(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】荷役車用通知システムおよび当該通知システムを備えた荷役車
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20221115BHJP
B66F 17/00 20060101ALI20221115BHJP
G10K 11/178 20060101ALI20221115BHJP
H04B 1/10 20060101ALI20221115BHJP
H04B 1/3827 20150101ALI20221115BHJP
A42B 3/30 20060101ALN20221115BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
B66F17/00 Z
G10K11/178 100
H04B1/10 L
H04B1/3827 130
A42B3/30
(21)【出願番号】P 2020200406
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 絢介
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-173018(JP,A)
【文献】特開平10-203800(JP,A)
【文献】特開平04-062599(JP,A)
【文献】特開平02-253298(JP,A)
【文献】特開2010-056873(JP,A)
【文献】特開2014-039315(JP,A)
【文献】国際公開第2013/118636(WO,A1)
【文献】特開2017-203237(JP,A)
【文献】特開2004-032339(JP,A)
【文献】特開2014-027459(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0392810(US,A1)
【文献】特開2005-096566(JP,A)
【文献】特開2014-201904(JP,A)
【文献】特開2009-269530(JP,A)
【文献】特開2017-044852(JP,A)
【文献】特開2000-029470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04;
17/00
G10K 11/178
H04B 1/10;
1/3827
A42B 3/30
B66C 13/00-15/06
E02F 9/16
B60R 11/02
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役装置を備えた荷役車
用通知システムであって、
運転者の頭部付近における前記荷役装置の動作音を含む音を収音する第1マイクと、
前記動作音の音声信号が含まれる音声信号が入力されると、前記入力された音声信号から前記動作音の音声信号を抽出する第1学習済みニューラルネットワークと、
前記第1学習済みニューラルネットワークが抽出した前記動作音の音声信号に基づいて前記動作音の逆位相音の音声信号を生成する逆位相音生成部と、
荷役に係る情報を音声信号として出力する荷役情報部と、
前記動作音の逆位相音の音声信号と、前記荷役に係る情報の音声信号とを合成する音合成部と、
前記音合成部によって合成された音を、音または振動によって前記運転者に向けて発するスピーカと、を備え、
前記第1マイクは、複数のマイクを有し、
前記荷役車用通知システムは、
前記運転者の頭部を撮像し前記運転者の頭部画像を生成するカメラと、
前記頭部画像に基づいて前記運転者の頭部の位置および向きを認識する位置認識部と、
前記運転者の頭部の位置および向きと、前記複数のマイクの音を解析し前記複数のマイク間に生じる位相、振幅の差とに基づいて、前記運転者の耳付近の音を抽出する頭部音抽出部と、をさらに備える
ことを特徴とする荷役車用通知システム。
【請求項2】
荷役装置を備えた荷役車
用通知システムであって、
運転者の頭部付近における前記荷役装置の動作音を含む音を収音する第1マイクと、
前記動作音の音声信号が含まれる音声信号が入力されると、前記入力された音声信号から前記動作音の音声信号を抽出する第1学習済みニューラルネットワークと、
前記第1学習済みニューラルネットワークが抽出した前記動作音の音声信号に基づいて前記動作音の逆位相音の音声信号を生成する逆位相音生成部と、
荷役に係る情報を音声信号として出力する荷役情報部と、
前記動作音の逆位相音を前記運転者に向けて発する減衰スピーカと、
音または振動によって前記荷役に係る情報を前記運転者に通知する通知スピーカと、を備え、
前記第1マイクは、複数のマイクを有し、
前記荷役車用通知システムは、
前記運転者の頭部を撮像し前記運転者の頭部画像を生成するカメラと、
