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特許7176833インフルエンザ菌のスクリーニング方法およびスクリーニング用培地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】インフルエンザ菌のスクリーニング方法およびスクリーニング用培地
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/04 20060101AFI20221115BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12N1/00 F
C12N1/00 T
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2016224892
(22)【出願日】2016-11-18
(65)【公開番号】P2017099380
(43)【公開日】2017-06-08
【審査請求日】2019-11-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2015226205
(32)【優先日】2015-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000120456
【氏名又は名称】栄研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 公平
(72)【発明者】
【氏名】竹下 康之
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】福井 悟
【審判官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-161396(JP,A)
【文献】特開2001-169799(JP,A)
【文献】国際公開第2006/043349(WO,A1)
【文献】J. Clin. Pathol.,1983年,Vol.36,p.991-995
【文献】Applied Microbiology,1968年,Vol.16, No.2,p.256-259
【文献】J. Infect. Chemother,2012年,Vol.18,p.134-143
【文献】Journal of Clinical Microbiology,1982年,Vol.15, No.3,p.528-530
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q1/00-3/00
C12N1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の(a)、(b)、(c)および(d1)をすべて含有する、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)が発育可能な培地に検体を接種して培養後、細菌のコロニー色および溶血の有無を確認することを特徴とする初代分離培養によるインフルエンザ菌のスクリーニング方法。
(a)溶血していないウマ血液、
(b)β-NADまたはそのリン酸塩、
(c)抗菌剤、
(d1)白糖およびアニリンブルー
【請求項2】
前記培地がさらに(d2)を含有することを特徴とする請求項1に記載のインフルエンザ菌のスクリーニング方法。
(d2)5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド、5-ブロモ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドおよび3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドから成る群より選択される酵素発色基質。
【請求項3】
前記抗菌剤がグラム陽性菌の増殖を抑制する抗菌剤であることを特徴とする請求項2に記載のインフルエンザ菌のスクリーニング方法。
【請求項4】
少なくとも以下の(a)、(b)、(c)および(d1)をすべて含有する、インフルエンザ菌が発育可能な培地に検体を接種して培養後、細菌のコロニー色および溶血の有無を確認することを特徴とする初代分離培養によるインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス(Haemophilus haemolyticus)、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカス(Haemophilus parahaemolyticus)の識別方法。
(a)溶血していないウマ血液、
(b)β-NADまたはそのリン酸塩、
(c)抗菌剤、
(d1)白糖およびアニリンブルー
【請求項5】
前記培地がさらに(d2)を含有することを特徴とする請求項4に記載のインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別方法。
(d2)5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド、5-ブロモ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドおよび3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドから成る群より選択される酵素発色基質。
【請求項6】
前記抗菌剤がグラム陽性菌の増殖を抑制する抗菌剤であることを特徴とする請求項5に記載のインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別方法。
【請求項7】
インフルエンザ菌が発育可能な培地に、以下の(a)、(b)、(c)および(d1)をすべて含むことを特徴とするインフルエンザ菌スクリーニング用初代分離培養培地。
(a)溶血していないウマ血液、
(b)β-NADまたはそのリン酸塩、
(c)抗菌剤、
(d1)白糖およびアニリンブルー
【請求項8】
さらに(d2)を含有することを特徴とする請求項7に記載のインフルエンザ菌スクリーニング用初代分離培養培地。
(d2)5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド、5-ブロモ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドおよび3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドから成る群より選択される酵素発色基質。
【請求項9】
前記抗菌剤がグラム陽性菌の増殖を抑制する抗菌剤であることを特徴とする請求項8に記載のインフルエンザ菌スクリーニング用初代分離培養培地。
【請求項10】
培地1Lあたり以下の成分すべてを少なくとも含有することを特徴とするインフルエンザ菌スクリーニング用初代分離培養培地。
(a)溶血していないウマ血液 10~100mL、
(b)β-NAD 1~100mg、
(c)バシトラシン 1~800mgおよび/またはバンコマイシン 0.5~40mg、
(d)白糖1~40gおよびアニリンブルー 40~400mg、または白糖 1~40g、アニリンブルー 40~400mgおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド 40~300mg。
【請求項11】
インフルエンザ菌が発育可能な培地に、以下の(a)、(b)、(c)および(d1)をすべて含むことを特徴とするインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別用初代分離培養培地。
(a)溶血していないウマ血液、
(b)β-NADまたはそのリン酸塩、
(c)抗菌剤、
(d1)白糖およびアニリンブルー
【請求項12】
さらに(d2)を含有することを特徴とする請求項11に記載のインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別用初代分離培養培地。
(d2)5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド、5-ブロモ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドおよび3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドから成る群より選択される酵素発色基質。
【請求項13】
前記抗菌剤がグラム陽性菌の増殖を抑制する抗菌剤であることを特徴とする請求項12に記載のインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別用初代分離培養培地。
【請求項14】
培地1Lあたり以下の成分すべてを少なくとも含有することを特徴とするインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別用初代分離培養培地。
(a)溶血していないウマ血液 10~100mL、
(b)β-NAD 1~100mg、
(c)バシトラシン 1~2.5mgおよび/またはバンコマイシン 0.5~10mg、
