請求項
25に記載の方法。
【請求項28】
第1の電流電極対は、第1の電圧電極対と概ね整列され、第2の電流電極対は、第2の電圧電極対と概ね整列される、請求項
27に記載の方法。
【請求項29】
前記EMG電圧を測定することは、前記対象の皮膚上に一組のEMG電極を離間して配置することを含み、前記EMG電極は、前記第1の四辺形の外に配置される、請求項
27に記載の方法。
【請求項30】
前記一組のEMG電極は、第1の電流電極に近接して配置された第1のEMG電極と、第2の電流電極に近接して配置された第2のEMG電極と、前記第1のEMG電極または前記第2のEMG電極に近接して配置された第3のEMG電極とを含む、請求項
29に記載の方法。
【請求項31】
前記対象によって着用される前記電極を備える衣料品を提供することをさらに含んでなる、請求項
30に記載の方法。
【請求項32】
前記測定の前に、前記対象に活性剤を投与することをさらに含んでなり、前記方法は、前記対象の前記結腸活動への前記活性剤の効果を判定することをさらに含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
前記対象がペットまたは他の動物である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年8月18日に出願の「非侵襲性結腸運動モニタリングシステム」と題する米国仮出願第62/547542号の優先権の利益を主張するものであり、参照することにより本明細書に取り込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明の実施形態は、生体電気インピーダンスの測定に基づいて結腸活動をモニタリングするための非侵襲性システムに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
腸および節制の問題は、小児および成人のいずれにも影響を及ぼし、助けを求める多くの患者は、初期には、非外科的または非内科的な治療に失敗することがある。便秘、過敏性腸症候群、便失禁などの問題は、患者や介護者を衰弱させ、生活の質の低下、抑うつ、および行動の問題につながる可能性がある。また、治療されていない不調は、慢性状態および他の身体的影響を引き起こす可能性がある。9歳未満の3分の1もの小児が、根本的な原因を特定されないまま便秘を経験する。便秘および他の腸の不規則性はまた、小児のトイレトレーニングの際にしばしば見受けられる。さらに、腸の不規則性は、手術、老化、陣痛および分娩、疾患、または他の内在する神経筋障害などの他の状態または事象の二次的な影響としても生じ得る。残念なことに、内在する状態および原因を評価し、かつ治療上の選択肢を評価するために腸活動を調査およびモニタリングするための現在の方法は、体内に設置されるカテーテルが必要となる侵襲的技術を必要とする。つまり、進行中の腸の不規則性の病態生理を明らかにすることは、現在困難であり、侵襲的である。加えて、結腸機能の一般的なモニタリングのためのより侵襲性の低い技術は、単に聴診器で腹部を聴くことを含み、対象の状態に関する実際の情報をほとんど提供しない。
【0004】
したがって、詳細な情報が望まれる急性または慢性疾患および腸機能不全を調査する目的、ならびにトイレトレーニングなどの結腸活動を評価する一般的な目的のいずれにとっても有用である、結腸活動をモニタリングするためのより侵襲性の少ない技術が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本発明の実施形態は、上述の問題を解決し、非侵襲性結腸運動モニタリングの技術において明らかな進歩を提供するものである。本発明の様々な実施形態は、結腸直腸領域における対象の身体の生体電気インピーダンスZおよび筋電図電圧を測定するシステムを提供する。測定値を含む信号を処理することにより、「腸事象」を判定するために使用することができる情報が提供され、これは、本明細書では、対象における目前の腸運動を示す結腸収縮を示すために使用される。
【0006】
システムの一実施形態は、生体電気インピーダンスユニットと、筋電図ユニットと、演算装置とを備える。生体電気インピーダンスユニットは、結腸直腸領域において対象の身体のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスに応じて変化するインピーダンス信号を通信するように構成される。筋電図ユニットは、結腸直腸領域において対象の身体の電圧を測定し、測定された電圧に応じて変化する電圧信号を通信するように構成される。演算装置は、インピーダンス信号を受信し、インピーダンス信号からインピーダンスデータを決定し、電圧信号を受信し、電圧信号から電圧データを決定し、インピーダンスデータからインピーダンスの導関数データを計算し、インピーダンスデータ、電圧データ、およびインピーダンスの導関数データのうちの任意の2つの間の相関を演算し、この相関に基づいて腸事象が発生しようとしている時期を判定し、腸事象の指標を提供するように構成またはプログラムされた処理素子を備える。
【0007】
本発明の別の実施形態は、生体電気インピーダンスユニットと、筋電図ユニットと、衣料品と、演算装置とを備える非侵襲性結腸運動モニタリングシステムを提供する。生体電気インピーダンスユニットは、結腸直腸領域において対象の身体のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスに応じて変化するインピーダンス信号を通信するように構成される。筋電図ユニットは、結腸直腸領域において対象の身体の電圧を測定し、測定された電圧に応じて変化する電圧信号を通信するように構成される。演算装置は、インピーダンス信号を受信し、インピーダンス信号からインピーダンスデータを決定し、電圧信号を受信し、電圧信号から電圧データを決定し、インピーダンスデータからインピーダンスの導関数データを計算し、インピーダンスデータ、電圧データ、およびインピーダンスの導関数データのうちの任意の2つの間の相関を演算し、この相関に基づいて腸事象が発生しようとしている時期を判定し、腸事象の指標を提供するように構成またはプログラムされた処理素子を備える。
【0008】
本発明のさらに別の実施形態は、4つの電流電極、4つの電圧電極、および3つの筋電図(EMG)電極を備える結腸運動モニタリング電極のアレイを提供する。電流電極は、生体電気インピーダンスユニットの電流源に電気的に接続されるように構成され、第1の四辺形を形成するように配置される。電圧電極は、生体電気インピーダンスユニットの電圧計に電気的に接続されるように構成される。電圧電極は、第1の電流電極対が第1の電圧電極対と概ね整列して第1のインピーダンス測定群を形成し、かつ第2の電流電極対が第2の電圧電極対と概ね整列して第2のインピーダンス測定群を形成するように、第1の四辺形よりも一つの寸法が小さく、第1の四辺形内に位置する第2の四辺形を形成するように配置される。EMG電極は、EMGユニットの電圧計に電気的に接続されるように構成される。第1および第2のEMG電極は、各EMG電極がいずれかのインピーダンス測定群の対向する端部に配置されるように、第1のインピーダンス測定群または第2のインピーダンス測定群のいずれかと概ね整列して配置される。第3のEMG電極は、第1または第2のEMG電極のいずれかの近傍に配置される。
【0009】
本発明の他の実施形態は、対象の骨盤領域に電流を印加するために皮膚上に配置された第1の組の電極を概ね備えるシステムを提供し、ここで第1の組の電極が、対象の結腸を中心とする電界を発生する構成で電流を印加し、電界の周囲内で皮膚上に配置された第2の組の電極が、電界を横切る電圧変化を測定する。インピーダンス値(Z)は、測定された電圧および電圧の経時変化(dZ/T)から計算される。このシステムはさらに、対象の筋骨格運動、特に骨盤領域における内部運動からの電気信号を測定するための第3の組の電極を備える。EMG信号に対するインピーダンス値の経時的な比較は、結腸活動を示す。