前記頭部画像に基づいて前記運転者の頭部の位置および向きを認識する位置認識部と、
前記運転者の頭部の位置および向きと、前記複数のマイクの音を解析し前記複数のマイク間に生じる位相、振幅の差とに基づいて、前記運転者の耳付近の音を抽出する頭部音抽出部と、をさらに備える
ことを特徴とする荷役車用通知システム。
【請求項3】
前記第1マイクは、超指向性を有するとともに前記荷役車に設けられ、前記運転者の耳付近の音を収音する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の荷役車用通知システム。
【請求項4】
前記第1マイク、前記減衰スピーカおよび前記通知スピーカのいずれかまたは全ては、前記運転者が装着す
るヘルメットに設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の荷役車用通知システム。
【請求項5】
前記通知スピーカは、骨伝導によって前記運転者に情報を伝達する
ことを特徴とする請求項2または4に記載の荷役車用通知システム。
【請求項6】
前記第1学習済みニューラルネットワークは、荷役対象の荷の重量に応じて変化する前記動作音に対応して前記動作音を抽出するよう学習させられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の荷役車用通知システム。
【請求項7】
前記荷役装置は、マストと、前記マストに沿って昇降させられるリフトブラケットと、前記リフトブラケットに連結されたフォークと、を有し、
前記動作音には、前記リフトブラケットの昇降に係る音、前記フォークが荷に干渉する音、前記荷役装置の動力源の音のいずれかまたは全てが含まれる
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の荷役車用通知システム。
【請求項8】
前記運転者の声を収音する第2マイクと、
前記運転者の声が含まれる音が入力されると、前記運転者の声を抽出する第2学習済みニューラルネットワークと、をさらに備え、
前記第1学習済みニューラルネットワークは、さらに、前記第2マイクが収音した音から前記動作音を除去し、
前記第2学習済みニューラルネットワークは、前記第1学習済みニューラルネットワークによって前記動作音が除去された音から前記運転者の声を抽出する
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の荷役車用通知システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の通知システムを備える
ことを特徴とする荷役車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
荷役車用通知システムおよび当該通知システムを備えた荷役車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォークリフトといった荷役作業を行う荷役車において、車両情報や荷役装置の状態などを運転者に通知する荷役車がある。例えば、特許文献1に開示の荷役車は、所定の操作が適切に行われたか否かを判定するとともに、所定の操作が適切に行われなかった場合には、その旨を運転者に通知する。この通知の方法として、荷役車に設けられた表示装置に出力したり、音声を出力したりする方法がある。音声による通知は、荷役車の動作を確認しながら荷役作業を行う運転者にとって好ましい。また、運転者は、荷役作業内容について、無線通話により管理オペレータに連絡をとることもある。
【0003】
ところで、荷役車からの通知音は、荷役車自体の動作音や現場の騒音によって減衰し、運転者に適切に伝わらないことがある。そこで、環境に関わらず、通知音を運転者に適切に伝えるために、例えば、特許文献2のように、ヘルメットに連結された骨伝導装置によって通知する方法がある。しかしながら、骨伝導の音量は、空気伝導式の音量と比較すると小さく、耳栓や指により耳をふさがないと聞こえないことがある。しかしながら、運転者は、現場の安全状況を音によって確認することもあるため、荷役作業中に耳をふさぐことは安全性の観点から好ましくないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6613343号公報
【文献】特開2004-32339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、運転者の耳をふさぐことなく通知音を運転者に適切に伝達することができる荷役車用通知システムおよび当該通知システムを備えた荷役車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る荷役装置を備えた荷役車用の通知システムは、
