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特許7176825喫煙材を加熱するよう構成された装置、及びヒータを形成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】喫煙材を加熱するよう構成された装置、及びヒータを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/46 20200101AFI20221115BHJP
   A24F 40/20 20200101ALI20221115BHJP
【FI】
A24F40/46
A24F40/20
【請求項の数】 21
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022108981
(22)【出願日】2022-07-06
(62)【分割の表示】P 2020185086の分割
【原出願日】2017-05-12
(65)【公開番号】P2022133404
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】62/336,275
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】トーセン, ミッチェル
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-517421(JP,A)
【文献】特表平8-511176(JP,A)
【文献】特開平7-184627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるために前記喫煙材を加熱するよう構成された装置であって、
喫煙材を受容するハウジングと、
使用時に前記ハウジング内に取外し可能に受容された喫煙材を加熱するために前記ハウジング内に配置された少なくとも一つのヒータと
を備え、
前記ヒータが、第1の端部と、第2の端部と、使用時に喫煙材を受容する中空の内部加熱チャンバとを有し、
前記ヒータの前記中空の内部加熱チャンバが、縮小した内径の領域を前記第2の端部に向かって備える、装置。
【請求項2】
前記縮小した内径の領域が、前記中空の内部加熱チャンバ内において前記第2の端部に向かって配置された中空管によって提供される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記中空管が、外向きに延びる頭部又はフランジを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記中空管がプラスチック材料を含む、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記プラスチック材料がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ヒータがプラスチックの層を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記層がポリイミド層である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記層上に少なくとも一つの導電路を備え、該導電路が前記ヒータの加熱素子を提供する、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記導電路上に設けられたさらなるプラスチックの層を備え、前記導電路が前記プラスチックの層と前記さらなるプラスチックの層との間にあるようにされている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ヒータが薄膜ヒータである、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記ヒータから当該装置の外部への熱損失を低減するために前記ヒータを囲む熱絶縁体を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるために前記喫煙材を加熱するよう構成された装置用のヒータを形成するための方法であって、
第1の端部と第2の端部とを有する第1の中空管を提供するステップであって、前記第1の中空管が中空の内部加熱チャンバを画定する、ステップと、