【0010】
内因性の結腸活動(例えば、結腸平滑筋の収縮)は、平均EMG信号とインピーダンス(Z)信号との間の高い相関と、同時発生的なZとdZ/dtとの間の低い相関とによって特徴付けられる。このような条件下では、システムは一次的な「陽性結果」を示す。りきむ動作(内部プッシングとして記載される)も平均EMG信号とZとの間に高い相関を示すようだが、休息または他の条件と比較してZとdZ/dtとの間の相関に変化はないように見られる。これは、対象が衝動又は欲求に応答して排便を試みているかもしれない際に、二次的な「陽性結果」となり得る。
【0011】
また、様々な方法でシステムを使用する方法も記載される。方法には、トイレトレーニングのための結腸活動のモニタリング、術後モニタリング、腸の不規則性のための医学的介入などを含む。ペットおよび他の非ヒト動物にこのシステムを使用するための方法もまた記載される。本方法は、本明細書に記載されるように、システムの電極を所望の構成に載置し、電流を流し、システムによって提供される出力データまたは情報をレビューすることを概ね含む。そのようなデータは、波形に関する詳細な情報を含んでもよいし、または単に結腸活動の陽性または陰性指標であってもよい。
【0012】
この発明の概要は、以下の詳細な説明でさらに説明される概念の選択を簡略化された形態で紹介するために提供されるものである。なお、この発明の概要は、特許請求される主題の重要な特徴または必須な特徴を識別することを意図するものではなく、特許請求される主題の技術的範囲を限定するために使用されることを意図するものでもない。本発明の他の態様および利点は、以下の実施形態の詳細な説明および添付の図面から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面を参照して、本発明の実施形態を以下に詳細に説明する。
【0014】
【
図1】
図1は、結腸運動をモニタリングするための、本発明の様々な実施形態に従って構築されたシステムの模式ブロック図であり、システムは、生体電気インピーダンス(EBI)ユニット、筋電図(EMG)ユニット、および演算装置を備える。
【
図2】
図2は、EBIユニットの様々な電子部品を示す模式ブロック図である。
【
図3A】
図3Aは、対象の体内への電流の注入を示す模式ブロック図である。
【
図3B】
図3Bは、対象の体内への電流の注入および電流の注入部位における電圧の測定を示す模式ブロック図である。
【
図4】
図4は、EBIユニットとともに用いられる電極の第1の構成を示す模式ブロック図である。
【
図5】
図5は、EBIユニットとともに用いられる電極の第2の構成を示す模式ブロック図である。
【
図6】
図6は、EBIユニットとともに用いられる電極の第3の構成を示す模式ブロック図である。
【
図7】
図7は、EMGユニットの様々な電子部品を示す模式ブロック図である。
【
図8】
図8は、EMGユニットとともに用いられる電極の構成を示す模式ブロック図である。
【
図9A】
図9Aは、骨格構造に関連する、インピーダンスZを測定するために推奨される電極配置の位置を、ハッチングされたボックスによって示す人体の図である。
【
図9B】
図9Bは、結腸位置に関連する、インピーダンスZを測定するために推奨される電極配置の位置を、ハッチングされたボックスによって示す人体の図である。
【
図9C】
図9Cは、対象の後方外側に関連する、インピーダンスZを測定するために推奨される電極配置の位置を、ハッチングされたボックスによって示す人体の図である。
【
図9D】
図9Dは、対象の側面外側に関連する、インピーダンスZを測定するために推奨される電極配置の位置を、ハッチングされたボックスによって示す人体の図である。
【
図10】
図10は、対象の身体に関連する、EBIユニットに接続された電極およびEMGユニットに接続された電極の配置を示す模式ブロック図である。
【
図11】
図11は、本発明の様々な実施形態で利用される衣料品の正面図である。
【
図12】
図12は、
図11の衣料品の背面図であり、電子ユニットと、EBIユニットのための電極およびEMGユニットのための電極の配置とをさらに示す。
【
図13】
図13は、電子ユニットの様々な電子部品を示す模式ブロック図である。
【
図14A】
図14Aは、対象が半臥位で休んでいる状態で、プロトコールの各ステップにおいて、様々な臨床状況に対するインピーダンスZ測定値、導関数dZ/dt、およびEMG電圧の測定値について振幅対時間のプロットを示す。
【
図14B】
図14Bは、脚の持ち上げに誘発される外乱を伴う状態で、インピーダンスZ測定値、導関数dZ/dt、およびEMG電圧の測定値について振幅対時間のプロットを示す。
【
図14C】
図14Cは、胃の圧迫に誘発される外乱を伴う状態で、インピーダンスZ測定値、導関数dZ/dt、およびEMG電圧の測定値について振幅対時間のプロットを示す。
【
図14D】
図14Dは、内部プッシング(りきみ)に誘起される外乱を伴う状態で、インピーダンスZ測定値、導関数dZ/dt、およびEMG電圧の測定値について振幅対時間のプロットを示す。
【
図14E】
図14Eは、投薬(緩下剤)に誘発される外乱を伴う状態で、インピーダンスZ測定値、導関数dZ/dt、およびEMG電圧の測定値について振幅対時間のプロットを示す。
【
図15】
図15は、対象がヨーグルトおよび果物を含む朝食を食べた後の、インピーダンスZ測定値、導関数dZ/dt、およびEMG電圧の測定値について振幅対時間のプロットである。
【
図16】
図16は、対象がチョコレートミルクを摂取した後の、インピーダンスZ測定値、導関数dZ/dt、およびEMG電圧の測定値について振幅対時間のプロットである。
【
図17A】
図17Aは、対象が冷たいフルーツジュースを摂取した後、約780~815秒間におけるインピーダンスZ測定値、導関数dZ/dt、およびEMG電圧の測定値について振幅対時間のプロットを示す。
【
図17B】
図17Bは、対象が冷たいフルーツジュースを摂取した後、約870~900秒間におけるインピーダンスZ測定値、導関数dZ/dt、およびEMG電圧の測定値について振幅対時間のプロットを示す。
【
図17C】
図17Cは、対象が冷たいフルーツジュースを摂取した後、約1105~1140秒間におけるインピーダンスZ測定値、導関数dZ/dt、およびEMG電圧の測定値について振幅対時間のプロットを示す。
【
図17D】
図17Dは、対象が冷たいフルーツジュースを摂取した後、約1080~1110秒間におけるインピーダンスZ測定値、導関数dZ/dt、およびEMG電圧の測定値について振幅対時間のプロットを示す。
【0015】
図面は、本発明を本明細書に開示され説明された特定の実施形態に限定するものではない。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、その代わりに、本発明の原理を明確に図示することに重点が置かれている。
【発明の具体的説明】
【0016】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明の以下の詳細な説明は、本発明を実施することができる特定の実施形態を示す添付の図面を参照する。本実施形態は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分詳細に本発明の態様を説明することを意図している。他の実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく、利用することができ、かつ変更を行うことができる。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲と、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等の全範囲とによってのみ定義される。