運転者の頭部付近における荷役装置の動作音を含む音を収音する第1マイクと、
動作音の音声信号が含まれる音声信号が入力されると、入力された音声信号から動作音の音声信号を抽出する第1学習済みニューラルネットワークと、
第1学習済みニューラルネットワークが抽出した動作音の音声信号に基づいて動作音の逆位相音の音声信号を生成する逆位相音生成部と、
荷役に係る情報を音声信号として出力する荷役情報部と、
動作音の逆位相音の音声信号と、荷役に係る情報の音声信号とを合成する音合成部と、
音合成部によって合成された音を、音または振動によって運転者に向けて発するスピーカと、を備える、ことを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る荷役装置を備えた荷役車用の別の通知システムは、
運転者の頭部付近における荷役装置の動作音を含む音を収音する第1マイクと、
動作音の音声信号が含まれる音声信号が入力されると、入力された音声信号から動作音の音声信号を抽出する第1学習済みニューラルネットワークと、
第1学習済みニューラルネットワークが抽出した動作音の音声信号に基づいて動作音の逆位相音の音声信号を生成する逆位相音生成部と、
荷役に係る情報を音声信号として出力する荷役情報部と、
動作音の逆位相音を運転者に向けて発する減衰スピーカと、
音または振動によって荷役に係る情報を運転者に通知する通知スピーカと、
を備える、ことを特徴とする。
【0008】
上記荷役車用通知システムは、好ましくは、
第1マイクが、超指向性を有するとともに荷役車に設けられ、運転者の耳付近の音を収音する。
【0009】
上記荷役車用通知システムにおいて、好ましくは、
第1マイクが、複数のマイクを有し、
前記荷役車用通知システムは、
運転者の頭部を撮像し運転者の頭部画像を生成するカメラと、
頭部画像に基づいて運転者の頭部の位置および向きを認識する位置認識部と、
運転者の頭部の位置および向きと、前記複数のマイクの音を解析し前記複数のマイク間に生じる位相、振幅の差とに基づいて、運転者の耳付近の音を抽出する頭部音抽出部と、をさらに備える。
【0010】
上記荷役車用通知システムは、好ましくは、
第1マイク、減衰スピーカおよび通知スピーカのいずれかまたは全てが、運転者が装着するヘルメットに連結されるかまたはヘルメットに設けられている。
【0011】
上記荷役車用通知システムは、好ましくは、
通知スピーカが、骨伝導によって運転者に情報を伝達する。
【0012】
上記荷役車用通知システムは、好ましくは、
第1学習済みニューラルネットワークが、荷役対象の荷の重量に応じて変化する動作音に対応して動作音を抽出するよう学習させられている。
【0013】
上記荷役車用通知システムは、好ましくは、
荷役装置が、マストと、マストに沿って昇降させられるリフトブラケットと、リフトブラケットに連結されたフォークと、を有し、
動作音には、リフトブラケットの昇降に係る音、フォークが荷に干渉する音、荷役装置の動力源の音のいずれかまたは全てが含まれる。
【0014】
上記荷役車用通知システムは、好ましくは、
運転者の声を収音する第2マイクと、
運転者の声が含まれる音が入力されると、運転者の声を抽出する第2学習済みニューラルネットワークと、をさらに備え、
第1学習済みニューラルネットワークが、さらに、第2マイクが収音した音から動作音を除去し、
第2学習済みニューラルネットワークが、第1学習済みニューラルネットワークによって動作音が除去された音から運転者の声を抽出する。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係る荷役車は、
上記通知システムを備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の荷役車用通知システムおよび当該通知システムを備えた荷役車は、運転者の耳をふさぐことなく通知音を運転者に適切に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る荷役車用通知システムを備えた荷役車を示す側面図である。
【
図2】
図1に示された通知システムの構成の一部を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示された通知システムの機能ブロック図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る荷役車用通知システムを備えた荷役車を示す側面図である。
【
図5】
図4に示された通知システムの一部拡大図である。
【
図6】
図4に示された通知システムの機能ブロック図である。
【
図7】Aは
図4に示されたヘルメットの構成を示す正面図であり、BおよびCは、
図4に示されたヘルメットの別の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