(d)白糖 1~40gおよびアニリンブルー 40~400mg、または白糖1~40g、アニリンブルー 40~400mgおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド 40~300mg。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae、以下、インフルエンザ菌という。)の検出方法およびそれに用いる培地、並びに/または、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス(Haemophilus haemolyticus)、ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae、以下、パラインフルエンザ菌という。)およびヘモフィルス・パラヘモリティカス(Haemophilus parahaemolyticus)の識別方法およびそれに用いる培地に関するものである。より詳細には、インフルエンザ菌が存在する可能性のある被検体から、インフルエンザ菌の存否を、容易に検出(スクリーニング)できる方法およびスクリーニング用培地、並びに/または、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスが存在する可能性のある検体中の、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスを識別できる方法および識別用培地に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザ菌は、ヒトの鼻咽腔に常在するグラム陰性桿菌であり、菌を被う莢膜多糖体の抗原性の違いによりa~fの血清型と無莢膜株(non-typable)に型別される。無莢膜株は、ヒトに常在するインフルエンザ菌の多くを占め、中耳炎、副鼻腔炎、慢性気管支炎、結膜炎の患者からしばしば分離される。一方、小児の髄膜炎や敗血症、成人の肺炎の起因菌はb型莢膜株であることが多い(非特許文献1)。
【0003】
通常、検査材料からのインフルエンザ菌の初代分離培養には、チョコレート寒天培地あるいはバシトラシンを添加して選択性を向上させたチョコレート寒天培地が用いられる。インフルエンザ菌は、発育に十分量のX因子(Heminまたは他のポルフィリン)とV因子(nicotinamide adenine dinucleotide:NAD、またはそのリン酸塩)を必要とするため、V因子を破壊する酵素が赤血球中に多量に存在するヒツジ血液を含有するヒツジ血液寒天培地には発育しない。一方、ウマ血液はV因子を破壊する酵素含有量が少ないため、ウマ血液寒天培地にはインフルエンザ菌が発育する。しかし、発育したインフルエンザ菌のコロニーが微小であるため、ウマ血液寒天培地はインフルエンザ菌の初代分離培養用としては使用されない。そのため、X因子およびV因子を豊富に含有するチョコレート寒天培地がインフルエンザ菌の初代分離培養に用いられている。
初代分離培養後は、発育したコロニーの中からインフルエンザ菌を疑うコロニーを釣菌して確認試験を行うことにより、細菌が同定される。確認試験としては、被験菌を普通寒天培地に塗布し、X・V因子要求試験用ディスクを置いて培養する方法、被験菌を4分画培地(それぞれX因子、V因子、XV因子、ウマ血液を含有している培地)に塗布して培養する方法、被験菌のポルフィリン合成能を調べる方法等がある(非特許文献2および3、特許文献1、2および3)。
【0004】
初代分離培養時、実際には、チョコレート寒天培地またはバシトラシン添加チョコレート寒天培地を用いた培養と並行して、ヒツジ血液寒天培地を用いた培養が行われ、ヒツジ血液寒天培地に発育せず、チョコレート寒天培地やバシトラシン添加チョコレート寒天培地に発育したコロニーの中からインフルエンザ菌を疑うコロニーを釣菌して確認試験が行われる。しかし、インフルエンザ菌以外のヘモフィルス属菌(ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌、ヘモフィルス・パラヘモリティカス等)もヒツジ血液寒天培地に発育せず、チョコレート寒天培地やバシトラシン添加チョコレート寒天培地に発育するため、発育したヘモフィルス属菌の中から形態のみによってインフルエンザ菌を識別しなければならず、その識別には熟練した技術が必要とされる。また、初代分離培養により発育した多数のコロニーの中からインフルエンザ菌を疑うコロニー全てを釣菌して確認試験を行うため、熟練した技術に加え、煩雑な作業および多量の確認試験薬(X・V因子要求試験用ディスク、4分画培地、ポルフィリン合成能試験薬等)が必要とされる。さらに、コロニーを釣菌する際にはインフルエンザ菌を釣菌し逃す可能性もある。
【0005】
一方、酵素発色基質を含有するチョコレート寒天培地を用いることにより、細菌の色変化に基づいて微生物を識別する方法が開示され、Mag-phos(5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリルホスフェート)を含有するチョコレート寒天培地を用いることにより、紫色のインフルエンザ菌コロニーが無色の正常痰細菌叢から識別されることが記載されている(特許文献4)。しかし、酵素発色基質を含有するチョコレート寒天培地を用いた場合においても、インフルエンザ菌と同じ酵素分解能を示す細菌とインフルエンザ菌とを形態によって識別するためには熟練した技術を要し、作業効率が悪く、試薬コストが嵩むという問題が依然として残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭62-155098号公報
【文献】実開昭59-159300号公報
【文献】特開2001-161394号公報
【文献】特開2001-161396号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】荒川 宣親,病原体微生物検出情報(IASR),31,94-95,2010
【文献】長南 正佳ら,臨床検査,58(11),1362-1365,2014
【文献】山口 育男,微生物検査ナビ,164-165,2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の現状に鑑みてなされたものであり、検体中にインフルエンザ菌が存在するか否かを、容易かつ正確に検出(スクリーニング)できる方法およびスクリーニング用培地、並びに/または、検体中のインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスを、容易かつ正確に識別できる方法および識別用培地を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、従来、初代分離培養には用いられていなかったウマ血液寒天培地にβ-NAD、抗菌剤を添加し、さらに発色成分として白糖、pH指示薬を添加して作製した培地に検体を接種して培養後、発育したヘモフィルス属菌の白糖分解能および溶血の有無により菌種が判別可能なこと、すなわち、初代分離培養用の培地としてウマ血液寒天培地にβ-NAD、抗菌剤を添加し、さらに発色成分として白糖、pH指示薬を添加して作製した培地を用いることにより、発育した細菌のコロニー色および溶血の有無を確認するのみで、容易にインフルエンザ菌(白糖分解無し・溶血無し)、ヘモフィルス・ヘモリティカス(白糖分解無し・溶血有り)、パラインフルエンザ菌(白糖分解有り・溶血無し)、ヘモフィルス・パラヘモリティカス(白糖分解有り・溶血有り)の識別が可能になることを見出した。本発明者らは、また、ウマ血液寒天培地にβ-NAD、抗菌剤を添加し、さらに発色成分としてガラクトピラノシド誘導体(以下、Gal誘導体という。)を添加して作製した培地に検体を接種して培養後、発育したヘモフィルス属菌のGal誘導体の分解能および溶血の有無により菌種が判別可能なこと、すなわち、初代分離培養用の培地としてウマ血液寒天培地にβ-NAD、抗菌剤を添加し、さらに発色成分としてGal誘導体を添加して作製した培地を用いることにより、発育した細菌のコロニー色および溶血の有無を確認するのみで、容易にインフルエンザ菌(Gal誘導体分解無し・溶血無し)、ヘモフィルス・ヘモリティカス(Gal誘導体分解無し・溶血有り)、パラインフルエンザ菌(Gal誘導体分解有り・溶血無し)、ヘモフィルス・パラヘモリティカス(Gal誘導体分解有り・溶血有り)の識別が可能になることを見出した。さらに、培地に酸化チタンを添加して培地色を明るく保つことにより溶血とコロニー発色の視認性が向上すること、および培地に発色成分として白糖、pH指示薬およびGal誘導体を添加することで、より正確な識別が可能になることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のような構成からなるものである。
(1)少なくとも以下の(a)、(b)、(c)および(d)を含有する、インフルエンザ菌が発育可能な培地に検体を接種して培養後、細菌のコロニー色および溶血の有無を確認することを特徴とするインフルエンザ菌のスクリーニング方法。
(a)ウマ血液、
(b)β-NADまたはそのリン酸塩、
(c)抗菌剤、
(d)発色成分であって、インフルエンザ菌のコロニーの呈色とパラインフルエンザ菌のコロニーの呈色を異なる色にする特性を有する発色成分。
(2)前記発色成分が、以下の(d1)および/または(d2)であることを特徴とする、(1)に記載のインフルエンザ菌のスクリーニング方法。
(d1)インフルエンザ菌によっては分解されないが、パラインフルエンザ菌によって分解されて酸を生成する糖およびpH指示薬、
(d2)インフルエンザ菌によっては分解されないが、パラインフルエンザ菌によって分解されて発色する酵素発色基質。
(3)前記抗菌剤がグラム陽性菌の増殖を抑制する抗菌剤であり、
前記インフルエンザ菌によっては分解されないが、パラインフルエンザ菌によって分解されて酸を生成する糖が、白糖であり、
前記pH指示薬が、アニリンブルー、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、フェノールレッド、ニュートラルレッドおよびメチルレッドから選択され、
前記インフルエンザ菌によっては分解されないが、パラインフルエンザ菌によって分解されて発色する酵素発色基質が、ガラクトピラノシド誘導体であること
を特徴とする、(2)に記載のインフルエンザ菌のスクリーニング方法。
(4)少なくとも以下の(a)、(b)、(c)および(d)を含有する、インフルエンザ菌が発育可能な培地に検体を接種して培養後、細菌のコロニー色および溶血の有無を確認することを特徴とするインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別方法。
