(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】レーザ反射装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20221115BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20221115BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20221115BHJP
G02B 7/198 20210101ALI20221115BHJP
【FI】
G02B26/10 101
G02B26/08 E
G02B5/08 A
G02B7/198
(21)【出願番号】P 2019116214
(22)【出願日】2019-06-24
【審査請求日】2022-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大槻 治明
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-524294(JP,A)
【文献】特開2005-262357(JP,A)
【文献】特開平11-237333(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0144580(US,A1)
【文献】独国実用新案第202005009374(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10
G02B 26/08
G02B 5/08
G02B 7/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器からの入射光を反射させる反射面を有する凹面ミラーと、前記入射光と直交する方向に前記凹面ミラーを駆動するアクチュエータを備えるレーザ反射装置において、
前記アクチュエータの駆動に伴い前記凹面ミラーで反射された反射光が共通の偏向点を通過し、前記偏向点から前記反射光が照射される位置までの距離を前記凹面ミラー上の入射光の反射点から前記偏向点までの距離より小さくしたことを特徴とするレーザ反射装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ反射装置において、
前側焦点が前記偏向点と一致し中心軸が前記アクチュエータの駆動方向と平行になるfθレンズが設けられていることを特徴とするレーザ反射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ発振器から出射されたレーザ光を反射するためのレーザ反射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザ反射装置には、例えば特許文献1の
図1に示すように、圧電素子などのアクチュエータにより曲面形状のミラーを直線駆動させ、アクチュエータの直線変位に基づいて反射光の反射角度を制御するものがある。
【0003】
しかしながら、上記のようなレーザ反射装置を用いた場合、ミラーから反射光の照射位置までの距離が長いほど、アクチュエータの変位量に対する反射光の照射位置における走査距離が大きくなり、照射位置におけるレーザ光の走査分解能が低下する欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、レーザ発振器から出射されたレーザ光を反射するためのレーザ反射装置において、レーザ光の走査分解能を向上させることができるレーザ反射装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち、代表的なレーザ反射装置は、レーザ発振器からの入射光を反射させる反射面を有する凹面ミラーと、前記入射光と直交する方向に前記凹面ミラーを駆動するアクチュエータを備えるレーザ反射装置において、前記アクチュエータの駆動に伴い前記凹面ミラーで反射された反射光が共通の偏向点を通過し、前記偏向点から前記反射光が照射される位置までの距離を前記凹面ミラー上の入射光の反射点から前記偏向点までの距離より小さくしたことを特徴とする。
【0007】
なお、本願において開示される発明の代表的な特徴は以上の通りであるが、ここで説明していない特徴については、後述する発明を実施するための形態において説明しており、また特許請求の範囲にも示した通りである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レーザ発振器から出射されたレーザ光を反射するためのレーザ反射装置において、レーザ光の走査分解能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例に係るレーザ反射装置の動作を説明するための図である。