【0017】
この説明では、「一実施形態」、「一つの実施形態」、または「複数の実施形態」と言及しているのは、言及対象の1つの特徴または複数の特徴が、本技術の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。またこの説明での「一実施形態」、「一つの実施形態」、または「複数の実施形態」と個別に言及しているのは、必ずしも同じ実施形態について言及しているのではなく、またそのように述べられていない限り、および/または説明から当業者に容易に明らかになることを除いて、相互に排他的であるわけではない。例えば、一実施形態で説明された特徴、構造、動作などは、他の実施形態に含まれてもよいが、必ずしも含まれるとは限らない。よって、本技術は、本明細書で説明される実施形態の様々な組合せおよび/または統合を含むことができる。
【0018】
本発明は、結腸活動、特に結腸の運動および収縮を非侵襲的に検出およびモニタリングするためのシステムに関する。このシステムは、結腸運動の連続的または断続的なモニタリングを可能とし、行動変形例、バイオフィードバック、術後ケア、老人ケア、入院および外来ケア、ならびに薬力学的分析を補助することができる。例えば、システムは、排便の必要性またはトイレを試みるための最良の時間を示す結腸活動を介護者または親に警告するように、子供、言葉が不自由な個人、さらにはペットのトイレトレーニングを補助するのに使用されることができる。また、システムは、介護者が患者または居住者に付き添い、トイレに行くのを補助できるように、高齢患者または介護ホーム居住者のトイレの必要性を介護者に警告または信号で知らせるために使用することもできる。システムはまた、結腸活動を警告または信号で知らせて、切迫したおむつ交換の必要性を介護者に警告し、患者が汚れる時間を短縮することができる。システムはまた、手術後の患者の消化および排泄の状態に関する情報を介護者に提供するために、かつトイレの必要が生じたときに介護者に警告するために、手術後のケアのような入院患者のモニタリングに使用することもできる。
【0019】
このような手法は、ヒトおよび動物のいずれの術後患者にも適用可能である。システムはまた、高齢のまたは失禁するペットのモニタリングを容易にし、ペットの飼い主が、排便する時間にペットを外部またはトイレに連れていくことによって「事故」を回避するのを助けることができる。システムはまた、便秘などのトイレ問題のために医薬品に基づく介入と併せて使用することができ、その特定の対象に対する薬剤の進捗および効果をモニタリングすることを補助することができる。システムはまた、腸機能に対する多様な薬剤の効果を分析するための一般的な使用が見い出され、一般的な薬力学的分析を補助することができる。特に、システムは、精密医療を伝達するための生理学的データを提供することができる。便秘の治療のための薬理剤の用量および最大効果までの時間が推定され、一般化される。特定の患者に対して、医療提供者は、腸収縮性に関するデータを使用して、排便を補助するため、推奨される薬剤の使用をガイドすることができる。このシステムは、結腸運動をモニタリングするために患者の体内に結腸カテーテルの配置が必要となる従来技術の状態と比べて、明らかに異なる重要な利点を提供することは認められるものであろう。
【0020】
ここで、図面を参照して、システムをより詳細に説明する。
図1を参照すると、本発明の実施形態に従って構築された非侵襲性結腸運動モニタリングシステム10は、生体電気インピーダンス(EBI)ユニット12、筋電図(EMG)ユニット14、および演算装置16を汎用的に備える。
【0021】
EBIユニット12は、局所領域における対象の身体の電気インピーダンス(Z)または電気抵抗を概ね測定する。結腸直腸領域で測定されたインピーダンスZは、少なくとも部分的に結腸活動を示し得る。EBIユニット12は、
図2に示すように、電流源18と、電圧計20と、第1の複数の電極22と、第2の複数の電極24とを備える。EBIユニット12は、任意に、インピーダンス計算機26を備えてもよい。電流源18は、その値が一定であり、かつ/またはその端子間の電圧、または電流を供給している負荷とは無関係に制御される電流を発生する。電流源18は、対象の体内に電流を注入するように概ね構成される。電流源18は、定電流を発生することができる一般に知られている能動電気/電子回路を備える。電流源18はまた、第1の端子および第2の端子を含む。電流源18の例示的な実施形態は、1ミリアンペア(mA)未満の振幅および約50キロヘルツ(kHz)の周波数を有する交流(AC)電流を発生する。電流源18は、電流を発生させるためにそれを作動させる制御信号を受信し得る。
【0022】
電圧計20は、その端子間の実体物の電圧を概ね感知、検出、および/または測定する。電圧計20は、電圧を感知、検出、および/または測定する一般的に知られている電気/電子回路を備える。電圧計20はまた、第1(正)端子および第2(負)端子を有する。電圧計20は、アナログまたはデジタルであり、および/または端子間の電圧の値を示すデータを含む、電圧レベルまたは電流レベルなどの測定された電圧信号を出力する。
【0023】
電極22および24は、対象の身体への電気的接続を概ね提供する。各電極22および24は、金属または金属合金などの導電性材料から形成されたほぼ平面状な接触面を含む。この接触面は、対象の身体の皮膚の表面上に物理的に接触する。各電極22および24は、導電性接触面を取り囲むハウジングと、接触面に電気的に接続された導電性ワイヤまたはケーブルとをさらに備えてもよい。ワイヤまたはケーブルは、電極22を電流源18または電圧計20の端子のうちの一つに電気的に接続するために利用される。第1の電極22は、電流源18に関連付けられ、結合され、または電気的に接続され、「電流電極」22とみなされ、または称されてもよい。第2の電極24は、電圧計20に関連付けられ、結合され、または電気的に接続され、かつ「電圧電極」24とみなされ、または称されてもよい。
【0024】
インピーダンス計算機26は、インピーダンスZを概ね計算または決定し、プロセッサなどのアナログおよび/またはデジタル回路、ならびにアナログ電圧をサンプリングし、デジタルデータに変換するアナログデジタル変換器(ADC)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、電流源18によって生成される電流値が既知である。他の実施形態では、電流源18からの電流は、インピーダンス計算機によって感知または測定される。測定された電圧信号は、電圧計20から受信される。いくつかの実施形態では、電圧および電流は、インピーダンス計算機によって増幅され、減衰され、レベルシフトされ、乗算され、積分され、またはそれらが組み合わせされて、測定されたインピーダンスZの値に応じて変化し、その値に対応し、または含む、測定されたインピーダンス信号が出力されてもよい。他の実施形態では、電圧および/または電流は、ADCによって、それぞれ、サンプリングされ、デジタル電圧値および電流値に変換されてもよい。電流の値が既に知られている場合、デジタル電圧値は、電流を表す定数値で除算されてもよい。あるいは、デジタル電圧値は、デジタル電流値で除算されてもよい。いずれの方法でも、インピーダンス計算機26は、インピーダンスZの値を示すデジタルデータ形式のサンプル値のストリーム、シリーズ、またはシーケンスを含む、測定されたインピーダンス信号を出力する。さらに、電流が電流源18により複数の位置に注入され、電圧が電圧計20により同じ位置で測定されてもよい。インピーダンス計算機26は、電流値および電圧値の平均を決定または計算し、平均インピーダンスZを決定または計算してもよい。測定されたインピーダンス信号は、測定されたインピーダンスZの平均値に応じて変化し、それに対応し、またはそれを含んでもよい。