(a)ウマ血液、
(b)β-NADまたはそのリン酸塩、
(c)抗菌剤、
(d)発色成分であって、インフルエンザ菌のコロニーの呈色とパラインフルエンザ菌のコロニーの呈色を異なる色にし、インフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスのコロニーの呈色を同じ色にし、かつ、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスのコロニーの呈色を同じ色にする特性を有する発色成分。
(5)前記発色成分が、以下の(d1)および/または(d2)であることを特徴とする、(4)に記載のインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別方法。
(d1)インフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスによっては分解されないが、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスによって分解されて酸を生成する糖およびpH指示薬、
(d2)インフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスによっては分解されないが、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスによって分解されて発色する酵素発色基質。
(6)前記抗菌剤がグラム陽性菌の増殖を抑制する抗菌剤であり、
前記インフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスによっては分解されないが、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスによって分解されて酸を生成する糖が、白糖であり、
前記pH指示薬が、アニリンブルー、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、フェノールレッド、ニュートラルレッドおよびメチルレッドから選択され、
前記インフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスによっては分解されないが、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスによって分解されて発色する酵素発色基質が、ガラクトピラノシド誘導体であること
を特徴とする、(5)に記載のインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別方法。
(7)インフルエンザ菌が発育可能な培地に、以下の(a)、(b)、(c)および(d)を含むことを特徴とするインフルエンザ菌スクリーニング用培地。
(a)ウマ血液、
(b)β-NADまたはそのリン酸塩、
(c)抗菌剤、
(d)発色成分であって、インフルエンザ菌のコロニーの呈色とパラインフルエンザ菌のコロニーの呈色を異なる色にする特性を有する発色成分。
(8)前記発色成分が、以下の(d1)および/または(d2)であることを特徴とする、(7)に記載のインフルエンザ菌スクリーニング用培地。
(d1)インフルエンザ菌によっては分解されないが、パラインフルエンザ菌によって分解されて酸を生成する糖およびpH指示薬、
(d2)インフルエンザ菌によっては分解されないが、パラインフルエンザ菌によって分解されて発色する酵素発色基質。
(9)前記抗菌剤がグラム陽性菌の増殖を抑制する抗菌剤であり、
前記インフルエンザ菌によっては分解されないが、パラインフルエンザ菌によって分解されて酸を生成する糖が、白糖であり、
前記pH指示薬が、アニリンブルー、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、フェノールレッド、ニュートラルレッドおよびメチルレッドから選択され、
前記インフルエンザ菌によっては分解されないが、パラインフルエンザ菌によって分解されて発色する酵素発色基質が、ガラクトピラノシド誘導体であること
を特徴とする、(8)に記載のインフルエンザ菌スクリーニング用培地。
(10)培地1Lあたり以下の成分を少なくとも含有することを特徴とするインフルエンザ菌スクリーニング用培地。
(a)ウマ血液 10~100mL、
(b)β-NAD 1~100mg、
(c)バシトラシン 1~800mg および/または バンコマイシン 0.5~40mg、
(d)白糖 1~40g および アニリンブルー 40~400mg、並びに/または 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド 40~300mg。
(11)インフルエンザ菌が発育可能な培地に、以下の(a)、(b)、(c)および(d)を含むことを特徴とするインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別用培地。
(a)ウマ血液、
(b)β-NADまたはそのリン酸塩、
(c)抗菌剤、
(d)発色成分であって、インフルエンザ菌のコロニーの呈色とパラインフルエンザ菌のコロニーの呈色を異なる色にし、インフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスのコロニーの呈色を同じ色にし、かつ、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスのコロニーの呈色を同じ色にする特性を有する発色成分。
(12)前記発色成分が、以下の(d1)および/または(d2)であることを特徴とする、(11)に記載のインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別用培地。
(d1)インフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスによっては分解されないが、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスによって分解されて酸を生成する糖およびpH指示薬、
(d2)インフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスによっては分解されないが、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスによって分解されて発色する酵素発色基質。
(13)前記抗菌剤がグラム陽性菌の増殖を抑制する抗菌剤であり、
前記インフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスによっては分解されないが、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスによって分解されて酸を生成する糖が、白糖であり、
前記pH指示薬が、アニリンブルー、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、フェノールレッド、ニュートラルレッドおよびメチルレッドから選択され、
前記インフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスによっては分解されないが、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスによって分解されて発色する酵素発色基質が、ガラクトピラノシド誘導体であること
を特徴とする、(12)に記載のインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別用培地。
(14)培地1Lあたり以下の成分を少なくとも含有することを特徴とするインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別用培地。
(a)ウマ血液 10~100mL、
(b)β-NAD 1~100mg、
(c)バシトラシン 1~2.5mg および/または バンコマイシン 0.5~10mg、
(d)白糖 1~40g および アニリンブルー 40~400mg、並びに/または 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド 40~300mg。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、培地に発育した細菌のコロニー色および溶血の有無を確認するのみで、従来は不可能であった初代分離培養によるインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの容易な識別が可能になる。それにより、チョコレート寒天培地を用いる従来の初代分離培養法に比べて、はるかに容易かつ正確にインフルエンザ菌を検出(スクリーニング)可能になる。また、分離培養後の確認試験のために釣菌するコロニー数を減らすことができ、さらに、確認試験において溶血の有無を確認する必要がないため、4分画培地と比較して安価なX・V因子要求試験用ディスクによる確認試験のみでインフルエンザ菌を同定することが可能になる。その結果、初代分離培養および確認試験を含めた所要時間、操作上の手間および確認試験(X・V因子要求試験用ディスク、4分画培地、ポルフィリン合成能試験薬等)にかかるコストを従来に比べて大幅に削減できる上、釣菌し逃しによる偽陰性を無くすことができるという効果ももたらす。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では、少なくとも(a)ウマ血液、(b)β-NADまたはそのリン酸塩、(c)抗菌剤、並びに(d)発色成分であって、インフルエンザ菌のコロニーの呈色とパラインフルエンザ菌のコロニーの呈色を異なる色にする特性を有する発色成分を含有し、インフルエンザ菌が発育可能である本発明の培地に検体を接種して培養後、細菌のコロニー色および溶血の有無を確認することによりヘモフィルス属菌の菌種を識別すること、そして、それによりインフルエンザ菌を検出することを特徴とする。実際の培養時には、基礎培地に(a)ウマ血液、(b)β-NADまたはそのリン酸塩、(c)抗菌剤、並びに(d)発色成分であって、インフルエンザ菌のコロニーの呈色とパラインフルエンザ菌のコロニーの呈色を異なる色にする特性を有する発色成分、を添加したものを本発明の培地として用いることができる。