前記中空の内部加熱チャンバ内に、縮小した内径の領域を前記第2の端部に向けて設けるステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記中空の内部加熱チャンバ内に、縮小した内径の領域を前記第2の端部に向けて設ける前記ステップが、第2の中空管を前記第2の端部に向けて前記中空の内部加熱チャンバに挿入することを含んでいる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の中空管が、外向きに延びる頭部又はフランジを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の中空管がプラスチック材料を含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記プラスチック材料がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の中空管がプラスチックの層を含む、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記層がポリイミド層である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の中空管が前記層上に少なくとも一つの導電路を備える、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の中空管が前記導電路上にさらなるプラスチックの層を備え、前記導電路が前記プラスチックの層と前記さらなるプラスチックの層との間にある、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ヒータが薄膜ヒータである、請求項12~20のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、2015年6月26日付けで出願された米国仮特許出願第62/185227号に関連し、その内容全体を参照によって本書に援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、喫煙材を加熱するよう構成された装置と、喫煙材を加熱するよう構成された装置のためのヒータを形成する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
紙巻タバコ、葉巻タバコ等の物品、使用の間、タバコを燃焼してタバコ煙を発生させる。燃焼せずに化合物を放出する製品を創出することによって、タバコを燃焼させるこれらの物品に代わるものを提供する試みがなされている。そのような製品の例としては、タバコ加熱製品又はタバコ加熱装置としても知られているいわゆる非燃焼・加熱式(heat-not-burn)製品がある。これらは、材料を燃焼するのではなく加熱することで化合物を放出する。その材料は、例えば、タバコでもよいし、他の非タバコ製品でもよいし、ブレンドされた混合物等の組み合わせたものでもよく、それらは、ニコチンを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。同様に、いわゆる電子シガレット装置もあり、これは典型的には液体を気化し、この液体は、ニコチンを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるために前記喫煙材を加熱するよう構成された装置を提供し、この装置は、
喫煙材を受容するハウジングと、
使用時にハウジング内に取外し可能に受容された喫煙材を加熱するためにハウジング内に配置された少なくとも一つのヒータと
を備え、
ヒータは、第1の端部と、第2の端部と、使用時に喫煙材を受容する中空の中央部分とを有し、ヒータは、管になるように丸められたシートから形成され、このシートは、第1の端部及び第2の端部のうちの少なくとも一方を通る以外の部分でヒータに対して空気が出入りしないようにその長さに沿って封止されている。
【0005】
いくつかの例において、これは、装置の他の部分において空気がヒータの中空の中央部分に流入することを防止し、例えば、ヒータの中空の中央部分により形成された空気流路を通って流れる空気(使用時に喫煙材から揮発された成分を含む)の汚染を防止する。逆に、これは、ヒータの中空の中央部分を通って装置の他の部分に漏れ出す空気流を防止することをも助ける。
【0006】
例示的な一実施形態において、シートはプラスチックの層を含む。例示的な一実施形態において、層はポリイミド層である。さらに、例示的な一実施形態において、装置は層上に設けられた少なくとも一つの導電路を備え、該導電路がヒータの加熱素子を提供する。