【
図2】本発明の一実施例に係るレーザ反射装置の構造を説明するための図である。
【
図3】本発明の一実施例に係るレーザ反射装置の反射面を説明するための図である。
【
図4】本発明の一実施例に係るレーザ反射装置のレーザ光の反射を説明するための図である。
【
図5】本発明の他の実施例に係るレーザ反射装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を実施例に沿って説明する。なお、以下の説明において、同等な各部には同一の符号を付して説明を省略する。
【0011】
図1は本発明の一実施例に係るレーザ反射装置の動作を説明するための図である。1はレーザ発振器、2はレーザ反射装置、3はレーザ反射装置に設けられた凹面ミラーである。レーザ発振器1から出射されたレーザ光B1は凹面ミラー3へ入射され、レーザ反射装置2を駆動すると、凹面ミラー3で反射されたレーザ光B2が照射の対象となる基板4上で走査される。なお、レーザ反射装置2で反射されたレーザ光B2は全て偏向点Pを通過する。Lは凹面ミラー3の反射点から偏向点Pまでの距離、LAは偏向点Pから基板4までの距離である。
【0012】
5は基板4を載置するテーブルであり、図においてレーザ反射装置2に対して相対移動できるようになっている。6はレーザ発振器1、レーザ反射装置2、テーブル5の動作を制御するための制御部であり、例えばプログラム制御の処理装置を主体にしたものによって実現される。
【0013】
図2(a)および(b)は、
図1のレーザ反射装置2の構造を説明するための図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図1と同じものには同じ番号を付けてあり、実施例を説明するために必要な部分のみを示してある。
【0014】
3は凹面ミラーで、レーザ発振器1から入射されたレーザ光B1を反射して基板4へレーザ光B2を出射する。凹面ミラー12は、レーザ光B1が凹面ミラー12で反射して偏向する方向にのみ曲率を有している。13は支持部材(A)で、紙面右側に凹面ミラー3が固定され、紙面左側に積層圧電素子などのアクチュエータ14が取付けられている。なお、アクチュエータ14は圧電素子に限定されること無く、ボイスコイル型電磁アクチュエータや超磁歪材料を用いた磁歪アクチュエータなども使用できる。15は支持部材(B)で、紙面右側にアクチュエータ14が取付けられている。16はフレーム17に設けられているガイドで支持部材(A)13および支持部材(B)15が紙面左右方向に摺動自在に取付けられている。ガイド16はすべり案内のような支持部材(A)13および支持部材(B)15が摺動しても摩擦の少ないもので構成されていて、支持部材(A)13および支持部材(B)15の紙面上下方向の変位を拘束し、紙面左右方向の変位をスムーズにする。なお、ガイド16はすべり案内に限定されること無く、転がり案内、静圧流体案内、磁気浮上案内などを用いたものであっても良い。18は板バネで、フレーム17に固定されていて支持部材(A)13を紙面左方向へ押し付けている。19はボルトで、弛み止めのロックナット20が取付けられ、フレーム17に設けられたネジ穴(図示を省略)を介して支持部材(B)15を紙面右方向へ押圧する。したがって、板バネ18とボルト19によってアクチュエータ14に圧縮力を加える構造となっている。なお、アクチュエータ14に圧縮力を加える押圧機構は、板バネとボルトによるものに限定されること無く、永久磁石や電磁石等の吸引・反発力、ガス圧力などを用いたものであっても良い。
【0015】
図3は、凹面ミラー3の反射面を説明するための図である。図では凹面ミラー3の反射面の断面をx軸およびy軸が交差した直交座標系で示し、Oはx軸とy軸が交差する原点であり、凹面ミラー3の反射面の断面形状が数式1の関数で定義される。
【0016】
【0017】
このミラーがx方向に-δ変位したとき、断面形状は数式2となる。
【0018】
【0019】
ここで、y軸に沿って上方から入射するレーザ光B1が、ミラー上の反射点R(rx、ry)で反射して偏向点P(px,py)に進む場合を考える。この場合反射点Rがy軸上に偏向点Pがx軸上に位置し、数式3の関係が成り立つ。なお、rxは反射点Rのx軸方向の座標、ryは反射点Rのy軸方向の座標、pxは偏向点Pのx軸方向の座標、pyは偏向点Pのy軸方向の座標、Lは原点Oから偏向点Pまでの距離である。
【0020】
【0021】