【0013】
本発明の培地は、インフルエンザ菌が発育可能であり、かつ、ヘモフィルス属菌による溶血の有無を判別可能な成分を栄養成分として含有する。インフルエンザ菌の発育のためにはX因子およびV因子が必要であるが、本発明ではX因子の供給源として、ウマ血液を添加し、V因子としてβ-NADまたはそのリン酸塩であるβ-NADP(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate)、β-NADPH(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate reduced form)を添加する。V因子はウマ血液中にも存在するが、本発明では、インフルエンザ菌の発育を促進する目的で、ウマ血液の他にβ-NADまたはそのリン酸塩を添加する。
【0014】
本発明の培地が含有するウマ血液は、ヘモフィルス属菌による溶血の有無を判別するためにも使用される。溶血素を産生する細菌が本発明の培地に発育した場合は、培地中に存在する赤血球を溶血させて透明化し、コロニーの周囲に透明な溶血帯が形成される。そのため、溶血素を産生するヘモフィルス属菌であるヘモフィルス・ヘモリティカス、ヘモフィルス・パラヘモリティカス等が本発明の培地に発育した場合は、溶血有りと判定される。一方、溶血素を産生しないインフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌等が本発明の培地に発育した場合は、コロニーの周囲に溶血帯が形成されないため、溶血無しと判定される。
【0015】
ウマ血液の添加量は、インフルエンザ菌が発育可能であり、かつ、ヘモフィルス属菌による溶血の有無を判別可能な範囲で適宜選択することができるが、例えば、10~100mL/Lとすることが好ましい。一方、V因子の添加濃度は、インフルエンザ菌が発育可能な範囲で適宜選択することができるが、例えば、β-NADの添加濃度を1~100mg/Lとすることが好ましい。β-NADの代用として、同等量のβ-NADP、β-NADPHを添加することも可能である。
【0016】
本発明の培地は、インフルエンザ菌のコロニーの呈色とパラインフルエンザ菌のコロニーの呈色を異なる色にする特性を有する発色成分を含有する。そのような発色成分として具体的には、(1)インフルエンザ菌によっては分解されないが、パラインフルエンザ菌によって分解されて酸を生成する糖およびpH指示薬、並びに/または(2)インフルエンザ菌によっては分解されないが、パラインフルエンザ菌によって分解されて発色する酵素発色基質、を使用することができる。
さらに、本発明の培地が含有する発色成分は、インフルエンザ菌のコロニーの呈色とパラインフルエンザ菌のコロニーの呈色を異なる色にし、インフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスのコロニーの呈色を同じ色にし、かつ、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスのコロニーの呈色を同じ色にする特性を有するものでもある。そのような発色成分として具体的には、(1)インフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスによっては分解されないが、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスによって分解されて酸を生成する糖およびpH指示薬、並びに/または(2)インフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスによっては分解されないが、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスによって分解されて発色する酵素発色基質、を使用することができる。
【0017】
本発明の培地で用いられる糖の種類は、インフルエンザ菌が分解能を有さず、パラインフルエンザ菌が分解能を有する糖であれば特に限定されない。そのような糖の例として白糖、マンノース等が挙げられる。例えば、白糖を用いることにより、インフルエンザ菌(白糖分解無し)とパラインフルエンザ菌(白糖分解有り)を精度良く識別することができる。さらに、白糖は、ヘモフィルス・ヘモリティカスが分解能を有さず、ヘモフィルス・パラヘモリティカスが分解能を有する糖でもあるため、白糖を用いることによってヘモフィルス・ヘモリティカス(白糖分解無し)とヘモフィルス・パラヘモリティカス(白糖分解有り)も精度良く識別可能である。これらは、細菌による白糖分解性の違いを利用したものである。白糖の添加濃度はインフルエンザ菌によって分解されず、パラインフルエンザ菌によって分解されて酸を生成する範囲、またはインフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスによって分解されず、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスによって分解されて酸を生成する範囲で適宜選択することができる。そのような白糖の濃度を、例えば、1~40g/Lとすることができるが、1~20g/Lとすることがより好ましく、1~15g/Lとすることがさらに好ましい。なお、必要に応じて、白糖に加えてマンノースを添加することも可能である。マンノースも、インフルエンザ菌が分解能を有さず、パラインフルエンザ菌が分解能を有する糖であるため、白糖に加えてマンノースを添加しても同等の効果が得られる。
【0018】
本発明の培地で用いられるpH指示薬の種類は、白糖の分解によって生じる酸に由来するpH変化に伴って変色するものであれば特に限定されない。例えば、中性色と酸性色が異なるpH指示薬、アニリンブルー、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、フェノールレッド、ニュートラルレッド、メチルレッド等を使用できる。表1に、白糖およびpH指示薬を発色成分として添加する場合のpH指示薬の種類とコロニーの呈色の具体例を示したが、本発明の培地では、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス等の、白糖を分解しない細菌のコロニーが無着色である一方で、パラインフルエンザ菌、ヘモフィルス・パラヘモリティカス等の、白糖を分解して酸を生成する細菌のコロニーは、pH指示薬の変色に基づき着色する。したがって、本発明の培地に発育した細菌のコロニーの呈色を観察することにより、その細菌による白糖の分解の有無を判断でき、これを上述の溶血の有無の判別と組み合わせることにより、インフルエンザ菌(白糖分解無し・溶血無し)、ヘモフィルス・ヘモリティカス(白糖分解無し・溶血有り)、パラインフルエンザ菌(白糖分解有り・溶血無し)、ヘモフィルス・パラヘモリティカス(白糖分解有り・溶血有り)の識別が可能である。
【0019】
【表1】
【0020】
pH指示薬の添加濃度は、白糖の分解によって生じる酸に由来するpH変化に伴って細菌のコロニー色を変色させうる濃度であれば特に限定されないが、例えば、アニリンブルー40~400mg/L、ブロモクレゾールパープル40~120mg/L、ブロモチモールブルー40~80mg/L、フェノールレッド40~120mg/L、ニュートラルレッド2~4mg/L、メチルレッド40~80mg/L等とすることができる。
【0021】
本発明の培地で用いられる酵素発色基質は、インフルエンザ菌によっては分解されず、パラインフルエンザ菌によって分解されて発色するものであれば特に限定されない。酵素として、例えば、インフルエンザ菌では発現せず、パラインフルエンザ菌で発現する酵素であるガラクトシダーゼを選択し、酵素発色基質をGal誘導体とすることで、インフルエンザ菌(Gal誘導体分解無し)とパラインフルエンザ菌(Gal誘導体分解有り)を精度良く識別することができる。Gal誘導体は、ヘモフィルス・ヘモリティカスによっては分解されず、ヘモフィルス・パラヘモリティカスによって分解されて発色する特性も有しており、Gal誘導体を使用することによってヘモフィルス・ヘモリティカス(Gal誘導体分解無し)とヘモフィルス・パラヘモリティカス(Gal誘導体分解有り)も精度良く識別可能である。
【0022】
本発明の培地で用いられるGal誘導体は、ガラクトシダーゼによって加水分解されうるように発色団化合物または蛍光発色団化合物が結合している化合物であれば、特に限定されない。結合している発色団化合物の具体例としては、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシル、5-ブロモ-3-インドキシル、4-クロロ-3-インドキシル、6-クロロ-3-インドキシル、6-フルオロ-3-インドキシル、3-インドキシル、5-ヨード-3-インドキシル、N-メチルインドキシル等のインドキシル誘導体、2-クロロ-4-ニトロフェニル、2-ニトロフェニル、4-ニトロフェニル、4-アミノフェニル等のフェニル誘導体、6-ブロモ-2-ナフチル等のナフチル誘導体等が挙げられる。また、蛍光発色団化合物の具体例としては、8-ヒドロキシキノリン等のキノリン誘導体、4-メチルウンベリフェリル、7-ヒドロキシクマリン-6-イル等のクマリン誘導体、7-ブロモ-N-(2-メトキシフェニル)-3-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボキシアミド(ナフトールAS-BI)、1-ナフチル、2-ナフチル等のナフチル誘導体、レゾルフィン等が挙げられる。