【0007】
例示的な一実施形態において、装置は導電路上に設けられたさらなるプラスチックの層を備え、導電路がプラスチックの層とさらなるプラスチックの層との間にあるようにされている。特定の例において、ヒータを形成するために丸められる略平坦なシート材料は、ポリイミドの複数の層と、互いの上の導電路とを積層することによって作製された多層シートである。
【0008】
例示的な一実施形態において、ヒータは薄膜ヒータである。また、例示的な一実施形態において、装置は、ヒータから装置の外部への熱損失を低減するためにヒータを囲む熱絶縁体を備える。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるために前記喫煙材を加熱するよう構成された装置用のヒータを形成するための方法を提供し、この方法は、
第1の端部と第2の端部とを有する中空の管になるようにシートを丸めるステップと、
使用時に前記第1の端部及び前記第2の端部のうちの少なくとも一方を通る以外の部分でヒータに対して空気が出入りしないように管の長さに沿って管を封止するステップと
を含む。
【0010】
例示的な一実施形態において、シートはプラスチックの層を含む。また、例示的な一実施形態において、層はポリイミド層である。例示的な一実施形態において、本方法は、中空の管になるようにシートを丸めるステップの前に、前記層上に少なくとも一つの導電路を形成するステップを含む。さらに、例示的な一実施形態において、本方法は、導電路上にさらなるプラスチックの層を形成して、導電路がプラスチックの層とさらなるプラスチックの層との間にあるようにするステップを備える。
【0011】
例示的な一実施形態において、ヒータは薄膜ヒータである。
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】喫煙材を加熱するための装置と例を示す第1の斜視図である。
図2図1の装置を示す第2の斜視図である。
図3】喫煙材が挿入された状態の図1の装置を示す横断面図である。
図4】喫煙材が挿入されていない状態の図1の装置を示す横断面図である。
図5図4の符号が付けられた領域の詳細図である。
図6図4の符号が付けられた領域の詳細図である。
図7図4の符号が付けられた領域の詳細図である。
図8図1の装置の縦断面図である。
図9図4の符号が付けられた領域の詳細図である。
図10図4の符号10が付けられた領域の詳細図である。
【0014】
本書では、用語「喫煙材」は、加熱されると揮発成分を、典型的にはエアロゾルの形態で供する材料を含む。「喫煙材」は任意のタバコ含有材料を含み、例えば、タバコ自体、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコ、又はタバコ代替品のうちの一つ以上を含んでもよい。「喫煙材」はまた、他の非タバコ製品を含んでいてもよい。この非タバコ製品は、製品によってニコチンを含んでもよいし、含まなくてもよい。「喫煙材」は、例えば、固体、液体、ゲル、又は蝋等の形態をとることができる。「喫煙材」はまた、例えば、材料を組み合わせたもの、又はブレンドしたものであってもよい。
【0015】
典型的には、喫煙材を燃やさずに、又は燃焼させずに吸引することができるエアロゾルを形成するために喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させる装置が知られている。このような装置は、「非燃焼加熱式」装置、又は「タバコ加熱製品」、又は「タバコ加熱装置」、又はこれらと類似するものとしても説明される。同様に、いわゆるeシガレット装置(電子タバコ装置)もあり、これは、典型的には、液体の形態の喫煙材(ニコチンを含むものも含まないものあり得る)を気化する。喫煙材は、装置内に挿入され得るロッド、カートリッジ又はカセット等の形態をとる場合や、これらの一部として提供される場合もある。喫煙材を加熱し揮発させるためのヒータは装置の「永久」部品として提供されてもよく、或いは喫煙品の一部、又は使用後破棄され交換される消耗品として提供されてもよい。これに関連して「喫煙品」は、使用時に喫煙材を含み又は収容しており、使用時に加熱され、喫煙材及び任意選択的に他の成分を揮発させる装置、物品又は他の構成部品である。
【0016】