【0025】
EBIユニット12は、次のように動作する。EBIユニット12は、電流源18によっても受信される制御信号を受信してもよい。電流源18は、制御信号を受信すると、
図3Aに矢印で示すように、対象の体内に注入される電流を発生する。この電流は、
図3Aに曲線で示すように、対象の体内を流れる。電流源18は、制御信号が受信されている限り、または制御信号が受信されてから所定の期間、電流を発生し得る。一般に、対象の身体を流れる電流は、
図3Bに示すように、電界28を生成する。電圧計20は、
図3Bに矢印で示すように、電界28の電圧を測定する。原則として、電圧は、電流が注入される点間で測定される。EBIユニット12がインピーダンス計算機26を備える場合、インピーダンス計算機26は、電圧計20から測定された電圧信号を受信し、任意に、電流源18から電流信号を受信する。インピーダンス計算機26は、測定されたインピーダンス信号を出力し、これもEBIユニット12によって出力される。典型的には、測定されたインピーダンス信号は、インピーダンスZのデジタルデータ形式のサンプル値のストリーム、シリーズ、またはシーケンスを含む。他の実施形態では、EBIユニット12は、測定された電圧信号、および任意で電流信号を出力してもよい。
【0026】
電流が複数の位置に注入され、それらの位置で電圧が測定される場合、測定されたインピーダンス信号は、電流注入および電圧測定の位置によって境界付けられた領域について測定されたインピーダンスZの平均値に応じて変化し、それに対応し、またはそれを含んでもよい。例示的な実施形態では、EBIユニット12は、
図10に示すように、電流源18および電圧源20に結合または電気的に接続された8つの電極22および24を含み、4つの電流電極22および4つの電圧電極24を有する。インピーダンス計算機26は、測定された電圧を受け、電流値を提供される。インピーダンス計算機26、よってEBIユニット12は、測定されたインピーダンス信号を出力するものであり、この信号は、8つの電極22および24によって境界付けられた対象の身体の領域における、平均インピーダンスZの、デジタルデータ形式のサンプル値のストリーム、シリーズ、またはシーケンスを含む。さらに、インピーダンス測定のために電極22および24を配置(positioning)または配置(placing)するとき、2つの電流電極22は、互いに離間して配置され、2つの電圧電極24は、互いに離間し、2つの電流電極22の間に配置される。代替の構成では、EBIユニット12は、
図4、
図5、および
図6のそれぞれに示すように、2つ、3つ、または4つの電極22および24を備えてもよい。電極22および24は、図示したように、電流源18及び電圧源20に電気的に接続されてもよい。
【0027】
EMGユニット14は、局所領域における対象の身体の(EMG)電圧を概ね測定する。EMG電圧は、それが測定される領域における骨格筋活動を示す。EMGユニット14は、
図7に示すように、電圧計30と、「EMG電極」32とみなされるかまたは称される第3の複数の電極32とを備える。電圧計30は、3つの端子を備えてもよく、そのうちの2つが主端子とみなされる一方で、第3の端子が参照端子とみなされてもよい。電圧計30は、3つの端子のうちの任意の2つの間の電圧を感知、検出、および/または測定する電気/電子回路を備えてもよい。
【0028】
各EMG電極32は、電極22および24のうちの1つと構造、機能、及び作動について実質的に同一である。各EMG電極32は、電圧計30の端子の1つに結合されるか、または電気的に接続される。EMG電極32は、
図8に示すように、対象の身体に接続される。EMGユニット14は、アナログまたはデジタルであり、および/または3つの端子のうちの2端子間の測定された電圧の値に応じて変化し、それに対応し、またはそれを示すデータを含む、電圧レベルまたは電流レベルを含むEMG電圧信号を出力する。典型的には、EMG電圧信号は、3つの端子のうちの2端子間の電圧、結果としてEMG電圧である、3つのEMG電極32のうちの2電極間の電圧の、デジタルデータ形式のサンプル値のストリーム、シリーズ、またはシーケンスを含む。
【0029】
演算装置16は、結腸活動をモニタリングするための処理、計算、演算などを概ね実行する。演算装置16は、
図1に示すように、通信素子34、メモリ素子36、および処理素子38を備える。演算装置16は、グラフィックディスプレイまたはタッチスクリーン、キーパッド、キーボード、マウス、オーディオスピーカ、および他のユーザインターフェース装置などの構成部品を備えてもよく、以下、これらについては周知であるので、詳細には説明しない。
【0030】
通信素子34は、一般に、演算装置16が他の演算装置、外部システム、ネットワークなどと通信することを可能にする。通信素子34は、アンテナ、増幅器、フィルタ、ミキサ、発振器、デジタル信号プロセッサ(DSP)などの信号および/またはデータ送受信回路を備えてもよい。通信素子34は、セルラ2G、3G、4G、Voice over Internet Protocol(VoIP)、LTE、Voice over LTE(VoLTE)または5G、WiFiなどのInstitute of Electrical and Electronics Engineers(IEEE))802.11規格、WiMAX、Bluetooth(登録商標)、またはこれらの組み合わせなどのIEEE 802.16規格などの通信規格に準拠する無線周波数(RF)信号および/またはデータを利用することにより、無線通信を確立してもよい。さらに、通信素子34は、2.4ギガヘルツ(GHz)でのANT、ANT+、低エネルギーBluetooth(登録商標)(BLE)、産業、科学、および医療(ISM)バンドなどの通信規格を利用してもよい。よって、通信素子34は、演算装置とEBIユニット12および/またはEMGユニット14との間のこれらの通信規格のうちの1つを介してデータを無線で送受信するように構成された無線トランシーバを備えてもよい。通信素子34が、制御信号、測定されたインピーダンス信号、およびEMG電圧信号を演算装置16との間で無線通信するための単一のトランシーバを備えてもよく、あるいは通信素子34が、列挙された信号のそれぞれに対して1つのトランシーバを備えてもよい。
【0031】
あるいは、または加えて、通信素子34は、イーサネットなどのネットワーク技術と互換性のある、金属導体ワイヤまたはケーブルを受けるコネクタまたはカプラを介して通信を確立し得る。特定の実施形態では、通信素子34は、光ファイバケーブルと結合されてもよい。通信素子34は、メモリ素子36及び処理素子38と電子的に通信し得る。
【0032】
メモリ素子36は、一般にデータを、特にデジタルまたはバイナリデータを記憶する装置または構成部品によって具現化されてもよく、リードオンリメモリ(ROM)、プログラマブルROM、消去可能プログラマブルROM、スタティックRAM(SRAM)またはダイナミックRAM(DRAM)などのランダムアクセスメモリ(RAM)、キャッシュメモリ、ハードディスク、フロッピーディスク、光ディスク、フラッシュメモリ、サム駆動、ユニバーサルシリアルバス(USB)駆動、またはこれらの組み合わせなどの例示的な電子ハードウェアデータ記憶装置または構成部品を含んでもよい。一部の実施形態において、メモリ素子36は、処理素子38に埋め込まれてもよいし、または、処理素子38と同一のパッケージに包装されてもよい。メモリ素子36は、「コンピュータ可読媒体」を含んでもよく、または、構成してもよい。メモリ素子36は、処理素子38によって実行される指示、コード、コードステートメント、コードセグメント、ソフトウェア、ファームウェア、プログラム、アプリケーション、apps、サービス、デーモンなどを記憶し得る。メモリ素子36はまた、設定、データ、文献、サウンドファイル、写真、ムービー、画像、データベースなどをも記憶し得る。