【0023】
表2に、酵素発色基質であるGal誘導体のみを発色成分として添加する場合の酵素発色基質の種類とコロニーの呈色の具体例を示したが、本発明の培地では、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス等の、Gal誘導体を分解しない細菌のコロニーは無着色であり、パラインフルエンザ菌、ヘモフィルス・パラヘモリティカス等の、Gal誘導体を分解する細菌のコロニーは、分解により遊離した発色団化合物の発色に基づき着色する。また、酵素発色基質として蛍光発色団化合物が結合しているGal誘導体を使用する場合は、紫外線ランプ等を使用して、蛍光発色団化合物に適した波長の紫外線を培養後の培地にあてることにより、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス等の、Gal誘導体を分解しない細菌のコロニーは蛍光を発せず、パラインフルエンザ菌、ヘモフィルス・パラヘモリティカス等の、Gal誘導体を分解する細菌のコロニーは蛍光色を呈する。したがって、本発明の培地に発育した細菌のコロニーの呈色を観察することにより、その細菌によるGal誘導体の分解の有無を判断でき、これを溶血の有無の判別と組み合わせることにより、インフルエンザ菌(Gal誘導体分解無し・溶血無し)、ヘモフィルス・ヘモリティカス(Gal誘導体分解無し・溶血有り)、パラインフルエンザ菌(Gal誘導体分解有り・溶血無し)、ヘモフィルス・パラヘモリティカス(Gal誘導体分解有り・溶血有り)の識別が可能である。
【0024】
【表2】
【0025】
本発明では、細菌のコロニーの呈色を目視で判別できるが、培地がウマ血液を含有するため、培地の色が暗赤褐色であり、赤色を呈するpH指示薬や発色団化合物を使用した場合よりも青、緑、紫、黄色等を呈するpH指示薬や発色団化合物を使用した場合の方がコロニー色の判別が容易である。一方、本発明の培地に、さらに、酸化チタン等の不溶性白色化合物を添加することにより、培地色が明るい色になり、赤色のコロニーを含めて、視認性が向上するため、判別をより容易に行えるようになる。酸化チタンの添加濃度は特に限定されないが、例えば、1~8g/Lとすることができる。
【0026】
本発明では、酵素発色基質を単独で用いることも可能であるが、検出目的に応じて2種以上の酵素発色基質を適宜組み合わせて用いることも可能である。また、例えば、酵素発色基質に加えて、イソプロピル-β-D-1-チオガラクトピラノシド(Isopropyl-β-D-1-thiogalactopyranoside、以下、IPTGという。)等の、ガラクトシダーゼによって加水分解されても発色しない酵素基質を加水分解反応促進剤として使用することもできる。酵素発色基質の添加濃度は、培地に発育した細菌に由来するガラクトシダーゼによる加水分解によって遊離した発色団化合物または蛍光発色団化合物による細菌のコロニーの呈色を目視で識別できる濃度であれば特に限定されない。そのような濃度は、当業者であれば、適宜設定可能であるが、例えば、酵素発色基質を5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド40~300mg/Lとすることができ、さらに、加水分解反応促進剤としてIPTG10~200mg/Lを添加することができる。
【0027】
上述のとおり、本発明では、白糖およびpH指示薬を発色成分として添加すること、または酵素発色基質のみを発色成分として添加することにより、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別や、インフルエンザ菌の検出が可能であり、これらを発色成分として用いることによってインフルエンザ菌を見逃すこと無く検出することができる(後に示す実施例1および2)。また、後に示す実施例3の様に、発色成分として白糖、pH指示薬に加えて酵素発色基質であるGal誘導体を添加することによって、より高い精度でインフルエンザ菌とパラインフルエンザ菌を識別可能になる。なお、実施例では、白糖を分解する細菌のコロニーの呈色とGal誘導体を分解する細菌のコロニーの呈色がともに青色である組み合わせのみを示したが、本発明では、白糖を分解せず、かつ酵素発色基質を分解しない細菌のコロニーが無着色である一方で、白糖を分解する細菌のコロニーと酵素発色基質を分解する細菌のコロニーはいずれも着色するため、本発明の培地に添加するpH指示薬とGal誘導体をどのように組み合わせても、インフルエンザ菌と他のヘモフィルス属菌との識別が可能である。例えば、白糖、ニュートラルレッドおよび5-ブロモ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドを発色成分として含有する本発明の培地では、白糖を分解せず、かつ、5-ブロモ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドを分解しない細菌のコロニーは無着色であり、白糖を分解し、かつ、5-ブロモ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドを分解する細菌のコロニー色は紫色、白糖を分解するが、5-ブロモ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドを分解しない細菌のコロニー色は赤色、白糖を分解しないが、5-ブロモ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドを分解する細菌のコロニーは青色を呈するため、インフルエンザ菌(白~灰白色・溶血無し)、ヘモフィルス・ヘモリティカス(白~灰白色・溶血有り)、パラインフルエンザ菌(紫色、赤色または青色・溶血無し)、ヘモフィルス・パラヘモリティカス(紫色、赤色または青色・溶血有り)の識別が可能になる。また、白糖、アニリンブルーおよび4-メチル-ウンベリフェリル-β-D-ガラクトピラノシドを発色成分として含有する本発明の培地では、白糖を分解せず、かつ、4-メチル-ウンベリフェリル-β-D-ガラクトピラノシドを分解しない細菌のコロニーは無着色(蛍光なし)であり、白糖を分解し、かつ、4-メチル-ウンベリフェリル-β-D-ガラクトピラノシドを分解する細菌のコロニー色は青色+蛍光発色、白糖を分解するが、4-メチル-ウンベリフェリル-β-D-ガラクトピラノシドを分解しない細菌のコロニー色は青色(蛍光なし)、白糖を分解しないが、4-メチル-ウンベリフェリル-β-D-ガラクトピラノシドを分解する細菌のコロニー色は無着色+蛍光発色であるため、インフルエンザ菌(白~灰白色・溶血無し)、ヘモフィルス・ヘモリティカス(白~灰白色・溶血有り)、パラインフルエンザ菌(青色+蛍光発色、青色(蛍光なし)、または無着色+蛍光発色・溶血無し)、ヘモフィルス・パラヘモリティカス(青色+蛍光発色、青色(蛍光なし)、または無着色+蛍光発色・溶血有り)の識別が可能になる。
【0028】
本発明の培地が含有する抗菌剤は、インフルエンザ菌の検出(スクリーニング)や、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別を妨げず、ヘモフィルス属以外の夾雑菌の発育を抑制する抗菌剤である。そのような抗菌剤は特に限定されないが、例えば、グラム陽性菌の発育を阻止する抗菌スペクトルを持つ抗菌剤を少なくとも1種類、添加することが好ましい。グラム陽性菌の発育を阻止する抗菌スペクトルを持つ抗菌剤は特に限定されないが、具体例としては、バシトラシン(BC)等のポリペプチド系抗菌剤、バンコマイシン(VCM)、テイコプラニン(TEIC)等のグリコペプチド系抗菌剤等が挙げられる。添加する抗菌剤は1種類のみとすることも可能であるが、2種類以上とすることも可能である。また、グラム陽性菌の発育を阻止する抗菌スペクトルを持つ抗菌剤以外の抗菌剤を添加することや、真菌の増殖を阻止する抗真菌剤をさらに添加することも可能である。
【0029】
インフルエンザ菌のスクリーニングのためには、抗菌剤の添加濃度をインフルエンザ菌が発育可能かつインフルエンザ菌の検出を妨げない濃度範囲とすることが好ましい。一方、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別のためには、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスが発育可能かつインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別を妨げない濃度範囲で抗菌剤を添加することが好ましい。そのような濃度範囲は、当業者であれば本発明の実施例を参考にして適宜設定することができるが、例えば、インフルエンザ菌のスクリーニングのためにバシトラシンを単独で添加する場合は、1~800mg/L、バンコマイシンを単独で添加する場合は、0.5~40mg/L、バシトラシンとバンコマイシンを共に添加する場合は、バシトラシン1~800mg/Lおよびバンコマイシン0.5~40mg/Lとすることができる。また、インフルエンザ菌のスクリーニングのためにバシトラシンを添加する場合に、5~800mg/Lとすることもできるが、10~800mg/Lとすることがより好ましく、10~300mg/Lとすることが最も好ましい。インフルエンザ菌のスクリーニングのためにバンコマイシンを添加する場合に、1~40mg/Lとすることもできるが、3~20mg/Lとすることがより好ましく、3~10mg/Lとすることが最も好ましい。一方、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別のためにバシトラシンを単独で添加する場合は、1~2.5mg/L、バンコマイシンを単独で添加する場合は、0.5~10mg/L、バシトラシンとバンコマイシンを共に添加する場合は、バシトラシン1~2.5mg/Lおよびバンコマイシン0.5~10mg/Lとすることが好ましいが、バンコマイシンを単独で添加する場合は、0.5~5mg/L、バシトラシンとバンコマイシンを共に添加する場合は、バシトラシン1~2.5mg/Lおよびバンコマイシン0.5~5mg/Lとすることがより好ましい。