図1図4を参照すると、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させ、典型的には吸引可能なエアロゾルを形成するように配置構成された装置10の一例が示されている。図3は、喫煙材が挿入された状態の装置10を示し、図4は、喫煙材が挿入されていない状態の装置10を示している。装置10は、喫煙材を燃焼せずに加熱することによって化合物を放出する加熱装置10である。第1の端部11は、本書では、口側の端部(口側端部)又は近位端11とも呼び、第2の端部12は、本書では、遠位端12とも呼ぶ。装置10には、装置10全体を使用者が望むようにオン・オフすることを可能とするオン・オフボタン(図示せず)が設けられている。
【0017】
装置10は、装置10の様々な内部構成要素を配置し保護するためのハウジングを有する。図示の例では、装置10は、一つ以上の内部「シャーシ」部分と、一つ以上の外部スリーブ部分とから形成されている。ここに示す特定の例では、装置10は、単一の外部スリーブ又はハウジング14と、内部シャーシ16とを有する。特定の例では、内部シャーシ16は、二つのシャーシ半体から形成され、そして任意ではあるが他のシャーシ部分から形成されてもよい。装置10の組立て中において、装置10の様々な内部構成要素がシャーシ16内に配置され若しくは固定され、又はその両方が行われ、続いて内部構成要素及びシャーシ、又はシャーシ部分16がハウジング14内で摺動される。シャーシ又はシャーシ部分16は、装置10の内部への容易なアクセスを可能にするために、ハウジング14に取外し可能に取り付けられてもよく、或いは、例えば使用者が装置10の内部にアクセスできないようにするために、シャーシ16に「永久的に」固定されてもよい。ここに示される特定の例では、シャーシ16は、装置10の前壁を少なくとも部分的に第1の端部すなわち口側端部11に設け又は支持し、また、装置の後壁を少なくとも部分的に第2の端部すなわち遠位端12に設けている。一例では、シャーシ16は、例えば、射出成形によって形成されるガラス充填ナイロンを含むプラスチック材料で作られるが、他の材料や他の製造プロセスを使用することもできる。
【0018】
ハウジング14は、内部にヒータ20、制御回路21及び電源22を配置し又は固定している。この例では、ヒータ20、制御回路21及び電源22は、制御回路21が概ねヒータ20と電源22との間に配置された状態で、横方向に隣り合っているが(すなわち、一端から見て隣り合っているが)、他の場所としても可能である。制御回路21は、以下でさらに説明するように、喫煙材の加熱を制御するように構成され配置されたマイクロプロセッサ装置のようなコントローラを含むことができる。電源22は、例えば、再充電可能なバッテリー又は再充電できないバッテリーのようなバッテリーであってもよい。適切なバッテリーの例には、例えば、リチウムイオン電池、(ニッケル-カドミウム電池のような)ニッケル電池、アルカリ電池等が含まれる。バッテリー22は、必要時に電力を供給するために、また制御回路21の制御下において喫煙材を加熱するために(前述したように、喫煙材を燃焼させることなく喫煙材を揮発させるために)、ヒータ20に電気的に接続されている。電源22をヒータ20の側方に配置する利点は、装置20全体を過度に長くさせることなく、物理的に大きな電源22を使用できることである。理解されるように、一般に、物理的に大きな電源22は、より高い容量(すなわち、供給可能な総電気エネルギー、多くの場合はアンペア時等で測定されるもの)を有し、したがって、装置10のバッテリー寿命をより長くすることができる。
【0019】
一例では、ヒータ20は、概ね、中空の内部加熱チャンバ23を有する円筒形の中空管の形態をとり、加熱チャンバ内に喫煙材が使用時に加熱のために挿入される。ヒータ20は別の異なる構成とすることもできる。例えば、ヒータ20は、単一のヒータとして形成されてもよいし、ヒータ20の長手方向軸線に沿って整列された複数のヒータから形成されてもよい。(簡潔にするために、本書における「ヒータ」という表現は、文脈上別途必要な場合を除いて、複数のヒータを含むと解釈されるものとする。)ヒータ20は、環状であってもよいし、管状であってもよく、又はその周囲に少なくとも部分的に環状であっても、部分的に管状であってもよい。一例では、ヒータ20は薄膜型のヒータであってもよい。一つの特定の例では、ヒータ20は、ステンレス鋼製の支持管によって支持される。ヒータ20は、挿入時に喫煙材の実質的に全体がヒータ20の加熱素子内に配置され、喫煙材の実質的に全体が使用中に加熱されるように、寸法決めされる。ヒータ20は、喫煙材の選択されたゾーンが、例えば、必要に応じて順番に(徐々に)又は一緒に(同時に)個別に加熱されるように配置構成され得る。