まず、
図1~
図3を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る荷役車用通知システムおよび当該通知システムを備えた荷役車について説明する。図中の両矢印Xは前後方向を示し、両矢印Yは左右方向を示し、両矢印Zは、上下方向を示している。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る荷役車Fは、フォークリフトであって、通知システム1と、前後の車輪3と、車輪3上に設けられた車体4と、車体4の前方に設けられた荷役装置5と、を備えている。なお、本実施形態に係る荷役車Fは、本発明に係る荷役車の単なる一例であって、本発明に係る荷役車は、これに限定されない。
【0020】
荷役装置5は、左右一対のマスト50と、リフトブラケット51と、左右一対のフォーク52と、リフトシリンダ53と、左右一対のリーチレグ54と、左右のキャリッジ55と、リーチシリンダ(図示略)と、を有する。
【0021】
左右のマスト50は、アウタマストとインナマストとをそれぞれ有し、インナマストは、リフトシリンダ53によって昇降させられる。リフトブラケット51は、インナマストに連結されており、左右のフォーク52は、リフトブラケット51に連結される。リフトブラケット51は、リフトシリンダ53によってインナマストに沿って昇降させられる。左右のリーチレグ54は、車体4の前方に延在しており、左右のマスト50は、アウタマストの下部に設けられたキャリッジ55を介してリーチレグ54に連結されている。リーチシリンダは、車体4とマスト50との間に設けられ、マスト50をリーチレグ54に沿って前後に移動させる。荷役車Fは、マスト50を前後に移動させ、フォーク52をリフトブラケット51を介して昇降させることにより、荷Wが載置されるパレットPをすくい上げたり着地させたりする。
【0022】
荷役車Fは、さらに、左右一対の支柱6と、ルーフ7と、を有する。左右の支柱6は、車体4の上面前側の左右にそれぞれ立設され、ルーフ7は、支柱6の上部から後方に向かって水平に延在している。
【0023】
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る通知システム1は、カメラ10と、左右一対の車体マイク11と、左右一対のスピーカ12と、制御部13と、を備えている。
【0024】
制御部13は、コンピュータなどから構成されるとともに車体4内部に設けられている。制御部13は、
図3に示すように、位置認識部130と、頭部音抽出部131と、第1学習済みニューラルネットワーク(以下、「第1NN」という)132と、逆位相音生成部133と、荷役情報部134と、音合成部135と、を有する。
【0025】
図1および
図2に示すように、カメラ10は、ルーフ7の後端下面に設けられており、運転者Dの頭部を撮像し、運転者Dの頭部画像を生成する。
図3に示すように、生成された頭部画像は、位置認識部130に出力される。本実施形態では、カメラ10の位置は、ルーフ7の下面であるが単なる一例であって、運転者Dの頭部の位置および向きを認識可能な画像を生成することができれば、特に限定されない。カメラ10の位置は、例えば、支柱6または車体4上面でもよい。
【0026】
位置認識部130は、入力された頭部画像に基づいて、運転者Dの頭部の位置および向きを認識する。
図3に示すように、認識された頭部の位置および向きは、頭部音抽出部131に出力される。
【0027】
左右の車体マイク11は、超指向性を有するとともに左右の支柱6にそれぞれ設けられ、運転者Dの頭部付近の音を収音するように構成されている。車体マイク11は、本発明の「第1マイク」に相当する。車体マイク11の数は、特に限定されない。車体マイク11は、例えば、上下もしくは左右またはその両方に並べられたアレイマイクであってもよい。車体マイク11によって収音される音には、荷役装置5の動作音と運転者Dの周囲の環境音とが含まれる。荷役装置5の動作音には、例えば、リフトブラケット51の昇降に係る音、フォーク52がパレットPに干渉する音および荷役装置5の動力源の音のいずれかまたは全てが含まれる。なお、本明細書において、荷役装置5の動作音は、単に「動作音」ということがある。車体マイク11が収音した音は、頭部音抽出部131に出力される。
【0028】
頭部音抽出部131は、入力された頭部の位置および方向と、入力された左右の車体マイク11の音を解析し左右のマイク間に生じる位相および振幅の差に基づいて、運転者Dの耳付近の音を抽出する。
図3に示すように、頭部音抽出部131によって抽出された運転者Dの耳付近の音は、音声信号として第1NN132に出力される。
【0029】