【0030】
上述のとおり、本発明の培地は、ヘモフィルス属以外の夾雑菌の発育を抑制するための抗菌剤を含有する。それにも関わらず夾雑菌が発育した場合でも、発育した夾雑菌のコロニーが[白糖分解有りおよび/または溶血有り]であれば、インフルエンザ菌でないことが容易に判断可能である。また、仮に、夾雑菌のコロニーが[白糖分解無し・溶血無し]である場合でも、本発明の培地を用いた培養と並行して、ヒツジ血液寒天培地を用いた培養を行えば、ヘモフィルス属以外の夾雑菌はヒツジ血液寒天培地にも発育するため、インフルエンザ菌でないことが判断できる。したがって、ヒツジ血液寒天培地に発育せず、本発明の培地に発育した細菌におけるコロニー色および溶血の有無を確認することによりインフルエンザ菌の検出(スクリーニング)や、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別が可能である。
【0031】
本発明の培地は、少なくとも(a)ウマ血液、(b)β-NADまたはそのリン酸塩、(c)抗菌剤、並びに(d)発色成分であって、インフルエンザ菌のコロニーの呈色とパラインフルエンザ菌のコロニーの呈色を異なる色にする特性を有する発色成分を含有する、インフルエンザ菌が発育可能な培地である。本発明の培地が有する作用は、培地に発育した細菌のコロニー色および溶血の有無によりヘモフィルス属菌の識別が可能であり、それにより、インフルエンザ菌の検出が可能であるというものである。以上の成分を含有し、作用を有する本発明の培地の使用用途は、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別、インフルエンザ菌のスクリーニング等とすることが可能である。換言すれば、本発明の培地は、ヘモフィルス属菌の識別が可能であるという作用を利用して、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別用培地として使用することができ、また、インフルエンザ菌の検出が可能であるという作用を利用して、インフルエンザ菌のスクリーニング用培地として使用することができる。すなわち、本発明の培地は、用いる抗菌剤の種類、濃度等を調節することによって、インフルエンザ菌以外の夾雑菌(ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌、ヘモフィルス・パラヘモリティカス等のヘモフィルス属菌を含む)が発育する場合とインフルエンザ菌以外の夾雑菌の発育がほぼ抑制される場合を想定することができる。そのため、本発明のインフルエンザ菌スクリーニング用培地には、インフルエンザ菌の検出用培地およびインフルエンザ菌の選択培地が包含される。一方、本発明の培地をインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別用培地とすることも可能である。
【0032】
本発明で用いられる基礎培地は、普通寒天培地、ミュラーヒントン寒天培地、トリプトソイ寒天培地等のヘモフィルス属菌が発育可能な培地であれば特に限定されない。
【0033】
本発明の培地は、必要に応じて、ヘモフィルス属菌の発育に適した栄養成分、ミネラル分、その他の成分をさらに添加することも可能である。
【0034】
本発明の培地のpHの範囲は、ヘモフィルス属菌が発育可能であり、白糖の分解によって生じる酸に由来するpH変化に伴って、pH指示薬が変色する範囲であれば特に限定されない。使用するpH指示薬にもよるが、例えば、pH指示薬としてアニリンブルーを使用する場合は、pHを7~8程度とすることができ、7.0~8.0とすることが好ましい。具体的には、後に示す実施例の様に、7.3±0.3、7.6±0.3等とすることができる。
【0035】
本発明では、インフルエンザ菌をスクリーニングするために、具体的に、培地1Lあたり以下の表3に示す成分を含有する培地を用いることができるが、以下の表4に示す成分を含有する培地を用いることがより好ましい。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
以上の表3に示した本発明の培地においては、酵母エキス、可溶性デンプンに代えて栄養成分、ミネラル成分としてグルタミン酸ナトリウム(0~5g/L)を用いることができ、表4に示した本発明の培地においては、酵母エキス、可溶性デンプンに代えてグルタミン酸ナトリウム(0~5g/L)を用いることができる。また、表3に示した本発明の培地において、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムに代えてN-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-エタンスルホン酸(以下、HEPESという。)(0~10g/L)、3-モルホリノプロパンスルホン酸(以下、MOPSという。)(0~10g/L)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(以下、ACESという。)(0~10g/L)等のグッド緩衝剤を用いることができ、表4に示した本発明の培地においては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムに代えてHEPES(0~10g/L)、MOPS(0~10g/L)、ACES(0~10g/L)等のグッド緩衝剤を用いることができる。
【0039】
一方、本発明では、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスを識別するために、具体的に、培地1Lあたり以下の表5に示す成分を含有する培地を用いることができるが、以下の表6に示す成分を含有する培地を用いることがより好ましい。
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
以上の表5に示した本発明の培地においては、酵母エキス、可溶性デンプンに代えて栄養成分、ミネラル成分としてグルタミン酸ナトリウム(0~5g/L)を用いることができ、表6に示した本発明の培地においては、酵母エキス、可溶性デンプンに代えてグルタミン酸ナトリウム(0~5g/L)を用いることができる。また、表5に示した本発明の培地において、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムに代えてHEPES(0~10g/L)、MOPS(0~10g/L)、ACES(0~10g/L)等のグッド緩衝剤を用いることができ、表6に示した本発明の培地においては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムに代えてHEPES(0~10g/L)、MOPS(0~10g/L)、ACES(0~10g/L)等のグッド緩衝剤を用いることができる。
【0043】
本発明で使用される検体は、インフルエンザ菌をはじめとするヘモフィルス属菌の存在が疑われるものであれば特に限定されない。ヒトの咽頭拭い液、鼻咽頭拭い液、髄液、耳漏、眼脂等が具体例として挙げられる。
【0044】
本発明の培地の形態は、固形、シート状培地等、溶血の有無が確認できる形態であれば特に限定されないが、検出や識別のしやすさ等の観点から、固形培地が好ましく、平板固形培地の形態がより好ましい。
固形培地の固化剤としては、寒天、アガロース等通常使用されているものが挙げられる。
【実施例
【0045】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0046】
(発色成分として白糖およびpH指示薬を含有する培地を用いたインフルエンザ菌の検出)
発色成分として白糖およびアニリンブルーを含有する培地にインフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌および大腸菌を接種し、培地のインフルエンザ菌検出性能を調べた。なお、使用した菌株名は表11に記載した。
【0047】
(1)培地の準備
以下の表7に示した培地成分1を秤量し、以下の(2)でβ-NAD、ウマ血液および抗菌剤を添加した後の培地量が1Lとなるように精製水に懸濁後、121℃で15分間高圧滅菌した。
【0048】
【表7】
【0049】
(2)β-NAD、ウマ血液および抗菌剤の添加
高圧滅菌後、培地を50℃に冷却した後、予め濾過滅菌したβ-NAD、ウマ脱繊維素血液、バシトラシンおよびバンコマイシンを以下の表8に示す濃度となるように添加した。その後、培地を20mLずつシャーレに分注して固化した。
【0050】
【表8】
【0051】
(3)細菌の接種と培養
前培養した各菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1の菌液を作製した。その後、前記菌液を(1)、(2)で調製した培地に画線し、35℃で20時間、5%炭酸ガス環境下で培養を行い、細菌のコロニー色および溶血の有無を調べた。
【0052】
(4)結果
結果を表11に示す。溶血有りを+、溶血無しを-と表し、コロニー色とともに表示している。
【実施例2】
【0053】
(発色成分としてガラクトピラノシド誘導体を含有する培地を用いたインフルエンザ菌の検出)
発色成分として5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドを含有する培地にインフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌および大腸菌を接種し、培地のインフルエンザ菌検出性能を調べた。なお、使用した菌株名は表11に記載した。