【0020】
この例のヒータ20は、熱絶縁体24によってその長さの少なくとも一部に沿って囲まれている。熱絶縁体24は、ヒータ20から装置10の外部に伝わる熱を減少させるのに役立つ。これは、一般に熱損失を低減するので、ヒータ20の電力条件を低く抑えるのに役立つ。熱絶縁体24はまた、ヒータ20の動作中に装置10の外部を低温に維持するのに役立つ。一例では、熱絶縁体24は二重壁型のスリーブであり、これはスリーブの二つの壁の間に低圧領域を有するとよい。すなわち、熱絶縁体24は、例えば、「真空」管、すなわち熱伝導及び/又は対流による伝熱を最小限にするために少なくとも部分的に排気された管であるとよい。二重壁型のスリーブに加えて又はその代わりに、例えば適当な発泡型の材料を含む断熱材料を使用すること等、熱絶縁体24のための他の配置構成も可能である。
【0021】
シャーシ16の前部は、口側端部11に開口部30を有し、この開口部30を通して使用時、使用者により喫煙材が通されて装置10内に挿入され、また装置10から取り出される。口側端部11には蓋31が設けられている。蓋31は、使用期間中、開放されて、喫煙材を開口部30を通って装置10に挿入し、装置10から取り出すことを可能とし、一方、使用されていない期間においては、開口部30を閉じて、装置10の内部を清浄に保つことができると共に、装置10の内部に対する損傷を回避することができる。この例の蓋31はスライド式の蓋であり、上下に摺動して開口部30を開閉することができる。他の例では、蓋31は、ヒンジ式の蓋であってもよく、他の構成が設けられてもよい。この例の蓋31は、前側構成要素32に関連して設けられている。
【0022】
前側構成要素32は少なくとも一つの部品を有する。図示の特定の例では、前側構成要素32は、前側部品32a、中間部品32b及び後側部品32cの三つの部品を有する。例えば、中間部品32bは、例えば両面粘着テープを含む接着剤で、後側部品32cに固定されるとよい。
【0023】
装置10の前側の蓋31は、前側構成要素32に摺動可能に接続されるように構成され配置される。前側の蓋31は、凸部と凹部との組合せによって、前側構成要素32に摺動可能に取り付けられるとよい。図示された例の前側の蓋31は、後方に向いた凸部31′を有し、この凸部は、前側構成要素32の凹部又はチャネル32′内に受容される。前側の蓋31は、ねじ32″を用いて固定されるが、前側の蓋31をチャネル32′内で上下に摺動させることができる。
【0024】
ここで特に図3を参照すると、ロッド50が示されており、このロッド50は、(少なくとも)喫煙材51がヒータ20の加熱チャンバ23内に配置されて、ヒータ20が作動されると喫煙材51が加熱されるよう、開口部30を通して部分的に挿入される喫煙材51を有している。この例では、ロッド50は、その口側端部にマウスピースアセンブリを有し、マウスピースアセンブリは、エアロゾルを濾過するためのフィルタ及び/又はエアロゾルを冷却するための冷却要素52のうちの一方又は両方を含んでいる。フィルタ/冷却要素52は、スペーサ53によって喫煙材から離間されており、また、別のスペーサ54によってロッド50の口側端部から離間されている。
【0025】
ハウジング14の後壁18は、装置10の遠位端12に開口部35を有する。蓋36が遠位端12に設けられている。蓋36は、遠位端12にて開口部35へのアクセスを可能にするように開放され、遠位端12にて開口部35を閉じるために閉鎖されることができる。この例の遠位端12のドア36はヒンジ式の蓋である。他の例では、蓋36はスライド式の蓋であってもよいし、他の構成が設けられてもよい。遠位端12の蓋36がヒンジ式の蓋である場合、ヒンジは「リビングヒンジ」として設けられてもよい。より好ましくは、蓋36は別個の構成要素であり、蓋36のヒンジはバレルヒンジである。
【0026】
組み立てられた装置10において、ヒータ20は、円筒形の中空管の形態であり、この中空管の一端が口側端部11にて開口部30と流体連通するように且つ他端が遠位端にて開口部35と連通するように、シャーシ16内に配置される。
【0027】