次に、ΔPQRがRP=RQとなる二等辺三角形になるようにレーザ光B1上すなわちy軸上に点Qを定めると、数式4の関係が成り立つ。qxは点Qのx軸方向の座標、qyは点Qのy軸方向の座標である。
【0022】
【0023】
ここで、反射の法則を考慮して、線分PQの中点をMとすると、
∠QRM=∠PRM
となり、すなわち、凹面fは前記二等辺三角形ΔPQRの反射点Rと底辺PQの中点Mとを結ぶ線分RMが反射点Rでの法線Nと重なるような断面形状となり、PQの中点Mの座標は数式5のようになる。なお、mxは中点Mのx軸方向の座標、myは中点Mのy軸方向の座標である。
【0024】
【0025】
また、線分RMの傾きsは、数式6となる。
【0026】
【0027】
一方、反射点Rにおける凹面fの法線Nの方程式は数式7となる。
【0028】
【0029】
線分RMの傾きsが凹面fの法線Nの傾きと等しいとすると、次式が成り立つ。
【0030】
【0031】
ここで、y=f(δ)とすれば、数式9の微分方程式を得る。
【0032】
【0033】
そして、fの逆関数をδ=g(y)として上式を積分すれば、数式10のようになる。
【0034】
【0035】
ただしCは積分定数である。y=0でδ=0としてCを定めると数式11となる。
【0036】
【0037】
これを数式10に代入して、数式12となる。
【0038】
【0039】
従属変数をxとして、凹面ミラー3の形状が数式13のように定まる。
【0040】
【0041】
y=f(x)という形式で考えれば、関数fは関数gの逆関数として決定される。曲面ミラーがこの形状を持てば、ミラーをx軸方向に直線変位させることで、y軸の+側から入射するレーザ光を、偏向点Pを維持しながら所望の角度に反射することができる。そして、変位量δと、対応する偏向角αの関係は、次式から求まる。
【0042】
【0043】
そして、f(δ)の値を求めるには、数式15を解いてy=f(δ)の値を求める。
【0044】
【0045】
図4は、本実施例に係るレーザ反射装置2のレーザ光の反射を説明するための図である。凹面ミラー3の位置をx軸方向に5通りに変位させた場合に反射されるレーザ光B2を示している。図中上方から入射するレーザ光B1は、凹面ミラー3の反射面上の反射点R(r
x,r
y)に入射する。凹面ミラー3の横方向の移動量に応じて、反射点Rのy軸方向の位置が変化し、これに伴って凹面ミラー3でレーザ光の反射方向が変化することによって、レーザ光B2の反射角度が変化する。なお、偏向点Pの位置は凹面を定める関数中の定数Lによって定まり、変位量δの影響を受けない。すなわち、凹面ミラー3の変位量あるいは反射光の反射角度によらず、反射光は共通の偏向点Pを通る。
このとき、レーザ光B2の基板4上での走査距離Sは、凹面ミラー3の反射点Rから偏向点Pまでの距離Lと偏向点Pから基板4までの距離LAの比に比例する。したがって、凹面ミラー3の移動量が同じでも、偏向点Pから基板4上にレーザ光B2が照射される位置までの距離LAを凹面ミラー3の反射点Rから偏向点Pまでの距離Lより小さくなる位置(すなわち、LA<Lとなる位置)に偏向点Pの位置を設定することにより、レーザ光B2の基板4上での走査距離Sを小さくできる。そのため、凹面ミラー3の移動量(すなわち、アクチュエータの変位量)に対して走査距離Sを小さくして走査分解能を向上させることができる。
【0046】
図5は他の実施例に係るレーザ反射装置2の動作を説明するための図である。この実施例においてはレーザ反射装置2の後方に、fθレンズ7を設けてもよい。この場合、fθレンズ7をテレセンレンズとし、凹面ミラー3の偏向点Pがfθレンズ7の前側焦点Fに一致し、かつレーザ光B1と直交する方向に反射されるレーザ光B2がfθレンズの中心軸を通る位置にfθレンズ7を設けると、レーザ光B2をレーザ光B3のような平行光として基板4に入射できる。そのため、基板表面に対する穴角度を常に一定にでき、穴の形状を均一にできる。
【0047】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は当該実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもなく、様々な変形例が含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1:レーザ発振器
2:レーザ反射装置
3:凹面ミラー
4:基板
5:テーブル
6:制御部
7:fθレンズ
13:支持部材(A)
14:アクチュエータ
15:支持部材(B)
16:ガイド
17:フレーム
18:板バネ
19:ボルト
20:ロックナット