【0054】
(1)培地の準備
以下の表9に示した培地成分2を秤量し、以下の(2)でβ-NAD、ウマ血液および抗菌剤を添加した後の培地量が1Lとなるように精製水に懸濁後、121℃で15分間高圧滅菌した。
【0055】
【表9】
【0056】
(2)β-NAD、ウマ血液および抗菌剤の添加
実施例1と同様とした。
【0057】
(3)細菌の接種と培養
実施例1と同様とした。
【0058】
(4)結果
結果を表11に示す。溶血有りを+、溶血無しを-と表し、コロニー色とともに表示している。
【実施例3】
【0059】
(発色成分として白糖、pH指示薬およびガラクトピラノシド誘導体を含有する培地を用いたインフルエンザ菌の検出)
発色成分として白糖、アニリンブルーおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドを含有する培地にインフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌および大腸菌を接種し、培地のインフルエンザ菌検出性能を調べた。なお、使用した菌株名は表11に記載した。
【0060】
(1)培地の準備
以下の表10に示した培地成分3を秤量し、以下の(2)でβ-NAD、ウマ血液および抗菌剤を添加した後の培地量が1Lとなるように精製水に懸濁後、121℃で15分間高圧滅菌した。
【0061】
【表10】
【0062】
(2)β-NAD、ウマ血液および抗菌剤の添加
実施例1と同様とした。
【0063】
(3)細菌の接種と培養
実施例1と同様とした。
【0064】
(4)結果
結果を以下の表11に示す。溶血有りを+、溶血無しを-と表し、コロニー色とともに表示している。
【0065】
【表11】
【0066】
表11に示した様に、実施例1の培地では、試験したすべてのインフルエンザ菌のコロニー色が白糖分解無しを表す灰白色であり、溶血は無しであった。また、実施例2の培地では、試験したすべてのインフルエンザ菌のコロニー色が、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドの分解無しを表す灰白色であり、溶血無しであり、実施例3の培地では、試験したすべてのインフルエンザ菌のコロニー色が、白糖分解無し、かつ5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド分解無しを表す灰白色であり、溶血無しであった。このことから、発色成分として白糖、アニリンブルーのみを含有する培地(実施例1)、発色成分として5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドのみを含有する培地(実施例2)、発色成分として白糖、アニリンブルーおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドを含有する培地(実施例3)のいずれを用いても、インフルエンザ菌を見逃すこと無く検出できることが示唆された。さらに実施例3の培地では、試験したすべてのパラインフルエンザ菌のコロニーの色が、白糖分解有りおよび/または5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド分解有りを表す青色であり、溶血は無し、大腸菌もコロニー色が青色、溶血無しであったことから、発色成分として白糖、アニリンブルーおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドを含有する培地は偽陽性が無く、より高い精度でインフルエンザ菌とその他の細菌を識別可能であることが示された。
【実施例4】
【0067】
(インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別)
発色成分として白糖、アニリンブルーおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドを含有する培地にインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスを接種し、培地の性能を調べた。なお、使用した菌株名は表14に記載した。
【0068】
(1)培地の準備
以下の表12に示した培地成分4を秤量し、以下の(2)でβ-NAD、ウマ血液および抗菌剤を添加した後の培地量が1Lとなるように精製水に懸濁後、121℃で15分間高圧滅菌した。
【0069】
【表12】
【0070】
(2)β-NAD、ウマ血液および抗菌剤の添加
高圧滅菌後、培地を50℃に冷却した後、予め濾過滅菌したβ-NAD、ウマ脱繊維素血液、バシトラシン(BC)およびバンコマイシン(VCM)を以下の表13に示す濃度となるように添加した。その後、培地を20mLずつシャーレに分注して固化した。
【0071】
【表13】
【0072】
(3)細菌の接種と培養
前培養した各菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1の菌液を作製した。その後、前記菌液を(1)、(2)で調製した培地に画線し、35℃で20時間、5%炭酸ガス環境下で培養を行い、細菌のコロニー色および溶血の有無を調べた。
【0073】
(4)結果
結果を以下の表14に示す。溶血有りを+、溶血無しを-と表し、コロニー色とともに表示している。
【0074】
【表14】
【0075】
バシトラシン2.5mg/Lおよび/またはバンコマイシン5mg/Lを添加した培地では、インフルエンザ菌(灰白色・溶血無し)、ヘモフィルス・ヘモリティカス(灰白色・溶血有り)、パラインフルエンザ菌(青色・溶血無し)、ヘモフィルス・パラヘモリティカス(青色・溶血有り)がいずれも良好に発育し、コロニー色および溶血の有無によってこれらの菌種を識別可能であることが示された。一方、バンコマイシン10mg/Lを単独で添加した培地では、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌、ヘモフィルス・パラヘモリティカスをコロニー色および溶血の有無によって識別可能であるものの、ヘモフィルス・パラヘモリティカスが弱い発育であった。なお、表14に示したとおり、検討した何れの抗菌剤濃度の培地も、コロニー色および溶血の有無によってインフルエンザ菌を検出可能であった。
【実施例5】
【0076】
(pH指示薬の検討)
発色成分として白糖およびpH指示薬のみを含有する培地において、pH指示薬をアニリンブルーまたはフェノールレッドとし、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスを接種し、培地の性能を調べた。なお、使用した菌株名は表16に記載した。
【0077】
(1)培地の準備
pH指示薬をアニリンブルー100mg/Lまたはフェノールレッド120mg/Lとする以外は実施例1と同様とした。
【0078】
(2)β-NAD、ウマ血液および抗菌剤の添加
高圧滅菌後、培地を50℃に冷却した後、予め濾過滅菌したβ-NAD、ウマ脱繊維素血液、バシトラシンおよびバンコマイシンを以下の表15に示す濃度となるように添加した。その後、培地を20mLずつシャーレに分注して固化した。
【0079】
【表15】
【0080】
(3)細菌の接種と培養
前培養した各菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1の菌液を作製した。その後、前記菌液を(1)、(2)で調製した培地に画線し、35℃で20時間、5%炭酸ガス環境下で培養を行い、細菌のコロニー色および溶血の有無を調べた。
【0081】
(4)結果
結果を以下の表16に示す。溶血有りを+、溶血無しを-と表し、コロニー色とともに表示している。
【0082】
【表16】
【0083】
pH指示薬としてアニリンブルーを用いた培地もフェノールレッドを用いた培地も、ともに、コロニー色および溶血の有無によってインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスを良好に識別可能であった。
【実施例6】
【0084】
(抗菌剤の検討および従来法との比較)
発色成分として白糖、アニリンブルーおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドを含有する培地において、抗菌剤の種類を変えて、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌、ヘモフィルス・パラヘモリティカスおよびその他の社内保存菌を接種し、培地の性能を調べた。さらに、ポアメディア(登録商標)羊血液寒天培地(栄研化学製培地)、従来のヘモフィルス属分離培養用の培地である従来法A培地(栄研化学製培地)および従来法B培地(ベクトン・ディキンソン社製バシトラシン添加培地)を用意し、同様の細菌を接種して比較した。なお、使用した菌株名は表18に記載した。
【0085】
(1)本発明の培地の準備
実施例4と同様とした。
【0086】
(2)本発明の培地へのβ-NAD、ウマ血液および抗菌剤の添加
高圧滅菌後、培地を50℃に冷却した後、予め濾過滅菌したβ-NAD、ウマ脱繊維素血液、バシトラシン(BC)およびバンコマイシン(VCM)を以下の表17に示す濃度となるように添加した。その後、培地を20mLずつシャーレに分注して固化した。
【0087】
【表17】
【0088】
(3)細菌の接種と培養
前培養した各菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1の菌液を作製した。その後、前記菌液を(1)、(2)で調製した培地および比較用の各培地(羊血液寒天培地、従来法A培地、従来法B培地)に画線し、35℃で20時間、5%炭酸ガス環境下で培養を行い、細菌のコロニー色および溶血の有無を調べた。
【0089】
(4)結果