【0033】
処理素子38は、1つまたは複数のプロセッサを備えてもよい。処理素子38は、マイクロプロセッサ(シングルコアまたはマルチコア)、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、アナログおよび/またはデジタル特定用途向け集積回路(ASIC)など、またはそれらの組合せなどの電子ハードウェア構成要素を含んでもよい。処理素子38は、一般に、指示、コード、コードセグメント、コードステートメント、ソフトウェア、ファームウェア、プログラム、アプリケーション、apps、プロセス、サービス、デーモンなどを実行、処理、または起動し得る。処理素子38はまた、レジスタ、有限状態マシン、シーケンシャルおよび組合せ論理、ならびに本発明の動作に必要な機能を実行可能とする他の電子回路などのハードウェア構成要素をも含んでもよい。特定の実施形態では、処理素子38は、別々にパッケージされるが単一のユニットとして機能する複数の計算コンポーネントおよび機能ブロックを含んでもよい。いくつかの実施形態では、処理素子38は、アナログ電圧をサンプリングし、デジタルデータに変換するADCを含んでもよい。処理素子38は、ユニバーサルバス、アドレスバス、データバス、制御ラインなどを含むシリアルまたはパラレルリンクを介して他の電子コンポーネントと電子通信し得る。
【0034】
処理素子38は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組み合わせを利用することによって、以下の機能を実行するように動作可能、構成、またはプログラムされ得る。処理素子38は制御信号を生成し、それをEBIユニット12の電流源18に通信する。制御信号は、インピーダンス測定を開始する電圧または電流のパルスであってもよく、または、制御信号は、インピーダンスが測定される期間中に送信される電圧または電流の一定値であってもよい。処理素子38は、EMGユニット14からEMG電圧信号を受信する。典型的には、EMG電圧信号は、3つのEMG電極32のうちの2電極間の電圧をサンプリングしたデジタルデータサンプル値のストリームである。あるいは、EMG電圧信号は、測定されたEMG電圧に対応するアナログ電圧レベルを含んでもよい。処理素子38のADCは、EMG電圧信号をデジタルデータサンプル値のストリームに変換し得る。
【0035】
処理素子38は、EBIユニット12から測定されたインピーダンス信号を受信する。
典型的には、測定されたインピーダンス信号は、インピーダンスZの値のサンプリングされたデジタルデータサンプル値のストリームである。その代わりに、処理素子38は、EBIユニット12の電圧計20から測定された電圧信号を受信してもよい。電流源18からの電流が既知である場合、処理素子38は、測定電圧のデジタルデータサンプル値を電流値で割り算した値としてインピーダンスZを計算する。
【0036】
処理素子38は、既知の導関数または勾配計算手法を利用して、インピーダンスZ値の導関数dZ/dtを計算、演算、または決定する。インピーダンスZはデジタルデータサンプルのストリームであるため、導関数dZ/dtもまた、デジタルデータ値のストリームである。EMG電圧、インピーダンスZ、および導関数dZ/dtの値が与えられると、処理素子38は、EMG電圧とインピーダンスZとの間の第1の相関、EMG電圧と導関数dZ/dtとの間の第2の相関、およびインピーダンスZと導関数dZ/dtとの間の第3の相関を計算、演算、または決定する。特定の実施形態では、EMG電圧、インピーダンスZ、または導関数dZ/dtのデータストリームのうちの1つまたは複数が、第1、第2、および第3の相関を計算、演算、または決定する前に、フィルタリング、平均化、および/または可変性分析を適用することなどによって調整される。
【0037】
処理素子38は、EMG電圧、インピーダンスZ、および導関数dZ/dtの値のストリーム、ならびに第1の相関、第2の相関、および第3の相関をメモリ素子36に記憶し得る。処理素子38はまた、EMG電圧値、インピーダンスZの値、およびこれら値の導関数dZ/dtおよび/または統計値(例えば、平均値、標準偏差、高値、低値等)をディスプレイまたはスクリーン上に表示し得る。加えて、またはその代わりに、処理素子38は、EMG電圧、インピーダンスZ、および導関数dZ/dtの値を、時間に対する値の波形として表示し得る。
【0038】
一般に、EMG電圧に重要な変化のない状態でのインピーダンスZの変化は、結腸活動を示す。EMG電圧測定は、ノイズをフィルタリングし、インピーダンスZの測定を分離するように作用し得る。このフィルタリングは、腕および/または脚の運動などの対象の身体の物理的運動と、内臓、特に結腸の活動とを区別するのに役立ち得る。
【0039】
処理素子38は、第1、第2、および/または第3の相関のうちの1つまたは複数を利用して、結腸活動をモニタリングし、腸運動などの腸事象が発生しようとしていることを判定、検出、または予測する。特に、処理素子38は、これら相関のうちの少なくとも1つが所定の閾値を上回るか下回る値を有する時期、または相関のうちの少なくとも1つが所定の値の範囲内の値を有する時期を判定し得る。加えて、またはその代わりに、処理素子38は、これら相関のうちの1つが所定の第1の値の範囲内の値を有する時期、ならびにこれら相関のうちの別のものが所定の第2の値の範囲内の値を有する時期を判定することができる。第1の例示的な実施形態では、処理素子38は、(EMG電圧とインピーダンスZとの間の)第1の相関が0.75より大きい値を有するときに腸事象が発生しようとしていると判定し得る。第2の例示的な実施形態では、処理素子38は、(EMG電圧とインピーダンスZとの間の)第1の相関が比較的高く、すなわち0.75より大きい値を有し、(インピーダンスZと導関数dZ/dtとの間の)第3の相関が比較的低く、すなわち約0と約0.25との間の値を有するときに、腸事象が発生しようとしていると判定し得る。
【0040】
処理素子38は、腸事象が発生しようとしていると判定すると、(警戒)ライトを作動させること、スピーカを介して音(警報または警告など)を出すこと、装置を振動させること、画面上にメッセージを表示すること、テキストメッセージを送信すること、電子メールメッセージを送信すること、自動オーディオメッセージを送信すること、着信音を再生すること、スマートフォンのアプリケーション通知を作動させること、時計または眼鏡などのスマートウェアラブル電子機器を作動させること、埋め込み型電子機器を作動させることなどのうちの1つまたは複数を行うことによって、事象の表示を提供し得る。
【0041】
システム10はまた、処理素子38が、特定の対象または個人のインピーダンスZ値およびEMG電圧値のデータ量を収集する、学習モードまたはプロファイル展開モードを有してもよい。典型的には、学習モードは、対象が正常な(腸事象が差し迫っていない)状況および腸事象状況の間休んでいるときにデータを取得できるように、既知のまたは制御された状態で生じる。処理素子38は、インピーダンスZデータおよびEMG電圧データのベースライン値またはレベルを決定するために、人工知能、アルゴリズム、統計モデルなど、またはそれらの組み合わせを利用し得る。加えて、またはその代わりに、インピーダンスZデータおよびEMG電圧データのベースライン値またはレベルは、手動で入力されるか、または示されてもよい。ベースライン値またはレベルが確立された後、処理素子38は、上述のように正常モードで動作し得る。