第1NN132は、動作音の音声信号が含まれる音声信号が入力されると、入力された音声信号から動作音の音声信号を抽出するよう機械学習させられている。第1NN132は、運転者Dの耳付近の音に対応する音声信号が入力されると、荷役装置5の動作音の音声信号を抽出するとともに逆位相音生成部133に出力する。第1NN132は、ディープラーニングによって動作音の音声信号が含まれた音声信号から動作音の音声信号を抽出するよう畳み込みニューラルネットワークによって学習されてもよい。また、第1NN132は、畳み込みニューラルネットワークのうち、例えば、Dilated Convolutional Neural Networkを利用して学習されてもよい。Dilated Convolutional Neural Networkについては、例えば、(https://arxiv.org/abs/1512.07108)から参照することができる。当該学習は、例えば、荷役車Fが利用される施設内の環境音と荷役装置5の動作音とが含まれる音を利用してもよい。また、第1NN132は、荷役対象の荷Wの重量に応じて変化する動作音に対応して動作音を抽出するよう、荷Wの重量ごとの教師データを含めて学習されてもよい。
【0030】
逆位相音生成部133は、入力された音声信号から荷役装置5の動作音の逆位相音の音声信号を生成する。
図3に示すように、生成された音声信号は、音合成部135に出力される。
【0031】
荷役情報部134は、荷役に係る情報を音声信号として音合成部135に出力する。荷役に係る情報には、例えば、荷役車Fの位置情報、荷取位置情報、荷置位置情報、荷役装置5に係る情報が含まれる。荷役装置5に係る情報には、例えば、荷役装置5の操作が適切に行われたか否か、フォーク52がパレットPのフォーク差し込み口と同軸線上にあるか否か、といった情報が含まれる。荷役情報部134は、荷役装置5の動作に基づいて、荷役装置5に係る情報を音声信号として音合成部135に出力する。荷役に係る情報は、さらに、バッテリ残量、燃料の残量に関する情報といった、荷役車Fに係る情報を含んでもよい。荷役情報部134が出力する音声信号としては、例えば、機械的な音声信号であったり、人の声の音声信号であってもよく、特に限定されない。荷役情報部134は、当該音声信号が予め記憶された記憶部を有してもよい。
【0032】
音合成部135は、入力された、動作音の逆位相音の音声信号と荷役に係る情報の音声信号とを合成する。
図3に示すように、合成された音声信号は、スピーカ12に出力される。
【0033】
図2に示すように、左右一対のスピーカ12は、ルーフ7の左右両端の下面にそれぞれ設けられている。左右のスピーカ12は、音合成部135から入力された音声信号に基づいて、荷役装置5の動作音の逆位相音を含む通知音を発する。左右一対のスピーカ12は、指向性を有し、位置認識部130から入力された運転者Dの頭部の位置に基づいて、運転者Dの耳元に向けて通知音を発する。左右のスピーカ12は、例えば、上下もしくは左右またはその両方に並べられたアレイスピーカであってもよい。左右のスピーカ12は、互いに連動して電気的に制御され、発音タイミングを制御されることにより、指向性を有してもよい。また、左右のスピーカ12は、超音波スピーカであってそれにより超指向性を有してもよい。
【0034】
左右一対のスピーカ12によって発せられた通知音は、荷役装置5の動作音の逆位相音を含んでいる。したがって、当該逆位相音は、運転者Dの耳付近において荷役装置5から発せられる動作音に干渉し動作音を相殺するので、運転者Dは、通知音を適切に感知することができる。また、通知音は、環境音の逆位相音を含んでいないので環境音を相殺しない。これにより、運転者Dは、動作音によって通知音が減衰されることを防止されるとともに、環境音も適切に感知することができる。しかも、本実施形態に係る通知システム1では、車体マイク11が運転者Dの耳付近の音を適切に感知するとともにスピーカ12が通知音を適切に運転者Dの耳付近に向けて発する。したがって、荷役車Fの操作上、運転者Dは頻繁に頭部を前後左右に移動させるところ、通知システム1では、適切に動作音を相殺するとともに通知音を運転者Dに適切に届けることができる。
【0035】
<第2実施形態>
次に、
図4~
図7を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る通知システム1および当該通知システム1を備えた荷役車について説明する。なお、第2実施形態に係る荷役車は、第1実施形態と同様のフォークリフトである。したがって、第1実施形態と同じ構成については、その説明を省略することがある。
【0036】
図4に示すように、本実施形態に係る荷役車Fは、第1実施形態と同様のフォークリフトであって、車輪3と、車体4と、荷役装置5と、を備えている。また、荷役車Fは、第2実施形態に係る通知システム1をさらに備えている。