結果を以下の表18に示す。本発明の培地による結果は、溶血有りを+、溶血無しを-と表し、コロニー色とともに表示し、従来法A培地、B培地およびポアメディア羊血液寒天培地の結果は、コロニー色により表示している。
【0090】
【表18】
【0091】
本発明の培地では、抗菌剤として、バシトラシン単独を用いた場合、バンコマイシン単独を用いた場合、バシトラシンおよびバンコマイシンを共に添加した場合のいずれにおいても、コロニー色および溶血の有無によるインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの識別と、インフルエンザ菌の検出が可能であった。それに対して、従来法A培地およびB培地に発育したコロニーはいずれも灰白色であり、形態以外にインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスを識別する手段がなかった。このことから、本発明の培地は、従来法に比べて顕著に容易かつ正確にインフルエンザ菌を検出可能であることが示された。
また、本発明の培地では、抗菌剤として、バシトラシン単独を用いた場合、バンコマイシン単独を用いた場合、バシトラシンおよびバンコマイシンを共に添加した場合のいずれにおいても、ヘモフィルス属以外の夾雑菌に対する一定の抑制効果が認められ、試験した培地の中では、特に、バシトラシン300mg/Lおよびバンコマイシン10mg/Lを添加した本発明の培地が最も良好に夾雑菌の発育を抑制し、極めて簡易に精度良くインフルエンザ菌を検出可能であることが示された。なお、本発明の培地においても一部の夾雑菌の発育が認められたが、夾雑菌は、羊血液寒天培地にも発育したため、ヘモフィルス属菌でないことが容易に判断可能であった。
【実施例7】
【0092】
(咽頭拭い液検体による検討)
健常者5名の咽頭を綿棒で擦過し、発色成分として白糖、アニリンブルーおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドを含有する本発明の培地に接種して培養後、発育したコロニーを釣菌して栄研化学製XVマルチディスク‘栄研’(登録商標)、シスメックス・ビオメリュー社製アピ(登録商標)NHにより細菌の同定を行った。なお、同定試験の方法はそれぞれの添付文書に従った。
【0093】
(1)本発明の培地の準備
実施例4と同様とした。
【0094】
(2)β-NAD、ウマ血液および抗菌剤の添加
実施例1と同様とした。
【0095】
(3)検体の接種と培養
健常者5名の咽頭を綿棒で擦過した後、(1)、(2)で調製した培地に接種し、35℃で20時間、5%炭酸ガス環境下で培養を行い、細菌のコロニー色および溶血の有無を調べた。
【0096】
(4)結果
栄研化学製XVマルチディスクによる同定結果を以下の表19、シスメックス・ビオメリュー社製アピNHによる同定結果を表20に示す。
【0097】
【表19】
【0098】
【表20】
【0099】
本発明の培地で灰白色に呈色したコロニーはすべて同一のコロニー形態・溶血無しであり、青色に呈色したコロニーはすべて溶血無しであった(データは示していない)。灰白色・溶血無しのうちの1コロニーと、青色・溶血無しのコロニーのうち、優勢に発育した1コロニーを代表として釣菌してXVマルチディスクによる同定を行った結果、灰白色・溶血無しのコロニーはXV要求性であることからインフルエンザ菌であると確認された。一方、青色・溶血無しのコロニーはV要求性であることからパラインフルエンザ菌であると確認された(表19)。また、同様に、灰白色・溶血無しの1コロニーと青色・溶血無しのコロニーのうち、優勢に発育した1コロニーを代表としてシスメックス・ビオメリュー社製アピNHにより同定した結果、灰白色に呈色したコロニーは99.9%の信頼度でインフルエンザ菌であると同定され、青色に呈色したコロニーは99.1%の信頼度でパラインフルエンザ菌であると同定された(表20)。このことから、本発明の培地は、初代分離培養により高精度にインフルエンザ菌とパラインフルエンザ菌を識別し、インフルエンザ菌を検出可能であることが示唆された。
【実施例8】
【0100】
(白糖添加濃度の検討)
発色成分として白糖およびアニリンブルーを含有する培地にインフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスを接種し、これらの菌種を識別可能な白糖濃度を調べた。なお、使用した菌株名は表23に記載した。
【0101】
(1)培地の準備
以下の表21に示した培地成分5を秤量し、以下の(2)でβ-NAD、ウマ血液および抗菌剤を添加した後の培地量が1Lとなるように精製水に懸濁後、121℃で15分間高圧滅菌した。
【0102】
【表21】
【0103】
(2)β-NAD、ウマ血液および抗菌剤の添加
高圧滅菌後、培地を50℃に冷却した後、予め濾過滅菌したβ-NAD、ウマ脱繊維素血液、バシトラシンおよびバンコマイシンを以下の表22に示す濃度となるように添加した。その後、培地を20mLずつシャーレに分注して固化した。
【0104】
【表22】
【0105】
(3)細菌の接種と培養
前培養した各菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1の菌液を作製した。その後、前記菌液を(1)、(2)で調製した培地に画線し、35℃で20時間、5%炭酸ガス環境下で培養を行い、細菌のコロニー色および溶血の有無を調べた。
【0106】
(4)結果
結果を表23に示す。溶血有りを+、溶血無しを-と表し、コロニー色とともに表示している。
【0107】
【表23】
【0108】
表23に示した様に、白糖添加濃度 1から40g/Lの範囲においてコロニー色および溶血の有無によるインフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスの識別が可能であり、また、インフルエンザ菌の検出が可能であった。
【実施例9】
【0109】
(アニリンブルー添加濃度の検討)
発色成分として白糖およびアニリンブルーを含有する培地にインフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスを接種し、これらの菌種を識別可能なアニリンブルー濃度を調べた。なお、使用した菌株名は表25に記載した。
【0110】
(1)培地の準備
以下の表24に示した培地成分6を秤量し、以下の(2)でβ-NAD、ウマ血液および抗菌剤を添加した後の培地量が1Lとなるように精製水に懸濁後、121℃で15分間高圧滅菌した。
【0111】
【表24】
【0112】
(2)β-NAD、ウマ血液および抗菌剤の添加
実施例8と同様とした。
【0113】
(3)細菌の接種と培養
前培養した各菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1の菌液を作製した。その後、前記菌液を(1)、(2)で調製した培地に画線し、35℃で20時間、5%炭酸ガス環境下で培養を行い、細菌のコロニー色および溶血の有無を調べた。
【0114】
(4)結果
結果を表25に示す。溶血有りを+、溶血無しを-と表し、コロニー色とともに表示している。
【0115】
【表25】
【0116】
表25に示した様に、アニリンブルー添加濃度40から400mg/Lの範囲においてコロニー色および溶血の有無によるインフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスの識別が可能であり、また、インフルエンザ菌の検出が可能であった。
【実施例10】
【0117】
(緩衝剤の検討)
発色成分として白糖、アニリンブルーおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドを含有する培地において、緩衝成分をリン酸緩衝液、HEPES、MOPSまたはACESとし、インフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスを接種し、培地の性能を調べた。なお、使用した菌株名は表26に記載した。
【0118】
(1)培地の準備
緩衝成分をリン酸二水素カリウム1g/Lおよびリン酸水素二カリウム4g/L、HEPES 5g/L、MOPS 5g/LまたはACES 5g/Lとする以外は実施例4と同様とした。
【0119】
(2)β-NAD、ウマ血液および抗菌剤の添加
実施例1と同様とした。
【0120】
(3)細菌の接種と培養
前培養した各菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1の菌液を作製した。その後、前記菌液を(1)、(2)で調製した培地に画線し、35℃で20時間、5%炭酸ガス環境下で培養を行い、細菌のコロニー色および溶血の有無を調べた。
【0121】
(4)結果
結果を表26に示す。溶血有りを+、溶血無しを-と表し、コロニー色とともに表示している。
【0122】
【表26】
【0123】
緩衝成分としてリン酸緩衝液、HEPES、MOPSおよびACESのいずれを用いた培地においても、コロニー色および溶血の有無によってインフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・ヘモリティカスを良好に識別可能であり、また、インフルエンザ菌を良好に検出可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明のインフルエンザ菌の検出方法およびそれに用いる培地は、培地に発育した細菌のコロニー色および溶血の有無を確認するのみで、初代分離培養によるインフルエンザ菌、ヘモフィルス・ヘモリティカス、パラインフルエンザ菌およびヘモフィルス・パラヘモリティカスの容易な識別が可能になる。従来法に比べて、はるかに容易かつ正確にインフルエンザ菌を検出可能になり、その結果、初代分離培養および確認試験を含めた所要時間、操作上の手間および確認試験にかかるコストを従来に比べて大幅に削減可能である。そのため、本発明の方法および培地は、臨床現場や疫学研究その他の幅広い領域において有用である。