使用時、使用者は、遠位端部12における蓋36を閉じて、遠位端部12の開口部35を閉鎖し、口側端部11における蓋30を開けて、口側端部11の開口部30を開放する。次いで、使用者は、喫煙材51を含むロッド50を口側端部11の開口部30を通してヒータ20の加熱チャンバ23内に挿入し、喫煙材51を加熱して所望の吸引用エアロゾルを生成するように装置10を作動させ、その後、使用済みの喫煙材51を有するロッド50を口側端部11の開口部30を通して装置10から取り出す。使用者は、装置10が使用された後に、遠位端12の蓋36を開き、遠位端12の開口部35を開放することができる。遠位端12の開口35は、使用者が装置10の内部、特に遠位端12の開口部35の領域にアクセスすることを可能にする。これにより、使用者は、必要時に、所望のように、遠位端12の開口部35の領域における装置10の内部を清掃することができる。遠位端12におけるこのアクセスによって、特に、使用者は遠位端12でヒータ20及び加熱チャンバ23内を清掃することが可能となる。実際には、ヒータ20が口側端部11の開口部30と遠位端12の開口部35との間に配置されており、中空のヒータ20は、口側端部の開口部30と遠位端の開口部35との間で装置10全体を貫通する直線的な貫通穴を効果的に形成するので、使用者は、中空の加熱チャンバ23の概ね全体も容易に清掃することができる。このために、使用者は、選択的に開口部30,35を通して加熱チャンバ23にアクセスすることができる。この目的のために、使用者は、例えば昔からのパイプクリーナ又はブラシ等を含む一つ以上の様々な清掃具を使用することができる。
【0028】
一例では、加熱チャンバ23は、遠位端12に向かって縮小した内径の領域を有する。これは、喫煙材が遠位端12で第2の開口部35を通ってまっすぐに通過するのを防止するために、口側端部11で第1の開口部30を通る喫煙材のエンドストッパを提供する。図示の例では、この縮小した内径の領域は、遠位端12に向かって加熱チャンバ23の端部内に配置された中空管40によって提供される。この例の中空管40は、外向きに延びる頭部すなわちフランジ41を有する。中空管40は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含むプラスチック材料で形成することができる。中空管40は、例えば、接着剤又はツイストロック機構によって、適所に固定されてもよい。
【0029】
装置10の製造中、中空管40は、頭部又はフランジ41が中空管40を所定の位置に配置するためにシャーシ16に対してストッパを提供しながら、遠位端12の開口部35に外側から挿入される。ヒータ20はシャーシ16内に配置され、中空管40はヒータ20の内部チャンバ23の遠位端に挿入される。したがって、この場合、中空管40は、ヒータ20の内部チャンバ23内に挿入された喫煙材のストッパとして機能する加熱チャンバ23内の縮小された内径の領域を提供し、この領域はまた、遠位端12にて装置10内でヒータ20を支持して位置決めする。装置10内のヒータ20の支持及び配置をさらに説明すると、管状のマウスピース構成要素33が口側端部11に設けられ、ヒータ20の前端部を支持し位置決めする。
【0030】
装置10の重要な要件は、ヒータ20の内部チャンバ23を通る空気流が装置10の残りの部分から隔離されるか、又は少なくとも実質的に隔離されることであることが分かった。これは、制御回路21及び/又は電源22等を通過した空気によってヒータ20の内部チャンバ23を通る空気流が汚染されることを防止し又は最小限に抑えるためである。同様に、これは、制御回路21及び/又は電源22等を通る又は制御回路21及び/又は電源22等に沿って流れる、ヒータ20の内部チャンバ23を通る空気流を防止又は最小限に抑えるためである。
【0031】
図3及び図4を参照すると、例えば上述したような装置10を含む、喫煙材を加熱するための装置におけるヒータ20は、シート、すなわち概ね平坦状のシート材料から形成され、これは丸められ、管の長さに沿って封止される。丸められたこのヒータ20は、第1の端部、第2の端部及び中空の中央部分を有する管状の形状を有することができる。中空の中央部分は、使用時に喫煙材を受容することができる。喫煙材は、第1の端部及び第2の端部の一方を通って中空の中央部分に挿入される。管は、その全長に沿って封止されているので、第1の端部と第2の端部のうちの一つ以上を通る部分以外に、空気がヒータに出入りすることが防止される。管は、例えば接着剤、特に感圧接着剤を用いて封止されてもよい。具体例におけるヒータ20は薄膜ヒータである。
【0032】