【0037】
図4および
図5に示すように、通知システム1は、カメラ10と、左右一対の車体マイク11と、左右一対の減衰スピーカ14と、制御部13と、ヘルメット15と、を備えている。ヘルメット15は、左右一対の通知スピーカ16と、頭部マイク17とを有するとともに、運転者Dに装着される。
図6に示すように、制御部13は、位置認識部130と、頭部音抽出部131と、第1NN132と、逆位相音生成部133と、荷役情報部134と、第2学習済みニューラルネットワーク(以下、「第2NN」という)136と、を有する。
【0038】
図4に示すように、カメラ10は、第1実施形態と同様に、ルーフ7の後端下面に設けられており、運転者Dの頭部画像を生成する。
図6に示すように、位置認識部130は、第1実施形態と同様に、頭部画像に基づいて頭部の位置および向きを認識する。認識された運転者Dの頭部の位置および向きは、頭部音抽出部131に出力される。左右の車体マイク11は、第1実施形態と同様に、左右の支柱6に設けられており、運転者Dの頭部付近の音を収音する。頭部音抽出部131は、第1実施形態と同様の手法により、運転者Dの耳付近の音を抽出する。第1NN132は、第1実施形態と同様の手法により、運転者Dの耳付近の音の音声信号から荷役装置5の動作音の音声信号を抽出する。逆位相音生成部133は、第1実施形態と同様の手法により、荷役装置5の動作音の逆位相音の音声信号を生成する。生成された音声信号は、減衰スピーカ14に出力される。
【0039】
左右の減衰スピーカ14は、第1実施形態のスピーカ12と同様に、超指向性を有するとともにルーフ7の左右両端の下面にそれぞれ設けられている。減衰スピーカ14は、入力された動作音の逆位相音の音声信号に基づいて、荷役装置5の動作音の逆位相音を発する。左右一対のスピーカ12は、第1実施形態のスピーカ12と同様に指向性を有し、位置認識部130から入力された運転者Dの頭部の位置に基づいて、運転者Dの耳元に向けて動作音の逆位相音を発する。これにより、運転者Dの耳付近において荷役装置5から発せられる動作音を相殺する。左右の減衰スピーカ14は、運転者Dに向けて通知音ではなく、動作音の逆位相音のみを発する点で第1実施形態のスピーカ12と異なるがその他の構成は共通している。
【0040】
荷役情報部134は、通知スピーカ16と無線通信可能に構成されており、荷役装置5の動作に基づいて、荷役に係る情報を音声信号として通知スピーカ16に出力する。また、荷役情報部134は、荷役を管理する管理オペレータOと無線通信可能に構成されており、管理オペレータOからの音声信号も通知スピーカ16に出力する。また、荷役情報部134は、例えば、管理装置を有するサーバと無線通信可能に構成され、管理装置からの情報を音声信号によって通知スピーカ16に出力してもよい。
【0041】
図5および
図7Aに示すように、左右の通知スピーカ16は、ヘルメット15の外面の左右に設けられている。通知スピーカ16は、ヘルメット15と一体的に構成されてもよく、または取り外し可能にヘルメット15に設けられてもよい。通知スピーカ16は、振動スピーカであって、
図7Aに示すように、振動によってヘルメット15を振動させることにより入力された音声信号に対応する音をヘルメット15から発生させる。したがって、通知スピーカ16は、運転者Dの耳をふさぐことなく荷役情報を運転者Dに通知することができる。
【0042】
上記通知スピーカ16の構成は、単なる一例であってこれに限定されない。通知スピーカ16は、例えば、
図7Bに示すように、音声スピーカとして運転者Dの耳に向けて荷役情報に係る音声を発してもよい。さらに、通知スピーカ16は、例えば、
図7Cに示すように、骨伝導スピーカであって、ヘルメット15の内部に発生させた振動によって運転者Dの頭部を介して内耳に直接音を伝達させてもよい。従来、骨伝導スピーカによる骨導音は、耳穴から内耳に到達した動作音と合成されマスキングされることがあり、聞こえが悪くなっていた。本実施形態では、減衰スピーカ14によって動作音が相殺されていることにより、通知スピーカ16が骨伝導スピーカであっても、通知音が運転者Dに適切に伝達される。
【0043】
図5に示すように頭部マイク17は、通知スピーカ16から運転者Dの口元に向かって延びるアーム部17aと、アーム部17aの先端に設けられ運転者Dの声を収音する収音部17bとを有する。頭部マイク17は、制御部13と無線通信可能に構成されており、頭部マイク17によって収音された音(以下、「頭部マイク音」という)は、音声信号に変換され第1NN132に出力される。頭部マイク音には、荷役装置5の動作音が含まれることがある。頭部マイク17は、本発明の「第2マイク」に相当する。
【0044】
第1NN132は、さらに、入力された頭部マイク音の音声信号から動作音の音声信号を除去する。