【0042】
システム10は、以下のように動作または機能し得る。EBIユニット12用の電極22および24は、
図10に示すように、対象の身体の皮膚と接触するように配置される。この構成を用いると、電界が結腸領域を中心とするように対象の後側の臀部領域において四辺形な構成で配置された電流源18からの2つの電極対22間に循環する電界が生成され、かつ電圧計20からの2つの電極対24は、一対の電圧電極24が各一対の電流電極22に近接し、これにより生成された電界内に位置する状態で配置されている。
【0043】
図9および
図10を参照すると、結腸上に電界を中央に置くためには、電流電極22は、2つの電極22が身体の各後側に配置されるように、好ましくは配置され、かつ骨盤の横方向(側面)視における電極22の前後の整列が概ね坐骨棘と尾骨との間にあるように、
図9A~
図9D中のハッチングされたボックスによって示され、胸郭の腋窩中央線によって画定された実質的な平面に沿って整列される。電流源18からの電極22の上位から下位(上面から下面)への整列は、電極22(の上位)対が、腸骨稜の下の身体の各側の1つの電極22と離間した関係で、好ましくは、後方上位の腸骨棘と概ね水平に整列した平面の下で結合されるようになされている。第2(下位の)電極対22は、直腸と概ね水平に整列した平面に沿って身体の各側で離間した関係で結合され、身体のその側で他のそれぞれの電極22に垂直に整列する。このため、身体の後方図では、4つの電流発生電極が、殿部領域を「枠組み」する四辺形の周囲を画定するものとして特徴付けられる。
図9A~
図9Dに示すように、このような配置により、発生された電界が、対象の領域内の尾骨、大腿骨、股関節、および他の骨からの「干渉」を回避することを可能にし、それにより、インピーダンスZの測定値が、内部結腸運動性に基づくようになる。電圧電極24は、初期電流およびそれに対する変化を検出するために、四辺形の周囲の内側に配置される。好ましくは、
図10に示すように、第1の電圧電極対24は、各々が上位電流電極22の各々に近接するがその下に配置され、また第2の電圧電極対24は、下位電流電極22の各々に近接するがその上に位置される。より好ましくは、身体の各側のそれぞれの電流電極22および電圧電極24が、ほぼ垂直に整列している。このため、上位および下位の電流電極22(すなわち、構成の「外側」電極)は、非常に低い一定の交流を印加するために電気信号を連続的に送受信し、一方、電圧電極24(すなわち、「内側」電極)は、インピーダンスを断続的にまたは常時検出および測定し、印加された電流を受けることが認められるであろう。換言すれば、対象の身体の左側に接触するように構成された電流電極22および電圧電極24は、第1のインピーダンス測定群40を形成する一方で、対象の身体の右側に接触するように構成された電流電極22および電圧電極24は、第2のインピーダンス測定群42を形成する。
【0044】
EMG電極32は、
図10に示すように、対象の身体の皮膚と接触するように配置される。EMG電極32のうちの2つは、身体の一方側の第1インピーダンス測定群40または第2のインピーダンス測定群42のいずれかの電極22および24と概ね垂直に整列して配置される。
図10に示す例示的な実施形態では、EMG電極32は、身体の右側の第2のインピーダンス測定群42の電極22および24と概ね垂直に整列して配置される。
図10に示すように、EMG電極32の一方は、好ましくは、腸骨稜によって画定される水平面により近く、上位電流電極22よりも上方に配置され、他方のEMG電極32は、好ましくは、大腿の上側横方向側の部分などの、下位電流電極22よりも下方に配置される。第3のEMG電極32は、好ましくは、腰部付近の他のEMG電極32の近傍に配置されて、参照信号として作用する。
【0045】
電極22、24、および32は、上述した相対位置に配置されると、結腸運動をモニタリングするための電極22、24、および32のアレイ44を形成する。アレイ44は、全部で11個の電極22、24、および32を含み、8個の電極22および24は、インピーダンスZの測定と関連付けられ、EBIユニット12に電気的に接続するように構成され、3個の電極32は、EMG電圧の測定と関連付けられ、EMGユニット14に電気的に接続するように構成される。4つの電流電極22は、(電流源18からの)電流注入を提供し、各電流電極22は、第1の四辺形の4つの縁の連続する1つに配置される。4つの電圧電極24は、(電圧計20からの)電圧測定値を提供し、各電圧電極22が第2の四辺形の4つの角のうちの連続する1つに配置され、ここで、この第2の四辺形は、第1の四辺形よりも1つの寸法が小さく、概して第1の四辺形内に配置される。第1の電圧電極対24は、第1の電流電極対22と概ね整列され、第1のインピーダンス測定群40を形成する。第2の電圧電極対24は、第2の電流電極対22と概ね整列され、第2のインピーダンス測定群42を形成する。EMG電極32のうちの2つは、第1のインピーダンス測定群40または第2のインピーダンス測定群42のいずれかと概ね整列して配置され、一方のEMG電極32が群40および42の一方の端部に隣接して配置され、他方のEMG電極32が群40および42の他方の端部に配置される。第3のEMG電極32は、第1の四辺形の境界のほぼ外側にある2つの第1のEMG電極32の近傍に配置される。
【0046】
全ての電極22、24、および32が設置されると、処理素子38は、制御信号を少なくともEBIユニット12に通信することにより、インピーダンスZ測定およびEMG測定を開始し得る。特定の実施形態では、EBIユニット12およびEMGユニット14は、自動的に作動し得る。いずれの場合も、EBIユニット12は、処理素子38がインピーダンスZのサンプリングされたデジタルデータ値のストリームを受信するように、測定されたインピーダンス信号を演算装置16の処理素子38に通信する。加えて、EBIユニット14は、処理素子38がEMG電圧のサンプリングされたデジタルデータ値のストリームを受信するように、EMG電圧信号を演算装置16の処理素子38に通信する。
【0047】
システム10は、手動で又は自動的に学習モードに置かれてもよく、この学習モードでは、処理素子38は、特定の対象又は個人に対するインピーダンスZデータ及びEMG電圧データのベースライン値又はレベルを決定する。学習モードが完了した後、または学習モードが利用されない場合、処理素子38は、インピーダンスZ値の導関数dZ/dtを計算し、演算し、または決定する。処理素子38はまた、第1の相関、第2の相関、および第3の相関を計算し、演算し、または決定する。処理素子38は、第1、第2、および/または第3の相関のうちの1つまたは複数を利用して、腸事象が発生しようとしていることを判定、検出、または予測する。一般に、処理素子38は、1つまたは複数の相関が所定の値の範囲内の値を有するときに腸事象が発生しようとしていると判定する。処理素子38は、腸事象が発生しようとしていると判定すると、ライトを作動させたり、警報を鳴らしたり、または通知を送るなどによって、事象の表示を提供し得る。
【0048】
図11~
図13を参照すると、システム10の様々な実施形態は、電子ユニット48に含まれる少なくともEBIユニット12及びEMGユニット14を保持する衣料品46を含んでもよい。衣料品46は、下着、布又は使い捨て型おむつ、トレーニングパンツ、ガードル、パンツ、パンティーホース、ショーツ、ブリーフ、ボクサーブリーフ等の、対象の結腸直腸領域に近接し、かつ患者の皮膚に接触する対象に着用されるように構成された任意の適切な衣類又は衣服であってもよい。システム10の構成要素を正確に配置するために、衣料品46または衣料品46の特定の領域は、一般に、緩い衣料品とは対照的に、対象の身体にぴったりとフィットしており(別名「スキンタイト」であり)、特定の性別用または男女共用の肌着またはパンツによって具現化されてもよいことは認められるところであろう。電極22、24、および32は、衣料品46が通常の方法で着用されるときに各電極22、24および32の接触面が対象の身体の皮膚に接触するように、布地内に埋め込まれたものとして、衣料品46の本体に保持または結合される。各電極22、24、および32は、上述の及び