管状のヒータ20は、少なくとも一つの導電路が形成された基板から作製され得る。基板は、シートの形態であってもよく、例えば、プラスチックの層を含むものでもよい。特定の例では、この層はポリイミド層である。導電路は、層上に印刷されるか、さもなければ成膜される。管状のヒータ20は、導電路に又は導電路を覆うように形成されたさらなるプラスチック層を有してもよい。この例では、導電路は二つプラスチック層間にある。
【0033】
さらに図3及び図4を参照すると、管状のヒータ20は、装置10の加熱区画室と呼ぶことができる第1の区画室38内に配置されている。装置10はまた、制御回路21及び電源22の少なくとも1つを含む、電子機器区画室60と呼ぶことができる第2の区画室60を有することができる。図3及び図4に示す例では、電子機器区画室60は、制御回路21及び電源22の両方を含む。第1の加熱区画室38は第2の電子機器区画室60から離隔されて、これらの二つの区画室38,60は、両区画室38,60間を空気又は蒸気が通るのを最少化し又は防止するために、互いから実質的に気密に封止されるようになっている。区画室38,60の気密封止又は離隔は、無視できる量の空気のみが区画室38,60間を流れるようにすることができる。特定の例では、区画室38,60の隔離は、区画室38,60間を通過する空気又は蒸気の量が加熱チャンバ23を通る総空気流量の約1%未満であり、理想的には全く無いようなものとされる。(区画室38,60間に通路62があり、そこをヒータ端部64が通ることが分かるであろう。ヒータ端部64は、ヒータ20を電子機器区画室60内の制御回路21及び電源22に接続する。これについては後で詳細に説明する。)
【0034】
さらに図3及び図4を参照すると、この例の装置10は、第1の加熱区画室38と第2の電子機器区画室60との間に仕切り壁66を有する。仕切り壁66は、別個の構成要素であってもよく、シャーシ又はシャーシ部分16と一体的に形成されてもよい。図示の例では、仕切り壁66は、装置10の前部と装置10の後壁18との間に配置されている。仕切り壁66は、第1の加熱区画室38と第2の電子機器区画室60のうちの一方又は両方を部分的に形成することができる。仕切り壁66は、ヒータ20からの間接的な加熱を受ける可能性があり、その熱に耐える必要があるので、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)等の熱可塑性樹脂で作られるとよい。仕切り壁66は、シャーシ16の外側の電子機器からの空気経路を閉じるために、例えば熱可塑性ポリウレタン(TPU)等のシーリング材料でオーバモールドされてもよい。
【0035】
図示の例の仕切り壁66の前縁部は、装置10の構成及び組立てを容易にするために、「さね継ぎ」構成でシャーシ16の凹部67内に収容されている。図示の例では仕切り壁66の後縁部はシール68に受容されており、ここでもこの例ではさね継ぎ構成になっている。仕切り壁66を受けるシール68は弾性部材である。シール68は、例えば、シリコーン又はゴムのような一つ以上のポリマーで作製されてもよく、例えば射出成形され得るグロメット又はキャップの形態であってもよい。図示されていない他の例では、仕切り壁66の前縁部は、後縁部のためのシール68と同様のシールに受容されてもよい。
【0036】
ここで図5図7を参照すると、図4に示される装置10の特定の領域の詳細図が示されている。図5図7の各々は、装置10内の少なくとも一つのシールを示し、加熱区画室38と電子機器区画室60との間を実質的に気密に封止することを助ける。特定の例は多数のシールを示し、これらのシールの全てが実施形態に存在するわけではないことは理解されよう。すなわち、いくつかの実施形態は、本書に記載されているシールの一つ、又は本書に記載されている複数のシールのうちの二つ以上、又は本書に記載されたシールの全てを有することができる。
【0037】
図5は、装置10のハウジング14と前側構成要素32の前側部品32aとの間のシール72を示す。シール72は、前側構成要素32の前側部品32′とハウジング14の一方又は両方に設けられた溝又は凹部80内に着座している。シール72は、ハウジング14と前側構成要素32との間の緊密な結合を確実にするために圧縮され得る。シール72は弾性部材である。シール72は、例えば、シリコーン又はゴムを含む、一つ以上のポリマーで作製することができる。シール72は、例えば熱可塑性ポリウレタンのようなシール材料でオーバーモールドされてもよい。
【0038】