図6に示すように、動作音の音声信号が除去された頭部マイク音の音声信号は、第2NN136に出力される。
【0045】
第2NN136は、運転者Dの声の音声信号が含まれた音声信号が入力されると、運転者Dの声の音声信号を抽出するように機械学習させられている。第2NN136は、ディープラーニングによって運転者Dの声の音声信号が含まれた音声信号から運転者Dの声の音声信号を抽出するよう畳み込みニューラルネットワークによって学習されてもよい。また、第2NN136は、畳み込みニューラルネットワークのうち、例えば、Dilated Convolutional Neural Networkを利用して学習されてもよい。頭部マイク音は、予め第1NN132によって動作音が除去されているので、第2NN136は、頭部マイク音から運転者Dの声の音声信号をより適切に抽出することができる。抽出された音声信号は、管理オペレータOに出力される。
【0046】
第2実施形態の通知システム1は、上記構成を備えていることにより、通知音を適切に運転者Dに通知するとともに、運転者Dの声を管理オペレータOに適切に伝えることができる。しかも、本実施形態に係るヘルメット15は、制御部13と通信可能であれば、スピーカおよびマイクを有する公知のヘルメットとしてもよい。
【0047】
以上、本発明に係る荷役車用通知システムおよび当該通知システムを備えた荷役車の実施形態について説明したが、本発明に係る荷役車用通知システムおよび当該通知システムを備えた荷役車は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明に係る荷役車用通知システムおよび当該通知システムを備えた荷役車は、本発明の課題が解決されるのであれば、それぞれの構成を入れ替えられたり、組み合わされたりしてもよい。例えば、本発明に係る荷役車用通知システムおよび当該通知システムを備えた荷役車は、以下の変形例によって実施されてもよい。
【0048】
・第2実施形態に係る制御部13は、さらに、音合成部135を備えてもよい。この場合、第2実施形態の通知システム1は、音合成部135によって合成音の音声信号を生成し、通知スピーカ16によって荷役装置5の動作音の逆位相音を含む通知音を運転者Dに向けて発してもよい。
【0049】
・第1および第2実施形態に係る制御部13は、さらに入力された音声から騒音を抽出するとともに騒音の逆位相音を生成する騒音逆位相音生成部を有してもよい。この場合、騒音逆位相音生成部は、騒音の逆位相音を減衰スピーカ14によって運転者Dの耳元に発して騒音を減衰させる。これにより、通知システム1は、騒音によって通知音が運転者Dに伝達されないことを防止することができる。また、この騒音の逆位相音の音声信号と、動作音の逆位相音の音声信号は、合成されて減衰スピーカ14に出力されてもよい。この場合、減衰スピーカ14は、騒音および動作音の逆位相音を運転者Dの耳元に向けて発する。
【0050】
・動作音には、さらに、荷役車Fの移動に伴う動作音が含まれてもよい。この場合、荷役車Fの移動に伴う動作音は、例えば、車輪3を回転させる駆動部の動作音を含んでもよい。
【0051】
・スピーカ12および車体マイク11は、例えば、機械的に向きが変更される構成であってもよい。この場合、スピーカ12および車体マイク11は、位置認識部130によって認識された運転者Dの頭部の位置に基づいて、機械的に向きを変更される。
【0052】
・減衰スピーカ14は、例えば、荷役装置5の動作のタイミングに応じて動作するように構成されてもよい。すなわち、減衰スピーカ14は、荷役装置5が動作していないときには、電力を消費しないように構成されてもよい。これにより、通知システム1は、減衰スピーカ14の消費電力を減少させることができる。
【0053】
・本発明に係る第1マイクは、例えば、ヘルメット15に設けられるか、またはヘルメット15に設けられた通知スピーカ16と一体的に構成されてもよい。この場合、第1マイクは、動作音および環境音を収音し、収音された動作音の音声信号を含む音声信号が第1NN132に入力される。
【符号の説明】
【0054】
F 荷役車
D 運転者
O 管理オペレータ
W 荷
P パレット
1 通知システム
10 カメラ
11 車体マイク(第1マイク)
12 スピーカ
13 制御部
130 位置認識部
131 頭部音抽出部
132 第1学習済みニューラルネットワーク
133 逆位相音生成部
134 荷役情報部
135 音合成部
136 第2学習済みニューラルネットワーク
14 減衰スピーカ
15 ヘルメット
16 通知スピーカ
17 頭部マイク(第2マイク)
17a アーム部
17b 収音部
3 車輪
4 車体
5 荷役装置
50 マスト
51 リフトブラケット
52 フォーク
53 リフトシリンダ
54 リーチレグ
55 キャリッジ
6 支柱
7 ルーフ