図10に示した、あるいは電極22,24、および32のアレイ44について説明したのと同じ位置で、対象の皮膚に接触するように、衣料品46内に配置される。電子ユニット48は、電池のような電源と、衣料品46が通常の方法で着用されたときに電子ユニット48が快適に収容されることを可能にするパッケージングとを追加的に備えてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、制御信号、測定されたインピーダンス信号、およびEMG電圧信号がケーブルを介して通信されるように、(単一導体または複数導体の)ケーブルが、電子ユニット48を演算装置16に電気的に接続してもよい。システム10は、上述したのと実質的に同様に機能する。
【0050】
他の実施形態では、電子ユニット48はまた、
図13に示すように、1つまたは複数のワイヤレストランシーバ50も備える。ワイヤレストランシーバ50は、上述の通信素子34と同様の特徴を有することにより、当該ワイヤレストランシーバが、ANT、ANT+、Bluetooth(登録商標)、BLE、ISM、WiFi、セルラなどを介してデータを送受信するように構成されてもよい。電子ユニット48は、制御信号、測定されたインピーダンス信号、およびEMG電圧信号を演算装置16と通信するための単一のトランシーバを備えてもよく、あるいは電子ユニット48は、列挙された信号のそれぞれに対して1つのトランシーバを備えてもよい。
【0051】
上述したように、
図13に示されるように、EBIユニット12、EMGユニット14、およびワイヤレストランシーバ50を備える電子ユニット48は、衣料品46とは独立した形態で自立して実施され、衣料品46には保持されないことは認められるところであろう。また、電子ユニット48は、衣料品46なしで、以下に説明するように機能してもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、電子ユニット48は、測定されたインピーダンス信号及びEMG電圧信号を、シグナルリピータとして機能し、測定されたインピーダンス信号及びEMG電圧信号を演算装置16に通信する基地局52に通信する。他の実施形態では、電子ユニット48は、測定されたインピーダンス信号およびEMG電圧信号を演算装置16に直接通信する。いずれの状況においても、演算装置16は、上述したように、データ計算を実行し、腸事象が発生しようとしている時期を判定する。処理素子38は、腸事象が発生しようとしていると判定すると、ライトを作動させたり、警報を鳴らしたり、または通知をスマートフォンや他のモバイル電子機器に送ったり、時計もしくは眼鏡などのスマートウェアラブル電子機器または埋め込み型電子機器などを作動させることによって、事象の表示を提供し得る。
【0053】
特定の実施形態では、演算装置16は、スマートフォン、ウェアラブルスマート機器、埋め込みスマート機器、またはその他の機器に例示されるモバイル電子機器54によって具体化される、またはその中に含まれ得る。電子ユニット48は、上述したように、測定されたインピーダンス信号及びEMG電圧信号を、データ計算を実行し、かつ腸事象が発生しようとしている時期を判定するモバイル電子機器54に通信する。モバイル電子機器54は、腸事象が発生しようとしていると判定すると、振動したり、着信音または可聴警告を再生したり、画面上にメッセージまたは通知を表示したり、あるいはそれらの組合せなどによって、事象の表示を提供し得る。
【0054】
さらに他の実施形態では、電子ユニット48は、システム10を衣料品46に内蔵または独立化させる演算装置16をさらに備える。システム10は、上述したように、腸事象が発生しようとしている時期を判定する。システム10は、腸事象が発生しようとしていると判定すると、スマートフォンに通知を送信すること、あるいはライトの作動や警報の鳴動などを可能とする他の機器に通知を送信することによって、事象の表示を提供し得る。
【0055】
本発明の様々な実施形態の追加的な利点は、本明細書の開示および以下の実施例を検討することにより、当業者に明らかになるであろう。本明細書で説明される様々な実施形態は、本明細書で別段の指示がない限り、必ずしも相互に排他的ではないことは認められるところであろう。例えば、一実施形態で説明または描写された特徴は、他の実施形態に含まれてもよいが、必ずしも含まれるとは限らない。したがって、本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態の様々な組み合わせおよび/または統合を包含するものである。
【0056】
本明細書で使用される、「および/または」という語句は、2つ以上のアイテムのリストで使用される際、リストされたアイテムのうちのいずれかが単独で使用され得ること、またはリストされたアイテムのうちの2つ以上の任意の組合せが使用され得ることを意味する。例えば、組成が、構成要素A、Bおよび/またはCを含んでいる、または除外していると記載されている場合には、その組成は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBの組合せ、AおよびCの組合せ、BおよびCの組合せ、またはA、BおよびCの組合せを含むまたは除外することができる。
【0057】
本明細書はまた、数値範囲を使用して、本発明の様々な実施形態に関連する特定のパラメータを定量化する。数値範囲が提供される場合、そのような範囲は、範囲のより低い値のみを列挙する請求項の限定、ならびに範囲のより高い値のみを列挙する請求項の限定のための文字通りのサポートを提供するものとして解釈されると理解されるべきである。
例えば、約10~約100の開示された数値範囲は、「約10より大きい」(上限なし)を列挙する請求項及び「約100より小さい」(下限なし)を列挙する請求項に対する文字通りのサポートを提供する。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明に係る方法を説明する。しかしながら、これらの実施例は、例示により提供されるものであり、本発明の全体的な範囲について限定するものと解釈されるべきではないと理解されることである。
【0059】
実施例1
EMGは、骨格筋の電気的活動を検出し、一方、EBIは、電流の流れに対する様々な生物学的組織の内部抵抗を測定する。制御された量の電流が、電流電極22を通って組織の切片に印加され、その組織を横切って得られた電圧は、記録およびその後の分析のための検出可能な信号を提供する。密度、材料含有量、流体伝導率、または配座などの内部構成の任意の変化は、検出電圧の変化によって検出される。印加電流の量、電圧測定値、および位相角に関する情報は、その組織領域のインピーダンスプロファイルを特徴付け可能にする。交流(AC)は、典型的には、インピーダンス測定において電流源として使用される。
【0060】
本実施例では、表面電極22、24、および32を介したEBIおよびEMG測定値を非侵襲的構成で使用して、下行結腸および直腸の運動を評価した。体動アーチファクトを分析して、内因性腸活動と区別した。直腸を横切る等電位線又は電界の生成を最大にするように意図された構成において、1mA未満で50kHzの周波数の固定交流を骨盤領域に印加した。この予備的な前臨床研究は、半臥位での休息時、および股関節屈曲、外部胃圧、りきみ、および刺激性緩下剤の摂取の間の測定を含めた。EMG信号、インピーダンスZ、およびインピーダンスの導関数(dZ/dT)の分析は、フィルタリング、平均化、および可変性分析によって、分散期間の平均化および標準偏差(SD)を考慮して行った。その結果は、結腸直腸生体電気インピーダンスの概念的枠組みを支持し、様々な条件下でのEMG活性とEBI活性との間の差異を証明する。