図6は、装置10のハウジング14と後壁18との間のシール74を示している。シール74は、後壁18とハウジング14の一方又は両方に設けられた溝又は凹部82内に着座している。シール74は、ハウジング14と後壁18との間の緊密な結合を確実にするために圧縮することができる。シール74は弾性部材である。シール74は、例えば、シリコーン又はゴムを含む、一つ以上のポリマーで作製することができる。シール74は、例えば熱可塑性ポリウレタン等のシール材料でオーバーモールドされてもよい。
【0039】
図7は、仕切り壁66の第2の端部を受けるシール68を示す。図7はまた、仕切り壁66の第2の端部を受けるシール68に対向して配置されたシール70を示している。図示の二つのシール68,70は、第1の区画室38と第2の区画室60との間に配置されている。シール68,70は、シール68,70間の封止が実質的に気密になるように互いに押し付けられるように配置されている。この例におけるシール70は弾性部材である。シール70は、例えば、シリコーン又はゴム等の一つ以上のポリマーで作製することができる。
【0040】
上述したように、図示の例では、区画室38,60間に通路62があり、そこをヒータ20の端部64が通ってヒータ20を少なくとも電源22に接続できるようになっている。図示の例では、ヒータ端部64は、ヒータ20を電子機器区画室60内の制御回路21及び電源22に接続する。
【0041】
図7は、区画室38,60間の通路62の周りの領域の拡大図である。ヒータ端部64は通路62を占有している。ヒータ端部64は、仕切り壁66の第2の端部を受容するシール68と、仕切り壁66の第2の端部を受容するシール68に対向して配置されるシール70との間に配置される。シール68,70は、ヒータ端部64に押し付けられて圧縮され、区画室38,60間の実質的な気密封止を維持するようになっている。
【0042】
図8は、装置10の縦断面図を示す。図9及び図10は、図8に示す装置10の二つの領域の詳細図である。
【0043】
図8図10を参照すると、装置10のシャーシ16間に配置された仕切り壁66が示されている。第1の縁部に沿った仕切り壁66は、装置10のシャーシ16内の凹部16′内にさね継ぎ構成で受け入れられている。仕切り壁66の第1の縁部は、例えば接着剤によって、又は単純な圧入又は摩擦嵌めによって、シャーシ16の凹部16′内に固定されてもよい。
【0044】
図示の仕切り壁66は、仕切り壁66の第2の縁部に沿って溝84を有する。シール76は、仕切り壁66の溝84内に配置されている。シール76は、装置10のシャーシ16に当接する。シール76及び溝84は、実質的に気密な封止状態が仕切り壁66の第2の縁部に沿って形成されるように配置構成されている。シール76は弾性部材である。シール76は、例えば、シリコーン又はゴム等の一つ以上のポリマーで作られるとよい。シール76は、例えば溝84内にて熱可塑性ポリウレタン等のシール材料でオーバーモールドされてもよい。
【0045】
ここで特に図9を参照すると、図8に示される装置10の領域の詳細図が示されている。空気通路と電子機器との間に外部シールを提供するために、装置のハウジングと側板との間にさらなるシール78が設けられている。さらなるシール78は、溝86内に配置され、ハウジング14とシャーシ16との間で圧縮される、例えば熱可塑性ポリウレタンのようなシール材料でオーバーモールドされる。
【0046】
本書で説明した様々な実施形態は、特許請求される特徴の理解と教示を助けるためだけに提示されている。これらの実施形態は単に実施形態のうちの代表的な例として提供されており、包括的及び/又は排他的なものではない。本書で説明した利点、実施形態、例、機能、特徴、構造、及び/又は他の態様は、特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するもの、或いは特許請求の範囲の均等物を限定するものと考えるべきではなく、特許請求される発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態を利用し、変形を施すことができることを理解されたい。本発明の様々な実施形態は、本書で特に説明されたもの以外の開示された要素、構成部品、特徴、部品、ステップ、手段等の適切な組合せを好適に備え、それらから構成され、或いは実質的にそれらから構成されてもよい。さらに、本開示は、特許請求の範囲に現在は記載されていないが将来記載される可能性のある他の発明を含む可能性がある。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10