【0061】
このプロトコールでは、電流電極22を用いて対象の結腸を中心とする電界を生成する一方で、電圧電極24を用いてその電界の変化を検出した。この構成では、
図10に示すように、4つの電極22を用いて電界を発生させ(4つの外側電流発生電極)、かつ4つの内側電圧検出電極24を用いてその変化を検出した。2つの追加のEMG電極32は、EMG信号を検出するために、インピーダンス電極線の一方の極端に配置した(
図10)。
衣料品46を使用して、電極22、24、および32の位置決めを維持し、通常の運動中の皮膚の屈曲により電極が乖離するのを回避した。電極22および24は、出力信号を受信するために、電源および受信機/モニタに取り付けられる。EMG2-RおよびNICO-R BioNomadix心拍モジュールを含むACQKnowledge 5ソフトウェア(BIOPAC Systems、Goleta CA)を有するBIOPAC Systems MP160を適合させて、電流を生成し、電気信号を測定した。
【0062】
小電流(<1mA)が対象の結腸直腸領域を横切って出力され、結腸を中心とする電界を生成する。そして、身体の結腸領域に沿って生成された電圧は、検出電極24によって検出され、受信機に送信され、結腸における生体インピーダンスの信号に対応する電圧の変化が決定される。筋肉の運動もまたEMG電極32により検出され、受信機に送信される。
【0063】
インピーダンスZおよびEMGの測定を、以下のように、経時的に、および異なる条件下で行った。
-この構成(呼吸、上部結腸運動、筋肉不随意運動など)について内部の自然なノイズを観察するために、セミファーラー位で休息状態で5分間記録した。
-15秒毎に交互に脚を持ち上げて5分間。この動作には4秒間かかる(持ち上げに2秒、元の位置に戻すのに2秒)。このステップの目的は、自然な足の動きによる変化を観察することである。
-機械的補助なしに、15秒毎に自発的な腹部圧迫を行う5分間。各圧迫事象には4秒間かかる。これは、例えば、深呼吸の効果を与える。
-15秒毎に内部プッシング(排泄する必要があるならば)を5分間。このステップは、排泄しようとする自発的な試みを、排泄を促進しようとする筋肉の不随意な反応から識別することである。
-緩下剤を投与し、続いて1時間完全に休息し、この領域における電気的および運動活性への薬剤の効果を観察する。
【0064】
EMG信号、インピーダンスZ、およびインピーダンスの導関数(dZ/dT)の分析は、0.5秒間の平均化
【数1】
および標準偏差(SD)、ならびに(N-1)点のオーバーラップを考慮して、フィルタリング、平均化、および可変性分析によって行う。これは、平均化しかつオーバーラップによりSDデータの変動をも平滑化させることによって、信号を平滑化することを意味する。3つのシグナル間の平均値およびデータ変動の相関をとった。
【0065】
方法論に記載された事象を有する各信号のサンプルを
図14A~
図14Eに示す。上述したように、信号(EMG、Z、dZ/dT)間の相関分析のために、平均化およびSDデータを考慮した。明らかな理由により、最も大きな相関がZ対dZ/dTについて現れることが予想された。休息(基礎)段階をとる目的は、電極22、24、および32の構成が他の内部運動に敏感であるかどうかを観察することである。この基礎段階では、インピーダンスデータ(ZまたはdZ/dT)とEMGとの間に大きな相関は見られなかった。
誘発された外乱に対応する他の3つのステップは、強度および特定のノイズレベルが異なる信号間で明らかな相関を示している(表1)。
【0066】
【0067】
内部プッシングおよび投薬(緩下剤)による事象については、EMGとインピーダンス(Z)との間の相関は、このような事象の潜在的な識別因子として考慮されるのに十分に高く、統計的に有意である。ZとdZ/dTとの間の相関は、投薬の場合が最も低い。
この最後の結果は、薬剤の効果のために、Z信号が他の場合と比べてこの場合にノイズが多いことを意味する。これは、システム10が、様々な異なる薬物に関する薬力学分析にも有用であり得ることを示す。
【0068】
実施例2
システム10は、対象が結腸活動をモニタリングしかつ識別するために様々な活動を行っている際に使用された。実施例1にて説明したように、EMG(筋活動)、インピーダンス(Z、内部電気抵抗)、およびインピーダンス変化(dZ/dT)をシステム10で測定した。これら3つのシグナル間の相関(R)は、結腸活動を示す。システム10は、異なる生理学的状態での個別のパターンを識別するために、インピーダンスZおよびEMG信号を記録および分析する。これらの状態には、休息、骨格筋運動(腹部および上肢)、りきむ動作、ならびに内因性および不随意の結腸収縮が含まれる。
【0069】
対象は、果物を含むヨーグルトの通常の朝食を摂取し、システム10を、少なくとも4時間後に測定値を収集するために使用した。対象はベッドに横たわっている休息時の15分間にモニタリングされ、続いて、20秒間隔で各4秒間の能動的な「プッシング」を5分間行った。このデータを
図15に示す。またこの休息時間後、対象は、473mlのチョコレートミルクを消費し、続いて12分後に、20秒間隔で3分間プッシングをした。同様の結果が得られた。この結果を
図16に示す。
【0070】
別の機会において、1日後、対象は、試験の少なくとも4時間前に同じ朝食を摂取し、296mlの冷たいフルーツジュースを消費した。対象を座らせた。この結果を
図17に示す。
【0071】
これらの試験で観察された主な成果は以下の通りである。弛緩は、筋電作用を阻害するが、内部プッシングは、この作用をプッシング事象の間だけ誘発するのではなく、すなわち、明らかに「結腸の覚醒」を誘発する。(実際の結腸活動の)偽陽性は、骨盤および主に直腸の随意運動、ならびにしゃっくりなどの不随意運動の場合に観察される。溜め息のような他の事象は、dZ/dT事象がいかなるEMG活動にも対応しないので、明確に区別される。大腿または腕からの運動は、EMG事象を有するが、dZ/dT対応事象を有さない。インピーダンス(またはdZ/dT)事象とEMGとの相関は、直ちに、または遅延効果(EMG活動事象後のインピーダンス変化)として見ることができた。また、我々は、見掛けの連続EMGノイズパターンの変化に対応するdZ/dTのスパイクを伴ういくつかの事象を観察した。排泄緊急の状況下では、周期的な感覚およびEMG事象(対応するZ事象を伴う)が記録され、時間が経過すると連続的な活動が増加し、したがって、フルネス感覚が増大する。
【0072】
EMG活動は、感覚なしで観察されるが、全ての感覚は、インピーダンス変化に関連する。EMG-dZ/dT相関も、感覚なしに観察される(非常に小さくて弱い結腸活動の場合であるように思われる)。信号間の相関は、分析を対象領域に集中させると良好である(明らかな事象がなく、雑音のみを伴う体動アーチファクトおよび周期を除く)。実際のところ、最良の相関は、EMG信号とdZ/dT信号との間にある。
【0073】
本発明を添付図面に示す実施形態を参照して説明したが、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、均等を採用し、本明細書においてこれと置換することができることに留意されたい。
【0074】
本発明の様々な実施形態について説明したが、特許によって保護されることが望まれる新規な請求項は、以下のものを含む。